目次
はじめに
この記事で取り上げる映画
出演:広瀬すず, 出演:松坂桃李, 出演:横浜流星, 出演:多部未華子, 出演:趣里, 出演:三浦貴大, 出演:白鳥玉季, 出演:増田光桜, 出演:内田也哉子, 出演:柄本明, Writer:李相日, 監督:李相日
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この記事の3つの要点
- 「見て分かること」に”しか”反応できない社会では、更紗は「可哀想な『被害者』」としてしか扱われない
- 映画に対する「共感」が、観客に対する「断罪」として返ってくる作品
- 「文が『誘拐犯』として逮捕されること」は仕方ないが、それでもどうにか文と更紗のような関係が成立しないものかと考えてしまう
広瀬すず・松坂桃李・横浜流星は当然のことだが、更紗の子ども時代を演じた白鳥玉季がとにかく素晴らしかった
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私は基本的にいつも、世の中に対して絶望的な気分を感じている。シンプルに、イライラしているのだ。それは、多くの人が「『見て分かること』に”しか”反応していない」ように感じられるせいである。視覚に限定しているわけではなく、「五感で感じられること」に”しか”反応できないことに苛立ちを覚えているのだが、やはりその中でも視覚が最も大きなウェイトを占めていると思う。なので、この記事では「見て分かること」という表記で統一する。
別に、「『見て分かること』に反応する」こと自体に嫌悪感を抱いているのではない。そういうことに”しか”反応できない状態が許容できないのだ。話をしていても、「◯◯が可愛かった」「あそこにできた◯◯が△△でさぁ」「テレビで見た◯◯が△△だったんだって」「◯◯が美味しかった」みたいなことしか口にしない人多いように感じてしまう。別にそういう会話がダメだと言いたいのではなく、そういう会話”しか”していないことに絶望してしまうのだ。
そんな社会だからこそ、「”誘拐”した文」と「”誘拐”された更紗」の関係も成立し得ない。
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そういう社会が、私は嫌いだ。
文に「なんだか生き返ったみたい」と吐露する更紗
なんだか生き返ったみたい。
更紗は映画の中で、2度この言葉を口にする。最初は文と出会ってすぐ、そして2度目は文と再会してすぐだ。
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2人は「ロリコンの大学生・文が10歳の更紗を誘拐した」という関係として世間的には知られている。そのニュースは日本中で報じられ、彼女が「誘拐された被害者」であることが周知の事実として知られる世の中を更紗は生きている。
そんな「被害者」である更紗が、「加害者」である文と話すことで「なんだか生き返ったみたい」という感覚を抱くのだ。”普通”に考えればあり得ないだろう。
しかしこの映画は、それを「あり得る」に変えてくれる作品なのだ。
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私は最初から、更紗の「なんだか生き返ったみたい」という言葉に強く共感してしまった。私も日常的に、そう感じることがあるからだ。私の主観では、世の中のほとんどの人が「見て分かること」にしか反応していない。そういう人と喋る時、私はなんだか発狂しそうになってしまう。そんなわけで、時々「この人とは話が通じる」と感じられる人と会話する機会があると、「なんだか生き返ったみたい」という感覚になるのである。
最近印象的だったのが、3年ぶりぐらいに連絡が来て、飲みに行った年下の女性との会話だ。私とは一回りぐらい年齢が離れており、別に共通の趣味があるわけでもなく、そもそも3年間1度もやり取りをしていなかった。そんな人と久しぶりに会話をした後、相手から「久々に人間と喋った」と言ってもらえたのだ。これも、「なんだか生き返ったみたい」を言い換えた言葉だと思えばいいだろう。
私も、「人間と喋った」という実感を得られなければ、なかなか「生き返る」ことができない。言い方は悪いが、「『見て分かること』に”しか”反応しない人」は、私には「人間」ではなく「ゾンビ」のように見えてしまう。なかなか「人間と喋った」とは感じられないのだ。
映画『流浪の月』ではこのような感覚を、「誘拐の『被害者』として扱われ続ける更紗」という特殊な主人公を配置することで描き出す。しかし、更紗が抱く感覚は決して「特殊なもの」ではない。少なくとも私の周りには、「なんだか生き返ったみたい」「久々に人間と喋った」という感覚を共有できる人が多少なりともいる。
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更紗は「『被害者』であることを強要される」という環境で育った。そして今もそういう状況にいる。映画の中に、そのことを示唆する場面が多いわけでは決してない。しかし、映画の冒頭はまさにそういうシーンだし、ある場面で更紗が口にする、
文が知っている私のままじゃ、生きてこれなかったなー。
というセリフもまた、彼女が歩んできた人生を想起させる言葉だと捉えていい。
”誘拐”された更紗が文と過ごす子ども時代の場面では、更紗はとても天真爛漫に振る舞う。しかしそれは、「子どもらしい天真爛漫さ」というより、「更紗という人間に備わった天真爛漫さ」に思える。更紗の振る舞いは10歳の子どものそれではない。どことなく大人びた雰囲気が感じられる。しかしそこに、天真爛漫さが垣間見えるのだ。それは更紗が固有に持っている天真爛漫さだと私は思う。
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しかし更紗は、その天真爛漫さを封印しなければならなかった。何故なら彼女は「誘拐の被害者」だからだ。
亮くんが思ってるほど可哀想な子じゃないと思うよ。
更紗は、同棲している恋人にそう言ってみる。本当はたぶん、「私は『被害者』なんかじゃないよ」と言いたかったんだと思う。しかしそんな風に口にしても無意味だと分かっている。だから、相手に伝わるかもしれない言葉で、「そうじゃないんだよ」と伝えようとしたのだ。しかしやはり、彼女の感覚は伝わらない。「誘拐された『被害者』なんだから可哀想に決まってる」という、他者からの視線の根底にあるものを拭い去ることはできないのだ。
自分を好きだと言ってくれる人と付き合ったら、私のことをちゃんと見てくれるんじゃないかって思ってた。でも、人は見たいようにしか見てくれないのかもね。
更紗は、どうしたって「被害者」の枠に入れられてしまう。それが、「更紗」という人間の最も理解しやすい「見て分かること」だからだ。更紗は、その「見て分かること」を否定したいと思っている。でも、「見て分かること」に”しか”反応できない社会では、どうしても「被害者」という枠から出ることはできない。
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とても逆説的ではあるが、更紗は文といる時だけ「被害者」という枠の外に出られるのだ。だから「生き返る」ことができる。
「見て分かること」に”しか”反応できない社会が、更紗を「被害者」の枠に押し込める。そしてそのことが、本当の意味で更紗を「被害者」にしてしまう。私たちがそんな社会に生きていることを、映画『流浪の月』は鮮やかに示すのである。
「映画『流浪の月』に共感すること」によって、観客自身が斬られてしまう
映画『流浪の月』が面白いのは、「共感」が「観客のダメージ」として蓄積していくという点だ。それ故に、言い知れない余韻が残るのではないかと思う。
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映画では基本的に、「一般的な倫理観が逆転した世界」が描かれていると言っていい。例えば文と更紗の関係は、週刊誌やワイドショーなどで概要だけ知った場合、安易な批判にさらされるものだと思う。実際映画でも、そのような展開が描かれる。
登場人物の1人はハッキリと、
2人のことを知って吐きそうになった。
と言っていた。
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しかし、映画を観た人はきっと、「文も更紗も幸せになってほしい」と感じるのではないかと思う。2人が抱える事情・葛藤を知ることで、「2人が一緒にいる世界」を許容したくなる。そんな風に気持ちが変わっていく人が多いはずだ。
一方、更紗の同棲相手である亮は、程度の問題はあれど、基本的には「世間一般」を代表するようなキャラクターだと思う。文と更紗のような存在が私たちの社会にいるとして、そんな2人に世間一般が抱くだろう感覚を代弁する立ち位置だと言っていい。
彼は、
お前ら2人を「気持ち悪い」って思う奴なんか、腐るほどいるだろ。
と吐き捨てるのだが、確かにそうだろうと思う。
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しかしそんな亮は、暴力的で狂気的な言動のせいで、恐らく観客から支持されない。「酷い奴だ」という受け取られ方になるはずだ。
つまりこの映画では、「本来なら批判されるだろう人物が共感され、本来なら共感されるはずの人物が批判される」という構成になっているのである。そしてそのような構成だからこそ、「映画に対する共感」が「返り血」として観客自身に返ってくることになるのだ。
この点がとても良く出来ていると感じた。
観客の多くは、亮の言動を拒絶したいと思ってしまうはずだ。亮は冒頭から些細な違和感を抱かせる存在ではあったが、途中からあからさまに態度が変わる。その無理解さや凶暴さを受け入れられないと感じる人がほとんどだと思う。
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しかし一方で、観客は彼が心の奥底に抱く価値観そのものをなかなか否定しきれないだろう。もしも私たちの社会に文と更紗が存在するなら、恐らく多くの人が「気持ち悪い」と感じるのだろうし、まさにそれは、映画で描かれる亮そのものだ。
亮のことを拒絶したいが、否定はしきれない。その感覚に観客は、自身が持つ「正義感」みたいなものを揺らがせられるのではないかと思う。
一方、物語が展開するに従って観客は、文と更紗に共感していくはずだ。彼らには彼らなりの過去・来歴があって、その延長線上に様々な選択がある。そんな2人にはなんとか幸せを掴み取ってほしい。そんな風に感じてしまうと思う。
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しかしその想いは、「亮を否定しきれない」という感覚と相容れない。観客は、亮視点で観た時の「文と更紗の『気持ち悪さ』」を捨て切ることが出来ないのだ。この違和感を解消するためには、「文と更紗を嫌いになる」必要がある。「吐きそう」と思わなければならない。しかしそれは難しい。文と更紗の人生に共感してしまっているからだ。
映画『流浪の月』ではこんな風に、「共感」が「葛藤」を引き連れてくる。この映画がもたらす得も言われぬ余韻は、このように説明できるのではないかと私は思う。
文と更紗の関係は羨ましく思える
私には、文と更紗の関係はとても羨ましいものに感じられる。何故ならそれは、「『見て分かること』を乗り越えなければ成立し得ない関係」だからだ。逆に言えば、文と更紗の関係が羨ましく感じられてしまうほど、「『見て分かること』ばかりで成り立つ関係」に私はうんざりしているということでもあるだろう。
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「大学生の男」と「10歳の少女」の間に”まともな”関係性が生まれるとは、普通は考えられない。「見て分かること」だけで判断するならそうなる。これは決して、「『大学生の男』と『10歳の少女』に関係が生まれるべきではない」という主張ではない。法律や社会通念のことは一旦忘れて、シンプルに「人間同士の関係性」という観点のみで考えた場合でも、「見て分かること」で判断する以上、2人の間に関係が生まれるとは想像できない、という意味だ。
しかし、「想像できない」と「起こらない」はまったく違う。別に「大学生の男」と「10歳の少女」の間に、一方的ではない、お互いがお互いの存在を必要とするような関係性が生まれたっていいと私は思う。それは単に「想像できない」だけであり、「起こらない」と決まったわけではないのだ。
しかしそんな2人の関係は、「吐きそう」「気持ち悪い」と批判されてしまう。そう「断罪」することは本当に正しいのだろうか?
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別に私は、「文が『誘拐犯』として逮捕されたこと」を受け入れがたく感じているわけではない。というか、それは仕方ないことだと考えている。文と更紗のような関係は「奇跡的」なものだ。ほとんどの場合、「大学生の男」と「10歳の少女」の関係は、一方的で性的なものであり、そこには「被害」と呼ばれるべきものが存在するだろう。「被害」が生まれてからでは遅いのだから、そうならないように対策が講じられるのは当然だし、だから「文が『誘拐犯』として逮捕されたこと」は、社会を正しく成立させる上で仕方ないと私は受け入れている。
問題はそこではない。映画『流浪の月』では、「大人になった更紗が、自らの判断で文との関わりを選択する」という展開が描かれるのだ。もはや「『大学生の男』と『10歳の少女』の関係」ではない。社会では「誘拐」として断罪されて然るべき関わり方から始まった関係ではあるが、どちらも大人になった今、その関係性に他人がとやかく言う余地はないと私は思う。しかし社会は、「『大学生の男』と『10歳の少女』という関係から始まった」という「見て分かること」にしか反応せず、その関係を拒絶する。
私には、意味が分からない。むしろ私は、この2人が「見て分かること」を乗り越えて、「絶対に離したくない」と強く感じる関係性にたどり着いたという事実に、羨ましさを感じてしまう。今の世の中では、そんな関係に辿り着くことはとても難しいと思うからだ。
「更紗を『被害者』にしてしまった文」の傍にいる時だけ「『被害者』ではない更紗」として存在できる。それはプラスマイナスゼロみたいな関係性なのかもしれないが、しかしその「ゼロ」は「何もなかった」ことを意味するのではない。「2人で必死にゼロまでたどり着いた」ことの証なのだ。
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死ねって言われたら死のうと思ってた。
「文の『誘拐』」によって救われた更紗は、「文が『誘拐犯』として逮捕されたこと」によって絶望に叩き落されてしまった。「一緒にいたいと感じる相手」の傍にいることが「許されないこと」だと知って、更紗の心はバラバラになる。文と更紗のような関係は、「社会を健全に成り立たせる」ために許容されはしない。その事実は、私も受け入れる。しかし一方で、更紗を必要とする文のような人物も、文を必要とする更紗のような人物も、世界のどこかにいるはずだとも思う。「ここは自分がいるべき場所ではない」と日常的に感じ、今自分がいる環境では「話の通じる相手」を見つけることができなくて絶望している人は、きっと少なくないはずだ。
文と更紗は、「許されない形」で出会ってしまう。しかしその出会いは、2人にとって奇跡的なほどお互いが必要とするものだった。そして彼らは、「関わるべきではない」とお互いが自制している地点から、様々な葛藤を乗り越えて、「かけがえのない関係」へとたどり着くのだ。
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そう思わせてくれるプラスマイナスゼロの2人に、私は羨ましさを感じてしまう。
映画『流浪の月』の内容紹介
公園で1人ブランコに乗り、本を読む更紗。そして、雨が降り始めてもそのまま読み続ける更紗に、傘を差してあげる大学生の文。「家に帰りたくない」と口にする更紗に、「うちに来る?」と誘う文。こうして「誘拐」が成立した。
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そんなある日、その同僚の誘いでたまたま入った深夜営業のカフェで文を見かける。その店のマスターだったのだ。「再会」はしていない。文が更紗に気づいているのかは分からなかった。お互い他人のような接し方をしばらく続けている。
更紗は、レストランのシフトを無理やり増やされたと亮に嘘をつき、文の喫茶店に通い詰めた。ある日、閉店後に文が出てくるのを待っていたら、その傍に付き合っていると思われる女性の姿が。更紗はホッとする。文がちゃんと幸せを手にすることができたのだと感じたのだ。
しかし……。
映画『流浪の月』の感想
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素晴らしい映画だった。ここまでは物語そのものに触れたが、役者の演技も素晴らしいとしか言いようがない。特に、メインの役を演じる広瀬すず・松坂桃李・横浜流星は見事だった。
3人ともセリフは少なく、それでいて複雑な役柄を表現しなければならない。広瀬すずは、ちょっとした表情の変化や目線の動かし方で、言葉には表し難い微妙なニュアンスを雄弁に語っていたと思う。松坂桃李は、表情さえほとんど変えないというさらに難しい役柄で、しかも「少女に関心を示す」という、普通なら拒絶されてしまうだろう人物であるにも拘わらず、そこに独特の暖かみを醸し出すことで受け入れてもらえる形に落とし込んでいる点が見事だった。横浜流星も、狂気的でありながら実際にいるかもしれないと思わせる絶妙なヤバさを的確に演じていたと思う。
しかし、この3人以上に素晴らしいと感じたのが、更紗の子ども時代を演じた白鳥玉季だ。本当に見事だった。更紗の子ども時代について、「子どもだからではなく、更紗独自の天真爛漫さがある」と表現したが、まさにそれは彼女の演技があってこその実感だと思う。彼女が更紗をそのように演じたお陰で、「更紗は『被害者』ではない」という、物語を展開する上で支柱となる部分の説得力が強固になった。「大学生の文」と「10歳の更紗」という、普通には成立するはずがないと思われる2人の関係性に対する説得力は、白鳥玉季の演技あってのものだと感じたのだ。
広瀬すず・松坂桃李・横浜流星が素晴らしいことは分かっていたし、その点に対する驚きは正直ない。映画『流浪の月』の最大の衝撃は白鳥玉季という役者の存在であるし、本当に見事だったと思う。
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出演:広瀬すず, 出演:松坂桃李, 出演:横浜流星, 出演:多部未華子, 出演:趣里, 出演:三浦貴大, 出演:白鳥玉季, 出演:増田光桜, 出演:内田也哉子, 出演:柄本明, Writer:李相日, 監督:李相日
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繰り返すが、「文が『誘拐犯』として逮捕されること」は仕方ないことだと私は理解している。しかしその上で、どうにか文と更紗の関係が社会の中で成立する余地がないものかと私は考えてしまうのだ。
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「見て分かること」に”しか”反応しない社会では、それは望めない。私たちの世界にもそれなりにいるだろう「文」と「更紗」が、どうにか真っ当に生き延びられる社会であることを、切に願ってしまう。
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私は、「コミュ力が高い人」に関するよくある主張に、どうも違和感を覚えてしまうことが多くあります。そしてその一番大きな理由が、「『コミュ力が高い人』って、ただ『想像力がない』だけではないか?」と感じてしまう点にあると言っていいでしょう。出版したKindle本は、「ネガティブには見えないネガティブな人」(隠れネガティブ)を取り上げながら、「『コミュ力』って何だっけ?」と考え直してもらえる内容に仕上げたつもりです。
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2006年発売、2021年文庫化の『私を見て、ぎゅっと愛して』は、ブログ本のクオリティとは思えない凄まじい言語化力で、1人の女性の内面の葛藤を抉り、読者をグサグサと突き刺す。信じがたい展開が連続する苦しい状況の中で、著者は大事なものを見失わず手放さずに、勇敢に前へ進んでいく
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重度の人たちも含め、障害者を最低賃金保証で雇用するというかなり無謀な挑戦を続ける夏目浩次を追う映画『チョコレートな人々』には衝撃を受けた。キレイゴトではなく、「障害者を真っ当に雇用したい」と考えて「久遠チョコレート」を軌道に乗せたとんでもない改革者の軌跡を追うドキュメンタリー
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【家族】ゲイの男性が、拘置所を出所した20歳の男性と養子縁組し親子関係になるドキュメンタリー:映画…
「ゲイの男性が、拘置所から出所した20歳の男性と養子縁組し、親子関係になる」という現実を起点にしたドキュメンタリー映画『二十歳の息子』は、奇妙だが実に興味深い作品だ。しばらく何が描かれているのか分からない展開や、「ゲイであること」に焦点が当たらない構成など、随所で「不協和音」が鳴り響く1作
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坂元裕二脚本、是枝裕和監督の映画『怪物』は、3つの視点を通して描かれる「日常の何気ない光景」に、思いがけない「加害性」が潜んでいることを炙り出す物語だ。これは間違いなく、私たち自身に関わる話であり、むしろ「自分には関係ない」と考えている人こそが自覚すべき問題だと思う
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【狂気?】オウム真理教を内部から映す映画『A』(森達也監督)は、ドキュメンタリー映画史に残る衝撃作だ
ドキュメンタリー映画の傑作『A』(森達也)をようやく観られた。「オウム真理教は絶対悪だ」というメディアの報道が凄まじい中、オウム真理教をその内部からフラットに映し出した特異な作品は、公開当時は特に凄まじい衝撃をもたらしただろう。私たちの「当たり前」が解体されていく斬新な一作
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誰かとの関係性には大抵、「友達」「恋人」「家族」のような名前がついてしまうし、そうなればその名前に縛られてしまいます。「名前がつかない関係性の奇跡」と「誰かを想う強い気持ちの表し方」について、『君の膵臓をたべたい』をベースに書いていきます
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