目次
はじめに
この記事で取り上げる映画

「ニッツ・アイランド 非人間のレポート」公式HP
この映画をガイドにしながら記事を書いていきます
今どこで観れるのか?
公式HPの劇場情報をご覧ください
この記事の3つの要点
- 本作を観て「なるほど、そんな手があったか!」と感じたが、しかし、思いついたとしても普通はやらないだろう
- 「『現実世界』では許容されないこともOK」という世界だからこそ、「人間性」がより強く浮き出ているように感じられた
- 「『現実世界』から離れたい」という気持ちが、「ゲーム内の世界を『リアル』だと思いたい」という感覚に繋がっているようだ
その斬新さにとにかく驚かされたし、さらに、人間の「存在」や「人生」について深く問う内容になっている点も良かったなと思う
自己紹介記事
あわせて読みたい
ルシルナの入り口的記事をまとめました(プロフィールやオススメの記事)
当ブログ「ルシルナ」では、本と映画の感想を書いています。そしてこの記事では、「管理者・犀川後藤のプロフィール」や「オススメの本・映画のまとめ記事」、あるいは「オススメ記事の紹介」などについてまとめました。ブログ内を周遊する参考にして下さい。
あわせて読みたい
【全作品読了・視聴済】私が「読んできた本」「観てきた映画」を色んな切り口で分類しました
この記事では、「今まで私が『読んできた本』『観てきた映画』を様々に分類した記事」を一覧にしてまとめました。私が面白いと感じた作品だけをリストアップしていますので、是非本・映画選びの参考にして下さい。
どんな人間がこの記事を書いているのかは、上の自己紹介記事をご覧ください
記事中の引用は、映画館で取ったメモを参考にしているので、正確なものではありません
映画『ニッツ・アイランド』は、「オンラインゲーム『DayZ』内でドキュメンタリー映画を撮る」という、思いついたって普通はやらないだろうイカれた企画を実現させた作品
久しぶりにちょっとぶっ飛んだドキュメンタリー映画を観たなという感じだった。「ドキュメンタリー」に限る話ではないが、「表現方法」なんてあらゆる領域で既に出尽くしていて、「新しいもの」なんかもう生まれないような気もしていたのだけど、もちろんそんなことはない。しかしそれにしても、「よくこんなこと考えて、やろうと思ったものだ」と感じさせられた。思いついたとしても、やらないだろ、普通こんなこと。
あわせて読みたい
【抵抗】若者よ、映画『これは君の闘争だ』を見ろ!学校閉鎖に反対する学生運動がブラジルの闇を照らす
映画『これは君の闘争だ』で描かれるのは、厳しい状況に置かれた貧困層の学生たちによる公権力との闘いだ。「貧困層ばかりが通う」とされる公立校が大幅に再編されることを知った学生が高校を占拠して立て籠もる決断に至った背景を、ドキュメンタリー映画とは思えないナレーションで描く異色作
「オンラインゲーム内でドキュメンタリー映画を撮る」という、本作『ニッツ・アイランド』の基本情報
この記事では既に「オンラインゲーム内でドキュメンタリー映画を撮る」という本作の設定に触れてしまっているが、それを知らない人に本作の説明をする際、「生物も自然も一切画面に映らないドキュメンタリー映画」なんて言い方も出来ると思う。普通に考えれば、そんなことまずあり得ないだろう。「ドキュメンタリー映画」というのは、その対象が何であれ「現実世界に存在するもの」を映すはずなので、「生物も自然も一切画面に映らないドキュメンタリー映画」なんてものをイメージするのは難しいはずだ。
しかし、「ゲーム」や「仮想現実」などの登場によって、「現実世界とは異なる場所で起こっている出来事を映し出す」みたいなこともあり得る世の中になった。いやホント、「なるほどなぁ」、と思う。本作を観たことで、「確かにこんなやり方もあるよな」と感じさせられたのだが、そうそう思いつくアイデアではないはずだ。まずはその点に驚かされてしまった。
というわけで本作『ニッツ・アイランド』は、最初から最後まで「オンラインゲーム内」のみで完結するドキュメンタリー映画である。少なくとも私はそんなドキュメンタリー映画を観たことがないし、異色中の異色と言っていいんじゃないかと思う。
あわせて読みたい
【無謀】映画『ビヨンド・ユートピア 脱北』は、脱北ルートに撮影隊が同行する衝撃のドキュメンタリー
北朝鮮からの脱北者に同行し撮影を行う衝撃のドキュメンタリー映画『ビヨンド・ユートピア 脱北』は、再現映像を一切使用していない衝撃的な作品だ。危険と隣り合わせの脱北の道程にカメラもついて回り、北朝鮮の厳しい現状と共に、脱北者が置かれた凄まじい状況を映し出す内容に驚かされてしまった
ちなみに、この点は先に触れておくべきだと思うが、私は「ゲーム」を一切しない。オンラインゲームだけではなく、スマホゲームやPlayStation、Nintendo Switchなんかもたぶんやったことがないと思う。スマホで詰将棋やシンプルなパズルゲーム(ガチャとか課金が無いようなタイプ)を多少やるぐらいだ。そんなわけで、オンラインゲームに関する知識が一切ないので、本作の感想でも何か的外れなことを書いてしまう可能性がある。そういう箇所があったとしても、「単なる知識不足」と認識してほしい。
さて、本作はド頭からゲーム画面のまま始まり、「いちプレイヤーとしてゲーム内に存在する撮影班が様々な人に話を聞く」というスタイルで展開されていく。で、本作には、「これが何のゲームで、どんな風に物語が進んでいく設定なのか」みたいな説明は一切出てこない。このゲームをプレイしたことがある人はもちろん、画面を見るだけでピンと来るのだろうが、そうではない人にはその辺の基本情報はまったく提示されないまま進んでいくというわけだ。そんなわけで、その辺りの情報については、公式HPやネットの検索などで補うことにしようと思う。
本作の舞台になっているのは「DayZ(デイジー)」というゲームだそうだ。公式HPには「サバイバル・ゲーム」としか書かれていないのでネットで調べてみたのだが、Wikipediaでは次のように紹介されていた。
あわせて読みたい
【実話】映画『ダム・マネー ウォール街を狙え!』は「株で大儲けした」だけじゃない痛快さが面白い
ダム・マネー ウォール街を狙え!』では、株取引で莫大な利益を得た実在の人物が取り上げられる。しかし驚くべきは「大金を得たこと」ではない。というのも彼はなんと、資産5万ドルの身にも拘らず、ウォール街の超巨大資本ファンドを脅かす存在になったのである! 実話とは思えない、あまりにも痛快な物語だった
プレイヤーは架空のNIS諸国のチェルナルスで、謎の疫病により多くの人間が暴力的になったゾンビを相手に生き延びなければならない。サバイバーのプレイヤーは食糧、水、武器、薬を手に入れ、ゾンビを殺したり避けたりし、または他のプレイヤーとも殺し合いや回避をしたり、時には協力をして生き残らなければならない。
確かに画面内にはゾンビみたいな奴が出てきた気がする。観ている時はよく分からなかったが、あのゾンビを倒したりしつつ生き残りを図るゲームなのだろう。
さて、私の理解が正しければ、オンラインゲームのプレイヤーは別に「ゲームの目的に沿った行動」をしなければならないわけではない。ゲームの設定は、あくまでも「こういう世界観ですよ」という説明でしかなく、究極的には「何もせずに、ゲーム内の世界にただいるだけ」でも別にいいのだ。実際に、作中で取り上げられていたプレイヤーの1人は、「自分は不眠症で、毎日仕事終わりにここに来ては、1人で散歩している」と言っていた。この人物は既に、1万時間もこのゲーム内で過ごしているそうだ。計算してみると、仮に24時間ずっとゲーム内にいると仮定しても416日。1日5時間で計算すれば2000日、約5年半である。1万時間ずっと散歩していたわけではないだろうが、それにしても凄い時間の使い方だなと私には感じられる。
あわせて読みたい
【挑戦】手足の指を失いながら、今なお挑戦し続ける世界的クライマー山野井泰史の”現在”を描く映画:『…
世界的クライマーとして知られる山野井泰史。手足の指を10本も失いながら、未だに世界のトップをひた走る男の「伝説的偉業」と「現在」を映し出すドキュメンタリー映画『人生クライマー』には、小学生の頃から山のことしか考えてこなかった男のヤバい人生が凝縮されている
そんなわけで、オンラインゲームの世界では「許容されている範囲内で何をしても(しなくても)いい」というわけだ。であれば、その中で「様々な趣味趣向で繋がったコミュニティ」が生まれるのも当然の流れだろう。散歩仲間を見つけてもいいし、一緒に農業をやってもいいし、勝手に自警団みたいなものを組んでみてもいい。どのオンラインゲームにもそういうコミュニティが存在するのかはよく分からないが、少なくとも本作の舞台になっている「DayZ(デイジー)」にはそういうものがたくさんあるようだ。
そしてだからこそ、ドキュメンタリー映画として成立する余地が生まれる。ゲーム内の世界は確かに「現実」ではないが、「ある一定の範囲内で『現実』みたいに扱える空間」でもあるからだ。しかも、「『現実世界』では許されないこと」だってゲーム内では許容されたりするだろうから、そういう観点から考えれば、「現実世界」以上に「人間」の姿がより深く垣間見えるとも言えるかもしれない。面白いところに目を付けたものだなと感じさせられた。
ゲーム内の様々なプレイヤーについて
さて、サバイバル・ゲームだから当然と言えば当然だが、「DayZ(デイジー)」内では「殺人」が許容されている。これは「現実世界ではあり得ない状況」と言えるだろう。プレイヤーはもちろん、ゾンビを倒すために武器などを獲得するわけだが、それを使って他のプレイヤーを殺すことも出来る。そのため、「『殺人が許容されている』という、『現実世界』とは違った境界条件が設定された世界での振る舞い」には、より強く「人間性」が浮かび上がるんじゃないかと思う。
あわせて読みたい
【感想】映画『すずめの戸締まり』(新海誠)は、東日本大震災後を生きる私達に「逃げ道」をくれる(松…
新海誠監督の『すずめの戸締まり』は、古代神話的な設定を現代のラブコメに組み込みながら、あまりに辛い現実を生きる人々に微かな「逃げ道」を指し示してくれる作品だと思う。テーマ自体は重いが、恋愛やコメディ要素とのバランスがとても良く、ロードムービー的な展開もとても魅力的
個人的に最も興味深く感じられたのが、「DayZ(デイジー)」内で出会ったというある男女のやり取りだ。それぞれ、ベルリンとオーストラリアからアクセスしているらしいのだが、女性の方がこんなことを言っていた。
私はビーガンで、現実世界では動物を殺さない生活をしてるけど、ここでは人を殺してる。
なるほどなぁ、と思う。別にゲームだから「人を殺している」こと自体はいいのだが、彼女はその事実を「自分はビーガンなのに」という認識と共に捉えているというわけだ。この感覚は興味深いなと思う。本人の中でどんな風に折り合いがついているのか気になるところである。
あわせて読みたい
【考察】アニメ映画『虐殺器官』は、「便利さが無関心を生む現実」をリアルに描く”無関心ではいられない…
便利すぎる世の中に生きていると、「この便利さはどのように生み出されているのか」を想像しなくなる。そしてその「無関心」は、世界を確実に悪化させてしまう。伊藤計劃の小説を原作とするアニメ映画『虐殺器官』から、「無関心という残虐さ」と「想像することの大事さ」を知る
また男性の方は、
僕は子どもを寝かしつけてからここに来ている。正直、子どもにはオンラインゲームをしてほしいとは思わない。
と話していた。彼自身は、もう抜け出せないぐらいこのゲーム世界に依存してしまっているらしく、
リアルなゲームは決して悪いとは思わないけど、「現実世界への興味を失わせる」というデメリットがある。
みたいに認識しているようである。「子どもには勧めない」と思いつつ、「それでも自分はここから離れられない」とも考えているというわけだ。このような感覚もまた、実に興味深いと感じさせられた。
あわせて読みたい
【感想】映画『竜とそばかすの姫』が描く「あまりに批判が容易な世界」と「誰かを助けることの難しさ」
SNSの登場によって「批判が容易な社会」になったことで、批判を恐れてポジティブな言葉を口にしにくくなってしまった。そんな世の中で私は、「理想論だ」と言われても「誰かを助けたい」と発信する側の人間でいたいと、『竜とそばかすの姫』を観て改めて感じさせられた
さて、また別の話をしよう。私は「DayZ(デイジー)」がサバイバル・ゲームであることを鑑賞後に知ったので、観ている際には特に何とも思っていなかったのだが、映画冒頭で撮影班が取材交渉を行った組織が、実はかなりぶっ飛んだ集団なのだと後から理解できた。というのもその組織は、「すべての生き物を殺さない」という信条を有しているのだ。サバイバル・ゲーム内に「すべての生き物を殺さない」と決めているコミュニティが存在することも面白いし、また、「彼らにとって『ゾンビ』は『生き物』に含まれるのだろうか?」みたいな点もまた気になるところである。
そしてもちろんだが、それとは真逆のスタンスを持つ集団も存在した。「深夜の闇」と名乗る者たちで、女性リーダーがグループを統べている。撮影班一行が取材場所として指定された建物に入ると、武装し顔を隠した面々が、半裸で机上に横たわる男性を取り囲むようにして彼らを迎え入れた。半裸の男性が誰なのかよく分からなかったが、小声で「助けて」と命乞いをしている音声が入っていたので、一般プレイヤーなんじゃないかと思う(しかしそもそもだが、このゲームの中でプレイヤーが命を落としたらどうなるのか、私はよく理解していない)。その男性は彼らにとっての「今日の獲物」らしく、なんと、インタビューの最中、メンバーの1人が男性に銃を発射し殺してしまった。詳しいことはよく分からないものの、そういう残虐な行為を好む者たちが共に行動している集団らしい。
撮影班はそもそも、「この集団が『人食い』と呼ばれている」という噂を聞きつけ取材を申し込んだそうなのだが、まさに噂通りの野蛮さだった。そもそも、本作『ニッツ・アイランド』は「DayZ(デイジー)」内の「ある島」を舞台にしているのだが、「深夜の闇」はどうやらその島を「自分たちのもの」と捉えているようである。そのため、自宅の庭なのだろう場所にピーマンを植えていた男性を捕まえては、「『私たちの土地』にピーマンなんかを植えたのか?」と難癖をつけ、そのまま殺してしまっていた。なかなかムチャクチャなことをやっているなと思う。
あわせて読みたい
【不穏】大友克洋の漫画『童夢』をモデルにした映画『イノセンツ』は、「無邪気な残酷さ」が恐ろしい
映画『イノセンツ』は、何がどう展開するのかまるで分からないまま進んでいく実に奇妙な物語だった。非現実的な設定で描かれるのだが、そのことによって子どもたちの「無邪気な残酷さ」が一層リアルに浮き彫りにされる物語であり、「意図的に大人が排除された構成」もその一助となっている
彼女たちは、「出自こそ様々だが、見ての通り『殺しが大好き』という共通点で集まっていて、思うがまま好き放題に暴れまわっている」と話していた。サバイバル・ゲームなのだから、そういうスタンスも当然許容されるべきだろう。とはいえやはり、「異様」な感じはしてしまった。ただそれはそれとして、先程も言及した通り、ゲームの世界だからこそ「殺しが大好き」なんてことを平気で口に出来るとも言える。そういう意味で、「人間性」がより強く浮き彫りにされる環境なのだろうとも感じさせられた。
「オンラインゲーム内の世界は『リアル』なのか?」に対する様々な考え方
本作『ニッツ・アイランド』の撮影班はしばらくの間、「どんなプレイヤーがいるのか?」「誰に取材アポを取るのが良いか?」みたいなことを把握するのに時間を費やしたのではないかと思う。そんな風にしてゲーム内のことについても理解を深めていったのだろうと思わせる描写がしばらく続く。そして次第に、「恐らくこれこそが、本作を作ろうと考えた動機なのではないか?」と感じさせるものが見えてくるようになる。それは、「オンラインゲーム内の世界は『リアル』なのか?」という問いに集約できるだろう。中盤以降は、これに関する問いかけを直接的に投げ掛けることでプレイヤーの認識を確かめようとしていたように思う。
さて、多くのプレイヤーがこの問いに答えていたのだが、まず大前提として、「彼らは全員、『これはゲームであり、リアルではない』と理解している」ということはきちんと認識しておいてほしい。少なくとも、本作で撮影班の取材に答えた人たちの中には、それらを混同している人はいなかったと思う。この点を理解した上で以降の文章を読んでいただきたい。
あわせて読みたい
【感想】アニメ映画『パーフェクトブルー』(今敏監督)は、現実と妄想が混在する構成が少し怖い
本作で監督デビューを果たした今敏のアニメ映画『パーフェクトブルー』は、とにかくメチャクチャ面白かった。現実と虚構の境界を絶妙に壊しつつ、最終的にはリアリティのある着地を見せる展開で、25年以上も前の作品だなんて信じられない。今でも十分通用するだろうし、81分とは思えない濃密さに溢れた見事な作品である
個人的に印象的だったのは、「現実のことよりもよく覚えている」「ここでの冒険は記憶としてちゃんと残る」みたいなことを主張する人が結構いたことだ。確かに脳の仕組みから考えても、「より関心の強いもの、より強く刺激された出来事を覚えておく」ようになっていると思う。そして多くのプレイヤーが、このゲーム内で多くの時間を過ごしているわけで、であれば「脳内の記憶の中で『ゲーム内の出来事』が最も鮮明だ」なんてことも普通に起こり得るだろう。
そしてだとすれば、「ゲームの世界こそが『リアル』である」という認識に近づいていってもおかしくないようにも思う。
さてそもそもだが、ゲームをやらない私には、「風景だけなら、かなりのリアリティを感じさせる」という程度には本物っぽくて驚かされてしまった。人間の動きを含めるとまだまだ不自然さは多く、プレイヤー込みで認識するとどうしても「バーチャルの世界だ」という感覚になってしまうが、風景については、上手くは表現できないものの、「『現実世界』とはまた違ったリアルさ」を感じさせる仕上がりになっているなという印象である。こういう部分については恐らくもっと進化していくはずだし、であれば「ゲーム内こそが『リアル』である」という感覚がさらに強化されても全然おかしくないはずだ。私たちは錯視画像を見た時に、「頭では『そんなはずがない』と思っていても、知覚が騙されてしまう」という経験をするが、それと同じようなことが、バーチャルの世界に対しても起こる可能性は全然あるんじゃないかと思っている。
あわせて読みたい
【戸惑】人間の脳は摩訶不思議。意識ではコントロールできない「無意識の領域」に支配されている:『あ…
我々は決断や選択を「自分の意思」で行っていると感じるが、脳科学の研究はそれを否定している。我々に「自由意志」などない。「脳」の大部分は「意識以外のもの」に支配され、そこに「意識」はアクセスできないという驚愕の実態を『あなたの知らない脳』から学ぶ
ただそれはそれとして、「視覚以外の感覚があまりにも追いついていない」とも感じはする。雨が当たる感触、風の冷たさ、漂う匂いなんかをバーチャルの世界で実感できるのは、まだまだ大分先のことになるだろう。確かに「視覚情報」の進化は凄まじいが、それ以外の感覚も同程度のレベルに達しない限り、「リアルな世界」と捉えるのはまだまだ難しいように思う。
とはいえ、本作を観ていてもう1つ感じたことは、「『仲間がいること』こそが『リアル』の要件なのかもしれない」ということだ。何人かのプレイヤーが「現実逃避」という言葉を使っていたのが印象的だったが、オンラインゲームにのめり込む要因の1つとして、やはり「現実世界から逃げ出したい」という感覚は無視できないようである。どんな「現実」から逃避しているのか、それは人それぞれ違うだろうが、恐らく共通しているのは「『現実世界』に仲間はいない」ということだと思う。そして、ゲーム内に「信頼できる仲間」(実際にそういう表現を使っているプレイヤーがいた)がいるのであれば、「現実世界」ではなく「ゲーム内世界」の方をより「リアル」と感じてしまうのも当然な感じはする。
もちろん、「そんなことは本作を観なくたって何となく想像できる」なんて感じる人もいるだろう。ただ、実際に膨大な時間をゲーム内世界に費やし、そこでの人間関係の中で生きているプレイヤーの言葉を聞くと説得力があるなと思う。
あわせて読みたい
【驚嘆】この物語は「AIの危険性」を指摘しているのか?「完璧な予知能力」を手にした人類の過ち:『預…
完璧な未来予知を行えるロボットを開発し、地震予知のため”だけ”に使おうとしている科学者の自制を無視して、その能力が解放されてしまう世界を描くコミック『預言者ピッピ』から、「未来が分からないからこそ今を生きる価値が生まれるのではないか」などについて考える
ちなみに、ゲーム内では「牧師」であるプレイヤーは、実際にはマッサージ師として働いているそうで(ただしこれも自己申告なので真偽は不明だ)、「リアルの世界でゲームの話をしたことはない」のだそうだ。また別のプレイヤーは、「『現実』から離れたくてここにいるわけで、『現実の自分』とは違う形で存在している」みたいなことを言ってもいた。そういう感覚があればやはり、「ゲームの世界を『リアル』だと思いたい」という気持ちが強くなるのも当然だろう。
そんな、ゲームプレイヤーたちの様々な認識が理解できる、実に興味深い映画だった。
あわせて読みたい
【全作品視聴済】私が観てきたドキュメンタリー映画を色んな切り口で分類しました
この記事では、「今まで私が観てきたドキュメンタリー映画を様々に分類した記事」を一覧にしてまとめました。私が面白いと感じた作品だけをリストアップしていますので、是非映画選びの参考にして下さい。
最後に
あわせて読みたい
【絶望】満員続出の映画『どうすればよかったか?』が描き出す、娘の統合失調症を認めない両親の不条理
たった4館から100館以上にまで上映館が拡大した話題の映画『どうすればよかったか?』を公開2日目に観に行った私は、「ドキュメンタリー映画がどうしてこれほど注目されているのだろうか?」と不思議に感じた。統合失調症を発症した姉を中心に家族を切り取る本作は、観る者に「自分だったらどうするか?」という問いを突きつける
本作はまず「ドキュメンタリー映画としての斬新さ」が圧倒的だったなと思う。そしてその上で、「人間の『存在』や『人生』などについて色々と考えさせるテーマ性」にも優れていると感じさせられた。正直なところ、「メチャクチャ面白い映画」というわけではなかったのだが、「オンラインゲーム上でドキュメンタリーを撮影する」というアイデアと、それを実現させた実行力がとにかく素晴らしかったので、その点だけでも十分評価できるなと思っている。
ちなみに、撮影班はなんと、ゲーム内で963時間も過ごしたそうだ。ただ、本作を撮影していた期間はコロナ禍真っ只中だったそうで、逆に言えば「ゲーム内でドキュメンタリー映画を撮るしかなかった」みたいな状況だったのかもしれない。また、コロナ禍だったことで、多くの人がオンラインゲームの世界に流れたりもしただろう。そういう意味でも、より多様な人間性が映し出されていると言えるのかもしれない。
あわせて読みたい
Kindle本出版しました!『天才・アインシュタインの生涯・功績をベースに、簡単過ぎない面白科学雑学を…
Kindleで本を出版しました。タイトルは、『天才・アインシュタインの生涯・功績をベースに、簡単過ぎない面白科学雑学を分かりやすく書いた本:相対性理論も宇宙論も量子論も』です。科学や科学者に関する、文系の人でも読んでもらえる作品に仕上げました。そんな自著について紹介をしています。
次にオススメの記事
あわせて読みたい
【狂気】映画『キムズビデオ』はイカれてる!監督の映画愛が”奇跡的”に好転したあり得ない実話
映画『キムズビデオ』は、「伝説のレンタルビデオ店『キムズビデオ』の元会員である映画狂の監督が、イタリアで死蔵されていたコレクションを”奪還”する」という、ドキュメンタリー映画とは思えないムチャクチャさに溢れた1本だった。予告編もイカれてたが、本編はさらに狂ってて、よくこんな作品が成立したものだなと思う
あわせて読みたい
【リアル】多様性を受け入れる気がない差別主義者のヘイトクライムを描く映画『ソフト/クワイエット』
映画『ソフト/クワイエット』は、「白人至上主義者の女性たちがムチャクチャする」という内容なのだが、実は「多様性」について再考を迫るようなストーリーでもあり、実に興味深かった。さらに「全編ワンカット」というスタイルで撮られており、緊張感や没入感も圧倒的なのだ。凄い映画を観たなと感じさせられた
あわせて読みたい
【ネタバレ】フィンランド映画『ハッチング』が描くのは、抑え込んだ悪が「私の怪物」として生誕する狂気
映画『ハッチング―孵化―』は、「卵から孵った怪物を少女が育てる」という狂気的な物語なのだが、本作全体を『ジキルとハイド』的に捉えると筋の通った解釈をしやすくなる。自分の内側に溜まり続ける「悪」を表に出せずにいる主人公ティンヤの葛藤を起点に始まる物語であり、理想を追い求める母親の執念が打ち砕かれる物語でもある
あわせて読みたい
【洗脳】激しく挑発的だった映画『クラブゼロ』が描く、「食べないこと」を「健康」と言い張る狂気(主…
映画『クラブゼロ』は、「健康的な食事」として「まったく食べないこと」を推奨する女性教師と、彼女に賛同し実践する高校生を描き出す物語。実に狂気的な設定ではあるが、しかし同時に、本作で描かれているのは「日々SNS上で繰り広げられていること」でもある。そんな「現代性」をSNSを登場させずに描き出す、挑発的な作品だ
あわせて読みたい
【忌避】小児性愛者から子どもを救え!映画『サウンド・オブ・フリーダム』が描く衝撃の実話(主演:ジ…
映画『サウンド・オブ・フリーダム』は、世界的に大問題となっている「子どもの人身売買」を扱った、実話を基にした物語である。「フィクションとしか思えないようなおとり捜査」を実行に移した主人公の凄まじい奮闘と、「小児性愛者の変態的欲望」の餌食になる悲惨な子どもたちの現実をリアルに描き出していく
あわせて読みたい
【変態】映画『コンセント/同意』が描く50歳と14歳少女の”恋”は「キモっ!」では終われない
映画『コンセント/同意』は、50歳の著名小説家に恋をした14歳の少女が大人になってから出版した「告発本」をベースに作られた作品だ。もちろん実話を元にしており、その焦点はタイトルの通り「同意」にある。自ら望んで36歳年上の男性との恋に踏み出した少女は、いかにして「同意させられた」という状況に追い込まれたのか?
あわせて読みたい
【あらすじ】老夫婦の”穏やかな日常”から核戦争の恐怖を描くアニメ映画『風が吹くとき』の衝撃
一軒家の中だけで展開される老夫婦の日常から「核戦争」の危機をリアルに描き出す映画『風が吹くとき』は、日本では1987年に公開された作品なのだが、今まさに観るべき作品ではないかと。世界的に「核戦争」の可能性が高まっているし、また「いつ起こるか分からない巨大地震」と読み替えても成立する作品で、実に興味深かった
あわせて読みたい
【実話】映画『キリング・オブ・ケネス・チェンバレン』が描く、白人警官による黒人射殺事件
映画『キリング・オブ・ケネス・チェンバレン』は、2011年に起こった実際の事件を元にした作品である。何の罪もない黒人男性が、白人警官に射殺されてしまったのだ。5時22分から始まる状況をほぼリアルタイムで描き切る83分間の物語には、役者の凄まじい演技も含め、圧倒されてしまった
あわせて読みたい
【狂気】異質なホラー映画『みなに幸あれ』(古川琴音主演)は古い因習に似せた「社会の異様さ」を描く
古川琴音主演映画『みなに幸あれ』は、”シュールさ”さえ感じさせる「異質なホラー映画」だ。「村の因習」というよくあるパターンをベースに据えつつ、そこで展開される異様な状況が、実は「私たちが生きる世界」に対応しているという構成になっている。「お前の物語だからな」と終始突きつけられ続ける作品だ
あわせて読みたい
【衝撃】ウクライナでのホロコーストを描く映画『バビ・ヤール』は、集めた素材映像が凄まじすぎる
ソ連生まれウクライナ育ちの映画監督セルゲイ・ロズニツァが、「過去映像」を繋ぎ合わせる形で作り上げた映画『バビ・ヤール』は、「単一のホロコーストで最大の犠牲者を出した」として知られる「バビ・ヤール大虐殺」を描き出す。ウクライナ市民も加担した、そのあまりに悲惨な歴史の真実とは?
あわせて読みたい
【狂気】入管の収容所を隠し撮りした映画『牛久』は、日本の難民受け入れ問題を抉るドキュメンタリー
映画『牛久』は、記録装置の持ち込みが一切禁じられている入管の収容施設に無許可でカメラを持ち込み、そこに収容されている難民申請者の声を隠し撮りした映像で構成された作品だ。日本という国家が、国際標準と照らしていかに酷い振る舞いをしているのかが理解できる衝撃作である
あわせて読みたい
【実話】アメリカの有名なシリアルキラーを基にした映画『グッド・ナース』の理解を拒む凄まじさ(主演…
実際に起こった連続殺人事件を基にした映画『グッド・ナース』は、「何が描かれているのか分からない」という不穏さがずっと付きまとう異様な作品だった。「事件そのもの」ではなく、ある2人の人物に焦点が当てられる展開から、人間のあまりに深淵な狂気と葛藤が抉り出されている
あわせて読みたい
【狂気】ホロコーストはなぜ起きた?映画『ヒトラーのための虐殺会議』が描くヴァンゼー会議の真実
映画『ヒトラーのための虐殺会議』は、ホロコーストの計画について話し合われた「ヴァンゼー会議」を描き出す作品だ。唯一1部だけ残った議事録を基に作られた本作は、「ユダヤ人虐殺」をイベントの準備でもしているかのように「理性的」に計画する様を映し出す。その「狂気」に驚かされてしまった。
あわせて読みたい
【驚愕】本屋大賞受賞作『同志少女よ、敵を撃て』(逢坂冬馬)は凄まじい。戦場は人間を”怪物”にする
デビュー作で本屋大賞を受賞した『同志少女よ、敵を撃て』(逢坂冬馬)は、デビュー作であることを抜きにしても凄まじすぎる、規格外の小説だった。ソ連に実在した「女性狙撃兵」の視点から「独ソ戦」を描く物語は、生死の境でギリギリの葛藤や決断に直面する女性たちのとんでもない生き様を活写する
あわせて読みたい
【倫理】アート体験の行き着く未来は?映画『クライムズ・オブ・ザ・フューチャー』が描く狂気の世界(…
「『痛み』を失った世界」で「自然発生的に生まれる新たな『臓器』を除去するライブパフォーマンス」を行うソール・テンサーを主人公にした映画『クライムズ・オブ・ザ・フューチャー』は、すぐには答えの見出しにくい「境界線上にある事柄」を挑発的に描き出す、実に興味深い物語だ
あわせて読みたい
【衝撃】これが実話とは。映画『ウーマン・トーキング』が描く、性被害を受けた女性たちの凄まじい決断
映画『ウーマン・トーキング』の驚くべき点は、実話を基にしているという点だ。しかもその事件が起こったのは2000年代に入ってから。とある宗教コミュニティ内で起こった連続レイプ事件を機に村の女性たちがある決断を下す物語であり、そこに至るまでの「ある種異様な話し合い」が丁寧に描かれていく
あわせて読みたい
【性加害】映画『SHE SAID その名を暴け』を観てくれ。#MeToo運動を生んだ報道の舞台裏(出演:キャリ…
「#MeToo」運動のきっかけとなった、ハリウッドの絶対権力者ハーヴェイ・ワインスタインを告発するニューヨーク・タイムズの記事。その取材を担った2人の女性記者の奮闘を描く映画『SHE SAID その名を暴け』は、ジャニー喜多川の性加害問題で揺れる今、絶対に観るべき映画だと思う
あわせて読みたい
【純真】ゲイが犯罪だった時代が舞台の映画『大いなる自由』は、刑務所内での極深な人間ドラマを描く
男性同士の恋愛が犯罪であり、ゲイの男性が刑法175条を理由に逮捕されてしまう時代のドイツを描いた映画『大いなる自由』は、確かに同性愛の物語なのだが、実はそこに本質はない。物語の本質は、まさにタイトルにある通り「自由」であり、ラストシーンで突きつけられるその深い問いかけには衝撃を受けるだろう
あわせて読みたい
【感想】どんな話かわからない?難しい?ジブリ映画『君たちはどう生きるか』の考察・解説は必要?(監…
宮崎駿最新作であるジブリ映画『君たちはどう生きるか』は、宮崎アニメらしいファンタジックな要素を全開に詰め込みつつ、「生と死」「創造」についても考えさせる作品だ。さらに、「自分の頭の中から生み出されたものこそ『正解』」という、創造物と向き合う際の姿勢についても問うているように思う
あわせて読みたい
【あらすじ】アリ・アスター監督映画『ミッドサマー』は、気持ち悪さと怖さが詰まった超狂ホラーだった
「夏至の日に映画館で上映する」という企画でようやく観ることが叶った映画『ミッドサマー』は、「私がなんとなく想像していたのとはまるで異なる『ヤバさ』」に溢れる作品だった。いい知れぬ「狂気」が随所で描かれるが、同時に、「ある意味で合理的と言えなくもない」と感じさせられる怖さもある
あわせて読みたい
【実話】ポートアーサー銃乱射事件を扱う映画『ニトラム』が示す、犯罪への傾倒に抗えない人生の不条理
オーストラリアで実際に起こった銃乱射事件の犯人の生い立ちを描く映画『ニトラム/NITRAM』は、「頼むから何も起こらないでくれ」と願ってしまうほどの異様な不穏さに満ちている。「社会に順応できない人間」を社会がどう受け入れるべきかについて改めて考えさせる作品だ
あわせて読みたい
【あらすじ】映画『夕方のおともだち』は、「私はこう」という宣言からしか始まらない関係性の”純度”を描く
「こんな田舎にはもったいないほどのドM」と評された男が主人公の映画『夕方のおともだち』は、SM嬢と真性ドMの関わりを通じて、「宣言から始まる関係」の難しさを描き出す。「普通の世界」に息苦しさを感じ、どうしても馴染めないと思っている人に刺さるだろう作品
あわせて読みたい
【執念】「桶川ストーカー事件」で警察とマスコミの怠慢を暴き、社会を動かした清水潔の凄まじい取材:…
『殺人犯はそこにいる』(文庫X)で凄まじい巨悪を暴いた清水潔は、それよりずっと以前、週刊誌記者時代にも「桶川ストーカー殺人事件」で壮絶な取材を行っていた。著者の奮闘を契機に「ストーカー規制法」が制定されたほどの事件は、何故起こり、どんな問題を喚起したのか
あわせて読みたい
【考察】ヨネダコウ『囀る鳥は羽ばたかない』は、BLの枠組みの中で「歪んだ人間」をリアルに描き出す
2巻までしか読んでいないが、ヨネダコウのマンガ『囀る鳥は羽ばたかない』は、「ヤクザ」「BL」という使い古されたフォーマットを使って、異次元の物語を紡ぎ出す作品だ。BLだが、BLという外枠を脇役にしてしまう矢代という歪んだ男の存在感が凄まじい。
あわせて読みたい
【未知】「占い」が占い以外の効果を有するように、UFOなど「信じたいものを信じる」行為の機能を知れる…
「占い」に「見透かされたから仕方なく話す」という効用があるように、「『未知のもの』を信じる行為」には「『否定されたという状態』に絶対に達しない」という利点が存在する。映画『虚空門GATE』は、UFOを入り口に「『未知のもの』を信じる行為」そのものを切り取る
あわせて読みたい
【幸福】「死の克服」は「生の充実」となり得るか?映画『HUMAN LOST 人間失格』が描く超管理社会
アニメ映画『HUMAN LOST 人間失格』では、「死の克服」と「管理社会」が分かちがたく結びついた世界が描かれる。私たちは既に「緩やかな管理社会」を生きているが、この映画ほどの管理社会を果たして許容できるだろうか?そしてあなたは、「死」を克服したいと願うだろうか?
あわせて読みたい
【差別】映画『チェチェンへようこそ ゲイの粛清』の衝撃。プーチンが支持する国の蛮行・LGBT狩り
プーチン大統領の後ろ盾を得て独裁を維持しているチェチェン共和国。その国で「ゲイ狩り」と呼ぶしかない異常事態が継続している。映画『チェチェンへようこそ ゲイの粛清』は、そんな現実を命がけで映し出し、「現代版ホロコースト」に立ち向かう支援団体の奮闘も描く作品
あわせて読みたい
【異次元】『ハイパーハードボイルドグルメリポート』は本も読め。衝撃すぎるドキュメンタリーだぞ
テレビ東京の上出遼平が作る、“異次元のグルメ番組”である「ハイパーハードボイルドグルメリポート」の書籍化。映像からも異様さが伝わる「激ヤバ地」に赴き、そこに住む者と同じモノを食べるという狂気が凄まじい。私がテレビで見た「ケニアのゴミ山の少年」の話は衝撃的だった
あわせて読みたい
【衝撃】「仕事の意味」とは?天才・野崎まどが『タイタン』で描く「仕事をしなくていい世界」の危機
「仕事が存在しない世界」は果たして人間にとって楽園なのか?万能のAIが人間の仕事をすべて肩代わりしてくれる世界を野崎まどが描く『タイタン』。その壮大な世界観を通じて、現代を照射する「仕事に関する思索」が多数登場する、エンタメ作品としてもド級に面白い傑作SF小説
あわせて読みたい
【証言】ナチスドイツでヒトラーに次ぐナンバー2だったゲッベルス。その秘書だった女性が歴史を語る映画…
ナチスドイツナンバー2だった宣伝大臣ゲッベルス。その秘書だったブルンヒルデ・ポムゼルが103歳の時にカメラの前で当時を語った映画『ゲッベルスと私』には、「愚かなことをしたが、避け難かった」という彼女の悔恨と教訓が含まれている。私たちは彼女の言葉を真摯に受け止めなければならない
あわせて読みたい
【芸術】実話を下敷きに描く映画『皮膚を売った男』は、「アートによる鮮やかな社会問題風刺」が見事
「シリア難民の背中にタトゥーを彫り芸術作品として展示する」と聞くと非常に不謹慎に感じられるだろうが、彫ったのが国家間の移動を自由にする「シェンゲンビザ」だという点が絶妙な皮肉。実話をベースにした映画『皮膚を売った男』の、アートによる社会問題提起の見事な鮮やかさ
あわせて読みたい
【無謀】映画『ビヨンド・ユートピア 脱北』は、脱北ルートに撮影隊が同行する衝撃のドキュメンタリー
北朝鮮からの脱北者に同行し撮影を行う衝撃のドキュメンタリー映画『ビヨンド・ユートピア 脱北』は、再現映像を一切使用していない衝撃的な作品だ。危険と隣り合わせの脱北の道程にカメラもついて回り、北朝鮮の厳しい現状と共に、脱北者が置かれた凄まじい状況を映し出す内容に驚かされてしまった
あわせて読みたい
【衝撃】洗脳を自ら脱した著者の『カルト脱出記』から、「社会・集団の洗脳」を避ける生き方を知る
「聖書研究に熱心な日本人証人」として「エホバの証人」で活動しながら、その聖書研究をきっかけに自ら「洗脳」を脱した著者の体験を著した『カルト脱出記』。広い意味での「洗脳」は社会のそこかしこに蔓延っているからこそ、著者の体験を「他人事」だと無視することはできない
あわせて読みたい
【実話】映画『アウシュビッツ・レポート』が描き出す驚愕の史実。世界はいかにホロコーストを知ったのか?
映画『アウシュヴィッツ・レポート』は、アウシュビッツ強制収容所から抜け出し、詳細な記録と共にホロコーストの実態を世界に明らかにした実話を基にした作品。2人が持ち出した「アウシュビッツ・レポート」こそが、ホロコーストについて世界が知るきっかけだったのであり、そんな史実をまったく知らなかったことにも驚かされた
あわせて読みたい
【凄絶】北朝鮮の”真実”を描くアニメ映画。強制収容所から決死の脱出を試みた者が語る驚愕の実態:『ト…
在日コリアン4世の監督が、北朝鮮脱北者への取材を元に作り上げた壮絶なアニメ映画『トゥルーノース』は、私たちがあまりに恐ろしい世界と地続きに生きていることを思い知らせてくれる。最低最悪の絶望を前に、人間はどれだけ悪虐になれてしまうのか、そしていかに優しさを発揮できるのか。
あわせて読みたい
【驚愕】これ以上の”サバイバル映画”は存在するか?火星にたった一人残された男の生存術と救出劇:『オ…
1人で火星に取り残された男のサバイバルと救出劇を、現実的な科学技術の範囲で描き出す驚異の映画『オデッセイ』。不可能を可能にするアイデアと勇気、自分や他人を信じ抜く気持ち、そして極限の状況でより困難な道を進む決断をする者たちの、想像を絶するドラマに胸打たれる
あわせて読みたい
【妄執】チェス史上における天才ボビー・フィッシャーを描く映画。冷戦下の米ソ対立が盤上でも:映画『…
「500年に一度の天才」などと評され、一介のチェスプレーヤーでありながら世界的な名声を獲得するに至ったアメリカ人のボビー・フィッシャー。彼の生涯を描く映画『完全なるチェックメイト』から、今でも「伝説」と語り継がれる対局と、冷戦下ゆえの激動を知る
あわせて読みたい
【感想】映画『野火』は、戦争の”虚しさ”をリアルに映し出す、後世に受け継がれるべき作品だ
「戦争の悲惨さ」は様々な形で描かれ、受け継がれてきたが、「戦争の虚しさ」を知る機会はなかなかない。映画『野火』は、第二次世界大戦中のフィリピンを舞台に、「敵が存在しない戦場で”人間の形”を保つ困難さ」を描き出す、「虚しさ」だけで構成された作品だ
あわせて読みたい
【勇敢】”報道”は被害者を生む。私たちも同罪だ。”批判”による”正義の実現”は正義だろうか?:『リチャ…
「爆弾事件の被害を最小限に食い止めた英雄」が、メディアの勇み足のせいで「爆弾事件の犯人」と報じられてしまった実話を元にした映画『リチャード・ジュエル』から、「他人を公然と批判する行為」の是非と、「再発防止という名の正義」のあり方について考える
あわせて読みたい
【絶望】光過敏症の女性の、真っ暗な部屋で光という光をすべて遮断しなければ生きられない壮絶な日常:…
日光に限らず、ありとあらゆる「光」に肌が異常に反応してしまうため、ずっと真っ暗闇の中でしか生きられない女性が、その壮絶すぎる日常を綴った『まっくらやみで見えたもの 光アレルギーのわたしの奇妙な人生』から、それでも生きていく強さを感じ取る
あわせて読みたい
【実像】ベートーヴェンの「有名なエピソード」をほぼ一人で捏造・創作した天才プロデューサーの実像:…
ベートーヴェンと言えば、誰もが知っている「運命」を始め、天才音楽家として音楽史に名を刻む人物だが、彼について良く知られたエピソードのほとんどは実は捏造かもしれない。『ベートーヴェン捏造 名プロデューサーは嘘をつく』が描く、シンドラーという”天才”の実像
あわせて読みたい
【史実】太平洋戦争末期に原爆を落としたアメリカは、なぜ終戦後比較的穏やかな占領政策を取ったか?:…
『八月十五日に吹く風』は小説だが、史実を基にした作品だ。本作では、「終戦直前に原爆を落としながら、なぜ比較的平穏な占領政策を行ったか?」の疑問が解き明かされる。『源氏物語』との出会いで日本を愛するようになった「ロナルド・リーン(仮名)」の知られざる奮闘を知る
あわせて読みたい
【絶望】「人生上手くいかない」と感じる時、彼を思い出してほしい。壮絶な過去を背負って生きる彼を:…
「北九州連続監禁殺人事件」という、マスコミも報道規制するほどの残虐事件。その「主犯の息子」として生きざるを得なかった男の壮絶な人生。「ザ・ノンフィクション」のプロデューサーが『人殺しの息子と呼ばれて』で改めて取り上げた「真摯な男」の生き様と覚悟
あわせて読みたい
【誠実】想像を超える辛い経験を言葉にするのは不可能だ。それを分かってなお筆を執った作家の震災記:…
旅行者として東日本大震災で被災した小説家・彩瀬まるは、『暗い夜、星を数えて 3.11被災鉄道からの脱出』でその体験を語る。「そんなこと、言わなければ分からない」と感じるような感情も包み隠さず記し、「絶望的な伝わらなさ」を感じながらも伝えようと奮闘する1冊
あわせて読みたい
【天才】『三島由紀夫vs東大全共闘』後に「伝説の討論」と呼ばれる天才のバトルを記録した驚異の映像
1969年5月13日、三島由紀夫と1000人の東大全共闘の討論が行われた。TBSだけが撮影していたフィルムを元に構成された映画「三島由紀夫vs東大全共闘」は、知的興奮に満ち溢れている。切腹の一年半前の討論から、三島由紀夫が考えていたことと、そのスタンスを学ぶ
この記事を読んでくれた方にオススメのタグページ
ルシルナ | 映画と本の感想ブログ
普通って何?【本・映画の感想】 | ルシルナ | 映画と本の感想ブログ
人生のほとんどの場面で、「普通」「常識」「当たり前」に対して違和感を覚え、生きづらさを感じてきました。周りから浮いてしまったり、みんなが当然のようにやっているこ…
タグ一覧ページへのリンクも貼っておきます
ルシルナ | 映画と本の感想ブログ
記事検索(カテゴリー・タグ一覧) | ルシルナ | 映画と本の感想ブログ
ルシルナは、4000冊以上の本と500本以上の映画をベースに、生き方や教養について書いていきます。ルシルナでは36個のタグを用意しており、興味・関心から記事を選びやすく…
コメント