目次
はじめに
この記事で取り上げる映画
出演:Olga Baranova, 出演:David Isteev, 出演:Ramzan Kadyrov, 出演:Maxim Lupanov, 出演:Vladimir Putin, 監督:David France, プロデュース:Alice Henty, プロデュース:Joy A. Tomchin
ポチップ
この映画をガイドにしながら記事を書いていきます
今どこで観れるのか?
この記事の3つの要点
- 「LGBTQへの差別」ではなく、「権力が多様性を抑圧する現実」こそを描く映画だと受け取るべき
- 「チェチェンに同性愛者は存在しない」と言い切る独裁者カディロフと、家族に同性愛者を殺す権利が認められている国家
- 「命がけで国外脱出を支援する団体」と「勇敢な被害者」の壮絶な奮闘
「民族の浄化」という言葉で「ゲイ狩り」を正当化する考え方は、まさに「現代版ホロコースト」としか呼びようがない
自己紹介記事
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はじめまして
ブログ「ルシルナ」の犀川後藤の自己紹介記事です。ここでは、「これまでのこと」「本のこと」「映画のこと」に分けて書いています。
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どんな人間がこの記事を書いているのかは、上の自己紹介記事をご覧ください
記事中の引用は、映画館で取ったメモを参考にしているので、正確なものではありません
壮絶な「ゲイ狩り」が続くチェチェン共和国の凄まじい現実と、支援者たちの命がけの奮闘
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ロシアの意向を強く反映する国で起こっている狂気の蛮行。LGBTQへの理解などまったくの皆無としか言いようがないその状況には、やはり、ロシアという国への恐ろしさや理解しえなさを強く感じてしまった。
チェチェン共和国で起こっている出来事を、「LGBTQの問題」と捉えるべきではないだろうだろう。何故ならこれは、「権力の濫用」の物語だからだ。映画に登場する同性愛者の家族の1人が、こんなことを言う場面がある。
どこの国でも起こり得ることよ。
人間は権力を持ち始めると、悪用する人も出てくる。
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アメリカでは、「中絶の権利」が奪われるかもしれない判断を裁判所が行った。日本でも未だに「夫婦別姓」が進まない。「多様性」こそが何よりも素晴らしいなどと言うつもりはないが、多くの状況において「多様であること」が価値を持つと思っているし、世界の流れは「多様性をいかに認めるか」という方向へと進んでいるはずだ。そういう情勢にあってなお、「多様性など認めない」という判断が当然のようになされることが、私にはとても恐ろしいことに感じられる。
私はLGBTQではないし、この記事を読んでいるあなたも違うかもしれない。それでも、「自分には関係ない」とは思わないでほしい。「権力が『多様性』をいとも簡単に奪い去る」という物語として受け取られるべきだと私は思う。
「チェチェンに同性愛者は存在しない」と断言する、独裁者・カディロフ
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映画には、独裁者であるチェチェン共和国の大統領カディロフが、恐らく外国メディアのものだろう取材を受ける場面があった。記者は、「チェチェン共和国で、性的マイノリティーに対する虐待の疑惑が報じられていますが、どうお考えですか?」と質問する。カディロフは、「何を聞きに来たのかと思えば、そんなことか」と前置きした上で、はっきりとこう断言した。
チェチェンに同性愛者は存在しない。
もしいたら、カナダにでも連れて行ってくれ。
一国のトップが臆面もなく堂々とこんな主張をする国が、チェチェン共和国である。
チェチェン共和国は、イスラム教徒が大半を占めることもあり、独自の文化・言語を有する、かなり閉鎖的な国だという。そんな国において、「同性愛」は「不名誉なこと」として扱われる。なんと、家族の中に同性愛者がいると分かった場合には、「血によって償うべき」と考えるのが一般的なのだそうだ。つまり、「家族の恥を『殺す』ことで解決する」という意味である。
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映画の冒頭で映し出されるアーニャという女性は、助けを求めた支援団体のメンバー・デイヴィッドの電話で、「このままでは父親に殺される」と訴えていた。映画が始まってすぐの場面であり、観客はその切迫感をリアルには受け取りにくいのだが、「同性愛者だとバレたら家族に殺される」ことが当たり前の国だと知れば、アーニャの訴えの緊急性がよく理解できるだろう。
アーニャは、叔父に性的指向のことを知られてしまい、「自分と関係を持たないと、お前の父親にバラすぞ」と脅されている。デイヴィッドの見立てでは、アーニャが叔父と関係を持っても、父親に性的指向を知られても、彼女は家庭内で静かに抹殺されるだろうと予測していた。その判断には、アーニャの父親が政府高官であるという事実も多少なりとも関係しているのだが、そのような特殊な家庭環境でなくても状況に大差はないそうだ。
凄まじいことに、チェチェン共和国では、同性愛者に対しての拘束・暴力は「罪に問われない」という。要するに、国を挙げて「家族内での”清算”」を推奨していると言っていいだろう。映画の中では防犯カメラ映像も流れ、性的マイノリティーの人たちが街中などで暴行を受けている様子が映し出される。その中では、多くの人が捕えられ、殴られ、髪を切られたりしていた。
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中でも最も衝撃的だったのは、道路上で横たわる女性と思われる人物の顔めがけて、両手でなければ持ち上げられないほどの石を振り下ろとしている映像だ。映像は、振り下ろされる石が手から離れる前に終わったが、恐らく横たわっていた女性は亡くなってしまったと思われる。
凄まじい状況だと言っていい。
外国メディアに対する取材の中でカディロフ大統領は、「民族の浄化のため」という表現を使っていた。まさにこれは、ナチスドイツのホロコーストを想起させる言葉だろう。デイヴィッドも、「スターリンやヒトラーの時代に戻ったようだ」という表現で、その異常さを言葉にしていた。中国のウイグル自治区で「教育」と称して拷問が行われているなどの疑惑も長く存在するが、そのような状況は、どんな理屈を捏ねくり回したところで、「現代版ホロコースト」と呼ばれて然るべき残酷なものだ。
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そんなことが現代に起こっていることがやはり私には衝撃でしかない。
先述した通り、カディロフが独裁を続けられる最大の理由は、プーチン大統領の後ろ盾があるからだ。チェチェン共和国における「性的マイノリティーへの迫害」は決して、プーチン大統領が主導しているわけではない。しかし、黙認していることもまた事実だ。デイヴィッドも、「プーチン大統領に責任があることは明白だ」と主張している。
というのも、「性的マイノリティーの拘束・拷問に対して抗議し、調査を依頼する嘆願書」の提出が阻まれてしまったからだ。支援者たちは、多数の署名を集め、モスクワに嘆願書を提出するつもりでいたのだが、その直前、「無許可で集会を行った」という理由で拘束されてしまう。ロシアには、チェチェン共和国の状況を改善する意志などがまったくないのである。
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2017年冬、麻薬絡みの捜査の過程で押収された携帯電話から、かなり際どいゲイの写真が発見された。こんなことがきっかけなのである。それから、その写真の持ち主に「ゲイ仲間を暴露しろ」と迫り、名前が挙がった者を次々に拘束しては、さらに仲間の名前を吐かせるというやり方を続けたのだ。
このようにして、「ゲイ狩り」としか呼びようがない異常事態が進行することとなった。その「弾圧」は、あまりにも苛烈だ。支援団体のシェルターに匿われている者たちが、様々な証言をしている。
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ある男性は、オンラインで気になる男性と知り合い、その人の家に行った。するとバスルームから警察が出てきたという。そのまま拘束され、刑務所に送られてしまったそうだ。別の男性も、知り合いをおびき出すようなことをやらされたと語っていた。
刑務所での様子も凄まじい。一番印象的だったのは、「ネズミを背中に乗せる」という拷問の話だ。背中にネズミを乗せ、さらにその上から鍋を被せる。そしてその状態で鍋を熱すると、熱さから逃れようとしてネズミが背中の皮膚を食い破ろうと暴れまわるのだそうだ。この拷問で命を落とした者もいるという。
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とにかく凄まじく酷い状況である。
映画では、支援団体が用意しているシェルター内での撮影も行われるが、場所についてはどの国にあるのかさえ明かしていない。とにかく何がなんでも、シェルターの居場所がチェチェン共和国側に伝わらないようにしなければ、安全を確保できないのだ。
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そして、そういう事情があるが故の「異常な状況」が映し出される場面がある。シェルター入所者の1人が手首を切って自殺未遂した際、支援団体のメンバーの1人であるオリガが、まさに手首を切ったばかりの人物に対して、次のように大声を張り上げるのだ。
カナダでもどこでも行って!
とにかく、ここでは死なないで!
いつでも死ねるんだから!
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この言葉だけ聞くと、「なんて酷いんだ」と感じるかもしれない。しかし、支援団体の最大の使命は、シェルターにいる者たち全員の命を守ることだ。だから、このシェルターでは何が起こっても救急車を呼ぶことはできない。シェルターの住所が明らかになってしまうからだ。「ここでは死なないで」という言葉にはそのような背景がある。そんな言い方をせざるを得ないほど壮絶な状況に置かれているということが理解できるのではないかと思う。
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映画で描かれることはどれも驚きに満ちているが、中でも衝撃だったのが有名歌手の失踪だ。チェチェン共和国で人気を誇る歌手ゼリム・バカエフと、10日以上も連絡が取れないことを伝えるニュース映像が、映画の中で流れるのである。彼が性的マイノリティーだったかのどうか、確かな情報があるわけではないそうだが、実際にそういう噂は存在したという。デイヴィッドは、「性的指向が失踪の原因であることは間違いない」と断言する。また、映画の最後には、「ゼリム・バカエフの行方は今も分かっていない」と字幕が表示された。
これが、チェチェン共和国である。
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「グリシャ」が刑事告発に踏み切るまで
「グリシャ」とカッコ付きにしたのは、偽名だからだ。映画に登場する者はもちろん全員偽名だが、「グリシャ」だけはこの映画において特殊な存在なのである。映画『「チェチェンへようこそ』は、様々な人物や状況を取り上げ、複層的に現状を捉えようとする作品だが、後半に向かうにつれ、焦点が1つに絞られていく。それが「グリシャ」なのだ。
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彼もまた、性的指向を理由に拘束・拷問を経験した人物である。死を覚悟したというが、理由も告げられずに解放された。そしてその後、支援団体のシェルターに避難する。
そもそも彼はチェチェン人ではない。正確には覚えていないが、確かロシア人であり、元々はイベントなどでロシア各地を転々としていたそうだ。その後、はちみつ関連のイベントでチェチェンを訪れ、そのまま滞在を続ける。彼は元々チェチェン人に対して「優しい」イメージを持っていたというが、
あんなに優しかったチェチェン人が、これほど暴力的で残虐になれるのかと感じた。
と、唐突に始まった「粛清」以降の変貌に驚かされたと語っていた。
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彼には、付き合って10年になる恋人がいる。幸い、拘束された時は恋人と一緒ではなかった。恐らくロシアのどこかにいたのだろう。「チェチェンに一緒に来なかったことが唯一の救い」だと彼は語っていた。そして、1年以上も会っていないその恋人を、支援団体のシェルターへと呼び寄せ共に暮らす決断をする。恋人の方は、「グリシャと共に生活する」という目的のために、家族を捨て、学位を取るという夢さえも捨ててシェルターまでやってきたのだ。
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さて、映画の中では当初、「グリシャ」は散発的に描かれるに過ぎなかった。しかし次第に、物語の中心となっていく。
実は、「グリシャ」がチェチェン人でなかったことが、事態をより複雑にさせる要因となってしまった。チェチェン人ではないと気づかずに拘束・拷問した警察は、自身の失態に気づき、その上でとんでもない行動に出る。「グリシャ」の家族にまで脅しを掛けてきたのだ。この辺りの事情については詳しく説明されなかったが、要するに、「チェチェン人ではない者を拘束・拷問した事実を隠蔽するために、家族にも圧力を掛ける」という手段に打って出たということだろう。チェチェン人であれば、「同性愛者は家族内で殺す」という諒解がなされているのだから、警察が拘束・拷問したところで訴え出る者はいない。しかしチェチェン人以外の場合そうはいかないだろう。だったら先回りで口を封じておこう、というわけだ。性根から腐っているとしか言いようがない。
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支援団体は、「グリシャ」の家族全員の避難が必要だと判断する。グリシャの妹はそのせいで、夫と離婚せざるを得なかったそうだ。チェチェンにおける「粛清」は、多方面に悪影響を及ぼしているのである。
そんな「グリシャ」は、何故物語の中心になっていくのだろうか?
支援団体は行き詰まっていた。可能な限り救いの手を差し伸べ、多くの性的マイノリティーを避難させてはいるが、結局のところチェチェンで起こっている「ゲイ狩り」を止めさせなければ根本的な解決には至らない。そのためにはロシアを動かすしかないのだが、団体がロシアへ調査を要請しても、「被害者が存在しない」と聞く耳を持たないのだ。
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とはいえ、「被害者が存在しない」というのは、ある意味で正しい。被害者は名乗り出ることが出来ないからだ。「チェチェン共和国で『ゲイ狩り』に遭った」などと証言することは死を意味する。仮にチェチェン共和国から脱出できていたとしても状況に大差はないだろう。顔と名前を晒して「自分は被害者である」と声を上げることは、命を危険に晒すほどのことなのだ。
それでも支援団体は、「被害者が声を上げなければ事態の打開には繋がらない」と判断し、これまで救出してきた者たち1人1人と話し合ったという。その結果、様々な葛藤を抱きつつも、最終的に刑事告発に踏み切る決断をしたのが「グリシャ」なのである。
その後、「グリシャ」が世界中のメディアを前に記者会見を行う場が設けられ、そこで彼の本名が「マキシム・ラプノフ」だと明かされた。
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勇気ある訴えを起こした後の顛末と、「デジタルマスク」の凄まじさ
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マキシムの勇敢な行動によりロシアは、「被害者は存在しない」と言って訴えを退けられなくなり、正式に裁判が開かれることになった。しかしその結末はあっけないものだった。ある日ロシアの裁判所は、「本件を棄却する」と簡易的に述べるだけの法廷を開いた。これで終わりである。マキシムは今、ヨーロッパ人権裁判所に改めて訴えを起こしているそうだ。
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デイヴィッドは、
チェチェンの犯罪を立証することはできるが、どうやったらロシアがこの問題に目を向けるのか、それだけが分からない。
と語っていた。この映画は当然、ウクライナ侵攻以前に撮られたものだ。国際世論を無視してウクライナへの侵攻を強行したロシアが、聞く耳など持つはずもないだろう。なんとも恐ろしい世界である。
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さて最後に、「デジタルマスク」について言及しておこう。
先程、「登場人物は全員偽名」と書いた。身元が明らかになると、どんな不都合が生じるか分からないからだ。であれば当然、顔も隠さなければならないだろう。しかし映画では、登場人物の顔にモザイクはない。
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映画の冒頭で、こんな表示が出る。
避難者の安全を守るために、彼らの顔にはデジタル処理が施されています。
映画を観始めてしばらくは、この意味が理解できなかった。とても「デジタル処理」などされているようには感じられなかったからだ。しかし次第に、若干の違和感を覚えるようになる。言われて初めて気づく程度に、人物の顔周辺の映像が微妙にぼやけたり不自然な感じになったりしているのだ。そういう場面を目にして冒頭の「デジタル処理」の表示を思い出し、「もしかして」と思うようになった。モザイクではなく、別人の顔がはめ込まれているのだろうか、と。
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そう予想してからも、しばらくの間は半信半疑だった。「デジタルマスク」という技術の存在を知らなかったので、「そんなこと、ホントに出来るのだろうか」と疑っていたのだ。多少不自然な感じになることもあるが、そうと言われなければきっと気づかなかっただろう違和感でしかないのである。元の人物の表情に合わせて、これほど精巧に別人の顔をはめ込むことが出来るものなのか、私には確証が持てなかった。
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そういう状態のまま、「グリシャ」が記者会見を行う場面がやってくる。そして、本名が「マキシム・ラプノフ」であると明かされた瞬間、彼の顔から「デジタルマスク」が剥がれ落ちたのだ。ある程度予想していたこととは言え、なかなか衝撃的な光景だった。映画の中では、照明が暗かったり、タバコを吸っていたりと、顔周辺の映像に様々な変化が加わる場面もある。しかしそれでも、さほどの不自然さを感じさせずに別人の顔をはめ込めるというわけだ。そんな技術の進歩には驚かされた。
公式HPには、「この映画のために開発された技術ではない」と書かれている。しかし、従来の用途とはまったく異なる使い方であり、その点は非常に特異だとも説明されていた。モザイクがないと、人物の表情が分かるので、より被写体の状況を想像しやすい。ドキュメンタリー映画などで今後広く使われる技術になるのかもしれないと感じた。
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出演:Olga Baranova, 出演:David Isteev, 出演:Ramzan Kadyrov, 出演:Maxim Lupanov, 出演:Vladimir Putin, 監督:David France, プロデュース:Alice Henty, プロデュース:Joy A. Tomchin
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とにかく、どんな形であれ、辛い状況にいる人たちが1日でも早く穏やかな生活を取り戻せることを願うばかりである。
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ソ連の「闇」を暴いた名もなき記者の実話を描いた映画『赤い闇』は、「メディアの存在意義」と「メディアとの接し方」を問いかける作品だ。「真実」を届ける「社会の公器」であるべきメディアは、容易に腐敗し得る。情報の受け手である私たちの意識も改めなければならない
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