目次
はじめに
この記事で取り上げる映画
出演:カタリン・トロンタン, 出演:カメリア・ロイウ, 出演:テディ・ウルスレァヌ, 出演:ヴラド・ヴォイクレスク, 出演:ナルチス・ホジャ, Writer:アレクサンダー・ナナウ, 監督:アレクサンダー・ナナウ
¥2,750 (2022/06/21 07:29時点 | Amazon調べ)
ポチップ
この映画をガイドにしながら記事を書いていきます
今どこで観れるのか?
この記事の3つの要点
- 死亡者27名、怪我人180名という火災の生存者が、病院で次々に命を落とす現実と、その背景にあった政治腐敗
- イカれた政治を行っていた社会民主党は退陣に追い込まれたが、次の選挙で”圧勝”し、政権に返り咲く
- 「批判」を嫌う若者にも、「権力に対しては『批判』が必要だ」と認識してほしい
この映画を観て、「明日は我が身」と危機感を覚えなければヤバいのだと思う
自己紹介記事
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はじめまして
ブログ「ルシルナ」の犀川後藤の自己紹介記事です。ここでは、「これまでのこと」「本のこと」「映画のこと」に分けて書いています。
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どんな人間がこの記事を書いているのかは、上の自己紹介記事をご覧ください
記事中の引用は、映画館で取ったメモを参考にしているので、正確なものではありません
「国家の腐敗」をここまでまざまざと見せつける現実もそうそうないだろう。ルーマニアの悲劇は、他人事じゃない
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映画には、市民によるデモの場面で、
スポーツ新聞史上最大の調査報道だ
と叫ぶ男性の姿が映し出される。
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映画では、『ガゼタ』誌が国家の恐ろしい腐敗を暴き出していくのだが、どうもこの新聞は「スポーツ紙」であるようだ。外国の新聞と日本の新聞を同列に比較して良いものかはよく分からないが、とりあえず『ガゼタ』誌は、「朝日新聞」や「読売新聞」のような存在ではないということなのだろう。
そんな新聞が、ルーマニアを、そして諸外国さえも驚愕させる大スクープを放った、という点も、この映画の非常に興味深いポイントだと言える。
『ガゼタ』誌が暴き出した衝撃の真実
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この映画で明らかになるのは、次のような真実だ。
病院に納入されていた消毒液が、工場出荷時点で10倍に希釈されており、病院ではその消毒液をさらに過度に薄めて使っていた
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何故このような不祥事が発覚したのか。それは2015年10月30日、映画のタイトルにもなっている「コレクティブ」というライブハウスで起こった火災がきっかけだ。ライブハウスには出入り口が一箇所しかなく、逃げ惑う人々が折り重なって倒れたこともあり、この火災による死者は27名、怪我人180名という大惨事となってしまった。
しかしそれだけでは終わらない。この火災を生き延びた者たちは病院に入院することになったのだが、4ヶ月の間になんと37名が病院で命を落としたのだ。保健省は、「最高の医療を提供したことに間違いない」「医療に不備などなかった」と明言した。しかし、調査に乗り出した『ガゼタ』誌が、情報提供者の協力もあり、驚愕の事実に辿り着く。ルーマニアで消毒液を製造する会社「ヘキシ・ファーマ」が、製品に表示された数値より10倍も薄めた消毒液を病院に納入していたことが判明したのだ。しかもそれだけではない。病院はその10倍薄められた消毒液を、「節約」のために規定よりも過度に薄めて使用していたのである。
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そんな消毒液がまともに機能するはずもない。
調査の結果、火災で一命を取り留めながら病院で命を落とした者は、緑膿菌による院内感染が原因だと判明した。緑膿菌は、健常者が感染しても発病しないが、免疫力が低下した者が感染すると緑膿菌感染症を引き起こす。恐らく、正しく消毒が行われていれば、彼らの命が失われることはなかっただろう。
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このように本作は、ルーマニアの医療の衝撃の実態を暴き出す驚愕のドキュメンタリー映画である……と言いたいところだが、実はそうではない。ここまで説明した「医療の腐敗」は、映画のかなり冒頭で早々と明らかにされるのだ。つまり、「事実をいかに暴き出すか」を描く映画ではない。『ガゼタ』誌とドキュメンタリー映画の制作陣の闘いは、ある意味で、「消毒液の希釈」というスクープを放ってから始まったのだ。
『ガゼタ』誌の一連の報道を受けて、国内でデモや反対運動が激化し、やがて政権を担う社会民主党が退陣を迫られることとなった。調査の結果、「一企業の不祥事」というレベルの問題ではないことが明らかになったからだ。そして次の選挙までの間、「無党派の実務家」がトップに就き、政治の実務を担うこととなった。実情を知ることになった彼らは、その腐敗っぷりに驚かされる。「国家の体を成していない」と言っていいほど、酷い有様だったのだ。そんな凄まじい「政治腐敗」が描かれていく。
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しかしこの点さえも、「本当に描きたかったこと」ではないと私は感じた。その理由は、この映画のラストにある。ルーマニアは選挙の日を迎え、国民投票が実施されたのだが、なんと、長年に渡り腐敗政治を続けてきたことで一度は退陣に追い込まれた社会民主党の「圧勝」という結果に終わったのだ。
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この点にこそ、映画制作者たちの「諦念」「憤り」を感じた。
「社会民主党が国家運営を担うことを大多数の国民が支持している現実」を目の前にして、「もはや自浄作用は期待できない」と考えたのだろう。ルーマニアの現実を広く世界に問うことで、「ルーマニアの凄まじい腐敗」「自浄作用ではもはや変われない現実」「良心を持つ者もまだいるという事実」をどうにか伝えようと考えたのではないか。私は、それこそがこの映画で伝えたかったことではないかと感じた。
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あれだけの不祥事が明らかになったにも拘わらず、なぜ国民は社会民主党を支持するのか
日本でも、「喉元過ぎれば熱さ忘れる」とばかりに、政治家の過去の不祥事などなかったかのように支持を集めることもある。しかしそれとこれとを同列に扱っていいのだろうか? ルーマニアでは、政治の腐敗によって、死ななくてもいい多数の命が喪われてしまったのだ。またそもそも、自分が治療を受ける際、「この消毒液は大丈夫だろうか」「この薬は問題ないのだろうか」と心配しなければならない状況は、私には耐えられない。
そして、そのような国家運営をしていたのが社会民主党だと分かったのだから、普通の感覚なら社会民主党を選ぶはずがない。まして「圧勝」などという状況はあり得ないはずだ。
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だから、映画を観てこの選挙結果には驚かされた。
「圧勝」の理由は様々にあるのだろうが、映画では社会民主党のこんなマニフェストが紹介されていた。
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この主張が国民にどの程度受け入れられ、また、ルーマニアという国においてどのぐらい実現可能な政策なのか、私にはなんとも分からない。しかし、こんな“アホみたいな”マニフェストを出して圧勝しているのだから、国民に受け入れられたと考えるべきだろうし、実現性も高いと信じられているのではないかと思う。そしてそうだとするなら、「医療がクソでも、非課税ならそれでいい」と考えて投票しているということになるはずだ。
その判断は私にはとても恐ろしく感じられる。
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また、映画では、18歳から24歳の投票率が5%、28歳から34歳の投票率が10%というデータが示されていた。なかなか不思議な年齢区分だし、25歳から27歳のデータが存在しないことも気になるが、とにかく、際立って低いことが分かるだろう。日本の投票率も低いし、若い世代になればより低くもなるわけだが、それでも日本の20~30代の投票率は30~50%程度にはなるようだ。比べ物にならない。
ルーマニアの若者の投票率が異常に低い理由は恐らく、ルーマニアという国家に絶望しているからだろうし、であれば、もはや現状の改善は望めないだろう。
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不祥事によって大臣が総とっかえとなった際に保健省大臣の職に就いた無党派の実務家ヴォイクレスクが、映画後半では主人公のように扱われる。ルーマニアの医療制度の悲惨さを理解し、その現実に立ち向かおうと奮闘する人物だ。健全な医療制度を確立しようと奔走し、まったく動こうとしない官僚や、社会民主党からのあからさまな圧力などの現実に対峙しながらなんとか前に進もうとする。
しかし、まったく上手くいかない。「のれんに腕押し」とはまさにこのことだろうか。
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ヴォイクレスクはウィーン出身であるようで、映画にはウィーンに住む父親から電話をもらう場面がある。父親は、
この国は30年経っても目覚めやしない。
ウィーンに戻って来い。ウィーンでなら人助けができる。そこで踏ん張っていても、虚しいだけだ。
と息子に声を掛けていた。外から見ていても、ルーマニアという国はなかなかに酷い国なのだろう。ヴォイクレスクはなんとか踏ん張ろうとするが、恐らく道半ばで大臣の座から下りることになるだろうと思う。
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映画は、全体的に説明がなされず、誰がどこで何をしているのかある程度想像しながら追っていく必要がある。大体の場面はそれで理解できるので問題はない。しかしラストシーンだけは説明してほしいと感じた。捉え方次第では非常に「不穏」なのだ。なんとも受け取り難いラストで映画は終わっており、結局のところ、社会民主党が圧勝した後のルーマニアについてもどうなっているのか分からないままだ。
映画はコロナ以前に撮影されている。ルーマニアが、映画で描かれる腐敗した政治体制のままコロナ禍に突入したとすれば、惨憺たる状況になっているのではないかとも思う。ネットでざっくり調べたところ、「政治不信が強いため、ワクチン接種がまったく進んでいない」と書かれていた。平気で消毒液を薄めるような国では、確かに、「ワクチン」と称して何を打たれるか分かったものじゃないだろう。
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とにかく、市民が平和に生き延びていることを願うばかりだ。
「権力を監視すること」の重要性
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『ガゼタ』誌の記者であるトロンタンがテレビ出演した際に、こんなことを言う場面がある。
メディアが権力に屈したら、国家は国民を虐げます。
同じことが世界中で行われてきました。
まさに私たちは、ウクライナに侵攻したロシアがそのような事態に陥っていると知っている。日本でも、時の政権がメディアへの介入を強めていると示唆されることが多い。
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ヴォイクレスクも、
火災の後、みんなが黙っていたことが、国の嘘を許したんです。
と語っていた。結局、私たちが「権力を監視する」という意識を持たなければ、権力はどこまででも腐敗し得るというわけだ。
私は以前から、「若い世代は『批判』を嫌う」という話を耳にすることが何度かあった。映画『パンケーキを毒見する』でも、大学生がそのような感覚を口にしている。
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確かに、「『批判』ばかりしている人は良い風には見えない」という感覚は私も理解できるつもりだ。しかし、「普通の批判」と「権力に対する批判」を混同してはいけないとも思う。「なんでもかんでも『批判』から入る人」は私も好きになれない。しかし、こと「政治」や「権力」に関して言えば、「『批判』することを前提に関わる」という意識を持たなければならないと考えるべきだろう。
デモや反対運動によって、一度は社会民主党を退陣に追い込んだルーマニアで、再び「圧勝」という形で社会民主党が政権に返り咲いてしまったのは、「適切な『批判』」が機能していなかったからと言えるのではないかと思う。
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最後に
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権力を持つ者のタガが外れてしまえば、市民は為す術がない。そんな状況に置かれた時、私たちにはどんな選択肢があるだろうか?白人警官が黒人を脅して殺害した、50年前の実際の事件をモチーフにした映画『デトロイト』から、「権力による不正義」の恐ろしさを知る
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社会的弱者が闘争の末に権利を勝ち取ってきた歴史を知った上で私は、闘わずとも権利が認められるべきだと思っている。そして、そういう社会でない以上、「正義のためにルールを破るしかない」状況もある。映画『パブリック』から、ルールと正義のバランスを考える
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一昔前、我々は「正しい情報を欲していた」はずだ。しかしいつの間にか世の中は変わった。「欲しい情報を正しいと思う」ようになったのだ。この激変は、トランプ元大統領の台頭で一層明確になった。『ニューヨーク・タイムズを守った男』から、情報の受け取り方を問う
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自由に選択し、自由に行動し、自由に生きているつもりでも、現代社会においては既に「自由意志」は失われてしまっている。しかし、そんな世の中を生きることは果たして不幸だろうか?異色警察小説『巡査長 真行寺弘道』をベースに「不幸になる自由」について語る
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