目次
はじめに
この記事で取り上げる本
著:清水 潔
¥742 (2022/06/05 20:59時点 | Amazon調べ)
ポチップ
この本をガイドにしながら記事を書いていきます
この記事の3つの要点
- これほど衝撃的で、これほど読みやすいノンフィクションは、恐らく他にはない
- 「連続殺人事件を立証する」ために、「『足利事件』の冤罪を証明する」という超絶離れ業をやってのける
- 権力やマスコミと、私たちはどう関わっていくべきなのか
この作品で描かれる現実を知っているのと知らないのとでは、社会の見え方が大きく変わるだろうと思います
自己紹介記事
あわせて読みたい
はじめまして
ブログ「ルシルナ」の犀川後藤の自己紹介記事です。ここでは、「これまでのこと」「本のこと」「映画のこと」に分けて書いています。
あわせて読みたい
オススメ記事一覧(本・映画の感想・レビュー・解説)
本・映画の感想ブログ「ルシルナ」の中から、「読んでほしい記事」を一覧にしてまとめました。「ルシルナ」に初めて訪れてくれた方は、まずここから記事を選んでいただくのも良いでしょう。基本的には「オススメの本・映画」しか紹介していませんが、その中でも管理人が「記事内容もオススメ」と判断した記事をセレクトしています。
どんな人間がこの記事を書いているのかは、上の自己紹介記事をご覧ください
「読みやすさ」と「衝撃度」という点で、本作を超えるノンフィクションは存在しないのではないかと感じる傑作
本書『殺人犯はそこにいる』は、2020年10月放送開始のドラマ『エルピス―希望、あるいは災い―』(カンテレ制作、フジテレビ系列)の参考文献としても話題の1冊です。
「文庫X」として広まった『殺人犯はそこにいる』の凄まじさ
あわせて読みたい
【驚愕】あるジャーナリストの衝撃の実話を描く映画『凶悪』。「死刑囚の告発」から「正義」を考える物語
獄中の死刑囚が警察に明かしていない事件を雑誌記者に告発し、「先生」と呼ばれる人物を追い詰めた実際の出来事を描くノンフィクションを原作にして、「ジャーナリズムとは?」「家族とは?」を問う映画『凶悪』は、原作とセットでとにかく凄まじい作品だ
本書を読んだ時、事件のことも著者のことも作品のこともほとんど何も知らなかった。『殺人犯はそこにいる』というタイトルになんとなく聞き覚えがあったくらいだ。私は文庫で読んだが、単行本が発売された際話題になった記憶がかすかに残っていたのである。本書で扱われる「足利事件」も、なんとなく聞き覚えはあった。その犯人として逮捕されていた人物が釈放された、というニュースに触れた程度の記憶はあったのだが、まさかそれを実現させたのが本書の著者だったとは驚きだ。著者についても、まったく知らなかった。「桶川ストーカー殺人事件」で「警察の闇」を暴き、後に「ストーカー規制法」制定のきっかけを作った人物なのだが、『殺人犯はそこにいる』の前著である『桶川ストーカー殺人事件 遺言』のことも私はまったく知らなかったのである。
あわせて読みたい
【執念】「桶川ストーカー事件」で警察とマスコミの怠慢を暴き、社会を動かした清水潔の凄まじい取材:…
『殺人犯はそこにいる』(文庫X)で凄まじい巨悪を暴いた清水潔は、それよりずっと以前、週刊誌記者時代にも「桶川ストーカー殺人事件」で壮絶な取材を行っていた。著者の奮闘を契機に「ストーカー規制法」が制定されたほどの事件は、何故起こり、どんな問題を喚起したのか
そんな、何も知らない状態で本書を読んだ。そして、その凄まじさに圧倒されてしまった。
あわせて読みたい
【あらすじ】映画『1917』は、ワンカット風の凄まじい撮影手法が「戦場の壮絶な重圧」を見事に体感させる
映画『1917 命をかけた伝令』は、「全編ワンカット風」という凄まじい撮影手法で注目されたが、私は、その撮影手法が「戦場における緊迫感」を見事に増幅させているという点に驚かされた。「物語の中身」と「撮影手法」が素晴らしく合致したとんでもない作品だ
本の面白さを評価する言葉として「ページを捲る手が止まらない」という表現がある。私はこれをずっと「ただの誇張した表現」だと考えていた。かなりたくさん本を読んできたが、私自身は、そんな経験をしたことがなかったからだ。
しかし本書を読んでいる時は、文字通り「ページを捲る手が止まらない」という状態だった。「面白い」と評していいのか悩む作品ではあるが、とにかく「続きが知りたくて仕方ない」という感覚になることは間違いない。
あわせて読みたい
【驚愕】一般人スパイが北朝鮮に潜入する映画『THE MOLE』はとてつもないドキュメンタリー映画
映画『THE MOLE』は、「ホントにドキュメンタリーなのか?」と疑いたくなるような衝撃映像満載の作品だ。「『元料理人のデンマーク人』が勝手に北朝鮮に潜入する」というスタートも謎なら、諜報経験も軍属経験もない男が北朝鮮の秘密をバンバン解き明かす展開も謎すぎる。ヤバい
さらに、本書は「ノンフィクション」というジャンルの本でありながら、とにかく恐ろしいほどに読みやすい。私は普段からノンフィクションを結構読むので、「ノンフィクションは読みにくい」みたいに感じることはないのだが、やはり、読書家でも小説を中心に読んでいる人の場合は、ノンフィクションは手が出にくいと感じるようだ。
しかし本書は、そんなノンフィクションに対して苦手意識を持つ人でも”絶対に読める”と断言したくなるほど文章が読みやすい。そのことは、後にこの作品が「文庫X」として世の中に広く届いたことでも証明できるだろう。
あわせて読みたい
【加虐】メディアの役割とは?森達也『A』が提示した「事実を報じる限界」と「思考停止社会」
オウム真理教の内部に潜入した、森達也のドキュメンタリー映画『A』は衝撃を与えた。しかしそれは、宗教団体ではなく、社会の方を切り取った作品だった。思考することを止めた社会の加虐性と、客観的な事実など切り取れないという現実について書く
新潮社
全国の書店を席巻した 「文庫X」その正体は…… | News Headlines | 新潮社
2016年7月22日、盛岡の「さわや書店フェザン店」の一角に、奇妙な本が並びました。その名は「文庫X」。「どうしてもこの本を読んで欲しい」という書店員の熱い思いが切々…
「文庫X」に対しての感想を読むと、「『文庫X』で初めてノンフィクションを読んだ」という人が結構いる。そして、そういう人たちもまた、この作品を大絶賛しているのだ。私としても、この作品がより多くの人の手に届いてくれたことがなんだか嬉しい。
あわせて読みたい
【闘い】デュポン社のテフロン加工が有害だと示した男の執念の実話を描く映画『ダーク・ウォーターズ』
世界的大企業デュポン社が、自社製品「テフロン」の危険性を40年以上前に把握しながら公表せず、莫大な利益を上げてきたことを暴き出した1人の弁護士がいる。映画『ダーク・ウォーターズ』は、大企業相手に闘いを挑み、住民と正義のために走り続けた実在の人物の勇敢さを描き出す
本書で描かれるのは、著者が「北関東連続幼女誘拐殺人事件」と名づけた“未解決事件”だ。著者はなんと、自らの取材により“真犯人”を突き止め、警察に伝えている。しかし、本書で指摘されているある理由から、その犯人は逮捕されていない。
こう聞くと、「自分には関係のない話だ」と感じる人もいるかもしれない。関東に住んでいるわけでもないし、その”真犯人”が逮捕されていなくても自分の生活には影響はない、と。
あわせて読みたい
【あらすじ】映画『モーリタニアン 黒塗りの記録』で描かれる、グアンタナモ”刑務所”の衝撃の実話は必見
ベネディクト・カンバーバッチが制作を熱望した衝撃の映画『モーリタニアン 黒塗りの記録』は、アメリカの信じがたい実話を基にしている。「9.11の首謀者」として不当に拘束され続けた男を「救おうとする者」と「追い詰めようとする者」の奮闘が、「アメリカの闇」を暴き出す
しかし、本書を読めば理解できるが、決してそういう問題ではない。本書が突きつけるのは、「私たちが、どんな『脆弱な足場』の上に生きているか」という現実なのだ。著者が「ルパン」と名づけたその”真犯人”が逮捕されない理由は、日本国民全員に関係があると断言していい。そしてその理由を含め、本書で示される「脆弱な足場」を知っているかどうかは、私たちの今後の人生に間違いなく影響を及ぼすと言っていいはずだ。
あわせて読みたい
【驚愕】日本の司法は終わってる。「無罪判決が多いと出世に不利」「中世並み」な”独立しているはず”の…
三権分立の一翼を担う裁判所のことを、私たちはよく知らない。元エリート裁判官と事件記者の対談本『裁判所の正体』をベースに、「裁判所による統制」と「権力との癒着」について書く。裁判なんか関わることない、という人も無視できない現実。
内容についてはこれから触れていくが、まず、本書で描かれる事件の発端・経緯・結論が凝縮された文章を引用しておこう。この文章を読むだけでも、本書の凄まじさがある程度理解できるはずだ。
ここまで読めばおわかりいただけただろうか。
「北関東連続幼女誘拐殺人事件」が葬られたということを。
五人の少女が姿を消したというのに、この国の司法は無実の男性を十七年半も獄中に投じ、真犯人を野放しにしたのだ。報道で疑念を呈した。獄中に投じられた菅家さん自身が、被害者家族が、解決を訴えた。何人もの国会議員が問題を糺した。国家公安委員長が捜査すると言った。総理大臣が指示した。犯人のDNA型は何度でも鑑定すればよい。時効の壁など打ち破れる。そのことはすでに示した。にもかかわらず、事件は闇に消えようとしている。
あわせて読みたい
【悲劇】アメリカの暗黒の歴史である奴隷制度の現実を、元奴隷の黒人女性自ら赤裸々に語る衝撃:『ある…
生まれながらに「奴隷」だった黒人女性が、多くの人の協力を得て自由を手にし、後に「奴隷制度」について書いたのが『ある奴隷少女に起こった出来事』。長らく「白人が書いた小説」と思われていたが、事実だと証明され、欧米で大ベストセラーとなった古典作品が示す「奴隷制度の残酷さ」
「北関東連続幼女誘拐殺人事件」と「足利事件」の関係性、そして著者の無謀な挑戦
まず初めに、本書で扱われる「北関東連続幼女誘拐殺人事件」について、著者がどのようなスタンスで取材に臨んだのかも含めて、その概要に触れておこうと思う。
あわせて読みたい
【勇敢】”報道”は被害者を生む。私たちも同罪だ。”批判”による”正義の実現”は正義だろうか?:『リチャ…
「爆弾事件の被害を最小限に食い止めた英雄」が、メディアの勇み足のせいで「爆弾事件の犯人」と報じられてしまった実話を元にした映画『リチャード・ジュエル』から、「他人を公然と批判する行為」の是非と、「再発防止という名の正義」のあり方について考える
週刊誌記者として「桶川ストーカー殺人事件」の取材を行った著者の清水潔は、日本テレビへと籍を移して、改めて事件報道に携わる。そんな清水潔が”見つけた”のが、栃木県と群馬県の県境で起こった5件の幼女誘拐殺人事件だ。非常に狭い範囲内で短期間に発生しており、「同一犯による連続誘拐事件」と考えるのが自然に思われた。
しかし、「同じ人物が5件の幼女誘拐殺人事件を起こしたかもしれない」という話は、一顧だにされていない。その理由は非常に明白であり、ここに「足利事件」が関係してくるのである。
あわせて読みたい
【革命】観る将必読。「将棋を観ること」の本質、より面白くなる見方、そして羽生善治の凄さが満載:『…
野球なら「なんで今振らないんだ!」みたいな素人の野次が成立するのに、将棋は「指せなきゃ観てもつまらない」と思われるのは何故か。この疑問を起点に、「将棋を観ること」と「羽生善治の凄さ」に肉薄する『羽生善治と現代』は、「将棋鑑賞」をより面白くしてくれる話が満載
しかし……だ。
私が立てた仮説は、実を言えば致命的な欠陥を抱えていた。
私は最初からそれに気がつきつつ、あえて無視を決め込んで調査を続けていたのだ。私のようなバッタ記者でも気づく五件もの連続重大事件を、警察や他のマスコミが知らぬはずもなかろうし、気づけば黙ってもいないだろう。なぜこれまで騒がれなかったのかといえば、そこには決定的な理由が存在していたからだ。
すなわち、事件のうち一件はすでに「犯人」が逮捕され、「解決済み」なのである。
つまりこういうことだ。著者が”見つけた”5件の連続誘拐事件の内の1つは既に解決済み、そしてその犯人は他の事件の犯人ではあり得ない、だから同一犯による犯行であるはずがない、と認識されているのである。その解決済みの事件こそ「足利事件」であり、菅家利和という人物が逮捕され、無期懲役が確定して収監されていた。
あわせて読みたい
【矛盾】死刑囚を「教誨師」視点で描く映画。理解が及ばない”死刑という現実”が突きつけられる
先進国では数少なくなった「死刑存置国」である日本。社会が人間の命を奪うことを許容する制度は、果たして矛盾なく存在し得るのだろうか?死刑確定囚と対話する教誨師を主人公に、死刑制度の実状をあぶり出す映画『教誨師』から、死刑という現実を理解する
普通に考えれば、この事実を前にして「5件の誘拐殺人事件は同一犯による犯行だ」と主張するのは無理がある。著者自身ももちろんそう考えていた。
仮にだ。あくまで仮にだが、万が一、いや100万が一でも、菅家さんが冤罪だったら……。
それが記者にとって危険な「妄想」であることは百も承知だった。私だってこの道は長い。冤罪など滅多やたらに無いことは知っている。刑事事件における日本の有罪率はなんと、九九・八パーセントである。しかも今回、証拠は「自供」と「DNA型鑑定」という豪華セットだ。まともな記者なら目も向けたくない大地雷原であろう。
「自供」と「DNA型鑑定」が揃っている事件で、菅家利和が冤罪の可能性などほぼあり得ない。そして、「足利事件」が菅家利和の犯行で決着しているなら、著者の主張する「北関東連続幼女誘拐殺人事件」が成り立つはずもない。この時点で普通は、「北関東連続幼女誘拐殺人事件」という仮説の方を諦めるだろう。
あわせて読みたい
【実話】映画『ハドソン川の奇跡』の”糾弾された英雄”から、「正しさ」をどう「信じる」かを考える
制御不能の飛行機をハドソン川に不時着させ、乗員乗客155名全員の命を救った英雄はその後、「わざと機体を沈め損害を与えたのではないか」と疑われてしまう。映画『ハドソン川の奇跡』から、「正しさ」の難しさと、「『正しさ』の枠組み」の重要性を知る
しかし著者は諦めなかった。
あわせて読みたい
【不安】環境活動家グレタを追う映画。「たったひとりのストライキ」から国連スピーチまでの奮闘と激変…
環境活動家であるグレタのことを、私はずっと「怒りの人」「正義の人」だとばかり思っていた。しかしそうではない。彼女は「不安」から、いても立ってもいられずに行動を起こしただけなのだ。映画『グレタ ひとりぼっちの挑戦』から、グレタの実像とその強い想いを知る
それには必要なことがある――菅家さんをこの事件からまず「排除」することだ。「北関東連続幼女誘拐殺人事件」にとって獄中にいる菅家さんの存在は「邪魔」なのだ。事態がややこしくなるだけだ。彼が有罪になったばかりに、他の四件までもが放置される事態に立ち至った。彼の冤罪が証明されない限り、捜査機関は真犯人捜しに動かないだろう。
これを修正する方法は、菅家さんの冤罪を証明することしかない。あるいは、少女たちが夢で迫ったように、捜査機関を出し抜いて先に真犯人に辿り着くか。
まあいい。両方やればいい。
それでも私が本書で描こうとしたのは、冤罪が証明された「足利事件」は終着駅などではなく、本来はスタートラインだったということだ。司法が葬ろうとする「北関東連続幼女誘拐殺人事件」という知られざる事件と、その陰で封じ込められようとしている「真犯人」、そしてある「爆弾」について暴くことだ。
著者は、「北関東連続幼女誘拐殺人事件」の存在を証明するために、なんと菅家利和の冤罪の証明に取り掛かったのだ。そして、清水潔の奮闘により、「自供」と「DNA型鑑定」が揃った事件で冤罪を証明し、獄中から菅家利和を解放することに成功する。17年半も獄中にいた菅家利和はなんと、「再審裁判」が開かれる前に釈放されるという、前代未聞の展開を迎えることになった。確かに私の記憶の中にも、「足利事件」の冤罪が証明されたテレビニュースのことがなんとなく残っている。当時、相当大きく取り上げられたはずだ。
あわせて読みたい
【異様】ジャーナリズムの役割って何だ?日本ではまだきちんと機能しているか?報道機関自らが問う映画…
ドキュメンタリーで定評のある東海テレビが、「東海テレビ」を被写体として撮ったドキュメンタリー映画『さよならテレビ』は、「メディアはどうあるべきか?」を問いかける。2011年の信じがたいミスを遠景にしつつ、メディア内部から「メディアの存在意義」を投げかける
清水潔は、「普通なら絶対に開かない扉」を何枚も何枚も強引にこじ開ける、凄まじい取材を見せたのである。
菅家さんを“犯人”としたプロの「捜査」に疑問を呈するならば、彼らを上回る「取材」をしなければダメだ。
どんな資料も鵜呑みにしない。警察や検察の調書や冒頭陳述は被告人を殺人犯として破綻がないように書かれている。報道は報道で、司法からの情報を元にしている。弁護人は弁護人で被告人を弁護するために資料を作成している。
私は記者だ。誰かの利害のために取材したり書いたりはしない。事実を基準にしなければならない。青臭い言い方をすれば、「真実」だけが私に必要なものだ。対立する見解があるときは双方の言い分を聞け、とはこれまたこの稼業を始めた時に叩き込まれた教えだ。
あわせて読みたい
【圧巻】150年前に気球で科学と天気予報の歴史を変えた挑戦者を描く映画『イントゥ・ザ・スカイ』
「天気予報」が「占い」と同等に扱われていた1860年代に、気球を使って気象の歴史を切り開いた者たちがいた。映画『イントゥ・ザ・スカイ』は、酸素ボンベ無しで高度1万1000m以上まで辿り着いた科学者と気球操縦士の物語であり、「常識を乗り越える冒険」の素晴らしさを教えてくれる
そしてそんな取材の過程で、菅家利和の冤罪を証明することなど”大したことない”と感じるほど衝撃的な事実が明らかになる。それが、著者が「爆弾」と書いている「信じがたい真実」だ。この「爆弾」は、私たちも決して無縁ではない。是非「自分ごと」として読んでほしい。
あわせて読みたい
【現実】権力を乱用する中国ナチスへの抵抗の最前線・香港の民主化デモを映す衝撃の映画『時代革命』
2019年に起こった、逃亡犯条例改正案への反対運動として始まった香港の民主化デモ。その最初期からデモ参加者たちの姿をカメラに収め続けた。映画『時代革命』は、最初から最後まで「衝撃映像」しかない凄まじい作品だ。この現実は決して、「対岸の火事」ではない
さて本書を読めば、「著者が本書執筆前に壮絶な取材をした」ということが読者には伝わるはずだ。そして、それを念頭に置くと苛立ちを覚えてしまうだろう記述が本書にはある。菅家利和の弁護団に対して、
なぜ日本テレビにだけ便宜を図るのか。
あわせて読みたい
【実話】ソ連の衝撃の事実を隠蔽する記者と暴く記者。映画『赤い闇』が描くジャーナリズムの役割と実態
ソ連の「闇」を暴いた名もなき記者の実話を描いた映画『赤い闇』は、「メディアの存在意義」と「メディアとの接し方」を問いかける作品だ。「真実」を届ける「社会の公器」であるべきメディアは、容易に腐敗し得る。情報の受け手である私たちの意識も改めなければならない
と真顔で抗議した民放記者がいたというのだ。日本テレビに所属する清水潔が奮闘したお陰で菅家利和の冤罪が証明されたのだから、当然、日本テレビとの関わりは深くなるだろう。それを「便宜を図る」という言葉で表現する記者がいるという事実は、ちょっと私には理解できない。
この記事の後半では「マスコミそのもの」についても触れるが、何にせよマスコミがきちんと「矜持」を持って取材に臨んでくれなければ、世の中の「真実」は炙り出されない。清水潔のようなスタンスが今のマスコミからは薄れてしまっているのだろうし、そのことに怖さを感じてもしまった。
あわせて読みたい
【衝撃】森達也『A3』が指摘。地下鉄サリン事件を起こしたオウム真理教は社会を激変させた
「オウム真理教は特別だ、という理由で作られた”例外”が、いつの間にか社会の”前提”になっている」これが、森達也『A3』の主張の要点だ。異常な状態で続けられた麻原彰晃の裁判を傍聴したことをきっかけに、社会の”異様な”変質の正体を理解する。
DNA型という「爆弾」と、「公権力の横暴さ」
著者がその壮絶な取材で明らかにした最も重大な事実は、菅家利和が「有罪」と判定した決め手の1つとして紹介した「DNA型鑑定」にある。著者はなんと、この科学的手法に「不備」を見出したのだ。本書の中で唯一、この「DNA型」に関する説明だけが「難しさ」を感じさせる箇所かもしれない。しかし著者は、非常に易しく説明してくれているので頑張って読んでほしい。
「足利事件」は実は、「DNA型鑑定」が重要な証拠として採用された初めての事件だった。そして「足利事件」以降、この「DNA型鑑定」は強力な証拠として認められるようになっていく。つまり、「DNA型鑑定」を決め手として裁判が結審した事件が過去に多数存在するというわけだ。この点が、非常に重要なポイントなのである。
結果として著者は、そんな展開になるとは思いもせずに「パンドラの箱」に手を突っ込んでしまうことになった。なぜなら、「足利事件における『DNA型鑑定』に疑義を呈する」ということは、それ以降に行われた多くの裁判結果にも問題が生じる可能性が生まれるからだ。
あわせて読みたい
【真実】ホロコーストが裁判で争われた衝撃の実話が映画化。”明らかな虚偽”にどう立ち向かうべきか:『…
「ホロコーストが起こったか否か」が、なんとイギリスの裁判で争われたことがある。その衝撃の実話を元にした『否定と肯定』では、「真実とは何か?」「情報をどう信じるべきか?」が問われる。「フェイクニュース」という言葉が当たり前に使われる世界に生きているからこそ知っておくべき事実
そしてこれこそが、「ルパン」が逮捕されない理由だと著者は考えているのである。
警察も検察も、いったんは事件の連続性を認めながら、その後捜査を開始しもしなければ、あたかも事件そのものが存在しないかのように振る舞う理由――。
「北関東連続幼女誘拐殺人事件」はこのまま消え去る運命なのだろうか。
あわせて読みたい
【狂気】”友好”のために北朝鮮入りした監督が撮った映画『ザ・レッド・チャペル』が映す平壌の衝撃
倫理的な葛藤を物ともせず、好奇心だけで突き進んでいくドキュメンタリー監督マッツ・ブリュガーが北朝鮮から「出禁」を食らう結果となった『ザ・レッド・チャペル』は、「友好」を表看板に北朝鮮に潜入し、その「日常」と「非日常」を映し出した衝撃作
つまり、本書で著者が示しているのは、「北関東で起こったある事件の真相」なんかではなく、「司法制度そのものや警察による捜査の欠陥」なのである。全国民に関係すると書いた理由が分かっていただけるだろう。
さて、正しい理解のために書いておく必要があると思うが、本書で問題視される「DNA型鑑定」と、現在一般的になっている「DNA型鑑定」は別物だ。「かつて行われていた手法に問題があった」と理解してもらえばいいだろう。
あわせて読みたい
【使命】「CRISPR-Cas9」を分かりやすく説明。ノーベル賞受賞の著者による発見物語とその使命:『CRISPR…
生物学の研究を一変させることになった遺伝子編集技術「CRISPR-Cas9」の開発者は、そんな発明をするつもりなどまったくなかった。ノーベル化学賞を受賞した著者による『CRISPR (クリスパー) 究極の遺伝子編集技術の発見』をベースに、その発見物語を知る
菅家利和の冤罪の証明から始まったこの「爆弾」の顛末については、是非本書を読んでほしい。ここでは、「『DNA型鑑定の不備』が明らかにされることで、『DNA型鑑定が重要な証拠として提出されたすべての裁判』の正当性が揺らいでしまう」という点を改めて強調するに留めておこう。
国としては、なんとしてでもそんな事態に陥りたくはないはずだ。それを避けるためなのだろう、警察は保身のために嘘や欺瞞で事実を覆い隠そうとする。そして、そんな「隠蔽した真実」を暴き出したのが清水潔であり、本書にその経緯が綴られているというわけだ。
あわせて読みたい
【衝撃】匿名監督によるドキュメンタリー映画『理大囲城』は、香港デモ最大の衝撃である籠城戦の内部を映す
香港民主化デモにおける最大の衝撃を内側から描く映画『理大囲城』は、とんでもないドキュメンタリー映画だった。香港理工大学での13日間に渡る籠城戦のリアルを、デモ隊と共に残って撮影し続けた匿名監督たちによる映像は、ギリギリの判断を迫られる若者たちの壮絶な現実を映し出す
著者は、「桶川ストーカー殺人事件」の取材を振り返って、こんな風に書いている。
あのとき私は、警察が自己防衛のためにどれほどの嘘をつくのかということを知った。警察から流れる危うげな情報にマスコミがいかに操作されるか、その現実を思い知った。そうやって司法とマスコミが作り上げた壁は、ものすごく厚く、堅い。一介の記者など本当に無力だ。その片鱗を伝えるためだけに、私はあの時、本を一冊書く羽目になったのだ。
「桶川ストーカー殺人事件」では、警察は殺害された被害女性から度々相談を受けていた。そして事件発生後警察は、マスコミを通じた”情報操作”を行うことで、「被害者が殺されてしまったことに警察の非は無い」と示そうと躍起にになったのだ。その過程でなんと、「事件全体の構図」を歪めることまでやってのけた。
あわせて読みたい
【不正義】正しく行使されない権力こそ真の”悪”である。我々はその現実にどう立ち向かうべきだろうか:…
権力を持つ者のタガが外れてしまえば、市民は為す術がない。そんな状況に置かれた時、私たちにはどんな選択肢があるだろうか?白人警官が黒人を脅して殺害した、50年前の実際の事件をモチーフにした映画『デトロイト』から、「権力による不正義」の恐ろしさを知る
そして同じことを「足利事件」でも、そして「北関東連続幼女誘拐殺人事件」でも行っている。清水潔は、「足利事件」の冤罪を証明したことで、「北関東連続幼女誘拐殺人事件」を捜査する上での障害を排除した。しかし警察は動かない。だから著者は、自らの取材で真犯人を探し出そうと動き、「ルパン」に行き着いた。しかしそれでも警察は動かない。警察は、5件の連続誘拐事件に関連性を認める発言をしているものの、5件を同一犯の犯行だとした上での捜査は、本書執筆時点では行われていないという。
やはりそこには、著者が掘り出してしまった「爆弾」が関係しているのだろう。
あわせて読みたい
【衝撃】権力の濫用、政治腐敗を描く映画『コレクティブ』は他人事じゃない。「国家の嘘」を監視せよ
火災で一命を取り留め入院していた患者が次々に死亡した原因が「表示の10倍に薄められた消毒液」だと暴き、国家の腐敗を追及した『ガゼタ』誌の奮闘を描く映画『コレクティブ 国家の嘘』は、「権力の監視」が機能しなくなった国家の成れの果てが映し出される衝撃作だ
著者は本書を通じて様々な警鐘を鳴らしているが、その1つが、
恐ろしいことだと私は改めて思った。公権力と大きなメディアがくっつけば、こうも言いたい放題のことが世の中に蔓延していくのかと。
という文章に集約されている。
あわせて読みたい
【感想】リドリー・スコット監督の映画『最後の決闘裁判』から、社会が”幻想”を共有する背景とその悲劇…
例えば、「1万円札」というただの紙切れに「価値を感じる」のは、社会の構成員が同じ「共同幻想」の中に生きているからだ。リドリー・スコット監督の映画『最後の決闘裁判』は、「強姦では妊娠しない」「裁判の勝者を決闘で決する」という社会通念と、現代にも通じる「共同幻想」の強さを描き出す
マスコミについては後で触れるとして、まずは「公権力」の話から始めよう。
私たちは、「森友学園問題」「加計学園問題」など、「公権力が有している権力を不当に利用し、都合の悪い事実を隠蔽・歪曲した(と推察される)事例」に日々触れている。恐らくその多くは、「意図的に権力を行使した事例」であり、どうあってもそれらは糾弾されなければならないと思う。事実を明らかにし、適切に責任が取られることで、健全な形で「公権力」が存在できる社会になるべきだし、そうなるように私たち自身も意識して行動しなければならない。
あわせて読みたい
【憤り】世界最強米海軍4人VS数百人のタリバン兵。死線を脱しただ1人生還を果たした奇跡の実話:『アフ…
アフガニスタンの山中で遭遇した羊飼いを見逃したことで、数百人のタリバン兵と死闘を繰り広げる羽目に陥った米軍最強部隊に所属する4人。奇跡的に生き残り生還を果たした著者が記す『アフガン、たった一人の生還』は、とても実話とは信じられない凄まじさに満ちている
しかし、本書で取り上げられる「DNA型鑑定」の問題は状況が異なる。決して「意図的」なものではないからだ。「その当時は想定できなかった不備」であり、客観的には「仕方ない」と判断される出来事だと思う。
清水潔も、そんなスタンスを明確に打ち出している。
本書は、様々な形で命に関わる人達に対し、そんな私の一方的な想いを記したものだ。批判や個人の責任追及が本書の目的などではないことは、ここできっぱりと断っておく。
人は誰でもミスをする。私だってもちろんそうだ。誤りは正せばよい。原因を突き止め、再発を防止することに全力を尽くせばいい。
あわせて読みたい
【実話】権力の濫用を監視するマスコミが「教会の暗部」を暴く映画『スポットライト』が現代社会を斬る
地方紙である「ボストン・グローブ紙」は、数多くの神父が長年に渡り子どもに対して性的虐待を行い、その事実を教会全体で隠蔽していたという衝撃の事実を明らかにした。彼らの奮闘の実話を映画化した『スポットライト』から、「権力の監視」の重要性を改めて理解する
確かにその通りだ。私もミスをするし、ミスをしない人間などいない。「ミスをした」という事実だけを取り上げて批判する風潮がどんどん強くなっていると感じるが、著者と同じように、私もそんなことに意味はないと考えている。重要なのは「再発防止」であり、「同じ過ちを繰り返さない」という共通理解の元で人々が協力することだと思う。
あわせて読みたい
【正義】「正しさとは何か」を考えさせる映画『スリー・ビルボード』は、正しさの対立を絶妙に描く
「正しい」と主張するためには「正しさの基準」が必要だが、それでも「規制されていないことなら何でもしていいのか」は問題になる。3枚の立て看板というアナログなツールを使って現代のネット社会の現実をあぶり出す映画『スリー・ビルボード』から、「『正しさ』の難しさ」を考える
しかし「北関東連続幼女誘拐殺人事件」において、警察は「隠蔽」を選んでしまった。
だが、隠蔽しては是正できない。過ちが繰り返されるだけだ。
その一方で、「公権力」をむやみに批判することも意味はないと私は思う。警察・司法・政治などどんな世界にも、国家や市民のために全力で身を捧げている人がいるはずだ。そういう人たちまで丸ごと引っくるめて非難することはむしろ逆効果だろう。
あわせて読みたい
【あらすじ】蝦夷地の歴史と英雄・阿弖流為を描く高橋克彦の超大作小説『火怨』は全人類必読の超傑作
大げさではなく、「死ぬまでに絶対に読んでほしい1冊」としてお勧めしたい高橋克彦『火怨』は凄まじい小説だ。歴史が苦手で嫌いな私でも、上下1000ページの物語を一気読みだった。人間が人間として生きていく上で大事なものが詰まった、矜持と信念に溢れた物語に酔いしれてほしい
ただ本書を読むとやはり、私たちが関心を向けることによって「公権力」に歯止めをかけることが非常に重要なのだと理解させられる。清水潔のような奮闘は誰にでもできるものじゃない。私は絶対に無理だ。しかし、「事実を知って、『関心を持っているぞ』という視線を向けること」ぐらいは誰にでもできると思う。
あわせて読みたい
【絶望】権力の濫用を止めるのは我々だ。映画『新聞記者』から「ソフトな独裁国家・日本」の今を知る
私個人は、「ビジョンの達成」のためなら「ソフトな独裁」を許容する。しかし今の日本は、そもそも「ビジョン」などなく、「ソフトな独裁状態」だけが続いていると感じた。映画『新聞記者』をベースに、私たちがどれだけ絶望的な国に生きているのかを理解する
「『公権力』は、自らの保身のためなら、連続殺人犯(と思しき人物)を野放しにするという決断もしかねない」というのが、著者の推論も交えた本書の結論だ。私たちは、このような現実を理解した上で日々を過ごさなければならない。
その覚悟を突きつける作品でもあるのだ。
私たちが正しく事実を理解することの大事さと困難さ
あわせて読みたい
【芸術】実話を下敷きに描く映画『皮膚を売った男』は、「アートによる鮮やかな社会問題風刺」が見事
「シリア難民の背中にタトゥーを彫り芸術作品として展示する」と聞くと非常に不謹慎に感じられるだろうが、彫ったのが国家間の移動を自由にする「シェンゲンビザ」だという点が絶妙な皮肉。実話をベースにした映画『皮膚を売った男』の、アートによる社会問題提起の見事な鮮やかさ
本書では、「足利事件」の冤罪証明の過程が描かれるのだが、よく知られた冤罪事件である「免田事件」も併せて取り上げられる。そしてその中で紹介される、「免田事件」で逮捕され死刑判決を受けた免田栄さんと関わった時の著者の経験が、「私たちが正しく事実を理解することの大事さ」を実感させてくれるはずだ。少し長いが引用しよう。
八三年に免田さんを取材した時のことが、忘れられない。
脳裏に、今も焼きついているその表情。
熊本市内で夕食を一緒に取り、帰路タクシーを拾った。後部座席で車窓に目をやっていた免田さんが、ふと思い出したように前方に顔を向けるとこう言った。
「あんた、免田って人、どう思うね?」
尋ねた相手は運転手だった。当時熊本で「免田事件」を知らない人はいない。免田さんは続けた。
「あの人は、本当は殺ってるかね、それとも無実かね?」
ハンドルを握る運転手は、暗い後部座席の顔が見えない。まさか本人が自分の車に載っているとは微塵も思わなかったのだろう。
「あぁ、免田さんね。あん人は、本当は犯人でしょう。なんもない人が、逮捕なんかされんとですよ。まさか、死刑判決なんか出んとでしょう。今回は一応、無罪になったけど……知り合いのお巡りさんも言ってたと」笑ってハンドルを廻した。
「そうね……」免田さんは、視線を膝に落とした。
人は、ここまで寂しい表情をするものなのか。
あわせて読みたい
【意外】東京裁判の真実を記録した映画。敗戦国での裁判が実に”フェア”に行われたことに驚いた:『東京…
歴史に詳しくない私は、「東京裁判では、戦勝国が理不尽な裁きを行ったのだろう」という漠然としたイメージを抱いていた。しかし、その印象はまったくの誤りだった。映画『東京裁判 4Kリマスター版』から東京裁判が、いかに公正に行われたのかを知る
「司法の世界」と「市民の世界」が異なるのは当然だ。しかしそれでも私たちは、「自分の直感に逆らうのだとしても司法の世界で『真実』と定まったことを『真実』として受け入れる姿勢」を持たなければならないと思う。もちろん、その姿勢が「冤罪」を生むことにも繋がり得るわけで、諸刃の剣ではある。だからこそ、「『誤り』が正される仕組み」も同時に存在すべきなのだ。清水潔の取材はその最高峰と言っていいだろうが、本来はこのような“遠回り”をせずとも、「誤り」が正されるべきだろう。
いずれにしても、「私たちが関心を持ち、正しく理解すること」が何よりも重要だということに変わりはない。
もちろん、世の中のすべての「問題」に関心を持つことなど不可能だ。ただ、「私たちはその『問題』に関心を持っている」と広く理解されることで、その「問題」に関する情報が自然と世の中に流れ込んでくることになる。いつの時代も、「より多くの人が関心を持つ情報」がメディアで取り上げられるのだし、当たり前だが、それがどれだけ公益に関わるものだとしても、私たちが関心を示さなければ情報として届きはしない。
あわせて読みたい
【デマ】情報を”選ぶ”時代に、メディアの情報の”正しさ”はどのように判断されるのか?:『ニューヨーク…
一昔前、我々は「正しい情報を欲していた」はずだ。しかしいつの間にか世の中は変わった。「欲しい情報を正しいと思う」ようになったのだ。この激変は、トランプ元大統領の台頭で一層明確になった。『ニューヨーク・タイムズを守った男』から、情報の受け取り方を問う
つまり、「『私たちの関心』こそが『公権力に対する監視』になる」と言っていいだろう。これはとても重要な理解だと私は思っている。
さてその上で、「メディアからの情報をどう捉えるか」についても考えなければならない。
清水潔が指摘する「マスコミの問題」についてはこの後で具体的に書いていくが、ここではまず、より全体的な難しさに触れておこうと思う。以前読んだ『こうして世界は誤解する』に書かれていた、「メディアがどれほど『現実』を正しく伝えられないか」に関する指摘だ。簡単に主張を要約しておくと、「『動物園にいる動物』と『野生の動物』は違う」ということになる。
あわせて読みたい
【無知】メディアの問題の本質は?「報道の限界」と「情報の受け取り方」を独裁政治の現実から知る:『…
メディアは確かに「事実」を報じている。しかし、報道に乗らない情報まで含めなければ、本当の意味で世の中を理解することは難しいと、『こうして世界は誤解する』は教えてくれる。アラブ諸国での取材の現実から、報道の「限界」と「受け取り方」を学ぶ
上の記事でも書いた通り、『こうして世界は誤解する』の著者は「メディアで切り取られる現実」と「実際に目で見る現実」のギャップに驚かされたという。情報発信側が「意図的に誤認させよう」という意思を持っていなかったとしても、「メディア」というものが持つ特性により、現実が歪曲されて伝わってしまうというのだ。
それは、こんな風にイメージすると理解しやすいだろう。私たちは、なかなか野生の動物を見る機会がない。だから動物園に行って、その姿を知ろうとする。しかし当然だが、「動物園にいる動物」と「野生の動物」の振る舞いはまったく違う。「動物園」という狭い環境にいるが故の違いもあるだろうし、あるいは、来園客の多くが昼間やってくるのだから、夜行性の動物の印象も野生とはまた大きく変わることになるだろう。
あわせて読みたい
【解説】実話を基にした映画『シカゴ7裁判』で知る、「権力の暴走」と、それに正面から立ち向かう爽快さ
ベトナム戦争に反対する若者たちによるデモと、その後開かれた裁判の実話を描く『シカゴ7裁判』はメチャクチャ面白い映画だった。無理筋の起訴を押し付けられる主席検事、常軌を逸した言動を繰り返す不適格な判事、そして一枚岩にはなれない被告人たち。魅力満載の1本だ
メディアの役割も似たようなところがある。「事実そのもの」をそのままの形で見せることは難しい。だからそれを、「見せやすい、届けやすい形」に加工して流す。しかしそれは「動物園に動物を運んでくる」ような行為であり、「野生のままの動物の姿(事実そのもの)」ではなくなってしまうというわけだ。
あわせて読みたい
【矛盾】その”誹謗中傷”は真っ当か?映画『万引き家族』から、日本社会の「善悪の判断基準」を考える
どんな理由があれ、法を犯した者は罰せられるべきだと思っている。しかしそれは、善悪の判断とは関係ない。映画『万引き家族』(是枝裕和監督)から、「国民の気分」によって「善悪」が決まる社会の是非と、「善悪の判断を保留する勇気」を持つ生き方について考える
それが日常的ではない現実であればあるほど、情報を得るために私たちはメディアの力を借りる必要がある。しかし、メディアからの情報をそのまま受け取ることは決して適切ではない。私たちはそのことを正しく理解した上で「情報」に接しなければならないのである。
『殺人犯はそこにいる』で著者が指摘する「マスコミの問題」は、「無自覚な悪意」から生まれるものだとも言えるし、今説明した「『動物園にいる動物』と『野生の動物』は違う」という問題と直接的に重なりはしない。しかしいずれにしても、「メディアからの情報の受け取り方に気をつけなければならない」という教訓は同じだ。著者が鳴らす警鐘を、きちんと受け取るべきだと感じさせられる。
あわせて読みたい
【葛藤】正論を振りかざしても、「正しさとは何か」に辿り着けない。「絶対的な正しさ」など存在しない…
「『正しさ』は人によって違う」というのは、私には「当たり前の考え」に感じられるが、この前提さえ共有できない社会に私たちは生きている。映画『由宇子の天秤』は、「誤りが含まれるならすべて間違い」という判断が当たり前になされる社会の「不寛容さ」を切り取っていく
自身もマスコミに属する清水潔が指摘する「マスコミの問題点」
著者は、「取材記者」としての自身のスタンスについてこんな風に書いている。
あわせて読みたい
【感想】実業之日本社『少女の友』をモデルに伊吹有喜『彼方の友へ』が描く、出版に懸ける戦時下の人々
実業之日本社の伝説の少女雑誌「少女の友」をモデルに、戦時下で出版に懸ける人々を描く『彼方の友へ』(伊吹有喜)。「戦争そのもの」を描くのではなく、「『日常』を喪失させるもの」として「戦争」を描く小説であり、どうしても遠い存在に感じてしまう「戦争」の捉え方が変わる1冊
そもそも報道とは何のために存在するのか――。
この事件の取材にあたりながら、私はずっと自分に問うてきた。
職業記者にとって、取材し報じることは当然、仕事だ。ならば給料に見合ったことをやればよい、という考え方もあるだろう。だが、私の考えはちょっと違う。(中略)
権力や肩書き付きの怒声など、放っておいても響き渡る。だが、小さな声は違う。国家や世間へは届かない。その架け橋になることこそが報道の使命なのかもしれない、と。
そう、清水潔はひたすら「小さな声」に耳を傾けることに終止するのだ。
あわせて読みたい
【異常】「助けて」と言えない。自己責任社会のしんどさと、我が子がホームレスである可能性:『助けて…
39歳で餓死した男性は、何故誰にも助けを求めなかったのか?異常な視聴率を叩き出した、NHK「クローズアップ現代」の特集を元に書かれた『助けてと言えない』をベースに、「自己責任社会」の厳しさと、若者が置かれている現実について書く。
そして何より、「一番小さな声を聞け」――。それは私の第一の取材ルールであり、言い方を換えれば「縛り」とすら言えるものだ。この事件ならそれは四歳で殺害された真実ちゃんの声であり、その代弁ができるのは親しかいない。
一昔前の事件取材では、「報道被害」という言葉が生まれるほど、加害者側だけではなく被害者側への取材も苛烈だった。現代では「コンプライアンス」の名の下にだいぶ状況は変わっているだろう。しかしそうなのだとして、被害者側が抱く「マスコミへの不信感」も同じように減じているかと言えば、そんなはずはないと思う。
あわせて読みたい
【狂気】アメリカの衝撃の実態。民営刑務所に刑務官として潜入した著者のレポートは国をも動かした:『…
アメリカには「民営刑務所」が存在する。取材のためにその1つに刑務官として潜入した著者が記した『アメリカン・プリズン』は信じがたい描写に溢れた1冊だ。あまりに非人道的な行いがまかり通る狂気の世界と、「民営刑務所」が誕生した歴史的背景を描き出すノンフィクション
それでも著者は、罵倒されることを承知で、「小さな声」を拾うために被害者家族にアプローチする。「小さな声」を拾うことこそが、清水潔にとっての「矜持」だからだ。
あわせて読みたい
【絶望】「人生上手くいかない」と感じる時、彼を思い出してほしい。壮絶な過去を背負って生きる彼を:…
「北九州連続監禁殺人事件」という、マスコミも報道規制するほどの残虐事件。その「主犯の息子」として生きざるを得なかった男の壮絶な人生。「ザ・ノンフィクション」のプロデューサーが『人殺しの息子と呼ばれて』で改めて取り上げた「真摯な男」の生き様と覚悟
そんな著者にとって「マスコミによる報道」は、違和感をもたらすものでしかない。
人様に指摘されるまでもなく、被害者の家族は自分の犯したミスを悔み続けている。娘を、誰よりもかわいい娘を、パチンコ店に連れていってしまったことを悩み、涙を流し、生きてきた。日々の生活の中で”パチンコ“という言葉に触れるだけで、どれほど傷ついてきたことか。そんな人達をさらに追い込み、「私達とは関係ない」などと人々を安心させるために報道はあるのだろうか。
その通りだ。それが「悪意を持った人物による犯行」なのだとすれば、被害者側のミスに言及するような報道は無意味でしかない。被害者側に非があるケースもゼロではないだろうが、大体の場合、被害者側の振る舞いに関係なく事件は起こってしまうはずだからだ。
あわせて読みたい
【実話】「家族とうまくいかない現実」に正解はあるか?選択肢が無いと感じる時、何を”選ぶ”べきか?:…
「自分の子どもなんだから、どんな風に育てたって勝手でしょ」という親の意見が正しいはずはないが、この言葉に反論することは難しい。虐待しようが生活能力が無かろうが、親は親だからだ。映画『MOTHER マザー』から、不正解しかない人生を考える
そんな著者が考える「報道」の価値は明快である。
私は思う。
事件、事故報道の存在意義など一つしかない。
被害者を実名で取り上げ、遺族の悲しみを招いてまで報道を行う意義は、これぐらいしかないのではないか。
再発防止だ。
少女たちが消えるようなことが二度とあってはならない。
だからこそ真相を究明する必要があるのではないか。
本当にそうだと思う。被害者側に「苦痛」を強いてまで事件の全貌を明らかにしようとする行為が正当化される唯一の理由は、「再発防止」しかないはずだ。この点が正しく認識されていないように感じられる報道には違和感しか覚えないし、「間違っている」とさえ感じてしまう。
そして、マスコミを内部から見ている著者の目にも、マスコミの多くが「再発防止」「真相究明」など目指していないように映るのだ。今のマスコミの仕事は、「お上」である警察の発表を垂れ流すことでしかない。事件事故の報道においては、「『お上』が担保してくれた情報でなければ報じられない」という空気がマスコミに蔓延しているというのだ。
あわせて読みたい
【評価】元総理大臣・菅義偉の来歴・政治手腕・疑惑を炙り出す映画。権力を得た「令和おじさん」の素顔…
「地盤・看板・カバン」を持たずに、総理大臣にまで上り詰めた菅義偉を追うドキュメンタリー映画『パンケーキを毒見する』では、その来歴や政治手腕、疑惑などが描かれる。学生団体「ivote」に所属する現役大学生による「若者から政治はどう見えるか」も興味深い
それ故に、「お上」を敵に回すような報道をするメディアはほとんどない。
そもそも、刑事事件の冤罪の可能性を報じる記者や大手メディアは少ない。特に確定した判決に噛みつく記者となればなおのこと。「国」と真正面からぶつかる報道となるからだろう。容疑者を逮捕する警察。起訴する検察。判決が出ていれば裁判所。そのいずれかと、あるいはそのすべてと対峙することとなってしまう。
あわせて読みたい
【奇跡】信念を貫いた男が国の制度を変えた。特別養子縁組を実現させた石巻の産婦人科医の執念:『赤ち…
遊郭で生まれ育った石巻の医師が声を上げ、あらゆる障害をなぎ倒して前進したお陰で「特別養子縁組」の制度が実現した。そんな産婦人科医・菊田昇の生涯を描き出す小説『赤ちゃんをわが子として育てる方を求む』には、法を犯してでも信念を貫いた男の衝撃の人生が描かれている
つまり逆に言えば、「マスコミに流れる情報」は「お上(警察)が流したいと考える情報」に過ぎないということだ。それは、お上(警察)が何かを隠蔽したいと意図するなら、簡単に実現できてしまうということでもある。マスコミに、「権力側に加担する意図」があるかどうかは関係ない。マスコミを取り巻く様々な環境・構造が、必然的に権力側に有利な状況を生み出してしまっているのである。
そもそも、それがどんな情報であれ、無批判に受け取ることは危険だ。さらにその上で、「構造的に、マスコミの情報には『権力側の隠蔽』が入り込み得る」と理解しておくことは、情報の受け手として非常に大事だろうと思う。
あわせて読みたい
【悲哀】2度の東京オリンピックに翻弄された都営アパートから「公共の利益」と「個人の権利」を考える:…
1964年の東京オリンピックを機に建設された「都営霞ケ丘アパート」は、東京オリンピック2020を理由に解体が決まり、長年住み続けた高齢の住民に退去が告げられた。「公共の利益」と「個人の権利」の狭間で翻弄される人々の姿を淡々と映し出し、静かに「社会の在り方」を問う映画
本書が事件ノンフィクションでありながら、事件の「本記」に加えて、事件の「側面」や「その後」、「記者自身の行動」にもページを割いたのは、日々流れているニュースの裏側には、実は多くの情報が埋没していることを知ってもらいたかったからだった。
清水潔の取材は、個別の事件に着目することで始まったのだが、その奮闘が、より包括的で大きな問題を炙り出すことにも繋がった。私たちがどのような「現実」の中で生きているのか、その一端を窺わせてくれる作品だ。
著:清水 潔
¥742 (2022/06/05 21:02時点 | Amazon調べ)
ポチップ
最後に
あわせて読みたい
【あらすじ】死刑囚を救い出す実話を基にした映画『黒い司法』が指摘する、死刑制度の問題と黒人差別の現実
アメリカで死刑囚の支援を行う団体を立ち上げた若者の実話を基にした映画『黒い司法 0%からの奇跡』は、「死刑制度」の存在価値について考えさせる。上映後のトークイベントで、アメリカにおける「死刑制度」と「黒人差別」の結びつきを知り、一層驚かされた
偉そうなことを言うつもりなど毛頭ない。山ほど失敗してきた私だ。ただ愚直にやるしか私には方法がないのだ。権力もない、金もない、ただマスコミの端っこに食らいついているだけのおっさんができることなど、そう多くはない。
この言葉は、「日本テレビの社員」としてではなく、週刊誌記者時代の立場を踏まえたものだと捉えるべきだろう。「桶川ストーカー殺人事件」の際は、記者クラブに入れなかったため、警察からの情報を入手出来ずにいた。そんな制約の中で、社会を動かす調査報道をやってのけたのだ。日本テレビに移ってからも、「現場百遍」という言葉ではぬるいくらい足をすり減らし、地道な取材を徹底して続けた。
あわせて読みたい
【驚愕】ロバート・キャパの「崩れ落ちる兵士」は真実を写しているのか?沢木耕太郎が真相に迫る:『キ…
戦争写真として最も有名なロバート・キャパの「崩れ落ちる兵士」は、「本当に銃撃された瞬間を撮影したものか?」という真贋問題が長く議論されてきた。『キャパの十字架』は、そんな有名な謎に沢木耕太郎が挑み、予想だにしなかった結論を導き出すノンフィクション
そんな著者が、「もう本を出版する以外に残された手段がない」と言うほどの状況に置かれている。あらゆる手を尽くしたものの、それでも警察・司法は動かなかった。だから後は私たち市民に託すしかないというわけだ。私たちが関心を強く抱けばきっと、権力側も折れるしかなくなるだろう。そこまでいっても何も変わらないなら、「法治国家・日本」そのものを諦めるしかないと思う。
本書は、清水潔から私たちに託されたバトンのようなものだ。
私たちにできることはなんだろうか?
次にオススメの記事
あわせて読みたい
【感想】実業之日本社『少女の友』をモデルに伊吹有喜『彼方の友へ』が描く、出版に懸ける戦時下の人々
実業之日本社の伝説の少女雑誌「少女の友」をモデルに、戦時下で出版に懸ける人々を描く『彼方の友へ』(伊吹有喜)。「戦争そのもの」を描くのではなく、「『日常』を喪失させるもの」として「戦争」を描く小説であり、どうしても遠い存在に感じてしまう「戦争」の捉え方が変わる1冊
あわせて読みたい
【実話】ポートアーサー銃乱射事件を扱う映画『ニトラム』が示す、犯罪への傾倒に抗えない人生の不条理
オーストラリアで実際に起こった銃乱射事件の犯人の生い立ちを描く映画『ニトラム/NITRAM』は、「頼むから何も起こらないでくれ」と願ってしまうほどの異様な不穏さに満ちている。「社会に順応できない人間」を社会がどう受け入れるべきかについて改めて考えさせる作品だ
あわせて読みたい
【実話】ソ連の衝撃の事実を隠蔽する記者と暴く記者。映画『赤い闇』が描くジャーナリズムの役割と実態
ソ連の「闇」を暴いた名もなき記者の実話を描いた映画『赤い闇』は、「メディアの存在意義」と「メディアとの接し方」を問いかける作品だ。「真実」を届ける「社会の公器」であるべきメディアは、容易に腐敗し得る。情報の受け手である私たちの意識も改めなければならない
あわせて読みたい
【挑戦】手足の指を失いながら、今なお挑戦し続ける世界的クライマー山野井泰史の”現在”を描く映画:『…
世界的クライマーとして知られる山野井泰史。手足の指を10本も失いながら、未だに世界のトップをひた走る男の「伝説的偉業」と「現在」を映し出すドキュメンタリー映画『人生クライマー』には、小学生の頃から山のことしか考えてこなかった男のヤバい人生が凝縮されている
あわせて読みたい
【衝撃】匿名監督によるドキュメンタリー映画『理大囲城』は、香港デモ最大の衝撃である籠城戦の内部を映す
香港民主化デモにおける最大の衝撃を内側から描く映画『理大囲城』は、とんでもないドキュメンタリー映画だった。香港理工大学での13日間に渡る籠城戦のリアルを、デモ隊と共に残って撮影し続けた匿名監督たちによる映像は、ギリギリの判断を迫られる若者たちの壮絶な現実を映し出す
あわせて読みたい
【解説】実話を基にした映画『シカゴ7裁判』で知る、「権力の暴走」と、それに正面から立ち向かう爽快さ
ベトナム戦争に反対する若者たちによるデモと、その後開かれた裁判の実話を描く『シカゴ7裁判』はメチャクチャ面白い映画だった。無理筋の起訴を押し付けられる主席検事、常軌を逸した言動を繰り返す不適格な判事、そして一枚岩にはなれない被告人たち。魅力満載の1本だ
あわせて読みたい
【あらすじ】映画『モーリタニアン 黒塗りの記録』で描かれる、グアンタナモ”刑務所”の衝撃の実話は必見
ベネディクト・カンバーバッチが制作を熱望した衝撃の映画『モーリタニアン 黒塗りの記録』は、アメリカの信じがたい実話を基にしている。「9.11の首謀者」として不当に拘束され続けた男を「救おうとする者」と「追い詰めようとする者」の奮闘が、「アメリカの闇」を暴き出す
あわせて読みたい
【異様】西成のあいりん地区を舞台にした映画『解放区』は、リアルとフェイクの境界が歪んでいる
ドキュメンタリー映画だと思って観に行った『解放区』は、実際にはフィクションだったが、大阪市・西成区を舞台にしていることも相まって、ドキュメンタリー感がとても強い。作品から放たれる「異様さ」が凄まじく、「自分は何を観せられているんだろう」という感覚に襲われた
あわせて読みたい
【執念】「桶川ストーカー事件」で警察とマスコミの怠慢を暴き、社会を動かした清水潔の凄まじい取材:…
『殺人犯はそこにいる』(文庫X)で凄まじい巨悪を暴いた清水潔は、それよりずっと以前、週刊誌記者時代にも「桶川ストーカー殺人事件」で壮絶な取材を行っていた。著者の奮闘を契機に「ストーカー規制法」が制定されたほどの事件は、何故起こり、どんな問題を喚起したのか
あわせて読みたい
【あらすじ】映画『1917』は、ワンカット風の凄まじい撮影手法が「戦場の壮絶な重圧」を見事に体感させる
映画『1917 命をかけた伝令』は、「全編ワンカット風」という凄まじい撮影手法で注目されたが、私は、その撮影手法が「戦場における緊迫感」を見事に増幅させているという点に驚かされた。「物語の中身」と「撮影手法」が素晴らしく合致したとんでもない作品だ
あわせて読みたい
【あらすじ】蝦夷地の歴史と英雄・阿弖流為を描く高橋克彦の超大作小説『火怨』は全人類必読の超傑作
大げさではなく、「死ぬまでに絶対に読んでほしい1冊」としてお勧めしたい高橋克彦『火怨』は凄まじい小説だ。歴史が苦手で嫌いな私でも、上下1000ページの物語を一気読みだった。人間が人間として生きていく上で大事なものが詰まった、矜持と信念に溢れた物語に酔いしれてほしい
あわせて読みたい
【革命】観る将必読。「将棋を観ること」の本質、より面白くなる見方、そして羽生善治の凄さが満載:『…
野球なら「なんで今振らないんだ!」みたいな素人の野次が成立するのに、将棋は「指せなきゃ観てもつまらない」と思われるのは何故か。この疑問を起点に、「将棋を観ること」と「羽生善治の凄さ」に肉薄する『羽生善治と現代』は、「将棋鑑賞」をより面白くしてくれる話が満載
あわせて読みたい
【狂気】アメリカの衝撃の実態。民営刑務所に刑務官として潜入した著者のレポートは国をも動かした:『…
アメリカには「民営刑務所」が存在する。取材のためにその1つに刑務官として潜入した著者が記した『アメリカン・プリズン』は信じがたい描写に溢れた1冊だ。あまりに非人道的な行いがまかり通る狂気の世界と、「民営刑務所」が誕生した歴史的背景を描き出すノンフィクション
あわせて読みたい
【挑戦】相対性理論の光速度不変の原理を無視した主張『光速より速い光』は、青木薫訳だから安心だぞ
『光速より速い光』というタイトルを見て「トンデモ本」だと感じた方、安心してほしい。「光速変動理論(VSL理論)」が正しいかどうかはともかくとして、本書は実に真っ当な作品だ。「ビッグバン理論」の欠陥を「インフレーション理論」以外の理屈で補う挑戦的な仮説とは?
あわせて読みたい
【驚愕】一般人スパイが北朝鮮に潜入する映画『THE MOLE』はとてつもないドキュメンタリー映画
映画『THE MOLE』は、「ホントにドキュメンタリーなのか?」と疑いたくなるような衝撃映像満載の作品だ。「『元料理人のデンマーク人』が勝手に北朝鮮に潜入する」というスタートも謎なら、諜報経験も軍属経験もない男が北朝鮮の秘密をバンバン解き明かす展開も謎すぎる。ヤバい
あわせて読みたい
【圧巻】150年前に気球で科学と天気予報の歴史を変えた挑戦者を描く映画『イントゥ・ザ・スカイ』
「天気予報」が「占い」と同等に扱われていた1860年代に、気球を使って気象の歴史を切り開いた者たちがいた。映画『イントゥ・ザ・スカイ』は、酸素ボンベ無しで高度1万1000m以上まで辿り着いた科学者と気球操縦士の物語であり、「常識を乗り越える冒険」の素晴らしさを教えてくれる
あわせて読みたい
【思考】戸田真琴、経験も文章もとんでもない。「人生どうしたらいい?」と悩む時に読みたい救いの1冊:…
「AV女優のエッセイ」と聞くと、なかなか手が伸びにくいかもしれないが、戸田真琴『あなたの孤独は美しい』の、あらゆる先入観を吹っ飛ばすほどの文章力には圧倒されるだろう。凄まじい経験と、普通ではない思考を経てAV女優に至った彼女の「生きる指針」は、多くの人の支えになるはずだ
あわせて読みたい
【感想】是枝裕和映画『ベイビー・ブローカー』は、「赤ちゃんポスト」を起点に「正義とは何か」を描く
韓国に多数存在するという「赤ちゃんポスト」を題材にした是枝裕和監督映画『ベイビー・ブローカー』は、「正義とは何か」を問いかける。「中絶はOKで、捨てるのはNG」という判断は不合理だし、「最も弱い関係者が救われる」ことが「正義」だと私は思う
あわせて読みたい
【欠落】映画『オードリー・ヘプバーン』が映し出す大スターの生き方。晩年に至るまで生涯抱いた悲しみ…
映画『オードリー・ヘプバーン』は、世界的大スターの知られざる素顔を切り取るドキュメンタリーだ。戦争による壮絶な飢え、父親の失踪、消えぬ孤独感、偶然がもたらした映画『ローマの休日』のオーディション、ユニセフでの活動など、様々な証言を元に稀代の天才を描き出す
あわせて読みたい
【奇跡】信念を貫いた男が国の制度を変えた。特別養子縁組を実現させた石巻の産婦人科医の執念:『赤ち…
遊郭で生まれ育った石巻の医師が声を上げ、あらゆる障害をなぎ倒して前進したお陰で「特別養子縁組」の制度が実現した。そんな産婦人科医・菊田昇の生涯を描き出す小説『赤ちゃんをわが子として育てる方を求む』には、法を犯してでも信念を貫いた男の衝撃の人生が描かれている
あわせて読みたい
【あらすじ】死刑囚を救い出す実話を基にした映画『黒い司法』が指摘する、死刑制度の問題と黒人差別の現実
アメリカで死刑囚の支援を行う団体を立ち上げた若者の実話を基にした映画『黒い司法 0%からの奇跡』は、「死刑制度」の存在価値について考えさせる。上映後のトークイベントで、アメリカにおける「死刑制度」と「黒人差別」の結びつきを知り、一層驚かされた
あわせて読みたい
【不謹慎】コンプライアンス無視の『テレビで会えない芸人』松元ヒロを追う映画から芸と憲法を考える
かつてテレビの世界で大ブレイクを果たしながら、現在はテレビから完全に離れ、年間120もの公演を行う芸人・松元ヒロ。そんな知る人ぞ知る芸人を追った映画『テレビで会えない芸人』は、コンプライアンスに厳しく、少数派が蔑ろにされる社会へ一石を投じる、爆笑社会風刺である
あわせて読みたい
【悲劇】アメリカの暗黒の歴史である奴隷制度の現実を、元奴隷の黒人女性自ら赤裸々に語る衝撃:『ある…
生まれながらに「奴隷」だった黒人女性が、多くの人の協力を得て自由を手にし、後に「奴隷制度」について書いたのが『ある奴隷少女に起こった出来事』。長らく「白人が書いた小説」と思われていたが、事実だと証明され、欧米で大ベストセラーとなった古典作品が示す「奴隷制度の残酷さ」
あわせて読みたい
【闘い】デュポン社のテフロン加工が有害だと示した男の執念の実話を描く映画『ダーク・ウォーターズ』
世界的大企業デュポン社が、自社製品「テフロン」の危険性を40年以上前に把握しながら公表せず、莫大な利益を上げてきたことを暴き出した1人の弁護士がいる。映画『ダーク・ウォーターズ』は、大企業相手に闘いを挑み、住民と正義のために走り続けた実在の人物の勇敢さを描き出す
あわせて読みたい
【狂気】”友好”のために北朝鮮入りした監督が撮った映画『ザ・レッド・チャペル』が映す平壌の衝撃
倫理的な葛藤を物ともせず、好奇心だけで突き進んでいくドキュメンタリー監督マッツ・ブリュガーが北朝鮮から「出禁」を食らう結果となった『ザ・レッド・チャペル』は、「友好」を表看板に北朝鮮に潜入し、その「日常」と「非日常」を映し出した衝撃作
あわせて読みたい
【現実】権力を乱用する中国ナチスへの抵抗の最前線・香港の民主化デモを映す衝撃の映画『時代革命』
2019年に起こった、逃亡犯条例改正案への反対運動として始まった香港の民主化デモ。その最初期からデモ参加者たちの姿をカメラに収め続けた。映画『時代革命』は、最初から最後まで「衝撃映像」しかない凄まじい作品だ。この現実は決して、「対岸の火事」ではない
あわせて読みたい
【芸術】実話を下敷きに描く映画『皮膚を売った男』は、「アートによる鮮やかな社会問題風刺」が見事
「シリア難民の背中にタトゥーを彫り芸術作品として展示する」と聞くと非常に不謹慎に感じられるだろうが、彫ったのが国家間の移動を自由にする「シェンゲンビザ」だという点が絶妙な皮肉。実話をベースにした映画『皮膚を売った男』の、アートによる社会問題提起の見事な鮮やかさ
あわせて読みたい
【危機】災害時、「普通の人々」は冷静に、「エリート」はパニックになる。イメージを覆す災害学の知見…
地震やテロなどの大災害において、人々がどう行動するのかを研究する「災害学」。その知見が詰まった『災害ユートピア』は、ステレオタイプなイメージを一変させてくれる。有事の際には市民ではなくエリートこそが暴走する。そしてさらに、災害は様々な社会的な変化も促しもする
あわせて読みたい
【憤り】世界最強米海軍4人VS数百人のタリバン兵。死線を脱しただ1人生還を果たした奇跡の実話:『アフ…
アフガニスタンの山中で遭遇した羊飼いを見逃したことで、数百人のタリバン兵と死闘を繰り広げる羽目に陥った米軍最強部隊に所属する4人。奇跡的に生き残り生還を果たした著者が記す『アフガン、たった一人の生還』は、とても実話とは信じられない凄まじさに満ちている
あわせて読みたい
【病理】本田靖春が「吉展ちゃん事件」を追う。誘拐を捜査する警察のお粗末さと時代を反映する犯罪:『…
「戦後最大の誘拐事件」と言われ、警察の初歩的なミスなどにより事件解決に膨大な月日を要した「吉展ちゃん誘拐殺人事件」。その発端から捜査体制、顛末までをジャーナリスト・本田靖春が徹底した取材で描き出す『誘拐』は、「『犯罪』とは『社会の病理』である」と明確に示している
あわせて読みたい
【誇り】福島民友新聞の記者は、東日本大震災直後海に向かった。門田隆将が「新聞人の使命」を描く本:…
自身も東日本大震災の被災者でありながら、「紙齢をつなぐ」ために取材に奔走した福島民友新聞の記者の面々。『記者たちは海に向かった』では、取材中に命を落とした若手記者を中心に据え、葛藤・後悔・使命感などを描き出す。「新聞」という”モノ”に乗っかっている重みを実感できる1冊
あわせて読みたい
【衝撃】洗脳を自ら脱した著者の『カルト脱出記』から、「社会・集団の洗脳」を避ける生き方を知る
「聖書研究に熱心な日本人証人」として「エホバの証人」で活動しながら、その聖書研究をきっかけに自ら「洗脳」を脱した著者の体験を著した『カルト脱出記』。広い意味での「洗脳」は社会のそこかしこに蔓延っているからこそ、著者の体験を「他人事」だと無視することはできない
あわせて読みたい
【不安】環境活動家グレタを追う映画。「たったひとりのストライキ」から国連スピーチまでの奮闘と激変…
環境活動家であるグレタのことを、私はずっと「怒りの人」「正義の人」だとばかり思っていた。しかしそうではない。彼女は「不安」から、いても立ってもいられずに行動を起こしただけなのだ。映画『グレタ ひとりぼっちの挑戦』から、グレタの実像とその強い想いを知る
あわせて読みたい
【感想】リドリー・スコット監督の映画『最後の決闘裁判』から、社会が”幻想”を共有する背景とその悲劇…
例えば、「1万円札」というただの紙切れに「価値を感じる」のは、社会の構成員が同じ「共同幻想」の中に生きているからだ。リドリー・スコット監督の映画『最後の決闘裁判』は、「強姦では妊娠しない」「裁判の勝者を決闘で決する」という社会通念と、現代にも通じる「共同幻想」の強さを描き出す
あわせて読みたい
【衝撃】権力の濫用、政治腐敗を描く映画『コレクティブ』は他人事じゃない。「国家の嘘」を監視せよ
火災で一命を取り留め入院していた患者が次々に死亡した原因が「表示の10倍に薄められた消毒液」だと暴き、国家の腐敗を追及した『ガゼタ』誌の奮闘を描く映画『コレクティブ 国家の嘘』は、「権力の監視」が機能しなくなった国家の成れの果てが映し出される衝撃作だ
あわせて読みたい
【衝撃】『ゆきゆきて、神軍』はとんでもないドキュメンタリー映画だ。虚実が果てしなく入り混じる傑作
奥崎謙三という元兵士のアナーキストに密着する『ゆきゆきて、神軍』。ドキュメンタリー映画の名作として名前だけは知っていたが、まさかこんなとんでもない映画だったとはと驚かされた。トークショーで監督が「自分の意向を無視した編集だった」と語っていたのも印象的
あわせて読みたい
【実話】「アウシュビッツ・レポート」に記載された「収容所の記録」を持ち出した驚愕の史実を描く映画
アウシュビッツ強制収容所から抜け出し、詳細な記録と共にホロコーストの実態を世界に明らかにした人物がいる。そんな史実を私はまったく知らなかった。世界がホロコーストを知るきっかけとなった2人の奮闘を描く映画『アウシュヴィッツ・レポート』の凄まじい衝撃
あわせて読みたい
【凄絶】北朝鮮の”真実”を描くアニメ映画。強制収容所から決死の脱出を試みた者が語る驚愕の実態:『ト…
在日コリアン4世の監督が、北朝鮮脱北者への取材を元に作り上げた壮絶なアニメ映画『トゥルーノース』は、私たちがあまりに恐ろしい世界と地続きに生きていることを思い知らせてくれる。最低最悪の絶望を前に、人間はどれだけ悪虐になれてしまうのか、そしていかに優しさを発揮できるのか。
あわせて読みたい
【勇敢】ユダヤ人を救った杉原千畝を描く映画。日本政府の方針に反しながら信念を貫いた男の生き様
日本政府の方針に逆らってまでユダヤ人のためにビザを発給し続けた外交官を描く映画『杉原千畝』。日本を良くしたいと考えてモスクワを夢見た青年は、何故キャリアを捨てる覚悟で「命のビザ」を発給したのか。困難な状況を前に、いかに決断するかを考えさせられる
あわせて読みたい
【実話】映画『ハドソン川の奇跡』の”糾弾された英雄”から、「正しさ」をどう「信じる」かを考える
制御不能の飛行機をハドソン川に不時着させ、乗員乗客155名全員の命を救った英雄はその後、「わざと機体を沈め損害を与えたのではないか」と疑われてしまう。映画『ハドソン川の奇跡』から、「正しさ」の難しさと、「『正しさ』の枠組み」の重要性を知る
あわせて読みたい
【葛藤】正義とは何かを突きつける戦争映画。80人を救うために1人の少女を殺すボタンを押せるか?:『ア…
「80人の命を救うために、1人の少女の命を奪わなければならない」としたら、あなたはその決断を下せるだろうか?会議室で展開される現代の戦争を描く映画『アイ・イン・ザ・スカイ』から、「誤った問い」に答えを出さなければならない極限状況での葛藤を理解する
あわせて読みたい
【残念】日本の「難民受け入れ」の現実に衝撃。こんな「恥ずべき国」に生きているのだと絶望させられる…
日本の「難民認定率」が他の先進国と比べて異常に低いことは知っていた。しかし、日本の「難民」を取り巻く実状がこれほど酷いものだとはまったく知らなかった。日本で育った2人のクルド人難民に焦点を当てる映画『東京クルド』から、日本に住む「難民」の現実を知る
あわせて読みたい
【実話】権力の濫用を監視するマスコミが「教会の暗部」を暴く映画『スポットライト』が現代社会を斬る
地方紙である「ボストン・グローブ紙」は、数多くの神父が長年に渡り子どもに対して性的虐待を行い、その事実を教会全体で隠蔽していたという衝撃の事実を明らかにした。彼らの奮闘の実話を映画化した『スポットライト』から、「権力の監視」の重要性を改めて理解する
あわせて読みたい
【実話】暗号機エニグマ解読のドラマと悲劇を映画化。天才チューリングはなぜ不遇の死を遂げたのか:『…
「解読不可能」とまで言われた最強の暗号機エニグマを打ち破ったのは、コンピューターの基本原理を生み出した天才数学者アラン・チューリングだった。映画『イミテーションゲーム』から、1400万人以上を救ったとされながら、偏見により自殺した不遇の人生を知る
あわせて読みたい
【書評】奇跡の”国家”「ソマリランド」に高野秀行が潜入。崩壊国家・ソマリア内で唯一平和を保つ衝撃の”…
日本の「戦国時代」さながらの内戦状態にあるソマリア共和国内部に、十数年に渡り奇跡のように平和を維持している”未承認国家”が存在する。辺境作家・高野秀行の『謎の独立国家ソマリランド』から、「ソマリランド」の理解が難しい理由と、「奇跡のような民主主義」を知る
あわせて読みたい
【想像力】「知らなかったから仕方ない」で済ませていいのか?第二の「光州事件」は今もどこかで起きて…
「心地いい情報」だけに浸り、「知るべきことを知らなくても恥ずかしくない世の中」を生きてしまっている私たちは、世界で何が起こっているのかあまりに知らない。「光州事件」を描く映画『タクシー運転手 約束は海を越えて』から、世界の見方を考える
あわせて読みたい
【実話】障害者との接し方を考えさせる映画『こんな夜更けにバナナかよ』から”対等な関係”の大事さを知る
「障害者だから◯◯だ」という決まりきった捉え方をどうしてもしてしまいがちですが、『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』の主人公・鹿野靖明の生き様を知れば、少しは考え方が変わるかもしれません。筋ジストロフィーのまま病院・家族から離れて“自活”する決断をした驚異の人生
あわせて読みたい
【情熱】映画『パッドマン』から、女性への偏見が色濃く残る現実と、それを打ち破ったパワーを知る
「生理は語ることすらタブー」という、21世紀とは思えない偏見が残るインドで、灰や汚れた布を使って経血を処理する妻のために「安価な生理用ナプキン」の開発に挑んだ実在の人物をモデルにした映画『パッドマン 5億人の女性を救った男』から、「どう生きたいか」を考える
あわせて読みたい
【貢献】飛行機を「安全な乗り物」に決定づけたMr.トルネードこと天才気象学者・藤田哲也の生涯:『Mr….
つい数十年前まで、飛行機は「死の乗り物」だったが、天才気象学者・藤田哲也のお陰で世界の空は安全になった。今では、自動車よりも飛行機の方が死亡事故の少ない乗り物なのだ。『Mr.トルネード 藤田哲也 世界の空を救った男』から、その激動の研究人生を知る
あわせて読みたい
【告発】アメリカに”監視”される社会を暴露したスノーデンの苦悩と決断を映し出す映画:『スノーデン』…
NSA(アメリカ国家安全保障局)の最高機密にまでアクセスできたエドワード・スノーデンは、その機密情報を持ち出し内部告発を行った。「アメリカは世界中の通信を傍受している」と。『シチズンフォー』と『スノーデン』の2作品から、彼の告発内容とその葛藤を知る
あわせて読みたい
【快挙】「暗黒の天体」ブラックホールはなぜ直接観測できたのか?国際プロジェクトの舞台裏:『アイン…
「世界中に存在する電波望遠鏡を同期させてブラックホールを撮影する」という壮大なEHTプロジェクトの裏側を記した『アインシュタインの影』から、ブラックホール撮影の困難さや、「ノーベル賞」が絡む巨大プロジェクトにおける泥臭い人間ドラマを知る
あわせて読みたい
【称賛】生き様がかっこいい。ムンバイのホテルのテロ事件で宿泊客を守り抜いたスタッフたち:『ホテル…
インドの高級ホテルで実際に起こったテロ事件を元にした映画『ホテル・ムンバイ』。恐ろしいほどの臨場感で、当時の恐怖を観客に体感させる映画であり、だからこそ余計に、「逃げる選択」もできたホテルスタッフたちが自らの意思で残り、宿泊を助けた事実に感銘を受ける
あわせて読みたい
【絶望】権力の濫用を止めるのは我々だ。映画『新聞記者』から「ソフトな独裁国家・日本」の今を知る
私個人は、「ビジョンの達成」のためなら「ソフトな独裁」を許容する。しかし今の日本は、そもそも「ビジョン」などなく、「ソフトな独裁状態」だけが続いていると感じた。映画『新聞記者』をベースに、私たちがどれだけ絶望的な国に生きているのかを理解する
あわせて読みたい
【勇敢】後悔しない生き方のために”間違い”を犯せるか?法に背いてでも正義を貫いた女性の生き様:『オ…
国の諜報機関の職員でありながら、「イラク戦争を正当化する」という巨大な策略を知り、守秘義務違反をおかしてまで真実を明らかにしようとした実在の女性を描く映画『オフィシャル・シークレット』から、「法を守る」こと以上に重要な生き方の指針を学ぶ
あわせて読みたい
【驚愕】「金正男の殺人犯」は”あなた”だったかも。「人気者になりたい女性」が陥った巧妙な罠:『わた…
金正男が暗殺された事件は、世界中で驚きをもって報じられた。その実行犯である2人の女性は、「有名にならないか?」と声を掛けられて暗殺者に仕立て上げられてしまった普通の人だ。映画『わたしは金正男を殺していない』から、危険と隣り合わせの現状を知る
あわせて読みたい
【幻想】心の傷を癒やすことの”難しさ”、寄り添い続けるために必要な”弱さ”と”冷たさ”:『心の傷を癒す…
「優しいかどうか」が重要な要素として語られる場面が多いと感じるが、私は「優しさ」そのものにはさしたる意味はないと考えている。映画『心の傷を癒すということ 劇場版』から、「献身」と「優しさ」の違いと、誰かに寄り添うために必要な「弱さ」を理解する
あわせて読みたい
【課題】原子力発電の廃棄物はどこに捨てる?世界各国、全人類が直面する「核のゴミ」の現状:『地球で…
我々の日常生活は、原発が生み出す電気によって成り立っているが、核廃棄物の最終処分場は世界中で未だにどの国も決められていないのが現状だ。映画『地球で最も安全な場所を探して』をベースに、「核のゴミ」の問題の歴史と、それに立ち向かう人々の奮闘を知る
あわせて読みたい
【天才】『三島由紀夫vs東大全共闘』後に「伝説の討論」と呼ばれる天才のバトルを記録した驚異の映像
1969年5月13日、三島由紀夫と1000人の東大全共闘の討論が行われた。TBSだけが撮影していたフィルムを元に構成された映画「三島由紀夫vs東大全共闘」は、知的興奮に満ち溢れている。切腹の一年半前の討論から、三島由紀夫が考えていたことと、そのスタンスを学ぶ
あわせて読みたい
【挑戦】東日本大震災における奇跡。日本の出版を支える日本製紙石巻工場のありえない復活劇:『紙つな…
本を読む人も書く人も作る人も、出版で使われる紙がどこで作られているのか知らない。その多くは、東日本大震災で甚大な被害を受けた日本製紙石巻工場で作られていた。『紙つなげ』をベースに、誰もが不可能だと思った早期復旧の舞台裏を知る
あわせて読みたい
【デマ】情報を”選ぶ”時代に、メディアの情報の”正しさ”はどのように判断されるのか?:『ニューヨーク…
一昔前、我々は「正しい情報を欲していた」はずだ。しかしいつの間にか世の中は変わった。「欲しい情報を正しいと思う」ようになったのだ。この激変は、トランプ元大統領の台頭で一層明確になった。『ニューヨーク・タイムズを守った男』から、情報の受け取り方を問う
あわせて読みたい
【意外】思わぬ資源が枯渇。文明を支えてきた”砂”の減少と、今後我々が変えねばならぬこと:『砂と人類』
「砂が枯渇している」と聞いて信じられるだろうか?そこら中にありそうな砂だが、産業用途で使えるものは限られている。そしてそのために、砂浜の砂が世界中で盗掘されているのだ。『砂と人類』から、石油やプラスチックごみ以上に重要な環境問題を学ぶ
あわせて読みたい
【加虐】メディアの役割とは?森達也『A』が提示した「事実を報じる限界」と「思考停止社会」
オウム真理教の内部に潜入した、森達也のドキュメンタリー映画『A』は衝撃を与えた。しかしそれは、宗教団体ではなく、社会の方を切り取った作品だった。思考することを止めた社会の加虐性と、客観的な事実など切り取れないという現実について書く
あわせて読みたい
【恐怖】SNSの危険性と子供の守り方を、ドキュメンタリー映画『SNS 少女たちの10日間』で学ぶ
実際にチェコの警察を動かした衝撃のドキュメンタリー映画『SNS 少女たちの10日間』は、少女の「寂しさ」に付け込むおっさんどもの醜悪さに満ちあふれている。「WEBの利用制限」だけでは子どもを守りきれない現実を、リアルなものとして実感すべき
あわせて読みたい
【衝撃】壮絶な戦争映画。最愛の娘を「産んで後悔している」と呟く母らは、正義のために戦場に留まる:…
こんな映画、二度と存在し得ないのではないかと感じるほど衝撃を受けた『娘は戦場で生まれた』。母であり革命家でもあるジャーナリストは、爆撃の続くシリアの街を記録し続け、同じ街で娘を産み育てた。「知らなかった」で済ませていい現実じゃない。
あわせて読みたい
【勇敢】日本を救った吉田昌郎と、福島第一原発事故に死を賭して立ち向かった者たちの極限を知る:『死…
日本は、死を覚悟して福島第一原発に残った「Fukushima50」に救われた。東京を含めた東日本が壊滅してもおかしくなかった大災害において、現場の人間が何を考えどう行動したのかを、『死の淵を見た男』をベースに書く。全日本人必読の書
あわせて読みたい
【議論】安楽死のできない日本は「死ぬ権利」を奪っていると思う(合法化を希望している):『安楽死を…
私は、安楽死が合法化されてほしいと思っている。そのためには、人間には「死ぬ権利」があると合意されなければならないだろう。安楽死は時折話題になるが、なかなか議論が深まらない。『安楽死を遂げた日本人』をベースに、安楽死の現状を理解する
あわせて読みたい
【驚愕】日本の司法は終わってる。「無罪判決が多いと出世に不利」「中世並み」な”独立しているはず”の…
三権分立の一翼を担う裁判所のことを、私たちはよく知らない。元エリート裁判官と事件記者の対談本『裁判所の正体』をベースに、「裁判所による統制」と「権力との癒着」について書く。裁判なんか関わることない、という人も無視できない現実。
この記事を読んでくれた方にオススメのタグページ
ルシルナ
国家・政治・制度・地方【本・映画の感想】 | ルシルナ
私たちがどのような社会で生きているのか理解することは重要でしょう。ニュースやネット記事などを総合して現実を理解することはなかなか難しいですが、政治や社会制度など…
タグ一覧ページへのリンクも貼っておきます
ルシルナ
記事検索(カテゴリー・タグ一覧) | ルシルナ
ルシルナは、4000冊以上の本と500本以上の映画をベースに、生き方や教養について書いていきます。ルシルナでは36個のタグを用意しており、興味・関心から記事を選びやすく…
コメント