【勇敢】後悔しない生き方のために”間違い”を犯せるか?法に背いてでも正義を貫いた女性の生き様:『オフィシャル・シークレット』

目次

はじめに

この記事で取り上げる映画

出演:キーラ・ナイトレイ, 出演:マット・スミス, 出演:マシュー・グード, 出演:レイフ・ファインズ, 出演:リス・エヴァンス, 監督:ギャヴィン・フッド, プロデュース:ゲド・ドハティ, Writer:サラ・バースタイン, Writer:グレゴリー・バーンスタイン, Writer:ギャヴィン・フッド
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この映画をガイドにしながら記事を書いていきます

この記事の3つの要点

  • 「法律を守ること」を大前提として上で、「法律を破る勇気」を持つことも大事
  • 誤った理由で始まろうとしているイラク戦争を止めようとした一人の女性
  • 法を破らなければ正しい行動を取れない時、法と正義どちらを選ぶべきか

イラク戦争の背後で、これほどのドラマが展開されているとは知らなかったし、驚かされた

自己紹介記事

どんな人間がこの記事を書いているのかは、上の自己紹介記事をご覧ください

記事中の引用は、映画館で取ったメモを参考にしているので、正確なものではありません

正しいことをして非難されるより、間違ったことをして称賛された方がいい

「法律は守るべき」だが「法律がすべて正しいわけではない」

ノンフィクションやドキュメンタリー映画などで個人の奮闘を知る度に、私はこんな風に思うことが増えた。それは、

正しいことをして非難されるより、間違ったことをして称賛された方がいい

である。

大前提として私は、「法律は守るべき」だと考えている。私たちは、そう望んだかどうかはともかく「法治国家」に生きているのだし、様々な価値観が存在する中で社会を成立させるためには、「このルールに従え」という強制力は何らかの形で必要だと思っている。

そしてここで言う「ルール」とは、きちんとした形で作られ管理されている「法律」しかあり得ない。だからこそ、やはり私たちは「法律」を守って生きていくしかない、というのが基本の考えである。

しかし、「常に法律に従わなければならない」のかと言えば、そうではないはずだ。様々な理由で、「法律」には不備が生じる。時代と共に社会変化と合わなくなることもあれば、独裁国家の法律に従わなければならない状況もある。「法律」が不備を有する可能性は様々に存在するだろうが、ここでは「法律を作る側の不正」について取り上げよう。

政治家や官僚の発言を聞いていて、違和感を覚えることがある。それは、「これこれこういう枠組みで捉えれば、我々は正しい」みたいな主張に対してだ。

その主張の仕方はずるいといつも感じてしまう。何故なら、「これこれこういう枠組み」を作っている本人による発言だからだ。まさにそれは、試験問題を自ら作り、自分で採点するようなものだろう。自分で試験問題を作れるなら、いくらだって満点は取れる。

もちろん、言うほど簡単にできるとは思っていない。一政治家の個人的な思惑だけで不正ができるほど安易な仕組みではないはずだ。しかし政府や政権が全体として方向性を定め、国民の望みとは違う方向へ舵を切る、なんてことなら当たり前のように行われているのではないか、とも感じる。

そのような成立背景を持つ「法律」がもし存在するとするならば、そんなものに従う必要はないだろう。

そして私は、「愚直に法律を守って非難されるくらいなら、『明らかに誤りだと思う法律』を破ってでも正しいと思うことをすべきだ」と考えている。

そうでなければ実現できなかった偉業や成果は、実は世の中にたくさんあるはずだ

法を破らなければ正しい行動が取れない場合、どうすべきか?

この映画はまさに、「法を破る」か「正義を貫くか」の2択で悩む女性が描かれる。

しかも、なかなかに究極の選択だ。自分の行動一つで、戦争を回避できるかもしれない、という状況にいるのだから。

主人公の女性は、「時には戦争が必要な場合もある」と発言する。つまり彼女は、「戦争という行為そのもの」に反対しているわけではない。彼女が選択した仕事(国家の諜報機関)からも、そのことは類推できるかもしれない。

そして、そういう人物だからこそ、彼女が何に葛藤しているのかが理解しやすい。「戦争だからダメ」なのではなく、「間違った戦争だからダメ」と判断しているのだ。

幸か不幸か、彼女は「まさに始まろうとしている戦争が、法律的に誤りである」と推定できる立場にいた。自分がそんな立場にいると気づいた時、どんな行動が取れるだろうか? これはとても難しい問題だ。

主人公は、イギリスの諜報機関・政府通信本部(GCHQ)に所属する、いわゆる”スパイ”である。そして彼女は職員になる際に、職務上知り得た情報を、それがどんなものであっても外部に漏らさないことを約束する「公務秘密法」の遵守にサインしている

つまり、仕事を通じて知ったことを漏らした時点で法律違反になる、ということだ。

一方彼女は、職員に向けた連絡で、とんでもない計画が進行していることを知る。それは、いくら「敵国と定めた国に勝つため」であったとしても非人道的であり、許容できるものではなかった

この物語は、実話を基にしているので、結論を書いてもネタバレとは言われないだろう。ここまでの話の流れから当然予想できるだろうが、彼女は、機密情報を外部に漏らすのである

あなたの行動は立派よ。大勢の仲間が思っている

彼女は、情報漏えい元であると疑われ、厳しい立場に置かれるが、一方で、彼女の行動は、同じ思いを抱いていた同僚たちを中心に、きちんと理解される

映画では、主人公には直接届かなかったはずの、アメリカの政府高官だろう人物のこんな賞賛の言葉も出てくる。

私は長年考えてきた。報道の規制がなされるべきなのは、国が危うい時だけだ、と。政府が困るだけなら、問題ない

彼女を直接褒める内容ではないが、間接的な賞賛としては十分すぎるだろう。

彼女自身も、自らの行為が正しかったという信念を貫く。逮捕され、刑事から取り調べを受けている際、「あなたは政府に仕える立場だ」と言われた時に、彼女はこんな風に反論する。

いえ、私は政府に仕えているのではなく、国民に仕えています。政府が国民に嘘をつくために仕事をしているんじゃない

確かにその通りだ。そして、これほどに真っ当な言葉を、自分や親しい人間がかなり窮地に追い込まれている状況でも、ズバッと口に出せるというのは素晴らしいと感じた。

マスコミから、「必要であるならまた同じことをしますか?」と問われると、彼女は、

悔いはないし、同じことをします

ときっぱり答えた。

さらに印象的だったのは、この場面だ。主人公に対して、自分は何もできなかったと同僚が謝った時のこと。彼女は同僚に対して、「あなたは間違っていない」と慰めるのだが、続けてさらにこんな風に言う

でも、正しいこともしなかった

ぐうの音も出ないとはこのことだろう。彼女にはそう言う権利があるし、言われたら黙るしかない

「法律を破る」ことは、勇気が要る。自分の行動が、客観的に絶対的に正しいという自分の中の確信と、行動を起こした後もその信念が変わらないという自信があったとしても、なお躊躇するだろう。しかもそれが、戦争に関係するとなればなおさらだ。

それでも彼女は、自分の信念に従って正しい行動をした

こういう物語に触れると、自分も踏み出すべき時は踏み出さなければならないなと感じさせられるし、彼女のように強い人間でありたいと思わされる

映画の内容紹介

イギリスの諜報機関・政府通信本部(GCHQ)の職員であるキャサリン・テレサ・ガンは、北京の翻訳担当として従事しており、盗聴・傍受した音声などを翻訳し日々報告している。彼女は結婚しており、夫のヤシャルは中東からの移民だ。結婚前に移民申請したが認められず、キャサリンと結婚することでイギリス国内での身分が保障されているという状況である。主人公は、スパイという仕事をしながらも、夫と2人、穏やかな日々を過ごしていた。

世界に目を向けてみると、ブッシュ大統領とブレア首相がイラク戦争の大義名分をまさに探しているタイミングだった。そして、「イラクは大量破壊兵器を保有している」という未確認情報だけを根拠にして、戦争を正当化しようとしている真っ最中だったのだ。

そんなある日、GCHQのグループメールに、信じられないような”指示”が回ってくる。アメリカの諜報機関NSAのフランク・コーザという人物からのもので、国連での投票で戦争支持が多数派となるように工作しろ、という内容だった。浮動票を持つ非常任理事国の代表を盗聴し、彼らを戦争支持に回らせるための有利な情報を集めろ、というのだ。

キャサリンはこの情報に不快感を抱く。アメリカとイギリスが、国連を動かしてイラク戦争を正当化しようとしているのだ。そんなことが許されるのだろうか? 彼女の同僚も同様に憤るが、公務秘密法の遵守にサインしている自分たちにできることはないと諦め顔である。

キャサリンは動いた。旧知の反戦活動家と連絡を取り、NSAのメールを持ち出すからマスコミに流してほしいと頼んだ。そしてキャサリンの望み通り、メールの文面はアメリカのオブザーバー紙の記者の元へ渡った。情報元がキャサリンであることは伏せられていたから、本物の情報なのか徹底的に調べられた後、その情報は紙面で報じられることになる。

もちろん大騒動となり、流出させた犯人としてキャサリンが疑われることになってしまうが……。

映画の感想

物凄く良い映画だった

「イラクが大量破壊兵器を持っている」というのは嘘だったという話は、イラク戦争に突入してしばらく経ってから普通にニュースでも流れるようになったし、知識としては知っていた。しかしまさかイラク戦争の背後で、これほどまでに勇敢な闘いが繰り広げられていたなんてまったく知らなかった。

映画は、キャサリンがどう感じ、どう決断し、どう行動するのかを追っていく物語で、実話だとは思えないほどスリリングだ。特に、キャサリンの裁判の結末は、予想しようと思っても予想できないような、そんな展開になるんだと感じるようなものだった。ここではその結末について具体的には触れないが、とりあえずキャサリンが無事にいられて良かった、というところだろう。

キャサリンは勇敢にも行動を起こしたが、彼女には心配の種があった。それが、中東出身の夫の存在だ。移民申請が認められず、「キャサリンの夫」という形でしか身分保障がなされないヤシャルは、さらに中東出身であることから話がややこしくなる。穿った見方をすれば、「夫が中東出身だから、イラク戦争を止めようとしているのだろう」という解釈もできてしまうからだ。

映画では、国家権力によるキャサリンの夫に対する”嫌がらせ”も描かれる。

確かに国家からすれば、一個人の行動で自分たちのプランがぶち壊しにされるのは許し難いろう。しかしそのプランは明らかに「誤り」であり、キャサリンを非難するのは正しくない、と感じてしまう。それでも国家権力は、あらゆる手を尽くして、個人の息の根を止めようとするのだ。

いざとなった時の国家の横暴や恐ろしさについても、改めて実感させられることだろう。そこまでやるか、という感じである。

あと、映画の本筋とはあまり関係のない部分で気になったのが、オブザーバー紙でこの件をスクープした際の”信じがたいミス”についてだ。ここではその詳細には触れないが、このミスのせいで、「そのメールは本物か?」と疑われることになってしまう。映画ではさらりとしか扱われなかったので、現実でもそこまで大きな問題にはならなかったのだと思いたいが、「笑い話」では済まされない、ちょっとあり得ないミスには驚かされた。

出演:キーラ・ナイトレイ, 出演:マット・スミス, 出演:マシュー・グード, 出演:レイフ・ファインズ, 出演:リス・エヴァンス, Writer:サラ・バースタイン, Writer:グレゴリー・バーンスタイン, Writer:ギャヴィン・フッド, 監督:ギャヴィン・フッド, プロデュース:ゲド・ドハティ
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最後に

世の中には、「正義」や「道徳」という言葉を、言うだけ言って行動しなかったり、他人を批判するためにしか使わなかったりする人が多い印象がある。一方、そういう言葉を一切使うことなく、自らの決断と行動によって体現して見せた彼女の物語は、「正義」や「道徳」なんて言葉では伝えられないインパクトがあると感じる。「法律を破るべき状況」に直面した時にどんな風に行動できるのか、考えてしまうことだろう。

あと、意味が伝わらないように書くが、

悪いがよそで釣ってくれ

というセリフは、ある意味でキャサリンへの最大の賛辞と言えるだろうし、痛快な場面で非常に良かったと思う。

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