目次
はじめに
この記事で取り上げる映画
「街は誰のもの?」公式HP
この映画をガイドにしながら記事を書いていきます
今どこで観れるのか?
公式HPから配信チケットが購入できます
この記事の3つの要点
- 「街は誰のもの?」という問いを思い浮かべたことはなかったが、当然の如く「みんなのもの」だろうと考えていたと思う
- 「グラフィティ」には「違法である」がその性質が前提として組み込まれている
- 「ルール」があるからこそ「ルール違反」も存在するわけだが、同時に「無法地帯」を避けることにも繋がっている
私の中の「『公共』に対する考え方」が少し変わったぐらい、実に示唆に富むドキュメンタリー映画だった
自己紹介記事
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どんな人間がこの記事を書いているのかは、上の自己紹介記事をご覧ください
記事中の引用は、映画館で取ったメモを参考にしているので、正確なものではありません
映画『街は誰のもの?』は、今まで考えたこともなかった問いについて思考を深められる、とても刺激的な作品だった
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とても面白い作品だった。思いがけず素敵な映画に出会えたという感じである。以前私は、Chim↑Pomというアート集団の展覧会を観に行ったことがあり、その際にも「公共」について深く考えさせられたが、本作『街は誰のもの?』もまた違った形で「公共」について問いかける作品で、非常に興味深かった。しかも本作は、街のシャッターや民家の壁に無許可で絵を描く「グラフィティ」がメインの題材となる作品であり、その取り合わせもまた興味をそそるポイントではないかと思う。
「『街は誰のもの?』という問いそのものの意味が分からない」と感じる人もいると思うが、私も映画を観る前の時点では同じだった。というわけで、「本作『街は誰のもの?』を観て、私の思考がどう変化したのか」を中心に、映画の内容について触れていこうと思う。
作中で問われる中心的なテーマと、「公共」に対する私の考え方
本作『街は誰のもの?』のことを劇場の予告で知ったのか、チラシを見たのか、あるいは何か別のルートだったのかについてはまったく覚えていないが、最初にこの映画のタイトルを目にした瞬間、私は「実に秀逸なタイトルだ」と感じた。というのも、「街は誰のもの?」という問いについて、少なくとも私はこれまでに一度も考えたことがなかったからだ。その上で、いざ考えてみようとすると、どこから思考を始めればいいのか悩ましい感じもある。馴染みはないが考え応えがあるという意味で、実に見事なテーマ設定だと感じた。
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さて、映画を観る前の時点で私の中になんとなくあった「答え」は、「街はみんなのものだろう」ぐらいの思考だったはずだ。まあ、「答え」と呼べるほどのものではないのだが、しかし誰もがなんとなくこんな風に考えているのではないかとも思っている。というか、これ以外に考えようがないだろう。
しかし映画を観て、「この捉え方は間違いだ」と感じた。いや、正確に言えば、「間違い」と表現してしまうとちょっと感覚がズレるのだが、その辺りの話はややこしいので後回しにしようと思う。
さて、映画『街は誰のもの?』が描き出すテーマについてざっくり触れたところで、まずは、「『公共』に対する私自身の考え方」についてより包括的に触れておくことにしよう。「街は誰のもの?」という問いに対峙する際にはやはり、「公共」をどのように捉えているかという前提が共有されている必要があると思うからだ。
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基本的に私は次のように考えている。「街」でも「学校」でも「美術館」でも何でもいいが、それが「公共」に属するものである場合、すべての人間は「その場を取り仕切るルール」に縛られるべきだ、と。もちろん、どんな場合でも「ルール自体が誤っている可能性」はある。しかしそうだとしても、その「誤ったルール」は「正しい手続き」に則って修正されるべきであり、そうなるまではその「誤ったルール」に従わなければならない。これが、「法治国家」に生きる者に最低限課せられている制約だと私は考えているのである。
さて、このように考えた場合、本作『街は誰のもの?』で中心的に描かれる「グラフィティ」は当然すべて「ルール違反」であり、「ルール違反である以上、やるべきではない」という結論に行き着く。誰の許可も得ずに勝手に絵を描くことは、器物損壊罪や、場合によっては建造物侵入罪などに当たるだろう。だったらそれは「してはならないこと」と判断されるべきだと私は思う。
これが、私が依って立つ大前提である。この点に関しては、映画を観終えた今も揺るぎはしない。そのため以下では、この考えを前提にして話を進めていく。そもそもこの前提に違和感を覚える場合、これ以降の私の文章にも納得できない可能性が高いと思うので、ここで読むのを止めてもらう方がいいかもしれない。
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「グラフィティ」は「違法」であることが大前提
映画『街は誰のもの?』では、スケボーや露天商、デモ活動など、「街を『専有』、あるいは『破壊』するような行為」がいくつか取り上げられている。そしてその中で最も興味深かったのがグラフィティだったので、この記事ではグラフィティの話に絞って書いていこうと思う。
映画に登場するグラフィテイロ(ブラジルでは、グラフィティアーティストのことをこう呼ぶそうだ)が次のように言っていたのがとても印象的だった。
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無許可でありイリーガルであることが、グラフィティの前提条件だ。
これは非常に示唆に富む話だと思う。「違法である」という要素が、グラフィティというジャンルにはそもそも含まれているというのである。このシーンを観ている時私は、以前テレビで知ったあるエピソードについて思い出していた。
それは、元プロ野球選手が語っていた話である。彼は大学時代、主将を務めることになった。そしてその野球部では、「主将がすべてのルールを決めてもいい」とされていたため、彼は「寮の門限を撤廃する」ことに決めたのだという。
元々寮の門限は夜の12時だったが、当時は12時を超えて寮に戻る選手が多かったそうだ。しかし門限を撤廃した途端、皆12時より前に戻ってくるようになったという。この理由についてその人物は、「『ルールを破る俺ってカッコいい』という見せ方が出来なくなったのだから、12時以降に帰ってくる必然性が無くなったのだろう」と分析していた。
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これは割と理解しやすい話ではないかと思う。つまり選手たちは、「特段『12時以降に寮に戻りたい理由』は特にないが、『ルールを破る行動』はしたい」と考えていた可能性があるというわけだ。これをさらに大きく要約するならば、「ルールが存在するために、『ルールを破るという行動』も存在し得る」と言えるのではないかと思う。そしてこの点は、タバコや酒、薬物などについても同じだと言えるかもしれない。私はタバコを吸ったことがないので分からないが、未成年がタバコを吸う理由など正直、「それが悪いこととされているから」ぐらいしか無いんじゃないだろうか。いっそ、「タバコの年齢制限」を撤廃したら、「新たにタバコを吸いたいと思う人」は激減するかもしれないとさえ思う。
もちろん、この「ルールが存在するために、『ルールを破るという行動』も存在し得る」という話は、すべてのルールに当てはまるものではないだろう。ただ私は、一部のルールにおいては、「ルールが存在する」という事実こそが「ルールを破る」という行為を生んでいる可能性があるのではないかと思っている。
そしてこのように考えると、「グラフィティ」の捉え方もまた少し変わるかもしれない。「『街中で絵を描く』という行為が『ルール違反』とされているからこそ、『グラフィティ』という文化が生まれた」と捉えることが出来るからだ。逆に言えば、「誰もがどこにでも自由に絵を描いて良い」という公共空間が存在するなら、理論上、その公共空間には「グラフィティ」は存在し得ないことになるだろう。
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「『グラフィティ』はこのような性質を持つ」という点が、「街は誰のもの?」という問いについて考える場合には重要になってくると私は感じた。
「ルールの存在」は「ルール違反」を生み出しもするが、同時に「無法地帯の排除」にも繋がっている
さて、ここまでの話を踏まえれば、「『街中で許可なく絵を描く行為を取り締まるルール』が存在しなければ『グラフィティ』はそもそも存在できない」ことになる。だったら「ルールの方を無くしてしまえばいいのではないか」みたいな発想が出てきてもおかしくないだろう。
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確かに理屈としてはその通りだと思う。ただ私は、「ルールを無くせば『グラフィティ』は消えるが、『街中で許可なく絵を描く行為』が無くなるわけではない」と考えているのである。
意味が分かるだろうか? この説明のためにまず、作中に登場するグラフィテイロたちの感覚について触れておこうと思う。
ある人物はグラフィティに対して、
重要なのは描いた絵ではなくその体験。
という表現を使っていた。他にも、「非常に身体的」「心臓がバクバクする」などと口にする人物が出てくるのだが、要するに「そのような『体験』を得るためにグラフィティをやっている」ということだろう。グラフィテイロにとって重要なのは「街中で許可なく絵を描く行為」そのものではなく、「それによって得られる『体験』」だというわけだ。
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そしてさらに言えば、「違法性を内在している」というグラフィティの性質は、「違法だからこそスリリングなのである」みたいな感覚に繋がっていく。つまりこの点も「『体験』を得るための必要な要素」と言っていいだろう。
ではここで改めて、「街中で許可なく絵を描く行為を取り締まるルール」が撤廃された世界について考えてみよう。この場合、「スリリングさ」という要素が失われるので、「グラフィティ」は無くなるだろう。しかしだからと言って、「単なる落描き行為」まで無くなるわけではないはずだ。スリルとは無関係に、「イライラして衝動的にやった」とか、あるいは「その家の持ち主に恨みがあって復讐のためにやった」みたいな行為は常に存在し得る。そして「街中で許可なく絵を描く行為を取り締まるルール」が撤廃された場合には、これらの行為はむしろ増加するはずだろう。
つまり、「『街中で許可なく絵を描く行為を取り締まるルール』を無くせば確かに『グラフィティ』も無くなるが、同時に『単なる落描き行為』が増え、ルール撤廃以前よりも景観・治安ともに悪化するのではないか」というのが私の考えなのだ。
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グラフィティは確かに“違法行為”なのだが、一方で、グラフィティにはグラフィティなりのルールが存在する。「誰かが描いたグラフィティの上に自分の絵を重ねない」などは分かりやすいだろうが、それ以外にも、「場所へのリスペクトを持つことが大事」「正しい場所でやる必要がある」など、かなり主観的なルールも存在するようだ。まあ、グラフィティのルールそのものは重要ではないのだが、大事なのは、「『グラフィティ』は『単なる落描き行為』とはまったく異なる」という点である。違法行為なのは確かだが、一定のルールに基づいて行われているわけで、「単なる落描き行為」と比べれば最低限の統制が取れていると言っていいだろう。
つまりまとめると、「『ルールの存在』によって『グラフィティというルール違反』も生まれるが、同時に、『単なる落描き行為という無法地帯』を制約することにも繋がっている」というわけだ。こう考えると、「『グラフィティ』を無くすために『ルール』を撤廃する」という議論はちょっと筋違いだと感じるだろう。
今ここで書いた「単なる落描き行為」「無法地帯」に関する話は作中で指摘されることではなく、あくまでも私が勝手に考察したことにすぎない。しかし、大きくは外していない感覚があるし、割を的を射ているのではないかとさえ考えている。
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街は「みんなのもの」だろうか? それとも「誰のものでもない」のだろうか?
さてここまでの議論で、「『グラフィティ』には『違法行為である』という前提が内在するが、その排除のために『ルールの撤廃』を行えば、『グラフィティ』以上に質の悪い『単なる落描き行為』が蔓延ることになる」という可能性について理解してもらえたと思う。そしてこのように考えれば、「『グラフィティ』を許容する方がまだマシではないか」という結論に行き着いても全然不思議ではないはずだ。
ブラジルの国民がこのように考えているのかどうかについては、作中で言及されたわけではないので分からないが、いずれにせよブラジルでは、グラフィティは市民から受け入れられているという。もちろん全市民が許容しているわけではないし、違法行為であることに変わりはないから、見つかれば逮捕もされる。ただ、国全体の雰囲気としては、「グラフィティが存在すること」を容認するスタンスの方が強いようなのだ。
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そんなブラジルの様子を見ながら私は、「街は誰のもの?」という問いに対する考え方を少し改めた。「市民からグラフィティが受け入れられている」というブラジルの状況を踏まえた上で私は、「ブラジルでは、『街はみんなのもの』と捉えられているのではないか」と感じたのだ。いや、「考えを改めた」という表現は正しくないだろう。冒頭で書いた通り、私は映画を観る前の時点で「街はみんなのもの」と考えていたからだ。
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考えを改めたのは「日本における認識」の方だ。誰もがイメージ出来ると思うが、日本では「グラフィティ」はまず容認されないだろう。「汚いもの」「不快なもの」として扱われ、「早く消すべきだ」という話になるんじゃないかと思う。そして私は本作を観て、「そのように考える日本においては、『街はみんなのもの』という共通認識は存在しないのではないか」と考えたのである。
では、日本において「街」はどのように捉えられているのか。私はこの点について、「街は誰のものでもない」と考えるに至った。
「みんなのもの」と「誰のものでもない」は、似ているようで大きく違うと私は思う。「みんなのもの」と捉える場合には、「みんなのものなんだから、誰が何をしても自由だよね」という発想になるだろうし、だからこそ「グラフィティ」が受け入れられる余地が出てくるとも言える。しかし「誰のものでもない」の場合は、「誰のものでもないんだから、好き勝手やるなよ」みたいに「制約」の方向に話が進みがちだろう。このような違いが「グラフィティ」の許容度にも関係しているはずだし、さらに「公共」をどう捉えるのかの差にも繋がっているのだと思う。
どちらの認識の方が良いみたいな話では決してないのだが、このような差が存在することは理解しておいてもいいだろう。日本でも度々、「公園で遊ぶ子どもの声がうるさい」など、「公共空間」と「個人」との関係性の中でトラブルが発生したりする。そしてそのような場合に、「日本人同士でも『公共の捉え方』に差がある」と認識させられることが多いのではないかと思う。また本作についてはとにかく、「『街は誰のもの?』という問いを発見したこと」自体がとても大事なことだと言えるだろうし、このような形で「公共」について問う意義はとても大きいと感じた。
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何故グラフィティを続けているのか
さて、「公共」に関する話はこれぐらいにして、ここからは「ブラジルのグラフィテイロたちが何故グラフィティを続けているのか」というその「動機」について触れていきたいと思う。この話もまた、とても興味深いものだった。
作中には、様々なグラフィテイロたちが、各々自分なりの「動機」について口にする場面がある。いくつか抜き出してみよう。
存在したかったんだ。この街に存在したかったんだ。目に見えるようにね。
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グラフィティが助けてくれるんだ。人と関わることに。社会と関わることに。
マニフェストなんだと思うよ。必要に迫られて生まれたんだ。
もし田舎に生まれていたら、自然に囲まれた生活で、どこかに逃げ場を見つけることが出来ると思う。
でも都会に住んでいると、どこからもプレッシャーがやってくるし、そのプレッシャーから解放されるために描かなきゃならないんだ。
色を与え、動きを作り、その場に命を与える。
それが、自分がストリートにいたって証なんだ。
彼らは当然、自分のしている行為が「違法」だと認識している。しかし同時に、「自身の行為が、その場所や街全体に対して『プラスの何かを与える』ことに繋がっている」とも考えているというわけだ。そして、「そう認識できることこそが、社会と関わっていく上で大事」だと思っているのである。
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グラフィティが盛んなのは、貧しい人たちが住む街であることが多いという。日本以上に格差が激しいブラジルでは、貧富の差から生まれるありとあらゆる問題が、最終的に「スラム」と呼ばれる街に集まってしまうのだ。そしてグラフィティには、「そんな街で生きなければならない鬱憤や退屈さを、カラフルな絵を描くことで吹き飛ばそうとしている」という分かりやすい側面もあるし、あるいは「貢献」という観点から彼らの行動を読み解くことだって出来るだろう。
というのも、ブラジルではなんと今、行政などから依頼を受け、報酬をもらって街中に絵を描く「プロジェクト」と呼ばれる仕事が増えているというのである。もちろんこれは「合法」であり、ここまででさんざん説明してきた通り、「合法」であるが故にこれは「グラフィティ」ではない。そのため、「プロジェクト」という別の名前で呼ばれているわけだが、やっていることは「グラフィティ」と同じだ。つまり、これまでは違法な行為でしかなかったことが行政から認められ、仕事としてお金を得られるまでになっているのである。このような状況を作り出したという事実は、「街への『貢献』」と呼んでいいだろうと思う。
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今では、このような「プロジェクト」に関わることが、グラフィテイロたちにとって一種の「成り上がり」とさえ受け取られているという。作中では、ろう者でもあるグラフィテイロが、まさに「プロジェクト」に取り組んでいるシーンが映し出されるのだが、その中で彼はこんな風に語っていた。
自分のような貧乏で取り残された者でも未来があるって教えてくれた。
俺の人生だって変わったんだから、ってことをみんなに教えてやりたい。
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本作では、さらに印象的な事例も扱われている。なんと、「治安が悪かった地域が、グラフィティによって観光地に昇格した」というのだ。
「ペコ・ド・バットマン」と呼ばれる地区は、数年前まで街灯が無く夜は真っ暗、治安も非常に悪く、「近づいてはいけない」とされる場所だった。しかしこの地区の外壁をグラフィティで埋め尽くしたことによって、今では世界中から人が訪れる観光地になっているという。土日ともなれば凄まじい数の観光客が押し寄せる大人気スポットに生まれ変わったのだ。ちなみに、この地区を生まれ変わらせたグラフィテイロの1人は日本人である。
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そのように語った人物は、「そもそも所有という概念を信じていない」とも口にしていた。また、
壁の内側は誰かのものだろう。しかし、壁は誰のものでもない。
みたいなことも言っており、このような主張もまた、価値観の様々な表出という感じでとても興味深いと言えるだろう。
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このように、自分がこれまで想像したこともないような価値観が浮かび上がり、さらに「公共」について改めて深く考えさせられもする、実に興味深い作品だった。
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