目次
はじめに
この記事で取り上げる映画
出演:キム・サンギョン, 出演:イ・ソンビン, 出演:ユン・ギョンホ, 出演:ソ・ヨンヒ, 監督:チョ・ヨンソン
¥550 (2023/10/23 20:53時点 | Amazon調べ)
ポチップ
この映画をガイドにしながら記事を書いていきます
今どこで観れるのか?
この記事の3つの要点
- 死者2万人、健康被害を訴えた人数95万人という、一企業の過失事件としては凄まじい規模の被害
- 映画的な演出も含まれているだろうが、この問題が解決に至るまでの超ウルトラCには”痛快さ”さえ覚える
- 「金が儲かるなら人が死んでも構わない」という企業の醜悪さと、原因究明に至るまでの困難さ
自分の身は自分で守るしかないし、そのために知っておくべき現実の詰まった映画だと思う
自己紹介記事
あわせて読みたい
はじめまして
ブログ「ルシルナ」の犀川後藤の自己紹介記事です。ここでは、「これまでのこと」「本のこと」「映画のこと」に分けて書いています。
あわせて読みたい
オススメ記事一覧(本・映画の感想・レビュー・解説)
本・映画の感想ブログ「ルシルナ」の中から、「読んでほしい記事」を一覧にしてまとめました。「ルシルナ」に初めて訪れてくれた方は、まずここから記事を選んでいただくのも良いでしょう。基本的には「オススメの本・映画」しか紹介していませんが、その中でも管理人が「記事内容もオススメ」と判断した記事をセレクトしています。
どんな人間がこの記事を書いているのかは、上の自己紹介記事をご覧ください
韓国で実際に起こったあまりにも衝撃的過ぎる「企業の過失事件」をベースに、加湿器が”凶器”となる恐怖を描く映画『空気殺人』
とんでもない作品だった。正直、そこまで期待していなかったこともあり、余計衝撃的だったと言える。
あわせて読みたい
【実話】権力の濫用を監視するマスコミが「教会の暗部」を暴く映画『スポットライト』が現代社会を斬る
地方紙である「ボストン・グローブ紙」は、数多くの神父が長年に渡り子どもに対して性的虐待を行い、その事実を教会全体で隠蔽していたという衝撃の事実を明らかにした。彼らの奮闘の実話を映画化した『スポットライト』から、「権力の監視」の重要性を改めて理解する
なにせ、この映画で描かれる”事件”が「実話を基にしている」というのだから。それはあまりにも信じがたい現実である。
「実話」だとはとてもじゃないが信じられない凄まじい事件と、解決に至るまでの超ウルトラC
この映画の元となっている、2011年に韓国で実際に起こった事件は、あまりにも衝撃的だ。「加湿器を殺菌するための薬剤」によって、膨大な数の被害が出たのである。
あわせて読みたい
【危機】遺伝子組み換え作物の危険性を指摘。バイオ企業「モンサント社」の実態を暴く衝撃の映画:『モ…
「遺伝子組み換え作物が危険かどうか」以上に注目すべきは、「モンサント社の除草剤を摂取して大丈夫か」である。種子を独占的に販売し、農家を借金まみれにし、世界中の作物の多様性を失わせようとしている現状を、映画「モンサントの不自然な食べもの」から知る
映画の最後に、どこかの研究機関が「推定」した被害者数が表示された。何故「推定」なのかについては、あくまで私の予想だが、「『加湿器殺菌剤』が原因であるとはっきりとは断定出来ない事例」が多数存在したからだと思う。ともかく、映画で表示されたのは、「健康被害を受けた者:95万人 亡くなった者:2万人」という数字だった。
映画では、この凄まじい事件と対比させる形で、日本の悪名高き公害病「水俣病」の名前も出てくる。映画鑑賞後、自分なりに調べたところ、「『水俣病患者』だと国から認定を受けた人」はやはり非常に少ないのだが、「一時金の受け取りや医療費等の救済を受けた人」は約7万人に上るそうだ。「治療を受けるほどではない軽度の健康被害を受けた人」がその10倍程度はいると考えても70万人。そうなると、2011年に起こった「加湿器殺菌剤」による被害は、水俣病に匹敵するかそれ以上のものと言っていいかもしれない。
あわせて読みたい
【信念】水俣病の真実を世界に伝えた写真家ユージン・スミスを描く映画。真実とは「痛みへの共感」だ:…
私はその存在をまったく知らなかったが、「水俣病」を「世界中が知る公害」にした報道写真家がいる。映画『MINAMATA―ミナマタ―』は、水俣病の真実を世界に伝えたユージン・スミスの知られざる生涯と、理不尽に立ち向かう多くの人々の奮闘を描き出す
この事件、「加湿器殺菌剤を製造・販売した会社」に責任があると認められ、会社の元社長らは実刑判決を受けている。この殺菌剤は1994年から販売されていたのだが、映画で描かれているような長い奮闘の末、2011年にその危険性が判明し、後に販売禁止となった。映画のラストは、「事件発生から10年後の公聴会」の場面で終わる。ここで言う「事件発生」は2011年を指していると思うので、公聴会が開かれたのは2021年だろう。そしてこの公聴会の場面からは、「この殺菌剤が、そして製造・販売した会社がいかに危険であるか」が韓国国内で周知の事実になっていることが伝わってくる。映画ではとにかく、「加湿器殺菌剤が原因で体調に異変を来たした」という事実を証明することに非常に苦労する様子が描かれるわけだが、彼らのその努力は報われたというわけだ。
そして何と言っても、映画の中で描かれる「被害者側が勝利に至るまでの展開」がちょっと凄まじい。この記事ではその詳細には触れないが、とにかく「絶体絶命の地点から、あり得ない大逆転がもたらされる」のである。凄まじいウルトラCによって、誰もが諦めかけたところから一発逆転を実現する、とんでもない物語というわけだ。
あわせて読みたい
【正義】復讐なんかに意味はない。それでも「この復讐は正しいかもしれない」と思わされる映画:『プロ…
私は基本的に「復讐」を許容できないが、『プロミシング・ヤング・ウーマン』の主人公キャシーの行動は正当化したい。法を犯す明らかにイカれた言動なのだが、その動機は一考の余地がある。何も考えずキャシーを非難していると、矢が自分の方に飛んでくる、恐ろしい作品
もちろん、実話を基にした物語であっても、すべてが実際の通りに描かれているとは限らないだろう。しかし、2011年というかなり最近起こった事件を題材にする場合、「まったく存在しない事実を組み込んだフィクション」はなかなか作りにくいのではないかとも思う。なにせ、この殺菌剤による健康被害は、今もまだ多くの人々を苦しめているのだ。いくらエンタメ作品といえども、少なくともこの作品においては、大胆な改変はしにくかったはずだと思う。だから、映画で描かれている通りではないかもしれないが、それに近い出来事が起こったのではないかと私は考えている。
そしてそうだとすれば、やはり驚きだろう。ありとあらゆる意味で「不利」でしかない状況を被害者側がひっくり返し、「全面勝利」と言っていいほどの着地を実現しているのだ。いち観客の立場から言えば、「とにかく痛快な物語」という感じだった。
映画の中で「水俣病」の話が出たのは、「このような訴訟は時間が掛かるが、皆さん頑張りましょう」と原告となった人たちに伝える場面でのことだった。水俣病は1932年から始まったが、被害者たちは50年以上も闘ってようやく工場と政府から謝罪を得られたのである。だから加湿器殺菌剤事件の被害者たちも、長期戦を覚悟していた。また、私は以前『ダーク・ウォーターズ』という、超巨大企業デュポン社による環境汚染、健康被害を認めさせるために闘った1人の弁護士を描いた映画を観たことがある。やはりその事件も長期戦だった。どれだけ数を集めたところで、やはり個人は個人であり、大企業と闘うのは相当に難しいのだ。
あわせて読みたい
【闘い】デュポン社のテフロン加工が有害だと示した男の執念の実話を描く映画『ダーク・ウォーターズ』
世界的大企業デュポン社が、自社製品「テフロン」の危険性を40年以上前に把握しながら公表せず、莫大な利益を上げてきたことを暴き出した1人の弁護士がいる。映画『ダーク・ウォーターズ』は、大企業相手に闘いを挑み、住民と正義のために走り続けた実在の人物の勇敢さを描き出す
しかし加湿器殺菌剤事件においては、作中で描かれるあるウルトラCによって一気に状況が好転した。もちろんここには、努力したからといってどうにもならない、偶発的な要素もかなり含まれている。だから、「どんな訴訟においても有効」などとは決して言えない。ただ、「大企業と比べたら圧倒的に非力である個人にも、闘える余地がある」のだと、僅かながら希望を抱かせる展開だとも感じた。
ある人物が作中で、「最初から勝つ方法は1つしかなかった」と口にする場面がある。確かに、その人物の言う通りだろうと思う。しかし物語の終盤に、観客が恐らく全員「えっ!?」と驚かされるだろう展開が待っている。普通に考えればそこで「ジ・エンド」だったはずだ。しかし結果としては、その行動こそが「逆転のための最善手」だったのであり、そこから怒涛のように物語が展開していくのである。
あわせて読みたい
【あらすじ】蝦夷地の歴史と英雄・阿弖流為を描く高橋克彦の超大作小説『火怨』は全人類必読の超傑作
大げさではなく、「死ぬまでに絶対に読んでほしい1冊」としてお勧めしたい高橋克彦『火怨』は凄まじい小説だ。歴史が苦手で嫌いな私でも、上下1000ページの物語を一気読みだった。人間が人間として生きていく上で大事なものが詰まった、矜持と信念に溢れた物語に酔いしれてほしい
悲惨な事件を扱った作品に対する感想としては不適切かもしれないが、いち観客としてはとにかく「痛快」だった。ドキュメンタリーであれノンフィクションであれ、ただ「事実」だけを伝えてもなかなか人々には届かない。映画『空気殺人』は、現実に起こった胸糞悪い事件を扱いながら、フィクションとしての面白さを徹底して追求することで、結果としてその物語に含まれる「事実」が伝わりやすい作品に仕上がったように思う。
「良心」の存在しないろくでなし、そして「原因追求」の困難さ
私はこれまで、国や企業による不正を扱った映画や本に結構触れてきているのだが、その度に感じるのは、「全員『良心』をどこかに置き忘れてきたのか?」ということだ。
もちろん、「知らなかった」というのであれば仕方ない。ジャニー喜多川による性加害問題のように、「知らなかった」「噂レベルでは聞いたことがある」と口にする人たちに対して「絶対に知っていただろう」と感じてしまう状況もあるが、もちろんどんな状況においても、「そんな不正のことは本当に知らなかった」という人だっていると思う。「知らなかった」という事実を証明することはとても難しいが、証明できるかどうかはともかく、「知らなかったのであれば責められるべきではない」と考えているというわけだ。
あわせて読みたい
【不謹慎】コンプライアンス無視の『テレビで会えない芸人』松元ヒロを追う映画から芸と憲法を考える
かつてテレビの世界で大ブレイクを果たしながら、現在はテレビから完全に離れ、年間120もの公演を行う芸人・松元ヒロ。そんな知る人ぞ知る芸人を追った映画『テレビで会えない芸人』は、コンプライアンスに厳しく、少数派が蔑ろにされる社会へ一石を投じる、爆笑社会風刺である
しかしこの映画においては、「加湿器殺菌剤の製造・販売会社は、明らかに知っていた」という描かれ方になっている。作中でそれがどのように具体的に示されるのかはここでは触れないが、「恐らく知っていただろう」ではなく、「間違いなく知っていたはず」と断言できるような状況だったと推察されているようだ。
作中で製造・販売会社の韓国代表が、「自社製品で人が死のうが構わない」みたいな発言をする場面がある。もちろん、実際にそんなことを口にしたのかどうかは分からないはずだ。しかし映画では、「とにかく金儲けが最優先」という企業体質が描かれており、「『自社製品で人が死のうが構わない』みたいなスタンスでビジネスをしているのでなければ、こんな状況にはならなかったはずだ」という示唆とともに事件が描かれていると言っていいだろう。
映画で描かれる韓国代表はとにかくクソ野郎だったが、しかしこの映画には他にも山ほどクソ野郎が登場する。「お前もか!」と何度心の中で思ったことか。
あわせて読みたい
【感想】リドリー・スコット監督の映画『最後の決闘裁判』から、社会が”幻想”を共有する背景とその悲劇…
例えば、「1万円札」というただの紙切れに「価値を感じる」のは、社会の構成員が同じ「共同幻想」の中に生きているからだ。リドリー・スコット監督の映画『最後の決闘裁判』は、「強姦では妊娠しない」「裁判の勝者を決闘で決する」という社会通念と、現代にも通じる「共同幻想」の強さを描き出す
私は別に、「綺麗なやり方だけでビジネスをやれ」なんて思っているわけではない。利益のために、ギリギリのラインを攻めるようなスタンスになることは仕方ないと思っている。しかしだからと言って、ビッグモーター社のようにわざと車体に傷をつけて修理費を水増ししたり、常態化した性加害によって所属タレントをコントロールしていたジャニーズ事務所のような振る舞いが許されるはずもないだろう。もちろん、人の命を奪うとか、「健康な身体で生きていく」という当たり前の状態が維持できなくなるようなやり方など以ての外だ。
金儲けはいくらでもすればいいし、権力を望むのなら好きなだけ志向すればいい。しかし、金があるとか権力があるといった理由によって「正義」や「正しさ」が歪められてしまうような世の中に生きていたくはない。真面目に生きていくことだけが人生ではないが、やはり、真面目に生きている人間が割を食うような社会は、明らかに間違っていると私は思う。
さて、ここまで触れてきたような「ろくでなし」たちの物語は、映画の後半に描かれる。そして前半では、「加湿器殺菌剤が体調悪化の原因である」という事実を突き止めるまでの、長い長い闘いの軌跡が描かれるというわけだ。
あわせて読みたい
【意外】自己免疫疾患の原因は”清潔さ”?腸内フローラの多様性の欠如があらゆる病気を引き起こす:『寄…
人類は、コレラの蔓延を機に公衆衛生に力を入れ、寄生虫を排除した。しかし、感染症が減るにつれ、免疫関連疾患が増大していく。『寄生虫なき病』では、腸内細菌の多様性が失われたことが様々な疾患の原因になっていると指摘、「現代病」の蔓延に警鐘を鳴らす
加湿器殺菌剤による健康被害が、発売から17年もの間明るみに出なかったのには理由がある。そもそもその殺菌剤は、国が安全性を認めている製品なのだ。自身の身に何か健康被害が起こったとしても、国から安全性が認められた加湿器殺菌剤が原因だとはなかなか考えないだろう。また、この加湿器殺菌剤は「急性間質性肺炎」を引き起こすのだが、これは加湿器殺菌剤以外の理由でも起こり得る病気である。「急性間質性肺炎」を引き起こす原因は他にもあるというわけだ。それら他の要因をすべて潰していきながら、最終的に「国が安全性を認めた製品」を疑うまでには、長い時間が掛かることが想像出来るだろう。
映画では、主人公の医師が加湿器殺菌剤の危険性に気づくきっかけとなる出来事が描かれる。妻が急性間質性肺炎で亡くなったのだが、彼は自身が持つ医学的な知識から、「急性間質性肺炎で死亡するとしたら、1年以上前から患っていたはずだ」と考えた。しかし、そのおかしさを義理の妹が指摘する。というのも、死亡する5ヶ月前に2人で受けた人間ドックでは、何の異常も見つからなかったからだ。つまり、人間ドックを受けてからたった5ヶ月で、死に至るほど急性間質性肺炎が一気に悪化したことになる。主人公が知る限り、そんな状況はあり得なかった。
この気付きこそがスタートラインとなる。ここを起点にして、最終的に「加湿器殺菌剤が原因である」という事実に辿り着くことが出来たのだ。しかし、「何かおかしなことが起こっている」と分かってからも、そこから「加湿器殺菌剤」まで辿り着くのにまた一苦労だったと言える。映画で描かれている通りの流れで原因究明がなされたのかは分からないが、ともかくこのような粘り強い調査によって、17年間もその危険性が気づかれなかった「殺人加湿器殺菌剤」の存在に、ようやくたどり着けたのだ。
あわせて読みたい
【衝撃】権力の濫用、政治腐敗を描く映画『コレクティブ』は他人事じゃない。「国家の嘘」を監視せよ
火災で一命を取り留め入院していた患者が次々に死亡した原因が「表示の10倍に薄められた消毒液」だと暴き、国家の腐敗を追及した『ガゼタ』誌の奮闘を描く映画『コレクティブ 国家の嘘』は、「権力の監視」が機能しなくなった国家の成れの果てが映し出される衝撃作だ
しかし先程も触れたが、大企業と闘うのは非常に難しい。登場人物たちは様々に苦労させられるのだ。ただ現代であれば、SDGsの呼びかけやESG投資などの普及によって、「環境に配慮する方が企業として有利だ」という動機が生まれ得るし、だから一昔前のような酷い状況にはなりにくいかもしれない。少しずつ良い時代になっていると考えるしかないだろう。映画『空気殺人』で描かれるような「クソ野郎」が、一刻も早く世の中から駆逐されることを私は祈っている。
映画の内容紹介
1人息子・ミヌと妻のギルジュの3人で暮らす医師のテフンは、ミヌがプールで溺れたことを知る。しばらく体調が優れなかったのだが、元気になったのでプールに遊びに行ったときの出来事だ。病院に搬送されたミヌを自ら診断したテフンは、急性間質性肺炎だと診断した。出来る治療は限られている。とりあえずは、様子を見るしかない。
あわせて読みたい
【映画】『戦場記者』須賀川拓が、ニュースに乗らない中東・ウクライナの現実と報道の限界を切り取る
TBS所属の特派員・須賀川拓は、ロンドンを拠点に各国の取材を行っている。映画『戦場記者』は、そんな彼が中東を取材した映像をまとめたドキュメンタリーだ。ハマスを巡って食い違うガザ地区とイスラエル、ウクライナ侵攻直後に現地入りした際の様子、アフガニスタンの壮絶な薬物中毒の現実を映し出す
息子の看病に必要なものを取りに戻ると言ってギルジュは病院を抜けたのだが、翌日、家を訪れた検事であり妻の妹でもあるヨンジュが、倒れているギルジュを発見した。そのままギルジュの死亡が確認され、息子と同じ急性間質性肺炎を患っていたことが判明する。しかしテフンは、義妹ヨンジュとの会話からある異変を察知し、火葬を取りやめて自ら妻の解剖を行った。
あわせて読みたい
【余命】癌は治らないと”諦める”べき?治療しない方が長生きする現実を現役医師が小説で描く:『悪医』…
ガンを患い、余命宣告され、もう治療の手がないと言われれば絶望を抱くだろう。しかし医師は、治療しない方が長生きできることを知って提案しているという。現役医師・久坂部羊の小説『悪医』をベースに、ガン治療ですれ違う医師と患者の想いを知る
その後、取り出した肺について様々な検査を行い、その報告を受ける中で、かつて同じような病気について調べていた人物がいるという話を耳にする。オ・ジョンハクという元小児科医で、テフンは彼の元を訪ねることにした。ジョンハクはかつて調査を行った結果として、「自分の医院だけではなく、近隣の病院でも同じような患者が急増した」と語る。さらに、疫学調査が困難だった理由として、「春の時期に急増する」ことを挙げていた。なんと、患者の8割が春に発症していたのだ。
情報は得られたが、原因を突き止めるだけのデータが足りない。そこで、テフンとヨンジュは、同じ病気で家族を亡くした者たちを探し当て、彼らの話を聞きに行った。そして様々な人から話を聞く中で、加湿器に焦点を絞る。テフンは妻と息子が寝起きしていた寝室を開放し、疾病管理本部による動物実験を行ってもらうことにした。ラットを使った実験によって、最終的に「ラットが全滅したのは、PHMGの吸引によるものだ」という結果が出る。
あわせて読みたい
【あらすじ】映画『非常宣言』(ソン・ガンホ主演)は、冒頭から絶望的な「不可能状況」が現出する凄ま…
「飛行中の機内で、致死性の高い自作のウイルスを蔓延させる」という、冒頭から絶体絶命としか言いようがない状況に突き落とされる映画『非常宣言』は、「どうにかなるはずがない」と感じさせる状況から物語を前進させていくえげつなさと、様々に描かれる人間ドラマが見事な作品だ
PHMGは、加湿器用の殺菌剤に含まれる成分だ。実験に使われた殺菌剤は、国が安全を保証し、17年前から国民に愛されているものだった。この殺菌剤が、妻の命を奪い、息子を意識不明に追いやったのか。
また、状況を理解したヨンジュは検事を辞職し、被害者の弁護人として立ち上がることにしたが……。
映画の感想
あわせて読みたい
【歴史】NIKEのエアジョーダン誕生秘話!映画『AIR/エア』が描くソニー・ヴァッカロの凄さ
ナイキがマイケル・ジョーダンと契約した時、ナイキは「バッシュ業界3位」であり、マイケル・ジョーダンも「ドラフト3位選手」だった。今からは信じられないだろう。映画『AIR/エア』は、「劣勢だったナイキが、いかにエアジョーダンを生み出したか」を描く、実話を基にした凄まじい物語だ
とにかく素晴らしい映画だった。実際に起こった事件という「事実の強度」は凄まじいものがあるし、ラストの怒涛の展開も実に見事なのだ。ただ、この映画には、回避不能な欠点が1つだけある。
それが、「加湿器殺菌剤が原因だと判明するまでの展開の遅さ」だ。
あわせて読みたい
【理解】小野田寛郎を描く映画。「戦争終結という現実を受け入れない(=認知的不協和)」は他人事じゃ…
映画『ONODA 一万夜を越えて』を観るまで、小野田寛郎という人間に対して違和感を覚えていた。「戦争は終わっていない」という現実を生き続けたことが不自然に思えたのだ。しかし映画を観て、彼の生き方・決断は、私たちと大きく変わりはしないと実感できた
『空気殺人』というタイトルだけからもなんとなく想像し得るだろうし、ざっくりしたあらすじでも間違いなく書かれていると思うので、観客は、この映画が「加湿器による殺人」を扱ったものだと、映画鑑賞時点でほぼ分かっていると思う。もし、それらの情報を一切知らずに観ることが出来るならその構成に何の問題も感じないが、「加湿器による殺人」という情報を知った上で観ると、「原因が判明するまでの展開」がどうしても遅く感じられてしまうだろう。回避しようがないと思うので仕方ないことだと感じるが、この点は唯一欠点と言っていいかもしれないと思う。
非常にシリアスな物語なのに、随所で笑いが起こる点は、さすが韓国映画といったところだろうか。その笑いは決して不謹慎なものなどではなく、映画が描き出す「痛快さ」に対しての反応と言っていい。映画は全体として、「個人が巨悪に立ち向かう」という構成になっている。そのような物語の中で、「圧倒的に不利な個人が一矢報いる」みたいな状況が描かれる度に笑いが起こるといった感じだ。不謹慎にならないような形で適度にエンタメ性を組み込みながら、現在進行系で続いている問題をきちんとシリアスに扱う構成は、とても見事だと感じた。
あわせて読みたい
【高卒】就職できる気がしない。韓国のブラック企業の実態をペ・ドゥナ主演『あしたの少女』が抉る
韓国で実際に起こった「事件」を基に作られた映画『あしたの少女』は、公開後に世論が動き、法律の改正案が国会を通過するほどの影響力を及ぼした。学校から実習先をあてがわれた1人の女子高生の運命を軸に描かれる凄まじい現実を、ペ・ドゥナ演じる女刑事が調べ尽くす
キャラクターで言えば、女検事のヨンジュが圧倒的に魅力的だったと言える。彼女には「底知れぬ情熱」があり、それ故に様々な場面で「過激すぎる言動」を繰り出してしまうのだ。テフンは病院の同僚から、「今日もお前の義妹が検索ワード1位だぞ」とからかわれさえする。「検事」のイメージからすれば型破り過ぎる存在感なのだ。フィクショナルなキャラクターであるとも言えるが、全体としてシリアスに展開する物語の中では、非常に魅力的に映る人物だった。
あわせて読みたい
【欠落】映画『オードリー・ヘプバーン』が映し出す大スターの生き方。晩年に至るまで生涯抱いた悲しみ…
映画『オードリー・ヘプバーン』は、世界的大スターの知られざる素顔を切り取るドキュメンタリーだ。戦争による壮絶な飢え、父親の失踪、消えぬ孤独感、偶然がもたらした映画『ローマの休日』のオーディション、ユニセフでの活動など、様々な証言を元に稀代の天才を描き出す
最後に、映画全体の話とはまったく関係ないのだが、観ながらとても驚いた話に触れて終わろう。それが「前官礼遇」という風習だ。韓国において「前官礼遇」は一般的に、「高い官職に就いていた人物に、退官後も同様の待遇を与えること」を意味するのだが、韓国の司法の世界では意味が異なる。なんと、「裁判官や検事を辞めて弁護士に転身した場合、最初の裁判ではなるべく勝たせてあげる」という「悪習」のことを指すのだそうだ。これには驚かされた。
映画の中では、「大企業がなりふり構わずあらゆる手を使ってくる」という話の一例として出てくるにすぎず、この「前官礼遇」が加湿器殺菌剤事件において大きな影響を与えたわけではない。しかし、「だから良かったね」で済ませていい話ではないだろう。私が説明するまでもなく、裁判とは「客観的な証拠や正しい手続き」に則って行われるべきであり、「裁判官や検事を辞めた人物を勝たせてあげる」なんていう理屈で結論が決まっていい世界ではない。なんとなく非常に日本的な「悪習」にも感じられるが、それにしても、誰かの一生を左右する「裁判」という場において、そんなねっとりとしたファジーな判断が行われ得るという事実に驚かされてしまった。
あわせて読みたい
【驚愕】日本の司法は終わってる。「無罪判決が多いと出世に不利」「中世並み」な”独立しているはず”の…
三権分立の一翼を担う裁判所のことを、私たちはよく知らない。元エリート裁判官と事件記者の対談本『裁判所の正体』をベースに、「裁判所による統制」と「権力との癒着」について書く。裁判なんか関わることない、という人も無視できない現実。
出演:キム・サンギョン, 出演:イ・ソンビン, 出演:ユン・ギョンホ, 出演:ソ・ヨンヒ, 監督:チョ・ヨンソン
¥550 (2023/10/23 20:55時点 | Amazon調べ)
ポチップ
最後に
韓国で加湿器殺菌剤事件が起こった2011年と言えば、日本では東日本大震災が起こった年である。私は韓国のこの凄まじい犯罪事件を、映画『空気殺人』を観るまでまったく知らなかったが、恐らく2011年だったという要素が大きいのだろう。日本が平時だったら、恐らく大々的に報じられたのではないかと思う。
2011年にもなって、企業はまだ、消費者をあっさりと蔑ろにするようなやり方をする。この事実を、私たちは正しく認識しておく必要があるだろう。「大企業だから安心だ」は、通用しない。自分の身は自分で守らなければならないのである。
あわせて読みたい
【危険】遺伝子組換え作物の問題点と、「食の安全」を守るために我々ができることを正しく理解しよう:…
映画『食の安全を守る人々』では、世界的バイオ企業「モンサント社」が作る除草剤「ラウンドアップ」の問題を中心に、「食の安全」の現状が映し出される。遺伝子組み換え作物や輸入作物の残留農薬など、我々が口にしているものの「実態」を理解しよう
そしてそのために大事なことは、何よりも「知ること」だ。世の中のありとあらゆるすべてを知ることなど到底出来はしないが、この映画で描かれている醜悪さは、やはり知っておいた方がいいのではないかと感じた。
あわせて読みたい
Kindle本出版しました!『天才・アインシュタインの生涯・功績をベースに、簡単過ぎない面白科学雑学を…
Kindleで本を出版しました。タイトルは、『天才・アインシュタインの生涯・功績をベースに、簡単過ぎない面白科学雑学を分かりやすく書いた本:相対性理論も宇宙論も量子論も』です。科学や科学者に関する、文系の人でも読んでもらえる作品に仕上げました。そんな自著について紹介をしています。
次にオススメの記事
あわせて読みたい
【映画】『戦場記者』須賀川拓が、ニュースに乗らない中東・ウクライナの現実と報道の限界を切り取る
TBS所属の特派員・須賀川拓は、ロンドンを拠点に各国の取材を行っている。映画『戦場記者』は、そんな彼が中東を取材した映像をまとめたドキュメンタリーだ。ハマスを巡って食い違うガザ地区とイスラエル、ウクライナ侵攻直後に現地入りした際の様子、アフガニスタンの壮絶な薬物中毒の現実を映し出す
あわせて読みたい
【歴史】NIKEのエアジョーダン誕生秘話!映画『AIR/エア』が描くソニー・ヴァッカロの凄さ
ナイキがマイケル・ジョーダンと契約した時、ナイキは「バッシュ業界3位」であり、マイケル・ジョーダンも「ドラフト3位選手」だった。今からは信じられないだろう。映画『AIR/エア』は、「劣勢だったナイキが、いかにエアジョーダンを生み出したか」を描く、実話を基にした凄まじい物語だ
あわせて読みたい
【衝撃】これが実話とは。映画『ウーマン・トーキング』が描く、性被害を受けた女性たちの凄まじい決断
映画『ウーマン・トーキング』の驚くべき点は、実話を基にしているという点だ。しかもその事件が起こったのは2000年代に入ってから。とある宗教コミュニティ内で起こった連続レイプ事件を機に村の女性たちがある決断を下す物語であり、そこに至るまでの「ある種異様な話し合い」が丁寧に描かれていく
あわせて読みたい
【高卒】就職できる気がしない。韓国のブラック企業の実態をペ・ドゥナ主演『あしたの少女』が抉る
韓国で実際に起こった「事件」を基に作られた映画『あしたの少女』は、公開後に世論が動き、法律の改正案が国会を通過するほどの影響力を及ぼした。学校から実習先をあてがわれた1人の女子高生の運命を軸に描かれる凄まじい現実を、ペ・ドゥナ演じる女刑事が調べ尽くす
あわせて読みたい
【あらすじ】映画『非常宣言』(ソン・ガンホ主演)は、冒頭から絶望的な「不可能状況」が現出する凄ま…
「飛行中の機内で、致死性の高い自作のウイルスを蔓延させる」という、冒頭から絶体絶命としか言いようがない状況に突き落とされる映画『非常宣言』は、「どうにかなるはずがない」と感じさせる状況から物語を前進させていくえげつなさと、様々に描かれる人間ドラマが見事な作品だ
あわせて読みたい
【実話】実在の人物(?)をモデルに、あの世界的超巨大自動車企業の”内実”を暴く超絶面白い小説:『小…
誰もが知るあの世界的大企業をモデルに据えた『小説・巨大自動車企業トヨトミの野望』は、マンガみたいなキャラクターたちが繰り広げるマンガみたいな物語だが、実話をベースにしているという。実在の人物がモデルとされる武田剛平のあり得ない下剋上と、社長就任後の世界戦略にはとにかく驚かされる
あわせて読みたい
【衝撃】自ら立ち上げた「大分トリニータ」を放漫経営で潰したとされる溝畑宏の「真の実像」に迫る本:…
まったく何もないところからサッカーのクラブチーム「大分トリニータ」を立ち上げ、「県リーグから出発してチャンピオンになる」というJリーグ史上初の快挙を成し遂げた天才・溝畑宏を描く『爆走社長の天国と地獄』から、「正しく評価することの難しさ」について考える
あわせて読みたい
【衝撃】匿名監督によるドキュメンタリー映画『理大囲城』は、香港デモ最大の衝撃である籠城戦の内部を映す
香港民主化デモにおける最大の衝撃を内側から描く映画『理大囲城』は、とんでもないドキュメンタリー映画だった。香港理工大学での13日間に渡る籠城戦のリアルを、デモ隊と共に残って撮影し続けた匿名監督たちによる映像は、ギリギリの判断を迫られる若者たちの壮絶な現実を映し出す
あわせて読みたい
【解説】実話を基にした映画『シカゴ7裁判』で知る、「権力の暴走」と、それに正面から立ち向かう爽快さ
ベトナム戦争に反対する若者たちによるデモと、その後開かれた裁判の実話を描く『シカゴ7裁判』はメチャクチャ面白い映画だった。無理筋の起訴を押し付けられる主席検事、常軌を逸した言動を繰り返す不適格な判事、そして一枚岩にはなれない被告人たち。魅力満載の1本だ
あわせて読みたい
【あらすじ】蝦夷地の歴史と英雄・阿弖流為を描く高橋克彦の超大作小説『火怨』は全人類必読の超傑作
大げさではなく、「死ぬまでに絶対に読んでほしい1冊」としてお勧めしたい高橋克彦『火怨』は凄まじい小説だ。歴史が苦手で嫌いな私でも、上下1000ページの物語を一気読みだった。人間が人間として生きていく上で大事なものが詰まった、矜持と信念に溢れた物語に酔いしれてほしい
あわせて読みたい
【幸福】「死の克服」は「生の充実」となり得るか?映画『HUMAN LOST 人間失格』が描く超管理社会
アニメ映画『HUMAN LOST 人間失格』では、「死の克服」と「管理社会」が分かちがたく結びついた世界が描かれる。私たちは既に「緩やかな管理社会」を生きているが、この映画ほどの管理社会を果たして許容できるだろうか?そしてあなたは、「死」を克服したいと願うだろうか?
あわせて読みたい
【あらすじ】死刑囚を救い出す実話を基にした映画『黒い司法』が指摘する、死刑制度の問題と黒人差別の現実
アメリカで死刑囚の支援を行う団体を立ち上げた若者の実話を基にした映画『黒い司法 0%からの奇跡』は、「死刑制度」の存在価値について考えさせる。上映後のトークイベントで、アメリカにおける「死刑制度」と「黒人差別」の結びつきを知り、一層驚かされた
あわせて読みたい
【衝撃】台湾のろう学校のいじめ・性的虐待(実話)を描く映画『無聲』が問う、あまりに悲しい現実
台湾のろう学校で実際に起こったいじめ・性的虐待事件を基に作られた映画『無聲』は、健常者の世界に刃を突きつける物語だ。いじめ・性的虐待が物語の「大前提」でしかないという衝撃と、「性的虐待の方がマシ」という選択を躊躇せず行う少女のあまりの絶望を描き出す
あわせて読みたい
【闘い】デュポン社のテフロン加工が有害だと示した男の執念の実話を描く映画『ダーク・ウォーターズ』
世界的大企業デュポン社が、自社製品「テフロン」の危険性を40年以上前に把握しながら公表せず、莫大な利益を上げてきたことを暴き出した1人の弁護士がいる。映画『ダーク・ウォーターズ』は、大企業相手に闘いを挑み、住民と正義のために走り続けた実在の人物の勇敢さを描き出す
あわせて読みたい
【現実】権力を乱用する中国ナチスへの抵抗の最前線・香港の民主化デモを映す衝撃の映画『時代革命』
2019年に起こった、逃亡犯条例改正案への反対運動として始まった香港の民主化デモ。その最初期からデモ参加者たちの姿をカメラに収め続けた。映画『時代革命』は、最初から最後まで「衝撃映像」しかない凄まじい作品だ。この現実は決して、「対岸の火事」ではない
あわせて読みたい
【特撮】ウルトラマンの円谷プロには今、円谷一族は誰も関わっていない。その衝撃の歴史を紐解く本:『…
「特撮の神さま」と評され、国内外で絶大な評価を得ている円谷英二。そんな彼が設立し、「ウルトラマン」というドル箱を生み出した円谷プロには現在、円谷一族は誰も関わっていない。『ウルトラマンが泣いている』は、そんな衝撃的な「社史」を、円谷英二の孫であり6代目社長だった著者が描く1冊
あわせて読みたい
【アメリカ】長崎の「原爆ドーム」はなぜ残らなかった?爆心地にあった「浦上天主堂」の数奇な歴史:『…
原爆投下で半壊し、廃墟と化したキリスト教の大聖堂「浦上天主堂」。しかし何故か、「長崎の原爆ドーム」としては残されず、解体されてしまった。『ナガサキ 消えたもう一つの「原爆ドーム」』は、「浦上天主堂」を巡る知られざる歴史を掘り下げ、アメリカの強かさを描き出す
あわせて読みたい
【衝撃】権力の濫用、政治腐敗を描く映画『コレクティブ』は他人事じゃない。「国家の嘘」を監視せよ
火災で一命を取り留め入院していた患者が次々に死亡した原因が「表示の10倍に薄められた消毒液」だと暴き、国家の腐敗を追及した『ガゼタ』誌の奮闘を描く映画『コレクティブ 国家の嘘』は、「権力の監視」が機能しなくなった国家の成れの果てが映し出される衝撃作だ
あわせて読みたい
【信念】水俣病の真実を世界に伝えた写真家ユージン・スミスを描く映画。真実とは「痛みへの共感」だ:…
私はその存在をまったく知らなかったが、「水俣病」を「世界中が知る公害」にした報道写真家がいる。映画『MINAMATA―ミナマタ―』は、水俣病の真実を世界に伝えたユージン・スミスの知られざる生涯と、理不尽に立ち向かう多くの人々の奮闘を描き出す
あわせて読みたい
【喪失】家族とうまくいかない人、そして、家族に幻想を抱いてしまう人。家族ってなんてめんどくさいの…
「福島中央テレビ開局50周年記念作品」である映画『浜の朝日の嘘つきどもと』は、福島県に実在した映画館「朝日座」を舞台に、住民が抱く「希望(幻想)」が描かれる。震災・コロナによってありとあらゆるものが失われていく世の中で、私たちはどう生きるべきか
あわせて読みたい
【悲哀】2度の東京オリンピックに翻弄された都営アパートから「公共の利益」と「個人の権利」を考える:…
1964年の東京オリンピックを機に建設された「都営霞ケ丘アパート」は、東京オリンピック2020を理由に解体が決まり、長年住み続けた高齢の住民に退去が告げられた。「公共の利益」と「個人の権利」の狭間で翻弄される人々の姿を淡々と映し出し、静かに「社会の在り方」を問う映画
あわせて読みたい
【実話】映画『ハドソン川の奇跡』の”糾弾された英雄”から、「正しさ」をどう「信じる」かを考える
制御不能の飛行機をハドソン川に不時着させ、乗員乗客155名全員の命を救った英雄はその後、「わざと機体を沈め損害を与えたのではないか」と疑われてしまう。映画『ハドソン川の奇跡』から、「正しさ」の難しさと、「『正しさ』の枠組み」の重要性を知る
あわせて読みたい
【残念】日本の「難民受け入れ」の現実に衝撃。こんな「恥ずべき国」に生きているのだと絶望させられる…
日本の「難民認定率」が他の先進国と比べて異常に低いことは知っていた。しかし、日本の「難民」を取り巻く実状がこれほど酷いものだとはまったく知らなかった。日本で育った2人のクルド人難民に焦点を当てる映画『東京クルド』から、日本に住む「難民」の現実を知る
あわせて読みたい
【危機】シードバンクを設立し世界の農業を変革した伝説の植物学者・スコウマンの生涯と作物の多様性:…
グローバル化した世界で「農業」がどんなリスクを負うのかを正しく予測し、その対策として「ジーンバンク」を設立した伝説の植物学者スコウマンの生涯を描く『地球最後の日のための種子』から、我々がいかに脆弱な世界に生きているのか、そして「世界の食」がどう守られているのかを知る
あわせて読みたい
【不正義】正しく行使されない権力こそ真の”悪”である。我々はその現実にどう立ち向かうべきだろうか:…
権力を持つ者のタガが外れてしまえば、市民は為す術がない。そんな状況に置かれた時、私たちにはどんな選択肢があるだろうか?白人警官が黒人を脅して殺害した、50年前の実際の事件をモチーフにした映画『デトロイト』から、「権力による不正義」の恐ろしさを知る
あわせて読みたい
【驚愕】正義は、人間の尊厳を奪わずに貫かれるべきだ。独裁政権を打倒した韓国の民衆の奮闘を描く映画…
たった30年前の韓国で、これほど恐ろしい出来事が起こっていたとは。「正義の実現」のために苛烈な「スパイ狩り」を行う秘密警察の横暴をきっかけに民主化運動が激化し、独裁政権が打倒された史実を描く『1987、ある闘いの真実』から、「正義」について考える
あわせて読みたい
【真実?】佐村河内守のゴーストライター騒動に森達也が斬り込んだ『FAKE』は我々に何を問うか?
一時期メディアを騒がせた、佐村河内守の「ゴースト問題」に、森達也が斬り込む。「耳は聴こえないのか?」「作曲はできるのか?」という疑惑を様々な角度から追及しつつ、森達也らしく「事実とは何か?」を問いかける『FAKE』から、「事実の捉え方」について考える
あわせて読みたい
【告発】アメリカに”監視”される社会を暴露したスノーデンの苦悩と決断を映し出す映画:『スノーデン』…
NSA(アメリカ国家安全保障局)の最高機密にまでアクセスできたエドワード・スノーデンは、その機密情報を持ち出し内部告発を行った。「アメリカは世界中の通信を傍受している」と。『シチズンフォー』と『スノーデン』の2作品から、彼の告発内容とその葛藤を知る
あわせて読みたい
【逸脱】「仕事を辞めたい」という気持ちは抑えちゃダメ。アウェイな土俵で闘っても負けるだけだ:『ニ…
京都大学卒「日本一有名なニート」であるpha氏の『ニートの歩き方 お金がなくても楽しくクラスためのインターネット活用法』は、常識や当たり前に囚われず、「無理なものは無理」という自分の肌感覚に沿って生きていくことの重要性と、そのための考え方が満載の1冊
あわせて読みたい
【あらすじ】人生行き詰まってなお「生きたい」と思えるか?環境の激変を受け入れる難しさと生きる悲し…
勤務していた会社の都合で、町が1つ丸々無くなるという経験をし、住居を持たないノマド生活へと舵を切った女性を描く映画『ノマドランド』を通じて、人生の大きな変化に立ち向かう気力を持てるのか、我々はどう生きていくべきか、などについて考える
あわせて読みたい
【現実】生きる気力が持てない世の中で”働く”だけが人生か?「踊るホームレスたち」の物語:『ダンシン…
「ホームレスは怠けている」という見方は誤りだと思うし、「働かないことが悪」だとも私には思えない。振付師・アオキ裕キ主催のホームレスのダンスチームを追う映画『ダンシングホームレス』から、社会のレールを外れても許容される社会の在り方を希求する
あわせて読みたい
【称賛】生き様がかっこいい。ムンバイのホテルのテロ事件で宿泊客を守り抜いたスタッフたち:『ホテル…
インドの高級ホテルで実際に起こったテロ事件を元にした映画『ホテル・ムンバイ』。恐ろしいほどの臨場感で、当時の恐怖を観客に体感させる映画であり、だからこそ余計に、「逃げる選択」もできたホテルスタッフたちが自らの意思で残り、宿泊を助けた事実に感銘を受ける
あわせて読みたい
【正義】マイノリティはどう生き、どう扱われるべきかを描く映画。「ルールを守る」だけが正解か?:『…
社会的弱者が闘争の末に権利を勝ち取ってきた歴史を知った上で私は、闘わずとも権利が認められるべきだと思っている。そして、そういう社会でない以上、「正義のためにルールを破るしかない」状況もある。映画『パブリック』から、ルールと正義のバランスを考える
あわせて読みたい
【情熱】「ルール」は守るため”だけ”に存在するのか?正義を実現するための「ルール」のあり方は?:『…
「ルールは守らなければならない」というのは大前提だが、常に例外は存在する。どれほど重度の自閉症患者でも断らない無許可の施設で、情熱を持って問題に対処する主人公を描く映画『スペシャルズ!』から、「ルールのあるべき姿」を考える
あわせて読みたい
【驚愕】「金正男の殺人犯」は”あなた”だったかも。「人気者になりたい女性」が陥った巧妙な罠:『わた…
金正男が暗殺された事件は、世界中で驚きをもって報じられた。その実行犯である2人の女性は、「有名にならないか?」と声を掛けられて暗殺者に仕立て上げられてしまった普通の人だ。映画『わたしは金正男を殺していない』から、危険と隣り合わせの現状を知る
あわせて読みたい
【絶望】子供を犯罪者にしないために。「異常者」で片付けられない、希望を見いだせない若者の現実:『…
2人を殺し、7人に重傷を負わせた金川真大に同情の余地はない。しかし、この事件を取材した記者も、私も、彼が殺人に至った背景・動機については理解できてしまう部分がある。『死刑のための殺人』をベースに、「どうしようもないつまらなさ」と共に生きる現代を知る
あわせて読みたい
【衝撃】壮絶な戦争映画。最愛の娘を「産んで後悔している」と呟く母らは、正義のために戦場に留まる:…
こんな映画、二度と存在し得ないのではないかと感じるほど衝撃を受けた『娘は戦場で生まれた』。母であり革命家でもあるジャーナリストは、爆撃の続くシリアの街を記録し続け、同じ街で娘を産み育てた。「知らなかった」で済ませていい現実じゃない。
この記事を読んでくれた方にオススメのタグページ
ルシルナ
事件・事故・犯罪・裁判【本・映画の感想】 | ルシルナ
私は、ノンフィクションやドキュメンタリーに多く触れますが、やはりテーマとして、トラブルなどが扱われることが多いです。単純にそれらに興味があるということもあります…
タグ一覧ページへのリンクも貼っておきます
ルシルナ
記事検索(カテゴリー・タグ一覧) | ルシルナ
ルシルナは、4000冊以上の本と500本以上の映画をベースに、生き方や教養について書いていきます。ルシルナでは36個のタグを用意しており、興味・関心から記事を選びやすく…
コメント