目次
はじめに
この記事で取り上げる映画
出演:マーク・ラファロ, 出演:マイケル・キートン, 出演:レイチェル・マクアダムズ, 出演:スタンリー・トゥッチ, 出演:リーヴ・シュレイバー, 監督:トム・マッカーシー
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ポチップ
この映画をガイドにしながら記事を書いていきます
今どこで観れるのか?
この記事の3つの要点
- 「神にレイプされる」という衝撃を、私は本当の意味では理解できていないと思う
- 「教会による悪事」を認識しながら、「それでも教会は必要だ」と語る人が多い現実
- 葛藤し、悩みながらも、強大な権力に立ち向かう記者たちを描き出す
「調査報道」に対して私たちがもっと関心を向けないと、「権力の監視」は継続し続けられない
自己紹介記事
ルシルナ
はじめまして | ルシルナ
ブログ「ルシルナ」の犀川後藤の自己紹介記事です。ここでは、「これまでのこと」「本のこと」「映画のこと」に分けて書いています。
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どんな人間がこの記事を書いているのかは、上の自己紹介記事をご覧ください
記事中の引用は、映画館で取ったメモを参考にしているので、正確なものではありません
「神にレイプされる」という衝撃。隠蔽し続けた教会。そして白日の下に晒した小さな新聞社の奮闘
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この映画が描き出す「衝撃」を、本当には理解することができない
私はキリスト教徒ではない。どんな宗教も信じていないし、宗教に限らず「信じる対象」を持たない生き方をしている。人によっては、「自分が推しているアイドル」や「占い師」の言動が、自分の中で絶対的な基準になっている人もいるだろう。そういう場合、その絶対的な存在は「宗教」的な意味を帯びるが、私にはそういう存在もないという意味だ。「科学」のことは信じているが、それは「科学的手法、科学的検証」を信じているのであり、「科学だから無条件に信じている」わけではない。
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そんな「信じる対象」を持たない私には、この映画で描かれる「衝撃」はきっと正しくは理解できない。
何故ならこの映画では、それがなんであれ、自分が「神」だと思う存在からレイプされるのだから。
神様に嫌と言えますか?
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難しいだろうが、あなたが「神」だと捉えている存在からレイプされることを想像してみてほしい。男女は関係ない。この映画でも、「神父による男児への性的虐待」が描かれるのだ。
想像しきれないとは思うが、そのイメージで想起される絶望や苦痛こそが、この映画の中心に存在する。まして被害に遭うのは児童たちだ。どんな性的虐待も酷いと思うが、やはり、子どもへのそれは最低だと言っていいだろう。
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そんな最低の行為を長年続け、隠蔽してきた教会の暗部を地元の小さな新聞社が暴き出していく。その実話を元にした物語だ。
教会の悪事のことを、地元民はみんな知っていた
しかし、教会のスキャンダルは地元にとっては周知の事実だった。市民だけではない。警察も裁判所も弁護士も、当然新聞社も知っていた。もちろん枢機卿も知っており、その上で隠蔽工作を行っているのだ。
では何故、2002年に「ボストン・グローブ紙」が記事を掲載するまで、この事実は広く世間に知られなかったのか?
そこには「教会の強大な権威」が関係している。
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教会は何でもできる。何でも。
これが市民の認識だ。かつて被害に遭ったという人を取材する過程で、記者はこんな風にも言われる。
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教会は何世紀も存在している。
新聞社が勝てると?
奴は神父だ。従うしかない。
私にはなかなかイメージできないし、恐らく多くの日本人にとって想像が及ばないと思うが、「性的虐待を行っている」と知ってもその権威が凋落しないほど「教会」の力は絶大なのだ。
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そこにはやはり「信仰」が大きく関わってくる。
教会は人が作った組織だ。いずれ滅びる。
けど、信仰は永遠だ。
「教会がどうであれ『キリスト教への信仰』は残るのだし、『キリスト教徒への信仰』が残るなら『教会』は必要だ」という理屈になるようだ。それは、信仰を持たない私には凄まじい判断に感じられるが、それほどにアメリカ人にとってキリスト教は切り離せないものなのだろう。
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また「教会」の存在は、「信仰」とは関係ない部分でも重要だ。
貧しい家の子には、教会は重要だ。
実情に詳しいわけではないが、アメリカでは、「教会」がある種の「セーフティネット」として機能しているということなのだろう。だからこそ、こんなことを言う人物も登場する。
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だが、人々に教会は必要だ。
少しの悪のために多くの善は捨てられない。
「子どもへの性的虐待」を「少しの悪」と呼んでいいとは私には思えない。しかしそう判断したくなるほどに「教会」の存在は信仰にとっても地域にとっても必要不可欠だということなのだろう。
「誰にも知られていなかったことを『暴く』」のは、困難を伴うが不可能ではない。しかし、「誰にも知られていることを『暴く』」のは、言葉の使い方として矛盾しているほどあり得ない行為だ。しかし「ボストン・グローブ紙」は、まさにそんな矛盾をやってのけなければならなかったのだ。
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「ボストン・グローブ紙」の奮闘
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そもそも「ボストン・グローブ紙」の読者の53%がカトリック信者であり、当然のことながら、記者の家族の中にも熱心に教会へと通っている者がいる。ボストンで最大部数を発行する新聞だそうだが、あくまでも「地方紙」でしかない。地元民の購読によって成り立っている新聞なのだ。そんな新聞紙上で、地元民が支持する「教会」を批判しようと言うのだから、相当の覚悟が必要だろう。
何も諦めてはいない。
私たちは、逃げない。
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記者もまた、地元出身者が多い。この記事を載せれば、その後も地元に住み続ける記者たちにも何か影響があるかもしれない。
バロンは余所者だ。2年もすれば、他所へ行く。
でも、君はどこへ出て行く?
それでもやると決めたのは、彼らなりの後悔があるからだ。
何かあると知りながら、何もしなかった。
それも、俺たちで終わりだ。
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前述した通り、新聞社もまた、「教会の悪事」を知っていた。耳にしていながら、何もしなかったのだ。しかし、彼らは問う。権力を監視し、真実を伝えるべき自分たちがそれでいいのだろうか? 彼らは腰を上げると決め、取材に打ち込んだ。そしてその過程で、彼らでさえ知らなかった様々な闇があぶり出されたのである。
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「この文書を記事にした場合、誰が責任を取る?」
「じゃあ、記事にしなかった場合の責任は誰が取るんだ?」
しかし、決意だけでは重い扉は開かない。先ほど、「教会は何でもできる。何でも。」というセリフを引用したが、これは決して誇張ではない。教会は、警察・裁判所・弁護士に対して、自らに有利なように物事を動かすことができる。裁判所に提出された証拠さえ隠すことができるのだ。まさにやりたい放題と言っていいだろう。
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かつて被害を受けた者たちには、教会から圧力が掛けられる。新聞社が取材しようとしても、口を閉ざす者ばかりだ。それどころか、放っておけと追い出されてしまうほどである。さらにこの取材中に、9.11同時多発テロが発生した。記者を教会取材ばかりに振り向けてはいられなくなり、「ボストン・グローブ紙」の報道を期待して待っていた人たちの心を荒立てることになってしまう。
しかし「ボストン・グローブ紙」は最終的に、公開情報を元にもの凄く地道な作業を繰り返し、否定できないほどの確実な証拠を掴み取る。
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被害者の苦悩と、変わらない教会
取材を通じて記者は、被害者の苦悩を様々に知ることになる。
ある神父は、「貧困・親がいない・家庭が崩壊している」子どもばかり狙っていた。教会にしか居場所がない子どもたちだ。「だから神父の行為を拒むことができなかった」と語る被害者もいた。
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多くの人が、かつて神父から性的虐待を受けたという事実を隠して生きている。そして大人になった今も、その過去の記憶を消化できないまま苦しんでいるのだ。
しかし、これは決して「最悪」ではない。
彼は幸運な方だ。まだ生きてる。
これ以上詳しくは描かれなかったが、神父による性的虐待を苦にして自殺してしまった者もいる、ということだ。それを知りながら教会は、事実を隠蔽するだけではなく、現在進行形で被害者を生み出し続けていることにも驚かされる。
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「ボストン・グローブ紙」の調査により、ボストン教区内だけで249人の神父が性的虐待に関わり、その被害者は1000人を超えることが明らかになった。
しかしこの調査報道は、結果的にはほとんど何も変えなかったのだろうと思う。この映画では、その後について詳しく描かれているわけではないが、映画の最後に、報道当時ボストン教区にいたロウ枢機卿のその後の動向には触れられていた。彼はヴァチカンのある教区に転属になったという。より高位の立場になったそうなので、いわゆる「栄転」である。
こんなことでいいのだろうか?
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映画の内容紹介
前局長が定年退職し、マーティ・バロンが「ボストン・グローブ紙」の新局長に就任した。彼は、かつて同紙が報じた「ゲーガン事件」に着目する。ゲーガン神父が子どもに性的虐待を行ったという事件だ。バロンは、この事件はまだきちんと掘り下げられていないと感じ、「スポットライト」の面々に取材を命じる。
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「スポットライト」は、「ボストン・グローブ紙」の歴史ある特集欄だ。ネタを決めたら2ヶ月掛けて取材し、それについて向こう1年間の長期連載を行うという、同紙伝統のコーナーである。
取材を始めた記者たちは、思っていた以上に教会の闇が深いことに気づく。教会はごく一部の神父だけが悪事を働くのだと思わせたがっているし、記者たちも当初はそうなのだろうと考えていた。しかし取材を進めるにつれて、ボストン教区内で性的虐待に手を染めたと思われる神父のリストはどんどんと膨れ上がっていく。
これは神父の問題ではなく、教会という組織の問題だ……。
映画の感想
この映画の非常に良い点は、「新聞社が正義を振りかざしているように見えないこと」だ。
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実際の「ボストン・グローブ紙」の記者たちがどんな態度だったのか、それは分からないが、この映画での記者の描かれ方はとても良い。記者たちもまた、悩みながら前進しようとするのだ。
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彼らが「自分たちこそ正義だ」という雰囲気をまとわないのは、先述した通り、彼らにも罪悪感があるからだろうと思う。実情を正確に捉えていたわけではないとはいえ、「神父による性的虐待」を認識しながら、それをさらに深堀りしようとしなかったからだ。
特にその後悔を滲ませるのが、「スポットライト」のデスクであるロビーだ。
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俺達はどうだ。
情報は集まっていた。けど、何もしなかった。
ロビーは、自分たちにはもっと早くから出来ることがあったはずだ、という感覚を捨てきれずにいる。また、教会の取材はバロン局長の指示で始まったのだが、通常であれば「スポットライト」のテーマは記者が決める。局長がテーマをセレクトするというイレギュラーがなければ、「教会の悪事」を明らかにするのにもっと時間が掛かっただろうし、そうであれば被害者はもっと増えたはずだと後悔しているのだ。
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だからこそロビーは、怯むことなく教会と闘う決意をする。既に「スクープ」と言えるほど情報が集まっていた段階でも、「神父個人ではなく、教会に責任がある問題だ」と突きつけるために、さらなる取材を続けることを決めるのだ。
「神を告発する」記者たちの奮闘が描かれる、骨太の物語である。
出演:マーク・ラファロ, 出演:マイケル・キートン, 出演:レイチェル・マクアダムズ, 出演:スタンリー・トゥッチ, 出演:リーヴ・シュレイバー, 監督:トム・マッカーシー
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最後に
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先進国では数少なくなった「死刑存置国」である日本。社会が人間の命を奪うことを許容する制度は、果たして矛盾なく存在し得るのだろうか?死刑確定囚と対話する教誨師を主人公に、死刑制度の実状をあぶり出す映画『教誨師』から、死刑という現実を理解する
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【感涙】衆議院議員・小川淳也の選挙戦に密着する映画から、「誠実さ」と「民主主義のあり方」を考える…
『衆議院議員・小川淳也が小選挙区で平井卓也と争う選挙戦を捉えた映画『香川1区』は、政治家とは思えない「誠実さ」を放つ”異端の議員”が、理想とする民主主義の実現のために徒手空拳で闘う様を描く。選挙のドキュメンタリー映画でこれほど号泣するとは自分でも信じられない
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ドキュメンタリーで定評のある東海テレビが、「東海テレビ」を被写体として撮ったドキュメンタリー映画『さよならテレビ』は、「メディアはどうあるべきか?」を問いかける。2011年の信じがたいミスを遠景にしつつ、メディア内部から「メディアの存在意義」を投げかける
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「爆弾事件の被害を最小限に食い止めた英雄」が、メディアの勇み足のせいで「爆弾事件の犯人」と報じられてしまった実話を元にした映画『リチャード・ジュエル』から、「他人を公然と批判する行為」の是非と、「再発防止という名の正義」のあり方について考える
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NSA(アメリカ国家安全保障局)の最高機密にまでアクセスできたエドワード・スノーデンは、その機密情報を持ち出し内部告発を行った。「アメリカは世界中の通信を傍受している」と。『シチズンフォー』と『スノーデン』の2作品から、彼の告発内容とその葛藤を知る
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フランスのテレビ局が行った「現代版ミルグラム実験」の詳細が語られる『死のテレビ実験 人はそこまで服従するのか』は、「権威」を感じる対象から命じられれば誰もが残虐な行為をしてしまい得ることを示す。全人類必読の「過ちを事前に回避する」ための知見を学ぶ
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『スクールセクハラ なぜ教師のわいせつ犯罪は繰り返されるのか』では、自分が生徒に対して「権力」を持っているとは想像していなかったという教師が登場する。そしてこの「無自覚」は、学校以外の場でも起こりうる。特に男性は、読んで自分の振る舞いを見直すべきだ
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「北九州連続監禁殺人事件」という、マスコミも報道規制するほどの残虐事件。その「主犯の息子」として生きざるを得なかった男の壮絶な人生。「ザ・ノンフィクション」のプロデューサーが『人殺しの息子と呼ばれて』で改めて取り上げた「真摯な男」の生き様と覚悟
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日本は、死を覚悟して福島第一原発に残った「Fukushima50」に救われた。東京を含めた東日本が壊滅してもおかしくなかった大災害において、現場の人間が何を考えどう行動したのかを、『死の淵を見た男』をベースに書く。全日本人必読の書
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