目次
はじめに
この記事で取り上げる映画
出演:綾野剛, 出演:舘ひろし, 出演:尾野真千子, 出演:北村有起哉, 出演:市原隼人, 出演:磯村勇斗, 出演:寺島しのぶ, 出演:岩松了, 出演:豊原功補, 出演:菅田俊, 出演:康すおん, 出演:二ノ宮隆太郎, 出演:駿河太郎, Writer:藤井道人, 監督:藤井道人
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この映画をガイドにしながら記事を書いていきます
今どこで観れるのか?
Netflix
この記事の3つの要点
- 「義理人情」を行動原理とするヤクザは、必要悪だったのではないか
- 「悪いやつは叩いていい」「ルールの範囲内なら何をしてもいい」という風潮は怖い
- 間違いを犯してもやり直しがきく社会であってほしい
映画で直接的に描かれるのは「ヤクザ」だが、実際には「我々と、我々が生きる社会」が切り取られている
自己紹介記事
ルシルナ
はじめまして | ルシルナ
ブログ「ルシルナ」の犀川後藤の自己紹介記事です。ここでは、「これまでのこと」「本のこと」「映画のこと」に分けて書いています。
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どんな人間がこの記事を書いているのかは、上の自己紹介記事をご覧ください
記事中の引用は、映画館で取ったメモを参考にしているので、正確なものではありません
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今の時代に「ヤクザ」を描くなら、これしかない
映画を観て、絶妙なバランスだなぁ、と感じた。ヤクザという存在を絶妙に肯定し、そして絶妙に否定もし、様々な捉えられ方がされる中で、「この細い針の穴を通すしかない」というギリギリのところを真っ直ぐ通っている映画だと思う。もちろん、「ヤクザ」をエンタメとして見せる作品は多くあるだろうが、「ヤクザ」を現実のリアルな存在として切り取りながら、現代において作品を成立させるにはこれしかないだろうなぁ、と思った。
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生きる権利奪ってんのはそっちだろうが
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「ヤクザを排除すること」に、本当に意味があるのだろうか?
「アンダーグラウンドを支配する存在」は必要だと思う
まず大前提として私は、「アンダーグラウンドを支配する存在」は必ず現れるものだと思っている。既に「ヤクザ」は、「アンダーグラウンドを支配する存在」として廃れてしまっただろうが、結局「半グレ」と呼ばれる人たちが出てきた。どんな立場の人間を取り締まろうも、アンダーグラウンドの世界が存在する限り「アンダーグラウンドを支配する存在」は決していなくならないし、どうしたってアンダーグラウンドの世界もなくならないだろう。
この前提に立てば、「アンダーグラウンドを支配する存在」=「警察がある程度管理しやすい存在」であることが望ましいはずだ。
そして私の認識では、「ヤクザ」はかつてそういう立ち位置にいた。批判もあるだろうし、時代の流れに逆らう意見だろうとも思うが、そういう意味で私は、「ヤクザ」は社会の必要悪だと考えているし、「ヤクザ」がいる方が”まだマシ”ではないか、とも感じる。
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そう考える一番の理由が、「ヤクザ」の特殊さだ。
義理人情を重んじ、男を磨き、男の道を極めることです
義理人情じゃ、もう飯は食えねぇってことです
前者はヤクザが、後者はヤクザではない者が口にするセリフだ。どちらも「義理人情」という言葉を使っている。
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「ヤクザ」は確かに、暴力的・威圧的な存在であり、法を犯す。ヤクザの抗争に巻き込まれて一般の方が亡くなることもあるし、覚醒剤などを販売することも多いだろう。ヤクザによるそういう直接的な被害を受けたことがある人には、どんな理屈があれ納得できないだろう。
しかし「ヤクザ」は、「義理人情」を重んじる組織であり、間違って機能するとヤクザ以外にも大きな被害をもたらすが、良い方に転べば「アンダーグラウンド」の世界は安定するはずだ。
「義理人情」がベースにあることで、「悪事」に一定の制約がかかる。また、マル暴の刑事ともほどよく付き合い、明文化されていない阿吽の呼吸のようなやり取りで落とし前をつけさせ、社会秩序を大きく混乱させない程度に警察権力がヤクザを押さえつける。警察がコントロールしきれない部分ももちろんあり、予想外の大きな被害が出てしまうこともあるが、そういう部分には仕方なく目をつぶり、社会全体として「アンダーグラウンドの秩序を安定化させること」を優先する。
これらが成り立つのも、「ヤクザ」が「義理人情」を行動原理とするからであり、「法律」を超えた領域で社会を安定させる機能を果たすのにとても有用だった、と私は考えている。
もちろん、当たり前だが、「アンダーグラウンドの世界」が無くなればいいと思っている。しかし、それはあまりにも理想論すぎる。
であれば、「アンダーグラウンドの世界と、社会がほどよく共存していくためにはどうすべきか」を考える必要がある。そう考えた時、すべてが最悪である選択肢の中で「義理人情を重んじるヤクザ」という存在は、最もマシだと思えるのではないか、という話をしているつもりだ。
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一方、「半グレ」は違う。詳しくは知らないが、イメージだけで書くと、「ヤクザとは違い、警察権力でコントロール不可能な犯罪集団」ということになるだろう。ヤクザがいなくなった今、そういう「半グレ」と呼ばれる人たちがアンダーグラウンドの世界を支配しているのではないかと私は想像している。
それは、「義理人情」とは程遠い、とても殺伐とした世界だろう。金が儲かればなんでもアリという価値観で、「ヤクザ」だったらやらなかっただろう犯罪に手を出し、「ヤクザ」だったら抑えていただろう状況に躊躇なく足を踏み込んでいく。「ヤクザ」であれば阿吽の呼吸でコントロールできたものが、「半グレ」に変わってしまえばできなくなり、ただ「犯罪者」として逮捕するしかない。
もちろん、「犯罪者」として逮捕すればいいのだが、その労力は甚大だろう。「ヤクザ」をコントロールして社会を安定させていた頃とは比べ物にならない手間が掛かる。そしてそれ故に、捜査も逮捕も追いつかない、という事態も起こるはずだ。
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「ヤクザ」の場合は、どこの組の所属か、破門されたかどうかなどの情報などがちゃんと記録され、恐らく警察もその情報を共有している。しかし「半グレ」の場合は、構成員は流動的であり、どこに誰が属しているかなどさっぱり分からない。そういう中で捜査をしなければならないのだから時間も掛かるだろう、という意味だ。
だから、「ヤクザ」の方が圧倒的にマシだと私は考えている。
繰り返すが、「ヤクザ」を称賛したいのではない。「アンダーグラウンドを支配する存在」を許容しなければならない世の中だと考えており、すべてが最悪の選択肢からどれを選ぶと聞かれた時に、私は「義理人情に生きるヤクザ」だと答える、という話である。
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ヤクザを取り巻く環境はどうなったのか。
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冒頭で引用した「生きる権利奪ってんのはそっちだろうが」というセリフは、まさにこういう状況を指している。公権力が、「生きるための基本的人権」と言えるものをかなり制限しているのだ。
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ただ、警察というのは公権力であり、時代の変化を見ながら、社会の安定化のために何をすべきか考え実行しなければならない立場だ。ヤクザの「生きるための基本的人権」を制約するという手法に対して、個人的にはやりすぎじゃないかと感じるが、公権力がそういう判断をしたのであれば仕方ないという感覚もある。
しかし、このような風潮は、一般市民にも及んでいる。そして、「ヤクザを締め付ける風潮が、社会全体を歪に変えるのではないか?」と、映画を観て改めて感じた。
例えば、こんなシーンがある。元ヤクザの登場人物が、ヤクザ時代のエピソードを話す場面だ。彼は一般人に車をぶつけられ、修理代として真っ当な金額を請求したのだが、なんとそのことで逮捕されてしまうのだ。一般人を恐喝した、みたいな理屈なのだろうが、既に時代はこうなってしまっている。
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これは、間違っているのではないか? と私には感じられる。車をぶつけた一般人の方に、明らかに非がある。しかし、相手がヤクザだったことで、「ヤクザは法律で取り締まられる存在だから、何をしてもいい。ヤクザに恐喝されたってことにすれば修理代払う必要がないんじゃないか?」と考えて行動したのだろう。その理屈は、とてもじゃないけど真っ当ではない。
しかし中には、この一般人の行動を、「そうか、そんな手があったか」「褒められた行動じゃないが、相手がヤクザだからしょうがない」みたいに感じる人もいるのではないだろうか?
私は、そのことが怖いと感じる。
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「オウム真理教は特別だ、という理由で作られた”例外”が、いつの間にか社会の”前提”になっている」これが、森達也『A3』の主張の要点だ。異常な状態で続けられた麻原彰晃の裁判を傍聴したことをきっかけに、社会の”異様な”変質の正体を理解する。
そしてこの映画は、このような「ヤクザを通して見た社会の変化」を突きつける作品だと私は思う。
このような「社会の変化」は、なにもヤクザだけに限らない。今世の中では、「ルールの範囲内だったら何をしてもいい」という風潮が、当たり前のようにまかり通っているように私には感じられてしまう。
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Youtubeの再生回数が稼げさえすればいい、誤った情報でもたくさんRTされればいい、際どい表現で誇張しても商品が売れればいい。このような、法は破っていないかもしれないが、倫理的に問題だと感じる行動は、世の中のあちこちに存在する。この態度には、「ヤクザに恐喝されたってことにして修理代を払わない」のと似たものを感じてしまう。
ルールや法律は完璧なわけではないし、時代を経ることで社会と乖離していく部分も出てくる。そしてルールの改定は常に、時代の変化に遅れを取るものだ。その上で、「別にルールの範囲内なんだからいいじゃん」という態度が当たり前のものとして社会に受け入れられていくと、倫理的にはアウトだがルール的にはギリギリセーフ、みたいな行為が世の中に蔓延していくことになる。
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そしてそれは、「悪なんだから叩いていい」という雰囲気と同期しているとも感じられる。「ヤクザは悪なんだから叩いていい」という風潮と、「悪じゃなければセーフなんだから何をしてもいい」という考えは、表裏一体だろう。
この映画は私たちに、「こんな社会でいいのか?」と突きつけているように感じられた。表向き、描かれているのはヤクザなのだが、実際には「ヤクザに象徴される『分かりやすい悪』に相対する我々自身」が切り取られている。そして、我々自身の行動によって自分たちの首が絞まり、社会がますます窮屈になっている現実を示そうとしているように感じられた。
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そして結局のところ、「ヤクザではないアンダーグラウンドの構成員」を増やしているだけで、社会全体にとってもマイナスでしかないのではないだろうか。
もちろん、ヤクザを抜けた者になんの制約も課さなくていいなどとは思わないが、あまりに厳しすぎる制約は逆効果でしかないと感じる。
また、問題なのはそれだけではない。むしろより大きな問題だと思うのは、「私的制裁」である。
ネットの時代になって、どこの誰か分からないような個人(の集団)が、独自の基準で「悪」を選定し、自分たちに正義があると過信して「私的制裁」を下すことが当たり前になってきた。
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そしてこれは、ヤクザに限らない。元犯罪者や不倫した芸能人など、様々な人間が「私的制裁」の被害に遭っているだろう。
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この進行を止めたいと考えても、特効薬はない。この社会の異常さに気づいている人ももちろんたくさんいるはずだが、そういう人たちが少しずつでも「こんな世の中、おかしいよね」と口に出していくしかないのだと思う。
繰り返しになるが、この映画における「ヤクザ」はある種の記号でしかなく、それは「我々の視界に日々入ってくる『分かりやすい悪』」を示している。そういう存在に対して、条件反射で接するのではなく、どんな態度を取るのが正解なのかを一人一人が真剣に考えなければ、社会は一層狂っていくだろうと思う。
息苦しい社会を作っているのは、我々自身というわけだ。
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映画の内容紹介
主人公・山本賢治の人生を1999年、2005年、2019年という3つの時代に区切り、「ヤクザ」を背景にしながら、時代の変遷を切り取っていく物語である。
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サイコパスの連続殺人鬼・榛村大和を阿部サダヲが演じる映画『死刑にいたる病』は、「生きていくのに必要なもの」について考えさせる映画でもある。目に光を感じさせない阿部サダヲの演技が、リアリティを感じにくい「榛村大和」という人物を見事に屹立させる素晴らしい映画
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一方、シマでは縄張り争いが始まっていた。同じシマでしのぎを削る侠葉会との小競り合いが増えてきたのだ。この一帯は3年後に再開発されることが決まっており、それに伴い侠葉会が力を増しつつある。そんな状況で賢治は、侠葉会の者に大怪我をさせてしまい、そのまま全面戦争に発展するかに思われたが……。
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映画の感想
映画を観て強く感じたことは、「そういう生き方しかできない人はどうすればいいんだろう?」ということだ。
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こういう感覚は、私も理解できてしまう。「一般的な生き方ができない人間はどうしたらいいのか?」については、常に考えているからだ。
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大学を卒業し、新卒で就職し、仕事もきちんとこなし、異動に文句をいわず、恋愛して結婚して子どもを育てて……というような生き方の、どこかで躓いてしまう人は必ずいる。学校に行けなくなる人もいる。就職で失敗する人もいる。働き始めて身体を壊す人もいるし、結婚したけど夫からDVを受けている人もいる。
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私自身、いつ今の生活から脱落してしまうか分からないといつも考えている。だからこの映画で描かれる彼らのことが、他人事とは思えない。
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最後に
最後に改めて繰り返すが、私は決して「ヤクザ」という存在を積極的に肯定しているわけではない。すべてが不正解でしかない選択肢の中から何かを選ばなければならないのなら、「ヤクザ」がマシだろう、と言っているだけだ。
そして、私がこの記事で書いたような感覚は許容されにくくなっていると感じる。「悪はすべて排除すべきだ」という雰囲気が強すぎて怖いし、それを反転させた「悪じゃないなら何をしてもいい」という振る舞いにも違和感を覚えてしまう。
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「北九州連続監禁殺人事件」という、マスコミも報道規制するほどの残虐事件。その「主犯の息子」として生きざるを得なかった男の壮絶な人生。「ザ・ノンフィクション」のプロデューサーが『人殺しの息子と呼ばれて』で改めて取り上げた「真摯な男」の生き様と覚悟
「ヤクザ」という「分かりやすい悪」を目の前にした時、我々はどう振る舞うべきなのか。観客には、その問いが鋭く突きつけられていると感じられた。
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Kindle本出版しました!「それってホントに『コミュ力』が高いって言えるの?」と疑問を感じている方に…
私は、「コミュ力が高い人」に関するよくある主張に、どうも違和感を覚えてしまうことが多くあります。そしてその一番大きな理由が、「『コミュ力が高い人』って、ただ『想像力がない』だけではないか?」と感じてしまう点にあると言っていいでしょう。出版したKindle本は、「ネガティブには見えないネガティブな人」(隠れネガティブ)を取り上げながら、「『コミュ力』って何だっけ?」と考え直してもらえる内容に仕上げたつもりです。
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地方紙である「ボストン・グローブ紙」は、数多くの神父が長年に渡り子どもに対して性的虐待を行い、その事実を教会全体で隠蔽していたという衝撃の事実を明らかにした。彼らの奮闘の実話を映画化した『スポットライト』から、「権力の監視」の重要性を改めて理解する
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