目次
はじめに
この記事で取り上げる映画

「劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン」HP
この映画をガイドにしながら記事を書いていくようだよ
今どこで観れるのか?
劇場情報
この記事で伝えたいこと
いつどのシーンから泣き始めたのかさえ覚えておらず、そのまま最後まで泣きっぱなしだった
映画や小説に限らず、これほど号泣した記憶はほとんどありません
この記事の3つの要点
- 予備知識ゼロの人間が『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』を観た感想
- 人間の本質的な部分には「悪意」があると思っているから、それが見えてほしい
- 言語化は近似値でしかないから、この作品については自分の思考・感覚を言葉にしたくない
評判が良い作品だということだけは知っていましたが、まさかこれほどの作品とはと驚かされました
自己紹介記事
ルシルナ
はじめまして | ルシルナ
ブログ「ルシルナ」の犀川後藤の自己紹介記事です。ここでは、「これまでのこと」「本のこと」「映画のこと」に分けて書いています。
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予備知識ゼロの人間が大号泣したとんでもない映画
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なんとなく、「ムチャクチャ評判が良さそうな雰囲気」を感じたから、ちょっと観てみようかなと
そんな状態でこの映画に触れる人間は、ほぼ存在しないでしょう。そういう意味で、私の感想はある意味で貴重な記録と言えるのではないかと思っています。
とにかく、ひたすら泣き続けました。
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映画を観ている間、ほぼずっと泣いていた
映画を観ながら驚いたことは、自分が「気づいたら泣いていたこと」です。
普通、涙が出るほど感情が揺さぶられるような場面は印象に残っているものでしょう。でもこの映画を観ている時は違いました。「あれ、俺泣いてるじゃん」と気づいたという感じです。いつ泣き始めたのか、どの場面で涙が出てきたのか、まったく覚えていません。
そして、自分が泣いていることに気づいてから、映画を観終わるまでずっと泣き続けていました。時折、嗚咽が漏れそうになるぐらいの場面もあって、これは映画館で観ちゃいけない映画だと感じたほどです。
そうだね。映画とか小説とかに限らず、人生においてこれほど号泣したことって、ほとんど記憶にないかも
マスクの存在を、この映画を観た日ほどありがたいと感じたことはありません。映画館を出る時には、マスクで隠れている部分はちょっと大変なことになってました。
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「悪意のない物語」であることへの驚き
私は、「メチャクチャ泣いたこと」にも驚いたのですが、「悪意のない物語に泣いた自分」にもビックリしました。
TVアニメはどうだったか知りませんが(結局この記事を書いている現在に至るまで、TVアニメ版は観ていません)、『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』は、物語の中に「悪意」が存在しないと私は感じました。もちろん、「戦争」という悲惨な状況は描かれるし、その中で「名もなき誰かによる悪意」は存在するわけですが、役名のある登場人物には、悪意らしい悪意を放つ人物はいなかった、と思います。
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そして私は基本的に、「悪意のない物語」があまり好きではないのです。
そうね。「悪意がない物語」は、なんかつまらなく感じちゃうことが多いんだよなぁ
私は、どんな人間もその本質的な部分には何らかの「悪意」が存在していると考えています。なので、「悪意」が垣間見えないというのは、その人の本質的な部分が見えていないこととイコールであるように感じられてしまうのです。それはフィクションでもリアルでも同じで、私は現実世界で関わる人であっても、「人に見せてはいけないと本人が考えている『悪の部分』を垣間見れるかどうか」という点に関心を抱いています。
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私がそういうタイプの人間なので、普通なら「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」にはハマらないはずなのです。この映画は、周囲の人間もそうですが、誰よりも主人公自身が「悪意」とは無縁の人物であり、本来的には興味が持てない人だと感じます。
でも実際には全然違いました。物語世界を支える人たちの「無垢な心」みたいなものがズドーンと突き刺さったような感じで、その真っ直ぐさにやられたのでしょう。今まで、自分の中にそんなものがあると想像さえしていなかったスイッチが押され、それによって涙がドバドバと溢れ出たのだろうと思います。
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今でも私は、「悪意のない物語」はあまり好きではありません。ただ、「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」ほどの純粋で真摯な全力の「無垢」と向き合ってしまうと、「悪意」にしか反応できない人間の心さえも揺さぶるのだな、と実感させられました。
この映画を観ようと思った動機の半分は、「閉館しちゃう映画館で最後に何か観ておこう」って感じだったのよ
普段だったらたぶん観てない映画でしょ。こういう偶然の出会いみたいなのは印象に残るよね
自分が感じたことを言語化したくない
この「ルシルナ」というブログを読んでいただければ伝わると思いますが、私は普段、本や映画から考えたこと、感じたことを言葉にして吐き出したい、と思っています。「文章を書く」という行為を自分に義務付けることで、「自分が一体何を考え、感じたのか」と振り返る時間が取れるし、言語化することで、自分の感覚に改めて気付かされたりすることもあります。
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文章書いててたまに、「俺ってこんなこと考えてたんだ」って感じる瞬間があって、それが一番楽しい
ちゃんと言葉にしてみないと気づけない感覚ってあるからね
ただ、そんな風に文章を書き続けてきたからこそ、言語化することの限界も感じています。それは、「自分の思考・感情と、100%正確に一致する言葉は存在しない」という点です。
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「言葉」は、常に近似値でしかありません。自分が考えたこと、感じたことを、最も近い「言葉」に置き換えているにすぎないのです。どうしても、サイズの合わない靴を履いているような無理矢理感が出てきてしまうのは仕方ありません。
普段は、言語化することのそんな限界を理解しながらも、近似値でもいいから自分の思考・感情を記録しておく方がいい、と考えて文章を書いています。
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しかし今回は、それはちょっと違うな、と感じました。言語化してしまったら、自分の思考・感覚とどうしてもズレてしまうわけで、「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」に関してはそんな不十分な形で自分の頭の中身を残しておきたくない、と感じてしまったのです。
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なかなかそんな風に感じることはありません。普段は「言語化は不完全な記録方法」などとに意識することなく文章を書いています。
ただ今回は、自分の思考や感覚を書こうとすると、自分で「そうじゃないんだよなぁ」とツッコミが入りそうな気がしてしまいました。どんな言葉で表そうとしても、そのズレを許容できないような気がするのです。
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もし存在するなら、映画を観た直後の自分の脳の状態を写真のように完璧に保存できるような機械がほしいと感じてしまいました。言葉にはできない「こういう感じ」をそのまま保存でき、その機械と脳を繋げば、いつでも「こういう感じ」を再現することが出来るような機械があったらいいなと。
分かってる。だから、「感想を書かない」という選択をしたのだよ
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映画の内容紹介
物語は、「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」という人物がかつて存在していたのだと示唆する導入から始まる。
祖母を亡くした孫娘のデイジー。彼女は自分の母親に対して、「仕事ばかりしているからお婆ちゃんが可哀想だった」となじるような言い方をしてしまう。本心としては母親への感謝の気持ちもあるのだが、上手く言葉にできない。
母親はデイジーに、祖母が毎年誕生日に手紙を受け取っていたという話をする。祖母の母親、つまり曾祖母は若くして亡くなったのだが、自分の死後50年間、きちんと手紙が届くように依頼していたのだという。かつて、手紙を代筆する「自動書記人形」という職業が存在し、曾祖母はそんな1人に頼んでいたのだ。
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祖母が受け取った手紙を読み返していたデイジーは、同じ箱の中に、昔の新聞記事の切り抜きを見つける。そこで取り上げられていたのが、曾祖母が手紙の代筆を依頼した「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」だったのだ。
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ここで時間は過去へと巻き戻る。
ヴァイオレットは、自動書記人形として非常に高く評価される人物で、名誉ある仕事とされる「『海への感謝祭』での手紙の代筆」も任されるまでになっていた。
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しかしそんなヴァイオレットは、願っても願っても叶わないことが分かっているある願いを抱き続け、決して届くはずがないと理解していながら毎晩手紙を書いてしまうような日々を過ごしている。
その願いは、ヴァイオレットの辛い過去に関わるものだ。彼女はかつて「武器」だったのである。
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「落語協会」を飛び出し、新たに「落語立川流」を創設した立川談志と、そんな立川談志に弟子入りした立川談春。「師匠」と「弟子」という関係で過ごした”ぶっ飛んだ日々”を描く立川談春のエッセイ『赤めだか』は、立川談志の異端さに振り回された立川談春の成長譚が面白い
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【斬新】ホームレスの家を「0円ハウス」と捉える坂口恭平の発想と視点に衝撃。日常の見え方が一変する:…
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【感想】映画『先生、私の隣に座っていただけませんか?』は、「リアル」と「漫画」の境界の消失が絶妙
映画『先生、私の隣に座っていただけませんか?』は、「マンガ家夫婦の不倫」という設定を非常に上手く活かしながら、「何がホントで何かウソなのかはっきりしないドキドキ感」を味わわせてくれる作品だ。黒木華・柄本佑の演技も絶妙で、良い映画を観たなぁと感じました
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「福島中央テレビ開局50周年記念作品」である映画『浜の朝日の嘘つきどもと』は、福島県に実在した映画館「朝日座」を舞台に、住民が抱く「希望(幻想)」が描かれる。震災・コロナによってありとあらゆるものが失われていく世の中で、私たちはどう生きるべきか
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ともすれば「エロ本」としか思えない浅野いにおの原作マンガを、その空気感も含めて忠実に映像化した映画『うみべの女の子』。中学生がセックスから関係性をスタートさせることで、友達でも恋人でもない「名前の付かない関係性」となり、行き止まってしまうリアルを映し出す
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1人で火星に取り残された男のサバイバルと救出劇を、現実的な科学技術の範囲で描き出す驚異の映画『オデッセイ』。不可能を可能にするアイデアと勇気、自分や他人を信じ抜く気持ち、そして極限の状況でより困難な道を進む決断をする者たちの、想像を絶するドラマに胸打たれる
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森見登美彦の原作も大好きな映画『夜は短し歩けよ乙女』は、「リアル」と「ファンタジー」の境界を絶妙に漂う世界観がとても好き。「黒髪の乙女」は、こんな人がいたら好きになっちゃうよなぁ、と感じる存在です。ずっとニヤニヤしながら観ていた、とても大好きな映画
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「リア充感」が滲み出ているのに「生きづらさ」を感じてしまう人に、私はこれまでたくさん会ってきた。見た目では「生きづらさ」は伝わらない。24年間「リアル彼氏」なし、「脳内彼氏」との妄想の中に生き続ける主人公を描く映画『勝手にふるえてろ』から「こじらせ」を知る
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【博覧強記】「紙の本はなくなる」説に「文化は忘却されるからこそ価値がある」と反論する世界的文学者…
世界的文学者であり、「紙の本」を偏愛するウンベルト・エーコが語る、「忘却という機能があるから書物に価値がある」という主張は実にスリリングだ。『もうすぐ絶滅するという紙の書物について』での対談から、「忘却しない電子データ」のデメリットと「本」の可能性を知る
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専門学校の卒業制作として濱口竜介が撮った映画『親密さ』は、2時間10分の劇中劇を組み込んだ意欲作。「映像」でありながら「言葉の力」が前面に押し出される作品で、映画や劇中劇の随所で放たれる「言葉」に圧倒される。4時間と非常に長いが、観て良かった
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「映画」というメディアを構成する要素は多々あるはずだが、濱口竜介監督作『偶然と想像』は、「脚本」と「役者」だけで狂気・感動・爆笑を生み出してしまう驚異の作品だ。まったく異なる3話オムニバス作品で、どの話も「ずっと観ていられる」と感じるほど素敵だった
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村上春樹の短編小説を原作にした映画『ドライブ・マイ・カー』(濱口竜介監督)は、村上春樹の小説の雰囲気に似た「自然な不自然さ」を醸し出す。「不自然」でしかない世界をいかにして「自然」に見せているのか、そして「自然な不自然さ」は作品全体にどんな影響を与えているのか
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どんな理由があれ、法を犯した者は罰せられるべきだと思っている。しかしそれは、善悪の判断とは関係ない。映画『万引き家族』(是枝裕和監督)から、「国民の気分」によって「善悪」が決まる社会の是非と、「善悪の判断を保留する勇気」を持つ生き方について考える
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パッと見の印象は「よくある学園モノ」でしかなかったので、『殺さない彼と死なない彼女』を観て驚かされた。ステレオタイプで記号的なキャラクターが、感情が無いとしか思えないロボット的な言動をする物語なのに、メチャクチャ面白かった。設定も展開も斬新で面白い
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