【感動】円井わん主演映画『MONDAYS』は、タイムループものの物語を革新する衝撃的に面白い作品だった

目次

はじめに

この記事で取り上げる映画

出演:円井わん, 出演:マキタスポーツ, 出演:長村航希, 出演:三河悠冴, 出演:八木光太郎, 出演:髙野春樹, Writer:夏生さえり, Writer:竹林亮, 監督:竹林亮, プロデュース:野呂大介, プロデュース:福田文香
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いか

この映画をガイドにしながら記事を書いていくようだよ

今どこで観れるのか?

この記事で伝えたいこと

「タイムループ」という設定で、まだこれほど魅力的な物語が生み出せるんだと衝撃を受けた

犀川後藤

役者も舞台設定もミニマムながら、脚本の力でド級の面白さを生み出すパワフルな物語

この記事の3つの要点

  • 「タイムループの事実に気づくタイミングが皆それぞれ違う」という絶妙な設定と、それをリアルなに描くための背景
  • あまりにも「サラリーマン的」な設定を組み込んだことで、物語がより魅力的になっている
  • 「『タイムループを抜け出すための行動』が主人公の内面を変える」という横軸の物語が、作品全体をより良いものに押し上げている
犀川後藤

82分と短い作品ながら、あらゆる面白い要素をテンポよく詰め込んだことで、飽きさせず、かつ満足感の高い作品に仕上がったのだと思います

自己紹介記事

いか

どんな人間がこの記事を書いているのかは、上の自己紹介記事をご覧ください

ミニマムすぎる舞台設定、そして「タイムループ」という状況下で、これほど「良い話」が展開されるとは思わなかった!

とんでもなく面白い作品でした! これは凄かったなぁ。正直なところ、あまり期待はしていませんでした。というのも、マキタスポーツを除けば有名な役者は1人も出てこないし、監督も『14歳の栞』というドキュメンタリー映画を手掛けたことはあるものの、本作がフィクション映画初という作品だったからです。普通に考えたら、なかなか期待できる要素はないと言っていいでしょう。

しかしこれが、めちゃくちゃ面白かった! 既に使い古された手法だろう「タイムループ」をメインにし、しかも「舞台はほぼオフィスの中」という限られた状況の中で、最初から最後までまったく飽きさせず、なんなら最後に感動さえ与える物語を生み出したことは驚嘆に値します。映画に限りませんが、「物語って、まだまだ色んなことがやれるんだなぁ」と改めて実感させられた作品でした。

いか

こういう作品に出会えるから、映画や小説に触れるのを止められないよね

犀川後藤

「予想通り面白い」も良いけど、「期待してなかったけど面白い」の方が、やっぱりアガるよなぁ

まだ観てないという方には、是非観てほしいなと思っています。

映画の内容紹介

10月25日月曜日。すべての物語はここから始まる

その日、デザイン事務所「Zコミュニケーション」で働く面々は、月曜朝に提出しなければならないプレゼン資料作成のため、部長と事務員を除いた全員が土日泊まり込んでの残業をしていた。何の資料かといえば、「味噌汁炭酸化タブレット」という、本当にこんな商品に需要があるんだろうかと誰もが考えてしまうようなもの。キャッチコピーやCM動画を、とにかく大急ぎで作っているところだ。

担当は吉川朱海。彼女には実は、キモトタカコというずっと憧れていたデザイン事務所からの引き抜きの話が来ており、キモトタカコの孫請けとして回ってきたこの仕事にはりきっている。内心では既に転職の意思を固めていた彼女は、この案件でズバッと良いアイデアを出して、意気揚々と新たな道へ進もうと考えているのだ。

さて、そんな徹夜明けの月曜日。オフィスには死屍累々の面々が転がっている。そして皆が目を覚まし始めた頃、オフィスの大きな窓ガラスに鳩が激突、鈍い爆音が響き渡った

この爆音を合図にしたのか、後輩の遠藤と村田がこそこそと動き始める。窓の外を見ながら何か話しているのだが、吉川にはそんなことに構っている余裕はない。一刻も早く資料を完成させなければならないからだ。

そんな風にして始まった1週間、吉川は遠藤と村田からことあるごとに、「僕たち、タイムループしています」という訴えを聞かされることになる。何を寝ぼけたことを。タイムループだと。映画や小説じゃあるまいし。資料作成のため、恋人との約束も破りに破りまくっている吉川には、そんなフザけた話に耳を傾ける余裕なんかまったくなかった

しかしやがて、不思議なことが起こる。遠藤と村田が、まるで吉川の身に起こることを「予知」しているかのような行動を取り続けるのだ。まさかな。しかし、やはり週末の泊まり込みが決定してしまった金曜の夜、彼らは停電が起こるタイミングさえも寸分違わず言い当てた。まさかな……。さらに吉川は、遠藤と村田から、「これだけは覚えておいて下さい」と、月曜朝の「鳩の爆音」のことを念押しされるのだが……。

映画の感想

「タイムループ」というありがちな設定に組み込んだ2つの絶妙な要素

本作は、タイムループものの物語として非常にシンプルな構成であり、「月曜の朝になると1週間前に戻ってしまう」という、同じ1週間をひたすら繰り返す展開となります。このことは、物語のかなり早い段階で理解できるでしょう。そして、そういう物語なので当然、「いかにこのループから抜け出すか」に焦点が当てられるし、その動機も一般的なものと言えます。大枠としては、「王道のタイムループもの」という感じでしょう。

しかしその上で、映画『MONDAYS』には物語を面白くする絶妙な設定が組み込まれています。その1つは、「タイムループの事実に気づくタイミングが、登場人物によって異なること」です。この設定が、物語を格段に面白くしていると言っていいでしょう。

いか

普通はこんな設定なかなか成り立たないと思うけどね

犀川後藤

その辺りの構成も、この作品は上手いんだよなぁ

さて、ではどうして「タイムループの事実に気づくタイミングが異なる」なんてことが起こるのでしょうか? それは、「彼らが仕事に忙殺されているから」です。

月曜の朝にタイムループして1週間前に戻ってしまうわけですが、まさにその時彼らは疲労の限界に達しています。土日をフルで注ぎ込んでも終わるかどうか分からない量の作業を抱え必死で仕事をしていることもあり、みんな「記憶が有って無いようなもの」という状態にあるわけです。

実際彼らは、何度も「同じ月曜日」「同じ1週間」を過ごしているのですが、あまりに疲れすぎているため、僅かに残っている「先週(ループしているので、実際には同じ週)の記憶」は、「夢でも見ていたんだろう」みたいに処理されてしまいます。そのため彼らは、まともな思考力を保てていれば恐らく理解できただろうタイムループに、ずっと気づけないでいるのです。

そう考えると、「仕事の負荷が比較的少ない後輩(一番下っ端)が、最初にタイムループの事実に気づく」という設定も、なかなかリアルなものに感じられるでしょう。

しかし、「一番下っ端が最初に気づく」という状況がさらなる問題を引き起こすことになります。

犀川後藤

言われてみれば「確かに!」って感じる話だけど、もし自分が物語を作る立場だったら失念しちゃうかも

いか

「地に足がついたリアルな設定」って感じするよね

さて、もしも後輩から「タイムループしていますよ!」なんて言われたら、あなたはどんな反応をするでしょうか? 「何を馬鹿なことを」と返すか、あるいは「疲れてるんだな、休めよ」みたいな反応になるんじゃないかと思います。仕事中に「タイムループ」とか言われたら、「いやいや、そんなことより仕事しろって!」みたいな感覚になってしまうでしょう。

映画の中では細かく描かれてはいませんでしたが、遠藤も村田も恐らく、タイムループする度に「タイムループしている!」と同じオフィスの面々に訴え続けたはずです。しかしやはり、まったく信じてもらえずに撃沈し続けたのでしょう。そして、何度もタイムループを繰り返し、幾度も同じ失敗を繰り返してきた彼らは、ようやくある作戦に思い至ります

それが、この物語に加えられたもう1つの設定である「上申制度」です。要するに「直属の上司に報告する」という意味であり、とてつもなく「会社員」らしい解決策だと言えるでしょう。そしてだからこそ遠藤と村田は、直属の上司である吉川をまず説得することにしたのです。

いか

この設定はホント絶妙だったよね

犀川後藤

「舞台がオフィスのみ」っていうのは、実際上は予算とかの都合だとは思うんだけど、「上申制度」のお陰で、それが必然にも思えてくるから面白い

この「上申制度」こそが、『MONDAYS』における1つの大きな見所だと言っていいでしょう。普通なら、これほど「サラリーマン的」な設定はエンタメ作品にはなかなか馴染まないだろうし、だから上手く使わなければ、物語をむしろ冗長にさせる要素として機能してしまう可能性さえあると思います。しかしこの物語では、この「上申制度」こそが物語を面白くさせる要素になっているのです。

苦心の末(とはいえ、物語の中ではかなりテンポよく描かれます)、遠藤と村田は吉川の説得に成功するのですが、しかしそれだけでは状況は解決しません。というのも早い段階で、「このタイムループの原因は、永久部長に原因があるのではないか」という仮説が立てられるからです。そのため、「上申制度を上手く使って、いかに部長を説得するか」が物語の大きなポイントになってきます。吉川が直接部長を説得しようとしても、やはり信じてはもらないでしょう。だからこそ、全員が「直属の上司」を頑張って説得することで、最終的に部長を納得させるという共同戦線を張ることにするのです。

この設定が絶妙に上手いと感じました。

吉川の変化。そしてタイムループ中に仕事をし続ける理由

さて、物語の展開は決して、「いかにタイムループから抜け出すか」だけに留まりません。「いかに抜け出すか」を縦軸とするなら、そこに「吉川の気持ちの変化」という横軸が描かれていくのです。これが、物語全体を一層素晴らしいものにしていると感じました。

いか

吉川の変化自体は、ベタっちゃあベタな展開ではあるけどね

犀川後藤

でも、物語の中に絶妙に組み込まれてる感じがしたなぁ

当然のことながら、「吉川の変化」は「タイムループ」と連動しています。というのも、「タイムループから抜け出すために行ってきた様々な行動」が、結果として吉川に「変化」をもたらすことになるからです。

吉川は基本的に、「自分が良ければすべて良し」みたいな存在として描かれます。仕事のために恋人との予定をすっぽかし、憧れの会社に転職するという最大の目的を達成するために目の前の仕事に奮闘しているのです。別にその姿勢自体に問題はないでしょう。努力して上を目指す姿は素晴らしいと思うし、「他人を蹴落としてでも上に行きたい」みたいな野心があるなら、協調性に欠けているのもまあ当然のように感じられるからです。

しかし彼女は、自分がタイムループしていることに気づいてしまいます。彼女も他のみんなと同じく、このループからどうにか抜け出さなければならないと考えますが、やはりその動機の大半は当初、「憧れのキモトタカコに転職するため」だったでしょう。だから彼女は、ループを抜けるのに必要ならばと、仕事を放り出して様々なことを試してみます。

そして、そのような「タイムループを抜け出すための行動」が、結果として吉川の意識を変えていくことになるというわけです。「その行動が、タイムループを抜け出すのにどう関わるのか」だけではなく、「その行動が、どのように吉川の意識を変えていくのか」という点にも焦点が当たる作品であり、この縦横の軸が見事に絡まり合っているからこそ、最終的に「良い映画だったなぁ」という実感をもたらすような作品に仕上がっているのだと感じました。

犀川後藤

冒頭の時点では、まさかこんな良い話が展開されるとは思わなかったなぁ

いか

「ドタバタコメディ」って感じのイメージで観に行ったから、良い意味で裏切られた感じだよね

さてもう1つ、これはタイムループの設定や制約に関する話ではありませんが、非常に面白いポイントがあったので触れておきたいと思います。それは、タイムループの事実を認識した全員が、「何かの理由で、突然タイムループが終わってもおかしくない」という共通理解を持っていることです。

先程も書いた通り、彼らは早い段階から、「部長に原因がある」と推察します。であれば、「部長の言動に変化がない限り、このループが終わることはない」と考えるのが自然でしょう。しかし、「部長に原因がある」というのはあくまで仮説に過ぎず、確証はありません。

もしも、未来永劫タイムループし続けるのであれば、仕事なんてしたって意味はありません。1週間仕事をしても、その先の未来など存在しないわけで、旅行に行くなり、家でダラダラするなりして過ごせばいいはずです。しかしもしも、「部長に原因がある」という仮説が間違っていた場合、彼らにも理解できない理由によって突然タイムループが終わるかもしれません。そうなったら、1週間家でダラダラして迎えた「11月1日月曜日」は絶望でしかないでしょう。プレゼン資料など、何も出来ていないのですから。仮にタイムループを抜け出せたとしても、社会人としての彼らの人生は終わりです

いか

「タイムループがいつ終わるのか」があらかじめ分かってるなら、タイムループしてる時間は有意義に使えそうだよね

犀川後藤

本を読みまくったり、プログラミングの勉強したり、色々使えそうな気がする

登場人物は皆、そのような危惧を抱えているので、仕事の手を抜くことはありません。もちろん、毎週毎週同じ仕事をしているので、彼らの「生産性」は爆上がりしていきます。それ故の面白さも作中の随所に描かれていて、楽しませてくれるというわけです。

最終的に「永久部長を説得する」場面は、客席から何度も笑い声が上がるぐらい面白いシーンでした。映画全体のテンポも非常によく、82分という、長編映画としては短めな作品にも拘わらず、かなり満足感の高い映画だと言っていいでしょう。

ホントに、メチャクチャよく出来た物語だと感じました。

出演:円井わん, 出演:マキタスポーツ, 出演:長村航希, 出演:三河悠冴, 出演:八木光太郎, 出演:髙野春樹, Writer:夏生さえり, Writer:竹林亮, 監督:竹林亮, プロデュース:野呂大介, プロデュース:福田文香
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最後に

主演を務めた円井わんは、以前観た『コントラ』という映画で初めてその存在を知りました。『コントラ』は、『MONDAYS』とは真逆の、文学チックな意味で変わった作品だったのですが、円井わんはその奇妙な雰囲気を絶妙に演じていたと思います。

また、この記事の冒頭で、本作監督が手掛けた『14歳の栞』というデビュー作に触れましたが、こちらも「こんなドキュメンタリー映画が存在するのか!」と度肝を抜かれた作品だったので、オススメです。

ドキュメンタリー、フィクション共に、一発目からド級の面白さを放つ作品を仕上げてくる監督の手腕には驚かされましたし、本作はとにかく「良い作品に出会えた」という感覚がとても強い1本でした。

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