目次
はじめに
この記事で取り上げる映画
出演:藤⾕理⼦, 出演:⿃越裕貴, 出演:⾓⽥貴志, 出演:久保史緒⾥(乃⽊坂46), 出演:本上まなみ, 出演:近藤芳正, Writer:上⽥誠, 監督:⼭⼝淳太
¥2,200 (2023/12/10 23:33時点 | Amazon調べ)
ポチップ
この映画をガイドにしながら記事を書いていくようだよ
今どこで観れるのか?
公式HPの劇場情報をご覧下さい
この記事で伝えたいこと
「世の中には、やはり『天才』がいるんだなぁ」と改めて実感させられました
私も「天才」側として生きたかったので、こういう才能に憧れてしまいます
この記事の3つの要点
- 「同じ2分間が繰り返される」という設定から、あなたならどんな物語を生み出すでしょうか?
- それぞれの2分間を、長回しのワンカットで正確に2分間撮影するという驚異の作り方
- 「制約」だらけの中、「人間模様」も絶妙に描き出す作品
客席から何度も笑い声が上がるようなコメディであり、「タイムループものの物語」における革命的な傑作でもあります
自己紹介記事
あわせて読みたい
ルシルナの入り口的記事をまとめました(プロフィールやオススメの記事)
当ブログ「ルシルナ」では、本と映画の感想を書いています。そしてこの記事では、「管理者・犀川後藤のプロフィール」や「オススメの本・映画のまとめ記事」、あるいは「オススメ記事の紹介」などについてまとめました。ブログ内を周遊する参考にして下さい。
あわせて読みたい
【全作品読了・視聴済】私が「読んできた本」「観てきた映画」を色んな切り口で分類しました
この記事では、「今まで私が『読んできた本』『観てきた映画』を様々に分類した記事」を一覧にしてまとめました。私が面白いと感じた作品だけをリストアップしていますので、是非本・映画選びの参考にして下さい。
どんな人間がこの記事を書いているのかは、上の自己紹介記事をご覧ください
映画『リバー、流れないでよ』は、「タイムループものの物語」を革新したとんでもない作品!ホント、よくもまあこんな映画を作ったもんですわ
あわせて読みたい
【愛】ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の“衝撃の出世作”である映画『灼熱の魂』の凄さ。何も語りたくない
映画館で流れた予告映像だけで観ることを決め、他になんの情報も知らないまま鑑賞した映画『灼熱の魂』は、とんでもない映画だった。『DUNE/デューン 砂の惑星』『ブレードランナー 2049』など有名作を監督してきたドゥニ・ヴィルヌーヴの衝撃の出世作については、何も語りたくない
私は普段、劇場で流れる予告映像や配布されているチラシなんかを元に観る映画を決めています。出来るだけフラットな状態で作品に触れたいので、映画を観る前の時点では可能な限り内容も評価も知らない状態を保つようにしているのです。特に、SNSやネットはなるべく見ないようにしているので、「話題になっている作品」ほど取りこぼしやすいと言えるかもしれません。
「自分の趣味趣向で観る映画を選んでしまわないように」って意識してるんだよね
誤解を恐れずに言えば、「たまには駄作にも出会いたい」ぐらいの気持ちを持ってたりもするかな
あわせて読みたい
【怖い?】映画『アメリ』(オドレイ・トトゥ主演)はとても奇妙だが、なぜ人気かは分かる気がする
名作として知られているものの観る機会の無かった映画『アメリ』は、とても素敵な作品でした。「オシャレ映画」という印象を持っていて、それは確かにその通りなのですが、それ以上に私は「主人公・アメリの奇妙さ」に惹かれたのです。普通には成立しないだろう展開を「アメリだから」という謎の説得力でぶち抜く展開が素敵でした
そんなわけで、公開されるまで『リバー、流れないでよ』という映画についてはその存在さえまったく知りませんでした。公開後に、映画レビューサイトFilmarksでの評価が異常に高いことに気付いたことでその存在を知り、「なるほど、あのヨーロッパ企画・上田誠の脚本なのか」という情報だけを頭に入れて映画館に行った、という感じです。
なので、まあとにかく驚きました。まったくノーマークだった映画が、こんなにも面白いのか、と。
映画を観ながらずっと、「世の中には『天才』ってホントにいるんだなぁ」としみじみ感じてはいました。こういう天才がいるから世の中が面白いとも言えるし、また、若干「絶望」させられもする、といったところでしょうか。
やっぱり、「自分も『天才』側として生きたかった」って思っちゃうんだよなぁ
もちろん、「天才」側として生きていくのも、苦労が多いだろうけどね
あわせて読みたい
【衝撃】「仕事の意味」とは?天才・野崎まどが『タイタン』で描く「仕事をしなくていい世界」の危機
「仕事が存在しない世界」は果たして人間にとって楽園なのか?万能のAIが人間の仕事をすべて肩代わりしてくれる世界を野崎まどが描く『タイタン』。その壮大な世界観を通じて、現代を照射する「仕事に関する思索」が多数登場する、エンタメ作品としてもド級に面白い傑作SF小説
何が凄いかって、「タイムループものの物語」で新機軸を打ち出していることです。いやもちろん、世界中の物語に精通しているわけではないので、もしかしたら同じようなアイデアは既にどこかにあるのかもしれませんが、私はとにかく、『リバー、流れないでよ』で描かれる「タイムループ」が非常に斬新だと感じました。
というのも、「同じ2分間がずっとループし続ける」という物語だからです。「同じ1日」「同じ1時間」を繰り返すみたいな物語はいくらでもあると想いますが、「2分間」というのはなかなか究極的な短さだと言っていいでしょう。それに、「同じ2分間がずっとループし続ける」という設定だけ聞くと、「それ、どうやって物語を展開させるんだ?」と感じるのではないかと想います。ホント、その通りでしょう。普通に考えて、「そんな物語、成立させられないだろう」ってなると思います。
しかしホント、「よくもまあこの設定で長編映画を完成させたものだ」って感心させられる物語だよね
「この映画をどう作ったのか」みたいな部分を想像すると、きっと発狂するぐらい大変だっただろうなぁって思う
あわせて読みたい
【あらすじ】声優の幾田りらとあのちゃんが超絶良い!アニメ映画『デデデデ』はビビるほど面白い!:『…
幾田りらとあのちゃんが声優を務めた映画『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』は、とにかく最高の物語だった。浅野いにおらしいポップさと残酷さを兼ね備えつつ、「終わってしまった世界でそれでも生きていく」という王道的展開を背景に、門出・おんたんという女子高生のぶっ飛んだ関係性が描かれる物語が見事すぎる
以前観た映画『MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』も「タイムループものの物語」として新しさを打ち出していたと思いますが、『リバー、流れないでよ』は後で触れるように、かなりの制約を乗り越えなければ作れない作品なので、よりその凄まじさが伝わる感じがしました。
というわけでまずは、大まかな設定を紹介したいと思います。
映画『リバー、流れないでよ』の内容紹介
舞台は、冬の京都。中心部から少し離れた貴船にある料理旅館「ふじや」は、女将であるキミの「とにかくお客様に素敵な時間を過ごしてもらいたい」という気概によって、長く続く伝統が守られている。
あわせて読みたい
【漫画原作】映画『殺さない彼と死なない彼女』は「ステレオタイプな人物像」の化学反応が最高に面白い
パッと見の印象は「よくある学園モノ」でしかなかったので、『殺さない彼と死なない彼女』を観て驚かされた。ステレオタイプで記号的なキャラクターが、感情が無いとしか思えないロボット的な言動をする物語なのに、メチャクチャ面白かった。設定も展開も斬新で面白い
時間帯は午後、つい先程帰りの客を見送った。今泊まっているのは、友人同士だろう男性2人組、そして筆が進まない作家と彼を缶詰にした編集者だ。宿は夕飯時を前に少し落ち着いたところで、キミは中居のミコトに、「部屋の片付けが終わったら休憩して」と告げる。ミコトは、旅館沿いを流れる川べりで一息ついてから、番頭と共に先程帰った客の部屋の掃除に取り掛かった。「サミットが開催されるからか、駅で不審物が見つかったらしい」「今度、娘の彼氏が家に来るんだよ」と、他愛のない話をしながら、テキパキと仕事をする。
しかししばらくすると、ミコトは何故かまた川べりに立っていることに気づいた。頭の中に「???」が駆け巡る。ついさっきまで客室の掃除をしていたのに。さっきと同じルートで階上へと向かい、途中で合流した番頭と一緒に先程の部屋へと向かう。なんと、ミコトの記憶では片付け終わったはずの部屋に、まだ食器が残っていた。番頭も不思議そうな顔で目の前の光景を観ている。
「この部屋、さっき片付けましたよね」「この会話、さっきもしたよね」と不思議な感覚を共有していると、ミコトはまたしても川べりに移動していた。何これ? しばらくして、「事情は不明だが、どうやらかなり短い間隔で時間がループしているらしい」ということが分かってきた。男性2人組のお客様からも、「この雑炊、しばらくすると量が増えて全然食い終わらないんだけど」と言われてしまい、状況を説明する。
旅館の者たちの知識と調査を総動員し、十数分後には、「旅館周辺のみ、2分間きっかり時間がループしている」と明らかになってきた。「2分後にはそれぞれのスタート地点に引き戻されてしまう」という制約の中、彼らは短い時間で作戦を立てながら、どうにかこのループから抜け出そうと奮闘するが……。
あわせて読みたい
【感想】映画『竜とそばかすの姫』が描く「あまりに批判が容易な世界」と「誰かを助けることの難しさ」
SNSの登場によって「批判が容易な社会」になったことで、批判を恐れてポジティブな言葉を口にしにくくなってしまった。そんな世の中で私は、「理想論だ」と言われても「誰かを助けたい」と発信する側の人間でいたいと、『竜とそばかすの姫』を観て改めて感じさせられた
あなたなら、この条件でどのような物語を作るだろうか?
さて、ここまで触れてきた通り、物語の設定は非常にシンプルだと言えるでしょう。「同じ2分間を繰り返すことになってしまった旅館の面々が、いかにそのループから抜け出すか」というだけの物語です。基本的には、「2分経ったら、記憶以外のすべてが2分前の状態に戻る」と考えればいいでしょう(ただし、理由は後で触れますが、2分前にはなかった雪が積もっていたりするなど、世界線がバグったような感じにはなります)。どれだけ遠くに行こうとも、2分経ったら各々のスタート地点に戻されますし、何かを動かしたり壊したりしても、2分経ったら元の状態に戻るというわけです。たとえ命を落としても、2分経てば生き返ります。
さて、あなたが物語を生み出す側の人物だとして、このような設定からどんなストーリーを作るでしょうか?
あわせて読みたい
【痛快】精神病院の隔離室から脱した、善悪の判断基準を持たない狂気の超能力者が大暴れする映画:『モ…
モナ・リザ アンド ザ ブラッドムーン』は、「10年以上拘束され続けた精神病院から脱走したアジア系女性が、特殊能力を使って大暴れする」というムチャクチャな設定の物語なのだが、全編に通底する「『善悪の判断基準』が歪んでいる」という要素がとても見事で、意味不明なのに最後まで惹きつけられてしまった
「2分間」というのが、絶妙に「何かするには短すぎる」んだよねぇ
何を描いても2分経ったらリセットされてしまうので、長く続くような展開は描けないでしょう。もちろん、記憶は引き継がれるので、次の2分間に持ち越すことは出来ます。ただ、毎回「スタート地点」に戻されてしまうという制約がなかなか厳しい。例えば、「作戦会議のためにみんなで集合する」みたいな状況の場合、移動のための時間がロスとなるため、決して2分間丸々使えるわけではありません。
また、これは「ヨーロッパ企画」という劇団が制作した映画だからこその制約ではあるのですが、所属する劇団員はやはり出来るだけ出演させたいところでしょう。となれば、それなりの役柄を用意する必要があります。出番の少ない役を用意しても仕方ないので、それぞれの登場人物がそれなりには物語に絡む展開が必要でしょう。つまり、1度の展開に2分間しか使えないのに、かなりの人数の物語を捌いていかなければならないわけです。
この条件だけでも、既に発狂しそうだなって思っちゃう
ホントに、よくこんな無謀な物語を作ろうと考えたなって感じるよね
あわせて読みたい
【おすすめ】濱口竜介監督の映画『親密さ』は、「映像」よりも「言葉」が前面に来る衝撃の4時間だった
専門学校の卒業制作として濱口竜介が撮った映画『親密さ』は、2時間10分の劇中劇を組み込んだ意欲作。「映像」でありながら「言葉の力」が前面に押し出される作品で、映画や劇中劇の随所で放たれる「言葉」に圧倒される。4時間と非常に長いが、観て良かった
さて、まだまだ制約はあります。実は私は、映画を観ている時点ではこの事実を把握していなかったのですが、映画で描かれる「2分間」は、正確に「2分間」なのだそうです。つまり、「カット割りをせず、2分間を長回しで撮り続けている」ということになります。また、撮影現場にタイムキーパーがいて、毎回の話がきっかり2分間になるように撮影したのです。後でネット記事を読みましたが、「今ので1分53秒だったから、あと7秒伸ばしてくれ」みたいな感じで、何度も撮り直したと書かれていました。
つまりこの物語は、「それぞれの2分間が、カット割りせず長回しで撮り続けられるような展開」である必要があり、さらに「それぞれの2分間が、ちょうど2分間経った時点で、次に繋がるような意味のある終わり方になっていなければならない」のです。
普通に考えて、ちょっと想像を絶する「制約」だと私は感じました。
映画を観ている時、そういうところまで想像が及んだし、だから「よくこんな映画作ったよなぁ」って感じたわ
「きっかり2分間」って情報を知らなかったとしても、メチャクチャ大変そうなのは観れば理解できるもんね
あわせて読みたい
【魅力】モンゴル映画『セールス・ガールの考現学』は、人生どうでもいい無気力女子の激変が面白い!
なかなか馴染みのないモンゴル映画ですが、『セールス・ガールの考現学』はメチャクチャ面白かったです!設定もキャラクターも物語の展開もとても変わっていて、日常を描き出す物語にも拘らず、「先の展開がまったく読めない」とも思わされました。主人公の「成長に至る過程」が見応えのある映画です
さらなる「制約」と、撮影期間中の大トラブル
さて、このように考えた時、そもそも大前提としての「制約」が存在することにも気づかされるでしょう。それは、「撮影場所が決まらなければ、脚本が書けないはず」という問題です。
「2分間を長回しワンカットで撮る」ためには、「それが実現可能なロケーション」が必要になります。撮影は、貴船に実際に存在する「ふじや」という料理旅館を借り切って行われたそうですが、この「ふじや」は道を挟んで両側に本館・別館が建つという構成になっており、全体の広さ的にも2分間で物語を展開させるのにちょうどいい感じです。さらに、近くを川が流れ、神社も隣接しているので、近場で色んな展開をつけやすくなっているとも言えます。
あわせて読みたい
【感想】どんな話かわからない?難しい?ジブリ映画『君たちはどう生きるか』の考察・解説は必要?(監…
宮崎駿最新作であるジブリ映画『君たちはどう生きるか』は、宮崎アニメらしいファンタジックな要素を全開に詰め込みつつ、「生と死」「創造」についても考えさせる作品だ。さらに、「自分の頭の中から生み出されたものこそ『正解』」という、創造物と向き合う際の姿勢についても問うているように思う
だから普通に考えれば、「『ふじや』で撮影することが決まった後で脚本が出来上がった」と想像するのが自然でしょう。「人」ではなく「場所」に当て書きする形でしか作りようがない作品だからです。
どう考えたって、撮影場所が決まってない状態じゃ、「2分間を繰り返す」って設定だけあっても、物語は作れないからね
これが仮に、都心のビル型のホテルでの撮影だったら、また全然違う物語になってたはずだからなぁ
さてしかし、「『ふじや』で撮影することが決まった後で脚本が出来上がった」なんてことがあり得るでしょうか? というのも、上田誠の周辺に「ふじや」の関係者がいたとかなら話は別でしょうが、そうでないなら、「脚本がないまま撮影交渉をする」ことになるからです。「まだ脚本は決まってないんですが、この場所で映画を撮らせていただきたくて、なのである期間貸し切りで使わせて下さい」みたいに依頼するしかないでしょうが、そんなこと言われても「ふじや」の人も困るでしょう。私にはどうしても、「ここを使わせていただけるなら、この場所に合った脚本を書きますので」なんていう依頼が、簡単に通るとは思えないのです。
このようにとにかく「制約だらけ」だし、だから本当に「よくも完成させたものだ」と感心させられました。
あわせて読みたい
【あらすじ】映画『四畳半タイムマシンブルース』超面白い!森見登美彦も上田誠も超天才だな!
ヨーロッパ企画の演劇『サマータイムマシン・ブルース』の物語を、森見登美彦の『四畳半神話大系』の世界観で描いたアニメ映画『四畳半タイムマシンブルース』は、控えめに言って最高だった。ミニマム過ぎる設定・物語を突き詰め、さらにキャラクターが魅力的だと、これほど面白くなるのかというお手本のような傑作
話は変わって、先程「さっきまで雪は降っていなかったはずなのに、2分戻ったら雪が積もっている」みたいな場面転換があると書きましたが、ここには撮影時のトラブルが関係しているのだといいます。なんと撮影期間中に貴船が大寒波に襲われ、役者さえ貴船に辿り着けなくなり、一時撮影が中断してしまったのだそうです。
ずっと同じ天候の下で撮影しないと、「時間が戻ってる」って部分に説得力が生まれないからなぁ
撮影では、「ふじや」を貸し切りにする必要があるわけで、当然貸し切りで使える期間は限られていたはずです。だから撮影中断なんかがあったらもう、「繋がりなんか関係なく、撮れる時に撮るしかない」みたいな感じで撮影を続けていくしかなかったでしょう。そのような不可抗力ゆえの雪というわけです。ただ、そのような描写がメチャクチャ不自然だったかというと、全然そんなことはありませんでした。「メチャクチャ時空が歪んでる」という雰囲気を醸し出す演出みたいに見えたからです。結果オーライという感じでしょうが、最終的には上手くまとまったのだろうと思います。
これだけの「制約」の中、この設定内における「リアルさ」で人間関係を描き出す
あわせて読みたい
【映画】ストップモーションアニメ『マルセル 靴をはいた小さな貝』はシンプルでコミカルで面白い!
靴を履いた体長2.5センチの貝をコマ撮りで撮影したストップモーション映画『マルセル 靴をはいた小さな貝』は、フェイクドキュメンタリーの手法で描き出すリアリティ満載の作品だ。謎の生き物が人間用の住居で工夫を凝らしながら生活する日常を舞台にした、感情揺さぶる展開が素晴らしい
さて、映画の中では、「2分間が繰り返される」という状況において、登場人物たちが様々な行動を取り、それが観客の笑いを誘うことになります。登場人物たちは、冷静に考えれば割とシリアスな状況にいるはずなのですが、この世界に慣れてくるにつれて「2分間が繰り返される」という世界でしか成立しないような行動を取るようになっていき、それが笑いに繋がっていくというわけです。
「タイムループを認識して、受け入れるまでのスピード」が異常に早いよね
そういう葛藤みたいなものをすっ飛ばしたことで、「テンポの良さ」と「コメディ感」がより強調された感じがする
客観的に見ればシリアスな状況なのに、それがコメディとして成立しているのは、「現実感が絶妙に浮遊しているから」だと言えるでしょう。もちろん、「タイムループ」している時点で現実感もクソもないわけですが、一方で、「老舗旅館」という舞台装置が強い「現実感」を生み出していたようにも思います。「老舗旅館」という「重し」があることで、物語全体が軽薄には見えないものに仕上がっている感じがあって、そのどことなしに「森見登美彦的」とも言える世界観が絶妙だと感じました。
あわせて読みたい
【世界観】映画『夜は短し歩けよ乙女』の”黒髪の乙女”は素敵だなぁ。ニヤニヤが止まらない素晴らしいアニメ
森見登美彦の原作も大好きな映画『夜は短し歩けよ乙女』は、「リアル」と「ファンタジー」の境界を絶妙に漂う世界観がとても好き。「黒髪の乙女」は、こんな人がいたら好きになっちゃうよなぁ、と感じる存在です。ずっとニヤニヤしながら観ていた、とても大好きな映画
また、2分間を繰り返していく物語でありながら、この映画には「主軸となる人間模様」が存在します。このような設定の中で「人間模様」をちゃんと描き出すのは難しいように思うのですが、見事に実現させているのです。というかむしろ、その「人間模様」の描写を成立させる上で、「現実感が絶妙に浮遊している」という設定が結構大事だったとも感じます。普通なら、「こんな状況で何してんねん」とツッコみたくなるような状況が描かれるのですが、「現実感が絶妙に浮遊している」お陰で、あまりそんな風には感じられないからです。設定と物語が絶妙に絡み合っているという印象で、この点も見事だと思いました。
しかもその「人間模様」も、「2分間でリセットされる」って設定を絶妙に利用した展開を描いてて、素敵だよね
実際に同じことをやるのは絶対に無理だけど、「こういう関係も良い!」って感じる人、結構いるだろうなぁ
エンタメ作品として、ホントに素晴らしい出来だなと感じました。
あわせて読みたい
【感想】人間関係って難しい。友達・恋人・家族になるよりも「あなた」のまま関わることに価値がある:…
誰かとの関係性には大抵、「友達」「恋人」「家族」のような名前がついてしまうし、そうなればその名前に縛られてしまいます。「名前がつかない関係性の奇跡」と「誰かを想う強い気持ちの表し方」について、『君の膵臓をたべたい』をベースに書いていきます
出演:藤⾕理⼦, 出演:⿃越裕貴, 出演:⾓⽥貴志, 出演:久保史緒⾥(乃⽊坂46), 出演:本上まなみ, 出演:近藤芳正, Writer:上⽥誠, 監督:⼭⼝淳太
¥2,200 (2023/12/10 23:33時点 | Amazon調べ)
ポチップ
あわせて読みたい
【全作品視聴済】私が観てきた映画(フィクション)を色んな切り口で分類しました
この記事では、「今まで私が観てきた映画(フィクション)を様々に分類した記事」を一覧にしてまとめました。私が面白いと感じた作品だけをリストアップしていますので、是非映画選びの参考にして下さい。
最後に
あわせて読みたい
【映画】『キャスティング・ディレクター』の歴史を作り、ハリウッド映画俳優の運命を変えた女性の奮闘
映画『キャスティング・ディレクター』は、ハリウッドで伝説とされるマリオン・ドハティを描き出すドキュメンタリー。「神業」「芸術」とも評される配役を行ってきたにも拘わらず、長く評価されずにいた彼女の不遇の歴史や、再び「キャスティングの暗黒期」に入ってしまった現在のハリウッドなどを切り取っていく
タイムループの原因や抜け出し方などについては、メチャクチャ斬新というわけではありませんが、ただ、物語全体をきちんと着地させるという意味でよく出来た展開だったと思います。
また、映画についてまったく何も知らない状態で観に行ったので、乃木坂46の久保史緒里が冒頭で出てきてびっくりしました。私の一番の推しは齋藤飛鳥ですが、久保史緒里も結構好きなので、個人的にはそういう意味でも良かったです。
あわせて読みたい
【感想】綿矢りさ原作の映画『ひらいて』は、溢れる”狂気”を山田杏奈の”見た目”が絶妙に中和する
「片想いの相手には近づけないから、その恋人を”奪おう”」と考える主人公・木村愛の「狂気」を描く、綿矢りさ原作の映画『ひらいて』。木村愛を演じる山田杏奈の「顔」が、木村愛の狂気を絶妙に中和する見事な配役により、「狂気の境界線」をあっさり飛び越える木村愛がリアルに立ち上がる
しかしホント、世の中には「天才」がいるものだと改めて感じました。羨ましい。
あわせて読みたい
Kindle本出版しました!「それってホントに『コミュ力』が高いって言えるの?」と疑問を感じている方に…
私は、「コミュ力が高い人」に関するよくある主張に、どうも違和感を覚えてしまうことが多くあります。そしてその一番大きな理由が、「『コミュ力が高い人』って、ただ『想像力がない』だけではないか?」と感じてしまう点にあると言っていいでしょう。出版したKindle本は、「ネガティブには見えないネガティブな人」(隠れネガティブ)を取り上げながら、「『コミュ力』って何だっけ?」と考え直してもらえる内容に仕上げたつもりです。
次にオススメの記事
あわせて読みたい
【常識】群青いろ制作『彼女はなぜ、猿を逃したか?』は、凄まじく奇妙で、実に魅力的な映画だった(主…
映画『彼女はなぜ、猿を逃したか?』(群青いろ制作)は、「絶妙に奇妙な展開」と「爽快感のあるラスト」の対比が魅力的な作品。主なテーマとして扱われている「週刊誌報道からのネットの炎上」よりも、私は「週刊誌記者が無意識に抱いている思い込み」の方に興味があったし、それを受け流す女子高生の受け答えがとても素敵だった
あわせて読みたい
【幻惑】映画『フォロウィング』の衝撃。初監督作から天才だよ、クリストファー・ノーラン
クリストファー・ノーランのデビュー作であり、多数の賞を受賞し世界に衝撃を与えた映画『フォロウィング』には、私も驚かされてしまった。冒頭からしばらくの間「何が描かれているのかさっぱり理解できない」という状態だったのに、ある瞬間一気に視界が晴れたように状況が理解できたのだ。脚本の力がとにかく圧倒的だった
あわせて読みたい
【感想】アニメ映画『パーフェクトブルー』(今敏監督)は、現実と妄想が混在する構成が少し怖い
本作で監督デビューを果たした今敏のアニメ映画『パーフェクトブルー』は、とにかくメチャクチャ面白かった。現実と虚構の境界を絶妙に壊しつつ、最終的にはリアリティのある着地を見せる展開で、25年以上も前の作品だなんて信じられない。今でも十分通用するだろうし、81分とは思えない濃密さに溢れた見事な作品である
あわせて読みたい
【映画】ウォン・カーウァイ4Kレストア版の衝撃!『恋する惑星』『天使の涙』は特にオススメ!
『恋する惑星』『天使の涙』で一躍その名を世界に知らしめた巨匠ウォン・カーウァイ作品の4Kレストア版5作品を劇場で一気見した。そして、監督の存在さえまったく知らずに観た『恋する惑星』に圧倒され、『天使の涙』に惹きつけられ、その世界観に驚かされたのである。1990年代の映画だが、現在でも通用する凄まじい魅力を放つ作品だ
あわせて読みたい
【奇妙】映画『鯨の骨』は、主演のあのちゃんが絶妙な存在感を醸し出す、斬新な設定の「推し活」物語
映画『鯨の骨』は、主演を務めたあのちゃんの存在感がとても魅力的な作品でした。「AR動画のカリスマ的存在」である主人公を演じたあのちゃんは、役の設定が絶妙だったこともありますが、演技がとても上手く見え、また作品全体の、「『推し活』をある意味で振り切って描き出す感じ」もとても皮肉的で良かったです
あわせて読みたい
【怖い?】映画『アメリ』(オドレイ・トトゥ主演)はとても奇妙だが、なぜ人気かは分かる気がする
名作として知られているものの観る機会の無かった映画『アメリ』は、とても素敵な作品でした。「オシャレ映画」という印象を持っていて、それは確かにその通りなのですが、それ以上に私は「主人公・アメリの奇妙さ」に惹かれたのです。普通には成立しないだろう展開を「アメリだから」という謎の説得力でぶち抜く展開が素敵でした
あわせて読みたい
【あらすじ】声優の幾田りらとあのちゃんが超絶良い!アニメ映画『デデデデ』はビビるほど面白い!:『…
幾田りらとあのちゃんが声優を務めた映画『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』は、とにかく最高の物語だった。浅野いにおらしいポップさと残酷さを兼ね備えつつ、「終わってしまった世界でそれでも生きていく」という王道的展開を背景に、門出・おんたんという女子高生のぶっ飛んだ関係性が描かれる物語が見事すぎる
あわせて読みたい
【あらすじ】映画『悪は存在しない』(濱口竜介)の衝撃のラストの解釈と、タイトルが示唆する現実(主…
映画『悪は存在しない』(濱口竜介監督)は、観る者すべてを困惑に叩き落とす衝撃のラストに、鑑賞直後は迷子のような状態になってしまうだろう。しかし、作中で提示される様々な要素を紐解き、私なりの解釈に辿り着いた。全編に渡り『悪は存在しない』というタイトルを強く意識させられる、脚本・映像も見事な作品だ
あわせて読みたい
【斬新】映画『王国(あるいはその家について)』(草野なつか)を観よ。未経験の鑑賞体験を保証する
映画『王国(あるいはその家について)』は、まず経験できないだろう異様な鑑賞体験をもたらす特異な作品だった。「稽古場での台本読み」を映し出すパートが上映時間150分のほとんどを占め、同じやり取りをひたすら繰り返し見せ続ける本作は、「王国」をキーワードに様々な形の「狂気」を炙り出す異常な作品である
あわせて読みたい
【あらすじ】映画『千年女優』(今敏)はシンプルな物語を驚愕の演出で味付けした天才的アニメ作品
今敏監督の映画『千年女優』は、ちょっとびっくりするほど凄まじく面白い作品だった。観ればスッと理解できるのに言葉で説明すると難解になってしまう「テクニカルな構成」に感心させられつつ、そんな構成に下支えされた「物語の感性的な部分」がストレートに胸を打つ、シンプルながら力強い作品だ
あわせて読みたい
【痛快】精神病院の隔離室から脱した、善悪の判断基準を持たない狂気の超能力者が大暴れする映画:『モ…
モナ・リザ アンド ザ ブラッドムーン』は、「10年以上拘束され続けた精神病院から脱走したアジア系女性が、特殊能力を使って大暴れする」というムチャクチャな設定の物語なのだが、全編に通底する「『善悪の判断基準』が歪んでいる」という要素がとても見事で、意味不明なのに最後まで惹きつけられてしまった
あわせて読みたい
【映画】『キャスティング・ディレクター』の歴史を作り、ハリウッド映画俳優の運命を変えた女性の奮闘
映画『キャスティング・ディレクター』は、ハリウッドで伝説とされるマリオン・ドハティを描き出すドキュメンタリー。「神業」「芸術」とも評される配役を行ってきたにも拘わらず、長く評価されずにいた彼女の不遇の歴史や、再び「キャスティングの暗黒期」に入ってしまった現在のハリウッドなどを切り取っていく
あわせて読みたい
【天才】映画音楽の発明家『モリコーネ』の生涯。「映画が恋した音楽家」はいかに名曲を生んだか
「映画音楽のフォーマットを生み出した」とも評される天才作曲家エンリオ・モリコーネを扱った映画『モリコーネ 映画が恋した音楽家』では、生涯で500曲以上も生み出し、「映画音楽」というジャンルを比べ物にならないほどの高みにまで押し上げた人物の知られざる生涯が描かれる
あわせて読みたい
【共感】斎藤工主演映画『零落』(浅野いにお原作)が、「創作の評価」を抉る。あと、趣里が良い!
かつてヒット作を生み出しながらも、今では「オワコン」みたいな扱いをされている漫画家を中心に描く映画『零落』は、「バズったものは正義」という世の中に斬り込んでいく。私自身は創作者ではないが、「売れる」「売れない」に支配されてしまう主人公の葛藤はよく理解できるつもりだ
あわせて読みたい
【天才】タランティーノ作品ほぼ未見で観た面白ドキュメンタリー。映画に愛された映画オタクのリアル
『パルプ・フィクション』しか監督作品を観たことがないまま、本作『クエンティン・タランティーノ 映画に愛された男』を観たが、とても面白いドキュメンタリー映画だった。とにかく「撮影現場に笑いが絶えない」ようで、そんな魅力的なモノづくりに関わる者たちの証言から、天才の姿が浮かび上がる
あわせて読みたい
【映画】ストップモーションアニメ『マルセル 靴をはいた小さな貝』はシンプルでコミカルで面白い!
靴を履いた体長2.5センチの貝をコマ撮りで撮影したストップモーション映画『マルセル 靴をはいた小さな貝』は、フェイクドキュメンタリーの手法で描き出すリアリティ満載の作品だ。謎の生き物が人間用の住居で工夫を凝らしながら生活する日常を舞台にした、感情揺さぶる展開が素晴らしい
あわせて読みたい
【魅力】モンゴル映画『セールス・ガールの考現学』は、人生どうでもいい無気力女子の激変が面白い!
なかなか馴染みのないモンゴル映画ですが、『セールス・ガールの考現学』はメチャクチャ面白かったです!設定もキャラクターも物語の展開もとても変わっていて、日常を描き出す物語にも拘らず、「先の展開がまったく読めない」とも思わされました。主人公の「成長に至る過程」が見応えのある映画です
あわせて読みたい
【あらすじ】映画『四畳半タイムマシンブルース』超面白い!森見登美彦も上田誠も超天才だな!
ヨーロッパ企画の演劇『サマータイムマシン・ブルース』の物語を、森見登美彦の『四畳半神話大系』の世界観で描いたアニメ映画『四畳半タイムマシンブルース』は、控えめに言って最高だった。ミニマム過ぎる設定・物語を突き詰め、さらにキャラクターが魅力的だと、これほど面白くなるのかというお手本のような傑作
あわせて読みたい
【感想】どんな話かわからない?難しい?ジブリ映画『君たちはどう生きるか』の考察・解説は必要?(監…
宮崎駿最新作であるジブリ映画『君たちはどう生きるか』は、宮崎アニメらしいファンタジックな要素を全開に詰め込みつつ、「生と死」「創造」についても考えさせる作品だ。さらに、「自分の頭の中から生み出されたものこそ『正解』」という、創造物と向き合う際の姿勢についても問うているように思う
あわせて読みたい
【実話】映画『グッドバイ、バッドマガジンズ』(杏花主演)が描く、もの作りの絶望(と楽しさ)
実在したエロ雑誌編集部を舞台に、タブーも忖度もなく業界の内実を描き切る映画『グッドバイ、バッドマガジンズ』は、「エロ雑誌」をテーマにしながら、「もの作りに懸ける想い」や「仕事への向き合い方」などがリアルに描かれる素敵な映画だった。とにかく、主役を演じた杏花が良い
あわせて読みたい
【感想】映画『君が世界のはじまり』は、「伝わらない」「分かったフリをしたくない」の感情が濃密
「キラキラした青春学園モノ」かと思っていた映画『君が世界のはじまり』は、「そこはかとない鬱屈」に覆われた、とても私好みの映画だった。自分の決断だけではどうにもならない「現実」を前に、様々な葛藤渦巻く若者たちの「諦念」を丁寧に描き出す素晴らしい物語
あわせて読みたい
【感想】のん主演映画『私をくいとめて』から考える、「誰かと一緒にいられれば孤独じゃないのか」問題
のん(能年玲奈)が「おひとり様ライフ」を満喫する主人公を演じる映画『私をくいとめて』を観て、「孤独」について考えさせられた。「誰かと関わっていられれば孤独じゃない」という考えに私は賛同できないし、むしろ誰かと一緒にいる時の方がより強く孤独を感じることさえある
あわせて読みたい
【考察】映画『哀愁しんでれら』から、「正しい」より「間違ってはいない」を選んでしまう人生を考える
「シンデレラストーリー」の「その後」を残酷に描き出す映画『哀愁しんでれら』は、「幸せになりたい」という気持ちが結果として「幸せ」を遠ざけてしまう現実を描き出す。「正しい/間違ってはいない」「幸せ/不幸せではない」を区別せずに行動した結果としての悲惨な結末
あわせて読みたい
【感想】おげれつたなか『エスケープジャーニー』は、BLでしか描けない”行き止まりの関係”が絶妙
おげれつたなか『エスケープジャーニー』のあらすじ紹介とレビュー。とにかく、「BLでしか描けない関係性」が素晴らしかった。友達なら完璧だったのに、「恋人」ではまったく上手く行かなくなってしまった直人と太一の葛藤を通じて、「進んでも行き止まり」である関係にどう向き合うか考えさせられる
あわせて読みたい
【感想】映画『窓辺にて』(今泉力哉監督)の稲垣吾郎の役に超共感。「好きとは何か」が分からない人へ
映画『窓辺にて』(今泉力哉監督)は、稲垣吾郎演じる主人公・市川茂巳が素晴らしかった。一般的には、彼の葛藤はまったく共感されないし、私もそのことは理解している。ただ私は、とにかく市川茂巳にもの凄く共感してしまった。「誰かを好きになること」に迷うすべての人に観てほしい
あわせて読みたい
【感想】殺人事件が決定打となった「GUCCI家の崩壊」の実話を描く映画『ハウス・オブ・グッチ』の衝撃
GUCCI創業家一族の1人が射殺された衝撃の実話を基にした映画『ハウス・オブ・グッチ』。既に創業家一族は誰一人関わっていないという世界的ブランドGUCCIに一体何が起こったのか? アダム・ドライバー、レディー・ガガの演技も見事なリドリー・スコット監督作
あわせて読みたい
【感涙】映画『彼女が好きなものは』の衝撃。偏見・無関心・他人事の世界から”脱する勇気”をどう持つか
涙腺がぶっ壊れたのかと思ったほど泣かされた映画『彼女が好きなものは』について、作品の核となる「ある事実」に一切触れずに書いた「ネタバレなし」の感想です。「ただし摩擦はゼロとする」の世界で息苦しさを感じているすべての人に届く「普遍性」を体感してください
あわせて読みたい
【感想】綿矢りさ原作の映画『ひらいて』は、溢れる”狂気”を山田杏奈の”見た目”が絶妙に中和する
「片想いの相手には近づけないから、その恋人を”奪おう”」と考える主人公・木村愛の「狂気」を描く、綿矢りさ原作の映画『ひらいて』。木村愛を演じる山田杏奈の「顔」が、木村愛の狂気を絶妙に中和する見事な配役により、「狂気の境界線」をあっさり飛び越える木村愛がリアルに立ち上がる
あわせて読みたい
【感想】映画『先生、私の隣に座っていただけませんか?』は、「リアル」と「漫画」の境界の消失が絶妙
映画『先生、私の隣に座っていただけませんか?』は、「マンガ家夫婦の不倫」という設定を非常に上手く活かしながら、「何がホントで何かウソなのかはっきりしないドキドキ感」を味わわせてくれる作品だ。黒木華・柄本佑の演技も絶妙で、良い映画を観たなぁと感じました
あわせて読みたい
【喪失】家族とうまくいかない人、そして、家族に幻想を抱いてしまう人。家族ってなんてめんどくさいの…
「福島中央テレビ開局50周年記念作品」である映画『浜の朝日の嘘つきどもと』は、福島県に実在した映画館「朝日座」を舞台に、住民が抱く「希望(幻想)」が描かれる。震災・コロナによってありとあらゆるものが失われていく世の中で、私たちはどう生きるべきか
あわせて読みたい
【感想】映画『竜とそばかすの姫』が描く「あまりに批判が容易な世界」と「誰かを助けることの難しさ」
SNSの登場によって「批判が容易な社会」になったことで、批判を恐れてポジティブな言葉を口にしにくくなってしまった。そんな世の中で私は、「理想論だ」と言われても「誰かを助けたい」と発信する側の人間でいたいと、『竜とそばかすの姫』を観て改めて感じさせられた
あわせて読みたい
【死】映画『湯を沸かすほどの熱い愛』に号泣。「家族とは?」を問う物語と、タイトル通りのラストが見事
「死は特別なもの」と捉えてしまうが故に「日常感」が失われ、普段の生活から「排除」されているように感じてしまうのは私だけではないはずだ。『湯を沸かすほどの熱い愛』は、「死を日常に組み込む」ことを当たり前に許容する「家族」が、「家族」の枠組みを問い直す映画である
あわせて読みたい
【世界観】映画『夜は短し歩けよ乙女』の”黒髪の乙女”は素敵だなぁ。ニヤニヤが止まらない素晴らしいアニメ
森見登美彦の原作も大好きな映画『夜は短し歩けよ乙女』は、「リアル」と「ファンタジー」の境界を絶妙に漂う世界観がとても好き。「黒髪の乙女」は、こんな人がいたら好きになっちゃうよなぁ、と感じる存在です。ずっとニヤニヤしながら観ていた、とても大好きな映画
あわせて読みたい
【考察】生きづらい性格は変わらないから仮面を被るしかないし、仮面を被るとリア充だと思われる:『勝…
「リア充感」が滲み出ているのに「生きづらさ」を感じてしまう人に、私はこれまでたくさん会ってきた。見た目では「生きづらさ」は伝わらない。24年間「リアル彼氏」なし、「脳内彼氏」との妄想の中に生き続ける主人公を描く映画『勝手にふるえてろ』から「こじらせ」を知る
あわせて読みたい
【あらすじ】濱口竜介監督『偶然と想像』は、「脚本」と「役者」のみで成り立つ凄まじい映画。天才だと思う
「映画」というメディアを構成する要素は多々あるはずだが、濱口竜介監督作『偶然と想像』は、「脚本」と「役者」だけで狂気・感動・爆笑を生み出してしまう驚異の作品だ。まったく異なる3話オムニバス作品で、どの話も「ずっと観ていられる」と感じるほど素敵だった
あわせて読みたい
【漫画原作】映画『殺さない彼と死なない彼女』は「ステレオタイプな人物像」の化学反応が最高に面白い
パッと見の印象は「よくある学園モノ」でしかなかったので、『殺さない彼と死なない彼女』を観て驚かされた。ステレオタイプで記号的なキャラクターが、感情が無いとしか思えないロボット的な言動をする物語なのに、メチャクチャ面白かった。設定も展開も斬新で面白い
あわせて読みたい
【無知】映画『生理ちゃん』で理解した気になってはいけないが、男(私)にも苦労が伝わるコメディだ
男である私にはどうしても理解が及ばない領域ではあるが、女友達から「生理」の話を聞く機会があったり、映画『生理ちゃん』で視覚的に「生理」の辛さが示されることで、ちょっとは分かったつもりになっている。しかし男が「生理」を理解するのはやっぱり難しい
あわせて読みたい
【驚嘆】この物語は「AIの危険性」を指摘しているのか?「完璧な予知能力」を手にした人類の過ち:『預…
完璧な未来予知を行えるロボットを開発し、地震予知のため”だけ”に使おうとしている科学者の自制を無視して、その能力が解放されてしまう世界を描くコミック『預言者ピッピ』から、「未来が分からないからこそ今を生きる価値が生まれるのではないか」などについて考える
あわせて読みたい
【爆発】どうしても人目が気になる自意識過剰者2人、せきしろと又吉直樹のエッセイに爆笑&共感:『蕎麦…
「コンビニのコピー機で並べない」せきしろ氏と、「フラッシュモブでの告白に恐怖する」又吉直樹氏が、おのれの「自意識過剰さ」を「可笑しさ」に変えるエッセイ『蕎麦湯が来ない』は、同じように「考えすぎてしまう人」には共感の嵐だと思います
あわせて読みたい
【映画】『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 劇場版』で号泣し続けた私はTVアニメを観ていない
TVアニメは観ていない、というかその存在さえ知らず、物語や登場人物の設定も何も知らないまま観に行った映画『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 劇場版』に、私は大号泣した。「悪意のない物語」は基本的に好きではないが、この作品は驚くほど私に突き刺さった
あわせて読みたい
【難しい】映画『鳩の撃退法』をネタバレ全開で考察。よくわからない物語を超詳細に徹底解説していく
とても難しくわかりにくい映画『鳩の撃退法』についての考察をまとめていたら、1万7000字を超えてしまった。「東京編で起こったことはすべて事実」「富山編はすべてフィクションかもしれない」という前提に立ち、「津田伸一がこの小説を書いた動機」まで掘り下げて、実際に何が起こっていたのかを解説する(ちなみに、「実話」ではないよ)
あわせて読みたい
【排除】「分かり合えない相手」だけが「間違い」か?想像力の欠如が生む「無理解」と「対立」:映画『…
「共感」が強すぎる世の中では、自然と「想像力」が失われてしまう。そうならないようにと意識して踏ん張らなければ、他人の価値観を正しく認めることができない人間になってしまうだろう。映画『ミセス・ノイズィ』から、多様な価値観を排除しない生き方を考える
あわせて読みたい
【感想】映画『窮鼠はチーズの夢を見る』を異性愛者の男性(私)はこう観た。原作も読んだ上での考察
私は「腐男子」というわけでは決してないのですが、周りにいる腐女子の方に教えを請いながら、多少BL作品に触れたことがあります。その中でもダントツに素晴らしかったのが、水城せとな『窮鼠はチーズの夢を見る』です。その映画と原作の感想、そして私なりの考察について書いていきます
あわせて読みたい
【感想】人間関係って難しい。友達・恋人・家族になるよりも「あなた」のまま関わることに価値がある:…
誰かとの関係性には大抵、「友達」「恋人」「家族」のような名前がついてしまうし、そうなればその名前に縛られてしまいます。「名前がつかない関係性の奇跡」と「誰かを想う強い気持ちの表し方」について、『君の膵臓をたべたい』をベースに書いていきます
あわせて読みたい
【前進】誰とも価値観が合わない…。「普通」「当たり前」の中で生きることの難しさと踏み出し方:『出会…
生きていると、「常識的な考え方」に囚われたり、「普通」「当たり前」を無自覚で強要してくる人に出会ったりします。そういう価値観に合わせられない時、自分が間違っている、劣っていると感じがちですが、そういう中で一歩踏み出す勇気を得るための考え方です
ルシルナ
文化・芸術・将棋・スポーツ【本・映画の感想】 | ルシルナ
知識や教養は、社会や学問について知ることだけではありません。文化的なものもリベラルアーツです。私自身は、創作的なことをしたり、勝負事に関わることはありませんが、…
ルシルナ
記事検索(カテゴリー・タグ一覧) | ルシルナ
ルシルナは、4000冊以上の本と500本以上の映画をベースに、生き方や教養について書いていきます。ルシルナでは36個のタグを用意しており、興味・関心から記事を選びやすく…
コメント