目次
はじめに
この記事で取り上げる映画
出演:小林星蘭, 出演:水樹奈々, 出演:松田颯水, 出演:薬丸裕英, 出演:鈴木杏樹, 出演:ホラン千秋, 出演:設楽統(バナナマン), 出演:山寺宏一, 出演:遠藤璃菜, 出演:小桜エツコ, 出演:一龍斎春水, 出演:一龍斎貞友, 出演:てらそままさき, Writer:吉田玲子, 監督:高坂希太郎
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この映画をガイドにしながら記事を書いていくようだよ
この記事で伝えたいこと
大人になると喜怒哀楽をストレートに出さなくなるからこそ、おっこの感情がスッと響く
「大人の世界」で真剣に働くおっこだからこそ、その振る舞いに違和感を抱かせない
この記事の3つの要点
- 普段「大人なんだから」と自制している感情をおっこが代弁してくれる
- 「目に見えない存在」という設定が逆にこの作品のリアリティを高めている
- 若おかみとして奮闘するおっこの姿から、「働くとは?」についても考えさせられる
冒頭から素敵な作品ですが、ラストの展開は見事で、号泣させられました
自己紹介記事
ルシルナ
はじめまして | ルシルナ
ブログ「ルシルナ」の犀川後藤の自己紹介記事です。ここでは、「これまでのこと」「本のこと」「映画のこと」に分けて書いています。
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小学生の関織子(おっこ)が、家族でおばあちゃんのところへ遊びに行くところから物語は始まる。おばあちゃんは、花の湯温泉にある「春の屋」という旅館の女将で、それは楽しい旅行になるはずだった。しかし旅館からの帰り道で交通事故に巻き込まれ、両親は死亡、奇跡的に無事だったおっこは、春の屋に引き取られることになってしまう。
蜘蛛やヤモリなど、普段目にしない生き物に思わず奇声を上げてしまうほど、それまでとは違う環境で生きていくことになったおっこ。おばあちゃんが離れに用意してくれた部屋での生活が始まった。しかしその部屋にいるとなんだか声が聞こえてくる。見上げると、なんと天井に浮かんでいる少年がいるではないか。
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その少年はどうやら幽霊で、しかもおばあちゃんの古くからの知り合いだという。誠という、おっこにしか見えないその幽霊少年と共に、仲居さんや料理長に挨拶しにいくのだが、誠がやいのやいのとうるさいせいで、おっこは成り行きで春の屋の若おかみを目指すことに決まってしまった。おっことしては承服しがたい展開だが、思っている以上に誠が喜んでいる姿を見て、嫌だとは言えなくなってしまう。
さっそく手伝いを、となったのだが、おっちょこちょいなおっこはドジを踏んでばかりだ。しかし、お客様に喜んでもらえる喜びを実感し始めると、少しずつ若おかみとしての自覚が芽生えていく。
おっこが転校した小学校の同じクラスに、花の湯温泉をここまで牽引してきた秋好温泉の跡取り娘・秋野真月がいる。おっこと同じ小学生なのだが、真月は抜群の発想力で温泉全体を盛り上げるプランを進めるやり手だ。2人は事あるごとにぶつかることになるが、共に「老舗旅館を守る」という意気込みは共通している。
両親を喪った悲しみを表に出さないようひた隠しにしながら、若おかみとして精進していくおっこ。なぜか誠以外にも「目に見えない存在」は増えていき、彼らと関わりながらおっこは両親のいない日々を過ごしていく……。
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小学生が大人の世界で頑張っているからこそ、大人が見ても楽しめる
私はまず、この映画の設定が非常に秀逸だと感じました。「大人になったら恥ずかしくて言えなくなってしまうような『どストレート』なセリフが違和感なく溶け込む世界」を描けるからです。
この映画では、喜怒哀楽の感情が非常にシンプルに分かりやすく表現されます。基本的に子ども向けに作られている映画のはずなので、当然と言えば当然です。
さて一方で、映画でもマンガでも小説でも、大人になってから触れる物語は、喜怒哀楽をストレートに描かないものが多くなるでしょう。多くの人がそうだと思いますが、子どもの頃には恥ずかしげもなく言えたこと、やれたことでも、大人になると躊躇してしまうようになるものです。どうしても、「大人なんだから」と自分を制御してしまい、ストレートに感情を表に出すことは少なくなるでしょう。
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だから、大人の世界を描く物語は、ちょっとした仕草、僅かな表情の変化、いつもと違う言葉遣いのような些細なものの積み重ねによって様々なことを描き出していきます。別にそういう作品の是非を問いたいわけではありません。大人になるとどうしても「どストレートなセリフ」にはなかなか出会わなくなる、と言いたいだけです。
「敢えて『どストレートなセリフ』を言うキャラクター」が出てくることもあるだろうけどね
ほとんど読んでないからイメージだけど、『ONE PIECE』のルフィはそんな印象
しかし、「どストレートなセリフ」が出てくるだろう子ども向けの作品に触れれば感動できるのかと言えば、そうでもないでしょう。私は大人になってから、子どもの頃大好きだった小説のシリーズを読み返してみる機会がありましたが、正直、何を面白いと感じていたのかも思い出せませんでした。子ども向けの作品には「どストレートなセリフ」は多々出てくるでしょうが、それらは「子どもの世界の話」という風に処理されてしまい、大人にはなかなか響かないのではないかと思います。
だからこそ、この物語の設定は絶妙だと感じました。
主人公のおっこは、若おかみとして大人の世界で働きます。もちろん、「子どもだから」と許される場面もありますが、客商売であり、おばあちゃんも厳しいので、「子どもだから」という甘えがそこまで通用する世界ではありません。
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しかし一方で、おっこは「小学生」なので、当然「小学生」的な反応をしてしまうこともあります。いくら大人の世界で頑張っているとはいえ、すべて大人と同じにできるはずがないし、直面している状況に「小学生」らしい振る舞いをすることはなんの違和感もないわけです。
つまりこの作品においては、「大人の世界に『どストレートなセリフ』が違和感なく存在し得る」ことになります。私は、この点が本書の最大のポイントだと考えているのです。
まあ、この『若おかみは小学生!』に特異なポイントではないのかもしれないけど
普段あんまりアニメを観ないから、こういう構成はよくあったりするかもね
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大人の世界では、色々感じたり考えたり悩んだりしても、なかなかそれを素直に表に出すことは難しいでしょうでもおっこは、大人の世界で奮闘しながら、「小学生」であるが故にストレートに喜怒哀楽を表現してもまったく違和感がありません。そしてだからこそ、おっこの言葉がスッと入ってくるし、素直な感情の表出が非常に気持ちよく感じられるのです。
もちろん「小学生」だって、実際には素直に感情を表に出せるわけではないでしょう。自分が小学生だった時のことを考えてみてもそうだろうと思います。ただ大人になると、かつての自分のことはすっかり忘れて、「小学生は喜怒哀楽をストレートに表現できていいなぁ」という風に見てしまいがちです。
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大人が持つそういう幻想こそが、この作品を「大人向け」にしているのかもしれません。
「目に見えない存在」の絶妙な存在価値
誠を始め、この物語には「目に見えない存在」が出てきます。そしてこの「目に見えない存在」も、物語を陰で支える重要な要素だと感じました。
私が思うその重要性は、「若おかみを目指すおっこを不自然に見せない」という点にあります。
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普通に考えれば、「小学生が若おかみを目指す」という物語は無理があると感じられるでしょう。「子ども向け」だと思えば大した違和感ではないかもしれませんが、「大人向け」としてはどうしても無理があると感じるのではないかと思います。おっこ自身も積極的に若おかみを目指したかったわけではないし、普通にはあり得ない展開だと言えるでしょう。
しかしこの物語では、誠の強い想いに背中を押されるようにしておっこは若おかみを目指すことになります。「小学生が、自らの意思で若おかみを目指す」というストーリーはなかなか無理があると感じますが、「成り行きで若おかみを目指すことになってしまった」という展開であれば不自然さは軽減されるでしょう。そしてそれを実現する役回りとして「目に見えない存在」は非常に重要だと感じました。
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「進んで若おかみを目指す」も「嫌々若おかみにさせられる」も、おっこが「小学生」っていう点がどうしてもネックになるもんね
この物語を成立させるには、「本人の意思ではないけど、嫌々というわけでもない」という状況が必要ってわけだ
また、もう少し間接的な形で、「若おかみを目指すおっこを不自然に見せない効果」を生んでいるとも感じました。それは、「『目に見えない存在』がおっこのメンタル面のサポートをしている」という点です。
おっこは事故で両親を喪った直後であり、普通に考えれば、それが成り行きであれなんであれ、「若おかみとして頑張ろう」なんて気持ちにはなかなかなれないだろうと思います。転校した小学校は結構良い雰囲気ですが、すぐに夏休みに入ってしまうで友達を作るのも難しいわけです。
そういう中で、この「目に見えない存在」がおっこの気持ちを支える役割を担うことになります。両親を亡くしたばかり、学校に友達はいない、旅館には大人ばかり、という環境の中でも踏ん張れるのは、「目に見えない存在」が近くにいてコミュニケーションを取れるのが大きいと思います。
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普通に考えると、幽霊のような「目に見えない存在」が出てくる物語はリアリティを欠くように感じられるでしょう。しかしこの作品の場合は、「小学生が若おかみを目指す」という不自然さを補う意味で「目に見えない存在」が登場するので、むしろリアリティを高めるための存在になっているのです。
非常に良くできた物語だと感じました。
出演:小林星蘭, 出演:水樹奈々, 出演:松田颯水, 出演:薬丸裕英, 出演:鈴木杏樹, 出演:ホラン千秋, 出演:設楽統(バナナマン), 出演:山寺宏一, 出演:遠藤璃菜, 出演:小桜エツコ, 出演:一龍斎春水, 出演:一龍斎貞友, 出演:てらそままさき, Writer:吉田玲子, 監督:高坂希太郎
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最後に
何故「大人向け」になっているのかの私なりの分析を記事のメインにしたので、作品の中身にはあまり触れませんでしたが、とにかく、おっこを始め登場人物たちのセリフや成長、感情の揺れ動きなどに心をグッと掴まされる作品です。また、大人の世界で奮闘するおっこの姿から、「働く上での大事さ」みたいなものもシンプルに伝わってきます。
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「どうせ子ども向けだろう」と思わず、是非観てほしい作品です。私には、予想を裏切るような良作でした。
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孤独・寂しい・友達【本・映画の感想】 | ルシルナ
孤独と向き合うのは難しいものです。友達がいないから学校に行きたくない、社会人になって出会いがない、世の中的に他人と会いにくい。そんな風に居場所がないと思わされて…
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