目次
はじめに
この記事で取り上げる映画
出演:広末涼子, 出演:圓島努, 出演:余貴美子, 出演:根岸吉太郎, クリエイター:西村隆, クリエイター:佐藤美由紀, 監督:原將人, Writer:中島吾郎, Writer:原將人
¥330 (2024/08/17 19:28時点 | Amazon調べ)
ポチップ
この映画をガイドにしながら記事を書いていくようだよ
この記事で伝えたいこと
何にせよとにかく、広末涼子がメチャクチャ可愛かった
正直、広末涼子の可愛さ目当てで観ても、十分楽しめる作品だと思う
この記事の3つの要点
- 随所にある、「『宇宙人』という設定のお陰で、素直に自分の気持ちを口に出来た」という描写がとても絶妙
- しかし同時に、「宇宙人」という設定が、2人の距離を遠ざけてしまいもした
- 「映画の編集」が「過去の追体験」として機能する構成も実に見事だと思う
最初は正直、「大丈夫か、この映画?」と思いながら観ていたのですが、最終的にはとても素晴らしい映画だと感じました
自己紹介記事
あわせて読みたい
ルシルナの入り口的記事をまとめました(プロフィールやオススメの記事)
当ブログ「ルシルナ」では、本と映画の感想を書いています。そしてこの記事では、「管理者・犀川後藤のプロフィール」や「オススメの本・映画のまとめ記事」、あるいは「オススメ記事の紹介」などについてまとめました。ブログ内を周遊する参考にして下さい。
あわせて読みたい
【全作品読了・視聴済】私が「読んできた本」「観てきた映画」を色んな切り口で分類しました
この記事では、「今まで私が『読んできた本』『観てきた映画』を様々に分類した記事」を一覧にしてまとめました。私が面白いと感じた作品だけをリストアップしていますので、是非本・映画選びの参考にして下さい。
どんな人間がこの記事を書いているのかは、上の自己紹介記事をご覧ください
広末涼子主演映画『20世紀ノスタルジア』(原將人監督)は、想像していたよりも遥かに魅力的な物語だった
あわせて読みたい
【考察】『うみべの女の子』が伝えたいことを全力で解説。「関係性の名前」を手放し、”裸”で対峙する勇敢さ
ともすれば「エロ本」としか思えない浅野いにおの原作マンガを、その空気感も含めて忠実に映像化した映画『うみべの女の子』。本作が一体何を伝えたかったのかを、必死に考察し全力で解説する。中学生がセックスから関係性をスタートさせることで、友達でも恋人でもない「名前の付かない関係性」となり、行き止まってしまう感じがリアル
本作『20世紀ノスタルジア』は、思っていたよりもずっと素敵な物語でした。広末涼子の映画デビュー・初主演作としても知られる本作は、確かに「広末涼子がメチャクチャ可愛い」という感想が真っ先に浮かぶ作品だと思います。もちろん、私もそう感じました。私は特段、「広末涼子のファンだった」なんてことはありません。しかしそれでも、高校生の彼女の可愛さはなかなか破壊的なものがあると思いました。正直なところ本作は、「広末涼子が異常に可愛い」というだけで「鑑賞物」として全然成立していると言えると思います。
そして、ただそれだけの作品だとしても恐らく満足できたでしょう。
だから私の年代だと、「広末に会えるかも」って考えて早稲田大学を目指した人は結構いるんじゃないかと思う
あわせて読みたい
【世界観】映画『夜は短し歩けよ乙女』の”黒髪の乙女”は素敵だなぁ。ニヤニヤが止まらない素晴らしいアニメ
森見登美彦の原作も大好きな映画『夜は短し歩けよ乙女』は、「リアル」と「ファンタジー」の境界を絶妙に漂う世界観がとても好き。「黒髪の乙女」は、こんな人がいたら好きになっちゃうよなぁ、と感じる存在です。ずっとニヤニヤしながら観ていた、とても大好きな映画
ただ、映画を観ながら次第に、「本作の非常に特殊な設定が、『繊細な人間関係』を描き出すのにピッタリだったのではないか」と感じられるようになりました。主人公を演じた広末涼子も圓島努も、決して「演技が上手い」わけではありませんが、その「演技の拙さ」がむしろ良い風に機能していた気がします。つまり、本作の特殊な「設定」によって、「演技の拙さ」が「人間関係の繊細さ」に変換されているように感じられたというわけです。
この記事では、その辺りのことにも触れようと思っています。
映画『20世紀ノスタルジア』の内容紹介
あわせて読みたい
【漫画原作】映画『殺さない彼と死なない彼女』は「ステレオタイプな人物像」の化学反応が最高に面白い
パッと見の印象は「よくある学園モノ」でしかなかったので、『殺さない彼と死なない彼女』を観て驚かされた。ステレオタイプで記号的なキャラクターが、感情が無いとしか思えないロボット的な言動をする物語なのに、メチャクチャ面白かった。設定も展開も斬新で面白い
文字で説明しようとすると内容の紹介が少し難しくなるのだが、基本的な設定は「高校生2人が、夏休みを使って映画撮影をしている」となる。高校2年生の遠山杏と転校生の片岡徹が、都内の様々な場所でお互いにカメラを回し、その素材を使って映画を作ろうと考えているのだ。
さて、彼らが作ろうとしている映画の登場人物も「遠山杏」と「片岡徹」である。つまり、「本人役で映画に出演している」というわけだ。しかし、この表現は少し訂正の必要がある。ここがややこしい部分なのだが、映画の登場人物は実際には、「遠山杏に憑依した宇宙人のポウセ」と「片岡徹に憑依した宇宙人のチュンセ」の2人という設定なのだ。ちなみに、「ポウセ」「チュンセ」という名前は、宮沢賢治の『双子の星』という作品から採られている。
「宇宙人」という“設定”は、徹が持ち込んだ。というか、2人が初めて出会った時点で既に、「自分は実はチュンセという宇宙人なんだ」と徹は言っていたのである。
あわせて読みたい
【あらすじ】映画『四畳半タイムマシンブルース』超面白い!森見登美彦も上田誠も超天才だな!
ヨーロッパ企画の演劇『サマータイムマシン・ブルース』の物語を、森見登美彦の『四畳半神話大系』の世界観で描いたアニメ映画『四畳半タイムマシンブルース』は、控えめに言って最高だった。ミニマム過ぎる設定・物語を突き詰め、さらにキャラクターが魅力的だと、これほど面白くなるのかというお手本のような傑作
その時杏は、橋の上にいた。放送部に所属している彼女は、そこでカメラテストをしていたのだ。そしてそんな時に、徹に「宇宙人なんだ」と話しかけられた。さらに、「今自分は分裂している最中であり、新しい宇宙人がまさに生まれようとしている。だから杏の身体を貸してくれ」と畳み掛けてくるのである。
杏は当然、少し戸惑った。しかし、思いの外早く徹の奇妙な発言を受け入れ、「チュンセ」から分裂したという「ポウセ」を自分の身体に入れたのだ。この宇宙人はとにかく、「単為生殖で、アメーバのように分裂して増える」ようである。
それから2人は、カメラを持って東京中を巡っていく。その行動は、杏と徹にとっては「映画撮影」であり、ポウセとチュンセにとっては「地球人の調査」である。しかし観客の目からは、それは明らかに「デート」にしか見えない。彼らは、「撮影」「調査」と称して夏休みを楽しく満喫しているというわけだ。
あわせて読みたい
【感涙】映画『彼女が好きなものは』の衝撃。偏見・無関心・他人事の世界から”脱する勇気”をどう持つか
涙腺がぶっ壊れたのかと思ったほど泣かされた映画『彼女が好きなものは』について、作品の核となる「ある事実」に一切触れずに書いた「ネタバレなし」の感想です。「ただし摩擦はゼロとする」の世界で息苦しさを感じているすべての人に届く「普遍性」を体感してください
しかししばらくして、「そんな風に考えていたのは杏の方だけだった」ということが観客にも理解できるようになる。状況を正しく把握するのは難しかったが、徹にとってはどうやら、「宇宙人」という”設定”は決して「杏と会うための口実」などではないようなのである。彼にとっては、「もっと切実な何か」であるようなのだ……。
さて、本作の冒頭で杏は、そんな徹のことを思い出しながら映画の編集を行っている。実は徹は、夏休みが終わるとすぐにオーストラリアへと旅立ってしまい、日本にはいないのだ。杏は、夏休み中に撮り溜めた膨大なテープと共に日本に残されてしまったのである。そして彼女は、教師や友人からの勧めもあり、テープを編集して1本の映画を作る決意をするのだが……。
非常にシュールな物語なのだが、「宇宙人」という設定が実に上手く機能していると思う
あわせて読みたい
【おすすめ】江戸川乱歩賞受賞作、佐藤究『QJKJQ』は、新人のデビュー作とは思えない超ド級の小説だ
江戸川乱歩賞を受賞した佐藤究デビュー作『QJKJQ』はとんでもない衝撃作だ。とても新人作家の作品とは思えない超ド級の物語に、とにかく圧倒されてしまう。「社会は『幻想』を共有することで成り立っている」という、普段なかなか意識しない事実を巧みにちらつかせた、魔術のような作品
本作において何よりも良かった点は、「お互いが『宇宙人』という設定を貫き通したこと」でしょう。そのような設定の下でやり取りすることで、2人の距離が縮んだり遠ざかったりするのです。2人の関係性を描き出すのに、とても絶妙な設定だったなと思います。
「おいおい、大丈夫かこの映画」って思いながら観てたなぁ、最初の方は
「宇宙人」という設定の絶妙さが際立つのは、杏が徹に自分の気持を伝える場面でしょう。杏が徹を好きなことは観客には明白で、杏は度々、「お前がいなくて寂しい」という主旨の言葉を徹に投げかけていました。エアメールでビデオレターを送る際も、オーストラリアへ旅立つことを聞かされた時も、杏は「寂しい」という言葉を口にするのです。
あわせて読みたい
【あらすじ】映画『夕方のおともだち』は、「私はこう」という宣言からしか始まらない関係性の”純度”を描く
「こんな田舎にはもったいないほどのドM」と評された男が主人公の映画『夕方のおともだち』は、SM嬢と真性ドMの関わりを通じて、「宣言から始まる関係」の難しさを描き出す。「普通の世界」に息苦しさを感じ、どうしても馴染めないと思っている人に刺さるだろう作品
しかし、ここが絶妙なのですが、杏は決して「私(杏)が寂しい」という言い方をしませんでした。「ポウセは寂しい」「ポウセはお前のことを待っているぞ」みたいな言い方をしていたのです。こうすることで「本気っぽさ」みたいなものを減らすことが出来、だからこそ杏は「寂しい」という言葉をてらいもなく口に出来たのだと思います。
メチャクチャ奇妙に思えた設定が、こんな風に機能してくるとはね
恐らくですが、杏は「私が寂しいと思っている」みたいな言い方は出来なかったんじゃないかと思います。だから、「宇宙人」という設定が無かったら、「寂しい」という気持ちを伝えられなかったでしょう。しかし、彼女は「ポウセ」としても発言できるわけです。そしてその方が「マジな感じ」が出にくくなるし、なんなら「宇宙人ごっこが出来なくて寂しい」みたいな軽い発言と解釈する余地も生まれ得るでしょう。だから、「自身が抱えている寂しさを徹に伝える」という意味で、「宇宙人」という設定はとても重要だったと言えるのです。
あわせて読みたい
【助けて】映画『生きててごめんなさい』は、「共依存カップル」視点で生きづらい世の中を抉る物語(主…
映画『生きててごめんなさい』は、「ちょっと歪な共依存関係」を描きながら、ある種現代的な「生きづらさ」を抉り出す作品。出版社の編集部で働きながら小説の新人賞を目指す園田修一は何故、バイトを9度もクビになり、一日中ベッドの上で何もせずに過ごす同棲相手・清川莉奈を”必要とする”のか?
あるいは、別の場面でも似たようなことを感じました。作中で特に広末涼子の可愛さが爆発していたのが、「『宇宙人は排気ガスに弱い』という設定を徹が新たに付け加えた場面」です。歩道上で道路を走るトラックを撮影していた徹は、突然後ろに倒れたかと思うと、「排気ガスにやられた~」みたいなことを口にします。もちろん、そんな自身の様子をカメラにも収めているのですが、徹が撮影しているその映像に、「私もやられた~」と言いながら杏がカットインしてくるのです。
さて、容易に想像出来るでしょうが、「『排気ガスにやられた』と言いながら歩道の上でドタバタする」なんて行動は普通取らないし、だからこそ、そんな行動を取っている2人の距離は縮まっていくのです。これも、「宇宙人」という設定なくしては実現し得ない状況と言えると思います。
あわせて読みたい
【考察】A24のホラー映画『TALK TO ME』が描くのは、「薄く広がった人間関係」に悩む若者のリアルだ
「A24のホラー映画史上、北米最高興収」と謳われる『TALK TO ME トーク・トゥ・ミー』は、一見「とても分かりやすいホラー映画」である。しかし真のテーマは「SNS過剰社会における人間関係の困難さ」なのだと思う。結果としてSNSが人と人との距離を遠ざけてしまっている現実を、ホラー映画のスタイルに落とし込んだ怪作
またこの設定は、「違和感」をも覆い隠していると言えるでしょう。
本作は、「それまで関わりのなかった2人が橋の上で出会い、すぐに意気投合して東京中を駆け回る」という、普通に考えたら「は?」というようなところから物語が始まります。現実にはまずそんなこと起こり得ないし、それ故、物語だとしてもなかなか許容しにくいはずです。しかし、そんな「普通には成立しないだろう状況」が一定の許容範囲内に収まっている(少なくとも私はそう感じました)のは、「宇宙人」という設定のお陰だと思います。なんとなく、「『宇宙人』なら仕方ないか」みたいに感じさせられるのです。また、設定の違和感の方が遥かに強いため、「2人が理由もなく急接近した」という違和感に目が向きにくくもなるとも言えるでしょう。
前に「『空からクラゲが降ってくる』と主張する女の子」が主人公の小説を読んだことがあるんだけど、その雰囲気に近いかも
「トリッキーな設定」が組み込まれることで、本来なら気になってしまうだろう「違和感」が目立たなくなるよね
あわせて読みたい
【倫理】アート体験の行き着く未来は?映画『クライムズ・オブ・ザ・フューチャー』が描く狂気の世界(…
「『痛み』を失った世界」で「自然発生的に生まれる新たな『臓器』を除去するライブパフォーマンス」を行うソール・テンサーを主人公にした映画『クライムズ・オブ・ザ・フューチャー』は、すぐには答えの見出しにくい「境界線上にある事柄」を挑発的に描き出す、実に興味深い物語だ
そんなわけで、2人の関係性的にも、物語の展開的にも、「宇宙人」という設定はとても絶妙だったと思います。
蝕まれてしまう2人の関係性、そして「過去の映像を編集して映画にする」という設定の巧みさ
しかしながら残念なことに、この「宇宙人」という設定は同時に、2人の距離を遠ざけるものとしても機能してしまったと言えると思います。まさに痛し痒しと言ったところでしょう。
あわせて読みたい
【あらすじ】大泉洋主演映画『月の満ち欠け』は「生まれ変わり」の可能性をリアルに描く超面白い作品
あなたは「生まれ変わり」を信じるだろうか? 私はまったく信じないが、その可能性を魅力的な要素を様々に散りばめて仄めかす映画『月の満ち欠け』を観れば、「生まれ変わり」の存在を信じていようがいまいが、「相手を想う気持ち」を強く抱く者たちの人間模様が素敵だと感じるだろう
映画を観ているだけでは、「『宇宙人』という設定に杏を引きずり込んだ動機」ははっきりとは分かりませんでした。ただ確かなのは、「何か切実な理由があってそうしていたのだ」ということです。最初から杏に目をつけていたのか、あるいはカメラを持っていれば誰でも良かったのか、その辺りのことは分かりません。ただともかく、徹にとって「宇宙人」というのは「単なる設定」ではなく、「生きていく上で欠かせない何か」だったことは間違いないでしょう。
「宇宙人」だから奇妙に感じられるだけで、そういう「切実な何か」は誰もが持ってるんじゃないかと思う
「推し活」なんかが分かりやすいだろうけど、徹にとっては「それなしでは生きていけない」みたいなものだったんだろうね
しかし、杏は当然、徹のそんな「切実さ」を理解できていたはずもありません。恐らく彼女は、「よく分からないけれど、遊びみたいなものだろう」ぐらいの感覚で徹と関わっていたのだと思います。というか、そもそも「徹が持ちかけてきた『宇宙人ごっこ』を杏が受け入れた理由」も謎なのですが、まあ何かピントが合ったのでしょう。そんなわけで、杏は徹の「切実さ」を理解しないまま「宇宙人」という設定に付き合うことになったわけです。
あわせて読みたい
【感想】綿矢りさ原作の映画『ひらいて』は、溢れる”狂気”を山田杏奈の”見た目”が絶妙に中和する
「片想いの相手には近づけないから、その恋人を”奪おう”」と考える主人公・木村愛の「狂気」を描く、綿矢りさ原作の映画『ひらいて』。木村愛を演じる山田杏奈の「顔」が、木村愛の狂気を絶妙に中和する見事な配役により、「狂気の境界線」をあっさり飛び越える木村愛がリアルに立ち上がる
最初こそその状態でも上手く行っていたわけですが、次第に、この「お互いの認識の差」が関係性に影響を与えていくことになります。「宇宙人」という設定に対する認識の食い違いが、結果として2人の関係性を蝕んでしまったと感じているというわけです。「宇宙人」という設定があったからこそ急速に距離を詰めることが出来たわけですが、同じ理由によって、その関係性が壊れてもしまったのだと思います。
この2人には、もう少し違う未来があったような気もするからなぁ
また、本作の「撮影した映像を編集して映画を作ろうとする」という設定もまた、とても上手いと感じました。冒頭で杏の友人が、「編集すると、片岡くんのこと思い出しちゃって大変だね」と杏に声を掛ける場面があるのですが、まさにその通りだと思います。杏は決して「大変」とは感じていなかったでしょうが、杏がしている「映画編集」は、まさに「過去の追体験」そのものなのです。「宇宙人に憑依されている」という設定があるとはいえ、出演しているのは杏と徹であり、彼ら自身を掘り下げていく映像素材がたくさんあるのだから当然でしょう。
あわせて読みたい
【あらすじ】映画『アンダーカレント』(今泉力哉)は、失踪をテーマに「分かり合えなさ」を描く
映画『アンダーカレント』において私は、恐らく多くの人が「受け入れがたい」と感じるだろう人物に共感させられてしまった。また本作は、「他者を理解すること」についての葛藤が深掘りされる作品でもある。そのため、私が普段から抱いている「『他者のホントウ』を知りたい」という感覚も強く刺激された
そして、そんな「過去の追体験」を行うことで杏は、「眼の前からいなくなってしまった『片岡徹/チュンセ』を『人間/宇宙人』として改めて捉え直そうとする」のです。私には、このような構成がとても素敵に感じられました。
もちろん杏は、「徹は切実な何かがあって『宇宙人』をやっていたんだ」という視点で過去の映像を捉え直すもんね
そうすることで間違いなく、今まで見えていなかったものが浮かび上がってくるはず
さらに本作では、広末涼子と圓島努が手持ちカメラで実際に撮影したのだろう映像がふんだんに使われていて、普通の映像ではなかなか感じられない「躍動感」に溢れた作品に仕上がっていたと思います。そして本作を観ながら、以前に観た映画『私たちのハァハァ』を思い出しました。こちらの作品でも、4人の女子高生が交代で撮影した手持ちカメラの映像が随所に組み込まれており、このような構成によって「若さ」が一層強調されるなと思います。
また、最初の内は「圓島努の演技がもう少し上手いといいんだけど」みたいに感じていたのですが、物語の展開と共にその感覚も変わっていきました。次第に、「上手くはないからこそ滲み出る狂気がある」と感じられるようになったのです。このように本作は、「一見すると決してプラスとは思えない要素」が多く目に付くのですが、様々な「混沌」が入り混じることで、結果として良い方向にまとまっているように感じられました。とても素敵な作品だったと思います。
あわせて読みたい
【魅惑】バーバラ・ローデン監督・脚本・主演の映画『WANDA』の、70年代の作品とは思えない今感
映画館で観た予告が気になって、それ以外の情報を知らずに観に行った映画『WANDA』なんと70年代の映画だと知って驚かされた。まったく「古さ」を感じなかったからだ。主演だけでなく、監督・脚本も務めたバーバラ・ローデンが遺した、死後評価が高まった歴史的一作
出演:広末涼子, 出演:圓島努, 出演:余貴美子, 出演:根岸吉太郎, クリエイター:西村隆, クリエイター:佐藤美由紀, 監督:原將人, Writer:中島吾郎, Writer:原將人
¥330 (2024/08/17 19:30時点 | Amazon調べ)
ポチップ
あわせて読みたい
【全作品視聴済】私が観てきた映画(フィクション)を色んな切り口で分類しました
この記事では、「今まで私が観てきた映画(フィクション)を様々に分類した記事」を一覧にしてまとめました。私が面白いと感じた作品だけをリストアップしていますので、是非映画選びの参考にして下さい。
最後に
さて、全然どうでもいい話なのですが、エンドロールを観ていて驚いたことがあります。「宣伝プロデューサー」として「古内一絵」がクレジットされていたのです。私にとって「古内一絵」は「小説家」なのですが、「かつて映画プロデューサーだった」ということも知ってはいました。しかし、まさかこんなところでその名前を見かけることがあるとは。ちょっと驚かされてしまいました。
とまあ色々書きましたが、とにかく「広末涼子が凄まじく可愛い作品」です。それ目当てで観ても十分楽しめる作品だと思います。
あわせて読みたい
Kindle本出版しました!「それってホントに『コミュ力』が高いって言えるの?」と疑問を感じている方に…
私は、「コミュ力が高い人」に関するよくある主張に、どうも違和感を覚えてしまうことが多くあります。そしてその一番大きな理由が、「『コミュ力が高い人』って、ただ『想像力がない』だけではないか?」と感じてしまう点にあると言っていいでしょう。出版したKindle本は、「ネガティブには見えないネガティブな人」(隠れネガティブ)を取り上げながら、「『コミュ力』って何だっけ?」と考え直してもらえる内容に仕上げたつもりです。
次にオススメの記事
あわせて読みたい
【恋?】映画『早乙女カナコの場合は』が描く、「自然な自分でいるために隣にいるべき人」の話(監督:…
映画『早乙女カナコの場合は』は、「『絶対に選ぶべきじゃない相手』の隣にいる時の自分が一番良い」というややこしさをフルスロットルで描き出す作品だ。長津田はダメ男なのだが、しかしカナコはそんな長津田の隣にいる時こそ自分が最も自然体でいられることを知っている。その場合、あなたなら長津田みたいな人を選ぶだろうか?
あわせて読みたい
【想い】映画『水の中で深呼吸』を観て「自分の中の『好き』を確認する作業」について考えさせられた(…
映画『水の中で深呼吸』は、「『同性』に向いた感情は『好き』ってことでいいのか?」と確認する作業を丁寧に描写する場面が多く、「確かにそういうステップは存在し得るよな」と感じさせられた。「他者の評価が気になる」「自分の感覚を他者に押し付けない」といった現代性が反映された繊細な人間関係や葛藤が実に興味深い作品
あわせて読みたい
【感想】実写映画『からかい上手の高木さん』(今泉力哉)は「あり得ない関係」を絶妙に描く(主演:永…
私は実写映画『からかい上手の高木さん』を「今泉力哉の最新作」として観に行った。常に「普通には成立しないだろう関係性」を描き出す今泉力哉作品らしく、本作でもそんな「絶妙にややこしい関係」が映し出されている。「正解がない」からこそ「すべてが正解になる」はずの「恋愛」をベースに、魅力的な関わりを描き出す物語
あわせて読みたい
【切実】映画『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』は河合優実目当てだったが伊東蒼が超最高!(…
映画『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』は、伊東蒼演じるさっちゃんがひたすらに独白し続けるシーンがとにかく圧巻で、恋しさとせつなさと心強さが無限に伝わる最高すぎるシーンだった!「想いを伝えたい気持ち」と「伝えることの暴力性」の間で葛藤しながら、それでも喋らずにはいられない想いの強さが素敵すぎる
あわせて読みたい
【あらすじ】映画『夏目アラタの結婚』は黒島結菜が演じた品川真珠の歯並びが凄い(でもかわいい)(監…
映画『夏目アラタの結婚』は、まずとにかく、黒島結菜が演じた主人公・品川真珠のビジュアルが凄まじかった。原作者が「譲れない」と言ったという「ガタガタの汚い歯」の再現が凄まじく、これだけで制作陣の本気度が伝わるくらい。ストーリー展開も見事で、もう1人の主人公が最終的に思いがけない実感に行き着く流れも興味深い
あわせて読みたい
【失恋】ひたすらカオスに展開する映画『エターナル・サンシャイン』は、最後まで観ると面白い!(主演…
映画『エターナル・サンシャイン』は、冒頭からしばらくの間、とにかくまったく意味不明で、「何がどうなっているのか全然分からない!」と思いながら観ていました。しかし、映像がカオスになるにつれて状況の理解は進み始め、最終的には「よくもまあこんな素っ頓狂なストーリーを理解できる物語に落とし込んだな」と感心させられました
あわせて読みたい
【繊細】映画『ぼくのお日さま』(奥山大史)は、小さな世界での小さな恋を美しい映像で描く(主演:越…
映画『ぼくのお日さま』は、舞台設定も人間関係も実にミニマムでありながら、とても奥行きのある物語が展開される作品。予告編で「3つの恋」と言及されなければ、描かれるすべての「恋」には気付けなかっただろうと思うくらいの繊細な関係性と、映像・音楽を含めてすべてが美しい旋律として奏でられる物語がとても素敵でした
あわせて読みたい
【恋心】映画『サッドティー』は、「『好き』を巡ってウロウロする人々」を描く今泉力哉節全開の作品だった
映画『サッドティー』は、今泉力哉らしい「恋愛の周辺でグルグルする人たち」を描き出す物語。関係性が微妙に重なる複数の人間を映し出す群像劇の中で、「『好き』のややこしさ」に焦点を当てていく構成はさすがです。実に奇妙な展開で終わる物語ですが、それでもなお「リアルだ」と感じさせる雰囲気は、まるで魔法のようでした
あわせて読みたい
【映画】ウォン・カーウァイ4Kレストア版の衝撃!『恋する惑星』『天使の涙』は特にオススメ!
『恋する惑星』『天使の涙』で一躍その名を世界に知らしめた巨匠ウォン・カーウァイ作品の4Kレストア版5作品を劇場で一気見した。そして、監督の存在さえまったく知らずに観た『恋する惑星』に圧倒され、『天使の涙』に惹きつけられ、その世界観に驚かされたのである。1990年代の映画だが、現在でも通用する凄まじい魅力を放つ作品だ
あわせて読みたい
【感想】映画『レオン』は、殺し屋マチルダを演じたナタリー・ポートマンがとにかく素晴らしい(監督:…
映画『レオン』は、その性質ゆえに物議を醸す作品であることも理解できるが、私はやはりナタリー・ポートマンに圧倒されてしまった。絶望的な事態に巻き込まれたマチルダの葛藤と、そんな少女と共に生きることになった中年男性レオンとの関係性がとても見事に映し出されている。実に素敵な作品だった
あわせて読みたい
【感想】映画『ローマの休日』はアン王女を演じるオードリー・ヘプバーンの美しさが際立つ名作
オードリー・ヘプバーン主演映画『ローマの休日』には驚かされた。現代の視点で観ても十分に通用する作品だからだ。まさに「不朽の名作」と言っていいだろう。シンプルな設定と王道の展開、そしてオードリー・ヘプバーンの時代を超える美しさが相まって、普通ならまずあり得ない見事なコラボレーションが見事に実現している
あわせて読みたい
【あらすじ】映画『千年女優』(今敏)はシンプルな物語を驚愕の演出で味付けした天才的アニメ作品
今敏監督の映画『千年女優』は、ちょっとびっくりするほど凄まじく面白い作品だった。観ればスッと理解できるのに言葉で説明すると難解になってしまう「テクニカルな構成」に感心させられつつ、そんな構成に下支えされた「物語の感性的な部分」がストレートに胸を打つ、シンプルながら力強い作品だ
あわせて読みたい
【考察】映画『街の上で』(今泉力哉)が描く「男女の友情は成立する」的会話が超絶妙で素晴らしい(出…
映画『街の上で』(今泉力哉監督)は、「映画・ドラマ的会話」ではない「自然な会話」を可能な限り目指すスタンスが見事だった。「会話の無駄」がとにかく随所に散りばめられていて、そのことが作品のリアリティを圧倒的に押し上げていると言える。ある男女の”恋愛未満”の会話もとても素晴らしかった
あわせて読みたい
【映画】『別れる決心』(パク・チャヌク)は、「倫理的な葛藤」が描かれない、不穏で魅惑的な物語
巨匠パク・チャヌク監督が狂気的な関係性を描き出す映画『別れる決心』には、「倫理的な葛藤が描かれない」という特異さがあると感じた。「様々な要素が描かれるものの、それらが『主人公2人の関係性』に影響しないこと」や、「『理解は出来ないが、成立はしている』という不思議な感覚」について触れる
あわせて読みたい
【感想】映画『すずめの戸締まり』(新海誠)は、東日本大震災後を生きる私達に「逃げ道」をくれる(松…
新海誠監督の『すずめの戸締まり』は、古代神話的な設定を現代のラブコメに組み込みながら、あまりに辛い現実を生きる人々に微かな「逃げ道」を指し示してくれる作品だと思う。テーマ自体は重いが、恋愛やコメディ要素とのバランスがとても良く、ロードムービー的な展開もとても魅力的
あわせて読みたい
【感想】のん主演映画『私をくいとめて』から考える、「誰かと一緒にいられれば孤独じゃないのか」問題
のん(能年玲奈)が「おひとり様ライフ」を満喫する主人公を演じる映画『私をくいとめて』を観て、「孤独」について考えさせられた。「誰かと関わっていられれば孤独じゃない」という考えに私は賛同できないし、むしろ誰かと一緒にいる時の方がより強く孤独を感じることさえある
あわせて読みたい
【感涙】映画『彼女が好きなものは』の衝撃。偏見・無関心・他人事の世界から”脱する勇気”をどう持つか
涙腺がぶっ壊れたのかと思ったほど泣かされた映画『彼女が好きなものは』について、作品の核となる「ある事実」に一切触れずに書いた「ネタバレなし」の感想です。「ただし摩擦はゼロとする」の世界で息苦しさを感じているすべての人に届く「普遍性」を体感してください
あわせて読みたい
【感想】綿矢りさ原作の映画『ひらいて』は、溢れる”狂気”を山田杏奈の”見た目”が絶妙に中和する
「片想いの相手には近づけないから、その恋人を”奪おう”」と考える主人公・木村愛の「狂気」を描く、綿矢りさ原作の映画『ひらいて』。木村愛を演じる山田杏奈の「顔」が、木村愛の狂気を絶妙に中和する見事な配役により、「狂気の境界線」をあっさり飛び越える木村愛がリアルに立ち上がる
あわせて読みたい
【あらすじ】映画『流浪の月』を観て感じた、「『見て分かること』にしか反応できない世界」への気持ち悪さ
私は「見て分かること」に”しか”反応できない世界に日々苛立ちを覚えている。そういう社会だからこそ、映画『流浪の月』で描かれる文と更紗の関係も「気持ち悪い」と断罪されるのだ。私はむしろ、どうしようもなく文と更紗の関係を「羨ましい」と感じてしまう。
あわせて読みたい
【感想】映画『竜とそばかすの姫』が描く「あまりに批判が容易な世界」と「誰かを助けることの難しさ」
SNSの登場によって「批判が容易な社会」になったことで、批判を恐れてポジティブな言葉を口にしにくくなってしまった。そんな世の中で私は、「理想論だ」と言われても「誰かを助けたい」と発信する側の人間でいたいと、『竜とそばかすの姫』を観て改めて感じさせられた
あわせて読みたい
【考察】『うみべの女の子』が伝えたいことを全力で解説。「関係性の名前」を手放し、”裸”で対峙する勇敢さ
ともすれば「エロ本」としか思えない浅野いにおの原作マンガを、その空気感も含めて忠実に映像化した映画『うみべの女の子』。本作が一体何を伝えたかったのかを、必死に考察し全力で解説する。中学生がセックスから関係性をスタートさせることで、友達でも恋人でもない「名前の付かない関係性」となり、行き止まってしまう感じがリアル
あわせて読みたい
【生きる】しんどい人生を宿命付けられた子どもはどう生きるべき?格差社会・いじめ・恋愛を詰め込んだ…
厳しい受験戦争、壮絶な格差社会、残忍ないじめ……中国の社会問題をこれでもかと詰め込み、重苦しさもありながら「ボーイ・ミーツ・ガール」の爽やかさも融合されている映画『少年の君』。辛い境遇の中で、「すべてが最悪な選択肢」と向き合う少年少女の姿に心打たれる
あわせて読みたい
【世界観】映画『夜は短し歩けよ乙女』の”黒髪の乙女”は素敵だなぁ。ニヤニヤが止まらない素晴らしいアニメ
森見登美彦の原作も大好きな映画『夜は短し歩けよ乙女』は、「リアル」と「ファンタジー」の境界を絶妙に漂う世界観がとても好き。「黒髪の乙女」は、こんな人がいたら好きになっちゃうよなぁ、と感じる存在です。ずっとニヤニヤしながら観ていた、とても大好きな映画
あわせて読みたい
【考察】生きづらい性格は変わらないから仮面を被るしかないし、仮面を被るとリア充だと思われる:『勝…
「リア充感」が滲み出ているのに「生きづらさ」を感じてしまう人に、私はこれまでたくさん会ってきた。見た目では「生きづらさ」は伝わらない。24年間「リアル彼氏」なし、「脳内彼氏」との妄想の中に生き続ける主人公を描く映画『勝手にふるえてろ』から「こじらせ」を知る
あわせて読みたい
【あらすじ】濱口竜介監督『偶然と想像』は、「脚本」と「役者」のみで成り立つ凄まじい映画。天才だと思う
「映画」というメディアを構成する要素は多々あるはずだが、濱口竜介監督作『偶然と想像』は、「脚本」と「役者」だけで狂気・感動・爆笑を生み出してしまう驚異の作品だ。まったく異なる3話オムニバス作品で、どの話も「ずっと観ていられる」と感じるほど素敵だった
あわせて読みたい
【感想】「献身」こそがしんどくてつらい。映画『劇場』(又吉直樹原作)が抉る「信頼されること」の甘…
自信が持てない時、たった1人でも自分を肯定してくれる人がいてくれるだけで前に進めることがある。しかしその一方で、揺るぎない信頼に追い詰められてしまうこともある。映画『劇場』から、信じてくれる人に辛く当たってしまう歪んだ心の動きを知る
あわせて読みたい
【映画】『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 劇場版』で号泣し続けた私はTVアニメを観ていない
TVアニメは観ていない、というかその存在さえ知らず、物語や登場人物の設定も何も知らないまま観に行った映画『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 劇場版』に、私は大号泣した。「悪意のない物語」は基本的に好きではないが、この作品は驚くほど私に突き刺さった
あわせて読みたい
【考察】世の中は理不尽だ。平凡な奴らがのさばる中で、”特別な私の美しい世界”を守る生き方:『オーダ…
自分以外は凡人、と考える主人公の少女はとてもイタい。しかし、世間の価値観と折り合わないなら、自分の美しい世界を守るために闘うしかない。中二病の少女が奮闘する『オーダーメイド殺人クラブ』をベースに、理解されない世界をどう生きるかについて考察する
あわせて読みたい
【感想】人間関係って難しい。友達・恋人・家族になるよりも「あなた」のまま関わることに価値がある:…
誰かとの関係性には大抵、「友達」「恋人」「家族」のような名前がついてしまうし、そうなればその名前に縛られてしまいます。「名前がつかない関係性の奇跡」と「誰かを想う強い気持ちの表し方」について、『君の膵臓をたべたい』をベースに書いていきます
ルシルナ | 映画と本の感想ブログ
普通って何?【本・映画の感想】 | ルシルナ | 映画と本の感想ブログ
人生のほとんどの場面で、「普通」「常識」「当たり前」に対して違和感を覚え、生きづらさを感じてきました。周りから浮いてしまったり、みんなが当然のようにやっているこ…
ルシルナ | 映画と本の感想ブログ
記事検索(カテゴリー・タグ一覧) | ルシルナ | 映画と本の感想ブログ
ルシルナは、4000冊以上の本と500本以上の映画をベースに、生き方や教養について書いていきます。ルシルナでは36個のタグを用意しており、興味・関心から記事を選びやすく…
コメント