【感涙】映画『彼女が好きなものは』の衝撃。偏見・無関心・他人事の世界から”脱する勇気”をどう持つか

目次

はじめに

この記事で取り上げる映画

出演:神尾楓珠, 出演:山田杏奈, 出演:前田旺志郎, 出演:三浦獠太, 出演:池田朱那, 出演:渡辺大知, 出演:三浦透子, 出演:磯村勇斗, 出演:山口紗弥加, 出演:今井翼, Writer:草野翔吾, 監督:草野翔吾, クリエイター:「彼女が好きなものは」製作委員会
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いか

この映画をガイドにしながら記事を書いていくようだよ

今どこで観れるのか?

この記事で伝えたいこと

「ただし摩擦はゼロとする」という単純化された世界に馴染めずにいるすべての人に響く物語

犀川後藤

「高い解像度で苦悩を理解してくれる存在」が近くにいるのはとても羨ましいです

この記事の3つの要点

  • 「解像度が低い人」にはどうしても苛立ちを感じてしまうし、私は許容できない
  • 「解像度が高い」が故に自分を嫌いになってしまう安藤純が抱える「苦しさ」と「長年抱き続けてきた絶望」
  • 「問題は問題だよね、私の問題でもあるけど」という形で偏見を乗り越える三浦紗枝の勇敢さ
犀川後藤

「よくある学園モノ」っぽく見えるかもしれませんが、まったくそんなことはない、凄まじく感動的な作品でした

自己紹介記事

いか

どんな人間がこの記事を書いているのかは、上の自己紹介記事をご覧ください

記事中の引用は、映画館で取ったメモを参考にしているので、正確なものではありません

映画『彼女が好きなものは』はとんでもなく素晴しい作品だった。作品の「核となるテーマ」に触れずに感想を書く

とんでもなく素晴しい映画です。涙腺がぶっ壊れたのかと思うほど、号泣させられました

いか

特に、後半のあるシーン以降はヤバかったよね

犀川後藤

こんなに泣かされる映画だとはマジで想像してなかったからビビったわ

この映画を観ることに決めた自分の判断を褒めてあげたいと思います。普通ならまず観ないタイプの映画だからです。メインビジュアルや予告の雰囲気から、「ジャニーズが出てくる学園モノの映画」だと思っていました。別にジャニーズが悪いと言いたいわけではありません。ただ、ジャニーズが出る作品はどうしても「大多数向け」という感じになるだろうし、私の場合、そういう作品をあまり面白いと感じられないことが多いのです。というかそもそも、「神尾楓珠をジャニーズの人だと勘違いしていた」というだけの話なんですが。

私が『彼女が好きなものは』を観ようと考えたのは、山田杏奈が出ていたからだと思います。別に彼女のファンというわけではないのですが、その少し前に映画『ひらいて』を観ており、「山田杏奈の存在が作品を成立させている」と感じたことがありました。その記憶があったからこそ、『彼女が好きなものは』も観てみようと思ったはずです。

とにかく、私としては「普段ならまず観ないだろう映画」という印象でしたし、だからこそ、観る決断をして本当に良かったと思っています。

犀川後藤

映画レビューサイトで、「この作品が今年の邦画No.1でした」ってコメントをくれた方がいたなぁ

いか

その人がコメントくれたの、その時が最初で最後だったから、よほど言いたかったんだろうね

「学園モノ」という印象は決して間違っているわけではなく、主人公たちが温泉施設へとダブルデートに行く辺りまでは、よくありがちな「学園モノ」のストーリーという風に進んでいきます。しかしそこから物語は急転、まったく違った雰囲気をまとって展開されていくことになるというわけです。

それでは物語の中身に触れる前に、この映画では一体何が描かれていて、どんな点に私がグッと来たのかという話をしていきたいと思います。

「ただし摩擦はゼロとする」という欺瞞

この世の中は、「ただし摩擦はゼロとする」に満ちあふれている。

『彼女が好きなものは』(監督:草野翔吾、主演:神尾楓珠、山田杏奈)

映画の冒頭は、主人公・安藤純のこんな独白から始まります。

「ただし摩擦はゼロとする」は、学生時代の物理の授業でよく出てくるフレーズです。聞き覚えがあるという方もいるでしょう。ざっくり説明すると、「問題を解く際に、『地面との摩擦』を考慮すると複雑になるので、『摩擦はゼロ』として考えること」という意味の注意書きです。学校のテストで出頭するのに相応しいレベルの問題にするために、「摩擦は存在しないものとして考えましょう」というお約束が用意されているというわけです。

犀川後藤

私は元々理系だから当然知ってるけど、文系の人も普通に授業で習うようなものだっけ?

いか

こういう一般向けの映画で出てくるぐらいだから、「みんな知ってる」って前提なんだろうけどね

安藤はさらにこんな風に続けます

あいつはああだから、と言って世界を簡単にしようとする。

『彼女が好きなものは』(監督:草野翔吾、主演:神尾楓珠、山田杏奈)

男だから…」「女だから…」「子どもだから…」「美人だから…」「障害者だから…」。世の中では、このような言葉が当たり前に使われています。そのどれもが、その人の人物像を構成する「一要素」にすぎません。それなのに、「男である」というだけで、「こうするのが当然」「そんなことするなんておかしい」と受け取られてしまうこともあるはずです。あたかも「1つの要素だけを切り取って人物を描像できる」と考えているかのような単純な思考の言説がとても多いと感じてします。

安藤は、まさにこのような「単純化」を、「ただし摩擦はゼロとする」という言葉で表現しているのです。

いか

こういう主張に抵抗したいって感覚はメチャクチャ理解できるよね

犀川後藤

自分がそういう風に見られるのも嫌だし、「自分がそういう視線を他者に向けてたりしないか」って常に気をつけてるつもり

どうして彼はそんな感覚を抱いているのでしょうか。それは彼自身が、「単純化」によっては捉えきれない存在として生きているからです。そして彼は、その状態に恐ろしいほどの苦痛を感じています

複雑なことを無視して、世界を簡単にしたくないんだ。

『彼女が好きなものは』(監督:草野翔吾、主演:神尾楓珠、山田杏奈)

彼が、もう1人の主人公である三浦紗枝にそんな風に伝える場面があります。「分かった風にしたくないんだ」とも言っていました。どちらの言葉にも、もの凄く共感できてしまいます。

以前、「思考力や言語化力は非常に高いけれど、将棋はまったくやったことのない初心者」が将棋を学んでいる過程における感想で、「盤上に駒が多いと考えることが増えすぎるから、駒をどんどん減らしたいという気分になる」と語っていたことを思い出しました。将棋は単なる娯楽なので好きに指したらいいと思いますが、同じようなスタンスを日常や社会を捉えるやり方に組み込んでしまうのは良くないと感じます。どんな事象にも、関わっている人や置かれた状況によって異なる「固有の何か」があるはずです。そしてそれは、「世界を簡単にする」ことによってあっさり失われてしまいます。「単純化」が有益な状況ももちろんありますが、決して多くはないと私は思っていますし、日常や社会を捉える際には特に適切ではないと私は感じているのです。

犀川後藤

でもホント、「単純化」することでしか状況を捉えられない人が多いような気がして、凄く残念な気分になる

いか

もちろん、あんただって、より高度に状況を捉えている人からすれば「単純だ」って感じかもだけどね

「解像度」という言葉で、主人公・安藤純を捉える

私は普段から「解像度」という言葉を使います。物事を単純化して捉えれば「解像度が低い」、複雑なものを複雑なまま捉えれば「解像度が高い」というわけです。私は、「言葉の解像度」「思考の解像度」「視野の解像度」などのように「解像度」という言葉を使うのですが、安藤純が言う「ただし摩擦はゼロとする」に関わる状況は、「解像度」という観点から捉えられると考えています。

「ただし摩擦はゼロとする」という世界に違和感を覚えない人は、「解像度が低い」と言っていいでしょう。「うちの会社にパワハラなんてありません」みたいなことを平然と言う人がいますが、まさにそれは「自分の周りに存在する『摩擦』を存在しないことにしている」という態度に思えます。「摩擦」に気づいていて無視しているのか、あるいはそもそも気づいていないのか分かりませんが、とにかくそういう「解像度が低い人」は世の中にたくさんいて、私はそういう人に対してとてもイライラしてしまうのです。

いか

こういう人とはまず話が通じないよね

犀川後藤

「解像度が低い」って思っちゃった時点で、会話をする気力が失せる

安藤純は、解像度がとても高い人だと言っていいでしょう。私はそういう人がとても好きです。というか、そういう人にしか興味が持てません

「解像度が高い人」は、「解像度が低い人」には捉えられない「摩擦」が見えてしまいます。そういう人は大体、「見たくないもの」まで見えてしまうでしょう。そしてだからこそ、どんどんと自分で自分を追い詰め、非常に苦しい状況に陥ってしまうことになるのです。

また、「解像度が高い人」は、些細な言動から相手の気持ちが分かってしまいます。もちろん「勘違い」という可能性もあるでしょう。ただ、自分としてはそんな風に感じてしまうのだからどうしようもありません。そして、相手の気持ちを分かった気になれてしまうが故に、他人に踏み込むことが怖くなります。近づけば近づくほど「見たくないもの」が見えてしまうことが分かっているし、その結果、相手のことを嫌いになってしまい得るからです。

そして、そんな自分のことがどんどん嫌になっていきます

いか

神尾楓珠が、ここに書いた「どんどん自分を嫌いになっていく」みたいな雰囲気を、凄く上手く演じるんだよね

犀川後藤

役柄だけじゃなくて本人からも、「めちゃくちゃイケメンだけど、どことなく陰がある」って雰囲気を感じる

自分で自分のことを嫌いになっていくのは、とてもつらいことです。安藤も、そんな辛さの中にずっと押し込められてしまっていました。誰にも言えない秘密を抱えていたからです。「同志」であれば分かり合えるけれども、「同志」と関わりを持つことはそう簡単なことではありません。そして、「同志」とは全然違う、「ただし摩擦はゼロとする」の世界を当たり前のように生きる者たちと無理やり歩調を合わせながら、どうにか日々を生き抜いているというのが、安藤の置かれた状況です。

この映画で描かれる安藤の「秘密」と同じ悩みを抱えていなければ共感できない、なんてことはないでしょう。誰だって、「他人に打ち明けるのが難しい」と感じる「秘密」を持ち得るはずだからです。また、私はこれまでに、「外から見ただけでは想像できないような悩み」を抱えている人たちの話を色々と聞いたことがあります。だから、「日常を楽しそうに生きているからといって、『秘密』を抱えていないことにはならない」とも理解しているつもりです。

そんなわけでこの物語は、「核となるテーマ」に自分が関係するかどうかに拘わらず、誰しもが当事者となり得る作品だと私は感じました。

犀川後藤

最後でもう少し詳しく書くけど、そういう意図があってこの記事では「核となるテーマ」に触れないことにしてる

いか

どうしても「余計な先入観」を与えがちなテーマだしね

安藤が「ただし摩擦はゼロとする」の世界で生きるためには、「自分の存在を無にする」しかありません。「今ここにいるのは自分ではない」みたいな思考で臨まなければ立ち向かえないのです。しかしそう考えれば考えるほど、彼は「どうして自分のような存在がこの世に生まれてきてしまったのだろうか」という悩みに引き寄せられてしまいます。

安藤と同形の「秘密」を持っているわけではない私にも、彼の「苦悩」「苦痛」は理解できる気がするし、心の底から「どうにか生き延びてほしい」と感じてしまいました。

「それは私の問題でもあります」と差し伸べられた手が「無意識の偏見」を乗り越える

この映画の、一番素晴らしく、一番号泣させられた場面で、こんな言葉が出てきます。

彼は、自分のことが大嫌いで、私たちのことが大好きなんです。

『彼女が好きなものは』(監督:草野翔吾、主演:神尾楓珠、山田杏奈)

これはとても素敵な言葉だと感じました。さらにこんな風にも加えます。

彼が築いた壁は、大好きな私たちを守るためのものなんです。

『彼女が好きなものは』(監督:草野翔吾、主演:神尾楓珠、山田杏奈)
犀川後藤

私も日々しみじみ感じる機会があるんだけど、やっぱり「正しく理解してくれる人」が周りにいるって幸運なことだと思う

いか

そういう人に身近な世界で出会えないと、ホント辛いよね

彼女は、自分こそ傷ついているにも拘わらず、必死に言葉を紡いで、安藤純という人間について訴えかけます。彼の振る舞いは「私たちのことが嫌い」だからじゃない、彼は「自分のことが嫌い」で「私たちのことが大好き」なんだと、必死に理解してもらおうとするのです。三浦が賞状を受け取ってからの一連の展開には、とにかく号泣させられてしまいました

三浦の凄さは、「無意識の偏見」を乗り越えるための、1つの「解決策」のようなものを提示したことだと感じます。

「偏見」というのはとても難しいものです。「偏見」について考えるとき、その難しさを端的に表現した映画『ドリーム』のセリフがいつも頭に浮かびます。

「私は、偏見は持っていないのよ」
「ええ、分かっています。そう思い込んでいることは」

『ドリーム』(監督:セオドア・メルフィ)

「『他人に偏見を抱いている』と自覚していないこと」ももちろん問題ではあるのですが、「『他人に偏見を抱いていない』と自覚していること」もまた問題だというわけです。先程触れた「解像度」の話で言うなら、「他人に偏見を抱いていない」という自覚は、「解像度の低さ」を示すものとしか受け取られないでしょう。

いか

本当に偏見を抱いていない人なら、「偏見を抱いてない」って口には出さないだろうからね

犀川後藤

「それを口にしたらどんな風に受け取られるか」まで理解できてないと意味がないからなぁ

そういうわけで、「偏見を抱いていない状態」について考えることはとても難しいのです。ただ、映画の中で三浦が口にする「他人事」というキーワードから、「『それは私の問題でもある』と考えること」を「偏見を抱いていない状態」と捉えてもいいのではないかと感じました。

「偏見を抱いていない」という言葉からは、「それを問題視しない」という方向性をイメージさせるでしょうが、三浦のスタンスは、「それは問題であり、さらに私の問題でもある」というメッセージを含んでいると思います。私は、「そんなの全然問題じゃないよ、私には関係ないけど」と言われるのと、「問題は問題だよね、私の問題でもあるけど」と言われるのとでは、後者の方がより「偏見を抱いていない状態」に近いと感じるのですが、どうでしょうか。

そして三浦はまさに、「問題は問題だよね、私の問題でもあるけど」と声高に主張するために立ち上がるのです。ホントに勇敢だと感じました。三浦は、「私の問題でもあるけど」と示すためにメチャクチャ身を削ります。彼女自身が長い間ひた隠しにしてきたある「秘密」を全校生徒の前で語るのです。誰もが三浦のような行動を取るべきだなんて思ったりはしませんが、彼女の行動はとにかく素敵で、泣かずにはいられませんでした。

犀川後藤

難しいだろうけど、同じような状況になったら、自分も同じように振る舞えたらいいなって思った

いか

ただこれ、「安藤が100%プラスに受け取ってくれるか分からない」ってリスクがあるから、怖いよねぇ

安藤は、誰もが当然のように望むことができる「幸せ」について、自分には手が届かないものだという絶望を抱いています

そういう幸せが欲しいってどうしても思ってしまうんだ。

『彼女が好きなものは』(監督:草野翔吾、主演:神尾楓珠、山田杏奈)

安藤は、「みんなにとっては当たり前の『幸せ』を望めば、間違いなく誰かを傷つけてしまう」という葛藤を抱えて生きてきました。そんな絶望の淵に取り残されていた安藤に、三浦は「それは私の問題でもある」と寄り添うことに決めるのです。

2人の関係性はとても歪なものかもしれませんが、私にはとびきり美しいものに感じられました。

映画の内容紹介

高校2年生の安藤純は、5歳の頃からの幼馴染である亮平とは仲が良いものの、基本的に友達が少なく、いつも1人で本を読んでいるような目立たない存在だ。亮平が、クラス内ヒエラルキートップの小野と仲が良いこともあり、安藤も小野のグループに混じって話をすることもあるのだが、「ただし摩擦はゼロとする」感がもの凄く強い世界のため話を合わせるために日々苦労している

ある日彼は、存在を知っている程度の、ほとんど話したことがないクラスメート・三浦紗枝のある「秘密」を知ってしまう。彼女は中学時代、その「秘密」のせいで友達を失ったことがずっとトラウマで、高校生になってからは隠し通すと決めていた。それなのに、うっかりクラスメートに知られてしまい、安藤が誰かにバラしたりしないかと気が気じゃない

しかし、「秘密」を知られたことで、結果として三浦は安藤と話す機会が増え、距離が縮まっていく。やがて2人は付き合うことになるのだが……。

映画の感想

私が映画を観て感じたこと、考えたことはここまででかなり書いてきたので、ここでは役者や登場人物について触れていきたいと思います。

まず、神尾楓珠が非常に良い存在感を出していると感じました。冒頭で書いた通り、映画『ひらいて』は山田杏奈が成立させたと思っていますが、映画『彼女が好きなものは』は神尾楓珠が成立させた作品だと言っていいでしょう。

犀川後藤

ボートレースのCMに出てたから存在は知ってたけど、役者としてちゃんと演技を見たのはこの作品が初かも

いか

ジャニーズだと思いこんでたぐらいだからねぇ

神尾楓珠が演じる安藤純というキャラクターは、なかなか感情を表に出しません。三浦も当初は安藤のことを、

何考えてるか分かんない系。真顔で人刺しそうな感じ。

『彼女が好きなものは』(監督:草野翔吾、主演:神尾楓珠、山田杏奈)

と評しています。なかなか絶妙な表現で、そんな安藤を神尾楓珠は実に見事に演じていると感じました。表情などで分かりやすく感情を伝えるシーンは非常に少なく、全体的に抑えられているのですが、それでも、安藤純という人物が長い間苦悩を抱えてきたことや、今もなお苦痛を感じ続けていることがよく伝わってきます

そしてさらに、普段から感情を表に出さない人物だからこそ、堰を切ったように何かが内側から溢れ出てしまう場面では、観客は大きく感情を動かされてしまうのです。非常に難しい役どころだったと思いますが、「安藤純」という存在を見事に成り立たせていたと感じました。

また、決して主人公的な立ち位置ではないものの、前田旺志郎が演じる亮平も、とても良い存在感を出していたと思います。思い返してみると、物語の重要な場面には大体亮平が絡んでくると言っていいでしょう。安藤と三浦が付き合うことになったのも、絶望のどん底に突き落とされた安藤が学校に戻ってこられたのも、三浦の“魂の演説”が成立したのも、すべて亮平の奮闘あってのものです。物語を成立させるために必要不可欠な「狂言回し」でありつつ、キャラクターとしても魅力を放つ、存在感に溢れる人物でした

いか

「奮闘」って言葉を使ったけど、全然「奮闘」してる感じを出さないのもいいよね

犀川後藤

「当たり前のことをしてますけど何か?」みたいな飄々とした雰囲気が絶妙って感じ

そして、物語の序盤では重要な存在だなんてまったく思ってもいなかった小野もまた、ラストに至る展開で非常に重要な役回りを演じるキャラクターだと言えます。

先述した表現に倣って書くと、小野が抱く「偏見」は、「問題は問題だよね、俺には関係ないけど」というスタンスであり、世間一般とも三浦紗枝とも違うものでした。字面だけで判断すると、メチャクチャ酷いスタンスに感じられるだろうし、実際のところ、冒頭からずっと「小野は酷い奴」という描かれ方がされるので、さらにその印象を補強すると言えるでしょう。

しかし、映画を最後まで観るとかなり印象が変わります。彼の「俺には関係ないけど」というスタンスは決して、「興味がない」という意味ではなく、「俺はその問題が重要だなんて思ってない」という宣言なのです。そう捉えると、三浦が示した「問題は問題だよね、私の問題でもあるけど」とはまた違った形での「『無意識の偏見』の乗り越え方」であるように感じられました。

犀川後藤

小野を「酷い奴」って捉えるのは、「解像度が低い」って感じするから、自分もまだまだだなって反省した

いか

こういう経験を積み重ねることで、より「想像力」を強化していくしかないんだよね

設定・展開・キャラクター・演技などなど、すべての要素が私にとっては素敵な映画でした

あと、どうでもいい話ですが、エンドロールを観て驚いたことを2つ挙げてこの記事を終わりにしようと思います。

まず、「誠」という人物を演じた役者について。まさか今井翼だとは。主要なキャストの1人として結構映画の中に出てくるのですが、エンドロールを観るまで今井翼だと気づきませんでした。ホント驚いたなぁ。

あと、磯村勇斗にも気づきませんでした。ってか、使い方が贅沢すぎるだろ。

出演:神尾楓珠, 出演:山田杏奈, 出演:前田旺志郎, 出演:三浦獠太, 出演:池田朱那, 出演:渡辺大知, 出演:三浦透子, 出演:磯村勇斗, 出演:山口紗弥加, 出演:今井翼, Writer:草野翔吾, 監督:草野翔吾, クリエイター:「彼女が好きなものは」製作委員会
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最後に

さて最後に、私がこの記事で映画の「核となるテーマ」に触れなかった理由について書きたいと思います。

映画のストーリーを知っている人がこの記事を読んでくれていたとしたら、当然触れるべき部分に触れていないことに驚くかもしれません

いか

この映画について調べれば、間違いなく触れられているだろうから、隠す必然性はまったくないんだけどね

犀川後藤

そうなんだけど、「私の記事で初めてこの映画の存在を知った」って人もゼロではないはずと期待したい気持ちもあるのよ

もしかしたら、「核となるテーマ」に触れていないことを、「偏見」と受け取る方もいるかもしれません。「私がそれを『マイナスのもの』と捉えており、それに触れることで映画に対する興味を失わせる可能性があると考えている」みたいに解釈する方もいるだろうと思います。

しかし決してそうではありません。私がそれに触れないと決めた理由は、この映画のタイトルと関係があります

この映画には原作があるのですが、映画のタイトルは、その原作タイトルの一部で、原作タイトルそのものではありません。映画制作側には、原作タイトルの一部を削った意図があるはずです。そして、私はその意図を勝手に、「『普遍性のあるもの』を描こうとしたから」だと考えています。原作タイトルをそのまま使ってしまうと、「普遍性のあるもの」として作品が受け取られない可能性があると考えて、映画の方は『彼女が好きなものは』というタイトルにしたのだと私は解釈しているのです。そして、その解釈が正しいと仮定して、私もそれに倣って「普遍性のあるもの」としてこの作品を紹介したいと考えました

そんなわけで、なかなかそんな人はいないと思いますが、もしこの記事を「映画の中身を知らない状態」で読んでくれている人がいるのであれば、これ以降一切何も調べない状態で映画を観ても面白いでしょう。調べればどんなことでもあらかじめ分かってしまう世の中で、「まっさらな状態で作品と向き合うこと」はなかなか難しくなっています。そんな出会い方が面白いと感じられる方は、是非余計なことを調べずにこの作品を観てください。

そして、その「普遍性」を体感してほしいと思っています。

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