【情熱】映画『パッドマン』から、女性への偏見が色濃く残る現実と、それを打ち破ったパワーを知る

目次

はじめに

この記事で取り上げる映画

「パッドマン 5億人の女性を救った男」公式HP

この映画をガイドにしながら記事を書いていきます

今どこで観れるのか?

Netflix

この記事の3つの要点

  • 2001年が舞台だとは思えない偏見に満ちた世界と、そこで苦しむ女性の現実
  • 妻のために行動を起こした主人公はなんと、妻に敬遠されてしまう
  • 億万長者の可能性を捨てて、社会問題解決のために尽力した凄まじさ

最終的に「国連」まで登場する壮大さで、映画を見れば彼の凄さが理解できることでしょう

自己紹介記事

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「生理用ナプキン」の開発に挑んだインド人男性の実話から、「誰かのための人生」を考える

何も知らずに観ても非常に面白い作品だが、この作品の一番の凄さは、実話を基にした物語という点にある。

2時間20分の映画はほぼ全編、生理用ナプキンを開発する”だけ”で終わる。しかし最終的に「国連」まで登場するほどスケールは大きい。

さらに、この物語の舞台が2001年であることにも驚かされた。まずはその辺りの「前時代感」について説明することにしよう。

「2001年のインド」が舞台であることに驚愕させられる

舞台は、2001年のインド。たかだか20年ほど前の話だ。それにしてはあまりにも「前時代的」すぎて驚いた。

物語の舞台は恐らく、インドの田舎なのだろう。都会も同じ状況だとはとても思えないが、しかし田舎の話だとしてもびっくりだ。なにせ2001年当時、インドの女性は生理期間中、5日間も「家の外」で過ごさなければならない、というのだから。

「生理」は”穢れ”と呼ばれ忌み嫌われている。話題に出すことも憚れる雰囲気があり、生理になった女性は、とにかく有無を言わさずに建物の外に出て時が過ぎるのを待つしかない。

100歩譲って、「外で過ごさなければならないこと」を許容するとしても、「出血を拭うのが汚れた布である」という事実は受け入れがたい。それどころか、灰・砂・枯葉などに経血を吸収させることもあるのだという。なかなかに衝撃の実態だ。

この映画の主人公であるラクシュミ(モデルになったのはムルカナンダムという人物だが、映画では名前が変わっている)は、妻が汚れた布を使っていることを心配した。医者に聞くとやはり、灰や汚れた布を使えば病気になる可能性は高まるし、不妊になるケースだってあるという

実情を知ったラクシュミは薬局で生理用ナプキンを購入するが、55ルピーもした。調べてみると、日本の価値で考えた場合1000円程度になるという。庶民にはとても手の出ない高級品であり、妻が高すぎるから返品してきてと言うほどだった

これがこの映画の舞台である。そしてラクシュミは、周囲の猛反対を押しのけて「安価で手に入る生理用ナプキン」の開発に挑み、副題の通り「5億人の女性を救った」のだ。

現代においても、迷信や信仰などにより、まったく不合理でしかない考えが定着していることはあるだろう。この映画を観ながら私は、以前なにかで見聞きしたアフリカの話を思い出した。いつの時代のことか忘れたが、エイズが蔓延するどこかの国でコンドームの使い方を教える講習を行っていた時の話だ。

講習では実際にコンドームの装着を実演するわけにはいかないので、指にはめて使い方を説明した。しかしその講習を受けた人は、「指にはめればエイズにならない」と、まるでおまじないのようなものだと受け取り、結果的にその講習はまったく意味をなさなかったという。我々からすれば笑い話にしか思えないが、それぐらい物事の捉え方には差があるというわけだ。

もちろんこのようなことは、決して発展途上国だけの問題ではないだろう。例えば、先進国であればあるほど、様々なダイエット法が日々生まれては消えていく。冷静に考えれば、「適切に食べ、適切に運動する」以外のダイエット法など存在しないだろう。しかし皆、「少しでも楽に痩せられる方法があるはずだ」と信じたいと思っているし、だからこそ正攻法ではないやり方に色々と手を出しては恐らく失敗している。

私からすれば、「生理を”穢れ”と呼んで邪険に扱うこと」と「手当たり次第様々なダイエット法を試すこと」に大差はない。「インドはなんて遅れてるんだ」と受け取るだけでは何の意味もないと思う。

自分が「当たり前だ」と考えていることが、外から見ればまったく当たり前ではないという状況は多々あるものだ。自分のこととなるとなかなか客観視しにくいが、この映画をきっかけに立ち止まって自分の振る舞いに気をつけてみるのもいいだろう。

主人公の「行動力」と「ある決断」が凄まじい

さて、先程少し触れた通り、ラクシュミは妻のために生理用ナプキンの開発を決意をする。

しかしこれは、田舎で大騒動を巻き起こしてしまう

そもそも「生理」は”穢れ”、つまりタブー扱いである。女性同士でさえそうなのだから、「生理」について男性が言及するなどまずあり得ない話だ。しかもただ話題に出すだけではなく、生理用ナプキンを作るというのである。ラクシュミは自分で使用感を試せないのだから、当然、誰かに使ってもらうしかない。

もちろん最初は妻に頼んだ。しかし妻は、数回使って止めてしまった。作り始めたばかりで出来が良くなかったからだ。それを知ってラクシュミはさらに改良に取り組むのだが、改めて妻に使ってもらえるよう頼むと、「生理を話題にすること自体が恥だから、もうそんなことに関わらないでくれ」と拒否されてしまう。

しかしラクシュミは諦めない。医大の女学生に話を持ちかけたり、初めて生理を経験する近所の女の子に自作のナプキンを渡したりしていたのだが、そんな行動が噂となって広まり、ラクシュミは「イカれた人物」と見なされてしまうことになるのだ。

それでも決して諦めなかったラクシュミは、村からも妻からも離れて1人ナプキン作りの道を爆走していくことになる。その行動力たるや、驚くべきものだ。妻のために始めたことなのに、妻から敬遠されてもその歩みを止めなかったのだから、尋常ではないだろう

そして彼の凄さは行動力だけではない。

この記事では詳しく触れないが、生理用ナプキン開発の道を突き進んだ彼の前に、ある時、億万長者も夢ではない選択肢が現れる。しかし彼は、自分が金銭的に豊かになる道を選ばず、より正しいと思える選択をした。

そしてその結果、5億人の女性が救われることになったのだ。

この「5億人」という数字は、インドの女性人口を示している。そう考えると、ラクシュミが救ったのは「5億人」どころではないだろう。というのも彼が生み出した仕組みは、「経済的な理由で生理用ナプキンを手に入れられない女性」だけではなく、「仕事が無いために自立できない女性」をも救う可能性を秘めているし、当然、インド国外でも通用するからだ。映画を見れば、「国連」が登場する理由も納得だろう

とんでもない人物がいたものだと感じる。

主人公の生き様から、「どう生きるか」を考える

先述した通り、ラクシュミは億万長者になれる可能性があった。そうではない決断をする彼に、もったいないと感じる人もいるかもしれない。

しかしラクシュミは、後半になればなるほど、つまり、億万長者の可能性を手放してからの方が、より楽しそうに活き活きしているように見えた。この感覚は、私も理解できるように思う。

私は、「お金がたくさんあることで実現可能なこと」にさほど関心はない。もちろん、生活が苦しくない程度にお金はあってほしい。しかしそれ以上にお金を持っていても、恐らく使い途はない。それどころか、「自分が有しているお金が奪われるかもしれない」という怖さから、あまり穏やかに生きられないかもしれないとさえ考えてしまう。

ラクシュミも、豪邸に住むとか、高級な料理を食べるとか、豪勢な旅をするみたいなことに興味はなかっただろう。それより彼には、「世界を変える」ことの方が楽しかったはずだ。自分の努力によって、昨日までとは違う世界を夢見ることができるのだから。

実際映画の中で、ラクシュミが「ニューヨーク・タイムズ」や「LIFE」などの表紙を飾る場面が出てくる。彼の挑戦は、世の中から正しく評価されていると言っていいだろう。しかし、そのような「大きな評価」さえ、ラクシュミにとっては大した出来事ではなかっただろうと思う。

何よりも、大変な状況にいる人たちが救われること。ラクシュミの関心はその1点に集約されていたのではないだろうか。

以前何かの本で、欧米の若者の就職事情について読んだ記憶がある。そこには、大企業の内定を蹴ってNPOなどに飛び込んでいく若者が増えている、と書かれていた。恐らくラクシュミと同じように、金儲けではなく社会問題の解決のために自分の能力を発揮したい、と考える者が増えてきているという証だろうと思う。

お金があることで可能になることもあるし、それで世界を変えられるならもちろんそれもいい。しかし一方で、お金があっても情熱がなければ実現できないことも世の中にはたくさんある。まさにラクシュミは、情熱で世界を変えたと言っていいだろう。

そんな生き方が出来るなら理想的だと感じさせられた

最後に

私たちが知らないだけで、世界にはまだまだ、様々な偏見によって苦しめられている人たちがたくさんいるはずだ

ラクシュミのように生きられる自信はないが、こうやってラクシュミの物語を知って伝える努力ぐらいならできる。どんな問題も「知ること」によってしか始まらないし、さらにそれを誰かに「伝えること」もまた重要な役割と言っていいだろう

これからも、「凄い人」の逸話や、世界中に存在する様々な問題などを知った際には、こうやって伝える努力をしていきたいと思う。

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