目次
はじめに
出演:カーレ・ヘーデブラント, 出演:リーナ・レアンデション, 出演:ペール・ラグナル, 監督:トーマス・アルフレッドソン
ポチップ
この記事で取り上げる映画
VIDEO
この映画をガイドにしながら記事を書いていくようだよ
今どこで観れるのか?
この記事で伝えたいこと
「生存」のために「他者の命」を奪わなければならない人生の悲哀を想像させられる
それは、「欲望の追求が孤立を生む」という現代性とも通ずる部分があると思う
この記事の3つの要点
「小児性愛者」や「依存症」など、「生き延びるために必要なもの」が「犯罪」であることの苦しみ 「欲望の追求」が「孤立を加速させる」世の中で、私たちはどう生きるべきか? 主人公・エリの壮絶な人生と、「パパ」と呼ばれる人物の来歴を想像する
映画鑑賞時には、あの「モザイク」がまさかこれほどの「改悪」を意味していたとは気づかなかった
自己紹介記事
ルシルナ
はじめまして | ルシルナ
ブログ「ルシルナ」の犀川後藤の自己紹介記事です。ここでは、「これまでのこと」「本のこと」「映画のこと」に分けて書いています。
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どんな人間がこの記事を書いているのかは、上の自己紹介記事をご覧ください
記事中の引用は、映画館で取ったメモを参考にしているので、正確なものではありません
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『ぼくのエリ』は、このプレチケの企画で鑑賞した映画です 。タイトルと「評価が高いこと」をなんとなく知っていたので観たのですが、なんだか凄い映画でした 。「SF」と呼んでいい設定の作品ですが、「『生き延びるために必要なもの』が他人に共感されない苦痛」を強く描き出す作品 でもあると思います。
そういう意味で、この映画が描き出す人生は決して「他人事」ではない という風に感じました。
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映画の設定を、私たちが生きる世界の中でリアルに置き換えるとしたら、「小児性愛者」が一番分かりやすかったんだよね
ただ、「小児性愛者」の話をするのもちょっとどうかなと思うので、別の例を考えてみました。少し状況は異なると思いますが、いわゆる「依存症」は、この映画が示唆する状況と似たようなもの と言えるかもしれません。
例えば、「万引き依存症 」と呼ばれるものがあります。その名の通り、「常習的に万引きをしてしまう」という病 で、「クレプトマニア」とも呼ばれているそうです。女子マラソン元日本代表の原裕美子さんがこの「万引き依存症」に苦しんでいたと報じられたことでその存在を知ったという方も多いかもしれません。
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「万引き」は明らかに犯罪です 。しかしその犯罪行為が、自分では止めるられないほどに習慣化されてしまっています 。それはやはり相当辛い状況でしょう。「依存症」は全般的に「病気」と判断されるはずなので、「自分が生存するためにどうしても必要だと感じること」ではないのですが、私が何を言いたいかはなんとなく理解してもらえるのではないかと思います。
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万引きしたいかどうかはともかく、「『万引き』無しでは生活が成り立たない」ような状況 に彼らは既にいるのでしょう。恐らく、万引きが良くない行為だということも、自分がマズい状態にいることも理解できているのだと思います。しかしそれでも、万引きする手を止められない のです。
また、もう少し話の規模を小さくすれば、「スケートボードをしたいが、練習に最適な公園での走行は他人の邪魔になる 」「楽器を演奏したいが、マンションなので近所迷惑になる 」など、「自身の欲望・希望」が「他人の迷惑」になってしまう状況は多々存在します。
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映画で描かれるエリは、まさにその究極的な存在 だと言っていいでしょう。彼女にとって「生き延びること」は、「他者を死に至らしめること」と同義 だからです。それは本当に、凄まじい状況だと感じます。
自分の人生のために誰かの労力を煩わせることが凄く嫌いだから、私なら耐えられないと思う
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「他者と『欲望の感覚』が合わないこと」の絶望
さて、エリが置かれている状況はあまりにも特殊 なので、もう少し状況を広く捉えてみることにしましょう。
エリは、その特殊な生き方故に、「他者と分かり合う」という感覚になかなか行き着けない だろうと思います。「彼女にとって大事なもの」について焦点を当てれば当てるほど、周囲の人とまったく話が合わなくなってしまう からです。
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そしてこれは、現代でも同じような状況が多々存在する でしょう。
かつて同じ職場で働いていたオタクの女性が、とても面白いことを言っていました。自分が熱弁したいオタクの話は、それに関する知識をまったく持っていない人としたい 、というのです。私はまったくオタク的な知識のない人間で、そういう意味で彼女の話し相手としてはうってつけだったと思います。
なぜ彼女はそんな風に考えていたのでしょうか。それは、「同じアニメ・ゲーム・マンガが好きだったとしても、その『好きポイント』までピッタリ重なることはまずないから 」だそうです。同じ趣味を持つ者同士であればあるほど、「私はこれのここが好き」というポイントを明確に持っているのだと思います。そして、よほど運が良くない限り、そのポイントまで一致することは稀でしょう。彼女は、「同じものが好きでも、その『好きなポイント』について口論になったりする 」みたいにも言っていました。だから私のような、何も知らない人間に熱弁する方がいいのだ 、と。
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この話を聞いたのは、もう15年以上も前のことだけど、未だに印象的なエピソードとして覚えてるんだよなぁ
その子は大分変わってたから、これは一般的に賛同される感覚ではないかもしれないけどね
あるいは、最近よく飲みに行く女の子とも、「趣味で人と繋がりたくない」という話をして、とても共感した ことを覚えています。「結局趣味で繋がる関係性はつまらない」という感覚は、私もずっと持っていたのです。
これらの話は、「自分の『好き』を突き詰めれば突き詰めるほど孤立する 」という風にまとめられるでしょう。そして、そのような感覚を抱く人は結構いるのではないか と思っています。
この場合、「欲望を追求して孤立する 」か、「孤立しないために欲望の追求を諦める (or欲望を追求していると口にしない)」かという選択肢が生まれるでしょう。最近では、「推しのために生きている」など、「欲望の追求」が「人生の主目的」みたいになっている人もたくさんいると思います。そして、そういう人にとって「欲望の追求」は「生存」に直結する はずです。だから、「孤立を恐れて欲望の追求を止める」なんて選択肢はあり得ません。
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こんな風に考えてみると、エリの「孤独」がとてもリアルなものに感じられるのではないか と思います。
「君は何者?」 「あなたと同じ」 「ぼくは殺さない」 「でも、殺したいと思ってるでしょ? 相手を殺したいと思ってでも生き延びたいと」 「うん」
私を含めた多くの人は、とても幸運なことに、「欲望の追求」が「他者の命を奪うこと」に直結するような人生を歩んではいない でしょう。だから、この映画で描かれるような困難に直面することもありません。ただ、エリと同じということはまずあり得ないにせよ、世の中には、エリと同じような苦境に立たされてしまっている人も決して少なくはないはずです 。
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「欲望の追求は生存に必要」って切実さが伝わらないと、「生きるのに必要ないだろ」みたいな想像力に欠く意見が出てきちゃうよね
「他者に迷惑を掛けること」は非難しつつ、「欲望の追求は重要だ」ってことは認めてあげないとだよなぁ
では、この映画のように、「『欲望の追求』が『他者を滅ぼすこと』に直結する者」と同じ社会に生きなければならない場合、私たちは、どう共存すべきなのでしょうか ?
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映画の感想
ここまでは一応伏せてきましたが、エリが「ヴァンパイア」であることはかなり有名な事実だと思う ので、ここからはその点を隠さずに記事を書いていこうと思います。副題の「200歳の少女」というのも、彼女がヴァンパイアであることを間接的に示唆すると言えるでしょう。
スウェーデン映画である『ぼくのエリ』の原題 はもちろんスウェーデン語なのですが、恐らくそれをそのまま英訳したのだろう英題が『Let the Right One In』 です。グーグル翻訳に突っ込んでみると、「正しいものを入れましょう 」となったので、私は、「人間が食べるものではなく、血を取り込みましょう」という意味だと思い 、凄いタイトルをつけたものだと感じました。
まあ、この解釈はこの解釈で悪くないような気もするけどね
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この『Let the Right One In』は実際には、「正しい者を招き入れよ」と訳す のだそうです。ヴァンパイアには「許可を得ないと部屋に入れない」という設定がある らしく、映画の中でも、エリが「『入っていい』って言って」と口にする場面 があります。ヴァンパイアについて詳しくなかった私には謎のシーンでしたが、後で調べて理解できました。そしてそのような設定がタイトルに反映されているというわけです。
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邦題からは伝わりませんが、英題がこのような意味であることからも、「エリがヴァンパイアであること」は「既成の事実」として展開される物語 だと考えていいでしょう。
さて、この映画の日本版には、もの凄く批判されるポイントがある のですが、私は映画を観終えてからしばらくの間その事実を知りませんでした。というわけで、その点については最後に触れるとして、まずは映画を観て私が感じたことについて書いていきたい と思います。
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ってか、この記事書くためにさっき作品について調べてたら、その「批判」の話が目に入ったのよね
全然知らなかったけど、その「改変」はダメだろって思っちゃうよね
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さて、その辺りのことは実際に映画を観て体感してもらうとして、私が気になったのは、エリが「パパ」と呼ぶ人物 についてです。彼は一体何者なのか と、映画を観ながらずっと気になっていました。
割と早い段階で、「生物学的な父親ではないだろう 」と思いましたが、その確信が持てたのは、男が、
今夜はあの少年に会わないでくれ。頼む。
と口にしたシーンです。
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この場面の前後の展開を踏まえると、男にはなんらかの「予感」めいたものがあり、自身の「死」が避けられない状況にあると理解していた のだと思います。そして、そんな場面で彼は、明らかに「嫉妬」と解釈されるだろう言葉を口にする のです。
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もしそれが「嫉妬」なのだとすれば、考えられることは1つ、この男とエリは元々同年代だったということです 。男だけが年を取り、エリは年を取らないからこそ、このような「年齢差」になっているのでしょう。エリがある場面で、「12歳だよ、もうずっと昔から」と言っていること、エリに噛まれた女性の顛末、そして「200歳の少女」という副題のことを考え合わせると、エリは恐らく次のような設定なのだと思います 。
エリは12歳の頃にヴァンパイアに噛まれたが、一命を取り留めた。しかしそのせいで、自身もヴァンパイアになってしまい、年を取らない存在となる。エリはその時々で「自分を支えてくれる存在」を見つけ、運命共同体のとして共に生きてきた。そして、その「運命共同体」を定期的に取り替えながら、200年以上も生き延びている。
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ここを去って生き延びるか。 留まって死を迎えるか。
と書かれていました。エリと共に生きることは、流浪の人生を選ぶことでもあります 。エリの生活圏内では不審死が多発することになるので、一箇所に長く留まることは出来ません。だから、「ここを去って生き延びるか、留まって死を迎えるか」という決断が、エリと共に生きると決めた者にも突きつけられる ことになるのです。そして、その同じ紙に「ぼくのエリ」と書かれており、これが邦題の元になったのだと思います。
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つまり、『ぼくのエリ』という映画をシンプルに要約すると、「運命共同体を喪ったエリが、新たにオスカー少年に目をつける」となる と思います。しかし、そういう”打算的な”雰囲気を一切感じさせない作品に仕上がっていると私は感じました。なかなか絶妙なバランスで成立している、奇跡的な傑作 だと思います。
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さて、先程予告しておいた、「日本版に対する批判 」の話に触れて、この記事を終えることにしましょう。
映画の中で一箇所、モザイクが掛けられているシーン がありました。裸のエリの股間の部分です 。普通に観ていると、「そこまで過敏にならなくてもいいと思うけど、まあモザイクが必要だと判断したのか 」ぐらいに感じるでしょう。私も、そんな風に考えて、特になんとも思いませんでした。
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しかし実は、このモザイク、作品の本質を根本から変えてしまっています 。スウェーデンで上映されたモザイク無し版では、エリの股間には「男性器が去勢された傷跡」が映し出されている そうです。つまりエリは、「女性」ではなく「男性」 だということになります。このことを知ると、「200歳の少女」という副題に悪意を感じる でしょう。明らかに、「エリは女性である」と観客にミスリードさせようとしているとしか思えないからです。
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誰がどういう判断でこんなことをしたのか謎すぎるけど、監督はOK出したのかな?
出してないはずはないと思うけど、「その『改悪』を受け入れなければ日本での上映はできない」みたいな状況だったのかなぁ
エリが男性であり、そのことをオスカー少年が知った上で逃避行を決断するとなれば、物語はより高い次元のものとして受け取られるでしょう 。単なるボーイ・ミーツ・ガールではなく、あらゆる違いや困難を乗り越えた上での凄まじい決断 であることが伝わってくるからです。何故、その物語を敢えて覆い隠そうとするような「改悪」がなされたのかは分かりませんが、日本で上映された2010年時点ではまだ、今ほど同性愛的なものが受け入れられているとは言えなかったのかもしれません。しかしそうだとしても、私がこの映画を観たのは2022年であり、現代に合わせてモザイクを取るという判断も出来たのではないか と考えてしまいます。
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この作品が示唆する非常に重要メッセージを、モザイクと副題で完全に抹殺した事実は、とても罪深い ものに感じられました。
出演:カーレ・ヘーデブラント, 出演:リーナ・レアンデション, 出演:ペール・ラグナル, 監督:トーマス・アルフレッドソン
ポチップ
最後に
何が起こるのか予想もつかない展開と、「純愛」と呼ぶべきなのか悩ましい2人の関係性がとても素晴らしい作品でした 。「残酷さ」と「美しさ」を共に前面に押し出しながら、「生き延びることの葛藤」を真正面から描き出す名作 です。
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【異様】西成のあいりん地区を舞台にした映画『解放区』は、リアルとフェイクの境界が歪んでいる
ドキュメンタリー映画だと思って観に行った『解放区』は、実際にはフィクションだったが、大阪市・西成区を舞台にしていることも相まって、ドキュメンタリー感がとても強い。作品から放たれる「異様さ」が凄まじく、「自分は何を観せられているんだろう」という感覚に襲われた
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【考察】映画『哀愁しんでれら』から、「正しい」より「間違ってはいない」を選んでしまう人生を考える
「シンデレラストーリー」の「その後」を残酷に描き出す映画『哀愁しんでれら』は、「幸せになりたい」という気持ちが結果として「幸せ」を遠ざけてしまう現実を描き出す。「正しい/間違ってはいない」「幸せ/不幸せではない」を区別せずに行動した結果としての悲惨な結末
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【あらすじ】映画『1917』は、ワンカット風の凄まじい撮影手法が「戦場の壮絶な重圧」を見事に体感させる
映画『1917 命をかけた伝令』は、「全編ワンカット風」という凄まじい撮影手法で注目されたが、私は、その撮影手法が「戦場における緊迫感」を見事に増幅させているという点に驚かされた。「物語の中身」と「撮影手法」が素晴らしく合致したとんでもない作品だ
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【驚嘆】「現在は森でキノコ狩り」と噂の天才”変人”数学者ペレルマンの「ポアンカレ予想証明」に至る生…
数学界の超難問ポアンカレ予想を解決したが、100万ドルの賞金を断り、ノーベル賞級の栄誉も辞退した天才数学者ペレルマンの生涯を描く評伝『完全なる証明』。数学に関する記述はほぼなく、ソ連で生まれ育った1人の「ギフテッド」の苦悩に満ちた人生を丁寧に描き出す1冊
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【考察】ヨネダコウ『囀る鳥は羽ばたかない』は、BLの枠組みの中で「歪んだ人間」をリアルに描き出す
2巻までしか読んでいないが、ヨネダコウのマンガ『囀る鳥は羽ばたかない』は、「ヤクザ」「BL」という使い古されたフォーマットを使って、異次元の物語を紡ぎ出す作品だ。BLだが、BLという外枠を脇役にしてしまう矢代という歪んだ男の存在感が凄まじい。
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おげれつたなか『エスケープジャーニー』は、「BLでしか描けない関係性」が素晴らしい。友達なら完璧だったのに、「恋人」ではまったく上手く行かなくなってしまった直人と太一の葛藤を通じて、「進んでも行き止まり」である関係にどう向き合うか考えさせられる
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【感想】映画『窓辺にて』(今泉力哉監督)の稲垣吾郎の役に超共感。「好きとは何か」が分からない人へ
映画『窓辺にて』(今泉力哉監督)は、稲垣吾郎演じる主人公・市川茂巳が素晴らしかった。一般的には、彼の葛藤はまったく共感されないし、私もそのことは理解している。ただ私は、とにかく市川茂巳にもの凄く共感してしまった。「誰かを好きになること」に迷うすべての人に観てほしい
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【魅惑】バーバラ・ローデン監督・脚本・主演の映画『WANDA』の、70年代の作品とは思えない今感
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【あらすじ】ムロツヨシ主演映画『神は見返りを求める』の、”善意”が”悪意”に豹変するリアルが凄まじい
ムロツヨシ演じる田母神が「お人好し」から「復讐の権化」に豹変する映画『神は見返りを求める』。「こういう状況は、実際に世界中で起こっているだろう」と感じさせるリアリティが見事な作品だった。「善意」があっさりと踏みにじられる世界を、私たちは受け容れるべきだろうか?
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【感想】阿部サダヲが狂気を怪演。映画『死刑にいたる病』が突きつける「生きるのに必要なもの」の違い
サイコパスの連続殺人鬼・榛村大和を阿部サダヲが演じる映画『死刑にいたる病』は、「生きていくのに必要なもの」について考えさせる映画でもある。目に光を感じさせない阿部サダヲの演技が、リアリティを感じにくい「榛村大和」という人物を見事に屹立させる素晴らしい映画
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【あらすじ】嵐莉菜主演映画『マイスモールランド』は、日本の難民問題とクルド人の現状、入管の酷さを描く
映画『マイスモールランド』はフィクションではあるが、「日本に住む難民の厳しい現実」をリアルに描き出す作品だ。『東京クルド』『牛久』などのドキュメンタリー映画を観て「知識」としては知っていた「現実」が、当事者にどれほどの苦しみを与えるのか想像させられた
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【差別】映画『チェチェンへようこそ ゲイの粛清』の衝撃。プーチンが支持する国の蛮行・LGBT狩り
プーチン大統領の後ろ盾を得て独裁を維持しているチェチェン共和国。その国で「ゲイ狩り」と呼ぶしかない異常事態が継続している。映画『チェチェンへようこそ ゲイの粛清』は、そんな現実を命がけで映し出し、「現代版ホロコースト」に立ち向かう支援団体の奮闘も描く作品
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「水墨画」という、多くの人にとって馴染みが無いだろう芸術を題材に据えた小説『線は、僕を描く』は、青春の葛藤と創作の苦悩を描き出す作品だ。「未経験のど素人である主人公が、巨匠の孫娘と勝負する」という、普通ならあり得ない展開をリアルに感じさせる設定が見事
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のん(能年玲奈)脚本・監督・主演の映画『Ribbon』。とても好きな作品だった。単に女優・のんが素晴らしいというだけではなく、コロナ禍によって炙り出された「生きていくのに必要なもの」の違いに焦点を当て、「魂を生き延びさせる行為」が制約される現実を切り取る感じが見事
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【現実】権力を乱用する中国ナチスへの抵抗の最前線・香港の民主化デモを映す衝撃の映画『時代革命』
2019年に起こった、逃亡犯条例改正案への反対運動として始まった香港の民主化デモ。その最初期からデモ参加者たちの姿をカメラに収め続けた。映画『時代革命』は、最初から最後まで「衝撃映像」しかない凄まじい作品だ。この現実は決して、「対岸の火事」ではない
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1964年の東京オリンピックを機に建設された「都営霞ケ丘アパート」は、東京オリンピック2020を理由に解体が決まり、長年住み続けた高齢の住民に退去が告げられた。「公共の利益」と「個人の権利」の狭間で翻弄される人々の姿を淡々と映し出し、静かに「社会の在り方」を問う映画
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映画『食の安全を守る人々』では、世界的バイオ企業「モンサント社」が作る除草剤「ラウンドアップ」の問題を中心に、「食の安全」の現状が映し出される。遺伝子組み換え作物や輸入作物の残留農薬など、我々が口にしているものの「実態」を理解しよう
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【危機】シードバンクを設立し世界の農業を変革した伝説の植物学者・スコウマンの生涯と作物の多様性:…
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私は学生時代ずっと国語の授業が嫌いでしたが、それは「作品の解釈には正解がある」という決めつけが受け入れ難かったからです。詩人・渡邊十絲子の『今を生きるための現代詩』を読むと、詩に限らずどんな作品も、「解釈など不要」「分からなければ分からないままでいい」と思えるようになる
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ルシルナ
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ルシルナは、4000冊以上の本と500本以上の映画をベースに、生き方や教養について書いていきます。ルシルナでは36個のタグを用意しており、興味・関心から記事を選びやすく…
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