目次
はじめに
この記事で取り上げる本
著:ヨネダコウ
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ポチップ
この記事で伝えたいこと
「同性愛者がほぼ登場しないBL」という奇天烈な物語を成り立たせる、矢代という狂気的な男
矢代を中心に、「結果としてBL的な展開が生まれる」ような構成が凄まじい
この記事の3つの要点
- 「暴力的に扱われたい」という欲望のみを規範にヤクザの世界で成り上がる矢代
- BLでありながら、「相手に対する強い情欲」をまったく持たない矢代を中心に物語を成立させる凄まじさ
- 矢代の過去が深掘りされることで彼の存在の輪郭が濃くなり、それが作品全体のリアリティとなっている
「BLを成立させるためのあらゆる要素」を取り払ったかのようなBLマンガが描く「繊細な人間関係」が素晴らしい
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ヨネダコウ『囀る鳥は羽ばたかない』は、現時点でシリーズ7巻まで発売されているBLマンガだ。ヤクザの世界を舞台に、男たちの歪んだ人間関係と欲望を描き出す作品である。
ヨネダコウは『どうしても触れたくない』も読んだけど、大分作風に振れ幅があるね
そしてamazonで見る限り、ヨネダコウの作品、どれも星の評価が高い
著:ヨネダコウ
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ポチップ
さて、私はこの『囀る鳥は羽ばたかない』を2巻までしか読んでいない。つまりこの記事も、2巻までの内容にしか触れていないというわけだ。いずれ読み進めたい気持ちはあるが、当面ちょっと読む余裕がなさそうである。とりあえず、2巻までの感想だということだけ理解しておいてほしい。
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もの凄く歪んだ男だ。そしてだからこそ、『囀る鳥は羽ばたかない』にも矢代という男にも興味が持てる。私は、「歪んだ人間」にとても関心があるからだ。日常的に関わる人の場合でも、「どこかしら歪んだ部分を抱えている人」でないとなかなか興味が持てない。だから物語のような、「自分とは関係のない世界」と感じられるものであれば特に、とことんまで歪み切っていてほしいと思う。
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お前、基本どーでもいい奴としかヤれねぇからな。
矢代は、とんでもなく歪みきっている。そして、歪みきっているからこそ、この作品が成立していると言っていい。というのも『囀る鳥は羽ばたかない』には、厳密な意味での「同性愛者」がほとんど出てこないのである。そのような設定の物語を「BL」として成立させる上で、矢代という男の存在は不可欠だ。
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矢代は、真誠会というヤクザの若頭であり、真誠興業の社長も務めている。容姿端麗、頭脳明晰であり、ヤクザの世界でも一目置かれる存在だ。しかしそんな矢代の「あだ名」はなかなか酷いものがある。「ドMで変態」「淫乱ネコ」「幹部の公衆便所」といった具合だ。これらは決して陰口ではない。矢代本人も、自分がそんな風に呼ばれていることを知っていて、許容しているのだ。
ゴミみたいな扱われ方と、ヤクザの若頭としての威厳ある存在感が、ギリギリ成立している気がしちゃうのが凄いよね
その2つが共存しちゃうのも、矢代の特異さだよなぁって思う
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そもそも矢代は、望んでヤクザになったわけではない。彼曰く、「そこにしか道が残されてないだけ」というわけだ。良かったのか悪かったのか、ヤクザが性に合っていたのだろう。彼は、その特異な性癖を武器にのし上がっていく。しかしだからといって、ヤクザの世界を駆け上がっていくことに関心があるわけでもない。
矢代が興味を抱けるのは、シモのことだけ。彼はいつだって、誰かにブチ込まれたいと思っている。犯されたい、殴られたい、罵倒されたい、タバコを押し付けられたい、そんな欲望に常に支配されているのだ。矢代というのは、そんな究極的に歪みきった男なのである。
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物語は「現在」を起点にして進んでいく。「現在」の矢代はというと、セックスの時だけは超絶ドMだが、普段は若頭としてクールに、時に凶暴ささえ身にまとうような雰囲気を醸し出している。しかし、少しずつ過去が明らかになり、「現在」とはまた違った矢代の姿が描かれる、というわけだ。
シンプルに「ハードモードの人生」って感じがするかな
当たり前だけど、あらゆる経験が「現在」の矢代を形作っていくよね
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そもそも矢代は同性愛者ではない。というか、男にも女にも大して興味を抱けずにいる。では、何故矢代は男に抱かれているのか。それは「男の方が乱暴に扱ってくれる」からだ。乱暴さの分だけ、矢代はより満足できる。相手がヤクザともなれば当然、より手荒に扱ってくれるというわけだ。そんな風にして矢代はヤクザの世界と関わりを持つようになり、「男に犯されながらヤクザの世界でのし上がる」という奇天烈な人生を歩むことになった。
これが『囀る鳥は羽ばたかない』の「特異点」なのである。
普通ではあり得ない世界を「リアル」に感じさせてしまう矢代の存在感
私はこれまで、その時々で自分の周りにいた腐女子の方に勧めてもらいながら、それなりにBL作品に触れてきた。数こそ多くはないが、ノンケの男としては結構読んでいる方だと思う。
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さて、これまでに私が読んできたBLには、当たり前だが「男のことが好きな男」が登場する。というか普通に考えれば、そうでなければ「BLの物語」は展開しないだろう。私は、「双方がどちらも同性愛者」という物語は好きではないので、「一方がノンケ、一方が同性愛者」という物語をメインに読んできた。だから余計にそう感じるのかもしれないが、「相手に対する強い情欲」を持つ人物が物語を駆動させるのが当たり前だと思っていたのである。
特に相手がノンケの場合、「相手からのアクションで関係が進展することはない」って考えるしかないからね
相手とどうにか関係を築きたいなら自分が動くしかない、ってことになるわけだ
しかし、『囀る鳥は羽ばたかない』はまったく異なる構造を持つ物語であり、まずそのことに驚かされた。矢代は「相手に対する強い情欲」など基本的にない。まったく無いわけではないのだが、それよりも「自分を痛めつけてくれる存在」を求める気持ちの方が強いのである。また、ヤクザたちが「自分は男のことなんか好きにならない」と確信していることも、矢代にとってプラスに働く。その方が、彼らの凶暴さが存分に発揮されるはずだからだ。だから矢代は積極的にヤクザに抱かれ、そうすることで自分の欲望を満たしてきた。
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何よりも、この設定で物語を成り立たせる腕力が凄まじいと感じた。
私が読んできたBLの多くは、「ノンケと同性愛者がギリギリの関係を成立させる」というその緊迫感やリアリティを見事に描き出していたと思う。それは、「解錠の手順を1つでも間違えると永久に開かなくなるからくり箱」のようなもので、BLという設定を使うことで、これほどまでに繊細な人間関係を描けるのかと感心させられた。
しかし『囀る鳥は羽ばたかない』では、中心となる矢代は誰に対しても情愛を抱かないし、矢代を抱く者たちも繊細さとは無縁のやり方で矢代と関わる。どちらの側も同性愛的な感覚を持たないまま、矢代という男の異常さに吸引されるようにして、あちこちで「男同士の関係」が出現するというわけだ。そしてそのような設定にも拘わらず、この物語もまた、「繊細な人間関係」を描き出すのである。「ヤクザ」と「BL」という、どちらも昔から存在する物語のフォーマットを異次元に組み合わせ、ありきたりではない形で「繊細さ」を切り取る構成に驚かされた。
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まあ、私がBL作品をそこまで読んでいないだけで、こういうフォーマットのBLは存在するのかもだけど
仮にそうだとしても、ヨネダコウがそのフォーマットをメチャクチャ良い形で使ったことは間違いないと思う
さて、私は男(しかもノンケ)なので、女性とは「BLの読み方」が異なるはずだ。「BL」はある種の「ファンタジー」で良いと感じる女性もいると思うが、私は何らかの「リアリティ」を求めてしまう。「『BL』という設定を借りなければ描けない『リアルな何か』が含まれていてほしい」と考えてしまうのだ。
そして私は、BLの「リアリティ」を「2人の関係性」から判断する。設定や展開がどれほどリアルからかけ離れていても、「ノンケと同性愛者の2人が、どのような葛藤を経てどういう地平へとたどり着くか」がリアルであれば「良い」と感じられるというわけだ。
一方『囀る鳥は羽ばたかない』においては、「リアリティ」の比重は「矢代という存在」にすべて掛かっていると言っていいだろうと思う。矢代がリアルな存在に感じられれば作品全体もリアルだし、矢代がリアルじゃなければ作品全体もリアルじゃないというわけだ。
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3巻以降どう物語が展開するのか分からないけど、矢代の場合、「誰かとの関係性」をリアルなものと捉えるのはかなり難しいからなぁ
まあ、「矢代という存在」のリアルさを考えるのもまた難しいけどね
「現代」の矢代しか描かれなければ、きっと私は矢代をリアルな存在だとは感じられなかっただろう。しかし、矢代の過去が描かれれば描かれるほど、矢代という人間の土台が少しずつ固定されていく。あまりにも「まとも」からかけ離れている矢代が歩んできた道筋を知ることで、「矢代がそうなってしまったのは必然だったのだ」という感覚になれるのである。
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「普通」を自認する人ほど、その人なりの「普通」から外れたものを許容しない印象あるからね
矢代の振る舞いは、あらゆる点で異常で異端で歪んでいる。狂気的だと言ってもいいだろう。しかし、そのような在り方は、捉え方次第でプラスにも変わる。結局のところ、接する側がどう見るかの話でしかないというわけだ。
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また、物語が展開するに従って、矢代を構成するあらゆる要素が「そうならざるを得なかったもの」であることが理解できるようになるだろう。普通に考えれば常軌を逸した無茶苦茶な言動にしか思えなくても、矢代の人生においては「他に選択肢はなかった」というわけだ。それらは、矢代という人物の捉え方を大きく変える要素となるだろう。単なる「異常者」として捉えるのではなく、壮絶な過去を背負って生きていることに対する同情のような気持ちが芽生えてくるはずだ。作中にも、矢代のそんな奥の奥を見透かしていると感じさせる人物が出てくる。
「歪み切った人間」という矢代に対する読者の感覚は、少しずつ変わっていくはずだ。彼がどんなものを抱えているのか知りたいという気持ちにさせられるし、それを知ることで、その歪みが一層愛すべきものであるように感じられもする。『囀る鳥は羽ばたかない』では、その「リアリティ」のすべてを担う矢代をとても複層的に描くことで、作品全体も非常に重厚でリアルなものに仕上がっていると感じた。
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また、他のBLとは違うのだろうと思う別のポイントとして、「中心となる関係性が存在しない」ことも挙げられる。私が読んできたBL作品の場合、「メインとなるカップル」の描写が7~8割に及ぶものが多かったと思う。BLというのは概ね、そのような作品だろう。しかし『囀る鳥は羽ばたかない』の場合、「矢代が中心にいる」ことは確かだが、「中心となる関係性」は存在しない。矢代の人間に対する関心は色んな形で描かれる。身体への興味、心への興味、あるいはそういうこととはかけ離れた無造作でオープンな関係など様々だ。また、矢代が間を取り持ったカップルの話や、ヤクザの世界についても描かれる。「矢代が中心にいる」だけで、「BL的な中心点を持たない」作品なのだ。
『囀る鳥は羽ばたかない』が実際にどのように構想されたのかは知らないが、読者の立場から想像すると、「『矢代』という人物について結果として、BL的な要素が出てこざるを得なくなった」という風に感じられるのではないかと思う。もちろん、その解釈は正しくないだろう。著者のヨネダコウはBLをメインに描く漫画家なので、最初から「BL作品」としてこのシリーズを構想したはずだ。しかし、そう思わせない不思議さがあるし、だからこそ展開も読めない。一般的なBLの場合、「着地点は決まっているが、そこにどう至るかの過程に複数の可能性が存在する」という印象がある。しかし『囀る鳥は羽ばたかない』の場合は、そもそも着地点がまったく見えない。そういう点でもBLらしくない作品であると感じさせられた。
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BLにさして触れた経験のない私の捉え方など浅いとは思うが、BLというジャンルにおいてもかなり「特異点」と言っていい作品なのではないだろうか。そんな風に思わされた。
著:ヨネダコウ
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ポチップ
最後に
いくつかの作品を読む中で、「BLという物語のフォーマットが持つ可能性」を実感させられてきたが、『囀る鳥は羽ばたかない』を読んでさらにそれが広がった気がする。BLはどうしても「エロいことをしているだけの物語」と受け取られがちだが、「BLでなければ描けない何か」を感じさせる物語も多い。著者の力量次第では、凄まじい物語として昇華される場合もあるというわけだ。
ヨネダコウは、まさにBLを至高の物語へと昇華させようとする漫画家だと思うし、その腕力に圧倒されるような作品だった。
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どんな理由があれ、法を犯した者は罰せられるべきだと思っている。しかしそれは、善悪の判断とは関係ない。映画『万引き家族』(是枝裕和監督)から、「国民の気分」によって「善悪」が決まる社会の是非と、「善悪の判断を保留する勇気」を持つ生き方について考える
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「近隣の村から『姥捨て』と非難される理想郷」を描き出す『でんでら国』は、「死ぬ直前まで、コミュニティの中で役割が存在する」という世界で展開される物語。「お金があっても決して豊かとは言えない」という感覚が少しずつ広まる中で、「本当の豊かさ」とは何かを考える
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一時期メディアを騒がせた、佐村河内守の「ゴースト問題」に、森達也が斬り込む。「耳は聴こえないのか?」「作曲はできるのか?」という疑惑を様々な角度から追及しつつ、森達也らしく「事実とは何か?」を問いかける『FAKE』から、「事実の捉え方」について考える
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