目次
はじめに
この記事で取り上げる本
著:ハウス加賀谷, 著:松本キック
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著:松本ハウス
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この記事で伝えたいこと
どんな人間関係にも振る舞い方の唯一解など無く、相手と向き合いながら正解を探るしかない
松本キックは、ネットや本からではなく、ハウス加賀谷との関わりの中で実地に接し方を学んだ
この記事の3つの要点
- 「良い子」の方が異常さに気づきにくいし、状況を悪化させてしまう
- 「優しさ」は時に相手の負担になる
- 「気を遣わない」という気の遣い方
松本キックは精神科医から「ナチュラル・カウンセラー」と評されるほど振る舞いが見事だそう
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「親の期待」が統合失調症引き起こす要因の1つだった
それだけが統合失調症の原因だなどと言うつもりはありませんが、ハウス加賀谷は「親からの期待に応えなければならない」という感覚をかなり強く持っていたと話しています。
でもぼくは、親のプレッシャーをすぐさま感じ取り、良い子にしようといつもしていた
『統合失調症がやってきた』(松本ハウス/幻冬舎)
良い子でいなければいけない、親を喜ばせなければいけない、そう思い返事をしていた
『統合失調症がやってきた』(松本ハウス/幻冬舎)
これは分かるなぁ、という感じがしました。私も正直、子ども時代はまったく同じように考えていたことを覚えています。
なので皆さんには是非、「子どもが優等生であればあるほど危険かもしれない」と認識してほしいのです。同じようなことは、『ヒキコモリ漂流記』(山田ルイ53世/KADOKAWA)の記事でも書いたことがあります。
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ハウス加賀谷もきっと同じだったはずだ、という考えで自身の話をしますが、「親に良い子だと思われること」ということが、子どもの頃の私には何よりも重要なことでした。何故そう思っていたのかは今では思い出せませんし、その当時聞かれたとしても答えられなかったかもしれません。とにかく、自分の言動は「良い子に見えるかどうか」で判断していたのです。
しかしやはりそれは大変なことでした。私は両親のことがあまり好きではなかったので、「好きだと思えない相手に対して良い子であるように振る舞う」というのは苦労したし、そもそもは自分の選択でそうしているだけなので、誰を恨むわけにもいきません。
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ハウス加賀谷もこんな風に言っています。
僕は小さい頃から、自分の正直な気持ちを口にしたことがない子供だった
『統合失調症がやってきた』(松本ハウス/幻冬舎)
「こういう言い方をしたら良い子ではなくなってしまう」という発言を自分で抑えてしまうので、必然的に「思ったことを言わない子ども」になってしまうのです。私も同じだったなと思います。
ハウス加賀谷や私のような人間は、「大人しくて手がかからない良い子」という風に親や大人から見られるし、それは「この子は放っておいても問題ない」という判断に繋がるでしょう。
だからこそ、そういう「良い子」の方が危ない、と私は思っています。
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手がかかる子どもの方が視界に入れておこうと思うだろうし、ちょっと変化に気づける可能性も高くなるでしょう。一方で、手のかからない子どもは放っておいても大丈夫だと思われるし、その間に状況が悪化してもその変化になかなか気づけない、ということになってしまうのです。
妹と弟の方が手のかかる子どもだったから、まさか長男の私が引きこもったりするとは思ってなかっただろうなぁ
統合失調症になるかどうかは他にも様々な要因があるでしょうから一概には言えませんが、「良い子であること」が何らかの形で変調に繋がってしまうことはあり得ると思っています。私は子どもを育てているわけではないので自分のこの経験を活かす場はありませんが、皆さんには是非、「良い子だからといって安心してはいけない」という感覚を持ってもらいたいです。
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「相談」について考える
本書を読んで改めて、「相談」について考えさせられました。ハウス加賀谷の相方である松本キックの振る舞いからそんな思考に至ったのですが、その松本キックの振る舞いについてはちょっと後で触れるとして、まずは自分の話をしましょう。
私は、自分で言うのもなんですが、相談相手として向いていると思っていて、頻繁にではありませんが、「カウンセラーみたいですね」「今すぐにでもカウンセラーになれますよ」みたいに言ってもらえることもあります。
そんな私が普段から意識しているのは、「いつでも相談して」みたいなことを言わないようにすることです。
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私は以前、ちょっとだけ引きこもっていたことがあります。その時期は一日中頭がグルグルしており、正直かなり辛かったのですが、そういう自分のメンタルがしんどい時に「誰かに話を聞いてもらうこと」はとてもハードルが高く感じられてしまうのです。
というのも、誰かに話を聞いてもらうことを、私は「相手に負担を掛けてしまう」と考えるので、それゆえ相談することを躊躇してしまうことになります。そしてそれは、「いつでも相談して」みたいな言葉ではなかなか払拭できないと思っているわけです。
「いつでも相談して」みたいなことを言われたら、「この人には相談できないな」って私は思っちゃう
「『いつでも相談して』って声を掛ければ相談しやすくなるだろう」っていう安易さが苦手なんだよね
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私が意識していることは、「どんな話も面白がって聞く」ことです。話の内容がどれほど辛いものであっても、相手が自発的に話そうとしている時点で「他人に話せないほど苦しい状態」は既に脱している、と私は考えます。だから聞く側が過剰に構えてはいけないと思うのです。
それよりは、「その話面白いね」という反応で聞く方が、「こういう話をしても負担ではないのだ」と伝わるからいいのではないか、と考えています。なので普段から、辛い話も含めて誰のどんな話も「面白がって聞いていることが相手に伝わる」ようにしているつもりだし、そういう意識が、「この人にだったらもっとハードな話をしてみてもいいかもしれない」という気分に繋がってくれたらいいな、といつも思っているのです。
さてここまでは、「相談を受けるまで」の話ですが、次は「相談を受けている時」のことに触れましょう。
結論を先に言えば、私は「相談」という行為を、「相手の頭の中を整理すること」と捉えています。
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もちろん「相談」には、「あの人の意見だから聞きたい」という動機からのものもあるでしょう。美輪明宏やマツコ・デラックスの意見を知りたい、という需要は当然あるし、そういう「その人の個人的な意見を聞きたい」と思われる存在の人であるなら、「相手の頭の中を整理する」なんてことを考えずに自分が思ったことを言うべきだと思います。
ただ、自分がそういう存在ではないのなら、「相談」してくれた相手に「自分の意見を伝えること」は、大体の場合求められていないと考えるべきでしょう。
これは、趣味で置き換えてみたら分かりやすいだろうと思います。例えば「面白い本を教えてください」と言われた時、自分が面白いと思う本を勧めても、それが相手に響くとは限りません。作品であれ料理であれ何であれ、それを好きだと思う人もいるし、普通とか嫌いとか感じる人もいるからです。結局、「面白い本を教えてください」という質問は、「私が面白いと感じるだろう本を教えてください」という意味だと理解すべきだということになります。
それは「相談」でも同じです。人それぞれ価値観が違うのだから、私のアドバイスが相手に刺さるとは限りません。
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だからこそ、「相手の頭の中を整理すること」が大事になるわけです。
私は「相談者」を「方向性や答えは自分なりになんとなく決まっているが、それを頭の中から上手く取り出せない人」と捉えます。
他人に相談できない状態ならまだ頭の整理はついていないでしょうが、他人に相談してみようと思える段階では既に、なんとなく自分なりの結論は出ているはずだと思っているのです。ただ、それを上手く言葉にしたり、論理的に他人に説明したりすることができません。だから私は、その手伝いをするつもりで話を聞くし、それが「相談」の本質だと考えているのです。
このやり方は、非常に大きな「納得感」を与えることができます。なにせその結論は、相談者の頭の中にあるものなのですから。私はそれを上手く取り出す手助けをするだけで、自分の意見を言うわけではありませんが、相談者は「凄く良いアドバイスをもらった」という感覚になるのでしょう。
相談してくれる人って、「実は私が自分の意見をさほど言ってない」ってことにはあんまり気づかない感じなんだよね
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だから「カウンセラーみたい」という評価に繋がるのだろう、と自分では思っています。
何よりも大事なことは、「相手の価値観の中で何が正解かを考える」というスタンスを崩さないことです。自分の価値観で相手の問題を捉えるのではなく、相手の価値観で相手の問題を理解しなければ、相手に響く「相談」は出来ないでしょう。
そしてこのようなスタンスを、相方の松本キックから感じられるのです。
「病気」だからといって気を遣わない
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松本キックは精神科医から「ナチュラル・カウンセラー」と呼ばれたことがあるみたいです。確かにそんな風に言いたくなる気持ちは分かるような気がします。
今もそうだが、俺は加賀谷に気を遣わない。芸事で間違っていればダメ出しするし、悪いことは怒りもする。病気を持っていようがいまいが、俺の相方は加賀谷という、一人のパーソナリティにすぎないのだから
『統合失調症がやってきた』(松本ハウス/幻冬舎)
「仲間である加賀谷が、たまたま統合失調症というだけなんです」
人の後ろに病気があり、病気の前には、人がいる。
俺は加賀谷に対し、「病人だから」と接したことが一度もなかった。立場は仲間。だから仲間として普通に接する。特別扱いや、とりたてて気をつかうこともなかった
『相方は、統合失調症』(松本ハウス/幻冬舎)
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こういうことを、上っ面の言葉だけで言う人もいるでしょうが、松本キックからはそういう雰囲気を感じません。まさにこの言葉通りのことを日々実践しているからこそ、統合失調症を抱えた相方と共に芸人をやっていられるのだと作品から伝わってきます。
私の場合、深刻な病気を抱えた人と関わる機会はこれまで特にありませんが、人付き合いが得意ではないのに無理をしていたり、自己肯定感が低くて生きるのに苦労していたりする人にはたくさん出会ってきました。私自身も、どちらかと言えばそっち側の人間です。
そういうタイプの場合、「相手に気を遣わせてしまっていること」に苦痛を感じる人が多いでしょう。それが分かっているから私も、「気を遣わない」という”気の遣い方”をしています。「相手の受け取り方を意識している」という点では「気を遣っている」わけですが、「気を遣っている」という風に感じさせないように意識している、という意味です。
「死にたい」みたいな話も、その時の雰囲気次第だけど、割と笑って聞いたりしてる
人にもよるけど、たぶんその方が話しやすいって感じてくれる人の方が多い気がするよね
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ハウス加賀谷も、
優しさって、時には負担に感じるんですね
『相方は、統合失調症』(松本ハウス/幻冬舎)
と言っていますが、まさにその通りで、「自分なんかに優しい振る舞いをしてくれている」という事実に苦しさを感じてしまう人もいるのです。
心が不安定な状況では、前向きな言葉は無力と言ってもいい
『相方は、統合失調症』(松本ハウス/幻冬舎)
とも書かれていて、この感覚もとても理解できます。良かれと思って前向きな言葉を掛ける人もいるでしょうが、結果的に相手を追い詰めることになってしまっているかもしれません。
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どんな振る舞いが適切なのかは、先ほど「相談」のところで書いたように「相手の価値観の中での正解」次第なので一概には言えません。松本キックも、芸人として復帰したハウス加賀谷との漫才に四苦八苦しながら向き合っているのです。
病気を発症する前のハウス加賀谷について松本キックは、
加賀谷の言葉のチョイスは、独特のセンスにあふれ群を抜いていた。どんな場面でも、加賀谷が言葉を発すると笑いになった
『相方は、統合失調症』(松本ハウス/幻冬舎)
と、その天才性を絶賛します。しかし復帰してからは、以前のキレを感じられなくなってしまうのです。松本キックは、「昔はこうだったのに」という幻想を追い求めてしまうし、ハウス加賀谷も「期待されているのに上手くいかない」と自分を追い詰めてしまい、結果的に悪いスパイラルに囚われてしまっていました。
「センス」でやれてたことって特に、一旦出来なくなると取り戻すの大変そうだしね
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そんな状況だったので、松本キックは考えを改め、試行錯誤を繰り返すことに決めます。
人はそれぞれ違う。悪いところは悪いとダメ出しするが、伸ばすべき点を見つけ、どう伸ばすかを最優先に考えた。本人にとって、今できることのベストは何かと。
加賀谷に対しても同じだった。今の加賀谷の何を伸ばすのか。まずは良い点を探し出す作業だった
『相方は、統合失調症』(松本ハウス/幻冬舎)
しかし上手くいかない。
台本なくすわ。書いてあると、どうしてもそこに執着してしまう。稽古をしながら体で覚えていこう
『相方は、統合失調症』(松本ハウス/幻冬舎)
しかし上手くいかない。
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加賀谷へのダメ出しも徐々に減らした。本人には言わず、ダメ出しをなくしていった。
『相方は、統合失調症』(松本ハウス/幻冬舎)
しかし上手くいかない。
最終的に松本キックは、
「頼む」
俺は、加賀谷に頭を下げていた。
「頼むから、失敗してくれ」
『相方は、統合失調症』(松本ハウス/幻冬舎)
というやり取りをしたことまで書いています。
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こんな風にして松本キックは、「ハウス加賀谷を変える」のではなく「自分のやり方を変える」という形で問題に対処していくのです。
芸人にこだわるあまり、加賀谷を芸人という枠にはめようとしていた。気づかないうちに、芸人はかくあるべきだという観念がこびりついていた。加賀谷は加賀谷でしかない。良さも悪さも、全部ひっくるめて加賀谷という人間だ
『相方は、統合失調症』(松本ハウス/幻冬舎)
このようなやり方を、松本キックは本などから学んだわけではありません。ハウス加賀谷と接する中で、自ら体得していくわけです。
本書を読んで、「松本キックのように振る舞えばいいんだ」と考えるのは間違いでしょう。松本キックは、目の前にいるハウス加賀谷を観察し続けて最適なやり方を見つけたのです。真似するべきはそのスタンスの方でしょう。
もちろん、何よりもそれが一番難しいのですが、しかし一方で、実は最短距離なのだと実感できるとも思います。
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だから結局のところ、「自分が変わってでもこの人と関わりたいのか」って問題になるよね
それに気づけずに、相手を変える努力をしても、ほとんど無駄に終わっちゃうよなぁ
この作品では、統合失調症を患った人とどう関わるかが描かれるわけですが、本書で示されるスタンスは、どんな人間関係においても大事なことだと私は感じるし、人間関係に困難や問題を抱えている人は意識して実践してみてはいかがでしょうか。
ハウス加賀谷+松本キック『統合失調症がやってきた』『相方は、統合失調症』の内容紹介
ハウス加賀谷は幼少期から、「自己臭恐怖症」に苦しんでいた。これは、「周りの人から『臭い』と思われている」と考えてしまう精神疾患である。悩んだ彼は、中学時代の進路相談で「ホームレス」になると言いさえした。高校時代には「グループホーム」に入所することになり、その後松本キックと出会い芸人を目指すことになる。
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お笑いコンビ「松本ハウス」として人気を集めていくが、それと反比例するかのように病気は進行していく。病気を自覚しながら、華やかな世界に留まるために我慢し続けた彼は、深刻な幻覚に悩まされるようにもなってしまった。結果的に閉鎖病棟への入院が決まり、芸人を休業する決断に至る。
ハウス加賀谷の復帰を待ち続けた松本キックと共に、お笑い芸人として復帰を目指す2人だったが、やはり以前のようにはいかず、芸人としてのやり取りも当初は上手くいかない。しかし、「統合失調症も個性だ」という実にフラットな松本キックのスタンスのお陰もあり、2人は再び芸人として舞台に立つことができるようになった。
そのような苦難の過程を描き出すノンフィクションでありエッセイである。
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ハウス加賀谷+松本キック『統合失調症がやってきた』『相方は、統合失調症』の感想
ここまでは主に、統合失調症に陥ったハウス加賀谷について触れてきましたが、本書では松本キック自身の葛藤にも触れられています。
大学には進学したが、2年で中退した。
不眠が、現れた。
このときも同じ。何かがあったわけではない。何もなかったから、不安になっていた。自分は何者なのだ。何がしたくて、なぜ生きているのか。人が存在する意味を見つけられなかった。
世の中に、お前はどうして生きているのだと、問い詰められているような気がした。とたんに、世間が怖くなった。頭の中はぐちゃぐちゃになり、考えが整理できなかった。
六畳の洋間。狭いワンルームマンション。ほとんど部屋から出ない生活が数ヶ月続いた。気配を消し去り、物音すら立てない。朝も昼も夜もカーテンを閉め、電気はつけない。髪や髭は伸び放題。ベッドで横になったり、もたれかかったり、膝を抱えうずくまったりしていた。誰にも、会いたくなかった。
「怖いよ、怖いんだよ」
わけも分からず怯えていた。怖くてたまらなかった。世の中はどうしてこんなに怖いんだと、生きることに怖気づいていた
『相方は、統合失調症』(松本ハウス/幻冬舎)
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この文章を引用したのは、私の大学生時代とまったく同じ感覚だからです。今でこそ大分落ち着きましたが、20代前半ぐらいまではずっと、「なんで生きていなければならないんだろう」と感じていました。私の場合も「何かがあったわけではない」のです。ただ、当たり前のようにやってくる日常が凄く辛かったですし、辛いのにどうしてわざわざ人生を継続させなければならないのかと、常に頭の中がグルグルしていました。
今だって特に、「生きる意味」なんて見つかっていません。ただ、「ウダウダ考えててもとりあえず生きるんだし、しょうがないか」ぐらいには思えるようになりました。
あと、大人になってみて、「楽しそうに見える人も、実はしんどかったりするんだな」ってことが分かったのも大きいかな
「元気そうに見える人」が実は元気じゃない、ってことを知る機会は結構あったからね
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松本キック自身も彼なりのモヤモヤを抱えていたからこそ、統合失調症に陥ったハウス加賀谷に対して、「ナチュラル・カウンセラー」と評されるような振る舞いができたのかもしれません。
また本書には、「講演会を引き受けることの葛藤」も描かれています。「病気について語る講演」を引き受けてしまうと、芸人として「笑ってもらえない」のではないかと危惧していたわけです。
しかし講演を行うことで、松本キックはこんな気づきを得ることになります。
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障がいと世間を結びつける役目。ほとんどの人が、障がいを詳しく知らない。俺も元々は何も知らなかった。
「松本の役割って、すごく大事だよ。当事者と接する人間として、どう接してきたのか知りたいもん」
エイメイさんも言っていた。
『相方は、統合失調症』(松本ハウス/幻冬舎)
マネージャーのエイメイさんが指摘する通り、「当事者」に関する情報はあっても「当事者と関わる人」の情報は決して多くはないでしょう。だから、松本キックがどんな風に相方と接してきたのかという知見は、非常に貴重なものだと思います。
また、「病気」というどうしても重苦しさがつきまとってしまうテーマだからこそ、お笑い芸人が語ることに意味がある、という見方もできるでしょう。お笑いはお笑いで頑張ってほしいものですが、彼らが経験した「病気との向き合い方」も是非講演で語り続けてほしいと思います。
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著:ハウス加賀谷, 著:松本キック
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統合失調症に限りませんが、どんな「病気」も程度問題でしかありません。ある一定のレベルを超えると「病気」と判定されますが、そのレベルには達しないが傾向は見られる、という人も世の中にたくさんいるでしょう。「肥満予備軍」みたいなのと同じように、「心の病気予備軍」みたいな人が、「病気」とは判定されないまま苦労している人も世の中にたくさんいるのだろうと思います。
そういう観点からも、この作品は意味があると言えるでしょう。自分とは違う視点に立って、相手の価値観の中で正解を見つけるというスタンスは、どんな場面でも役立つだろうと思います。
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Kindle本出版しました!「それってホントに『コミュ力』が高いって言えるの?」と疑問を感じている方に…
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39歳で餓死した男性は、何故誰にも助けを求めなかったのか?異常な視聴率を叩き出した、NHK「クローズアップ現代」の特集を元に書かれた『助けてと言えない』をベースに、「自己責任社会」の厳しさと、若者が置かれている現実について書く。
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ルシルナ
どう生きるべきか・どうしたらいい【本・映画の感想】 | ルシルナ
どんな人生を歩みたいか、多くの人が考えながら生きていると思います。私は自分自身も穏やかに、そして周囲の人や社会にとっても何か貢献できたらいいなと、思っています。…
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