目次
はじめに
この記事で取り上げる映画
出演:役所広司, 出演:仲野太賀, 出演:六角精児, 出演:北村有起哉, 出演:白竜, 出演:キムラ緑子, 出演:長澤まさみ, 出演:安田成美, 出演:梶芽衣子, 出演:橋爪功, 監督:西川美和, プロデュース:西川朝子, プロデュース:伊藤太一, プロデュース:北原栄治, Writer:西川美和
¥2,000 (2021/09/18 18:04時点 | Amazon調べ)
ポチップ
この映画をガイドにしながら記事を書いていきます
今どこで観れるのか?
この記事の3つの要点
- 「間違い」や「不正解」はどんどん受け入れられなくなっていく
- 正論を言い合っている世の中は窮屈でしかない
- レールから外れないようにしているだけの人生に、幸福はない
「善100」か「悪100」の2択しかない社会は辛いし、「ダメなこと」がもっと曖昧に許容されてほしいと思う
自己紹介記事
ルシルナ
はじめまして | ルシルナ
ブログ「ルシルナ」の犀川後藤の自己紹介記事です。ここでは、「これまでのこと」「本のこと」「映画のこと」に分けて書いています。
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私はもっと、「不正解」とか「間違い」が許容されてもいいと思っている。世の中の全員が良い人でいなきゃいけないとは思わないし、「迷惑だなぁ」と感じる人がいたってまあしょうがない。
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理由はたぶん、SNSだと思う。
誰でも発信者になれることは素晴らしい。しかし一方で、SNSを使えば使うほど「炎上」に対する恐怖は増すだろう(敢えて炎上に飛び込んでいく輩は除く)。となれば、「どうしたら炎上を回避できるか」という発想になりがちだし、そうなると「正論を言うのが一番楽」という結論になってしまう。
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また、他人の非をあげつらって優越感を得ようとする者も、SNSには多くいるだろう。そういう者たちが徒党を組み、自分たちに正義があると勘違いして誰かを追い込み、自分がまるで社会のために良いことをしたかのような感覚を得るのだと思う(偏見かもしれないが)。そういう者たちは当然、「誰も否定できないような正論で相手を追い詰める」のが得意だろうし、これまた正論がはびこる要因と言える。
だから、SNSが悪いのだと私は思っている。
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恐らくほとんどの人が、望んで正論を口にしているわけではないはずだ。そしてトラブルに巻き込まれないようにするために、「正論の範疇に収まる安全なこと」しか言えなくなっていることに皆、嫌気が指しているだろうと思う。
つまり、言う側も言われる側もほとんど誰も望んでいない「正論」が、こんな風に力を持つ時代になってしまっているということだ。
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正論ばかりの社会は窮屈でしかない
正論が強い世の中は、息苦しくなっていく。
私はよく、「◯◯ハラスメント」という言葉について考える。私はほとんどの場合、この言葉が嫌いだ。
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私の理解では、「◯◯ハラスメント」という言葉は、「男女」や「立場の違い」など、「何らかの形で格差が存在する者同士」にしか使えないと考えている。「セクハラ」「パワハラ」「アカハラ」など、「◯◯ハラスメント」という言葉は当初、そういう意味で使われていたはずだ。
しかし次第に「ハラスメント」という言葉は、使用領域が広がっていく。「キメハラ(「鬼滅の刃」ハラスメント)」や「マヨハラ(マヨネーズハラスメント)」などのように使われるようになった。しかしこれらは、私の定義にはそぐわない。なぜなら、「何らかの形で格差が存在する者同士」の間に発生するものではないからだ。
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もちろん、その感覚は私も理解できる。私自身も、誰かに「それは嫌です」と言いにくい性格だからだ。ただ、だからと言って「ハラスメント」という言葉を使うのが正しいとは思えない。セクハラ・パワハラなどの本来的な意味が、矮小化されてしまうと感じるからだ。
では、なぜこのような「ハラスメント」の使い方が広まっているのか。そこにはやはり、「正論」が関係していると私は考えている。
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「私は嫌です」は正論ではない。だから、「そんなの知らねーよ」と言われてしまえばおしまいだ。しかし、「◯◯ハラスメント」と名前をつけると、非常に「正論っぽい」。決して正論ではないのだが、セクハラ・パワハラのイメージが広く浸透しているので、「正論っぽいことを言っている風」になる。そしてさらに、「私がだけじゃなくて、世間でも『◯◯ハラ』って言われてる」と、「これは自分の意見ではありません、世の中の総意なんです」という風に相手に伝えられる(と、話者は考えている)。
だから、「◯◯ハラスメント」という話法が増殖するのだ。
めんどくせーなと思う。
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そして、「正論」だけではなくて、「正論っぽい話法」が増殖することで、世の中の分断は激しくなっていく。「正論」や「正論っぽい話法」に賛同する人ももちろん出てくるし、逆に反対する人も出てくる。多様な考えが存在するという状況そのものは非常に健全だと思うが、問題は、「その意見の分断に本来的な意味などない」ということだ。
そもそも存在する必要のない「正論」に対して分断しても仕方ない。「正論を受け入れるか、反対するか」なんていうどうでもいい争いで分裂してしまうことに無意味さを感じてしまう。
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そして、そんな分断や争いが続くことで、世の中はどんどんと不寛容になってしまうだろう。正論を主張する人も、正論に反対する人も、そして何も言わない人も、結局等しく損している、と私は感じる。
実にめんどくさい。
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誰もが「レールから外れること」を恐れている
この映画の中で、TVプロデューサー(長澤まさみ)が、出番が少ない割に非常に印象的なことを言う。
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今ほどレールを外れた人間に厳しい社会はないと思う。レールの上を歩いている人間だって、誰も幸福感なんて感じていないから、なおさらレールを外れたくないし、レールを外れた人間を許容しない
あぁ、本当にその通りだなと思う。
「正解」や「正論」しか許容されないということは、「レールを外れたらおしまい」ということでもある。私たちはいつの間にか「レールの上だけ」歩かされていて、そこから外れるとダメだと感じさせらている。だから必死でレールの上にしがみつこうとするが、別にレールの上にいることが楽しいわけじゃない。
「レールの上を歩いている人間だって、誰も幸福感なんて感じていない」とは、まさにその通りだと感じる。
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この映画では、「善悪」の境界線がどんどんと曖昧になっていく。「正しい」「間違い」が分かりやすくない。「明らかに間違っている人間が正しい」と思えたり、「客観的に正しいはずの人間が間違っている」ように見えたりする。
私たちの日常は本来こういうものであって、「善100」や「悪100」なんていう状況はほとんどない。しかし「正論」の圧力が、目の前の状況を「善100」か「悪100」のどちらかに振り切ろうとする。曖昧さが許容されない。
私たちは改めて、「善悪がはっきりしない曖昧な感じ」を取り戻すべきではないかと、この映画を観て強く実感した。
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映画の内容紹介
実在の人物をモデルにした映画である。
著:佐木隆三
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ポチップ
私生児として生まれ、幼くして母親と離れ離れになった三上正夫は、少年院に入ったり出たりを繰り返しながら、平成16年に起こした殺人事件で懲役13年を求刑された。旭川刑務所で刑期を満了した彼は、身元引受人になってくれた弁護士を頼りに東京に出てきて、安いアパートでの生活をスタートさせる。
しかし、13年も刑務所にいた三上にとって、世の中の変化は大きすぎた。市役所では「反社の人には例外なく生活保護は下りません」とにべもなく言われ、失効した免許証の再取得のために13年ぶりに運転するも覚束ない。しかし、そんな厳しい状況でも、「今度ばかりはカタギぞぉ」とやり直しを決意している。
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そんな三上は、ある人物に「身分帳」という大量のノートを送っていた。これは、刑務所に入るすべての人間が受ける記録で、刑務所での様子が事細かに記されている。もちろん通常、受刑者本人の目に触れることはない代物だ。しかし三上は、受刑者には知る権利があると主張し、この身分帳をすべて書き写す権利を勝ち取っていたのである。
膨大なノートを受け取ったのは、テレビの制作会社を辞めて小説を書いている津乃田。彼は、関わりのあるTVプロデューサーから三上という男を取材しないかと持ちかけられ、身分帳を受け取ったのだ。津乃田は、バリバリ入れ墨が入った元殺人犯などテレビで扱える素材じゃないと難色を示すが、プロデューサーは、だから面白いと焚きつける。
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そんな三上と津乃田が出会うところから物語は始まっていく。
三上は再出発を誓っているのだが、しかし一方で、真っ直ぐすぎる性格ゆえに正義感が強く、マズいことにその正義感は「暴力」という形で出てしまう。更生のためには警察沙汰などもってのほかだが、許しがたい状況に対してどうしても立ち向かおうとしてしまう。密着を始める津乃田は、血の気の多い三上を、やはり取材対象として難ありと感じるが、何か惹かれる部分もあり細々と取材を続けていき……。
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映画の感想
先程も書いた通り、善悪の判断が非常に揺れ動く映画だ。どうしても今の時代、「分かりやすい物語」が好まれる傾向にあると感じるが、そういう中にあって、多くの人に観られるだろうメジャーな作品で、このような「どっちつかずの曖昧さ」が描かれるのは、非常に望ましいことだと感じる。
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誰に肩入れしたいとなるのかという気分が、映画を観る中できっとコロコロ変わるだろう。最初はたぶん、元殺人犯の三上には共感したくない気持ちが強いだろうし、真っ当な側にいるように見える津乃田視点で物語を捉えるだろう。しかし徐々に、その基準が揺らいでいく。本当に三上は「正しくない」と言えるのか? 津乃田のスタンスは「正しい」と言えるのか?
私は、「暴力を振るうこと=100%間違い」だと思っていない。98%ぐらいは間違いだと思っているが、世の中には残念ながら、暴力でしかなんともならない状況も存在すると思っている。だから、確かに三上は短絡的すぎるが、しかし彼のスタンスを「間違い」とは言い切れない。
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この三上の暴力と対になるのが、予告で長澤まさみが、
あんたみたいなのが一番なんにも救わないのよ
と激昂する津乃田の振る舞いだろう。私は、津乃田が間違っているとは決して思わないが、正解でもないだろうと感じるし、じゃあだったら何が正解なんだ? と考えると、袋小路に入り込んでしまう。
「正論」が強すぎると、「暴力は100%間違い」となってしまう。私は、「実際に暴力を振るうかどうかはともかく、状況次第では暴力も辞さないと示す態度さえ取れない」としたら、対処できなくなってしまう状況は多く存在すると思う。そういう意味でも「正論が強すぎる社会」には問題があると感じる。
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そんな風に、「善悪の曖昧さ」を、エンターテインメントの中で感じさせてくれる作品だ。
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¥2,000 (2022/02/05 21:48時点 | Amazon調べ)
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最後に
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東日本大震災やコロナ禍などの”激変”を経る度に、「どう生きるべきか」と考える機会が増えるのではないだろうか。『いま、地方で生きるということ』は、「どこででも生きていける」というスタンスを軸に、「地方」での著者自身の生活を踏まえつつ、「人生」や「生活」への思考を促す
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【変】「家を建てるより、モバイルハウスを自作する方がいいのでは?」坂口恭平の疑問は「常識」を壊す…
誰もが大体「家」に住んでいるでしょうが、そもそも「家」とは何なのか考える機会はありません。『モバイルハウス 三万円で家をつくる』の著者・坂口恭平は、「人間は土地を所有すべきなのか?」という疑問からスタートし、「家」の不可思議さを突き詰めることで新たな世界を垣間見せる
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【生きる】志尊淳・有村架純が聞き手の映画『人と仕事』から考える「生き延びるために必要なもの」の違い
撮影予定の映画が急遽中止になったことを受けて制作されたドキュメンタリー映画『人と仕事』は、コロナ禍でもリモートワークができない職種の人たちを取り上げ、その厳しい現状を映し出す。その過程で「生き延びるために必要なもの」の違いについて考えさせられた
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【葛藤】正論を振りかざしても、「正しさとは何か」に辿り着けない。「絶対的な正しさ」など存在しない…
「『正しさ』は人によって違う」というのは、私には「当たり前の考え」に感じられるが、この前提さえ共有できない社会に私たちは生きている。映画『由宇子の天秤』は、「誤りが含まれるならすべて間違い」という判断が当たり前になされる社会の「不寛容さ」を切り取っていく
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【あらすじ】映画『流浪の月』を観て感じた、「『見て分かること』にしか反応できない世界」への気持ち悪さ
私は「見て分かること」に”しか”反応できない世界に日々苛立ちを覚えている。そういう社会だからこそ、映画『流浪の月』で描かれる文と更紗の関係も「気持ち悪い」と断罪されるのだ。私はむしろ、どうしようもなく文と更紗の関係を「羨ましい」と感じてしまう。
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【矛盾】法律の”抜け穴”を衝く驚愕の小説。「ルールを通り抜けたものは善」という発想に潜む罠:『法廷…
完璧なルールは存在し得ない。だからこそ私たちは、矛盾を内包していると理解しながらルールを遵守する必要がある。「ルールを通り抜けたものは善」という”とりあえずの最善解”で社会を回している私たちに、『法廷遊戯』は「世界を支える土台の脆さ」を突きつける
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【生と死】不老不死をリアルに描く映画。「若い肉体のまま死なずに生き続けること」は本当に幸せか?:…
あなたは「不老不死」を望むだろうか?私には、「不老不死」が魅力的には感じられない。科学技術によって「不老不死」が実現するとしても、私はそこに足を踏み入れないだろう。「不老不死」が実現する世界をリアルに描く映画『Arc アーク』から、「生と死」を考える
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【悲哀】2度の東京オリンピックに翻弄された都営アパートから「公共の利益」と「個人の権利」を考える:…
1964年の東京オリンピックを機に建設された「都営霞ケ丘アパート」は、東京オリンピック2020を理由に解体が決まり、長年住み続けた高齢の住民に退去が告げられた。「公共の利益」と「個人の権利」の狭間で翻弄される人々の姿を淡々と映し出し、静かに「社会の在り方」を問う映画
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【認識】「固定観念」「思い込み」の外側に出るのは難しい。自分はどんな「へや」に囚われているのか:…
実際に起こった衝撃的な事件に着想を得て作られた映画『ルーム』は、フィクションだが、観客に「あなたも同じ状況にいるのではないか?」と突きつける力強さを持っている。「普通」「当たり前」という感覚に囚われて苦しむすべての人に、「何に気づけばいいか」を気づかせてくれる作品
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【感想】映画『野火』は、戦争の”虚しさ”をリアルに映し出す、後世に受け継がれるべき作品だ
「戦争の悲惨さ」は様々な形で描かれ、受け継がれてきたが、「戦争の虚しさ」を知る機会はなかなかない。映画『野火』は、第二次世界大戦中のフィリピンを舞台に、「敵が存在しない戦場で”人間の形”を保つ困難さ」を描き出す、「虚しさ」だけで構成された作品だ
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【実話】映画『ハドソン川の奇跡』の”糾弾された英雄”から、「正しさ」をどう「信じる」かを考える
制御不能の飛行機をハドソン川に不時着させ、乗員乗客155名全員の命を救った英雄はその後、「わざと機体を沈め損害を与えたのではないか」と疑われてしまう。映画『ハドソン川の奇跡』から、「正しさ」の難しさと、「『正しさ』の枠組み」の重要性を知る
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【差別】才ある者の能力を正しく引き出す者こそ最も有能であり、偏見から能力を評価できない者は無能だ…
「偏見・差別ゆえに、他人の能力を活かせない人間」を、私は無能だと感じる。そういう人は、現代社会の中にも結構いるでしょう。ソ連との有人宇宙飛行競争中のNASAで働く黒人女性を描く映画『ドリーム』から、偏見・差別のない社会への道筋を考える
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【アート】「Chim↑Pom展:ハッピースプリング」(森美術館)と「美術手帖 Chim↑Pom特集」の衝撃から「…
Chim↑Pomというアーティストについてさして詳しいことを知らずに観に行った、森美術館の「Chim↑Pom展:ハッピースプリング」に、思考をドバドバと刺激されまくったので、Chim↑Pomが特集された「美術手帖」も慌てて買い、Chim↑Pomについてメッチャ考えてみた
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【家族】映画『そして父になる』が問う「子どもの親である」、そして「親の子どもである」の意味とは?
「血の繋がり」だけが家族なのか?「将来の幸せ」を与えることが子育てなのか?実際に起こった「赤ちゃんの取り違え事件」に着想を得て、苦悩する家族を是枝裕和が描く映画『そして父になる』から、「家族とは何か?」「子育てや幸せとどう向き合うべきか?」を考える
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【実話】権力の濫用を監視するマスコミが「教会の暗部」を暴く映画『スポットライト』が現代社会を斬る
地方紙である「ボストン・グローブ紙」は、数多くの神父が長年に渡り子どもに対して性的虐待を行い、その事実を教会全体で隠蔽していたという衝撃の事実を明らかにした。彼らの奮闘の実話を映画化した『スポットライト』から、「権力の監視」の重要性を改めて理解する
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【考察】アニメ映画『虐殺器官』は、「便利さが無関心を生む現実」をリアルに描く”無関心ではいられない…
便利すぎる世の中に生きていると、「この便利さはどのように生み出されているのか」を想像しなくなる。そしてその「無関心」は、世界を確実に悪化させてしまう。伊藤計劃の小説を原作とするアニメ映画『虐殺器官』から、「無関心という残虐さ」と「想像することの大事さ」を知る
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【正義】「正しさとは何か」を考えさせる映画『スリー・ビルボード』は、正しさの対立を絶妙に描く
「正しい」と主張するためには「正しさの基準」が必要だが、それでも「規制されていないことなら何でもしていいのか」は問題になる。3枚の立て看板というアナログなツールを使って現代のネット社会の現実をあぶり出す映画『スリー・ビルボード』から、「『正しさ』の難しさ」を考える
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私は学生時代ずっと国語の授業が嫌いでしたが、それは「作品の解釈には正解がある」という決めつけが受け入れ難かったからです。詩人・渡邊十絲子の『今を生きるための現代詩』を読むと、詩に限らずどんな作品も、「解釈など不要」「分からなければ分からないままでいい」と思えるようになる
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【幻想】日本での子育ては無理ゲーだ。現実解としての「夜間保育園」の実状と親の想いを描く映画:『夜…
映画『夜間もやってる保育園』によると、夜間保育も行う無認可の「ベビーホテル」は全国に1749ヶ所あるのに対し、「認可夜間保育園」は全国にたった80ヶ所しかないそうだ。また「保育園に預けるなんて可哀想」という「家族幻想」も、子育てする親を苦しめている現実を描く
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権力を持つ者のタガが外れてしまえば、市民は為す術がない。そんな状況に置かれた時、私たちにはどんな選択肢があるだろうか?白人警官が黒人を脅して殺害した、50年前の実際の事件をモチーフにした映画『デトロイト』から、「権力による不正義」の恐ろしさを知る
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世界的文学者であり、「紙の本」を偏愛するウンベルト・エーコが語る、「忘却という機能があるから書物に価値がある」という主張は実にスリリングだ。『もうすぐ絶滅するという紙の書物について』での対談から、「忘却しない電子データ」のデメリットと「本」の可能性を知る
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専門学校の卒業制作として濱口竜介が撮った映画『親密さ』は、2時間10分の劇中劇を組み込んだ意欲作。「映像」でありながら「言葉の力」が前面に押し出される作品で、映画や劇中劇の随所で放たれる「言葉」に圧倒される。4時間と非常に長いが、観て良かった
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【傑作】濱口竜介監督の映画『ドライブ・マイ・カー』(原作:村上春樹)は「自然な不自然さ」が見事な作品
村上春樹の短編小説を原作にした映画『ドライブ・マイ・カー』(濱口竜介監督)は、村上春樹の小説の雰囲気に似た「自然な不自然さ」を醸し出す。「不自然」でしかない世界をいかにして「自然」に見せているのか、そして「自然な不自然さ」は作品全体にどんな影響を与えているのか
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【矛盾】その”誹謗中傷”は真っ当か?映画『万引き家族』から、日本社会の「善悪の判断基準」を考える
どんな理由があれ、法を犯した者は罰せられるべきだと思っている。しかしそれは、善悪の判断とは関係ない。映画『万引き家族』(是枝裕和監督)から、「国民の気分」によって「善悪」が決まる社会の是非と、「善悪の判断を保留する勇気」を持つ生き方について考える
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【矛盾】死刑囚を「教誨師」視点で描く映画。理解が及ばない”死刑という現実”が突きつけられる
先進国では数少なくなった「死刑存置国」である日本。社会が人間の命を奪うことを許容する制度は、果たして矛盾なく存在し得るのだろうか?死刑確定囚と対話する教誨師を主人公に、死刑制度の実状をあぶり出す映画『教誨師』から、死刑という現実を理解する
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【実話】障害者との接し方を考えさせる映画『こんな夜更けにバナナかよ』から”対等な関係”の大事さを知る
「障害者だから◯◯だ」という決まりきった捉え方をどうしてもしてしまいがちですが、『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』の主人公・鹿野靖明の生き様を知れば、少しは考え方が変わるかもしれません。筋ジストロフィーのまま病院・家族から離れて“自活”する決断をした驚異の人生
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家族のややこしさは、家族の数だけ存在する。そのややこしさを、「子どもを守るために母親が父親を殺す」という極限状況を設定することで包括的に描き出そうとする映画『ひとよ』。「暴力」と「殺人犯の子どもというレッテル」のどちらの方が耐え難いと感じるだろうか?
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『衆議院議員・小川淳也が小選挙区で平井卓也と争う選挙戦を捉えた映画『香川1区』は、政治家とは思えない「誠実さ」を放つ”異端の議員”が、理想とする民主主義の実現のために徒手空拳で闘う様を描く。選挙のドキュメンタリー映画でこれほど号泣するとは自分でも信じられない
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