【生きろ】「どう生き延びるか」と覚悟を決める考え方。西原理恵子が語る「カネ」だけじゃない人生訓:『この世でいちばん大事な「カネ」の話』

目次

はじめに

この記事で取り上げる本

著:西原 理恵子
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いか

この本をガイドに記事を書いていくようだよ

この記事で伝えたいこと

「これからどんな風に生きていきたいのか」を明確に持って「闘い方」を決めるべき

犀川後藤

才能があっても、努力をしても、この点が不十分だと、人生なかなか上手くいかないでしょう

この記事の3つの要点

  • 「子どもが失敗すること」を前提とした子育て・教育はなかなか行われない
  • 才能が無いなら無いなりの闘い方をすべき
  • 他人からの評価を素直に受け入れてチャレンジした方がいい
犀川後藤

なかなか壮絶な人生を歩んできた西原理恵子だからこそ説得力のある人生訓が詰まっています

自己紹介記事

犀川後藤

どんな人間がこの記事を書いているのかは、上の自己紹介記事をご覧ください

西原理恵子『この世でいちばん大事な「カネ」の話』には、「カネ」の話だけじゃない、「どう生きるか」を全力で伝える西原理恵子の熱いメッセージが詰まっている

「しなくていい失敗を避ける」ために読むべき1冊

本書は、タイトルにある通り「カネ」の話も出てくるのですが、それを包括した「働くこと/生きること」について書かれている作品だと私は思います。

ただ本書は、よくあるいわゆる自己啓発本という感じではありません。一般的に自己啓発本というのは「こうすれば成功する」という内容が書かれていると思います。どうすれば上手くいくのか、ということが、様々な著者なりの価値観で書かれているわけです。

一方本書の場合は、「しなくていい失敗を避けること」が一番の目的であるように思います。

私は別に「どんな失敗も避けるべきだ」などとは思いません。失敗から学ぶことも、失敗によって変われることもあるはずです。ただやはり世の中には、「しなくていい失敗」があるとも思っています。「早く教えておいてくれたら、こんな無駄な回り道しなかったのに」と感じるだろう内容が、本書には書かれているというわけです。

そういう”知恵”を学ぶ機会が、なかなか子どもにはないような気がしています。

学校でも家庭でも、どうしても「どうやったら上手くいくか」という発想で様々な学びが展開されるでしょう。「勉強すること」も、「勉強して良い大学に行けば良い就職ができる」という「上手くいく方法」として提示されることが多いはずです。

犀川後藤

もうそういう時代じゃなくなってるのに、やっぱりまだ親世代はそういう感覚の人多いだろうね

いか

ま、特にやりたいこともないなら、学歴はあるに越したことはないと思うけど

一方で、「失敗の避け方」みたいなことはあまり教わった記憶がありません。それは、「子どもと向き合う」場合に、「あらかじめ失敗を想定することがはばかられる」からかもしれないとも思います。私は結婚もしてないし子どももいないので分かりませんが、やはり子どもと接する人としては、「この子は上手く人生を歩むはずだ」と思いたいでしょう。

そしてそうであればあるほど、「失敗を前提とした子育て・教育」みたいなものは行われないでしょうし、子どもたちはそういう学びを得る機会がないことになってしまいます。

「カネ」について学ぶ機会もない

2022年から高校で「投資」の授業が始まる、という話を先日テレビで見て驚きました。存分にやっていただきたいところで、自分が学生の時にもそういう授業があったら良かったなぁ、と感じたのです。

正直大人になるまで、「お金」について学ぶ機会はほとんどないと思います。今は、株のシミュレーションができるアプリとか、経営者の真似事ができるゲームとかがあったりして、子どもでもそういうところから「お金」の話に踏み込める人もいるかもしれませんが、私が子どもの頃には、そんな環境はなかったはずです。

大学時代から一人暮らしを始めたことで、否応なしに自分でお金を管理しないといけなくなり、実地で色々学んでいったわけですが、もしも一人暮らしをせず、実家にずっといたら、お金のことを知る機会は本当になかったかもしれません

犀川後藤

保険にしても、ずっと親が払っててくれたのを途中から引き継いだけど、自分では入ろうと思わなかっただろうしなぁ

いか

後で細かな部分は自分で調べるとしても、「これについて調べよう」と思うきっかけは学校にあったらいいよね

著者の西原理恵子は、恐ろしく貧しい子ども時代を過ごしますが、そこから這い上がり、絵だけで生活ができるようになりました。しかしその後、麻雀で5000万円以上のお金を失うという、お金の話に限ってみてもハード過ぎる人生を歩んでいます。もちろん、お金以外の部分でも波乱万丈です。

そんな著者が、「子ども時代に極貧を経験していること」「絶対に絵だけで稼ぐと決めたこと」「ギャンブル等で借金を作ったこと」など「カネにまつわる話」を随所に織り交ぜながら、「どう生きていくべきか」について著者なりの考えを語っていきます。

「どう生きたいか」で闘い方を変える

当たり前の話ではありますが、「どう生きたいか」という未来のビジョン次第で、今後の自分の闘い方は変わってくるはずです。しかし、「どう生きたいか」が曖昧なまま闘い方を決めてしまったり、「どう生きたいか」と「闘い方」が上手くリンクしなかったりする人もいるだろうと思います。

「いいじゃない。お金にならなくても」ってやってるうちは、現実にうまく着地させられない。それこそ、ふわふわした、ただの夢物語で終わっちゃう。
そうじゃなくて「自分はそれでどうやって稼ぐのか?」を本気で考えだしたら、やりたいことが現実に、どんどん、近づいてきた

西原理恵子は美大時代に、恐ろしいほどの才能を持っていながら、仕事を選り好みしたり、そもそもその才能を仕事で活かそうとしなかったりする学生をたくさん見てきたそうです。著者は、美大入学のための予備校ではデッサンの成績が最下位、客観的に見ても絵が恐ろしく下手という状態でした。ただ、「自分は最下位なんだ」とちゃんと分かっていれば闘い方はあるのです。

最下位の人間に、勝ち目なんかないって思う?
そんなの最初っから「負け組」だって。
だとしたら、それはトップの人間に勝とうと思っているからだよ。目先の順位に目がくらんで、戦う相手をまちがえちゃあ、いけない。
そもそも、わたしの目標は「トップになること」じゃないし、そんなものハナからなれるわけがない。じゃあ、これだけは譲れない、いちばん大切な目標は何か。
「この東京で、絵を描いて食べていくこと」
だとしたら肝心なのは、トップと自分の順位をくらべて卑屈になることじゃない。最下位なわたしの絵でも、使ってくれるところを探さなくっちゃ。最下位の人間には、最下位の戦い方がある!

著者はとにかく、「東京で絵を描いて食べていくこと」が最大の目標でした。だから、その実現のために何をするかが「闘い方」となるわけです。

本当に、こういうことこそ学校で教えてほしかったと感じます。私は学生の頃、勉強だけはできました。進学校に通っていて、テスト前にクラスメートに勉強を教えるぐらいの立ち位置です。ただ一方で、将来やりたいこともなければ、目指していることもなく、というかむしろ「できれば社会に出たくない」とさえ考えていました。社会できちんと働いて生きていける気がしない、とずっと思っていたのです。

そういう自分をちゃんと自覚した上で闘い方を考えれば、違った道もあったかもしれません。ただ実際の私は、「勉強ができる」というだけの理由で有名な大学に進学し、その後就職活動の直前で中退、長くフリーターを続けたりして、なんとか今も適当に生きている、という感じです。

はっきり言って、闘い方を間違えたなぁ、と感じています。

犀川後藤

まあ、闘い方をちゃんと考えたところで、上手くいってた気もしないんだけど

いか

なんだかんだ今の人生も、相当運良くなんとか転がってるから、悪いわけじゃないしね

そんなわけで本書は、自分の人生とどう向き合っていくのかについて考えるきっかけになると思うし、だからこそ、まだ社会に出ていない若者たちに読んでほしい本だなとも感じます。

西原理恵子は実際にどう闘ってきたのか

著者がどんな戦略で、絵がド下手の状態から絵だけで食べていけるまでになったのかについては本書を読んでほしいところですが、いくつか彼女なりの戦略に触れてみたいと思います。

「才能」っていうのは、そんなふうに、自分だけじゃわからない、見えてないものだと思う。自分で「こうだ」と思い込んでることって、案外、的外れだったりするからね。
何でも仕事をはじめたら、「どうしてもこれじゃなきゃ」って粘るだけじゃなくて、人が見つけてくれた自分の「良さ」を信じて、その波に乗ってみたらいい

この言葉は、どんな人にも参考になるのではないでしょうか。私も同じように、「自分が不得意だと思っていたこと、あるいは一度も経験がなくて自信がなかったこと」を、他人からの勧めでやってみて上手くいった経験があります

犀川後藤

20台以上のカメラの前で、私が聞き手となってトークイベントを仕切る、ってのは物凄くハードだったなぁ

いか

でも、緊張してる感じが顔に出ないから、それは得だよね

才能があって、自分の力で未来を切り開いていける人なら、自分のやり方に固執したり、自分が「才能」だと感じている部分にこだわってもいいでしょうが、そうではない人は、「あなたの良さはここだと思うよ」という周りの意見を参考にする方が上手く行くかもしれません

求められているのが「どうしてもやりたくないこと」ならやらない方がいいでしょうが、「そんなに気乗りしないんだけどなぁ」みたいなことであればやってみるべきでしょう。

また著者は、こうも書いています。

この仕事で食べていくことができなかったら、またあの場所に逆戻りだと思うから、どんな仕事だって引き受けることができた。しんどいとき、落ち込んだときもそう。引き返せないんだもの。だから目の前のハードルを体当たりでいっこいっこ、乗り越えていくしかない。ここで踏ん張らなかったらまたあの貧しさにのみこまれてしまう。だから、足は止めちゃいけない。前へ、前へ。
わたしの生い立ちは、わたしに、決して振り返らない力をくれたと思う

これは生まれ育った環境とその人の性格次第なので、どんな人にも当てはまるとは思えませんが、しかし人によっては著者と同じように、苦しかった子ども時代をバネにして奮起できる人もいるでしょう

ただもちろん、そうしなければならないわけではありません

競争社会から落ちこぼれたっていい。日本を出ちゃっても、ぜんぜん、かまわない。いまいるところがあまりにも苦しいのであれば、そこから逃げちゃえ!

私も同感です。苦しい時は、諦めましょう。競争社会だからといって無理に競争する必要はありません。競争しなければどうしても自分の望んだ生き方が手に入らないのであれば仕方ありませんが、そうではないなら、競争を避けて自分の未来を切り開く選択肢を検討すべきでしょう。

こんな風に本書では、学校や家庭ではなかなか教えてもらえる機会のない「生き方/闘い方」が語られています

西原理恵子『この世でいちばん大事な「カネ」の話』の内容紹介

内容紹介として、著者がいかに貧しい環境で生まれ育ったのかに触れておこう。

「貧困」っていうのは、治らない病気なんだ、と。

高知県の港町で生まれ育った西原理恵子は、そう思っていた。周りの誰もが貧しく、その貧しさ故に心が荒んだり、悪い道に進んだりしてしまう人もたくさんいたという。

貧しさの中でぼろぼろになっていく女の子たちを見ながら、わたしは、いつか、自分もああなるんじゃなかって、ずっとおびえていたから。そうして貧しさが土砂崩れのように何もかもをのみこんでいくこの町で、とうとう、お父さんが死んだ

父親は自殺だったそうだ。ギャンブルにハマって作った借金が返せなかった。父親は死の直前まで、母親に「お前が持っている土地を売れ」と迫り続けたようだが、母親は頑として首を縦に振らなかった。

貧しさは、人からいろいろなものを奪う。人並みの暮らしとか、子どもにちゃんと教育を受けさせる権利とか、お金が十分にないと諦めなければいけないことが次から次に、山ほど、出て来る。それで大人たちの心の中には、やり場のない怒りみたいなものがどんどん、どんどん溜まっていって、自分でもどうしようもなくなったその怒りの矛先は、どうしても弱いほうに、弱いほうにと向かってしまう

現在日本では、子どもの6人に1人が貧困だとされている。著者と同じような境遇の子どもは、今でも日本にはたくさんいるのだろう

そんな環境の中で西原理恵子は、少し変わった事情から大学を目指すことになった。だったら、東京に行こうと決意する。そして、母親があちこちからかき集めてきた全財産140万円の内100万円を受け取り、東京へと送り出された。

著者は腹をくくるしかなかった。もし東京での生活に失敗すれば、また元の生活に逆戻りだ。しかしがむしゃらに頑張るとして、どうすればいいのだろう。絵は好きだが、決して得意なわけではない。だけど自分にはこれしかない。西原理恵子はそう覚悟を決め、最下位の闘い方を模索しながら突き進んでいく。

本書は、このような背景を持つ著者が奮起して成り上がった記録なのである。

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最後に

子どもが直接この本を手に取る可能性は少ないでしょう。だから親なり教師なりが、子どもの手に本書が渡るように導いてあげる必要があると思います。

自殺やギャンブルなど、子どもには触れさせたくないだろう話も出てきますが、知らずに大人になるよりはマシだと考えて、子どもに読ませてみてはいかがでしょうか

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