目次
はじめに
この記事で取り上げる映画
出演:下倉幹人, 出演:秋辺デボ, 出演:下倉絵美, 出演:三浦透子, 出演:リリー・フランキー, Writer:福永壮志, 監督:福永壮志, プロデュース:エリック・ニアリ, プロデュース:三宅はるえ
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この記事の3つの要点
- アイヌモシリの人々は観光客から「日本語、上手ですね」と声を掛けられる
- 「どうあるべきか」ではなく「どう見られるか」で判断してしまうのは我々も同じ
- 「伝統」よりも「個人の自由」が尊重されるべき
アイヌ民族が抱える葛藤は、SNS時代を生きる我々の葛藤と折り重なるのではないかと感じます
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どんな人間がこの記事を書いているのかは、上の自己紹介記事をご覧ください
記事中の引用は、映画館で取ったメモを参考にしているので、正確なものではありません
映画『アイヌモシリ』は「アイヌ民族」だけの物語ではない。「どう見られるか」から逃れられない現代人に向けられた問いだ
「アイヌ民族」への意識の低さ
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私は普段の生活の中で、「アイヌ民族」のことを考える機会がない。そういう出自の人と恐らく関わったことがないし、地理的にも北海道から遠いところに住んでいる。何も意識しないと、「日本は単一民族国家」だとなんとなく考えてしまいがちだ。
今は、『ゴールデンカムイ』(野田サトル/集英社)のような、アイヌ民族を題材にしたエンタメ作品もある。また、いわゆる「アイヌ新法」が2019年に制定され、法律の中できちんと「アイヌ民族」が規定されたことも話題となった。身の回りに「触れるきっかけ」は確かに増えていると言えるが、しかしやはり私にとっては遠い存在だ。
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本当は、これまでどのような対立や意見の食い違いがあり、日本という国がアイヌ民族とどのような関わり方をしてきたのかという歴史を知っておくべきだと思う気持ちはあるのだが、どうしてもそういうことをサボってしまっている。そんな罪悪感のような感覚を抱いていたこともあり、タイトルから恐らくアイヌ民族に関係する映画だろう本作を観る決意をした。
「アイヌ民族」を題材にした、我々の物語
しかし映画を観ながら、「確かにアイヌ民族を描いた映画だが、これはアイヌ民族ではない我々にも突きつけられている問いだ」と私は感じた。
その一番の理由は、「アイヌ民族は、アイヌ民族として扱われることに戸惑っている」というのが、この映画の主題であるように私には感じられたことだ。
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確かに映画の中で、「アイヌ民族とはこのような人たちだ」という描写は様々に登場する。しかしこの映画においては、観客にそれを伝えることは重視していないと感じた。それ以上に、「アイヌ民族はアイデンティティで揺れているが、あなたたちはどうだ?」と問われているように思えたのだ。
映画には、「アイヌ文化」を描く場面もいろいろあるのだが、私が一番驚いたのは「現代のアイヌ民族はアイヌ語を勉強している」という描写だ。これは非常に印象的な場面だった。
映画の舞台となっているのは、「アイヌの町」として有名なアイヌコタン。ここには多くのアイヌ民族が住んでいる。しかし、この「アイヌの町」で生まれ育っても、既に日常的には使われなくなっている「アイヌ語」を喋れるようにはならない。生まれがネイティブでも、言語的にはネイティブにはなれないのだ。
別にアイヌ語を学ぶ必要なんかないのでは? と思うかもしれないが、アイヌコタンは観光で成り立っているという特殊な事情がある。観光客は当然、「この街の住人はアイヌ語で喋っているはず」と考えて来るわけだ。だからこそ彼らは、外からのそんなイメージに合わせるためにアイヌ語を勉強している。
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このスタンスは、アイヌ民族が抱える葛藤の象徴と言っていいかもしれない。
映画で描かれるアイヌ民族の中には「アイヌ民族として見られることに違和感がある」というタイプの人もいる。「我々はアイヌ民族だ。その文化を後世に継承していこう」と力強く迷いなく考えられる人もいるが、「確かにアイヌ民族として生まれたが、別にアイヌ民族として生きていきたいわけではない」と考える人も当然いる。
この映画では、この両者の緩やかな対立構造に焦点が当てられていると言っていいだろう。
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そしてそれはまさに、SNS時代を生きる我々が日々突きつけられている問いではないかとも感じるのだ。否応なしに「どう見られるか」に汲々とせざるを得ない現代人の悩みと重なる部分があると思うのだがどうだろう。
「アイヌ的なもの」から離れたいと考えている主人公の少年の葛藤
主人公のカントは、アイヌコタンで生まれ、お土産屋さんを営む両親に育てられるも、父親を亡くし、母親と2人で暮らす少年だ。14歳の彼は、「アイヌ民族」として見られることになんとも言えない違和感を覚えている。
例えばこんな場面。カントの母親は店に立っていると、観光客から「日本語、上手ですね」と声を掛けられることがある。母親も「アイヌ語を勉強している人」であり、むしろアイヌ語の方がしゃべれない。しかし観光客の幻想を崩さないために、「たくさん勉強したので」と、さも「日本語を頑張って勉強した」かのように返答する。
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そんな母親の姿を見てしまえば、カント少年が違和感を抱くのも当然だろう。
カントはカントで、アイヌ的なものをすべて嫌悪しているわけではないはずだ。亡くなった父はアイヌ文化を守ろうと活動していた人物である。また後半では、半ば強引とはいえアイヌ文化の儀式的にも関わる。彼もきっと、観光の街に住んでいるのでなければ、「アイヌ文化」に対して違った見方をしていたことだろう。
しかし残念ながら、観光客の「アイヌ民族へのイメージ」は非常に短絡的なものであり、そして観光で成り立っている街ではそのイメージに合わせざるを得ない。その一方で、こんな皮肉もある。本来的にアイヌの文化を色濃く残す儀式は、「野蛮だから」という理由で、アイヌ民族に詳しくない人から嫌悪の対象と考えられるのだ。このような外部の視点が、アイヌ文化の継承を難しくしている要因の1つである。
この”野蛮な”儀式については大人たちの間でも意見は分かれている。「時代に合わせて世の中に迎合していくべきだ」という主張がある一方で、「アイヌ民族がどう見られるかではなく、アイヌ民族としてどうあるべきかという点こそが重要なのだ」と強固に主張する派閥も存在する。
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アイヌ民族としての文化を限りなく厳密に継承していこうとすれば、現代文明とあまりに折り合いがつかずに孤立してしまう。そうなれば、観光で成り立っている町は終わりだ。しかし、だからといって、世間が抱く「アイヌ民族」のイメージに寄せていけばいいのだろうか? それも、心の底から「正しい」とは言いにくいだろう。
ここに、この物語が深く描こうとする「葛藤」が存在する。
「伝統」に対する私の考え方
ここで、「アイヌ民族」という具体的な話題から少し離れ、「伝統」と呼ばれるものに対して私がどのように考えているか書いてみよう。
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まず大前提として、私は「『こうしろ』と強制される伝統は嫌い」という立場だ。それがどれだけ古来から続く、あるコミュニティの中で重要だとされている伝統であったとしても、私は「個人の自由」が優先されるべきだ、と考えている。「個人の自由」を侵害してまで存続させなければならない「伝統」など存在すべきではない、というスタンスだ。
そしてその上で、「伝統」は残ってほしいと思っている。何故なら、「伝統」を新たに作り出すことはほぼ不可能だからだ。
それが儀式でも祭りでもなんでも構わないが、「伝統」と呼ばれるものにはさしたる理由が見当たらないものもある。もちろん、由来や縁起などが明確なものもあるが、「誰がどんな理由で始めたのかを、継承している者たちもはっきり理解しているわけではない」という「伝統」も多いはずだ。
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また、理由が明確に存在しているとしても、その理由が「なんだそれ?」と感じるものであることも多い。例えば「おせち料理」の説明など、私には愚の骨頂に聞こえる。「昆布巻き」は「よろこぶ」の語呂合わせ、「鯛」は「めでたい」の語呂合わせなど、「そんな理由なのか」と私は感じてしまう。
確かに現代においても、「きっと勝つ」の語呂合わせで「キットカット」など似たような発想のものは存在するが、じゃあそれが長い年月を経て、いわゆる「伝統」と呼ばれるものになっていくかというと、そんなことにはならないと私は思う。「伝統」は、いわゆるマーケティングと呼ばれるものから程遠いところにあると考えているからだ。
そしてこの、「さしたる理由がない」「理由があってもその理由がダサい」という点から、「伝統を新たに作るのは難しい」と考えている。
私たちは、「そんなことに意味があるんだろうか?」と感じてしまうことであっても、「伝統だから」というよく分からない理由で納得してしまうことはある。そして、そういうものであればあるほど、新たに生み出すことは困難だ。
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つまり、「新たに生み出すことが難しい」からこそ「伝統」は継続してほしい、と考えている。
もちろん、「個人の自由」と「伝統」を両立させるのは困難だ。例えば現代では、「家族の墓の継承」さえなかなか困難になっているだろう。であれば、地域や集団が深く関係する「伝統」を「個人の自由」の犠牲なしに存続させるのは、時代の変化からしてもより難しいと言える。
アイヌ民族が直面しているのも、まさにこのような問題だ。アイヌ民族の「伝統」の継承には、「個人の自由」をある程度侵さなければならない。確かに、「そうまでして残したい」と考える個人が現れるのが理想だ。しかし残念ながらなかなかそうはならない。そして、「アイヌ文化の担い手が少なくなる」ことによって「アイヌ民族であることをアイデンティティにすることへの違和感」が蓄積し、それによってさらに「アイヌ文化の担い手が少なくなる」という悪循環が生まれることになる。
アイヌ民族に限らないが、「伝統の継承」に突きつけられているこのような現実が描かれている。
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現代人に突きつけられた問い
そして、カントが直面するこの悩みは、まったくの相似形というわけではないが、我々も共有することができるはずだ。
SNSが発達することで、我々は、「他人に見せたい自分」をより強く構築することができるようになった。SNSがない時代にも、直接対面する友人などに対して同じことをしていたかもしれないが、それがオンライン上で実現できるものとなり、今では「他人に見せたい自分」がその人自身のアイデンティティとして強く機能するようになっているだろう。
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そしてこのことによって、「他人に見せたい自分」のイメージを貫くのか、「本来の自分」を出すべきかという葛藤が生まれることになる。
「他人に見せたい自分」を構築する場合、それは「本来の自分」と大きく違う場合が多い。だからこそ、この両者の乖離に悩まされることになる。これはまさに、「見られ方」を優先するか「どうあるべきか」を優先するかというカントの悩みと近いものがあるだろう(もちろん、カントの悩みほど深刻ではないが)。
カントの葛藤を見て、私は、「アイヌ民族を『アイヌ民族』と捉えることは正しいのだろうか?」と感じた。
もちろん、法律の整備は良いことだと思う。しかし、アイヌコタンを訪れる観光客だけではなく、日本という国に住む者が皆、アイヌ民族を「アイヌ民族」と捉えることによって、逆に彼ら自身のアイデンティティを揺らがせているのではないか、とも感じたのだ。
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そしてそのことは、我々自身にも言えることだろう。結局我々も、誰かの「他人に見せたい自分」を意識的に見ないようにする、というやり方でしか、現状を変えられないのではないかと思うのだ。
映画『アイヌモシリ』の内容紹介
北海道阿寒湖温泉にあるアイヌコタンは、アイヌの町として知られている。土産物屋の息子として育ったカントは、友達とバンドを組みギターで洋楽を演奏するような現代っ子であり、学校の進路相談の場では「阿寒湖以外なら別にどこでも」と投げやりな返答をする。アイヌコタンにいればどうしてもアイヌ的なものと関わらなければならない。だから、そうではない場所ならどこでもいい、という意味だ。
そんなある日カントは、亡き父の友人で、アイヌコタンの中心的存在であるデボから、山の奥にある洞窟の話を聞かされる。そこには、死者の住む村があるというのだ。2人は山に入り、キャンプをするが、そこでカントはデボから秘密の仕事を頼まれる。子熊に餌をやってほしいと。
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カントは知らなかったが、デボはアイヌ民族の伝統的儀式である「イオマンテ」を復活させようとしていた。自分たちで育てた子熊を殺して神の世界に送るというもので、阿寒湖では1975年以来行われていない。子熊を殺すのは時代にそぐわないと反対する者もいる中、デボはイオマンテ復活のために密かに子熊を育てていたのだ。
後にカントは、亡き父もイオマンテ復活に執心していたと聞かされるが……。
映画『アイヌモシリ』の感想
知らない世界の話だったので興味深く、また、アイデンティティについて観客へ問いかけるような作品だったこともあり、考えさせられた。「アイヌ民族」という、なかなか考える機会の少ない存在について考えるきっかけとなる映画だと思う。
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私は常に、観ようとしている映画に関する情報をなるべく仕入れないようにして映画館に行くようにしている。それもあって、映画を観始めてからしばらく、これがドキュメンタリーなのかフィクションなのか分からないでいた。カット割り的には明らかにフィクションだが、役者たちの演技がフィクションっぽくない。しかし、ドキュメンタリーという風にも見えない。
リリー・フランキーが登場したことでフィクションだとはっきりしたが、映画を観終わってから調べて、自分が感じていた違和感の正体が分かった。
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実際にアイヌ民族として生きる者を役者として起用することで、フィクションなのだけれどドキュメンタリーっぽい雰囲気を醸し出す作品になったのではないかと感じた。カントの母親は、カント役の少年の実際の母親が演じているそうだ。なるほど、ドキュメンタリーっぽくもなるわけだ。
そういう構成であることも、興味深く感じられた。
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最後に
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アイヌ民族の捉え方も、我々自身の生き方も、「どう見えているか」ではなく「どうあるか」で判断されるべきだ、と改めて実感させられる作品だった。
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多様性・ダイバーシティ【本・映画の感想】 | ルシルナ
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