目次
はじめに
この記事で取り上げる映画
出演:原田芳雄, 出演:大谷直子, 出演:大楠道代, 出演:藤田敏八, 出演:麿赤兒, 出演:樹木希林, 出演:真喜志きさ子, 監督:鈴木清順, プロデュース:荒戸源次郎, Writer:田中陽造
¥300 (2024/07/14 19:32時点 | Amazon調べ)
ポチップ
この映画をガイドにしながら記事を書いていきます
この記事の3つの要点
- 出演者の1人だった大楠道代にさえ「理解不能」な物語であり、監督以外の関係者全員が”よく分からないまま”映画を撮っていたという
- 原田芳雄演じる主人公・中砂糺の異様な存在感が圧倒的な作品
- 脚本をまったく無視してしまう鈴木清順監督の凄まじいエピソードの数々
よく分からないなりに映画そのものも楽しめたが、それ以上にトークイベントが面白く、良い鑑賞体験となった
自己紹介記事
あわせて読みたい
ルシルナの入り口的記事をまとめました(プロフィールやオススメの記事)
当ブログ「ルシルナ」では、本と映画の感想を書いています。そしてこの記事では、「管理者・犀川後藤のプロフィール」や「オススメの本・映画のまとめ記事」、あるいは「オススメ記事の紹介」などについてまとめました。ブログ内を周遊する参考にして下さい。
あわせて読みたい
【全作品読了・視聴済】私が「読んできた本」「観てきた映画」を色んな切り口で分類しました
この記事では、「今まで私が『読んできた本』『観てきた映画』を様々に分類した記事」を一覧にしてまとめました。私が面白いと感じた作品だけをリストアップしていますので、是非本・映画選びの参考にして下さい。
どんな人間がこの記事を書いているのかは、上の自己紹介記事をご覧ください
記事中の引用は、映画館で取ったメモを参考にしているので、正確なものではありません
鈴木清順監督作『ツィゴイネルワイゼン』はまったく訳の分からない映画だったが、上映後に行われた大楠道代のトークイベントが実に面白かった
正直なところ、映画としてはまったく意味不明だった。最初から最後まで割とちゃんと観たのだが(後半、若干寝てしまったが)、何が描かれているのかさっぱり理解できなかったのだ。しかしそれは、あながち間違った感想ではないようである。というのも、本作に出演している女優・大楠道代が、上映後のトークイベントの中で「よく分からない作品」と言っていたからだ。出演している女優が「よく分からない」と言っているのだから、一般の観客が理解できるはずもないだろう。
あわせて読みたい
【違和感】映画『コントラ』は、「よく分かんない」が「よく分かんないけど面白い」に変わる不思議な作品
ほぼ内容を知らないまま観に行った映画『コントラ』は、最後の最後まで結局何も理解できなかったが、それでもとても面白い作品だった。「後ろ向きに歩く男」が放つ違和感を主人公・ソラの存在感が中和させており、奇妙なのに可能な限り「日常感」を失わせずに展開させる構成が見事だと思う
さてそんなわけで、内容的には全然意味が分からない作品だったのだが、思いの外観れてしまいもした。最後の方で少しウトウトしてしまったものの、全体的には「意味不明だが、どことなく惹かれる部分もあるなぁ」という感覚で観れたのである。そういう意味でも、変わった映画だなと思う。ただ、観終わった今も結局、「どういう要素からそのように感じたのか」はよく分からないままである。
それでは、ざっくりとではあるが、まずは内容の紹介をしておこう。
映画『ツィゴイネルワイゼン』の内容紹介
物語は、風来坊の如く全国をフラフラ歩き回っているらしい中砂糺が警察に捕まりそうになる場面から始まる。その日海で死体が上がったのだが、その女を殺したとして疑われてしまったのだ。そこにたまたまやってきたのが、陸軍士官学校の教授・靑地豊二郎である。彼がどうにか、その場を丸く収めた。
2人はそのまま、うなぎでも食おうと店に入り芸者を呼ぼうとしたのだが、出払っているらしい。しかしそこへ、自殺した弟の弔いを終えたばかりの芸者・小稲がたまたま戻ってきた。中砂は「弔い帰りの芸者もいいじゃないか」と無茶苦茶なことを言って座敷へと呼び寄せる。そして彼らは、窓の外に見えた盲目の旅芸人の関係性を邪推したりしながら、しばらく時を過ごすのである。
あわせて読みたい
【天才】『三島由紀夫vs東大全共闘』後に「伝説の討論」と呼ばれる天才のバトルを記録した驚異の映像
1969年5月13日、三島由紀夫と1000人の東大全共闘の討論が行われた。TBSだけが撮影していたフィルムを元に構成された映画「三島由紀夫vs東大全共闘」は、知的興奮に満ち溢れている。切腹の一年半前の討論から、三島由紀夫が考えていたことと、そのスタンスを学ぶ
それからしばらく月日が過ぎ、靑地は中砂が結婚したという話を聞きつけたので、家を訪ねてみることにした。すると、良家の出身だというその細君は、なんと小稲と瓜二つだったのだ。中砂は何も考えていないのか、細君の前で靑地に「似てるだろ」と口にする。妻の園は当然、「誰に似てるんですか」と靑地に問う。もちろん、「芸者」だなどと答えるわけにはいかない靑地は、口をつぐむしかなかった。しかし、親友のそんな気遣いなどお構いなしに、中砂自身が「芸者の小稲だよ」と口にしてしまう。それを聞いた園は、ひたすらにこんにゃくを千切り続けるのだった。
中砂は結婚してからも、相変わらずあちこちをフラフラと旅している。そしてその旅先にはなんと、呼び出したのだろう小稲もいて、2人はそのまま関係を続けていく……。
撮影現場で大楠道代が驚いた様々な話
物語はとにかく、「中砂が無茶苦茶なことをして、彼の周りにいる靑地、小稲、園がひたすらに振り回される」という形で展開していく。まあ「展開」なんていうほど物語の筋があるようには感じられないのだが、とりあえずそのように進んでいくのである。中砂は「生まれてこの方、俺がまともだったことなど一度もない」と啖呵を切っていたほどで、「普通じゃない」という自覚は持ってはいるようだ。そんな中砂の存在感は圧倒的で、「何をしでかすか分からない」という危険な雰囲気が作中にずっと漂っていた。この点は、観客を惹きつける大きな要素と言っていいだろう。
あわせて読みたい
【衝撃】『ゆきゆきて、神軍』はとんでもないドキュメンタリー映画だ。虚実が果てしなく入り混じる傑作
奥崎謙三という元兵士のアナーキストに密着する『ゆきゆきて、神軍』。ドキュメンタリー映画の名作として名前だけは知っていたが、まさかこんなとんでもない映画だったとはと驚かされた。トークショーで監督が「自分の意向を無視した編集だった」と語っていたのも印象的
さて本作の物語には、靑地の妻・周子も関わってくるのだが、この周子を演じたのが大楠道代である。そして、「4Kデジタル完全修復版」の公開を記念したトークイベントに、彼女が登壇したというわけだ。
そもそも私は、「鈴木清順の代表作である3部作が4Kで劇場公開される」ことを映画館で観た予告映像で知った。あいも変わらず、私は「鈴木清順」という監督については名前を知っていた程度だったが、その予告映像のインパクトがかなり強かったので、これは観てみようと思ったのである。
そしてそんな予告映像の中に、「ある女性が男性の目玉を舐める」というシーンがあったのだ。予告は3作品らの映像を繋ぎ合わせていたため、それがどの作品のものなのか知らなかったのだが、本作『ツィゴイネルワイゼン』の中でそのシーンが出てきた。周子が、入院中の妹の病室で、「目にゴミが入った」と口にする中砂の目玉を舐めるという場面である。
あわせて読みたい
【あらすじ】アリ・アスター監督映画『ミッドサマー』は、気持ち悪さと怖さが詰まった超狂ホラーだった
「夏至の日に映画館で上映する」という企画でようやく観ることが叶った映画『ミッドサマー』は、「私がなんとなく想像していたのとはまるで異なる『ヤバさ』」に溢れる作品だった。いい知れぬ「狂気」が随所で描かれるが、同時に、「ある意味で合理的と言えなくもない」と感じさせられる怖さもある
トークイベントでは、このシーンについての言及もあった。なんと、この「目玉を舐めるシーン」が「撮影初日」だったというのだ。しかも、台本には元々「目玉を舐める」などとは書かれていなかったという。現場入りして初めて、そんな指示を受けたと語っていた。鈴木清順というのはそういうタイプの監督だったようだ。彼女は、他にも色んな指示を撮影当日にされたという話を披瀝していた。
こんな風に、トークイベントで大楠道代が語っていたエピソードは、なかなかにぶっ飛んだ話ばかりで面白い。「台本に書かれていない」に関係する話で言えば、こんなエピソードもある。彼女は3部作のどの作品での出来事だったのか忘れてしまったようだが、試写会の際に、脚本を担当した田中陽造の隣に座ったことがあるそうだ。そして試写会が始まってしばらくして、「俺はこんなホンを書いてない!」と怒って試写室を飛び出してしまったのだという。このエピソードだけでも、「鈴木清順がいかに脚本を無視する監督であるか」が理解できるだろう。
さて、トークイベントにはインタビューアーもいたのだが、彼が大楠道代に「映画『ツィゴイネルワイゼン』に出演するきっかけは?」と質問する場面があった。それに対して彼女は「脚本が面白かったから」と返す。インタビューアーは当然、「映像で観てもこれだけ難解なのに、よく脚本の時点でその面白さが理解できましたね」と聞き返した。すると彼女は、次のように答えたのである。
あわせて読みたい
【倫理】アート体験の行き着く未来は?映画『クライムズ・オブ・ザ・フューチャー』が描く狂気の世界(…
「『痛み』を失った世界」で「自然発生的に生まれる新たな『臓器』を除去するライブパフォーマンス」を行うソール・テンサーを主人公にした映画『クライムズ・オブ・ザ・フューチャー』は、すぐには答えの見出しにくい「境界線上にある事柄」を挑発的に描き出す、実に興味深い物語だ
脚本はもっとわかりやすくて面白かったの。
あの脚本を読んで、こんな難解な話になるなんて思わなかった。
この話もまた凄まじいものではないだろうか。脚本の存在意義が問われそうなエピソードだが、しかし、そんな風にして脚本を無視して作り上げた作品が大いに評価されているのだから、創作の世界というのは本当に複雑だなと思う。
誰も何も理解できていないのに、皆が惹きつけられてしまう作品
あわせて読みたい
【おすすめ】「天才」を描くのは難しい。そんな無謀な挑戦を成し遂げた天才・野崎まどの『know』はヤバい
「物語で『天才』を描くこと」は非常に難しい。「理解できない」と「理解できる」を絶妙なバランスで成り立たせる必要があるからだ。そんな難題を高いレベルでクリアしている野崎まど『know』は、異次元の小説である。世界を一変させた天才を描き、「天才が見ている世界」を垣間見せてくれる
大楠道代は、「鈴木清順作品の撮影中は、役者もスタッフも、『一体何をしているのかさっぱり分からない』という状態にある」みたいに言っていた。彼女は、「恐らく、鈴木さんの頭の中にはかっちりしたものがあったと思う」と推測を述べていたが、監督は自身の頭の中にあるイメージを具体的には説明せず、漠然とした指示だけで役者に演じさせていたという。そのため、映画に関わった全員が、出来上がった映像を観て初めて「こんな作品になったんだ」と感じるのだそうだ。そしてその上で、「観ても結局よく分からない」という感想で一致するのだという。
しかし、そのような映画にも拘らず、作品が持つ「人を惹きつける力」はとても強いようだ。大楠道代は、「様々な機会に関わりを持った映画の撮影スタッフの中にも、『鈴木清順の映画を観てこの世界に入った』みたいな人が結構いた」と話していた。また、「『ラ・ラ・ランド』の人もそれでアカデミー賞獲ったしね」とも口にしており、海外のクリエイターにも多大な影響を与えてきたことが伝わってくる。凄いものだ。
さて、トークイベントでは、彼女が出演した3部作の内の1つ『陽炎座』についても話をしていた。一番印象的だったのは、主演を務めた松田優作に関する話。アクション俳優として人気だった彼に監督が「動くな」と指示し続けたため、松田優作はいつもホテルに帰ってから暴れていたそうだ。また、大楠道代は元々役作りをしないタイプらしく、鈴木清順のやり方には合っていたそうだが、松田優作は真面目で、あらかじめきちっと役作りをするタイプだったから、「そのプランが現場で監督によって潰されてしまう」という状況についても、「大変そうだった」と語っていた。
あわせて読みたい
【天才】タランティーノ作品ほぼ未見で観た面白ドキュメンタリー。映画に愛された映画オタクのリアル
『パルプ・フィクション』しか監督作品を観たことがないまま、本作『クエンティン・タランティーノ 映画に愛された男』を観たが、とても面白いドキュメンタリー映画だった。とにかく「撮影現場に笑いが絶えない」ようで、そんな魅力的なモノづくりに関わる者たちの証言から、天才の姿が浮かび上がる
さて、映画『陽炎座』に関しては、「あれってCGなんでしょ?」と皆から聞かれるシーンがあるという。誰も信じないから「CGだよ」と答えているそうだが、実際にはCGを使ってはいないそうだ。その話が気になって、後日『陽炎座』も観てみたのだが、確かになかなか綺麗な場面だった。撮影は実に大変だったそうだ。大楠道代は、「あの時にだけ撮れた奇跡的なシーン」みたいな表現をしていた。鈴木清順というのは「持ってる人」なのだなと思う。
出演:原田芳雄, 出演:大谷直子, 出演:大楠道代, 出演:藤田敏八, 出演:麿赤兒, 出演:樹木希林, 出演:真喜志きさ子, 監督:鈴木清順, プロデュース:荒戸源次郎, Writer:田中陽造
¥300 (2024/07/14 19:35時点 | Amazon調べ)
ポチップ
あわせて読みたい
【全作品視聴済】私が観てきた映画(フィクション)を色んな切り口で分類しました
この記事では、「今まで私が観てきた映画(フィクション)を様々に分類した記事」を一覧にしてまとめました。私が面白いと感じた作品だけをリストアップしていますので、是非映画選びの参考にして下さい。
最後に
あわせて読みたい
【天才】映画音楽の発明家『モリコーネ』の生涯。「映画が恋した音楽家」はいかに名曲を生んだか
「映画音楽のフォーマットを生み出した」とも評される天才作曲家エンリオ・モリコーネを扱った映画『モリコーネ 映画が恋した音楽家』では、生涯で500曲以上も生み出し、「映画音楽」というジャンルを比べ物にならないほどの高みにまで押し上げた人物の知られざる生涯が描かれる
「ツィゴイネルワイゼン」というのは曲名のようだが、何故これが映画のタイトルになっているのかはよく分からなかった。確かに「ツィゴイネルワイゼン」という曲に言及するシーンはあるのだが、「だから何?」という感じである。まあそういうことも含めて謎の多い作品だし、そういう「訳の分からなさ」みたいなところに惹かれてしまうのだろうなとも思う。
時にはこういう、「身体の内側に入れてみたはいいが、まったく消化できないもの」に触れてみるのもいいものである。
あわせて読みたい
Kindle本出版しました!『天才・アインシュタインの生涯・功績をベースに、簡単過ぎない面白科学雑学を…
Kindleで本を出版しました。タイトルは、『天才・アインシュタインの生涯・功績をベースに、簡単過ぎない面白科学雑学を分かりやすく書いた本:相対性理論も宇宙論も量子論も』です。科学や科学者に関する、文系の人でも読んでもらえる作品に仕上げました。そんな自著について紹介をしています。
次にオススメの記事
あわせて読みたい
【丁寧】筒井康隆『敵』を吉田大八が映画化!死を見定めた老紳士が囚われた狂気的日常を描く(主演:長…
映画『敵』(吉田大八監督)は、原作が筒井康隆だけのことはあり、物語はとにかく意味不明だった。しかしそれでも「面白い」と感じさせるのだから凄いものだと思う。前半では「イケオジのスローライフ」が丁寧に描かれ、そこから次第に、「元大学教授が狂気に飲み込まれていく様」が淡々と、しかし濃密に描かれていく
あわせて読みたい
【ネタバレ】フィンランド映画『ハッチング』が描くのは、抑え込んだ悪が「私の怪物」として生誕する狂気
映画『ハッチング―孵化―』は、「卵から孵った怪物を少女が育てる」という狂気的な物語なのだが、本作全体を『ジキルとハイド』的に捉えると筋の通った解釈をしやすくなる。自分の内側に溜まり続ける「悪」を表に出せずにいる主人公ティンヤの葛藤を起点に始まる物語であり、理想を追い求める母親の執念が打ち砕かれる物語でもある
あわせて読みたい
【狂気】瀧内公美の一人語りのみで展開される映画『奇麗な、悪』の衝撃。凄まじいものを見た(監督:奥…
映画『奇麗な、悪』は、女優・瀧内公美が78分間一人語りするだけの作品で、彼女が放つ雰囲気・存在感に圧倒させられてしまった。誰もいない廃院で、目の前に医師がいるかのように話し続ける主人公の「狂気」が凄まじい。スクリーンの向こう側の出来事なのに、客席で何故か息苦しさを感じたほどの圧巻の演技に打ちのめされた
あわせて読みたい
【恐怖】「1970年代の生放送の怪しげなテレビ番組」を見事に再現したフェイクドキュメンタリー:映画『…
映画『悪魔と夜ふかし』は、「1970年代に放送されていた生放送番組のマスターテープが発見された」というテイで、ハロウィンの夜の放送回をそのまま流すという設定のモキュメンタリーである。番組の細部までリアルに作り込まれており、それ故に、「悪魔の召喚」という非現実的な状況もするっと受け入れられる感じがした
あわせて読みたい
【異次元】リアリティ皆無の怪作映画『Cloud クラウド』は、役者の演技でギリ成立している(監督:黒沢…
映画『Cloud クラウド』(黒沢清監督)は、リアリティなどまったく感じさせないかなり異様な作品だった。登場人物のほとんどが「人間っぽくない」のだが、錚々たる役者陣による見事な演技によって、「リアリティ」も「っぽさ」も欠いたまま作品としては成立している。「共感は一切出来ない」と理解した上で観るなら面白いと思う
あわせて読みたい
【天才】映画『箱男』はやはり、安部公房がSNSの無い時代に見通した「匿名性」への洞察が驚異的(監督:…
映画『箱男』は、安部公房本人から映画化権を託されるも一度は企画が頓挫、しかしその後27年の月日を経て完成させた石井岳龍の執念が宿る作品だ。SNSなど無かった時代に生み出された「匿名性」に関する洞察と、「本物とは何か?」という深淵な問いが折り重なるようにして進む物語で、その魅惑的な雰囲気に観客は幻惑される
あわせて読みたい
【あらすじ】映画『憐れみの3章』(ヨルゴス・ランティモス)は意味不明なのに何故か超絶面白かった(主…
映画『憐れみの3章』(ヨルゴス・ランティモス監督)は、最初から最後まで「意味不明」と言っていいレベルで理解できなかったが、しかし「実に良い映画を観たなぁ」という感覚にさせてもくれる、とても素敵な作品だった。さらに、「3つの異なる物語を同じ役者の組み合わせで撮る」という斬新な構成が上手くハマっていたようにも思う
あわせて読みたい
【狂気】「こんな作品を作ろうと考えて実際世に出した川上さわ、ヤベェな」って感じた映画『地獄のSE』…
私が観た時はポレポレ東中野のみで公開されていた映画『地獄のSE』は、最初から最後までイカれ狂ったゲロヤバな作品だった。久しぶりに出会ったな、こんな狂気的な映画。面白かったけど!「こんなヤバい作品を、多くの人の協力を得て作り公開した監督」に対する興味を強く抱かされた作品で、とにかく「凄いモノを観たな」という感じだった
あわせて読みたい
【解説】映画『スターフィッシュ』をネタバレ全開で考察。主人公が直面する”奇妙な世界”の正体は?
映画『スターフィッシュ』は、「親友の葬儀」とそれに続く「不法侵入」の後、唐突に「意味不明な世界観」に突入していき、その状態のまま物語が終わってしまう。解釈が非常に難しい物語だが、しかし私なりの仮説には辿り着いた。そこでこの記事では、ネタバレを一切気にせずに「私が捉えた物語」について解説していくことにする
あわせて読みたい
【狂気】押見修造デザインの「ちーちゃん」(映画『毒娘』)は「『正しさ』によって歪む何か」の象徴だ…
映画『毒娘』は、押見修造デザインの「ちーちゃん」の存在感が圧倒的であることは確かなのだが、しかし観ていくと、「決して『ちーちゃん』がメインなわけではない」ということに気づくだろう。本作は、全体として「『正しさ』によって歪む何か」を描き出そうとする物語であり、私たちが生きる社会のリアルを抉り出す作品である
あわせて読みたい
【狂気】異質なホラー映画『みなに幸あれ』(古川琴音主演)は古い因習に似せた「社会の異様さ」を描く
古川琴音主演映画『みなに幸あれ』は、”シュールさ”さえ感じさせる「異質なホラー映画」だ。「村の因習」というよくあるパターンをベースに据えつつ、そこで展開される異様な状況が、実は「私たちが生きる世界」に対応しているという構成になっている。「お前の物語だからな」と終始突きつけられ続ける作品だ
あわせて読みたい
【斬新】映画『王国(あるいはその家について)』(草野なつか)を観よ。未経験の鑑賞体験を保証する
映画『王国(あるいはその家について)』は、まず経験できないだろう異様な鑑賞体験をもたらす特異な作品だった。「稽古場での台本読み」を映し出すパートが上映時間150分のほとんどを占め、同じやり取りをひたすら繰り返し見せ続ける本作は、「王国」をキーワードに様々な形の「狂気」を炙り出す異常な作品である
あわせて読みたい
【狂気】映画『ニューオーダー』の衝撃。法という秩序を混沌で駆逐する”悪”に圧倒されっ放しの86分
映画『ニューオーダー』は、理解不能でノンストップな展開に誘われる問題作だ。「貧富の差」や「法の支配」など「現実に存在する秩序」がひっくり返され、対極に振り切った「新秩序」に乗っ取られた世界をリアルに描き出すことで、私たちが今進んでいる道筋に警鐘を鳴らす作品になっている
あわせて読みたい
【感想】これはドキュメンタリー(実話)なのか?映画『女神の継承』が突きつける土着的恐怖
ナ・ホンジンがプロデューサーを務めた映画『女神の継承』は、フィクションなのかドキュメンタリーなのか混乱させる異様な作品だった。タイ東北部で強く信じられている「精霊(ピー)」の信仰をベースに、圧倒的なリアリティで土着的恐怖を描き出す、強烈な作品
あわせて読みたい
【あらすじ】アリ・アスター監督映画『ミッドサマー』は、気持ち悪さと怖さが詰まった超狂ホラーだった
「夏至の日に映画館で上映する」という企画でようやく観ることが叶った映画『ミッドサマー』は、「私がなんとなく想像していたのとはまるで異なる『ヤバさ』」に溢れる作品だった。いい知れぬ「狂気」が随所で描かれるが、同時に、「ある意味で合理的と言えなくもない」と感じさせられる怖さもある
あわせて読みたい
【異様】西成のあいりん地区を舞台にした映画『解放区』は、リアルとフェイクの境界が歪んでいる
ドキュメンタリー映画だと思って観に行った『解放区』は、実際にはフィクションだったが、大阪市・西成区を舞台にしていることも相まって、ドキュメンタリー感がとても強い。作品から放たれる「異様さ」が凄まじく、「自分は何を観せられているんだろう」という感覚に襲われた
あわせて読みたい
【幸福】「死の克服」は「生の充実」となり得るか?映画『HUMAN LOST 人間失格』が描く超管理社会
アニメ映画『HUMAN LOST 人間失格』では、「死の克服」と「管理社会」が分かちがたく結びついた世界が描かれる。私たちは既に「緩やかな管理社会」を生きているが、この映画ほどの管理社会を果たして許容できるだろうか?そしてあなたは、「死」を克服したいと願うだろうか?
あわせて読みたい
【おすすめ】江戸川乱歩賞受賞作、佐藤究『QJKJQ』は、新人のデビュー作とは思えない超ド級の小説だ
江戸川乱歩賞を受賞した佐藤究デビュー作『QJKJQ』はとんでもない衝撃作だ。とても新人作家の作品とは思えない超ド級の物語に、とにかく圧倒されてしまう。「社会は『幻想』を共有することで成り立っている」という、普段なかなか意識しない事実を巧みにちらつかせた、魔術のような作品
あわせて読みたい
【純愛】映画『ぼくのエリ』の衝撃。「生き延びるために必要なもの」を貪欲に求める狂気と悲哀、そして恋
名作と名高い映画『ぼくのエリ』は、「生き延びるために必要なもの」が「他者を滅ぼしてしまうこと」であるという絶望を抱えながら、それでも生きることを選ぶ者たちの葛藤が描かれる。「純愛」と呼んでいいのか悩んでしまう2人の関係性と、予想もつかない展開に、感動させられる
あわせて読みたい
【衝撃】「仕事の意味」とは?天才・野崎まどが『タイタン』で描く「仕事をしなくていい世界」の危機
「仕事が存在しない世界」は果たして人間にとって楽園なのか?万能のAIが人間の仕事をすべて肩代わりしてくれる世界を野崎まどが描く『タイタン』。その壮大な世界観を通じて、現代を照射する「仕事に関する思索」が多数登場する、エンタメ作品としてもド級に面白い傑作SF小説
あわせて読みたい
【無謀】園子温が役者のワークショップと同時並行で撮影した映画『エッシャー通りの赤いポスト』の”狂気”
「園子温の最新作」としか知らずに観に行った映画『エッシャー通りの赤いポスト』は、「ワークショップ参加者」を「役者」に仕立て、ワークショップと同時並行で撮影されたという異次元の作品だった。なかなか経験できないだろう、「0が1になる瞬間」を味わえる“狂気”の映画
あわせて読みたい
【衝撃】映画『ダンサー・イン・ザ・ダーク』凄い。ラストの衝撃、ビョークの演技、”愛”とは呼びたくな…
言わずとしれた名作映画『ダンサー・イン・ザ・ダーク』を、ほぼ予備知識ゼロのまま劇場で観た。とんでもない映画だった。苦手なミュージカルシーンが効果的だと感じられたこと、「最低最悪のラストは回避できたはずだ」という想い、そして「セルマのような人こそ報われてほしい」という祈り
あわせて読みたい
【愛】ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の“衝撃の出世作”である映画『灼熱の魂』の凄さ。何も語りたくない
映画館で流れた予告映像だけで観ることを決め、他になんの情報も知らないまま鑑賞した映画『灼熱の魂』は、とんでもない映画だった。『DUNE/デューン 砂の惑星』『ブレードランナー 2049』など有名作を監督してきたドゥニ・ヴィルヌーヴの衝撃の出世作については、何も語りたくない
あわせて読みたい
【矛盾】法律の”抜け穴”を衝く驚愕の小説。「ルールを通り抜けたものは善」という発想に潜む罠:『法廷…
完璧なルールは存在し得ない。だからこそ私たちは、矛盾を内包していると理解しながらルールを遵守する必要がある。「ルールを通り抜けたものは善」という”とりあえずの最善解”で社会を回している私たちに、『法廷遊戯』は「世界を支える土台の脆さ」を突きつける
あわせて読みたい
【生と死】不老不死をリアルに描く映画。「若い肉体のまま死なずに生き続けること」は本当に幸せか?:…
あなたは「不老不死」を望むだろうか?私には、「不老不死」が魅力的には感じられない。科学技術によって「不老不死」が実現するとしても、私はそこに足を踏み入れないだろう。「不老不死」が実現する世界をリアルに描く映画『Arc アーク』から、「生と死」を考える
あわせて読みたい
【考察】アニメ映画『虐殺器官』は、「便利さが無関心を生む現実」をリアルに描く”無関心ではいられない…
便利すぎる世の中に生きていると、「この便利さはどのように生み出されているのか」を想像しなくなる。そしてその「無関心」は、世界を確実に悪化させてしまう。伊藤計劃の小説を原作とするアニメ映画『虐殺器官』から、「無関心という残虐さ」と「想像することの大事さ」を知る
あわせて読みたい
【考察】映画『ジョーカー』で知る。孤立無援の環境にこそ”悪”は偏在すると。個人の問題ではない
「バットマン」シリーズを観たことがない人間が、予備知識ゼロで映画『ジョーカー』を鑑賞。「悪」は「環境」に偏在し、誰もが「悪」に足を踏み入れ得ると改めて実感させられた。「個人」を断罪するだけでは社会から「悪」を減らせない現実について改めて考える
あわせて読みたい
【解説】テネットの回転ドアの正体を分かりやすく考察。「時間逆行」ではなく「物質・反物質反転」装置…
クリストファー・ノーラン監督の映画『TENET/テネット』は、「陽電子」「反物質」など量子力学の知見が満載です。この記事では、映画の内容そのものではなく、時間反転装置として登場する「回転ドア」をメインにしつつ、時間逆行の仕組みなど映画全体の設定について科学的にわかりやすく解説していきます
あわせて読みたい
【驚嘆】人類はいかにして言語を獲得したか?この未解明の謎に真正面から挑む異色小説:『Ank: a mirror…
小説家の想像力は無限だ。まさか、「人類はいかに言語を獲得したか?」という仮説を小説で読めるとは。『Ank: a mirroring ape』をベースに、コミュニケーションに拠らない言語獲得の過程と、「ヒト」が「ホモ・サピエンス」しか存在しない理由を知る
この記事を読んでくれた方にオススメのタグページ
ルシルナ | 映画と本の感想ブログ
文化・芸術・将棋・スポーツ【本・映画の感想】 | ルシルナ | 映画と本の感想ブログ
知識や教養は、社会や学問について知ることだけではありません。文化的なものもリベラルアーツです。私自身は、創作的なことをしたり、勝負事に関わることはありませんが、…
タグ一覧ページへのリンクも貼っておきます
ルシルナ | 映画と本の感想ブログ
記事検索(カテゴリー・タグ一覧) | ルシルナ | 映画と本の感想ブログ
ルシルナは、4000冊以上の本と500本以上の映画をベースに、生き方や教養について書いていきます。ルシルナでは36個のタグを用意しており、興味・関心から記事を選びやすく…
コメント