目次
はじめに
この記事で取り上げる映画
出演:デイヴィッド・ミッチェル, 監督:ジェリー・ロスウェル
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ポチップ
この映画をガイドにしながら記事を書いていくようだよ
この記事で伝えたいこと
東田直樹の著作は、自閉症児を理解したくても出来なかった親たちを救った
東田直樹に救われたと語る世界中の自閉症児の家族が登場するドキュメンタリー映画です
この記事の3つの要点
- 東田直樹は、自閉症児が知性を有していると鮮やかに示してみせた
- 自閉症の感覚を体感させる映画の作り方
- 自閉症への偏見が世界中で未だ残る中、我が子を愛し理解しようとする家族の姿
東田直樹がいかに勇敢で、少年とは思えないほどの知性を持っているのかが実感できます
自己紹介記事
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どんな人間がこの記事を書いているのかは、上の自己紹介記事をご覧ください
記事中の引用は、映画館で取ったメモを参考にしているので、正確なものではありません
東田直樹の著作は、世界中に衝撃を与え、自閉症のイメージを変え、映画『僕が跳びはねる理由』を生み出した
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自閉症というのは、歴史的に見ても理解されるまでに時間が掛かったそうです。
突然飛び跳ねたり暴れたりする自閉症児は、悪魔と結び付けられやすかった
20世紀前半まで、自閉症児は知能が劣ると思われていた
そして東田直樹は、特に「知能」という点において、自閉症のイメージを一変させました。彼自身が自分の内面を丁寧に言語化することで、自閉症の人たちが何を考えているのか、その一端が理解できるようになったのです。そしてそれと同時に、「自閉症は知恵遅れではない」ということも明らかになりました。
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その功績は、どれだけ大きかったでしょうか。
東田直樹以前は、自分に知性があることを誰も表現できなかった、ってことだよね
この映画には、東田直樹の本を英訳し、世界に広まるきっかけを作った人物も登場します。彼の息子も、自閉症なのだそう。そして、英訳した東田直樹の本がプロデューサーの目に留まり、この映画が生まれることになったというわけです。
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映画『僕が跳びはねる理由』の構成について
この映画は、その大部分がドキュメンタリー映画です。
「大部分」と書いた理由にまず触れておきましょう。
この映画には、日本人っぽい少年(エンドロールでは「JIM FUJIWARA」という表記で載っていました)が美しい映像世界の中を駆け回る描写が随所に挿入されます。恐らく、東田直樹を連想させよう、という意図でしょう。映像的な緩急をつける意味もあると思いますが、ドキュメンタリーを基本としながらフィクション的な部分も組み込まれるのです。
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ドキュメンタリー映画の部分は、様々な国にいる実際の自閉症児とその家族に密着する形で展開されます。全員ではありませんが、その多くが東田直樹の著作に触れ、東田直樹のお陰で自分の子どもの言動が理解できるようになった、という類の発言をしていました。もちろん、そういう人を探して出演してもらっているのでしょうから短絡的に判断してはいけないと思いますが、東田直樹の影響力の大きさを実感することができるでしょう。
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子育てというのがそもそも大変なことだろうけど、自閉症児の場合は、言動の意図があまりにも分からなくてさらにしんどいだろうね
言動がそのままだとしても、その背景とか理由が分かると、少しは気が楽になる部分もあるだろうなぁ
こういう表現が適切かどうかは分かりませんが、この映画に登場する自閉症児たちは、非常に恵まれていると言えるでしょう。というのも、世界には未だに自閉症に対する偏見が根強く(そのような背景も映画で描かれます)、自閉症児を手放す決断をする家族もいるからです。そういう中にあって、この映画に登場する家族は、我が子のことをきちんと理解しようとします。
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それだけではなく、こんな発言をする親もいました。
ジェスティナが僕を親にしてくれたし、我々の人生観さえ変えてくれたんだ
このような考え方が出来る人は素晴らしいなと感じます。私はそもそも、子どもなんてほしくないと思っている人間なので参考にはならないでしょうが、自分の子どもが自閉症だったら同じように感じられるとは思えません。
映画ではこのように、自閉症児そのものを扱うというよりは、東田直樹の著作に触れることで接し方や考え方が変わった親の方に焦点が当てられていきます。
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「自閉症を体感させる」映画の作り方
この映画を観ていて感じたことは、可能な範囲で、自閉症の人たちの「感じ方」を観客に体感させる作りになっているのだろう、ということです。
映画の中では、自閉症の人たちが物事をどんな風に捉えるのかについて語られる部分もあるのですが、一例を挙げてみます。
私たちが何かを見る時には普通、まず全体像を把握してから個々の細部に目を向ける、というのが一般的でしょう。しかし自閉症児の場合は、まず部分が視界に入り、その後少しずつ視野が広がっていくようにして全体像が捉えられていくのだそうです。
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そして映画の中でも、そのような視覚的効果を意図しているのではないか、と感じる場面がありました。部分に焦点を当てているためにそれが何であるのか分からない映像の後で全体像が見えてくる、というようなカメラワークです。彼らはこんな風に世界を見ているのだ、ということを直観的に伝えようとしていると私は感じました。
こんな風に映像的に説明してくれるとイメージしやすいよね
やっぱり、全然違う世界を生きてるんだよなぁ、って感じられるしね
もちろん自閉症の人たちの感覚には、「繰り返しの行動は安心感をもたらす」「印象的な色や形が視界に入ると他のことを考えられなくなる」など、視覚情報だけでは表現できないものも出てくるので限界はありますが、面白い試みだと思いました。
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映画では、恐らく東田直樹の著作からの引用文だろう文章が随所に登場します。それらによって、自閉症の感覚を伝え、自閉症特有の言動がなぜ起こってしまうのかを理解させようとするのです。
例えば、
自閉症児の口から出る言葉は、本心ではない。それは反射のようなものだ
という感覚は理解しやすいかもしれません。例えば私たちも、何か驚いた時にとっさに「あっ!」と声をあげてしまうでしょう。これが反射です。そして、「驚いても声を出さないでくださいね」と言われても、なかなか声を抑えられないと思います。
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これと同じようなことが、自閉症の人たちにも起こっている、というわけです。つまり、自分で言いたいと思って言葉を発しているのではなく、反射的に口から出てしまう、ということでしょう。
一方で、
何か話そうとすると、言葉はすぐに消えてしまう
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その時見たものや思い出したことに反射している
という感覚についても説明されます。
こちらも同じ「反射」という言葉が使われていますが、先程とは違い、「何か言いたいことがあっても、見たものや思い出したものに反射してしまい、言いたいことが口にできない」という状態になってしまうというわけです。
こういう状況に対して、
言いたいことが言えない生活を、想像できますか?
と問われるのですが、本当に絶望的とも言える環境で生きているのだなと感じました。
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頭はしっかりしてるのに、口や身体が言うことを聞いてくれない、ってことだね
あくびとかくしゃみみたいに、自分の意思では制御できない動きに常に支配されてる、みたいなイメージなんだろうなぁ
そして、東田直樹が説明するこれらの感覚を理解した親たちは、
直樹の本を読んで、娘の苦労を知った。正しい母親であろうとするあまり、我が子を見ていなかった
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かつて息子に、何故こんなことをするんだと何度も聞いた。この本には、その答えが書かれていた。この本は僕にとって、未知の国からの使者だ
と言葉を漏らします。理由が分からない言動に対してきちんと意図があるのだと理解できたことで、接し方が大きく変わったという実感が、映画の中でも描かれます。
東田直樹の存在は、自分が考えていることを表に出せない自閉症の人たちの代弁をしただけではなく、彼らと関わる人々への新たな知見をもたらしたという意味でも、非常に重要だったと言えるでしょう。
東田直樹の凄まじさ
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そんな東田直樹は、自身についてこんな風に語っています。
ずっとみんなと同じように生きられたらいいのにな、と思っていました。でも今は、もし自閉症が治るとしても、今の自分を選ぶかもしれません。僕は自閉症が普通だと思っているから、みんなの普通が分からないし、どっちでもいいのかもしれません
デビュー作を執筆当時、まだ少年と言っていい年齢だったはずですが、これほどの思考を展開できることは素晴らしいことだと思います。
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自分だったら、自閉症児として生まれたことをマイナスに感じてしまうだろうなぁ
また、こんなカッコイイことも言っています。
僕たちはきっと、文明の支配の外に生まれた。多くの命を殺し地球を破壊してきた人類に、大切な何かを思い出してもらうために。
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良いですよね、この言葉。凄く好きです。
ただ同時に、自閉症の人に限らず障害を持つすべての人に対して、東田直樹のように強く生きる必要などないと感じました。東田直樹は称賛されるべき勇敢さを持っていると思いますが、あくまでも彼は例外でしょう。誰もが彼のようになれるわけではありませんし、東田直樹が「障害を持つ人の人生の基準」になってしまったら、それはとてもしんどいだろうとも思います。
東田直樹は凄い、でもそれは例外中の例外だ、ということを忘れずに、障害を持っていようが持っていなかろうが、みんな無理せずに生きてほしい、というのが私の願いです。
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出演:デイヴィッド・ミッチェル, 監督:ジェリー・ロスウェル
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「この世界で生きていていいと感じられる」という東田直樹の実感は、「生きていていいと感じられないことが多かった」ことを強く示唆するものでもあります。そして、そういう社会にしてしまっているのは、私たちなのでしょう。
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私は、「生きたい」という意思があって、「意図を持って他人に迷惑をかけるつもりがない」のであれば、どんな人であれ穏やかに生きていけるべきだと考えています。そんな世の中を作るために自分に何ができるのか、考えるきっかけになる映画でもあると感じました。
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