目次
はじめに
この記事で取り上げる映画
出演:シティ・アイシャ, 出演:ドアン・ティ・フォン, 監督:ライアン・ホワイト
¥2,000 (2021/09/13 06:20時点 | Amazon調べ)
ポチップ
この映画をガイドにしながら記事を書いていきます
今どこで観れるのか?
この記事の3つの要点
- 誰もが彼女たちと同じ状況に陥る可能性がある
- 実行犯の2人には、法律上「無罪」か「死刑」しかなかった
- 北朝鮮の友好国だというマレーシアの特殊事情により、彼女たちは翻弄されてしまう
「自分は大丈夫」と思わず、きちんと現実を直視しよう。我々がいる世界は、これほど危険なのだ
自己紹介記事
ルシルナ
はじめまして | ルシルナ
ブログ「ルシルナ」の犀川後藤の自己紹介記事です。ここでは、「これまでのこと」「本のこと」「映画のこと」に分けて書いています。
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2017年2月13日、衝撃のニュースが世界中を駆け巡った。
北朝鮮の最高指導者の金正恩の異母兄である金正男が暗殺されたのだ。
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マレーシアのクアラルンプール国際空港で衆人環視の中行われた殺人は、当然防犯カメラに記録されており、容疑者はすぐに逮捕された。インドネシア人のシティ・アイシャと、ベトナム人のドアン・ティ・フォンの2人だ。
しかし、当初から事件の背後には、北朝鮮工作員の存在が示唆されていた。当時報道を見ていたが、暗殺直後の時点で、防犯カメラから工作員と思しき人物が特定されていたはずだ。しかし彼らは、すぐに国外に脱出したり、マレーシア国内の北朝鮮大使館に逃げ込んだ。そして、北朝鮮からの”脅迫”に屈するような形で、彼ら工作員は結果的に”無罪放免”となった。
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一方、実行犯2人についての情報は、報道を通じてあまり目にする機会がなかったように思う。
私は実は、この映画を観る少し前にフジテレビのドキュメンタリー番組をたまたま見ており、そこで実行犯2人がどのように「暗殺者」に仕立て上げられてしまったのかを知っていた。
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それはまさに、「人気者になりたいだけの、どこにでもいるような女の子が、暗殺者に仕立て上げられる」という、恐ろしいドキュメンタリーだった。
だからこそ、この世界的なニュースになった暗殺劇を、決して他人事だと考えてはいけない。あなたも、そしてあなたの周りの人も、いつだって「暗殺者」としてその名前が報じられるかもしれない世界に生きているのだ。
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なぜ彼女たちは「暗殺者」になってしまったのか?
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彼女たちは様々な種類の「イタズラ動画」を実際に撮らされた。最初は軽いイタズラから始まり、次第にエスカレートしていく。確か、「道行く人に突然キスをする」みたいなイタズラもあったと思う。こうやって、「イタズラ動画を撮影しているのだ」と思い込ませながら、同時に、「ちょっと変な指示や実行に躊躇する命令にも従わせる」という関係性を、何ヶ月も掛けて作り上げていったのだ。
そしてその流れのまま金正男の暗殺もイタズラだと思わせて実行させた。手に液体(彼女たちは知らなかったが実は劇薬)をつけ指定したターゲットの顔を覆う、というイタズラだ。ただそれだけを指示されたら誰も実行しないだろうが、女性たちと工作員は既に何ヶ月にも渡って「変なイタズラを見知らぬ人に仕掛ける」ということを行ってきた。彼女たちは、それがイタズラだと疑いもしなかっただろう。
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イタズラだと信じ込んでいただろうと推察できる映像が残っている。
ドアン・ティ・フォンは暗殺から2日後、再び空港にやってきた。その時の防犯カメラの映像がある。髪型や格好は暗殺実行時と変わりはないから、逃走しようとしていたのではない。実はドアンはボス(工作員)から「またイタズラ動画の撮影をするから」と言われており、疑うことなく空港にやってきたのだ。そしてそこで逮捕された。
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シティ・アイシャは逮捕された際、友人とホテルの部屋にいた。彼女の証言によれば、やってきた警察官に「13日、どこにいた?」と聞かれて、普通に「空港」と答えたのだという。そして、「金正男をどうやって暗殺したのだ?」と問われて困惑したと語っていた。彼女は、イタズラを仕掛けた相手が亡くなっていたことも、その人物が金正男だったことも、逮捕される直前まで知らなかったのだ。
誰もが、彼女たちのようになってしまう可能性がある。
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「イタズラ動画を撮ろう」なんてやり方に騙されはしない、というような問題ではない。相手は、どの国の人か、どんな経済状態にあるかなど様々な状況を見極めてやり方を変えてくるだろうからだ。
また、この暗殺を完璧に成功させるためには、「金正男がいつどこにいる予定なのか」を把握している必要がある。それが確実だったのが、あの日のクアラルンプール国際空港だったのだろう。金正男については”密入国問題”もあり、日本にやってくる可能性は低かっただろうが、確実に日本に来るという予定がもしも把握されていたら、「インドネシア人のシティ・アイシャ」と「ベトナム人のドアン・ティ・フォン」は、「日本人のAさん・Bさん」だったかもしれない。
本当にこれは、まったく他人事じゃないと私は感じた。詐欺などでもよく言われることことだが、「自分は大丈夫」とは決して考えないようにしなければならない。
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彼女たちはどのように裁かれたのか?
実行犯の2人だけが逮捕され、北朝鮮工作員が見逃されたのには、マレーシアという国の特殊な事情も絡んでいる。国内に大使館があるぐらい、マレーシアは珍しく北朝鮮と友好的な国なのだ。
マレーシアとしては、友好国である北朝鮮と揉め事を起こしたくはない。しかし、自国の国際空港で白昼堂々暗殺が行われてしまったことは世界的な恥だ。「北朝鮮との関係」と「世界への体面」を両立させるために、「工作員は見逃す」「実行犯のみ裁く」という判断をせざるを得なかったのだろう、と語られていた。
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さて、当然と言っていいのか分からないが、彼女たちは裁判にかけられた。マレーシアの法律に照らすと、彼女たちは仮に「有罪」となれば自動的に「死刑」が確定するという。つまり、そうとは知らずに金正男を暗殺してしまった2人には、「無罪」か「死刑」という2択しか存在しないことになる。
なかなか厳しい状況に置かれたと言えるだろう。
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恐らく世界中の誰もが、「北朝鮮の工作員が、彼女たちを駒にして暗殺を行った」と理解しただろう。確かに、意図していなかったとは言え、行為として彼女たちは「殺人」を行ったのだから、何らかの「罰」があっても仕方ないかもしれない。しかしマレーシアの法律では、それは「死刑」しかない。さすがに彼女たちを死刑にするのは、あまりに酷といえるだろう。
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その上で問題となるのは、やはり「マレーシアの体面」だ。マレーシアは、「体面を保つためには実行犯を罰しなければならない」と思い込んでいるかのような行動を取る。つまり、彼女たちをスケープゴートとして切って捨てるという判断だ(恐らくそうした方が、国際世論からは厳しい目で見られると私は思うが)。
国家によって行われる「裁判(司法)」に関して、国家が特定の思惑を持っているという状況はなかなかに恐ろしい。決着がつくまで、彼女たちがどれほど心を削られただろうと思うと苦しくなる。
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さて、幸いなことに彼女たちは「死刑」にならずに済んだ。しかし「無罪」なのかというとそうでもない。この映画では、この事件の裁判の顛末が語られていたが、結論は2択しか存在しないと思われていた中で、思いがけない決着を見せることになったのだ。
担当した弁護士の一人は、「完全なハッピーエンドではない」という言い方をしていたが、しかし最悪の自体は免れたし、とりあえず良かったと言っていいだろう。
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「金正男暗殺」はどう報じられたか
この映画では、金正男暗殺を報じるメディアも描かれる。
マレーシアのメディアというのは、基本的に政府の傘下にあるのだという。だから、政府に批判的な報道はしにくい。この事件においては、政府が率先して「火消し」に走り、実行犯の2人をスケープゴートにしようとしているのだから、メディアもその流れに反したことは報じにくいというのだ。
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映画には、ベナン・ニュースの記者が何度か登場した。彼は自由に発信が可能な立場にいる記者であり、政府やメディアが彼女たち2人に罪があるような流れを生み出そうとしていることに疑問を呈す。
ワシントン・ポスト紙の北京支局長であるアンナ・ファイフィールドという記者も映画に登場するが、彼女は今回の事件について「完全犯罪と言っていい」という言い方をしていた。金正恩は、安定した政権運営の支障になるかもしれない兄を排除しただけではない。彼は、「私はどこまでも残酷になれる」というメッセージを、非常に特殊な形で全世界に発信したのだ、と指摘されていた。なるほど確かに、そう考えると北朝鮮による暗殺の凄さがより理解できる。
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またこの映画では、生前の金正男が出ているニュース映像がいくつか使われていたのだが、それらはすべて日本の番組のものだった。金正男をきちんと追っていたのが日本のメディアだけだったのか、あるいは何らかの理由で日本のメディアから映像を借りやすかったのか、理由は分からないが、前者だとするならば、やはり世界的に見ても日本は「北朝鮮」と関わらざるを得ない国なのだと実感できる気がした。
出演:シティ・アイシャ, 出演:ドアン・ティ・フォン, 監督:ライアン・ホワイト
¥2,000 (2022/01/29 21:40時点 | Amazon調べ)
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最後に
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世界中で報じられた「暗殺」が、自分と関係のある話題だと感じることはまずない。しかし、実行犯になってしまった2人の女性の状況を知れば、「暗殺者」に仕立て上げられるかどうかはともかく、誰もが彼女たちと同じ境遇になり得ると実感できるだろう。
我々は常に、様々な危険と隣り合わせの世界で生きているのだと、改めて感じさせられる作品だ。
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【驚愕】あるジャーナリストの衝撃の実話を描く映画『凶悪』。「死刑囚の告発」から「正義」を考える物語
獄中の死刑囚が警察に明かしていない事件を雑誌記者に告発し、「先生」と呼ばれる人物を追い詰めた実際の出来事を描くノンフィクションを原作にして、「ジャーナリズムとは?」「家族とは?」を問う映画『凶悪』は、原作とセットでとにかく凄まじい作品だ
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【実話】権力の濫用を監視するマスコミが「教会の暗部」を暴く映画『スポットライト』が現代社会を斬る
地方紙である「ボストン・グローブ紙」は、数多くの神父が長年に渡り子どもに対して性的虐待を行い、その事実を教会全体で隠蔽していたという衝撃の事実を明らかにした。彼らの奮闘の実話を映画化した『スポットライト』から、「権力の監視」の重要性を改めて理解する
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【考察】アニメ映画『虐殺器官』は、「便利さが無関心を生む現実」をリアルに描く”無関心ではいられない…
便利すぎる世の中に生きていると、「この便利さはどのように生み出されているのか」を想像しなくなる。そしてその「無関心」は、世界を確実に悪化させてしまう。伊藤計劃の小説を原作とするアニメ映画『虐殺器官』から、「無関心という残虐さ」と「想像することの大事さ」を知る
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【正義】「正しさとは何か」を考えさせる映画『スリー・ビルボード』は、正しさの対立を絶妙に描く
「正しい」と主張するためには「正しさの基準」が必要だが、それでも「規制されていないことなら何でもしていいのか」は問題になる。3枚の立て看板というアナログなツールを使って現代のネット社会の現実をあぶり出す映画『スリー・ビルボード』から、「『正しさ』の難しさ」を考える
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【書評】奇跡の”国家”「ソマリランド」に高野秀行が潜入。崩壊国家・ソマリア内で唯一平和を保つ衝撃の”…
日本の「戦国時代」さながらの内戦状態にあるソマリア共和国内部に、十数年に渡り奇跡のように平和を維持している”未承認国家”が存在する。辺境作家・高野秀行の『謎の独立国家ソマリランド』から、「ソマリランド」の理解が難しい理由と、「奇跡のような民主主義」を知る
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【幻想】日本での子育ては無理ゲーだ。現実解としての「夜間保育園」の実状と親の想いを描く映画:『夜…
映画『夜間もやってる保育園』によると、夜間保育も行う無認可の「ベビーホテル」は全国に1749ヶ所あるのに対し、「認可夜間保育園」は全国にたった80ヶ所しかないそうだ。また「保育園に預けるなんて可哀想」という「家族幻想」も、子育てする親を苦しめている現実を描く
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【不正義】正しく行使されない権力こそ真の”悪”である。我々はその現実にどう立ち向かうべきだろうか:…
権力を持つ者のタガが外れてしまえば、市民は為す術がない。そんな状況に置かれた時、私たちにはどんな選択肢があるだろうか?白人警官が黒人を脅して殺害した、50年前の実際の事件をモチーフにした映画『デトロイト』から、「権力による不正義」の恐ろしさを知る
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【真実】ホロコーストが裁判で争われた衝撃の実話が映画化。”明らかな虚偽”にどう立ち向かうべきか:『…
「ホロコーストが起こったか否か」が、なんとイギリスの裁判で争われたことがある。その衝撃の実話を元にした『否定と肯定』では、「真実とは何か?」「情報をどう信じるべきか?」が問われる。「フェイクニュース」という言葉が当たり前に使われる世界に生きているからこそ知っておくべき事実
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【想像力】「知らなかったから仕方ない」で済ませていいのか?第二の「光州事件」は今もどこかで起きて…
「心地いい情報」だけに浸り、「知るべきことを知らなくても恥ずかしくない世の中」を生きてしまっている私たちは、世界で何が起こっているのかあまりに知らない。「光州事件」を描く映画『タクシー運転手 約束は海を越えて』から、世界の見方を考える
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【あらすじ】濱口竜介監督『偶然と想像』は、「脚本」と「役者」のみで成り立つ凄まじい映画。天才だと思う
「映画」というメディアを構成する要素は多々あるはずだが、濱口竜介監督作『偶然と想像』は、「脚本」と「役者」だけで狂気・感動・爆笑を生み出してしまう驚異の作品だ。まったく異なる3話オムニバス作品で、どの話も「ずっと観ていられる」と感じるほど素敵だった
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【矛盾】その”誹謗中傷”は真っ当か?映画『万引き家族』から、日本社会の「善悪の判断基準」を考える
どんな理由があれ、法を犯した者は罰せられるべきだと思っている。しかしそれは、善悪の判断とは関係ない。映画『万引き家族』(是枝裕和監督)から、「国民の気分」によって「善悪」が決まる社会の是非と、「善悪の判断を保留する勇気」を持つ生き方について考える
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【矛盾】死刑囚を「教誨師」視点で描く映画。理解が及ばない”死刑という現実”が突きつけられる
先進国では数少なくなった「死刑存置国」である日本。社会が人間の命を奪うことを許容する制度は、果たして矛盾なく存在し得るのだろうか?死刑確定囚と対話する教誨師を主人公に、死刑制度の実状をあぶり出す映画『教誨師』から、死刑という現実を理解する
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【実話】障害者との接し方を考えさせる映画『こんな夜更けにバナナかよ』から”対等な関係”の大事さを知る
「障害者だから◯◯だ」という決まりきった捉え方をどうしてもしてしまいがちですが、『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』の主人公・鹿野靖明の生き様を知れば、少しは考え方が変わるかもしれません。筋ジストロフィーのまま病院・家族から離れて“自活”する決断をした驚異の人生
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【考察】映画『ジョーカー』で知る。孤立無援の環境にこそ”悪”は偏在すると。個人の問題ではない
「バットマン」シリーズを観たことがない人間が、予備知識ゼロで映画『ジョーカー』を鑑賞。「悪」は「環境」に偏在し、誰もが「悪」に足を踏み入れ得ると改めて実感させられた。「個人」を断罪するだけでは社会から「悪」を減らせない現実について改めて考える
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【感涙】衆議院議員・小川淳也の選挙戦に密着する映画から、「誠実さ」と「民主主義のあり方」を考える…
『衆議院議員・小川淳也が小選挙区で平井卓也と争う選挙戦を捉えた映画『香川1区』は、政治家とは思えない「誠実さ」を放つ”異端の議員”が、理想とする民主主義の実現のために徒手空拳で闘う様を描く。選挙のドキュメンタリー映画でこれほど号泣するとは自分でも信じられない
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【興奮】飲茶氏の超面白い哲学小説。「正義とは?」の意味を問う”3人の女子高生”の主張とは?:『正義の…
なんて面白いんだろうか。哲学・科学を初心者にも分かりやすく伝える飲茶氏による『正義の教室』は、哲学書でありながら、3人の女子高生が登場する小説でもある。「直観主義」「功利主義」「自由主義」という「正義論」の主張を、「高校の問題について議論する生徒会の話し合い」から学ぶ
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【知】内田樹が教育・政治を語る。「未来の自分」を「別人」と捉える「サル化した思考」が生む現実:『…
「朝三暮四」の故事成語を意識した「サル化」というキーワードは、現代性を映し出す「愚かさ」を象徴していると思う。内田樹『サル化する世界』から、日本の教育・政治の現状及び問題点をシンプルに把握し、現代社会を捉えるための新しい視点や価値観を学ぶ
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【権利】衝撃のドキュメンタリー映画『ヤクザと憲法』は、「異質さを排除する社会」と「生きる権利」を問う
仮に「ヤクザ」を排除したところで、「ヤクザが担ってきた機能」が不要になるわけじゃない。ではそれを、公権力が代替するのだろうか?実際の組事務所にカメラを持ち込むドキュメンタリー映画『ヤクザと憲法』が、「基本的人権」のあり方について考えさせる
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【真実?】佐村河内守のゴーストライター騒動に森達也が斬り込んだ『FAKE』は我々に何を問うか?
一時期メディアを騒がせた、佐村河内守の「ゴースト問題」に、森達也が斬り込む。「耳は聴こえないのか?」「作曲はできるのか?」という疑惑を様々な角度から追及しつつ、森達也らしく「事実とは何か?」を問いかける『FAKE』から、「事実の捉え方」について考える
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【告発】アメリカに”監視”される社会を暴露したスノーデンの苦悩と決断を映し出す映画:『スノーデン』…
NSA(アメリカ国家安全保障局)の最高機密にまでアクセスできたエドワード・スノーデンは、その機密情報を持ち出し内部告発を行った。「アメリカは世界中の通信を傍受している」と。『シチズンフォー』と『スノーデン』の2作品から、彼の告発内容とその葛藤を知る
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【絶望】光過敏症の女性の、真っ暗な部屋で光という光をすべて遮断しなければ生きられない壮絶な日常:…
日光に限らず、ありとあらゆる「光」に肌が異常に反応してしまうため、ずっと真っ暗闇の中でしか生きられない女性が、その壮絶すぎる日常を綴った『まっくらやみで見えたもの 光アレルギーのわたしの奇妙な人生』から、それでも生きていく強さを感じ取る
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【危機】教員のセクハラは何故無くならない?資質だけではない、学校の構造的な問題も指摘する:『スク…
『スクールセクハラ なぜ教師のわいせつ犯罪は繰り返されるのか』では、自分が生徒に対して「権力」を持っているとは想像していなかったという教師が登場する。そしてこの「無自覚」は、学校以外の場でも起こりうる。特に男性は、読んで自分の振る舞いを見直すべきだ
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【社会】学生が勉強しないのは、若者が働かないのは何故か?教育現場からの悲鳴と知見を内田樹が解説:…
教育現場では、「子どもたちが学びから逃走する」「学ばないことを誇らしく思う」という、それまでには考えられなかった振る舞いが目立っている。内田樹は『下流志向』の中で、その原因を「等価交換」だと指摘。「学ばないための努力をする」という発想の根幹にある理屈を解き明かす
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【絶望】「人生上手くいかない」と感じる時、彼を思い出してほしい。壮絶な過去を背負って生きる彼を:…
「北九州連続監禁殺人事件」という、マスコミも報道規制するほどの残虐事件。その「主犯の息子」として生きざるを得なかった男の壮絶な人生。「ザ・ノンフィクション」のプロデューサーが『人殺しの息子と呼ばれて』で改めて取り上げた「真摯な男」の生き様と覚悟
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【誠実】想像を超える辛い経験を言葉にするのは不可能だ。それを分かってなお筆を執った作家の震災記:…
旅行者として東日本大震災で被災した小説家・彩瀬まるは、『暗い夜、星を数えて 3.11被災鉄道からの脱出』でその体験を語る。「そんなこと、言わなければ分からない」と感じるような感情も包み隠さず記し、「絶望的な伝わらなさ」を感じながらも伝えようと奮闘する1冊
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【意外】東京裁判の真実を記録した映画。敗戦国での裁判が実に”フェア”に行われたことに驚いた:『東京…
歴史に詳しくない私は、「東京裁判では、戦勝国が理不尽な裁きを行ったのだろう」という漠然としたイメージを抱いていた。しかし、その印象はまったくの誤りだった。映画『東京裁判 4Kリマスター版』から東京裁判が、いかに公正に行われたのかを知る
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【排除】「分かり合えない相手」だけが「間違い」か?想像力の欠如が生む「無理解」と「対立」:『ミセ…
「共感」が強すぎる世の中では、自然と「想像力」が失われてしまう。そうならないようにと意識して踏ん張らなければ、他人の価値観を正しく認めることができない人間になってしまうだろう。映画『ミセス・ノイズィ』から、多様な価値観を排除しない生き方を考える
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【実話】正論を振りかざす人が”強い”社会は窮屈だ。『すばらしき世界』が描く「正解の曖昧さ」
「SNSなどでの炎上を回避する」という気持ちから「正論を言うに留めよう」という態度がナチュラルになりつつある社会には、全員が全員の首を締め付け合っているような窮屈さを感じてしまう。西川美和『すばらしき世界』から、善悪の境界の曖昧さを体感する
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私には、「謝罪すること」が「誠実」だという感覚がない。むしろ映画『AGANAI 地下鉄サリン事件と私』では、「謝罪しない誠実さ」が描かれる。被害者側と加害者側の対話から、「謝罪」「贖罪」の意味と、信じているものを諦めさせることの難しさについて書く
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「オウム真理教は特別だ、という理由で作られた”例外”が、いつの間にか社会の”前提”になっている」これが、森達也『A3』の主張の要点だ。異常な状態で続けられた麻原彰晃の裁判を傍聴したことをきっかけに、社会の”異様な”変質の正体を理解する。
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【驚愕】日本の司法は終わってる。「無罪判決が多いと出世に不利」「中世並み」な”独立しているはず”の…
三権分立の一翼を担う裁判所のことを、私たちはよく知らない。元エリート裁判官と事件記者の対談本『裁判所の正体』をベースに、「裁判所による統制」と「権力との癒着」について書く。裁判なんか関わることない、という人も無視できない現実。
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こんな映画、二度と存在し得ないのではないかと感じるほど衝撃を受けた『娘は戦場で生まれた』。母であり革命家でもあるジャーナリストは、爆撃の続くシリアの街を記録し続け、同じ街で娘を産み育てた。「知らなかった」で済ませていい現実じゃない。
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