目次
はじめに
この記事で取り上げる映画
出演:落合恵子, 監督:山﨑 裕侍
¥550 (2024/07/26 23:16時点 | Amazon調べ)
ポチップ
この映画をガイドにしながら記事を書いていきます
今どこで観れるのか?
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この記事の3つの要点
- 応援演説にやってきた安倍首相にヤジを飛ばしただけで大勢の私服警察官に無理やり拘束された個人が、国家賠償請求訴訟に踏み切った
- 後付けで無理やり理屈を捏ねた「法的根拠」の説明と、「上層部からの明確な指示があったのではないか」と推察される当時の状況
- 安倍元首相の銃撃事件や岸田総理の演説会場での爆発事件との関連性まで取り沙汰される異常さ
「多くの人が様々な事柄に『無関心』でいる状況」に警鐘を鳴らしているという意味でも観る価値のあるドキュメンタリー映画である
自己紹介記事
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記事中の引用は、映画館で取ったメモを参考にしているので、正確なものではありません
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とんでもなく面白く、もの凄く色んなことについて考えさせられた作品だ。本作は、観ようかどうしようか迷っていた映画で、正直観ない可能性もかなりあった。だから本当に観て良かったなと思うし、本作を観るかどうかはともかく、この記事を読むなりすることで、本作で示唆されている「日本のヤバさ」を多くの人に知ってほしいと願っている。
何故なら、本作で描かれていることは最終的に「すべての国民」に関係してくるからだ。
「ヤジ排除裁判」では、日本国民全員に関係する事件が争われた
本作で扱われる出来事は「ヤジ排除裁判」と呼ばれている。私は本作を観るまで、その裁判や対象となった事件のことをまったく知らなかった。札幌市で起こった事件であり、北海道のテレビなどでは大きく取り上げられたようだが、全国的には恐らくあまり大きな話題になっていなかったのではないかと思う。本作を観て、「まさかこんなことが起こっていたとは」と驚かされてしまった。
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「ヤジ排除裁判」は、「選挙の応援演説にやってきた安倍首相に街頭でヤジを飛ばした一市民が警察に取り押さえられた」という事件を巡る裁判である。これだけ聞くと、「私には関係の無い話だ」と感じるかもしれないが、まったくそんなことはない。それは、本件の原告となったソーシャルワーカー・大杉雅栄のこんな言葉からも理解できるのではないかと思う。
私にとって、裁判で争うことのメリットってまったくないんです。ただ、私は偶然その場に居合わせて、争う責任があると感じたから、結果として原告になっているだけです。だから、最初から一貫して、私は「公共の利益」を求め続けてきました。
本作を観れば、その通りだと理解できるのではないかと思う。まさにこの裁判は、「公共の利益」を巡る闘いなのである。今も最高裁に上告中で、最終的な判断はまだ出ていないが、その判決の行方には注目したいと思う。本件はとにかく「表現の自由」に関する争いであり、まさに「民主主義の根幹」に直結する問題なのだ。
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まあ実際には、このように言われても恐らく、多くの人はちょっと冷ややかな捉え方をするだろうと思う。「分かった分かった、政治の話ね。しかも政権の批判かぁ。いるよね、そういう、権力者に文句言いたいだけの人」みたいに感じる人も多いはずだ。私も割と同じように感じてしまうタイプであり、それもあって基本的には、あまり政治批判に関わりたいとは思えない。
ただ本作に関しては、実際の映像を観たら「そんなこと言っていられない」と感じるのではないかと思う。予告編に少しだけその状況が映っているが、「ただヤジを飛ばしただけの一市民が、大勢の警察官に無理やり拘束される」という映像は本当に、凄まじく衝撃的だった。本編を観れば、より強く衝撃を受けるだろう。マジで「こんなことが民主主義国家で行われていいんだろうか」と思わされたし、多くの人がそう感じたからこそ、札幌を中心に抗議活動が盛り上がったのだと思う。
「私は政治家にヤジを飛ばしたりしないから関係ない」みたいな判断は正しくない。先程も書いた通り、本作で扱われているのは「表現の自由」であり、作中で描かれる「ヤジ排除」が「正しい」と見なされるのであれば、「それがどんな表現であれ、『国が気に食わない』と考えばいくらでも弾圧できる」と解釈するしかなくなると言えるからだ。
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これははっきりと”私たち”の問題なのである。この点については明確に理解しておく必要があると言えるだろう。
さて、内容に触れる前に1つだけ注意点を。本作では冒頭で、「肩書は取材当時のもの」と表記されるので、この記事でもそれに倣うことにする。
「ヤジ排除事件」から裁判に至るまでの一連の流れ
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それではまず、「ヤジ排除事件」の概要と、それが裁判にまで発展した経緯について書いていこうと思う。
発端となったのは、2019年7月15日に札幌市内で行われた安倍首相による応援演説である。誰でも見られる街頭での演説だということもあり、多くの人が足を止めていた。そしてその中に後に「ヤジ排除裁判」の原告となる、ソーシャルワーカーの大杉雅栄と大学生だった桃井希生もいたのである。
大杉氏は「皆がヤジを飛ばすようなら、自分もそれに乗っかろう」ぐらいの気持ちで会場付近にいたという。彼がイメージしていたのは、2017年に秋葉原で行われた応援演説。ヤジを飛ばす集団に向けて安倍首相が「あんな人たちには負けません」と発言して話題になったが、そのようなヤジの応酬が起こるだろうと予測しつつ演説を待っていたというわけだ。
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しかし実際には、反対の声を上げる者は誰もいなかった。大杉氏は当初、「こんなヤジの飛ばない演説なんか見ていても仕方ない」と思い、そのまま帰ろうかとも考えていたそうだ。しかし彼は、「ここで一人声を上げるのも最悪だが、しかし、声を上げずに帰るのはもっと最悪だ」と考え直した。そしてたった一人、演説する安倍首相に向かって「安倍辞めろ!」と大声を張り上げることにしたのである。ちなみに彼は特定の政治団体に所属したことはなく、デモの参加経験もないという。
さて、声を上げた大杉氏は一体どうなったのか。なんと彼は、すぐ近くにいた複数の私服警察官に囲まれ、押され、身体を拘束された挙句、そのまま演説会場から遠ざけられてしまったのである。彼には状況が理解できなかった。当然だろう。「政治家に向かってヤジを飛ばすこと」が、警察官に身体を拘束されるに至るような「違法性」を有しているはずがないからだ。
そこで大杉氏は、自身を取り囲む警察官に「法的根拠」を問い質すことにした。「私は今、何の法律に違反してこのような状況に置かれているのですか?」と。しかし警察官は、その問いにまともには答えない。彼らは、「周りの人に迷惑が掛かるでしょ」「演説をちゃんと聞きたい人が聞けなくなっちゃうから」と漠然とした理由しか口にしないのである。しかしそれでいて、大杉氏を安倍首相の近くに向かわせないように、進路妨害や身体拘束などを続けるのだ。
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大杉氏はなおも抵抗した。とにかく何度も「法的強制力はあるんですか?」という類の問いかけをし続けたのだ。しかし警察官からは、「無いからお願いしているんです」と返答が来るばかり。そう、彼らはカメラの前で「法的強制力が無い」ことを認めているのだ。さらに大杉氏が「じゃあ忖度しろってことですか?」と、安倍政権下で頻繁に使われていた「忖度」という言葉を使って質問を続けるのだが、「まさに”暖簾に腕押し”とはこのこと」と言ったやり取りに終始する。結局、そんな不毛な応酬をしている内に、演説が終わってしまった。
演説が終わったので、大杉氏は「もう帰ろう」と考えていたそうだ。しかし警察官から「この後どうするんですか?」と聞かれたことで、「そうか、確か大通りでもまた演説するんだったな」と思い出したのだという。そしてここで、「次の会場に向かおうとしたらどうなるんだろう?」という考えが浮かんだに違いない。彼は恐らく、「ヤジを飛ばしたい」というよりは、「この付きまとっている警察官たちはどんな動きをするんだろう?」という興味から、次の演説会場に向かうことに決めたのだと思う。
次の演説会場の方向へと向かう大杉氏の後ろを、やはり警察官がぞろぞろとついてくる。そして、再びヤジを飛ばした瞬間に、同じように拘束され、現場から排除されてしまったというわけだ。これが大杉氏のケースである。
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一方、当時大学生だった桃井氏は、ヤジを飛ばすことなどまったく考えもしていなかった。恐らく「人が大勢集まっている」ぐらいの感覚でその場に立ち止まっていたのだろう。そのまま大人しく演説を聞いているだけのつもりだったのだが、彼女は、すぐ近くでヤジを上げた男性が誰かに拘束されている様子を目撃してしまう。もちろん拘束されたのは大杉氏である。彼女はその時点ではまだ、大杉氏を拘束したのが警察だとは思っていなかった。恐らく、自民党の関係者ぐらいに考えていたのだろう。そして、「ヤジも飛ばせない世の中なんておかしい」と感じ、彼女もまた一人で声を張り上げる決断をし、「増税反対」と口にしたのである。
するとやはり、彼女も近くにいた私服警察官に拘束されてしまう。大杉氏と同様、彼女も法的根拠等を問い質すのだが、とにかくまったく話が通じない。こうして桃井氏もまた、「違法行為をしているはずのない自分が、警察に囲まれ威圧されている」という状況に驚愕させられることになったのだ。
さらに桃井氏の場合、演説が終わった後も女性警察官2人に腕を掴まれたまま歩かなければならなかった。距離にして2km、実に1時間近くもその状態が続いたことになる。女性警察官は、「あなたとウィンウィンの関係になりたいだけ」「ジュースでも買ってあげようか」などと状況にそぐわないことばかり口にする一方で、「何故桃井氏を拘束しているのか」については一切説明しようとしない。「こんな扱いが警察の振る舞いとして許されるのか」と、彼女は怒りに震えていた。
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このような経緯から大杉氏と桃井氏は、北海道警察を相手取り「ヤジ排除」を不服とした刑事裁判を起こすことに決める。しかし両者とも、刑事裁判は「不起訴処分」という判断になった。その後、舞台を民事裁判に移し、国を相手取った国家賠償請求訴訟という形で、現在も裁判が進行中である。
大雑把ではあるが、これが本作で扱われる「ヤジ排除裁判」の概要だ。
北海道警察による「ヤジ排除」は、「衆人環視の中で行われた」という点が特に異常である
さて、この「ヤジ排除事件」の最も大きな特徴は、その様子が複数のカメラに記録されていたという点にあるだろう。大杉氏の場合は一緒にいた友人が、そして桃井氏は自らその時の状況を撮影していた。もちろんそれらは、映画の中で使われている。当たり前だが、隠し撮りをしているわけでも何でもないので、警察官は「自身が撮影されている」ことをちゃんと理解した上で行動していたというわけだ。
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しかもそれだけではない。安倍首相による応援演説なのだから当然、会場付近にはマスコミのカメラも多数存在していたのだ。にも拘らず、警察官は一切の躊躇を見せることなく、ヤジを飛ばした者をすぐさま拘束し排除したのである。この点が何よりも凄まじいと感じさせられた。このようなことが民主主義国家で起こっているのだから驚きだ。
彼らの弁護を担当した弁護士は、「もし映像が無かったら裁判を勧めなかった」と素直に語っていた。「ヤジ排除事件で裁判を起こす」というのは当然、「警察に一定の抑止力を与える」ことが一番の目的だと言える。しかし、もしも負けてしまえば、抑止力どころか、「このような行為は問題ない」とお墨付きを与えるような状況にもなりかねないのだ。敗訴よるデメリットがとても大きな裁判なのである。そして弁護士は、「実際の様子を撮影した映像が無ければ勝てる可能性は低い」と考えていたというわけだ。
だとすると、まさに「スマホの普及によって可視化されるようになった問題」の1つという見方も出来るのではないかと思う。
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本作には何度か、元北海道警察の原田宏二が語る場面がある。「自身の経験を踏まえた上で、警察側の理屈を語る人物」としての登場だ。ちなみに彼は、退任後に北海道警察の裏金問題を告発するなど、警察改革に対して声を上げる人物としても知られているという。警視長まで務めたこともあり、「警察内部の事情に詳しく、かつ、警察側の理屈に囚われない見方が出来る」という意味で、その意見はとても参考になると言える。
そして、確かその原田氏の発言だったと思うのだが、ある場面で次のように話していた。
一番恐ろしいのは、これが衆人環視の中で行われたことですよ。マスコミのカメラがあってもお構いなしだった。あなたたち、無視されたんですよ。
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ここで言う「あなたたち」とは、本作『ヤジと民主主義 劇場拡大版』を制作したHBC北海道放送のことである。当然、「ヤジ排除事件」が起こった日、HBC北海道放送のカメラも現場にいた。そして、「そんなあなた方の存在が、あっさりと無視されてあのような状況になったのですよ」という指摘が先の発言なのである。
本当に、この点には驚愕させられてしまった。繰り返すが、「カメラの存在」が抑止力にならなかったという事実は、私にはちょっと異常に思える。そして本作では、その「異常」を説明する「ある示唆」がなされるのだ。それが、「上からの指示があったのではないか」という見方である。
「上からの指示」を仄めかす様々な状況について
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さて、ここで少し想像力を働かせてみてほしい。
では、「安倍首相の応援演説の警護を担当した警察官」について考えてみることにしよう。ここでは一端、「ヤジが起こった場合の対処について、上層部からの指示は一切無かった」と仮定してみる。この場合当然、「現場にいた警察官の判断で、大杉氏と桃井氏を排除した」ことになるはずだ。まあ、当時の映像を観る限りはかなり無理がある想像なのだが、その疑念は一端脇に置き、このまま思考をもう少し先に進めてみることにしよう。
先程も触れたことだが、現場にいた警察官は当然、「マスコミのカメラが多数存在する」ことを知っていたはずだ。さらに、あらゆる人がスマホを持っている時代なのだから、「自分の行動が誰かしらのスマホのカメラで記録され得る」ことも当然認識できていたと考えていいだろう。さらに、これも先述の通りだが、現場の警察官は大杉氏に対して、「ヤジ排除には法的根拠が無い」と口にしていた。裁判においては、「これこれの行動にはこのような法的根拠がある」という説明がなされたのだが、今はその話は置いておこう。今問題にしているのは「当時現場にいた警察官がどのような認識だったのか」であり、「彼らは自身の振る舞いに法的根拠が無いことを理解していた」という点が重要なのである。
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このような場合、ごく一般的な人間なら躊躇してしまうのではないかと思う。「カメラで記録されている状況下で、警察官として法的根拠の無い行動を取る」というのは、個人の判断ではまず不可能なはずだ。多くの人がそのように推定するに違いないと私は考えている。
となれば当然、このような想像をしたくもなるだろう。つまり、「上からの明確な指示があり、『ヤジを飛ばした者がいれば拘束しても良い』とお墨付きをもらっていたのではないか」という想像だ。もしそうだとすれば、当日現場にいた警察官の行動は理解しやすくなるように思う。北海道警察は後に、「現場の警察官の判断だった」という趣旨の声明を出していたはずだが、さすがにそれは無理がある説明だろうと私には感じられる。
さて、ここで一応、「警察官の行動に法的根拠はあったのか」について触れておこう。先程、「刑事裁判では不起訴処分になった」と書いたが、その理由は「適法行為だったと見做された」からである。法律用語のことはよく分からないが、恐らく「『法的根拠があった』と認定された」ということなのだろう。一方で、映画に登場する様々な専門家は、「明らかに違法」と断言していた。法律上の判断はともかくとして、一般市民の感覚としては、専門家の判断の方が受け入れやすいのではないかと思う。
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ちなみに、「演説の妨害」がどのような場合に違法行為と見做されるのかについては、1948年に最高裁が判例を出している。それによると、「聴衆が演説を聴くことを不可能に、あるいは困難ならしめる行為」は違法であると判断されるのだそうだ。平たく言うと、「複数の人が拡声器などを使って演説を妨害する」などの状況が想定されているという。つまり、大杉氏や桃井氏のように、「たった1人で、拡声器も使わずにヤジを飛ばす行為」が「違法行為」と見做されることはあり得ないことになる。このような観点から考えても、「大杉氏や桃井氏を拘束・排除した警察官の行為の方こそが違法である」と判断するのが妥当ではないかと思うのだ。
さて話を戻そう。「現場の警察官には、上からの指示があったのではないか」という話だ。そして本作では、「その『上』は、相当『上』なのではないか」と示唆するような驚くべき事実が扱われているのである。
事件が起こった2019年当時、要人の警護等を担当する警察庁警備局のトップを務めていたのは大石吉彦という人物だった。そして彼は実は、2012年から6年間、安倍首相の総理秘書官だったのである。誰か(HBC北海道放送だったかもしれない)が当日の警備計画に関する情報開示請求を行ったのだが、開示された情報は全ページ黒塗り、いわゆる「のり弁状態」だった。しかし「大石吉彦警察庁警備局長」と書かれた部分は隠されておらず、当然ではあるが、その警備計画は大石氏の責任で作られたものであることが分かる。
そしてここからは想像になるが、「かつて安倍首相の総理秘書官を務めた人物が作成した警備計画が黒塗りで出てきたのだから、そこには何か『やましさ』みたいなものがあるのだろうし、だとすればそれは、大石氏から『ヤジを飛ばした人間を排除しろ』という指示があったことを示しているのではないか」と考えたくもなるだろう。これは決して「無理やりな推定」などではなく、提示された状況から容易に推察され得ることだと私は思っている。
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先程紹介した元北海道警察の原田氏はかつて、海部総理の警護に関わった経験があるそうだ。容易に想像出来るだろうが、「現職総理がやってくる」となれば、それはもう綿密な警護計画が策定されるという。だから原田氏も、北海道警察が主張していた「現場の警察官の独断で行った」という主張はあり得ないと言っていた。まあ、普通に考えてその通りだろう。市民感覚を無視した「言い訳」にしか受け取られないのも仕方ないと私は思う。
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さて、「ヤジ排除裁判」は現在、民事訴訟として継続中なのだが、その中で北海道警察がどのような主張をしているのかを確認しておくことにしよう。
恐らく北海道警察としても、「『演説の妨害』に対処しようとした」などという主張が通るはずはないと理解していたのだろう。だから、明らかに「後付け」にしか思えない別の理屈を持ち出してきた。それが、「警察官職務執行法」の第4条・第5条の条文である。
では、実際の法令の文章を引用しておこう。
第4条 避難等の措置
警察官は、人の生命若しくは身体に危険を及ぼし、又は財産に重大な損害を及ぼす虞のある天災、事変、工作物の損壊、交通事故、危険物の爆発、狂犬、奔馬の類等の出現、極端な雑踏等危険な事態がある場合においては、その場に居合わせた者、その事物の管理者その他関係者に必要な警告を発し、及び特に急を要する場合においては、危害を受ける虞のある者に対し、その場の危害を避けしめるために必要な限度でこれを引き留め、若しくは避難させ、又はその場に居合わせた者、その事物の管理者その他関係者に対し、危害防止のため通常必要と認められる措置をとることを命じ、又は自らその措置をとることができる。
e-Gov法令検索
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e-Gov法令検索
ただ、法律の文章というのはなかなかスッと理解できないことの方が多いので、作中で専門家がざっくり要約していた説明にも触れておこう。要するに、第4条は「津波や爆発などの危険が”まさに起こっている状況”においては、人々の安全を確保するために、その場に居合わせた者を強制的に避難させることが許される」、第5条は「命や身体や財産に重大な危険が及ぶことが予見される犯罪が”まさに起ころうとしている”のであれば、その行為を強制的に制止出来る」という内容である。そして北海道警察は、この2つの条文を持ち出してきて、「警察官の職務は適法だった」と主張したのだ。
さて、一般的な市民感覚からすると、このような北海道警察の主張はどのように感じられるだろうか? 普通に考えて、「第4条は当てはまるはずがない」と感じるのではないかと思う。第4条の主張は、「もの凄く危険な状況だったら」という条件下でのみ成立するものであり、大杉氏・桃井氏が排除された状況に当てはまるはずがないからだ。また、少し説明を加えておくべきだろうが、北海道警察は「大杉氏・桃井氏の行為によって、周囲の人に危険が及ぶから排除した」と主張しているのではない。彼らは、「大杉氏・桃井氏の行為によって、彼ら自身に危険が及ぶから排除した」と主張しているのである。例えば、「道路に身を乗り出そうとしており、車に轢かれる可能性もあったため制止した」みたいなことだ。そんなアホみたいな主張が通るはずもないだろう。
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さて、この第5条に関しては、提訴後に発生したある出来事との関連を交えつつ話が展開されることになる。次でその辺りの話に触れようと思う。
政治家を狙った襲撃事件との関連性
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「ヤジ排除裁判」は一審の札幌地裁において、「原告側のほぼ完全勝利」と言える判決が出された。つまり、「原告の行動に一切の問題はなく、一方で、そんな原告を拘束した警察官の行為はそのほとんどが違法だった」という判断になったのである。後で触れるが、警察官の行為を一部「適法」と認めている箇所もあり、そのため「ほぼ完全勝利」という表現を使った。しかし、その点は裁判全体の話で言えば些末な部分であり、原告側が主張したことは原告側も驚くぐらい完璧に認められたと言っていい。
しかしその後、銃撃・爆発事件が起こる。すると、「札幌地裁がこんな判決を出したせいで事件が起こったのだ」という批判が噴出したという。要するに、「札幌地裁の判決が現場警察官の足枷となり、そのせいで対応が後手に回り、悲劇が起こってしまった」と解釈されるようになったのである。
私の感覚では、「あまりに我田引水すぎる主張」に思える。「ヤジ」と「銃撃・爆発」を同列に並べて議論するのは無理があるだろう。原告の弁護を担当した弁護士も、「無理筋の主張だ」と自身の見解を語っていた。彼は、「ヤジ排除」においては「やるべきではない対応をしたこと」が問題であり、「銃撃・爆発事件」における「やるべき対応をしなかったこと」とはまったく性質が異なると主張している。私も同じように感じた。
さらに、札幌地裁が警察官の行為を「適法」と認めた箇所が、まさにこの話に関係していると言えるのだ。札幌地裁が「適法」と認定したのは、「大杉氏が街宣車に向かって走り出そうとするのを警察官が取り押さえた場面」である。この状況について札幌地裁は、「『原告が街宣車に乗る人物に対して危害を加えようとしている』と警察官が判断するのは妥当」としており、警察官が行った行為の中で、唯一これだけが「適法」と認定されたのだ。
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当然だが、大杉氏は街宣車に乗る人物に危害を加えるつもりなどなかった。しかし札幌地裁は、「警察官がそのように判断するのは妥当」だと見なし、「その判断に基づいて大杉氏を拘束したことは正しい行為だった」と認めているのである。とすれば、「この判決が、現場の警察官を萎縮させた」などという批判が当てはまるはずもないだろう。札幌地裁は、「常識的に考えて『危険がある』と判断される状況では、拘束等の行為は妥当だ」と認めているのだから。
しかし、その辺りの事情はどうあれ、結果として「銃撃・爆発事件」は控訴審に影響を及ぼすことになった。「及ぼすことになった」というのはあくまでも原告側の解釈に過ぎないが、そのような受け取り方になっても仕方ないように思う。というのも控訴審では、一審とは大分異なる判決が出たのである。札幌高裁は、北海道警察側の主張をかなり”汲んだ”判決を出したのだ。この結果には、弁護士が記者会見で、「このような恣意的な判断がまかり通るなら、何のための司法だろうか」と、その憤りを表明していたほどである。
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証拠そのものはとてもシンプルだ。「大杉氏がいた辺りを捉えた防犯カメラの映像」であり、そこには「大杉氏の近くにいた自民党員が、大杉氏に2度拳を突いている」という状況が映し出されていた。そしてこの映像を根拠に北海道警察は、「大杉氏が被害を受ける犯罪が起こり得ることが明白だった」と主張したのだ。もう少し噛み砕いて言えば、「自民党員が2度拳を突いており、そのままにしていたら大杉氏がその自民党員からより大きな被害を受ける可能性が十分に予見出来た。だからその予防的措置として、その場から大杉氏を引き離したのだ」という主張なのである。まあ、普通に考えれば「何を言ってるんだお前は」という話なのだが、そんな主張はこれまでの裁判でも散々出てきたので別にいい。
私が最も驚いたのは、「何故北海道警察は、一審でこの証拠を提出しなかったのか」である。防犯カメラ映像なのだから、この映像はすぐに押収されたはずだし、当然、一審でも証拠として提出出来たはずだ。しかしそうした場合、1つ大きな問題点が出てくるのだが、想像できるだろうか?
先程の証拠を別の角度から捉えると、「自民党員が大杉氏に暴力を振るおうとしていた」と主張していることになるだろう。つまり、この映像を証拠として提出するためにはそもそも、映像に映っている自民党員を「暴行罪」などで立件しなければならないのである。警察としては当然、そうしなければ辻褄が合わないだろう。しかし”何らかの理由”で、警察はそうしたくなかった。そのため彼らは、この自民党員の行為が”時効”になるのを待ってから、この映像を証拠として提出したのである。
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では、「警察がこの自民党員を立件したくなかった理由」とは一体なんだろうか? 普通に考えれば、「警察自身も、この自民党員の行為が『暴行』であるなどとは考えていなかったから」だろう。しかし一方で、裁判に負けるわけにはいかない。だからこんな無理くりの証拠を出してきたと考えるしかないのである。本当に国家権力というのは、ムチャクチャなことをやりたい放題やってくるなと感じさせられた。
この点については桃井氏が、裁判後の記者会見の場で実に的確な発言をしており、その内容がとても印象的だったので紹介しよう。
北海道警察のこの主張が通るなら、例えば私が自民党員だとしてですよ、ヤジを飛ばしている人に暴行すれば、警察が排除してくれるわけですよね? そしたらみんな、暴行しませんか? なにせ、この自民党員の方は、なんとお咎めもないんですから。
北海道警察の主張は、「『暴行した側』ではなく『暴行された側』だけを排除し、その上で『暴行した側』には何の処罰も与えなかった」と単純化出来るだろう。そしてこんな理屈が本当にまかり通るのであれば、「気に食わない奴が近くにいたら、みんなで暴行しようぜ。そしたら警察が、その気に食わない奴を排除してくれるし、俺達はお咎めなしだぜ」という主張だって成り立ってしまうことになるはずだ。その辺りのことを警察は本当に理解できているのだろうか。そのあまりに凄まじい理屈に、心底驚かされてしまったのである。
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また桃井氏は別の場面で、「札幌地裁の判決のせいで銃撃・爆発事件が起こってしまった」という指摘に関しても的確な主張をしていた。
初めは「全然関係ない」って思ってたんですけど、例えばですよ、「ヤジさえ飛ばせない世の中だからこそ、『暴力で自分の主張を通さなければならない』と考える人が出てくる」とも解釈出来るわけですよね。そういう意味で、今ではむしろ関係があるんじゃないかと考えています。
つまり、「札幌地裁の判決のせいで銃撃・爆発事件が起こった」という繋がりではなく、「『ヤジ排除事件』のような風潮が積もり積もったことで銃撃・爆発事件が起こった」という形で両者に関連性を感じているというわけだ。この指摘もまた納得感のあるものだった。物事をシンプルに捉える力のある人なのだなと思う。
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「自分には関係ない」ではなく、「自分は何もしてこなかった」と受け取るべき
さて最後に、当事者ではない者がこの事件をどのように受け取るべきなのかに関する示唆について触れて記事を終えようと思う。
映画の冒頭で、神学者であり反ナチ運動家としても知られるマルティン・ニーメラーが遺したのだろう言葉が引用されていた。
ナチスが共産主義者を連れて行った時、私は黙っていた。
共産主義者ではなかったからだ。
社会民主主義者が締め出された時、私は黙っていた。
社会民主主義者ではなかったからだ。
労働組合員が連れて行かれた時、私は黙っていた。
労働組合員ではなかったからだ。
そして、彼らが私を追ってきた時、私のために声をあげる者はもう誰一人残っていなかった。
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この言葉は、「無関心」が当たり前のように蔓延っている現代社会にもまさにピッタリ当てはまると言えるだろう。
マルティン・ニーメラーの経験は、「ヤジ排除事件」に対する私たち一般市民の感覚とも重なるはずだ。私を含めた多くの人は、この「ヤジ排除事件」に直接的には関わっていない。だから「わざわざ自分が声を上げる必要はないだろう」と考える人も多いのではないだろうか。しかしそのようなスタンスを取っていると、いざ自分が何か「当事者」の立場に立たされた時に、自分のために声を上げ協力してくれる人は誰もいなくなっているかもしれないのだ。
作中には、ある意味では「この事件とはほぼ無関係の人」も登場する。桃井氏が警察官に拘束された際にたまたま近くに座っていただけの女性だ。彼女は恐らく頼まれたのだろう、裁判で証人として出廷し、その際、「警察が主張するような危険な状況ではまったくなかった」と証言した。それだけでも勇気があると感じるが、さらに本作にも登場し、カメラの前で次のように語ったのである。
周りの人は誰も何もしようとしなかったですね。ちょっと笑ってるみたいな人もいて、馬鹿にしているような感じでした。でも、私も何もしませんでしたからね。反省しています。
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少なくとも、このような自覚を持てるだけで大いに評価すべきだと私は思う。「何もしなかったこと」を「悪いこと」だと捉えるのは、とても難しいことだからだ。
実際には、たった1人の女子学生を大勢の警察官が取り囲んでいる状況において、たまたまそこに居合わせただけの一市民に出来ることなど何もないとは思う。しかしそれでも、「あの時私は何もしなかった」と自覚することはとても重要だ。何故なら、目の前の状況を「自分ごと」として捉えているからである。
正直言って、本作で描かれている状況を「自分ごと」と認識するのはかなり難しいだろうと思う。しかし、難しいからと言って諦めていると、いずれ自分に跳ね返ってきかねない。だからこそ、本作で描かれていることを「我々の生活を足元から揺るがすようなとても重大な問題」だと捉え、普段から自分なりに考えを深めておくべきだと私は感じた。
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最後に少し、実際に「ヤジ排除」に関わった現場の警察官について少し考えてみたい。
元北海道警察の原田氏は「警察組織」について、次のようなことを語っていた。
警察には、「治安維持のためなら、多少のやり過ぎや違法行為は許されるんじゃないか」という風潮がある。
彼が主張するように、もしもそのような風潮が本当にあるのなら、私にはとても怖いことに感じられる。それが事実であるならば、「警察組織」全体の問題として改善されてほしいと思う。
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さてその一方で、仮に「上層部からの指示があった」のだとして、そうだとしても私は、「あのような『ヤジ排除』の行為を、現場にいた警察官は、何の疑問も抱かずに、『これが正義である』と信じてやっていたのだろうか?」と感じてしまう。最悪、「上からの命令だから仕方なく」と思いつつやっていたのであれば、まだ理解はできる。しかしそうではなく、「指示があれば、疑問を抱くことなく命令に従うのが自分の職務だ」、あるいは「これが『国が考える正義』であるなら、それを体現しなければならない」などと考えていたのであれば、私はそのことにも恐ろしさを感じてしまう。
そしてそのような人が多い組織なのだとしたら、そこに魅力を感じる人は決して多くはないだろう。
警察官を目指そうとする人の多くはやはり、「世のため人のために尽くしたい」という想いを少なからず抱いているはずだ。しかし、北海道警察が行った「ヤジ排除」の行動は、「命令だから仕方ない」にせよ「命令なのだから守るのが当然」にせよ、未来ある若者からは「世のため人のために尽くしている」という風には見えないだろうと思う。
さらに「ヤジ排除」を行ったことで結果として裁判に発展し、全国的にというわけではなかっただろうが、少なくとも北海道全体を巻き込むような大きな問題にまで膨らんでしまった。結果から見ればむしろ、何もせずにヤジを放置しておいた方が北海道警察としてもプラスだったのではないかと考えざるを得ないだろう。
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私は個人的な感覚として、「『国を守る』という大義のために、『個人が犠牲になる』のは仕方ない」と思っている。まあこの意見には賛否あるだろうが、ともかく、そんな風に考えている私でも、この「ヤジ排除」は到底受け入れられない横暴であるように感じられた。本当に、真っ当なことを真っ当に行う国であってほしいと、シンプルにそれだけを願っている。本作を観て私は、自分が住んでいる国のあり方に強く絶望させられてしまった。
これは、多くの人が知るべき現実である。
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「聖書研究に熱心な日本人証人」として「エホバの証人」で活動しながら、その聖書研究をきっかけに自ら「洗脳」を脱した著者の体験を著した『カルト脱出記』。広い意味での「洗脳」は社会のそこかしこに蔓延っているからこそ、著者の体験を「他人事」だと無視することはできない
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火災で一命を取り留め入院していた患者が次々に死亡した原因が「表示の10倍に薄められた消毒液」だと暴き、国家の腐敗を追及した『ガゼタ』誌の奮闘を描く映画『コレクティブ 国家の嘘』は、「権力の監視」が機能しなくなった国家の成れの果てが映し出される衝撃作だ
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タイトルを伏せられた覆面本「文庫X」としても話題になった『殺人犯はそこにいる』。「北関東で起こったある事件の取材」が、「私たちが生きる社会の根底を揺るがす信じがたい事実」を焙り出すことになった衝撃の展開。まさか「司法が真犯人を野放しにする」なんてことが実際に起こるとは。大げさではなく、全国民必読の1冊だと思う
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1964年の東京オリンピックを機に建設された「都営霞ケ丘アパート」は、東京オリンピック2020を理由に解体が決まり、長年住み続けた高齢の住民に退去が告げられた。「公共の利益」と「個人の権利」の狭間で翻弄される人々の姿を淡々と映し出し、静かに「社会の在り方」を問う映画
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日本の「難民認定率」が他の先進国と比べて異常に低いことは知っていた。しかし、日本の「難民」を取り巻く実状がこれほど酷いものだとはまったく知らなかった。日本で育った2人のクルド人難民に焦点を当てる映画『東京クルド』から、日本に住む「難民」の現実を知る
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映画『食の安全を守る人々』では、世界的バイオ企業「モンサント社」が作る除草剤「ラウンドアップ」の問題を中心に、「食の安全」の現状が映し出される。遺伝子組み換え作物や輸入作物の残留農薬など、我々が口にしているものの「実態」を理解しよう
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『衆議院議員・小川淳也が小選挙区で平井卓也と争う選挙戦を捉えた映画『香川1区』は、政治家とは思えない「誠実さ」を放つ”異端の議員”が、理想とする民主主義の実現のために徒手空拳で闘う様を描く。選挙のドキュメンタリー映画でこれほど号泣するとは自分でも信じられない
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「爆弾事件の被害を最小限に食い止めた英雄」が、メディアの勇み足のせいで「爆弾事件の犯人」と報じられてしまった実話を元にした映画『リチャード・ジュエル』から、「他人を公然と批判する行為」の是非と、「再発防止という名の正義」のあり方について考える
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「ヤクザ」が排除された現在でも、「ヤクザが担ってきた機能」が不要になるわけじゃない。ではそれを、公権力が代替するのだろうか?実際の組事務所(東組清勇会)にカメラを持ち込むドキュメンタリー映画『ヤクザと憲法』が映し出す川口和秀・松山尚人・河野裕之の姿から、「基本的人権」のあり方について考えさせられた
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【真実?】佐村河内守のゴーストライター騒動に森達也が斬り込んだ『FAKE』は我々に何を問うか?
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