目次
はじめに
この記事で取り上げる映画
「デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 前章・後章」公式HP
この映画をガイドにしながら記事を書いていくようだよ
今どこで観れるのか?
公式HPの劇場情報をご覧ください
この記事で伝えたいこと
とにかく何よりも、声優を務めた幾田りら・あのちゃんが素晴らしすぎました
本作においては、門出・おんたんの声から2人の顔が浮かぶことが、観客としてもかなりプラスに働いたと考えています
この記事の3つの要点
- 狂った世界の中で、「通常運行の女子高生の日常」を軽快に描く感じがもの凄く良かった
- 東日本大震災やパンデミックなどを想起させる設定・展開であり、私たちが生きることになった世界を先取りしていたような作品だ
- 「歪んだ正義感」が残酷に描かれる前章のある展開が、作品全体の中でどのように接続されていくのかが見どころ
『配役の絶妙さも含め、「総力戦で傑作を作り上げた」という印象が強い、とても素晴らしい作品だった
自己紹介記事
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『うみべの女の子』は実写映画もメチャクチャ良かったよね
メチャクチャエロいんだけど、それだけじゃない感じがとてもに見事に描写されてたと思う
本作『デデデデ』のマンガは読んでおらず、というか正直に言えばマンガの存在も知らなかったのですが、浅野いにお作品のアニメ化ということで、公開が発表されてから楽しみに待っていました。そんなわけで、マンガと映画でどのような差があるのか、ちゃんとは分かりません。「ラストの展開が原作とは違う」とか、「マンガでは後半の方で出てくる展開が前章で描かれている」など、鑑賞後に目についたネット記事を読んで知っていることもあるのですが、基本的には「原作のことを知らない人間が記事を書いている」と考えて下さい。
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ちなみに、本作は2部作で、もともとは前章が公開された1ヶ月後に後章が公開予定だったのですが、前章公開時点で「後章の公開が1ヶ月先延ばしになる」という情報が出ていました。これもネット記事で読んだのですが、「アニメ映画の制作に深く関わった原作者・浅野いにおのこだわりで制作に遅れが生じた」みたいなことらしいです。「前章を観た後で2ヶ月も待つのか!」と待ち遠しかったわけですが、原作者のこだわりが詰まった作品ということで、より良いものに仕上がっているのだと思います。
いつもなら、2ヶ月も経つと前章の話を忘れちゃうけど、今回は大分覚えてたよね
それぐらい設定もキャラクターも斬新だったし、あとはとにかく、メチャクチャ面白かったからだろうなぁ
前章の内容紹介
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物語は冒頭から、トップスピードで展開していく。東京の上空に突如、謎の巨大飛翔体が現れたのだ。正体はまったくの不明。しかし当然、何も対処しないわけにはいかない。そこで日本政府がアメリカに要請し、米軍の出動が決まった。その際米軍はなんと、初めて実戦投入する新型爆弾を、日本に通告もなく使用したのである。その影響で大田区は汚染され、「残留A線」と呼ばれる電波が出続ける土地になってしまった。
3年経った今も。
後に<8.31>と名付けられた悲劇から3年が経ち、東京はかりそめの平和を取り戻していた。上空には今も巨大な<母艦>が浮かんでいるのだが、散発的に小規模な事態が動く以外、これといった反応はない。なので人々は、「上空に巨大物体が浮かんでいる」ということをさほど意識することなく”普通”の生活を取り戻していた。もちろん、元通りとはいかない。大田区は汚染されたままだし、「許可無く新型爆弾が使われたこと」などに対する抗議デモは度々行われている。また、主人公の1人である小山門出の母親も、<8.31>以降生活が一変した1人だ。大田区からは距離のある下北沢に住んでいるにも拘らず、汚染を気にして、室内でもマスクとゴーグルをずっと付けているのである。
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何も変わっていないわけではないのだ。
しかし、「上空に巨大物体が浮かんでいる」という異常事態が常に眼前に存在している割には、社会の混乱は比較的穏やかだと言えるだろう。そしてその「変化の穏やかさ」は、ある種の失望を生みもする。門出は、ある人物が「失いたくないものがある」と口にした場面で、次のように返していたのだ。
<8.31>の時、私期待したんです。
失いたくないものなんて何もないから、いっそメチャクチャに壊してくれても構わなかったのに。
気怠い日常を生きる者にそんな感情を抱かせるほど、世の中はあまりにも変わらなかったのだ。
そんなわけで、冒頭の怒涛の展開の後、一気に時間を飛び越えた3年後の世界においては、女子高生になった小山門出とその親友・中川凰蘭(おんたん)の「何でもない日常」がメインで描かれていくことになる。
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彼女たちの日常は、バカバカしく始まりバカバカしく終わっていく。2人は暇さえあればオンラインでシューティングゲームをしているし、同級生の栗原キホ、出元亜衣、平間凜と5人で中身のないアホみたいな話をダベったりもしている。しかしやはり、なんと言っても関心事は恋愛だ。
栗原キホは小比類巻健一に告白して付き合い始めた。そのことを知ったおんたんから”裏切り者”認定されるも、積極的にリア充を目指しているキホは気にしない。一方門出は、担任の教師・渡良瀬に恋心を抱いている。門出は門出なりに色々アクションを起こしているつもりなのだが、なかなか上手く行かない。そしてそんな門出の恋路のことはおんたんも応援している。
そんなおんたんは、常に突拍子もないことを口にしては場をかき乱していく存在だ。しかしそれでも、5人のバランスは絶妙に保たれている。ある場面で彼女たちは、「仲が良すぎて吐きそう」と口にしていたのだが、それぐらいの関係性というわけだ。
そんな「馬鹿話しかしていない女子高生の日常」が描かれているだけの物語が、ある時点から急に変転し……。
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とにかく「キャラクター」と「会話」がとんでもなく魅力的
本作はまず、門出やおんたんたちの「会話」がとにかく魅力的に展開される作品です。「世界中の『無駄』をかき集めて煮詰めてバラまいた」みたいな「何の意味もない会話」は聞いているだけで心地よく、その「中身の無さ」にうっとりしてしまいました。
浅野いにおって私とほぼ同年代、この記事を書いている時点で43歳らしいんだけど、なんでこんな面白い会話が書けるんだろうって思う
「女子高生っぽい会話かどうか」については判断できないけど、少なくとも「メチャクチャ面白い」よね
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しかも、映画を観ながらとても不思議だったのが、「おんたんの声が、あのちゃんそのものだったこと」です。そして、その形で作品が成立していることに驚きました。おんたんの声は、まさに「あのちゃんが普段通り喋っている」みたいな雰囲気で、そしてそれで「おんたん」というキャラクターが見事に成立しているのです。原作の段階から浅野いにおがあのちゃんのことを意識していたのか(しかし、連載時点ではあのちゃんはまだそこまで有名ではなかったはずだから、そんなわけはないでしょう)、あるいはアニメ化にあたっておんたんのキャラクターをあのちゃんに寄せることにしたのか。ちょっとその辺りの事情は分かりませんが、とにかく「『あのちゃんが普通に喋っている声』でおんたんのキャラクターが絶妙に成立している」ことに驚かされました。
そしてこのことは、観客の受け取り方にも影響を与えていると言えるでしょう。おんたんは、ビックリするほどぶっ飛んだキャラクターなのですが、その声をあのちゃんが担当することで、「まあ、あのちゃんだしな」みたいな”謎の納得感”が生まれているのです。普通に考えると、「おんたんのキャラクターにはリアリティが無い」と感じてしまうのではないかと思います。しかし、あのちゃんの声であることにとって、「あのちゃんはリアルに存在してるなぁ」とも感じ、そしてそれ故に、「おんたんがリアルに存在していてもおかしくないのか」みたいな感覚にさせられるというわけです。
どの辺りまで「制作側が意図してやったこと」なのかよく分からないけどね
でもとにかく、「おんたんの声にあのちゃんを選んだこと」は大正解過ぎると思うわ
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そんなわけで、「『ぶっ飛んだおんたん』に門出を含む周囲の人間がブンブン振り回される」みたいな、ホントに「何でもない日常」が描かれます。もちろん、<母艦>の存在にまったく触れられないわけではなく、というかおんたんは<母艦>に興味津々なので、「墜落した偵察機」を見に行ってテレビに映ったりするわけですけど、ホントにそういう他愛もない感じの話が続くのです。
あとは、彼女たちの日常というわけではないのですが、作中には『イソベやん』という、明らかに『ドラえもん』をオマージュした「国民的マンガ」が登場し、物語に少し絡んできたりします。門出がイソベやんの大ファンなんですよね。ちなみに、『イソベやん』にはのび太くんをオマージュしたキャラクターが出てくるのですが、その声を担当していたのが、先日亡くなったTARAKOさんでした。
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そんな風にして「何でもない日常」を積み上げていくわけですが、前章の途中から物語のトーンがガラッと変わります。
脚本を担当した吉田玲子がそういう構成に変えたって、ネット記事で読んだわ
前章の中盤から、それまでの雰囲気とはまったく異なる物語が展開されていく
『デデデデ』の連載は2014年から始まっており、やはり、2011年に起こった東日本大震災の影響を受けていると考えるのが自然でしょう。<8.31>というネーミングは明らかに、<3.11>を意識したものだと思われます。そして、連載が終了したのは2022年。連載の最終盤こそコロナ禍と重なってはいるものの、連載開始前に考えただろう「上空に巨大物体が浮かんでいる」という設定は、「COVID-19によるパンデミック」を意識させるものだと私には感じられました。
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というのも私は、「パンデミック」を「世界中の人が同じ問題に同程度の関心を抱いている、かなり特異的な出来事」だと捉えているからです。
もちろんこれまでにも、「世界中に衝撃を与えた出来事」はたくさん起こってきました。9.11テロ、東日本大震災、ウクライナ侵攻など、数えればキリがないでしょう。しかし残念なことではありますが、それら1つ1つは、「国や地域ごとに関心の度合いが異なるもの」だったようにも思います。
日本人にとっての東日本大震災と、日本以外の国の人にとっての東日本大震災はやっぱり違うしね
それで言ったら、東北の人にとっての東日本大震災と、東京の人にとっての東日本大震災も違うし
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しかし「パンデミック」は、「世界中の人々が、まったく同じ対象に向けて、同じぐらいのレベルの関心を抱き続けた出来事」だと私には思えています。そしてそのことが、「上空に巨大物体が浮かんでいる中で日常を過ごす日々」と重なる感じがしたのです。結果的にではありますが、「『コロナ禍における人々の厭世的な気分』を先取りして提示した作品」とも受け取れるかもしれません。
もちろん、「パンデミック」が起こることなど予測はできないわけで、これは偶然の産物でしょう。一方で、我々が生きる世界のリアルを浅野いにおが意識的に採り入れたのだろうと感じられた描写もあります。それが、前章の中で唐突にガラッと物語の雰囲気が変わるパートでの描写です。
「マジで何が起こってるわけ?」って感じだったからなぁ
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そこで描かれているテーマについては後で触れますが、まずはざっくり状況を説明しておきましょう。舞台となるのは、門出とおんたんの小学校時代。前章の中盤以降に配置される物語なので、どう展開するのかについて詳しくは触れませんが、とにかく最も印象的だったのは、「高校時代の2人とは性格が真逆に見える」という点です。そしてさらに、小学校時代の話と高校時代の話がどう繋がるのか、前章では解消されません。前章を観た人は、まずこの点がメチャクチャ気になるだろうなと思います。
小学校時代においては、おんたんが実に大人しいキャラクターとして描かれていました。そして、門出の方がぶっ飛んだキャラクターとして登場するわけです。そしてこの「小学校時代の門出」がメチャクチャ素敵でした。浅野いにおらしさ全開とでも言うべき、「観る者の自意識をグサグサと突き刺してくる感じの雰囲気」をバリバリの放出しているのです。そしてこの物語に、ちょっとポイントとなる形でイソベやんが関わってきます。この絡ませ方も上手かったです。
「ここでそんな風に出てくるんか」って感じだったよね
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そして、この小学校時代の物語の中で描かれる主なテーマが「正義」というわけです。
ネットの世界で散見される「歪んだ正義感」が過剰に、しかしリアルに描かれていく
小学校時代の2人の物語についてはこれ以上触れないことにしますが、そこで描かれる「正義」には前段となる情報が存在します。作中には「おんたんの兄」が出てくるのですが、「彼は日々、ネット監視に勤しんでいる」という話が出てくるのです。この点も踏まえれば、小学校時代の物語の中で描かれる「狂気」はやはり、「ネット上の世界で一層悪化していく『歪んだ正義感からの行動』が風刺的に描かれている」と考えるのが自然だと思います。
さらに別の場面で別の人物が口にする「ネットではみんなこう言っている」というフレーズも、「ネットの闇」を描くための補助線だと言えるでしょう。「上空に巨大物体が浮かんでいる」という世界においてはやはり、ネット上に様々な言説が流布します。そしてその人物は、そんなネット情報ばかりを鵜呑みにしているというわけです。
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しかし、この人物が物語にこんなに絡んでくるとは思わなかったよね
その人物は、「みんなが知らない情報を知っている」「それらを元に正しい判断が出来ている」と思っているし、さらに言えば、「自分以外の人間は適切な思考が出来ていない」とさえ考えています。しかし、傍目にはその人物の方が「イカれている」ように見えるはずだし、さらにその人物に、「間違ってるとしても、大事なことは自分の頭で考えたいの」と突きつける人物も出てくるのです。その際のやり取りも実に興味深いものでした。
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「歪んだ正義感」は決して、ネット上に限るものではありません。ただ、やはり現代は、SNSなどが存在することで状況がより悪化しているように思うし、その実感は「コロナ禍」を経て一層強く感じられるようになった気がします。そんなわけで、このような点からも「コロナ禍」と重ね合わせて受け取りたくなる物語だと感じました。私はあまり「予言的」みたいな言葉を使いたくはないのですが、時代の雰囲気を先取りして描き出している物語に思えたというわけです。
もちろん、「コロナ禍」と重なりそうな部分は、アニメ化に際して加えられたって可能性もあるとは思うけど
でも、作品の根幹の部分に関わる設定だから、そんなことはないだろうって気もするけどね
あのちゃんと幾田りらの「声」がとても見事
本作『デデデデ』においては、声優を務めたあのちゃんと幾田りらに言及しないわけにはいかないでしょう。おんたん役を演じたあのちゃんについては既に少し触れましたが、小山門出役を演じた幾田りらもとても見事だったなと思います。というか、「声優・幾田りらの上手さ」については実は、映画『竜とそばかすの姫』の時点で知っていました。声優初挑戦だったはずですが、それを感じさせない演技で、とても驚かされたことを覚えています。そして本作においてはとにかく、おんたん(あのちゃん)と門出(幾田りら)の掛け合いが素晴らしすぎるほど素晴らしかったのです。
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さて、これは決して悪い意味ではありませんが、おんたんと門出が喋るシーンでは、脳内であのちゃんと幾田りらの顔が浮かびました。恐らく一般的に、この状況は声優としてはよろしくないでしょう。声優本人の「個」を消して役に入り込むような感じの方が理想的とされているような気がするからです。
とはいえ最近は、「個人名がパッと浮かぶ有名声優」がたくさんいるはずだから、関係ないのかもしれないけど
アニメをよく観る人からしたら、「このキャラはあの声優の声」みたいなことが当たり前に認識されるだろうからね
ただ、少なくとも本作においては、「主役を演じたあのちゃん・幾田りらの顔が浮かぶこと」はむしろプラスに働いているように感じました。まずは、「おんたんとあのちゃんが、そして門出と幾田りらが相似形である」という印象をもたらす良さがあると言えるでしょう。先ほど、「おんたんはハチャメチャだけど、あのちゃんの声によってリアル感が増している」という話をしましたが、門出の方も同様で、なんとなく「キャラクターと声優の性格・振る舞いがとても似ている」という印象になっている気がします。そして本作の場合、「キャラクターのリアリティ」という点で、そのことが良い風に機能していると感じられたのです。
さらにもっと言えば、この2人の顔が浮かぶことで、「この終わってしまった世界に、思いがけない希望が存在している」という気分さえもたらされると言えるでしょう。あのちゃんも幾田りらも共に「現代のポップアイコン」みたいな存在であり、そしてそんな2人が、『デデデデ』の終末的世界を生きる主人公に声を吹き込むことで、「この狂った世界を、この2人なら何とかしてくれるんじゃないか」みたいな気分にさせてくれているように思います。「観客の頭にこの2人の顔が浮かぶ」という事実が、鑑賞する側の態度にも影響を及ぼしている気がするというわけです。
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こういう効果まで狙っての配役だとしたら、ホント天才的すぎるなって思う
こんなにすべてが噛み合った配役って、なかなか無いだろうからね
さて、そんなわけで前章の内容をざっくり説明してきましたが、最後まで観るとやはり、「登場人物や舞台設定の紹介」「伏線の配置」が多かったという印象でした。あらゆる「気になる要素」を詰め込んで、しかし状況は何も分からないという感じで終わるので、後章がメチャクチャ気になります。前章のラストシーンは凄く意味深な感じだったし、「小学校時代のおんたん・門出の物語」も謎すぎるので、「おいおいどうなるんだよ」って感じでした。
というわけで、ここからは後章の話をしていくことにしましょう。後章の内容も少し紹介しますが、やはりそれは、前章を観ていない人からすればネタバレになると思うので、この記事の最後に回すことにします。
後章はどのような展開になっていくのか?
さて、やはり後章のポイントとなるのが、前章で大いに謎だった「小学校時代のおんたん・門出の物語」でしょう。後章が始まってからもしばらくの間、小学校時代の話との繋がりはまったく描かれず、私は「これ、ちゃんと繋がるんだろうか?」と思っていました。
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門出たちが大学に入学したり、「ただ<母艦>が浮かんでいるだけ」だった時とは違うフェーズに入ったりと、もちろん変化はあるんだけど
とはいえやっぱり、後章も初めの内は、「おんたん・門出たちのアホみたいな日常」がメインだよね
しかし後章の後半で、割と唐突に「ある事実」が明かされます。正直なところ、その説明自体には「メチャクチャ飛び道具感あるな」と感じましたが、それがマイナスの印象に繋がったみたいなことではありません。前章で小学校時代の話が描かれていたこともあり、「なるほど、そういうことなら全体として話は繋がるな」と感じたというわけです。それに、元々が「ムチャクチャな世界観」で展開される物語なわけで、多少の「飛び道具感」が滲み出ようとさして気になることもないでしょう。
そして、その「ある事実」によって「小学校時代のおんたん・門出の物語」に説明がつくことになるのです。さらに、そのような展開になることで、本作が「セカイ系」的な物語であることが理解できるようになります。「セカイ系」については正確な定義を知りませんが、私の理解では、「個人の想いや言動が、世界全体の趨勢に直接的に影響を与えてしまう」みたいな設定・展開の物語のことを指すはずです。最も代表的な作品は、たぶん『エヴァンゲリオン』でしょう。
もちろん、「『セカイ系』的な展開にならないと、話まとまらないだろ」みたいには思ってたんだけど
ただそれにしても、「そうくるか!」みたいな展開だったから驚いたよね
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そして、「セカイ系」的展開の物語であることが明らかになったことで、おんたんが後章の随所で口にしていた「どこにも行かないで」という言葉の意味も理解できるようになるでしょう。おんたんは、「自分の周りから『大切な人』が離れていくかもしれない」という雰囲気を感じ取ると「どこにも行かないで」と口にするのですが、その口ぶりが思った以上に深刻なのです。ただ、「セカイ系」的な展開になるまで、その理由は分かりませんでした。
そして、その理由が明らかになることで、おんたんがずっと秘め続けてきた「切実さ」が理解でき、それ故に、「君は僕の絶対だから」という、本作全体を貫くスタンスもはっきりと捉えられるようになるというわけです。
「メチャクチャな遠回りをして、ミニマムな世界の大事さを再確認する」みたいな展開が、「セカイ系」って感じしたなぁ
さてもちろんのことながら、「セカイ系」的な展開にすることで、『エヴァンゲリオン』などの過去の超名作と比較されることにもなります。そしてそういう比較をするのであれば、やはり『エヴァンゲリオン』を超えているとは言えないでしょう。実際に、そのような理由で本作を貶している感想もチラホラ目にしたことがあります。しかし、『エヴァンゲリオン』と比較するのはあまりにも酷でしょう。そりゃあ、大体の物語が勝てませんって、『エヴァンゲリオン』には。
「セカイ系」の物語であることは確かですが、そういう観点から別の作品と比較するのではなく、本作が持つ独特な魅力を楽しめばいいと思います。最大の魅力はやはり「門出とおんたんの魅力的なやり取り」であり、さらにそれを幾田りらとあのちゃんという絶妙すぎる配役で形にしているわけで、あらゆる要素がここまでグワッと噛み合うことはなかなかないんじゃないかと感じました。
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なんか、「総力戦で作り上げました」って感じの映画な気がする
庵野秀明とか宮崎駿みたいに「超天才が剛腕で作り上げました」的な作品もいいけど、総力戦もいいよね
それでは最後に、後章の内容を紹介して終わろうと思います。後章の内容を知りたくない方は読まないで下さい。
後章の内容紹介
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名作として知られているものの観る機会の無かった映画『アメリ』は、とても素敵な作品でした。「オシャレ映画」という印象を持っていて、それは確かにその通りなのですが、それ以上に私は「主人公・アメリの奇妙さ」に惹かれたのです。普通には成立しないだろう展開を「アメリだから」という謎の説得力でぶち抜く展開が素敵でした
前章は、「ふたばとマコトが乗った東京行きの飛行機の窓から、侵略者が空から大量に降ってくるのが見えた」というシーンで終わった。そして後章は、「小比類巻健一率いるヤバい組織が、侵略者を無慈悲に殺戮している」というシーンから始まる。後半も、冒頭からトップギアで物語が進んでいくというわけだ。
しかし、そんな風に始まった物語もすぐに、「大学生になったおんたん・門出たちがバカみたいな日々を過ごす」という展開になっていく。「大学でサークルを乗っ取って軍隊を作る」と息巻いていたおんたんは、その目的を果たすため、部員が1人しかいないオカルト研究会の尾城に近づいた。そして、イソベやんきっかけで仲良くなったふたばと共に、オカルト研究会のメンバーとして活動を始めるのだ。また、大学生になってからも門出と渡良瀬の関係は継続中であり、といって今も、付き合うか付き合わないかみたいなところでゴロゴロしているだけである。
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そんなわけで、おんたんと門出の日常はそれまでとさして変わりはしないのだが、世の中は大きく様変わりした。もちろんそれは、ふたばとマコトが目撃した「侵略者の落下」以降のことだ。あれだけ大規模に侵略者が空から降ってきたにも拘らず、政府は当初侵略者の存在を認めなかった。しかし、小比類巻らのグループはあちこちに潜伏している侵略者を殺傷しているし、また、門出たちが通う大学内で侵略者の目撃情報があった際は、自衛隊が駆除のために出動したのである。
一方、「侵略者の権利を守るべきだ」と主張する団体も生まれた。「SHare out Invader Protection」(SHIP)という名前で活動しており、実はふたばはこのSHIPのメンバーである。彼らは政府に対する抗議デモなどを定期的に行い、「侵略者との共存」を訴えているのだ。
そんな中、鍵を握る存在となるのが、前章ではその正体が謎だった大葉である。門出が中学生の頃に推していたアイドルグループの最年少メンバーと同じ顔の男だ。そして後章では、「<8.31>の際、瀕死の侵略者の意識がロケバスで移動中だった大葉の身体に移植された」ことが明かされる。つまり彼は、「人間の身体を持つ侵略者」というわけだ。そしてこの大葉の行動によって、物語は大きく展開していき……。
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本作を観て改めて、「『絶対的な存在』だと思える関係性は最強」だと感じました。おんたんにとっての門出とか、門出にとってのおんたんは、どちらも「絶対的な存在」です。そしてそれこそが本作全体の1つのテーマにもなっているのですが、「そういうのって凄くいいなぁ」と思います。家族とか恋人とか友人とかそういうことではない「絶対的な存在」って、作ろうと思って作れるものではありませんからね。私たちの世界で探すとしたら、「コンビ芸人の相方」みたいな感じでしょうか。やはり日常的な存在とは言えないと思います。
そして、ある人物が「『絶対的な存在』を手放したくない!」と願ったからこそ本作の物語が成立しているわけで、テーマと設定がとても見事に結びついた作品だなと感じました。素晴らしかったです!
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