目次
はじめに
この記事で取り上げる映画
出演:アクシャイ・クマール, 出演:ヴィディヤ・バラン, 出演:シャルマン・ジョシ, 出演:タープスィー・パンヌー, 出演:ソーナークシー・シンハー, 出演:キールティ・クルハーリー, クリエイター:ラヴィ・ヴァルマン, クリエイター:アミット・トリヴェディ, クリエイター:チャンダン・アローラ, 監督:ジャガン・シャクティ, Writer:R・バールキ
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この記事の3つの要点
- アメリカの1/7の予算で火星にたどり着いた
- 月までの燃料で火星に行く?
- 工夫と思いやりとプロジェクトマネジメントの力で火星へたどり着いた
チームメンバーは、ロケットに関わったことのない未経験者ばかりだったというから驚きです
自己紹介記事
ルシルナ
はじめまして | ルシルナ
ブログ「ルシルナ」の犀川後藤の自己紹介記事です。ここでは、「これまでのこと」「本のこと」「映画のこと」に分けて書いています。
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この作品は、「2014年にインドが火星に探査機を送り込んだ実話」を基にした映画だ。
私は正直、このニュースを忘れていた。間違いなくニュースなどで取り上げられただろうから、当時この話題に触れていたはずだ。しかし、覚えてはいなかった。
その理由は、なんとなく分かる。私には「インドの宇宙開発が遅れている」というイメージがなかったからだ。インドは数学が得意な国であり、IT大国と言われている。だから、様々な技術開発のレベルも高いと思い込んでいたし、偉業を伝えるニュースを目にしても、「インドが火星に探査機ね。ま、インドならやるでしょ」ぐらいの受け止めしか私はできなかったのだと思う。
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映画を観て、まずそのイメージが間違っていたことを知った。
確かにインド人には優秀な人間が多い。しかしそういう人材は、残念ながら国内には留まらないのだ。映画の中でも、「インドの優秀な科学者はみんなNASAにいる」というようなセリフが出てくる。それが事実かどうかは分からないが、確かに、宇宙開発一つとっても、予算規模も設備もまったく違う。優秀な人間であればあるほど、その優秀さを活かすために国外に活路を見出すのは当然だろうと思う。
そんなわけで、今はともかく当時は、インドの宇宙開発のレベルが非常にお粗末だったということが理解できた。アメリカやロシアなどの大国とは比べ物にならないし(映画の中では確か、アメリカとインドの予算を比較するような場面がチラッと出てきたと思う)、映画の中で言及はされなかったが、恐らく日本よりも環境は大きく劣るだろうと思う。
そんな中でインドは、世界が仰天するとんでもない成果を叩き出したのだ。
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インドが成し遂げた偉業の凄まじさ
それでは、この映画で描かれるプロジェクトが、いかに凄まじいものだったのか説明しよう。
まず、「火星に探査機を送り込むこと」自体が難しい。最近は、NASAが「火星に探査機を”着陸”させた」ことで話題になったが、「着陸」ではなく、ただ「火星に探査機を送り込むこと」が困難なのだ。数億kmという途方も無い距離を故障やトラブルを回避して進ませることは、想像以上に難しい。
正確には覚えていないが、映画の中で、「アメリカは最低4回、ロシアは最低8回失敗している」という話が出てきたはずだ。大国が大金を掛け、高度な技術力を駆使しても、火星に探査機を送り込むミッションには失敗してしまうのである。なんと、探査機を一発で火星に送り込んだのは、世界中でインドが初めてだ(恐らくその後も無いはず)。
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これだけではない。繰り返すが、予算規模がまったく違う。
インドが火星に探査機を送り込む準備をしている中、アメリカも何度目かのチャレンジの最中だった。アメリカのミッションは「メイブン」と呼ばれていたが、その「メイブン」の予算は600億ルピー。1ルピーは1.4円程度らしいので、日本円では840億円ぐらいである。
しかしインドは、予算が限られているため、わずか80億ルピーしか使えなかった。アメリカの実に1/7である。しかも、アメリカの600億とインドの80億は意味が全然違う。アメリカは、既に何度も火星探査機にチャレンジしていたので、それまでの知見や設備は再利用できる。しかしインドは、これが初挑戦。まったく何もないところから、アメリカの1/7の予算でミッションを行わなければならないのである。しかも、様々な事情があり、さらにこの予算は減らされてしまうことになるのだ。
普通に考えて無理だろう。アメリカが何度も失敗し、さらに600億ルピーを費やそうとしているミッションを、80億ルピー以下の予算で行わなければならないのだ。無謀にもほどがある。
このような状況で、どの国も成し遂げられなかった快挙を達成したのだから、世界が驚くのも無理はないだろう。
映画の最後で、恐らく実際に行われたのだろう大統領(だと思う)のスピーチの音声が流れたのだが、その中で、予算に関して非常にインパクトのある表現をしていた。
ハリウッドの宇宙映画の制作費より安い予算で火星まで到達した
80億ルピーは112億円。確かにハリウッド映画ならこれぐらいの予算の作品もあるだろう。しかも、さらに印象的だったのが次の言葉だ。
インドでは、オートリキシャに乗って1km走ると、大体10ルピー掛かる。しかし火星までは、1km7ルピーで到達した
「国内を移動するよりも安い運賃で火星まで行けた」という表現は実に見事だし、プロジェクトチームの凄まじさを端的に表現していると感じた。
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アイデアとリーダーシップの勝利
この映画は実話を基にしているが、正直どこまでが実話なのかは分からない。ただ、技術やプロジェクトマネジメントの部分には大きな創作はないものと想定してこの記事を書く。
映画の中では、「金が無いならアイデアで」と言わんばかりに、とにかく知恵と工夫で状況を打破していく。
そもそも、このプロジェクトのスタートからして、「そんなの不可能だろう?」としか思えないところから始まった。というのも、プロジェクトチームが使えるのは、月までの燃料しか積めない「PSLV」というロケットだけだったのである。
普通に考えれば、月までの燃料しか積めないロケットが火星に着くはずがない。しかし、プロジェクトに最初から関わる主婦科学者タラが、自宅で雇っているメイドが料理中に起こしたちょっとしたトラブルからヒントを得て、「月までの燃料で火星に行く」というあり得ない方法を思いつくのだ。この方法では、火星にたどり着くまでに余計時間が掛かることになるし、打ち上げの日程もかなり制限されてしまうのだが、それでも、まずこの関門を突破したことは重要だった。
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しかしその後もトラブルは続く。そもそも予算は少ないし、プロジェクトに回された面々はみな、ロケットに関わったことなどない未経験者ばかり。各々がそれぞれ様々な事情を抱えており、そのためプロジェクトへの情熱を抱くわけでもなく早く帰りたがる。
そんなまったくまとまりのないところからのスタートだったのだ。
そんなミッションが成功したのは、ラケーシュというプロジェクトリーダーの手腕によるところが大きい(少なくとも、この映画ではそう描かれている)。
ラケーシュは、
私には科学と宇宙しかありません
と言うほどの科学バカであり、変人の部類に入れていい人物だと思う。しかし、予想に反して人心掌握術に長けていた。予算も経験もなく、しかしタイムリミットは決まっているというハードなプロジェクトを言葉巧みに率いていくのだ。
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いくつか紹介しよう。
このプロジェクトチームはほぼ女性で構成されており、その内の一人が妊娠した。ラケーシュ同様リーダー的な立ち位置にいるタラ(月までの燃料で火星に行く方法を考えた人物)は、産休を取らせる必要があるからと、別の人間を補充する算段を立て始めたのだが、ラケーシュは彼女に待ったを掛けた。
こんなミッションに参加できるチャンスはなかなかない。産休を取りたいかどうかは本人の意思に任せられるべきだし、もし残るというなら全力でサポートする
そう言って彼はなんと、ミッションルーム内に託児所を作り、出産したメンバーが働きやすい環境を作ってしまうのだ。
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また、チームのメンバーが毎日定時で帰ってしまうことも、タラには頭の痛い問題だった。
僅かな燃料で火星にたどり着くアイデアは、「2年2ヶ月おきにやってくる、地球と火星が最接近するタイミング」を狙って打ち上げなければならない。つまり、一度タイミングを逃したら、2年2ヶ月待たなければならないということだ。そんな余裕はないので、彼らのミッションにはかなり厳しいタイムリミットが設定されることになった。
そして逆算すれば、どう考えても皆が定時で帰っては絶対に間に合わない。だからタラはイライラしていた。
しかし、このミッションに集められたメンバーは寄せ集めであり、最初はやる気がまったくなかった。ミッションが成功するとも信じていなかったし、こんな大変なことに巻き込まれるくらいなら定時で帰る、というメンバーばかりだったのだ。
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その状況を嘆くタラに、ラケーシュはこんな風に言葉を掛ける。
君にとって火星は夢だけど、みんなにとってはただの仕事なんだ。だから、みんなにとっての夢にしないとね
こう言われたタラは考えに考え、ある計画を実行に移す。そしてそのことをきっかけとして、チームが一つにまとまっていくことになる。
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この映画は、基本的には「楽しく観れるエンタメ作品」だが、このように「人をどう動かし、プロジェクトを成功に導くか」という観点からの学びを得られる作品だとも思う。
映画の内容紹介
ISRO(インド宇宙研究機関。インドのNASAのようなもの)は、非常に有能な科学者であるラケーシュ・ダワンをチームリーダーとして、GSLV(静止衛星打ち上げロケット)の発射準備に入った。発射のカウントダウンが終わる直前、タラの画面に異常が表示されるが、発射場の気温のせいだろうと考えGOサインを出してしまう。しかしその判断ミスのせいでGSLVは軌道を逸れ、自爆を余儀なくされた。
ラケーシュはこの失敗の責任を取らされることになった。彼に与えられたのは、「2022年までに火星に探査機を送り込む」というミッションだった。
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栄転に思われるかもしれないが、まったくそうではない。ラケーシュは、「不可能なミッションをあてがうことで、自発的にISROを辞めさせようとしている」と捉えた。しかし、そうは言っても仕方がない。ラケーシュは、「不可能」だろうと思いつつも、与えられたこのミッションに従事しようと決意する。
そんなラケーシュの元に、ある日タラがやってくる。タラは、自分の判断ミスのせいでラケーシュが閑職に回されたことに責任を感じており、彼にあるアイデアを提示した。それが、「月までの燃料で火星に行く方法」だった。それは誰も考えたことがない、実にアクロバティックな方法だったのだが、優秀な科学者であるラケーシュは、実現可能なアイデアだと判断する。
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彼らはそのアイデアをプレゼンし、予算獲得に挑むが……。
映画の感想
もの凄く良い映画だった。期待していたよりも遥かに面白く、実話をベースにした物語としても、エンタメ作品としても楽しんだ。
この映画が良いのは、「科学的な描写はほぼ無い」ということだ。私は科学が好きだが、科学に苦手意識を持つ人は科学的知識が出てくる作品を好まないだろう。そういう意味でもこの映画は、誰が観ても楽しめる作品だと言える。
冒頭の「月までの燃料で火星に行く方法」だけは、若干科学的な説明がなされるが、それ以降は、科学の難しい話など出てこない。インド映画らしく踊るシーンもあるし、シリアスな場面もありつつも、全体としては非常に楽しく展開する。
しかしそんな中でも、「科学ミッションの困難さ」や「人を動かすことの難しさ」などはきちんと描かれ、それらを絶妙に描写することで展開をドラマチックにもしている。
メインの登場人物がそこそこいるので、全員の背景を丁寧に描くのは難しいだろう。かなり駆け足での描写ではあるのだが、個々のメンバーがそれぞれにトラブルを抱えており、そんな苦労を抱えながら困難なミッションに立ち向かっていく姿がとてもいい(さすがにこれらメンバーの背景的な部分は創作も含まれていると思うが)。
女性が多いチームであり、男性以上に「科学研究に打ち込むこと」に難しさを抱えざるを得ない中で、工夫や思いやりで乗り越えていく感じも素敵だ。
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またこの映画では、ラケーシュがとても魅力的な人物として描かれている。特に、ラケーシュがある会議に乗り込んで場を支配するシーンは圧巻だ。ミッション存続の危機を自らのプレゼン力で回避しようとする姿と、それを楽しげにやってのける陽気さみたいなものが、ラケーシュという人間の良さとして見事に描かれていると思う。
ラケーシュ役の俳優、見覚えがあると思ったら、『パッドマン 5億人の女性を救った男』という映画の主演だった。今回の映画も、同じチームが再結集して作られたとのこと。『パッドマン』も実話を基にしている見事な映画だ。是非観てほしい。
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最後に
頑張ればどんな場合でも不可能が可能になるわけではない。世の中そんなに甘くはない。しかし、「不可能だ」と言って立ち止まっていれば100%不可能なままだ。予算も経験者も技術力も無い中で、世界初の偉業を成し遂げたインドのミッションは、目標を持って前に進もうとしているすべての人を勇気づけるだろう。
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「世界中に存在する電波望遠鏡を同期させてブラックホールを撮影する」という壮大なEHTプロジェクトの裏側を記した『アインシュタインの影』から、ブラックホール撮影の困難さや、「ノーベル賞」が絡む巨大プロジェクトにおける泥臭い人間ドラマを知る
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一躍その名が知れ渡ることになった「チバニアン」だが、なぜ話題になり、どう重要なのかを知っている人は多くないだろう。「チバニアン」の申請に深く関わった著者の『地磁気逆転と「チバニアン」』から、地球で起こった過去の不可思議な現象の正体を理解する
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メガネファストファッションブランド「オンデーズ」の社長・田中修治が経験した、波乱万丈な経営再生物語『破天荒フェニックス』をベースに、「仕事の目的」を見失わず、関わるすべての人に存在価値を感じさせる「働く現場」の作り方
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