目次
はじめに
この記事で取り上げる映画
出演:西島秀俊, 出演:三浦透子, 出演:岡田将生, 出演:霧島れいか, Writer:濱口竜介, 監督:濱口竜介
ポチップ
この映画をガイドにしながら記事を書いていくようだよ
この記事で伝えたいこと
「感情を排した言動」を冒頭から貫くことで、観客を催眠状態に陥らせる魔力
映画が3時間も掛けてゆったり進むのは、この催眠状態を生み出すためだと感じた
この記事の3つの要点
- 我々が生きる世界では「不自然」でしかない言動が、何故この映画では「自然」に映るのか
- 西島秀俊だからこそのはまり役
- 「自然な不自然さ」のお陰で、チェーホフの『ワーニャ伯父さん』の世界観が地続きとなる
様々な理由で「観ない」と決めていた映画なので、考えを変えて観に行って本当に良かった
自己紹介記事
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特に何も起こらない、3時間にも及ぶ映画『ドライブ・マイ・カー』が、あまりに面白くて驚かされてしまった
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私はこの『ドライブ・マイ・カー』を観るつもりはありませんでした。理由はいくつかありますが、そもそも天の邪鬼なこともあり、「話題になっている映画は別に観なくていい」と考えてしまいます。また、「村上春樹の短編小説が原作の映画」という点も、どうにも触手が伸びないポイントでした。私は「ハルキスト」というほど熱狂的ではありませんが、村上春樹の小説は好きで結構読んでいます。ただ、その作品世界を上手く映像化できるとは思えなかったのです。これまでも、村上春樹の小説を原作とする映画は公開されてきましたが、その度に、「村上春樹原作だから観ないでおこう」と考えてしまいました。
「村上春樹原作の映画」で良い評判を聞くことって少ない気がするんだよなぁ
「村上春樹原作」ってところでハードルが上がるから、評価が辛くなるってのはあるだろうけどね
他にもあと1つ理由があるのですが、それについてはまた後ほど触れましょう。そしてそもそも私は、「濱口竜介」という監督の名前もそれまでまったく聞いたことがなく、監督名で「観よう」と思える作品でもなかったのです。
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そんなわけで、普通にしていたら絶対に観なかっただろう映画なのですが、徐々にその評判が滲み出てきました。普段そこまでネットを見るわけではない私の視界にも、『ドライブ・マイ・カー』を絶賛する声が目につくようになり、さすがに無視できないような気持ちになってきたのです。それが、2021年の年末頃のことでした。そこで、年末年始の休みに劇場公開をしている映画館を探して観に行くことにしたという流れです。
そんな風にして触れた『ドライブ・マイ・カー』は、もの凄く好きな映画で、とても驚かされました。前評判を知って私の中のハードルはかなり上がっていたのですが、そのハードルをあっさりと超えてきた作品です。本当に度肝を抜かれました。
私のように、天の邪鬼でこの作品を観ないことに決めている人も多いかもしれませんが、観ておいた方がいいと私はオススメしておきます。
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生身の人間が演じる「映画」で、「自然な不自然さ」が実現できるものなのかと驚愕させられた
私はそもそも、この映画の原作となった村上春樹の短編を読んでいません。調べてみると、『女のいない男たち』(文藝春秋)に収録されているようです。
著:村上春樹
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ポチップ
この50ページにも満たないらしい短編小説をベースに、179分に及ぶ長編映画を作り上げたのですから、まずその点にも驚かされてしまいました。
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以前、伊坂幸太郎の『フィッシュストーリー』っていう短編小説を長編映画にした作品を観たけど、超良かった
長編小説は映画化すると大幅に内容が削られるけど、短編小説なら監督らしさを付け足せるから別の形の面白さになりやすいのかもね
出演:伊藤淳史, 出演:高良健吾, 出演:多部未華子, 出演:濱田岳, 出演:森山未來, 出演:大森南朋, Writer:林民夫, 監督:中村義洋
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ポチップ
原作の『ドライブ・マイ・カー』こそ読んでいないものの、それなりに村上春樹作品を読んでいる私は、村上春樹の小説から「自然な不自然さ」を感じます。まずこの説明からしていくことにしましょう。
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村上春樹の小説は、設定も登場人物もセリフも展開も、どうにも現実味が薄いと感じます。ファンタジーというほどではないにせよ、小説内の世界がもし私たちの現実の中にそっくりそのまま存在した場合、「ちょっとあり得ない」「不自然極まりない」と感じてしまうでしょう。
ですが、村上春樹が作り出す世界の中でなら、私はまったく不自然に感じません。もちろんこの感覚は人によるでしょうし、村上春樹の作品をただ「不自然」と感じる人もいるだろうと思います。しかし私には、我々が生きる世界で展開されれば不自然極まりない様々な事柄が、村上春樹の小説内では自然であるように感じられるのです。
そして、同じような「自然な不自然さ」を、映画『ドライブ・マイ・カー』からも感じました。そしてこの点が私にとってとても驚きだったのです。
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先述した通り、村上春樹作品で生み出される「自然な不自然さ」は、「私たちが生きる世界」では「単なる不自然さ」でしかありません。また映画は、フルCG作品でもない限り、「私たちが生きる世界」の中で、「生身の人間」が演じて作られるものです。普通に考えて、映画で「自然な不自然さ」を生み出すことは困難だろうと思います。『ドライブ・マイ・カー』にはそんな「自然な不自然さ」が内包されているという点が、私には驚きだったのです。
ただ、映画を観て「村上春樹っぽい」と感じたわけでもないんだよね
映画で醸し出される「自然な不自然さ」は、濱口竜介監督オリジナルなものって感じがする
映画の中で、その「自然な不自然さ」がどのように成立しているのか、私なりに考えてみました。重要なのは、映画の冒頭から「感情を排した演技・セリフ・振る舞い」を徹底していることだと思います。
主人公の家福悠介は舞台演出を手掛けており、チェーホフの『ワーニャ伯父さん』でその名が知られる人物です。彼は舞台稽古に入る前の本読みの場で、役者たちに「感情を無くしてセリフを言う」ように強制します。そこに家福のどんな演出意図があるのか、それは私にはなんとも分かりませんが、彼は少しでもセリフに感情が見えると注意を促すほど厳しく指導するのです。
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ちなみに、『ドライブ・マイ・カー』で初めて濱口竜介作品に触れた私はまったく知りませんでしたが、「感情を乗せずに本読みをさせる」というのは、濱口竜介監督が実際に行っている手法だといいます。『ドライブ・マイ・カー』以降、私は何作か濱口竜介作品を観たのですが、やはり役者たちは感情を極限まで抑えた演技をしていました。家福悠介のスタイルは、濱口竜介のスタイルと言っていいのだろうと思います。
また、家福悠介は自身も舞台役者であり、『ワーニャ伯父さん』のワーニャ役としても有名です。そんな家福は、運転中にテープを聴く習慣があります。そのテープは、ワーニャ以外のセリフを妻が喋っており、空白になっているワーニャのセリフを運転中の家福が喋って埋める、という形で使われるものです。運転中はいつもこのテープを聞いているわけですが、このテープに吹き込まれたセリフの言い回しも、まさに「棒読み」としか言いようがありません。そしてまた、テープの空白部分でセリフを口にする家福自身も、感情の無い言い方をするのです。
このように映画では、冒頭から「感情の無いセリフ」で埋め尽くされていきます。そしてそれはセリフだけに留まらず、表情や動きも同じと言えます。普通なら、声・表情・動きなどから感情が表出してしまうだろう場面でも、出てくる人たちは皆、何も感じていないかのような佇まいを見せるわけです。
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そしてそんな世界観に、観客がどんどん慣れていくことこそが、「自然な不自然さ」の秘密なのだろうと私は感じました。
映画の前半はある意味で、催眠術の準備段階みたいなものと捉えるのもアリかもしれない
実際のところ、冒頭からしばらくの間は、「どうして誰も彼も皆感情を無くしたような振る舞いをするのだろう」と違和感を覚えるのですが、映画の中では次第にそれが当たり前になっていきます。そして観客が、「そういうものなのだろう」と徐々に映画世界に慣れていくことで、「本来なら違和感を抱かなければならない事柄が自然なものに思える」という不思議な現象を生み出すのだと感じました。
映画では、家福悠介ともう1人、途中から登場する渡利みさきという女性ドライバーの2人がメインで描かれることになるのですが、とにかくこの2人は無表情で淡々と喋り、感情的な動きもほとんど見せません。確かに設定上、この2人は「感情を表に出せないとしても仕方ない」と感じさせる人物ではあるのですが、彼らの存在が映画の中で成立しているのは、設定の力というよりかは、冒頭から貫き続けるスタンスによるところが大きいと感じます。
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家福悠介と渡利みさきのやり取りは特に、村上春樹の登場人物を彷彿とさせる「不自然さ」が浮き出るのですが、しかしそれがおかしなものには見えません。映画の世界の中ではとても自然なものに感じられます。
まさにこれが「自然な不自然さ」の正体だと私は感じました。
俳優・西島秀俊のはまり役
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さて、冒頭で私は、「『ドライブ・マイ・カー』を観ないと決めていた理由がもう1つある」と書きましたが、それは主演が西島秀俊だということに関係があります。私はどうしても、西島秀俊の演技が好きになれないのです。
そこまで彼の演技を観たことはないのですが、出演作の多い俳優であり、何かと目にする機会があります。そしてその度に、「上手いとは決して言えないよなぁ」と感じてしまうのです。演技などさっぱりできない私にはそもそも言う資格などありませんが、やはり他の様々な俳優と比較してしまうと、どうしても見劣りする感じがあります。
そんなわけで、「西島秀俊主演」という点もまた、私をこの作品から遠ざけていた理由なのです。
こういう話を他の人にもしてみると、割と賛同してもらえるんだよなぁ
ネットで調べても、そういう声は結構目につくから、そんな風に思っている人は一定数いるんだろうなって思う
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しかし、ここまで繰り返し書いてきたように、『ドライブ・マイ・カー』は「感情を乗せずに動き、喋ること」が作品の性質上とても重要になってきます。だからこそ、西島秀俊にとってはまり役だと感じたのです。
たまたまですが、この記事を書いている日、ネットニュースでこんな記事を目にしました。NHK連続テレビ小説『カムカムエブリバディ』で、安達祐実が「棒読みの演技に苦労した」という内容です。セリフに感情を乗せることが当たり前に出来る役者はむしろ、感情を込めずに言葉を発することが難しいのだと思います。
しかし、あくまで私の印象にすぎませんが、概ねいつも棒読みだと感じてしまう西島秀俊は、「感情を乗せずに喋る」ことにそこまで労を要しなかったのではないか、と思うのです。
そんなつもりはないんだけど、そう聞こえちゃうだろうなぁ
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少なくともこの『ドライブ・マイ・カー』という作品においては、西島秀俊の演技は絶妙にハマっていると感じるし、配役は大正解だったと言えると思います。家福悠介役を、別の有名な俳優でイメージしようとしても、なかなか上手くはまる人を思い浮かべられません。酷い言い方だとは思いますが、「私たちが生きる世界では不自然」な西島秀俊だからこそ、「『ドライブ・マイ・カー』の世界では自然」に見えるのかもしれません。
演出によって、これほど役者の見え方が変わるものなのかと非常に驚かされました。
「自然な不自然さ」が存在するからこそ成立する様々な事柄
ここまで私なりに、この映画にはぜ「自然な不自然さ」が存在するのかを考察してきましたが、ここからは、「自然な不自然さ」があるお陰で成立する状況について触れていくことにしましょう。
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先ほども少し触れましたが、この映画には『ワーニャ伯父さん』という演劇が組み込まれます。普通に考えれば、『ワーニャ伯父さん』の要素は映画の中の現実から浮き上がって見えるはずです。チェーホフという大昔の戯曲家の作品であり、状況設定やセリフはもちろん現代的ではないので、「映画の世界の中に、『ワーニャ伯父さん』の舞台が別個に存在する」という見え方になるのが普通でしょう。
しかしこの映画では、『ワーニャ伯父さん』の要素が作品世界に溶け込んでいます。これはまさに、「自然な不自然さ」の為せる技だと感じました。もちろん、「『ワーニャ伯父さん』という舞台の描写である」、あるいは「『ワーニャ伯父さん』の舞台のセリフを口にしている」ということは理解できます。しかしそれが、『ドライブ・マイ・カー』という映画の世界の中で地続きなものに感じられるのです。「映画の世界の中に、『ワーニャ伯父さん』の舞台が別個に存在する」のではなく、「映画の世界と『ワーニャ伯父さん』の舞台が同列に存在する」ということになります。
だからこそ、「舞台『ワーニャ伯父さん』に出演する役者が口にする、チェーホフが書いたセリフ」さえ、映画『ドライブ・マイ・カー』の世界に直接作用するのです。「家福悠介の言葉」と「ワーニャ役として家福悠介が口にするセリフ」が同列の存在感を持っていると感じられます。
思いついたとしても、普通はそれを成立させられないだろうし、よくもまあこんな世界観を作り上げたものだと思う
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これはやはり、「自然な不自然さ」のお陰だと言っていいでしょう。私たちが生きている世界では、「チェーホフの劇中のセリフ」は違和感を与えるものとしてしか存在し得ませんが、『ドライブ・マイ・カー』の世界が「自然な不自然さ」で彩られているために、チェーホフが日常に同化できることになるのです。
また、「自然な不自然さ」を長い時間掛けて観客に浸透させたことで成立する、後半のある場面も印象的でした。映画の中に「刑事」が登場する場面があるのですが、しかしそのシーンでさえ「『ドライブ・マイ・カー』の世界観」は崩れないのです。
「刑事」というのはある意味で、「現実感の権化」と言っていい存在ではないかと思います。どれだけ現実離れした世界観を作り上げても、「刑事」が登場するだけでその世界観が一気に崩壊してしまう感じがするのです。場合によっては、「現実離れした世界」を現実に引き戻す存在として使われることもあるでしょう。
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しかし『ドライブ・マイ・カー』では、そんな「現実感の権化」が出てきても、その独特な雰囲気が雲散霧消することがありません。まさにこれは、冒頭から観客を催眠状態に陥らせてきたからでしょうし、観客に「自然な不自然さ」が充分に浸透した状態だったからこそだと感じました。
「刑事」が登場したことで逆に、「自分は催眠を掛けられていたのか」と気づく感じさえあったかも
「催眠に掛けられている」と気づいたのに、それが解けない、という不思議さもあるよね
凄い世界を現出させる、魔法のような作品だと思います。
「何も説明せず、何を描くわけでもない余白」が心地よい
映画に限りませんが、現代では様々なもので「テンポ」が優先されるように感じます。Youtubeでは会話の間が編集されますし、音楽のイントロが無くなってすぐに歌が始まるという変化も、そのような印象を後押しするでしょう。
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そんな時代にあってこの映画は、とにかくゆったりと進んでいきます。普通の映像作品なら削られてしまうに違いない、何かを描いているようにはあまり感じられない場面が多々あるのです。しかしそのような場面が退屈なんてことはなく、むしろ心地よさに繋がるような印象さえあります。
そもそも、登場人物が喋ったり動いたりしたところで、そこに感情らしい感情が見えない作品なのだから、黙っていても止まっていても大差はないと言えます。だから、音も動きもほとんど無いような場面も、そうではない場面とシームレスに繋がっていくような印象を受けるのかもしれません。
そういう「余白」としか表現しようのないシーンが随所に挟み込まれており、映画全体の雰囲気に強く影響しています。
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【矛盾】その”誹謗中傷”は真っ当か?映画『万引き家族』から、日本社会の「善悪の判断基準」を考える
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また、そんな「余白」の多い物語だからこそ、その中で「敢えて語られること、描かれること」の比重は非常に大きくなるとも言えるでしょう。
映画の中で非常に印象的だったのは、ある人物が「前世がヤツメウナギだった女子高生」という物語の続きを語る場面です。「その人物がその物語の続きを話せること」にはストーリー上の大きな意味があることは確かなのですが、それ以上に、本来的には意味を持たないはずの「話の内容そのもの」が特別な質量を持つかのような印象に驚かされました。
3時間という時間の中では様々なことが描けるはずなのに、その中で「前世がヤツメウナギだった女子高生」の話が長々と語られることで、その内容自体に何らかの意味を感じてしまうことになるのです。
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この場面は長回しのワンカットで、淡々とながら異様な雰囲気を醸し出しつつ喋ってるのが印象的だった
どことなく狂気が染み出す感じがあって、全体的に感情が希薄な映画だからこそ印象に残るってのもあるよね
またこの映画には、「手話で演技する女優」も登場するのですが、喋ることができない彼女の存在もまた、ある意味で「余白」を感じさせるものだと思います。そんな風に様々な形で「余白」を生み出し、そのことに意味があるように感じさせる構成は見事だと感じました。
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ほとんど物語自体には触れませんでしたが、正直、ストーリーらしいストーリーに支配されているわけではない映画だと思います。しかし、随所で奇妙な成り行きが物語を動かしていく様はとても上手いと感じました。また、家福と妻の会話や、渡利みさきが「運転が上手い理由」を語る場面など、言葉が状況を支配するシーンも結構あり、「映像的なもの」よりも「言葉」に惹かれる私には興味深かったです。
本当に観て良かったと思います。たまにこういうことがあるから、先入観を排して物事に触れないといけないなと改めて感じました。
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【あらすじ】天才とは「分かりやすい才能」ではない。前進するのに躊躇する暗闇で直進できる勇気のこと…
ピアノのコンクールを舞台に描く『蜜蜂と遠雷』は、「天才とは何か?」と問いかける。既存の「枠組み」をいとも簡単に越えていく者こそが「天才」だと私は思うが、「枠組み」を安易に設定することの是非についても刃を突きつける作品だ。小説と映画の感想を一緒に書く
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【実像】ベートーヴェンの「有名なエピソード」をほぼ一人で捏造・創作した天才プロデューサーの実像:…
ベートーヴェンと言えば、誰もが知っている「運命」を始め、天才音楽家として音楽史に名を刻む人物だが、彼について良く知られたエピソードのほとんどは実は捏造かもしれない。『ベートーヴェン捏造 名プロデューサーは嘘をつく』が描く、シンドラーという”天才”の実像
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【驚嘆】この物語は「AIの危険性」を指摘しているのか?「完璧な予知能力」を手にした人類の過ち:『預…
完璧な未来予知を行えるロボットを開発し、地震予知のため”だけ”に使おうとしている科学者の自制を無視して、その能力が解放されてしまう世界を描くコミック『預言者ピッピ』から、「未来が分からないからこそ今を生きる価値が生まれるのではないか」などについて考える
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【逸脱】「人生良いことない」と感じるのは、「どう生きたら幸せか」を考えていないからでは?:『独立…
「常識的な捉え方」から逸脱し、世の中をまったく異なる視点から見る坂口恭平は、「より生きやすい社会にしたい」という強い思いから走り続ける。「どう生きたいか」から人生を考え直すスタンスと、「やりたいことをやるべきじゃない理由」を『独立国家のつくりかた』から学ぶ
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「北九州連続監禁殺人事件」という、マスコミも報道規制するほどの残虐事件。その「主犯の息子」として生きざるを得なかった男の壮絶な人生。「ザ・ノンフィクション」のプロデューサーが『人殺しの息子と呼ばれて』で改めて取り上げた「真摯な男」の生き様と覚悟
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戦争写真として最も有名なロバート・キャパの「崩れ落ちる兵士」には、「本当に銃撃された瞬間を撮影したものか?」という真贋問題が長く議論されてきた。『キャパの十字架』は、そんな有名な謎に沢木耕太郎が挑み、予想だにしなかった結論を導き出すノンフィクション。「思いがけない解釈」に驚かされるだろう
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朝井リョウの小説で、映画化もされた『何者』は、「就活」をテーマにしながら、生き方やSNSとの関わり方などについても考えさせる作品だ。拓人の、「全力でやって失敗したら恥ずかしい」という感覚から生まれる言動に、共感してしまう人も多いはず
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【戸惑】人間の脳は摩訶不思議。意識ではコントロールできない「無意識の領域」に支配されている:『あ…
我々は決断や選択を「自分の意思」で行っていると感じるが、脳科学の研究はそれを否定している。我々に「自由意志」などない。「脳」の大部分は「意識以外のもの」に支配され、そこに「意識」はアクセスできないという驚愕の実態を『あなたの知らない脳』から学ぶ
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【現実】生きる気力が持てない世の中で”働く”だけが人生か?「踊るホームレスたち」の物語:映画『ダン…
「ホームレスは怠けている」という見方は誤りだと思うし、「働かないことが悪」だとも私には思えない。振付師・アオキ裕キ主催のホームレスのダンスチームを追う映画『ダンシングホームレス』から、社会のレールを外れても許容される社会の在り方を希求する
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【逃避】つまらない世の中で生きる毎日を押し流す”何か”を求める気持ちに強烈に共感する:映画『サクリ…
子どもの頃「台風」にワクワクしたように、未だに、「自分のつまらない日常を押し流してくれる『何か』」の存在を待ちわびてしまう。立教大学の学生が撮った映画『サクリファイス』は、そんな「何か」として「東日本大震災」を描き出す、チャレンジングな作品だ
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【絶望】権力の濫用を止めるのは我々だ。映画『新聞記者』から「ソフトな独裁国家・日本」の今を知る
私個人は、「ビジョンの達成」のためなら「ソフトな独裁」を許容する。しかし今の日本は、そもそも「ビジョン」などなく、「ソフトな独裁状態」だけが続いていると感じた。映画『新聞記者』をベースに、私たちがどれだけ絶望的な国に生きているのかを理解する
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【実話】「家族とうまくいかない現実」に正解はあるか?選択肢が無いと感じる時、何を”選ぶ”べきか?:…
「自分の子どもなんだから、どんな風に育てたって勝手でしょ」という親の意見が正しいはずはないが、この言葉に反論することは難しい。虐待しようが生活能力が無かろうが、親は親だからだ。映画『MOTHER マザー』から、不正解しかない人生を考える
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【感想】「献身」こそがしんどくてつらい。映画『劇場』(又吉直樹原作)が抉る「信頼されること」の甘…
自信が持てない時、たった1人でも自分を肯定してくれる人がいてくれるだけで前に進めることがある。しかしその一方で、揺るぎない信頼に追い詰められてしまうこともある。映画『劇場』から、信じてくれる人に辛く当たってしまう歪んだ心の動きを知る
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【映画】『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 劇場版』で号泣し続けた私はTVアニメを観ていない
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どれだけ「天賦の才能」に恵まれていても「努力できる才能」が無ければどこにも辿り着けない。そして「努力できる才能」さえあれば、仮に絶望の淵に立たされることになっても、立ち上がる勇気に変えられる。映画『マイ・バッハ』で知る衝撃の実話
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とても難しくわかりにくい映画『鳩の撃退法』についての考察をまとめていたら、1万7000字を超えてしまった。「東京編で起こったことはすべて事実」「富山編はすべてフィクションかもしれない」という前提に立ち、「津田伸一がこの小説を書いた動機」まで掘り下げて、実際に何が起こっていたのかを解説する(ちなみに、「実話」ではないよ)
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どんな病気も治す「奇跡の水」の存在を私は信じないが、しかし何故「信じない」と言えるのか?「奇跡の水を信じる人」を軽々に非難すべきではないと私は考えているが、それは何故か?映画『星の子』から、「何かを信じること」の難しさについて知る
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世界最高峰の辞書である『オックスフォード英語大辞典』は、「学位を持たない独学者」と「殺人犯」のタッグが生みだした。出会うはずのない2人の「狂人」が邂逅したことで成し遂げられた偉業と、「狂気」からしか「偉業」が生まれない現実を、映画『博士と狂人』から学ぶ
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【解説】「小説のお約束」を悉く無視する『鳩の撃退法』を読む者は、「読者の椅子」を下りるしかない
佐藤正午『鳩の撃退法』は、小説家である主人公・津田が、”事実”をベースに、起こったかどうか分からない事柄を作家的想像力で埋める物語であり、「小説のお約束を逸脱しています」というアナウンスが作品内部から発せられるが故に、読者は「読者の椅子」を下りざるを得ない
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タコなどの頭足類は、無脊椎動物で唯一「脳」を進化させた。まったく違う進化を辿りながら「タコに心を感じる」という著者は、「タコは地球外生命体に最も近い存在」と書く。『タコの心身問題』から、腕にも脳があるタコの進化の歴史と、「意識のあり方」を知る。
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「強盗や立てこもり事件などにおいて、人質が犯人に好意・共感を抱いてしまう状態」を「ストックホルム症候群」と呼ぶのだが、実はそう名付けられる由来となった実際の事件が存在する。実話を基にした映画『ストックホルムケース』から、犯人に協力してしまう人間の不可思議な心理について知る
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「共感」が強すぎる世の中では、自然と「想像力」が失われてしまう。そうならないようにと意識して踏ん張らなければ、他人の価値観を正しく認めることができない人間になってしまうだろう。映画『ミセス・ノイズィ』から、多様な価値観を排除しない生き方を考える
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【素顔】「ヨコハマメリー史」から「伊勢佐木町史」を知れる映画。謎の女性が町の歴史に刻んだものとは…
横浜で長らく目撃されていた白塗りの女性は、ある時から姿を消した。彼女の存在を欠いた伊勢佐木町という街は、大きく変わってしまったと語る者もいる。映画『ヨコハマメリー』から、ある種のアイコンとして存在した女性の生き様や彼女と関わった者たちの歴史、そして彼女の”素顔”を知る
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【実話】正論を振りかざす人が”強い”社会は窮屈だ。映画『すばらしき世界』が描く「正解の曖昧さ」
「SNSなどでの炎上を回避する」という気持ちから「正論を言うに留めよう」という態度がナチュラルになりつつある社会には、全員が全員の首を締め付け合っているような窮屈さを感じてしまう。西川美和『すばらしき世界』から、善悪の境界の曖昧さを体感する
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【誠実】地下鉄サリン事件の被害者が荒木浩に密着。「贖罪」とは何かを考えさせる衝撃の映画:『AGANAI…
私には、「謝罪すること」が「誠実」だという感覚がない。むしろ映画『AGANAI 地下鉄サリン事件と私』では、「謝罪しない誠実さ」が描かれる。被害者側と加害者側の対話から、「謝罪」「贖罪」の意味と、信じているものを諦めさせることの難しさについて書く
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【再生】ヤクザの現実を切り取る映画『ヤクザと家族』から、我々が生きる社会の”今”を知る
「ヤクザ」を排除するだけでは「アンダーグラウンドの世界」は無くならないし、恐らく状況はより悪化しただけのはずだ。映画『ヤクザと家族』から、「悪は徹底的に叩きのめす」「悪じゃなければ何をしてもいい」という社会の風潮について考える。
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【感想】映画『窮鼠はチーズの夢を見る』を異性愛者の男性(私)はこう観た。原作も読んだ上での考察
私は「腐男子」というわけでは決してないのですが、周りにいる腐女子の方に教えを請いながら、多少BL作品に触れたことがあります。その中でもダントツに素晴らしかったのが、水城せとな『窮鼠はチーズの夢を見る』です。その映画と原作の感想、そして私なりの考察について書いていきます
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【解説】テネットの回転ドアの正体を分かりやすく考察。「時間逆行」ではなく「物質・反物質反転」装置…
クリストファー・ノーラン監督の映画『TENET/テネット』は、「陽電子」「反物質」など量子力学の知見が満載です。この記事では、映画の内容そのものではなく、時間反転装置として登場する「回転ドア」をメインにしつつ、時間逆行の仕組みなど映画全体の設定について科学的にわかりやすく解説していきます
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2人を殺し、7人に重傷を負わせた金川真大に同情の余地はない。しかし、この事件を取材した記者も、私も、彼が殺人に至った背景・動機については理解できてしまう部分がある。『死刑のための殺人』をベースに、「どうしようもないつまらなさ」と共に生きる現代を知る
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ガンを患い、余命宣告され、もう治療の手がないと言われれば絶望を抱くだろう。しかし医師は、治療しない方が長生きできることを知って提案しているという。現役医師・久坂部羊の小説『悪医』をベースに、ガン治療ですれ違う医師と患者の想いを知る
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12歳で数学の未解決問題を解いた天才児は、3歳の時に「16歳で靴紐が結べるようになったらラッキー」と宣告されていた。専門家の意見に逆らって、重度の自閉症児の才能をどう開花させたのかを、『ぼくは数式で宇宙の美しさを伝えたい』から学ぶ
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ルシルナ
孤独・寂しい・友達【本・映画の感想】 | ルシルナ
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