目次
はじめに
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この記事で取り上げる映画
出演:ベネディクト・カンバーバッチ, 出演:キーラ・ナイトレイ, 出演:マシュー・グード, 出演:ロリー・キニア, Writer:グラハム・ムーア, 監督:モルテン・ティルドゥム
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ポチップ
この映画をガイドにしながら記事を書いていきます
この記事の3つの要点
- 「思考する機械」のアイデアを数学的な裏付けと共に発想した超絶天才
- 協調性ゼロの男が、従来の暗号解読の手法を無視して取り組んだが故の苦労
- 戦時中の功績が機密情報として秘され、偏見により死を選んだ人生
現代社会の礎を築いたと言っていい天才の知られざる功績を知り、悲劇を繰り返すべきではないと改めて感じる
自己紹介記事
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どんな人間がこの記事を書いているのかは、上の自己紹介記事をご覧ください
記事中の引用は、映画館で取ったメモを参考にしているので、正確なものではありません
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アラン・チューリングは史上まれに見る天才で、とんでもない業績を残した人物だ。しかし歴史に翻弄されてしまう。「1400万人以上の命を救った」とされるその最大の功績が世に知られることなく、偏見に苦悩して41歳という若さで自殺した。
この映画では、そんな彼の凄まじい生涯が描かれていく。「現代社会の基盤」とも言えるものを生み出し、多数の人命を救った”英雄”の存在を、我々は忘れるべきではないだろう。
「コンピューター」を生み出した天才
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コンピューターの存在しない世界など、もはや想像もできないだろう。それは「パソコン」が存在しないだけではない。当然「スマホ」だって生まれなかっただろうし、機械で製作しているもの、機械で制御しているもののほとんどが実現しなかったはずだ。当然、「インターネット」だって存在するはずがない。そんな世界、もはや想像もできないだろう。
では、そんな「コンピューター」を生み出したのは一体誰なのか? スティーブ・ジョブズやビル・ゲイツを想像する人もいるかもしれないが、彼らは「コンピューター」を個人でも使いやすいものに作り変えた人たちだ。もちろんそれも素晴らしい功績だが、彼らが「コンピューター」を生み出したのではない。
それは、アラン・チューリングという天才数学者が発想したのだ。
時として、誰も想像しないような人物が、想像も出来ないような偉業を成し遂げる。
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彼は「コンピューターの父」と呼ばれ、まだそんな発想が微塵もなかった時代に「思考する機械」のアイデアを生み出した。「SF作家が想像で生み出す」のとは違い、彼は「どうすれば数学的に『思考する機械』が実現可能か」という、現在のコンピューターの核となる部分を考えだしたのだ。
あなたが普通じゃないから、世界はこんなに素晴らしい。
「チューリング」という単語を耳にする機会は実は結構ある。特に、人工知能が注目される現代では。人工知能のレベルを測る指標の1つとして、「チューリング・テスト」と呼ばれる判定方法が知られている。やり方はシンプルだ。人間と人工知能それぞれに同じ質問をする。質問者はどちらの姿も見えない。そしてその返答が「より人間らしい」のはどちらかを判定する、というものだ。
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マシンは人間のように考えはしない。マシンは人間とは違う風に考える。
しかし面白い問いだな。人間のように考えていないとしたら、それは考えていることになるのか?
チューリングが「思考する機械」のアイデアを出すと、「機械は人間のように思考するか?」という議論が巻き起こった。しかし闇雲に議論しても仕方ない。そこでチューリングがこの「チューリング・テスト」を発表し、「このテストをクリアすれば、『人間のように思考している』と判断していいのではないか」と提案したのだ。この「チューリング・テスト」にも、「中国語の部屋」として知られる思考実験を始め、様々な批判は存在する。しかし「議論を開始するためのスタートラインを提示した」という意味では非常に重要ではないかと感じる。
チューリングが存在しなければコンピューターが生まれなかったのかは分からない。別の誰かが同じようなアイデアを出したかもしれないだろう。しかし1つ確実に言えることは、コンピューターというアイデアが生まれるのが遅ければ遅いほど、その後の社会の進化も遅くなる、ということだ。今私たちが「便利な社会」に生きられているのはチューリングのお陰だと言っていいだろう。
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チューリングはいかにして1400万人以上の人命を救ったのか
コンピューターの原型となるアイデアを生み出しただけでも、1人の人間の功績としては大きすぎるほどだろう。しかし彼が成したことはそれだけではない。彼は数多くの人の命を救っているのだ。
今朝私は、消滅したかもしれない街で電車に乗ったわ。
あなたが救った街よ。
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比類なき功績であり、2013年にエリザベス女王はチューリングの功績に対して異例の”恩赦”を与えた。
しかしそもそも「恩赦」とは、「刑を消滅させる、あるいは軽減させること」であり、チューリングに恩赦が与えられたということは、彼が何らかの罪に問われていたことを意味する。彼はその状態のまま自殺した(とされている)のだが、死後に恩赦が与えられたことで彼の名誉が回復した、ということだ。彼がどんな罪に問われていたかは後で触れるが、”世紀の英雄”が犯罪とは言えない罪で逮捕され、そしてそのことが原因で自殺してしまったことはあまりに悲劇と言えるだろう。
ちなみに、チューリングに対する恩赦は、通常の手続きとは異なる形で与えられたため”異例”と受け取られている。本来は、「実際には無実だったことが証明されること」「遺族のような名誉回復がなされることに大きな利害のある関係者からの要求であること」が必須とされているが、チューリングはそのどちらにも当てはまらない、例外的なものだったというわけだ。この点からも、「チューリングの功績を正しく評価しよう」という動きがいかに強かったかが理解できるだろう。
話を戻す。彼が大勢の命を救ったという話だ。では彼はどのようにそれを成し遂げたのだろうか?
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それは、第二次世界大戦で活躍したドイツ軍最強の暗号機「エニグマ」を解読したことによってである。
クロスワードパズルで、ナチスを打ち破ったぞ!
暗号機の解読がどのように人命を救うことに繋がったのかイメージしにくいかもしれないが、エニグマの解読によって戦争終結が2年以上も早まったとされているのだ。つまり、その2年間に亡くなっていたかもしれないすべての人の命を救ったのである。彼1人の功績ではないとはいえ、1人の人間の多大な功績が戦争という巨大な存在を打倒したという事実はあまりに凄まじい。
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そんなエニグマの解読は、どれほど困難なものだったのだろうか。
英国軍はそもそも、ポーランド軍が入手したエニグマの実物を保有していた。また、エニグマによって暗号化された通信は、AM受信機があれば誰でも受信できる。しかし、その受信した内容だけでは、暗号化される前の平文を知ることはできない。なぜならエニグマには「設定」が存在し、その「設定」を入力しなければ解読できないからだ。
エニグマに存在し得る「設定」の数は159×(10の18乗)パターン。まったくイメージできないが、1つの設定を1分で試し、24時間365日休みなくフル稼働でチェックしたとしても2000万年掛かるのだという。まず解読など不可能に思えるだろう。
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しかもこの「設定」は毎日変わる。ドイツ軍は毎日、深夜0時にこの「設定」を変えるのだ。英国軍は18時にエニグマの受信をするので、たった18時間の間に「その日の設定」を読み解く必要がある。
あまりに困難なミッションだ。
エニグマ解読を担う研究所は、チューリングだけではなく様々な天才を集め解読に当たらせる。そしてチューリング以外のメンバーは皆、それまでに培われてきた暗号解読の手法を使うことでエニグマの解読に挑んでいた。構文の解析やパターンの発見など、従来のやり方で立ち向かおうとしたわけだ。
しかしチューリングだけは分かっていた。そんなやり方ではエニグマに勝つことなど出来ないと。だからこそ彼は「エニグマを解読するための機械」を作り上げた。モーターやギアを配線で繋いだその機械は10万ポンドも掛かる代物だったという。現在のレートでも数千万円という金額だ。
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私のマシンはエニグマに勝つ。
しかしチューリング以外のメンバーは、彼が何をしているのかさっぱり理解できなかった。そんなガラクタのような機械に何ができるのかと疑っていたのだ。そして、子どもの頃から協調性に欠けていたチューリングの方も、自分の確信を他人に伝える手段も持ち合わせておらず、そもそも他人の協力が必要だとも思っていなかったのである。
あなたには、決して理解できない。私が創ろうとするものの重要性を。
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「エニグマ解読」の困難、そして解読後に待ち受けていたさらなる苦悩
チューリングの協調性の無さは、エニグマ解読において障害となる。
本物の兵士たちが、本物の戦闘を戦っている。僕たちは、なんの結果も出せないでいる。
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自分が何をしようとしているのか、どのようにエニグマを攻略しようとしているのか伝えないチューリングへの反発が出てくるようになってしまうのだ。
そんな状況を救ったのがクラークである。彼女は、チューリングさえ8分掛かったクロスワードパズルを6分で解くように指示された候補者の中で、5分34秒という信じがたいスピードを叩き出した逸材だった。そんなクラークが、チューリングの話し相手に、そして良き理解者になったのである。他のメンバーと協調しないチューリングの態度を変えさせた人物であり、バラバラだったチームを機能させた立役者だ。
あなたがどんなに優秀でも、エニグマはその上を行く。
仲間の協力が必要よ。
そしてそのお陰で、エニグマ解読に必要な最後のピースを手にすることができたのである。最終的には、協調によって暗号機を打ち破ったというわけだ。
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しかし、解読の喜びに浸る余裕などまったくなかった。チューリング以外の誰もが考えもしなかったことだが、実はエニグマを解読した後にこそさらなる困難が待ち受けていたのだ。そして、その覚悟を持って解読に挑んでいたのは唯一チューリングだけだったのである。
彼らは確かに「エニグマを解読する」ために集められた。しかしそれは単に手段でしかなく、より大きな目標は「戦争を終結させること」である。
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さて、ドイツ軍の立場に立って考えてみよう。エニグマで暗号化したはずの機密情報が、どうも連合国軍に漏れているようだ、と気づいたらどう行動するだろうか? エニグマの「設定」をさらに根本的に変えるとか、そもそもエニグマを使うのを止めるなど、様々な手を打ってくるはずだ。
つまり研究所の面々は、「『エニグマを解読した』と相手に知られてはならない」という状況に置かれることになる。これはどのような事態を引き起こすだろうか。
「神じゃないのに、生死の決定はできないはずだ」
「それでもやる。他の誰にもできないからだ」
暗号を解読した彼らには、ドイツ軍がどこをどう攻め、どこを爆撃するか知ることができた。しかしその情報を使って、被害を受けるだろう人たちを避難させたりすれば、ドイツ軍が「エニグマが解読されているかもしれない」と疑念を抱くかもしれない。だからこそ彼らは、「被害が出ると分かっていながら、その被害を黙認する」と判断するしかなかったのだ。
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これはあまりに辛い。
神も、我々ほどの力はない。
日々、生きる者と死ぬ者を決めた。
彼らはエニグマを解読することで得られた情報を元に、「『エニグマが解読された』とドイツ軍が気づかない」ように細心の注意を払って終戦のための準備を進めた。その過程で、助けようと思えば助けられたかもしれない数多くの命が失われるのを目の当たりにする。
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戦争はさらに2年続いた。孤独な2年だった。
現在では、彼らの奮闘のお陰で終戦が2年早まり、そのお陰で1400万人以上が救われたと考えられている。しかし、「誰を生かし誰を殺すか」を日々考え続け、極秘任務であったが故に誰にもその辛さを話すことができない2年間は、想像を絶すると言えるだろう。
戦争に「数学」で立ち向かった1人の天才の奮闘と覚悟の物語である。
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映画『イミテーションゲーム』の内容紹介
映画で描かれる物語の主な舞台は3つある。1939年のロンドン、1951年のマンチェスター、そして1928年のシャーボーンスクールの3つだ。
チューリングは1939年、極秘任務のために有能な人材を集めているというブレッチリー無線機器研究所の面接に向かっていた。当時27歳だったチューリングは、24歳の時に画期的な論文を発表し注目を集めた数学の天才である。しかしデニストン中佐は、今回の極秘任務にチューリングが役立つとは思えなかった。必要なのは「暗号を解くことができる人間」であり、求めていたのは言語学者や暗号学者なのだ。暗号解読に必要なはずのドイツ語をまったく扱えないチューリングは無用としか思えなかった。しかし彼は、
あなたには私が必要だし、私は問題を解くのが好きです。
と、自身の有用性を確信している。
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「天才科学者」と言えばアインシュタインやニュートン、ホーキングが思い浮かぶだろうが、「科学者らしくないエピソード満載の天才科学者」という意味ではファインマンがずば抜けている。世界的大ベストセラー『ご冗談でしょう、ファインマンさん』は、「科学」をほぼ扱わないエッセイです
チェスチャンピオンなど様々な経歴を持つ人間が集められ、エニグマ解読のプロジェクトがスタートするが、協調性がまったくないチューリングは早々に周囲から孤立してしまう。また、チューリングがこれまでとはまったく違うアプローチを試みるせいで、何をしているのか周囲はまったく理解できず、同僚たちは上層部に不満を訴える。10万ポンドも必要な”玩具”作りの資金提供も断られてしまうが、そんな状況でもチューリングは、
エニグマは、史上最高の暗号機です。人間の力では打ち破れません。マシンを打ち破るのはマシンの力ではないでしょうか?
と自分の正しさを疑わない。その後クラークの助けもありメンバーと協力し合えるようになり、ついに彼は、不可能と言われていたエニグマの解読に成功するのである。
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彼らは考えた末、チューリングはソ連のスパイなのではないかと疑うが……。
1928年、シャーボーンスクールで成績優秀だったチューリングは、その優秀さと協調性のなさを理由にいじめられていた。そんなチューリングを救ってくれたのが、同じく成績優秀で、チューリング唯一の親友となるクリストファーである。彼はこの学校で「暗号」の存在を知ることになるが、もう1つ、「誰かを好きになること」も経験することとなり……。
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出演:ベネディクト・カンバーバッチ, 出演:キーラ・ナイトレイ, 出演:マシュー・グード, 出演:ロリー・キニア, Writer:グラハム・ムーア, 監督:モルテン・ティルドゥム
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【問題】映画『国葬の日』が切り取る、安倍元首相の”独裁”が生んだ「政治への関心の無さ」(監督:大島新)
安倍元首相の国葬の1日を追ったドキュメンタリー映画『国葬の日』は、「国葬」をテーマにしながら、実は我々「国民」の方が深堀りされる作品だ。「安倍元首相の国葬」に対する、全国各地の様々な人たちの反応・価値観から、「『ソフトな独裁』を維持する”共犯者”なのではないか」という、我々自身の政治との向き合い方が問われているのである
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映画『戦場のピアニスト』の4Kリマスター版を観に行ったところ、上映後のトークイベントに主人公の息子が登壇したので驚いた。何せ私は、本作が「実話を基にしている」ことさえ知らなかったのである。だからその驚きもひとしおだった。ホロコーストの生存者である主人公の壮絶な人生を描き出す、不朽の名作だ
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「80人の命を救うために、1人の少女の命を奪わなければならない」としたら、あなたはその決断を下せるだろうか?会議室で展開される現代の戦争を描く映画『アイ・イン・ザ・スカイ』から、「誤った問い」に答えを出さなければならない極限状況での葛藤を理解する
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ジェンダー・LGBT【本・映画の感想】 | ルシルナ
私はLGBTではありません。また、ジェンダーギャップは女性が辛さを感じることの方が多いでしょうが、私は男性です。なので、私自身がジェンダーやLGBTの問題を実感すること…
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