【興奮】素数の謎に迫った天才数学者たちの奮闘と、数学の”聖杯”である「リーマン予想」について:『素数の音楽』『リーマン博士の大予想』

目次

はじめに

この記事で取り上げる本

著:マーカス デュ・ソートイ, 原著:du Sautoy,Marcus, 翻訳:星, 冨永
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これらの本をガイドにしながら記事を書いていきます

この記事の3つの要点

  • 「リーマン予想」は数学者がその証明を待望している重要な未解決問題
  • ガウスが素数研究を一変させ、コーシーが謎のゼータ関数を生み出した
  • リーマン博士は、素数に関するどんな規則性を見出したのか?

超有名な数学者が多数関係する「リーマン予想」の歴史は、純粋に物語としても興味深いです

自己紹介記事

どんな人間がこの記事を書いているのかは、上の自己紹介記事をご覧ください

数学の女王・数論における最重要未解決問題「リーマン予想」を理解する

「リーマン予想」とはどんなもの?

「リーマン予想」は、数学における未解決問題の一つであり、非常に有名なので、数学に詳しくない方でも耳にしたことがあるかもしれない。クレイ数学研究所が2000年に発表した7つの「ミレニアム問題」の1つでもある。「ミレニアム問題」は数学における非常に重要な問題を取り上げており、1つでも解ければ100万ドルがもらえる。現時点で「ポアンカレ予想」だけが解決済みであり、残り6つは未解決のままだ。

「リーマン予想」は、「素数」に関する予想である。素数というのは、「1とそれ自身以外の数では割り切れない数」であり、小さい順に書き出してみると

2・3・5・7・11・13・17・19・23……

となる。

数学に関心がない人からすれば、この数字の並びの何が面白いのか分からないかもしれないが、古代から数学者たちはこの「素数」に惹かれてきた。素数は定義がきちんと決まっており、誰でも書き出せる。しかし、「素数にはどんな規則があるのか?」と問われると、誰も答えることができなかった。そこで数学者たちは、「規則性があるようには感じられない素数に、何か規則性が存在するのではないか?」と考え、様々な研究が行われるようになったのである。

数多の数学者たちの挑戦を跳ね除け、それらしい規則性を見つけられない者がほとんどだった中、リーマン博士だけが唯一、「これこそが素数に備わっている規則性なのではないか」という予想を提示することとなった。その予想こそが「リーマン予想」である。

「リーマン予想」については、どこまで分かっているのだろうか? 今のところ、コンピュータを使うことで、非常に大きな桁数の素数に対しても「リーマン予想」が当てはまることが知られている。しかし、どれだけコンピュータで計算しても、数学的には意味がない。きちんと証明されなければならないのだ。

その印象的な例がある。かつてオイラーという数学者が、

【(xの4乗)+(yの4乗)+(zの4乗)=(ωの4乗)】が成り立つような自然数解x,y,z,ωは存在しない

と主張した。同じ用にこの予想も、コンピュータでかなり大きな数字に対して計算をしても成り立っていたので、誰もが正しいと考えるようになっていった。

しかしある人物が、

(2682440の4乗)+(15365639の4乗)+(18796760の4乗)=(20615673の4乗)

という解が存在することを示し、オイラーのこの予想が成り立たないことを証明したのだ。

このように、無限に存在する数字すべてについて計算し尽くすことなどできないのだから、どれだけコンピュータで計算をしても意味はない。数学的にきちんと証明されるかどうかが大事なのだ。

この「リーマン予想」は、数学においては非常に重要で、その正しさが証明されていないにも関わらず、「もしリーマン予想が正しいとしたら……」から始まる論文が多数存在するという。「リーマン予想」の正否はまだ判明していないが、それが正しいことを前提に数学の研究が進められている、ということだ。それらは、「リーマン予想」が正しいと証明されなければ数学的には何の意味もない研究だ。この話だけでも、証明が待ち望まれていると分かるだろう。

『素数の音楽』と『リーマン博士の大予想』は、この「リーマン予想」の説明と、それに挑んだ数学者たちの奮闘の物語を描いた作品だ。どちらも非常に面白いが、読みやすさという点では圧倒的に『素数の音楽』の方が上なので、どちらか迷う場合はまず『素数の音楽』をオススメする。

ガウスの素数研究と、コーシーのゼータ関数

リーマンの研究に触れる前にまず、素数研究の流れを変えたガウスについて触れよう。

ガウス以前の素数研究というのは、「素数の公式」を追い求めることだった

例えば、「2・3・5・7」という4つの素数の公式を考えることにしよう。数学では、「n番目の数」という意味でよく「n」の文字を使う。この例でいえば、「1番目の素数は2、2番目の素数は3、3番目の素数は5、4番目の素数は7」である。

この時、

「1/2(n^2-2+4)」

という公式で、3番目までのすべての素数が導き出せる。しかし残念ながらこの式では4番目の素数である7は導き出せない。だから誤りである。

このように、「n番目の素数」を導き出すための公式を探す、というのが、素数研究のメインだったのだ。

しかしガウスは考え方を変えた。彼は、「ある数Nまでに、素数はいくつぐらい存在するだろうか?」という、それまでとはまったく違う発想で素数の問題に取り組んだ。これにより「ガウスの素数定理」と呼ばれる定理が生み出され、素数研究に新たな道を切り開くことになった。

ガウスは数々の逸話で知られる天才数学者だが、素数の話にもこのように顔を出す。そしてガウスの研究の礎の上に、リーマン博士の研究が続くこととなる。

さて次は、ゼータ関数についてである。これは、コーシーという数学者が生み出したものだ。

彼が提唱した当時、ゼータ関数は胡散臭いものと捉えられていた。まあそれも当然である。例えば、ゼータ関数の帰結として知られる、こんな奇妙な数式がある

1+2+3+4+…=-1/12

意味が分かるだろうか? 言葉で説明すると、「1から順に自然数を無限個足し算すると、その答えがマイナス1/12(じゅうにぶんのいち)になる」ということだ。

まあシンプルに意味不明だろう。私も理解できていない。そんな意味不明な主張をするゼータ関数が「胡散臭い」と捉えられていたとしても、まあ当然だろうと感じる。

そしてリーマン予想は、まさにこのゼータ関数が関係してくる。だからこそ、予想の内容を理解することは非常に困難だ。

「リーマン予想」を説明する

この記事では、リーマン博士がどのような流れで「リーマン予想」に行き着いたのかという説明はしない。私が完全には理解できていないからだ。ここでは、現在「リーマン予想」として知られているその結論部分だけに触れることにする。

まず、「あるゼータ関数」を考えるのだが、そもそも「関数」というのは、例えば

f(x)=3x+5

みたいなものだ。これは、「xに何か数字を入れる(代入する)とf(x)の答えが定まる」という意味である。例えばxに1を代入すると、f(x)は8となる。これが「関数」である。

リーマン博士が考えたゼータ関数も同じようなものだが、大きく違うのが「複素数を扱う」ということだ。複素数というのは、虚数iを使って、例えば、

6+5i

というような形で表される。複素数は「s」と表記されることが多いので、a,bを実数とすると、一般的には

s=a+bi

というような形で表される。

で、あくまでもイメージだが、リーマン博士は

f(s)=3s+5

というような式について考えたということだ(実際にはδ(s)と表記するし、リーマン博士が考えたゼータ関数はもっとメチャクチャ複雑な式なのだが)。

さてここでリーマン博士は、f(s)=0となるようなsについて考えた(なぜなのかは是非この記事で紹介した本を読んでほしい)。この時のsについて詳しく調べてみると、ある性質が存在することが判明した。それが、

f(s)=0となるようなsの実部(s=a+biのaのこと)はすべて1/2である

というものだ。これこそが「リーマン予想」の核心である。私には残念ながら、これ以上のことは分からない。

さて、疑問を抱く人もいるだろう。ここまでの話に「素数」が出てきていないじゃないか、と。実はこの「リーマンのゼータ関数」は、「ガウスの素数定理」をより正確なものにするために存在すると言えるのだ。「リーマン予想」とは、ガウスの研究を拡張するものなのである。

さて、よく分からなくなったと思うが、超ざっくり言うとリーマン博士は、「『素数』と『ゼータ関数』を組み合わせて考えた場合、『複素数の実部が1/2というルール』を予想した」ということになる

『リーマン博士の大予想』の中に、この状況を説明する非常に分かりやすい説明が載っているので紹介しよう。全文抜き出すと長いので要約すると以下のようになる。

ある調査のためAさんは、Bさんの銀行口座をチェックすることになった。銀行口座のお金は日々増えたり減ったりしており、そこにそれらしい規則性を見つけ出すことがなかなかできなかったが、やがてAさんはある発見に至る。それは、水曜日だけ残高が0円になる、ということだ。ただし、毎週ではない。残高が0円ではない水曜日もあるのだが、残高が0円になるのは水曜日だけである

これをリーマン予想に当てはめるとこうなる。

リーマン博士は、f(s)という関数について調べている。sに様々な複素数を入れるとf(s)の値は様々に変化するが、sの実部が1/2の時だけf(s)が0になるという規則性を発見した。しかし、sの実部が1/2だったら必ずf(s)が0になるわけではない。sの実部が1/2でもf(s)が0にならないこともあるが、f(s)が0になるのは、sの実部が1/2の時だけだ

そして数学者たちは、このことを証明しようとしている、というわけである。数学者は「リーマン予想」が正しいと信じているが、もしも「sの実部が1/2でないのにf(s)が0になるような複素数s」が発見されたら、「リーマン予想」は間違っていることが証明されることになる。しかし、コンピュータで計算しても、現在のところそのような複素数sは発見されていない。

「リーマン予想」と関わった華麗なる数学者たち

「フェルマーの最終定理」でも同じだが、長年数学者たちを悩ませる難問には、その時代その時代の超一流の数学者が関わるものだ。リーマン予想に関しても、ガウスメルセンヌオイラーヒルベルトハーディーリトルウッドラマヌジャンエルデシュアラン・コンヌと、錚々たる名前が挙がる。彼らが「素数」とどう向き合ったことで「リーマン予想」が生まれ、そして「リーマン予想」に対してどんなアプローチを取っていったのかという歴史は、非常にドラマチックである。

この記事で紹介している本はどちらも、数学者たちの奮闘の歴史がメインだと言えるだろう。特に『素数の音楽』では、各数学者の様々なエピソードも描かれるので、「リーマン予想」そのものが理解できなくても、天才数学者たちの面白い逸話としても楽しく読めると思う。特にガウスやラマヌジャンは、数学そのものがあまり得意でなくても「分かる」ような凄いエピソードを持っているので、興味を持てるだろう。

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最後に

「リーマン予想」に関しては、「私が生きている間に証明されてほしい」と願うばかりだ。

数学における重要な難問として知られている「ABC予想」は、望月新一氏の「宇宙際タイヒミュラー理論(IUT理論)」によって証明された、とされている(議論は続いているようだが)。この「ABC予想」も、あまりにも証明が困難であり、まだまだ解決に時間が掛かるとされていただけに、「宇宙際タイヒミュラー理論」の登場は大きなセンセーションとして扱われた。

「リーマン予想」も同じように、どこかの天才がとんでもない理論を引っさげて、華麗に解き明かしてほしいと思う。そのような知的興奮を、自分が生きている間に味わいたい。そんな風に願っている。

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