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この記事の3つの要点
- ガロアは、アインシュタインを遥かに超える天才?
- 現代数学の基礎をたった独りで作り上げるも、20歳の時に決闘で死亡する
- 「あみだくじ」や「角の三等分問題」から「ガロア理論」へとたどり着く
数学史上に残る天才中の天才の思考は、死の間際に親友に託され、親友の奮闘によって現代に受け継がれたというエピソードも最強だと思います
自己紹介記事
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ルシルナ | 映画と本の感想ブログ
科学・数学の知識を身につける【本・映画の感想】 | ルシルナ | 映画と本の感想ブログ
中退していますが、理系の大学に通っていました。学校の勉強で一番好きだったのは数学・物理ですし、大人になってからも科学や数学の本を数多く読んできました。偉人たちの…
結城浩『数学ガール』では、天才数学者が生み出した「ガロア理論」はこれほど易しく説明される
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主人公は、高校3年生の「僕」。数学が好きで、学校の授業や受験勉強の合間に、個人的に興味のある分野について研究をしている。
そしてそんな彼の周りには、様々なタイプの<数学ガール>たちがいる。
ミルカさんは「僕」と同学年で、数学の天才。「僕」を中心とした数学愛好家たちの指導的存在で、高校生とは思えないその圧倒的な数学的才能で、皆を未知の世界へと引き連れていく。
テトラちゃんは、一学年下の後輩。最初は、苦手な数学を先輩である「僕」に教わりにきた子で、数学に強いというわけではなかった。しかし「僕」やミルカさんとのやり取りの中で着実に力をつけていく。時には、「僕」には思いつかないような発想や理解にたどり着くこともあるほどだ。言葉に対する感度が高いのと、分からない箇所をほったらかしにしないことが強み。
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リサは双倉図書館の主であり、赤髪が特徴。寡黙で、一単語を口にするだけというような会話が主だが、数学の才能はさすがのもの。というのもミルカさんとは従姉妹同士の関係なのだ。常にラップトップのパソコンをいじっている。
このような面々が、様々な数学談義を通じて数学の奥深くへと分け入っていく、というような物語です。
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シリーズが進むにつれて新キャラが登場したりするから油断できないね
「数学ガール」シリーズには、1作目以外にはすべて副題がついていて、それが作品の「最終到達地点」となります。今回は「ガロア理論」。本書では最終的に、「学園祭の展示」という形で、ガロアが残した第一論文を丁寧に追う、という終着となります。
ガロアとは何者か?
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本書の内容紹介に移る前にまず、ガロアという天才数学者についてまとめておきましょう。
彼は「数学史上における天才」などと言われることもありますが、その理由は、それまで数学の世界に存在しなかった分野を、たった独りで作り上げてしまったからです。しかもそれを若干20歳という若さで成し遂げるのです。あまりに時代を先駆けていたために、同時代の数学者になかなか理解されなかったというから、どれだけ斬新だったかが伝わるでしょう。
さらにこのガロアを伝説の存在にしているエピソードがあります。彼は20歳の時に決闘で死亡しているのです。歴史上の偉人は様々な死因で知られていますが、「決闘」というのもなかなかのものでしょう。
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映画になっててもおかしくないようなエピソードだよね
ざっと調べた限り、ガロアが主人公の映画は作られてないみたいよ
さて、どこで目にしたのかすっかり忘れてしまったのですが、「ガロアの天才性」について、アインシュタインと比較する形でこんな主張を読んだ記憶があります。記憶を頼りに要約してみましょう。
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アインシュタインは、「相対性理論」という物理学上の大発見をたった独りで行った。確かにそれは凄いことだが、当時「相対性理論」のような仮説を考えている人物は他にもいた。つまりアインシュタインは、「競争に勝って一番乗りをした人物」ということになる。
しかし、ガロアは違う。ガロアの場合、当時同じようなことを考えている人はいなかったし、もしかしたらその後数百年経っても、ガロアが発想したアイデアを思いつく数学者は出てこなかったかもしれない。
アインシュタインもガロアも、新たな発見を独力で行ったという意味では同じだが、その意味はまったく違う。
確かに数学でも科学でも、同時期に同じようなことを考えている人物が出てくることはよくあるし、「その中で誰が頭一つ抜けたか」が評価されることも多くあります。あるいは、「ある問題・課題・予想」が知られていて、それを最初に解決した人物が評価される、というケースもあるでしょう。
しかしガロアは、ほとんど誰も同じような問題意識を持っていなかった時に、まったく新しい独創的なものを生み出したのであり、やはりそれは凄まじいとしか言えないでしょう。
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携帯電話って、SFの世界でも描かれていなかったって言われたりもするみたいだから、そんなものを江戸時代に生み出してたらビビるよね
だからこそガロアの第一論文は、物凄く難しいのだそうです。ガロアが生きていた時代における最高の数学者と言われるポアソンでさえ「読みにくい」と言っていると本書に書かれていました。
でもそれは仕方ないでしょう。何故なら、彼はまったく新しい分野を生み出したので、未知の概念を既存の数学の「用語」を使って説明しなければならない状況にあったからです。
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これを「江戸時代にスマートフォンを作る」という例で説明してみます。当時は当たり前ですが、「スクリーンショット」や「アプリ」なんていう単語も存在しないし、それどころか「電話を掛ける」という概念も存在しなかったでしょう。江戸時代の人たちに、江戸時代に存在した言葉だけでスマートフォンについて説明するのは、相当難易度が高いと言えます(というか不可能でしょう)。
それと同じ状況にガロアは置かれていました。ガロアが生み出した理論に関して、今では「群」や「体」など、必要な概念を説明する単語が存在します。しかしガロアは、「群」や「体」という言葉が存在しない中で、それらの概念を既存の数学用語だけを使って説明しなければならなかったのです。
そういう意味では、よくもまあガロアの生み出した成果が残ってくれたものだ、とも感じます。ガロア自身は20歳で死んでしまうし、ガロアの論文を託された親友には数学的な知識があまりありませんでした。それでも、先進的過ぎて当時の一級の数学者たちも理解できなかった概念を、諦めずに届けようとし、かつ理解しようとした人たちがいたからこそ、ガロア理論がちゃんと残っているわけです。
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しかもガロアが生み出した分野は、現代数学にはなくてはならないものだと認められています。科学でも数学でも「対称性」と呼ばれる概念が非常に重要になるのですが、この「対称性」を記述するための文法が「ガロア理論」です。逆に言えば、「ガロア理論」が存在しなければ「対称性」について記述できなかった、とも言えるでしょう。その場合、科学や数学の研究が大きく停滞していた可能性も十分考えられると思います。
業績もエピソードも共に一級という意味では、アインシュタインやホーキング博士に匹敵するぐらいの人物だと思う
さて、そんな「ガロア理論」が本書の「最終到達地点」なわけですが、身構えていたよりは難しさを感じませんでした(もちろん、大変難しいんですが)。この記事では、「ガロア理論」そのものについてはあまり触れませんが(私がそこまで理解できていない)、本書の流れを頭から順番に追い、最後まで読み通すことで、ガロアがどんなことを考えていたのか「分かったような気になれる」と思います。
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「あみだくじ」「2次方程式」から「体」「群」の話へ
本書では、誰もが知ってる「あみだくじ」が割と重要なアイテムとして登場します。「あみだくじ」を数学的に考える、と言われてもなかなか理解しにくいかもしれませんが、本書では「僕」と「ユーリ」が、様々な記号や、<ぐるりん><すとん>といった独特の表記も駆使しながら、「あみだくじ」というものがどのような構造を持つのか探っていきます。
その後、2次方程式から「体」の話に展開していきます。この「体」は、本書を通じて最後まで重要になっていくので、本書を読む際はきちんと理解しましょう……と言いたいところですが、この「体」、結構難しいんですよね。
「体」というのは、「加減乗除が定義されている数の集合」です。つまり、「足し算・引き算・掛け算・割り算ができますよ」かつ「計算結果は同じ集合になりますよ」という意味です。
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よく分かりませんよね。
例えば「実数」について考えます。「実数」というのは、小数点や√が付く数も含む「普通の数全体(複素数は含まない)」という数のことです(「普通の数」なんて表現は数学的にはありえませんけど、なんとなくニュアンスを汲み取ってください)
で、実数同士を加減乗除しても、その計算結果は必ず実数になります。だから「実数の集合」は「体」と言えます。
一方、「整数」はどうでしょうか? 整数と同士を加減乗除して、答えが必ず整数になるなら「体」と言えるのですが、残念ながら「整数の集合」は「体」ではありません。例えば、「3÷2=1.5」となって、整数同士の計算結果が整数ではない数になってしまうからです。
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このように、「加減乗除が可能で(定義されていて)、計算結果が同じ集合に属する集合」を「体」と呼びます。
それからさらに、「あみだくじ」の例を使って「群」の話が展開されます。この「群」が、「体」以上にややこしいのです。「群」は「体」とは違って、簡単に伝わる形で定義を書くことができないので省略します。ちょっと難しいですが、以下のリンク先が、まとまっていると思います。
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ただ例えば、「あみだくじ」の例で説明されるのは「対称群」と呼ばれる「群」の一種ですが、これについて超不正確に、超ざっくりと説明すると、「入れ替えても(置換しても)変わらない操作」のことを指します。
この「あみだくじ」の例を通じて「対称群」を説明し、そこから「群」全体を定義し、さらにその後さまざまな「群」の種類に触れていく、という流れになります。
説明を読んで、その説明自体はなんとなく理解できても、「これは何のために何をしているんだ?」みたいなことを考えると途端に分からなくなるよね
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さてその後、「数学ガール」シリーズの名脇役である村木先生のカードが登場します。彼らがいる高校の数学教師で、「僕」やテトラちゃんに「これについて調べてみたら」というような短い記述のカードを渡してくれます。今回は、
「x^12-1」(「^」は「乗」という意味。つまり「xの12乗マイナス1」という数式)
としか書かれていないカードでした。ここから彼らは独自に研究を進め、正12角形や三角関数へと学びを展開させます。そしてさらにここでミルカさんが登場し、「1の原始12乗根」「円分多項式」「共役複素数」など、「僕」やテトラちゃんだけでは辿り着けない高みへと上って行くことになるわけです。
「角の3等分問題」と「3次方程式の解の公式」
「体」や「群」はかなり概念的な話が多く、そういう話が決して得意なわけではない私にはついていくのがやっとという感じがあります。
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しかし本書には、ガリガリ計算を推し進めていくようなパートもあり、式変形を追っていける部分は他のパートよりもかなり楽しめました。
それが、「角の3等分問題」と「3次方程式の解の公式」の話です。
まずは「角の3等分問題」からいきましょう。この問題は、古代ギリシャ時代から知られていた有名な問題で、多くの数学者が挑戦しました。
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「角の3等分問題」というのは、<与えられた2点を通る直線が引ける定規>と、<与えられた2点の片方を中心とし、他方を通る円が描けるコンパス>だけを使って、与えられた角を3等分出来るかどうか、という問題です。分度器のような、角度を直接的に測る器具を使うことなしに、角度を3等分にできますか、と問われています。
この「角の3等分問題」は既に決着がついており、「定規とコンパスだけでは3等分することが不可能な角度も存在する」ということが分かっています。
さて、この「角の3等分問題」を、本書では「図形問題」から「計算問題」に変換します。どういうことでしょうか?
実は、「定規」と「コンパス」を使うことで、「加減乗除」と「開平(二乗根の計算)」が行えることが分かっています。つまり、「角の3等分問題」というのは、「与えられた角度が加減乗除と開平のみの計算によって作り出せるかという問題」なのです。そしてこの「加減乗除と開平のみの計算で作れる数」は「作図可能数」と呼ばれています。
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そうなると、「ある角度が3等分できるか」という問題は、「その角度が作図可能数かどうか」という問題に読み替えることができ、さらにそれは、「ある方程式が作図可能数の解を持つか」という問題に帰着できる、ということになるわけです。さらにここに、「体」の考え方を組み込んでいき、「角の3等分問題を方程式の解として捉える」という話が展開されていきます。
なかなか難しいですね。本書の記述を実際に読んでいけば、何を言っているか少しは理解できると思います。
「角の三等分問題」については、本書を読む以前から断片的な知識を持ってはいましたが、「正17角形の作図が可能であるとガウスが示した」という話を含め、図形の問題を方程式の解を求めるという問いとして捉えられるという話は知らなかったので、非常に興味深く読みました。
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学生時代、図形の問題はどうにも苦手だったから、方程式に変換してくれると助かる
頭の中に図形を思い浮かべる能力が決定的に欠如してるのよね
さて、「最終到達地点」である「ガロア理論」に近づけば近づくほど、出てくる話題はどんどんと難しくなっていくわけですが、この後は「ベクトル」や「3次方程式」の話が展開されます。「ベクトル」「3次方程式」と聞くと、高校の授業でも出てくるので難しくなさそうですが、そういうわけじゃないんですよね。
特に「3次方程式」の方は、「ラグランジュ・リゾルベント」という聞いたこともない話が登場します。
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これも村木先生のカードの問題なのですが、村木先生が提示した7枚のカードを順に追っていくことで「3次方程式の解の公式」を導くことができ、さらに「ラグランジュ・リゾルベント」について考えることで、「n次方程式を代数的に解く」とはどういうことかが描かれる、という流れになるわけです。
そもそも「方程式を代数的に解く」ってなんだよ、って話ですが、もうその辺りは「本書を読んでください」としか言いようがありません。読んでいると面白いんですが、他人に説明できるレベルまで理解することがなかなか難しい内容です。
さてそこから、テトラちゃんが「僕」に講義するなんていう珍しい場面があったりしながら、ようやく物語は、「ガロア理論」へと向かっていきます。冒頭で触れた通り、「学園祭の展示とその準備」の描写によって、「ガロア理論」が整理されるという展開です。
ガロア理論について
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この記事ではほとんど中身には触れませんが、ざっくりと本書の「ガロア理論」の記述を追っていきます。
まず、展示の準備を兼ねて、ユーリが研究中の「あみだくじ」が再び登場します。「3次の対称群S3」と呼ばれるものをまず分類し、「S3の部分群」を割り算し、その結果として出てきたものを「剰余類」と名付け、この「剰余類」によって「対称群」を分類するというような話が展開されるわけです。
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と言われても、よく分かりませんよね……。まあこの記事では、内容のすべてを説明できないのと、私がちゃんと理解できていないのとで、どうしても不十分な紹介になってしまいます。本書を読めばもう少しきちんと理解できると思うので、是非読んでみてください。
本の感想記事は一応、まだ読んでいない人に向けて、「この本を読みたい」と思ってもらえるように書いてるつもり
ルシルナの記事をきっかけに本を読んでくれたら、書いてる甲斐があるってもんだよね
そして最終的には、学園祭の展示として「ガロアの第一論文」を取り上げ、死の間際ガロアが親友に託した、まさに彼の発想が詰まった第一論文に一体何が書かれているのかを、丁寧に追っていくという展開になっていきます。
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その頃、問題の捉え方をガラリと変え、「5次方程式には解の公式が存在しない」ことを証明した人物がいます。それが、アーベルという数学者です。ある意味で彼は、ガロアと同じ方向性を向きながらガロアにはなれなかった人物といえるでしょう。
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そして、誰も考えなかったようなそんな発想から、彼は「群論」(この記事で「ガロア理論」と呼んでいるものの正式名称)を生み出すに至った、というわけです。
本書の感想
この記事における数学的な記述は以上です。あとは、「数学ガール」という作品の感想を書いて終わろうと思います。
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