【平易】一般相対性理論を簡単に知りたい方へ。ブラックホール・膨張宇宙・重力波と盛りだくさんの1冊:『ブラックホール・膨張宇宙・重力波』(真貝寿明)

目次

はじめに

この記事で取り上げる本

この本をガイドにしながら記事を書いていきます

この記事の3つの要点

  • 一般相対性理論は、「重力の正体」を見抜く見事な洞察力から生まれた
  • アインシュタインは、3つすべてのテーマに拒絶反応を示した
  • 「ブラックホール」「膨張宇宙」「重力波」の大枠をざっくり理解できる

本書は、科学書に触れる入り口としても非常に適していると思う。科学に興味がある中学生なら読めるだろう

自己紹介記事

どんな人間がこの記事を書いているのかは、上の自己紹介記事をご覧ください

ブラックホール・膨張宇宙・重力波をざっくり知りたい

本書の構成とアインシュタインの失敗

本書はまさにタイトルの通り、「ブラックホール」「膨張宇宙」「重力波」について、現役の研究者がコンパクトに説明をまとめた作品だ。どれも単独で1冊の本になるぐらいのテーマであるが、本書では、科学的な基礎知識と歴史的な背景を上手く拾い上げて、読みやすく仕上げている。科学に関心のある中学生なら充分読めるだろうし、理科系の本にチャレンジする最初の1冊としてもかなりオススメだ。

本書の構成は以下のように明確になっている。

  1. アインシュタインの相対性理論の説明
  2. ブラックホールの説明
  3. 膨張宇宙の説明
  4. 重力波の説明

私は、科学系の本を結構読むので、正直なことを言えば、本書に書かれている内容はほぼ知っていた。つまり、一般的な科学書に書かれていることは大雑把に網羅されていると言っていいと思う。「ブラックホール」「膨張宇宙」「重力波」とまったく違う分野に見えるが、すべてアインシュタインの「相対性理論」と関係があるので、まとめて理解するのに適しているとも言える。

さて、そんなアインシュタインだが、実は本書で扱われる3つのテーマすべてについて「過ち」を犯している。そのことに触れた本書冒頭の文章を引用しよう。

ところが、その自信は災いし、数々の間違いを起こすことにもなる。
(中略)例えば、シュヴァルツシルトが導いた解(今ではブラックホールの解として知られるシュヴァルツシルト解)に対して、「計算は合っているが、物理的にあり得ないような簡単な状況を設定しているようだ」と評した。また、宇宙全体が膨張している解を示したルメートルに対して「あなたの計算は正しいが、こんな解を信じるなんて、あなたの物理的センスは言語道断だ」とまで糾弾している。重力波の存在も、自身で一度予言しながら10年後には考え直して「物理的には存在しない」という論文を書きかけたほどである。つまり、現在の研究の主流である3つのトピックについて、いずれも一度は拒否反応を示したことになる

どれもアインシュタインの「相対性理論」から導かれるにも関わらず、アインシュタインは3つすべてに少なくとも一度は拒絶反応を示したのである。どれも今では当たり前のように扱われているテーマだが、そのような発想が生まれた時点ではあまりに異端で、天才と言われたアインシュタインでさえ受け入れられなかったのだ。

そしてそれは、科学の歴史で繰り返されてきたことでもある。常に科学は、それまでの常識を覆しながら新しい知見を積み上げてきたのだ。

本書は、そんな歴史的背景についてもきちんと理解できるので、科学的知識に上手くついていけない箇所があっても、最後まで読み通せるだろう。

相対性理論(一般相対性理論)に対する著者の感想

先述した通り、本書の3つのテーマはすべて「相対性理論」から導かれる。「相対性理論」には「特殊相対性理論」と「一般相対性理論」の2種類があり、「重力」の効果を考えていないのが前者、考えているのが後者である。

「特殊相対性理論」については別の記事で詳しく説明しているのでそちらを読んでほしい。

本書では「一般相対性理論」が関係する。一般相対性理論から導き出される方程式は「アインシュタイン方程式」と呼ばれることもあり、その方程式を解くことによって3つのテーマが現れてくるのだ。

ちなみに、「アインシュタイン方程式」というと、有名な「E=mc2」を想像するかもしれないが、そうではない。この記事で言及する「アインシュタイン方程式」がどんなものなのか知りたければ、以下のリンク先に飛んでほしい(私にはまったく意味不明な方程式である)。

この「アインシュタイン方程式」、解くのが非常に難しいという(確かに素人目には何が書いてあるかさっぱり分からないし難しそうに見えるが、それは科学者にとっても同じ)。普通に解くことはまず不可能だそうだ。最近は、コンピュータのシミュレーションを駆使することで「それらしい答え」を導き出すことはできるようになったが、それは方程式を解いて出てくる「厳密解」ではない。アインシュタイン方程式の厳密解を導き出すのは、相当の難問だそうだ。アインシュタイン自身も、

彼本人は、この方程式をきちんとすぐには解いてみようとしなかった

という。

アインシュタイン方程式の厳密解として有名なのは「シュヴァルツシルト解」だ。先ほど「アインシュタインの失敗」の引用の中でも出てきた、後にブラックホールと判明した解である。シュヴァルツシルトは、アインシュタイン方程式を最も簡単な設定で解き、この解を導き出した。アインシュタイン方程式の初めての厳密解としても知られている。

さてそれでは、一般相対性理論は何が凄かったのだろうか。それは「重力の捉え方」だ。

アインシュタインが一般相対性理論を発表する以前は、ニュートンの「万有引力の法則」が重力を説明する理論として絶大な影響力を持っていた。重力が関係する、ありとあらゆる状況を説明できる素晴らしい理論だったのだ。

しかし「万有引力の法則」は、適切な計算により結果を導き出すという意味では非常に便利だったが、「重力とは何か?」という問いには答えられなかった。「万有引力の法則」において「重力」というのは、「どういう原理で発生しているのか分からない、謎の遠隔作用」でしかなかったのだ。

そういう中でアインシュタインは、「重力とは何か?」という問いに答えることに成功したのである。

重力の正体は空間のゆがみだ、とする考えは、アインシュタイン以外には誰も思いつかなかった。幾何学という数学を、自然現象を説明する物理学に応用したのは、彼の努力と物理的なセンスの賜物である

ここでは詳しく説明しないが、「空間が歪んでいるからこそ重力という力が生まれる」とアインシュタインは見抜き、それを方程式に落とし込んだのが「アインシュタイン方程式」というわけだ。その驚きを、著者はこんな風にも書いている。

途中で登場するリーマン幾何学のテンソル計算は、実に地味で、私自身も計算しながら、「よくぞこんな計算が重力に関係していると看破できたものだ……」と今でも思う

そんな方程式が、本書の3つのテーマの背景にあるということになる(しかし本書には、数式を解くような難解な記述は出てこないので安心してほしい)。

さて本書には、歴史的な記述も多く含まれているのだが、中でもかなり興味深いと感じた話がある。「アインシュタイン方程式」をアインシュタインとほぼ同時期に発表した人物がいる、というものだ。しかも日付だけを見れば、アインシュタインよりも早く論文を提出しているという。

「アインシュタイン方程式」の導出は、本当にアインシュタインの功績なのだろうか? この話を少し詳しく見ていこう。

登場するのは、「現代数学の父」とも呼ばれる偉大な数学者・ヒルベルトである。数学の本を読んでいると、様々な場面で顔を出す「重鎮」と言っていい人物だ。そんなヒルベルトが「アインシュタイン方程式」に関して発表した論文が1915年11月20日付。そしてアインシュタインはその5日後の1915年11月25日付で論文を提出している。

日付だけ見ると、方程式に先にたどり着いたのはヒルベルトだと思うだろう。この事実は、長年伝記作家を悩ませたという。「アインシュタインが『アインシュタイン方程式』を導出したこと」は事実だが、「アインシュタインよりも先に『アインシュタイン方程式』を導出した人物がいる」となれば、話は大きく変わってくる。この問題が決着していない時期に出版された本には、

アインシュタインが一般相対性理論のただ一人の創設者であり、彼とヒルベルトの二人が基礎方程式の発見の栄誉を受けるべきだ

とも書かれているという。つまり、「基本的な枠組みとなるアイデアを考えたのはアインシュタインただ1人だが、それを記述する方程式を導き出したのはアインシュタインとヒルベルトである」という解釈だ。

さて、実際のところはどうなのだろうか?

この問題、現在では解決されている。1997年に、ヒルベルトの論文の校正刷り、つまり「1915年11月20日付で提出した最初の論文」が発見されたことで決着したのだ。実は、「校正刷りの論文」と「実際に雑誌に掲載された論文」が大きく違うことが分かった。「校正刷りの論文」では、まだ「アインシュタイン方程式」にはたどり着いていなかったのだ。

つまりこういうことだ。ヒルベルトは1915年11月20日付で論文を発表したが、その時点ではまだ、「アインシュタイン方程式」そのものを導き出せていなかった。そしてその後、同論文を修正し、その過程で正しい「アインシュタイン方程式」を記載する。そしてその修正された論文が雑誌に掲載されたというわけだ。

これで、1915年11月20日時点ではヒルベルトは正解に達しておらず、よって、1915年11月25日付で論文を発表したアインシュタインが、基礎方程式の導出でも先んじていたということが明らかになったのである。

さて、そんなドラマティックな展開もあった「一般相対性理論」、今では現代物理学を支える重要な理論として認識されているが、実はアインシュタインが生きている間は受け取られ方がまったく違ったという。

1950年代の終わり頃まで、一般相対性理論は、現実とかけ離れた数学と見なされ、ごく少数の研究者だけが細々と研究を続けてきた

意外な事実だが、仕方ない面もある。というのも、アインシュタインが一般相対性理論を発表した当時、「一般相対性理論が無ければ解決できない問題」はほぼ存在しなかったのだ。現在でさえ、宇宙にロケットを飛ばすのに、ニュートンの「万有引力の法則」を知っていれば充分である。

一般相対性理論は「重力」の影響がもっと大きな天体などにしか適用されない。アインシュタインが存命の時期には、なかなかそのような天体の研究まで行われていなかったのだ。

しかし、「ブラックホール」や「連星パルサー」など、地球から遠く離れた天体や現象への観測・研究が進むにつれ、一般相対性理論の重要性は次第に認識されるようになり、研究者が増えていった。アインシュタインがどれだけ時代を先んじていたのかが分かるだろう。

それでは以下、3つのテーマそれぞれについてざっと説明をしていこうと思う。

ブラックホールはどのように存在が認識されるようになったのか

「天体の研究」というのは普通、まず「それまで観測されたことのない天体」が発見され、その後で研究が行われる、という流れが当たり前だ。しかし「ブラックホール」はかなり例外的に、計算結果から研究がスタートした。つまり、「方程式の解から考えると、このような天体が存在しているはずだ。まだ観測はされていないが、存在するとしたらどういう性質を持つのか調べてみよう」という風に研究が進展したのである。

このような研究を主導したのが、ペンローズという数学者と、車椅子の物理学者として有名なホーキングだ。彼らは、ブラックホールが観測されるずっと以前から、方程式を詳しく精査し、ブラックホールの性質に関する様々な研究結果を発表してきた。

一方、それとはまた少し違うルートでブラックホールにたどり着く者もいた。それは、「星の最期はどうなるのか?」という研究に端を発する

現在では、「星の一生」に関する理解がかなり進んでいる。最期の姿は概ね、「星の重量」によって決まり、「中性子星になる」「超新星爆発を起こす」「ブラックホールになる」など、星の重さによって最終的な結末が変わるのである。

現在知られている知見に辿りつくまで、多くの科学者が「星の一生」の研究に関わった。様々な科学者が、「こういう条件ならこういう最期を迎える」という研究成果を打ち出していき、その条件に当てはまらない星についてさらに考える、ということを繰り返してきたのだ。

最終的に、「こういう条件の星は、中性子星として最期を迎える」というところまで研究が進むが、「じゃあ中性子星になれない星はどうなるのか?」という問題が残る。ここまでくれば、「ブラックホールになると考えるしかない」という説に傾いても良さそうだが、当時の科学者はブラックホールという存在に懐疑的だった。アインシュタイン自身も「計算上導き出される解に過ぎない」と考えていた通り、ブラックホールは、「理論上存在しうるが、実際に存在するとは考えられないもの」と見なされていたのだ。

しかしその後、「ブラックホールが存在すると仮定しなければ説明がつかない現象」が数々発見されることで、間接的にその存在が示されるようになり、その後2019年に初めて、ブラックホールを直接観測することに成功する。このようにして、「ブラックホールの実在」は確かなものになっていったのだ。

また本書では、ブラックホールの研究が「超弦理論」と呼ばれる分野へと波及し、宇宙に関する新たな捉え方の研究に繋がっていることも示唆される。その流れは是非本書で読んでほしい。

「宇宙の膨張」と「宇宙の加速膨張」がもたらした「宇宙像」の変遷

「膨張宇宙」の話題は、大きく2つに分けることができる。アインシュタインによる小細工がハッブルの観測によって否定された「宇宙の膨張」と、アインシュタインの死後だいぶ経ってから発見された「宇宙の加速膨張」である。

前者から見ていこう。望遠鏡の名前で有名な天文学者ハッブルが、「宇宙が膨張している」ことを観測によって示したのだが、これは同時代の科学者に衝撃を与えた。何故なら当時、アインシュタインを含め科学者のほとんどが、「宇宙は過去から現在に至るまで変化なく同じ状態を保って存在してきた」という「静的宇宙」を支持していたからだ。

この「宇宙の膨張」に関する二転三転や、アインシュタインの有名な「失敗」の物語は、以下の記事に詳しくまとめてあるので読んでほしい。

紆余曲折の末、「宇宙が膨張している」という事実は科学者の間の共通認識になったわけだが、さらに1990年代後半に驚くべき事実が判明した。それが「宇宙の加速膨張」である。

何故これが「驚き」だったのかと言うと、科学者は「宇宙は確かに膨張しているが、その膨張速度は減速しているはずだ」と考えていたからだ。まずこの説明からしていこう。

例えば、ボールを真上に投げることを考えよう。この場合、ボールが上昇する速度は徐々にゆっくりになり、ある時点で止まり、それから降下する、と分かるだろう。「ボールを投げ上げる際に加えた力」によってボールは重力に逆らって上昇するが、それ以降力が加わることはないので加速はしない、ということである。

宇宙の膨張に関しても同様に考えられていた。「ビッグバン」によって宇宙は始まり、その時に生まれた力によって宇宙は膨張を続けている。しかし、その後「宇宙を膨張させるような力」は加わっていないはずなので、その膨張速度は次第に減少していくはずだ、というのが科学者たちの共通理解だったのだ。

しかし実際には、宇宙の膨張速度は加速していることが判明した。だからこそ「驚き」だったのだ。

この発見を受けて科学者は、「ダークエネルギー(暗黒エネルギー)」なるものの存在を仮定した。先述した通り、「宇宙を膨張させるような力」が加わっていなければ宇宙の膨張速度が加速するはずがない。そして、宇宙の膨張速度が加速していることが判明したのだから、「宇宙を膨張させるような力」が加わっていると考えるしかないのだ。

その「宇宙を膨張させるような力」に、「ダークエネルギー」という名前をつけたのである。現在、その正体はまったくの不明だが、科学者は、そのような未発見の何かが存在すると考えなければ「宇宙の加速膨張」を説明することはできない、と考えている。

しかし本書の著者は、「ダークエネルギーは、エーテルと同じように解決される可能性もある」と示唆している。この意見には、私も同感だ。

エーテルについても、以下の記事に詳しくまとめているので読んでほしい。

ざっくり言えば、「光は波なので媒質(海の波なら『水』、音波なら『空気』)が必要であり、その『光の媒質』に『エーテル』という名前をつけたが、アインシュタインは『エーテルなど存在しない』と示した」ということになる。

かつて科学者は、「理論上『エーテル』というものを仮定しなければこの状況を説明できない」と考えていたわけだが、これはまさに、「理論上『ダークエネルギー』というものを仮定しなければこの状況を説明できない」という現状と同じだ。つまり、アインシュタインが「エーテルは不要」と示したように、誰かが「ダークエネルギーは不要」と看破するかもしれない、というわけである。

私も個人的には、そんな解決を望んでいる。その方がドラマチックだからだ。

検出不可能かもしれないと考えられていた重力波

重力波は「アインシュタイン最後の宿題」と呼ばれていた。アインシュタインは存命中、様々な予測・予言を導いたが、その中で唯一実証されていなかったのが重力波なのだ。実は、本書刊行時点でも未検出だったのだが、本書刊行から1年後の2016年、重力波が初めて観測されたことが大きなニュースとして世界中を駆け巡る。これで、アインシュタインが遺した宿題はすべて解決済みとなった。

アインシュタインは重力波について態度を様々に変えている。自ら予測しておきながら、後に「存在しない」と思い直し、あるいは「存在するかもしれないが、小さすぎて観測は不可能だろう」と考えていた時期もあった。

重力波というのは、一般相対性理論における「重力」の捉え方から容易に導かれる。アインシュタインは「重力とは空間のゆがみだ」と見抜いたわけだが、その「空間のゆがみ」が「波」となって伝わるのが「重力波」だ。イメージとしては、シーツの四隅を4人で持って上下に揺らすとシーツは波打つが、このようなことが我々が生きている空間に対しても起こっているはずだ、という感じである。

重力波の直接観測は2016年に成し遂げられたが、ブラックホールと同様に間接的な証拠は早い段階で見つかっていた。お互いがお互いの周りを回っている「パルサー」という天体のペア(連星パルサー)が1970年代に発見されたのだ。

「連星パルサー」の発見以前から、「もし重力波が存在するのであれば、連星パルサーの軌道周期は少しずつ短くなるはずだ」ということが一般相対性理論から分かっていた。そして「連星パルサー」の観測により、予測通りに軌道周期が短くなっていることが判明したというわけだ。

「連星パルサーの発見」に対しては1993年にノーベル賞が与えられており、この時の受賞理由には、「重力波の存在を間接的に証明した」という功績も含まれているのだという。

重力波の研究がどのように進んでいくのか、さらに注目していきたい。

最後に

繰り返しになるが、本書は科学に興味はあるが知識はさほどないという人でも充分楽しめる作品だ。最初に手を出す科学書としても適しているだろう。

アインシュタインの影響が現在においても残っていることを実感できる作品だ

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