目次
はじめに
この記事で取り上げる映画
出演:チョウ・ドンユイ(周冬雨), 出演:イー・ヤンチェンシー(易烊千璽), 出演:イン・ファン(尹昉), 出演:ホァン・ジュエ(黃覺), Writer:ラム・ウィンサム(林詠琛), Writer:リー・ユアン(李媛), Writer:シュー・イーメン(許伊萌) , 監督:デレク・ツァン(曾國祥)
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この映画をガイドにしながら記事を書いていくようだよ
この記事で伝えたいこと
「弱者」こそ生きやすい社会であってほしいと、祈りながら2人の生き様を見続けた
これほどのものを背負わずに生きていられる世の中であってほしい
この記事の3つの要点
学校ではいじめられ、家庭環境も厳しいチェン・ニェン 不運な境遇ゆえに街のチンピラとして生きざるを得なかったシャオベイ 出会うはずのない2人の人生が交わり、壮絶な決断を貫き通そうとする衝撃作
映画を観ながら、「誰かを助けること」の難しさについても改めて実感させられた
自己紹介記事
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どんな人間がこの記事を書いているのかは、上の自己紹介記事をご覧ください
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凄い映画でした 。元々観る予定のなかった映画ですが、本当に観て良かった と思いました。
だから余計に、出会えて良かったなと思える作品だった
普段私は、「作品の評判を知った上で映画を観る」ことをしません 。基本的には映画館でしか映画を観ないと決めていて、「公開前のざっくりした内容紹介」か「映画館で流れる予告」ぐらいから観るか観ないかを決めています。そんなわけで、「映画の評判」を調べることも普段していません。
ただこの『少年の君』は、そんな私のところにまで評判が届くぐらい大絶賛されていた のです。まったく知らなかった映画が称賛されていることが気になって、観てみることにしたのですが、個人的にはとてもとても素晴らしい映画だと感じました。
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物語の大枠は「ボーイ・ミーツ・ガール」と言っていいでしょう 。つまりそこには、ある種の「恋愛的な関係性」が存在しているというわけです。しかし一方で、「ボーイ・ミーツ・ガール」と聞いてイメージするような作品ではないと思います。映画には、現代中国の様々な社会問題が詰め込まれ、その苦しさを残念ながら引き受けざるを得ない少年少女が、それでもなんとか踏ん張っていく姿が描かれる からです。そういう辛く厳しい境遇の中で、出会うはずのなかった2人の人生が交わり、「恋」と呼んでいいのか悩む展開が描かれていきます。
冒頭から結構ハードな設定・展開だけど、後半はますます重苦しくなっていくよね
この映画で描かれる社会問題は、日本も無関係とは言えないでしょう 。色んな意味で規模の大きな中国と比較すると程度の差はあるかもしれませんが、主人公2人のような苦しい環境に置かれている子どもたちは、日本にもたくさんいるはずです。
この映画を観て何を感じるかはもちろん人それぞれ違うでしょうが、「こんな時代だからしょうがない」みたいな感覚だけは持ってほしくない と感じました。「こんな時代」にしているのは、私自身を含めた大人です。自分に何ができるのか考えることはとても難しいですが、せめてもう少しまともな世界にできるようにみんなが少しずつ頑張るべき だと感じました。
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さて、普段映画や本の記事を書く際は、「自分なりのネタバレ基準」を守るようにしています 。「何を以ってネタバレと考えるか」は人それぞれ違うので、私の普段の記事も「ネタバレだ」と感じる方もいるでしょうが、私なりの基準で普段はネタバレをしていないつもりです。
ただこの記事では、その「自分なりのネタバレ基準」も解放します 。なるべく作品そのものに触れたいからです 。映画の後半、ある場面から極端に物語が転調して以降の展開についてはボカして書きますが、そこに至るまでの内容にはかなり触れるつもりです。
ですので、「これから映画を観ようと思っているが、あまり内容を知りたくない」という方は、ここで読むのを止めていただくのがいい かと思います。
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映画の冒頭で繰り返される『was』と『used to be』の違い
冒頭からまず非常に印象的でした 。映画のラストが、この冒頭シーンの繰り返し となるので、さらに印象が強くなります。
冒頭シーンの意図が分かった時、「上手いなぁ」って思ったわ
映し出される状況そのものはホント大したことないのに、読み取れる情報量が多いよね
映画全体は、高校生の少女チェン・ニェンと、青年シャオベイの物語なのですが、冒頭では、大人になり、恐らく英語教師の職に就いたのだろうチェン・ニェンが登場します 。そして冒頭のシーンは、彼女が授業の中で子どもたちに、「『was』と『used to be』の違いが分かる人?」と質問している場面 です。子どもの1人が手を挙げ、「『was』は過去を表します」と答えるのですが、チェン・ニェンは「どちらも過去を表す言葉ですよ」と返します。
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それから彼女は、「『used to be』の方は、『失った』という意味合いが強くなります 」と説明した上で、子どもたちに、以下の3つの文章を復唱させるのです。
This was a playground.(ここは昔遊び場だった) This used to be a playground.(ここは昔遊び場だったのに) This is a playground.(ここは遊び場です)
子どもたちがこの3つの文章を繰り返すのに合わせて、3つの日本語字幕が切り替わっていきますが、その過程で、「遊び場」という日本語の上の表記(日本語の場合の「ふりがな」のようなもの)が「playground」から「paradise」に変わる 、という趣向がなされます。日本人は「paradise(パラダイス)」と聞くと「楽園」をイメージすると思いますが、恐らく英語には「遊び場」のようなニュアンスもあるのでしょう。
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さて、冒頭で描かれるのはたったこれだけです。チェン・ニェンがどのような過去を持っているのかまだ知らない観客には上手く受け取ることができないでしょう 。しかし最後に再びこの場面が繰り返されることで、冒頭シーンでやりたかったことが見えてきます。
つまり、「子どもたちに英語を教える」という、特段なんでもなさそうな、「チェン・ニェンは将来こうなりました」という紹介に過ぎない映像に、「ここ(私がいた場所)は昔『楽園』だったのに」という彼女自身の実感を重ねている というわけです。
そしてこのことは、大きな皮肉として観客に伝わる だろうと思います。何故なら、チェン・ニェンがかつていた場所は、とても「楽園」と呼べるような場所ではなかった からです。むしろ「楽園」とは程遠い環境だったと言っていいでしょう。
正直、初めの時点からチェン・ニェンはかなりどん詰まりに生きてるよね
私なら心が折れてグレちゃうだろうけど、なんとか踏ん張ってはいるって感じ
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しかし彼女は、客観的に見たら「酷い」としか言いようがないそんな環境を「楽園」と呼んでしまいたくなるぐらい、その後さらに凄まじい状況に置かれます 。チェン・ニェンの「ここ(私がいた場所)は昔『楽園』だったのに」という感覚は、彼女が過ごした壮絶な日々に対する実感を表現しているというわけです。
さらにここには、「英語教師として穏やかで安定した生活を送れている現在よりも、昔の方が『楽園』だった」という感覚 も込められているかもしれません。そうだとすれば、それはまさに、この映画の核でもある「ボーイ・ミーツ・ガール」的な部分に対するチェン・ニェンの実感と言っていいでしょう。
冒頭シーンを観ている段階では、当然このようなことは理解できません 。しかし、チェン・ニェンの凄まじい過去を知った後、改めてラストシーンでこの場面が繰り返されると、彼女が抱いているかもしれない複雑な感情を読み取ることができる というわけです。
本当に、映像的にはなんてことのないシーン なのですが、直接的な説明をせずにチェン・ニェンの実感を如実に伝える見事な場面 だったと感じました。
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チェン・ニェンはいじめのターゲットにされる
冒頭シーンが終わると、舞台は2011年、中国における「大学入学共通テスト」である「高考」まであと60日という時点 に遡ります。高校3年生のチェン・ニェンは、受験勉強で殺伐とする進学校で、陰を潜めながら受験・卒業までの日々をやり過ごそうと考えていました。
韓国もそうだって聞くけど、ほんとに「殺伐」って言葉がぴったり来る世界だって思った
しかしそんなある日、高校の敷地内で生徒が自殺していまいます 。チェン・ニェンは、自殺した女生徒がいじめられていることに気づいていましたが、何もしませんでした。自殺した少女との関係性については深く描かれないので、チェン・ニェンがどう考えていたか正確には分かりません。
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そもそもチェン・ニェンには、
ここで友達は必要ないので。
と、相手がいじめられているかどうかに関係なく、学校内で誰かと関わるつもりがない からです。
ただ、
彼女は私と友達になりたがってた。でも、私は気づかないフリをしたの。
と語る場面もあり、彼女がなんらかの後悔を抱いていた可能性も示唆されます 。
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いずれにしても、いじめられていた少女が自殺したことをきっかけとして、いじめのターゲットがチェン・ニェンに移った のです。
いじめの主犯格は3人の女生徒で、その中に、明らかに「サイコパス」な人物がいます 。大人に好かれる振る舞いをするのが得意で、表向き「優等生」にしか見えないのに、実際には他人の痛みをまったく想像することができない異常者 です。モラルに訴えたり、説得によって価値観を変えたりすることははっきり言って不可能でしょう。
学校に限らないけど、ホントに、こういう「常軌を逸した人間」とどうやって社会生活を営めばいいか分からないよね
何かが起こってからでは遅いけど、何かが起こる前に制約を加えるのも難しいっていうジレンマ
そんな奴に目をつけられたら、もうどうにもなりません。いやそもそも、相手がサイコパスであろうがなかろうが、いじめのターゲットにされたらどうにもならない でしょう。私自身はいじめられたことはありませんが、学生時代の自分の記憶や、本・映画などに触れた経験から、「いじめられるかどうかは運次第 」みたいなところがありますし、いじめられる側はあれこれ理由をつけるでしょうが、本当のところは誰だっていいのだと思います。
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映画の中では、チェン・ニェンのいじめを捜査する刑事が出てきますが、「学校でのいじめ」を刑事事件として追うことの難しさ について語っていました。映画の最後で、中国がいじめに対する法改正を強化したというような字幕が表示されるので、映画の舞台である2011年当時と比べればマシになっている可能性はあります 。しかし、「いじめを刑事事件として扱うこと」は日本でも難しい側面があるでしょうし、決して他人事ではありません。ニュースや報道などでも、「学校の外で行われていれば明らかに刑事事件なのに、学校内で行われると内部の処分で終わってしまう」みたいな事例を目にすることが結構あるはずです。
映画ではこのように、「いじめられている少女」を描くだけではなく、「これは社会全体の問題なのだ」という示唆も含まれます 。映画全体として、「社会問題をあぶり出す」というスタンスが強く出ていて、しかしそれがきちんと物語として馴染んでいる点が見事だと感じました。
さて、チェン・ニェンは「いじめ」という辛い境遇を抱えるわけですが、彼女の厳しさはそれだけではありません。むしろ、彼女の普段の生活こそが最低 だと言えるでしょう。そしてこれもまた、中国の厳しい現実を描いているというわけです。
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具体的には説明されなかったと思いますが、恐らく両親は離婚していて、父親はいません。さらに母親が「出稼ぎ」に出ていて、家にはいないのです 。映画で特に詳しく説明されなかったことから考えると、中国国内では恐らく、「親が『出稼ぎ』に出て家にいないという家族形態」は決して珍しいものではないのだと思います。とはいえやはり、「『出稼ぎ』に出なければ生活が成り立たない」という状況は厳しいものだし、中国の格差社会を如実に示しているわけです。
「出稼ぎ」って、農業が出来ない期間に農村の人が都会に出るイメージだったよ
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彼女の苦難はこれだけではありません。チェン・ニェンの母親はどうやら、詐欺スレスレのビジネスを行っているようなのです 。そして被害者らは、どこにいるか分からない母親にではなく、チェン・ニェンが住む自宅に非難を向けます 。中傷するビラが貼られたり、家に借金取りがやってきたりと、とても受験勉強に集中できるような環境ではありません。
そしてその上で彼女は、学校でいじめられている わけです。
これがチェン・ニェンが置かれた厳しい状況になります。そしてこの状況を脱しようと、彼女は受験戦争を必死で戦い抜こうとする のです。
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チェン・ニェンのスマホの待受画面には、「受験は唯一フェアな戦場だ 」みたいな言葉が表示されていますが、これは日本を含め、受験戦争が加熱する国でよく言及される話だと思います。どれだけ格差があろうが、家庭の事情が厳しかろうが、受験で成功すれば逆転することができるわけです。チェン・ニェンは、生徒数の多い高校でトップ10に入るほどの秀才で、どうにか北京大学に入学して、今自分が置かれたクソみたいな現実から抜け出したい と考えています。
そんな中で、チェン・ニェンはシャオベイと出会うのです 。
シャオベイは街のチンピラ で、チェン・ニェンとはまったく違う世界に生きています。具体的にはイメージしにくいものの、アンダーグラウンドの世界で、暴力を駆使して仲間たちとどうにか生き延びている ような、そんな存在です。
普通なら、たとえ同じ街に住んでいようとも、そんな2人が出会うはずがありません。ただこの映画では、チェン・ニェンがかなり特殊な状況に置かれていることもあり2人の出会いは不自然なものに映らない でしょう。
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しかも、結果を知ってると、この2人が出会ったことが本当の意味で良かったことなのか、悩ましいよなぁ
チェン・ニェンとシャオベイの出会いは、「ボーイ・ミーツ・ガール」と聞いてイメージできるようなワクワクしたものではありません 。出会ったところで、普通に考えれば継続するような関係性ではないのです。しかし、チェン・ニェンがいじめられているという状況が、2人をさらに結び付ける ことになります。チェン・ニェンとしては苦渋の決断としか言いようがなかったでしょうが、背に腹は代えられないという思いで、”仕方なく”シャオベイとの関わりを受け入れていくのです。
「誰かを助けること」の困難さ
さて、そんな風にして始まった2人の関係ですが、少しずつ気持ちに変化が生まれていきます。そして、チェン・ニェンのそんな変化が、「誰かを助けること」の難しさを示している とも感じるのです。
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それを一番象徴するセリフ がこれでしょう。
私のことを助けたいと言う人はたくさんいる。 でも、実際に誰が助けてくれた?
日本人の場合、「同情するなら金をくれ」という言葉で、チェン・ニェンの言葉をシンプルに理解することができる のではないでしょうか。
私はいつも、気持ちだけは「誰かを助けたい」と思っています 。ただ、実際に行動に移せているかと言うとそんなことはありません。何かの時に気まぐれで少額の寄付をするぐらいで、それ以外に、「誰かを救うための実際的な行動」を取ったことなどほとんどないと思います。
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もちろん、辛く厳しい境遇にいる人が、誰かの「暖かい気持ち」に触れることで、救われた気分になれることもあるでしょう。一方で、災害の被災地に千羽鶴が届くような状況に対して「そんなもの要らないからもっと必需品を送ってくれ 」という意見が出るケースもあります。「現状を打破したり乗り越えたりするための現実的な何かがほしい」という気持ちは当然のものだと思いますし、「気持ち」をもらったってしょうがないと感じるのも当たり前 のことでしょう。
私もきっと、自分が辛い側の人間なら、「気持ちなんか要らない」って思っちゃうだろうしなぁ
もちろん、モノでは解決できない状況もあるし、そういう時に最も必要なのは「気持ち」だったりもするんだけど
難しいと感じるのは、「善意の気持ちは拒絶できない 」ということです。どうしても世の中には、「善意はありがたく受け取るべきだ」みたいな雰囲気があるように感じられます。だからこそ辛い境遇にいる人は、「要らないけど、要らないとは言えない」みたいな苦しみも背負うことになってしまう わけです。
チェン・ニェンの「実際に誰が助けてくれた?」という言葉にも、その気持ちが凝縮している ように感じられるし、これは、「どのようにして手を差し延べるべきか 」という私たちの問題にも繋がっていくのだと感じました。「気持ち」だけでは人は救えないし、「気持ち」”しか”ないならむしろ沈黙すべきなのではないか、とさえ考えることもあります。非常に難しい問題だと言えるでしょう。
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「理不尽」から逃れようとする2人の必死さが滲み出る、後半の息詰まる展開
映画の前半で、2人が置かれている現状の紹介と、そんな2人の関係の深化が描かれます。そこには様々な社会問題が内包されており、あまりに大きな「理不尽」を背負わされている2人が、それでもどうにか踏ん張って、それぞれなりの倫理に基づいて前進していこうとする姿 が描かれるのです。
しかしある時点から、2人は生き方の方針をバッサリと変えていく ことになります。
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前半も、「ボーイ・ミーツ・ガール」とは思えない重苦しいトーンではありましたが、それでもほんのり「青春」を感じさせるような場面もありました。しかし後半に入ると、ひたすらに息詰まるような空気に支配される ようになっていきます。
「退路を断った」と感じさせるあの場面もちょっと凄かったよね
そうせざるを得ないと感じさせる境遇を2人で乗り越えていくという決断は、良いか悪いかは別として「美しい」って思った
また後半では、時系列を巧みに入れ替えながら、ミステリ的な要素もかなり増していきます 。物語としても非常にスリリングになり、見応えがあると言っていいでしょう。
後半の展開を観ながら、「自分が同じ立場に立たされた時、同じように振る舞えるだろうか 」と考えてしまいました。この「同じ立場」というのは、チェン・ニェン、シャオベイどちらの立場も含みます。
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2人が置かれる状況は本質的には違うものですが、どちらも「相手のためを思って厳しい道を進む」という決断 であることは同じです。2人にとって様々な意味で辛い選択なのですが、ただそもそも彼らの目の前には、どれを選んでも「最悪」でしかない選択肢しかありません 。結局、「マシな最悪を選ぶ」ことしかできないわけです。そのような状況の中で彼らは、僅かな可能性に賭け、針の穴を通すような道を進むことに決めます 。
彼らの気持ちがなんとなくでも理解できる観客としては、心を押し潰されるような辛さを感じてしまうでしょう 。何より、すべての元凶は「チェン・ニェンをいじめていた奴ら」なのです。そんな奴らのせいで、この2人が不退転の決意で世界に対峙しなければならなくなっている現実に苛立ちを覚えてしまいます。
チェン・ニェンがある場面で、「私の負け」と口にしていました 。この言葉はとても重く響くでしょう。チェン・ニェンだって当然、「相手にしないことこそが勝ち」だと理解していたわけです。しかし結果として彼女は負けてしまいます。
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「ゲイの男性が、拘置所から出所した20歳の男性と養子縁組し、親子関係になる」という現実を起点にしたドキュメンタリー映画『二十歳の息子』は、奇妙だが実に興味深い作品だ。しばらく何が描かれているのか分からない展開や、「ゲイであること」に焦点が当たらない構成など、随所で「不協和音」が鳴り響く1作
そして、そんな「負け」が確定した人生で、どうにか最後のあがきをしようと2人は奮闘する のです。彼らの決断・行動は、善悪で判断すれば「悪」に分類されてしまうでしょうが、しかしどうしてもそう考えたくはありません。なんとかして、彼らの生き方が「善」と判断される世の中であってほしい と願ってしまいますし、残念ながらそうはなっていない世界に対して絶望を抱いてもしまうのです。
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そんな祈りと共に、2人の行く末を見守っていました 。
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映画全体の話とはまったく関係ありませんが、衝撃を受けた場面 があります。冒頭で女生徒が自殺した場面で、全校生徒が彼女の死体(があると思われる方向)にカメラを向けていた シーンです。
この映画はもちろんフィクションですが、実際に同じようなことが起こった時、同じようにカメラを向ける人はたくさんいるのではないか と思いました。
そして、その想像はとても恐ろしい ものに感じられます。
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この場面は「受験戦争に明け暮れる高校の殺伐とした雰囲気」を描き出す演出の1つに過ぎないかもしれませんが、同時に、「人間はここまで残酷になれるものなのだ」と示す描写 であるとも感じました。私は、「いじめる側」にも「死体をスマホで撮影する側」にもなりたくありません。
「ボーイ・ミーツ・ガール」でありながら、社会問題を取り込み、重苦しさと爽快さを見事に融合させた衝撃的な映画 だと思います。
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Kindle本出版しました!「それってホントに『コミュ力』が高いって言えるの?」と疑問を感じている方に…
私は、「コミュ力が高い人」に関するよくある主張に、どうも違和感を覚えてしまうことが多くあります。そしてその一番大きな理由が、「『コミュ力が高い人』って、ただ『想像力がない』だけではないか?」と感じてしまう点にあると言っていいでしょう。出版したKindle本は、「ネガティブには見えないネガティブな人」(隠れネガティブ)を取り上げながら、「『コミュ力』って何だっけ?」と考え直してもらえる内容に仕上げたつもりです。
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