目次
はじめに
この記事で取り上げる映画
「雨降って、ジ・エンド。」公式HP
この映画をガイドにしながら記事を書いていくようだよ
今どこで観れるのか?
公式HPの劇場情報をご覧ください
この記事で伝えたいこと
何にせよとにかく、古川琴音が本作を見事に成立させていたと思う
かなり難しい役だったはずだけど、少なくとも私は、彼女が演じたキャラクターは成立していると感じた
この記事の3つの要点
- そもそも、「『20代の女性』と『ピエロのメイクをしたオジサン』が仲良くなる」という前半の展開もリアリティを生み出すのが難しい設定だと思う
- さらにその上で、後半の「ある瞬間」以降の展開には、普通なら共感など絶対に不可能である
- しかしそれでも、本作中のあらゆる要素が絶妙に作用し合って、ウルッとした気分にさえさせる見事な物語に仕上がっていると感じた
一歩間違えれば嫌悪感さえ抱かれるだろう難役を、古川琴音は見事に演じ切った
自己紹介記事
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どんな人間がこの記事を書いているのかは、上の自己紹介記事をご覧ください
記事中の引用は、映画館で取ったメモを参考にしているので、正確なものではありません
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『雨降って、ジ・エンド。』の内容紹介
派遣社員として働きつつカメラマンを目指している日和は、セルフポートレートが撮りたくて写真の道へと足を踏み入れた。しかし、プロのカメラマンに作品を見てもらっても評価されず、コンクールもまぐれで入賞したことがあるぐらい。自分でも何をどうしたらいいのかさっぱり分からないのだが、しかしそれでも、写真を撮る日々を続けている。
そんなある日、突然大雨が降ってきたため、カメラを守ろうと近くの店に飛び込んだ。閉店しているのか誰もいない店内で雨宿りさせてもらおうと思ったのだが、日和はふと人の気配を感じた。何となくの方向に向かって話しかけてみると、やはり声が返ってくる。そんなわけで、雨宿り仲間として姿の見えないその異性と話をしていたのだが、しばらくして「ピエロのようなメイクをした男」が姿を現した。そのあまりに異様な風貌に驚かされてしまい、思わず写真を1枚撮った後、慌てて店を出たのである。
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その1枚が、なんとネットで大バズリした。これはチャンスなんだろうか? しかし、これを次に活かすにはどうしたらいいだろう。そんな話を、派遣先の先輩・栗井さんとしている中で、「そのピエロを探し出して被写体にしたら、またバズるんじゃない?」と言われた。なるほど、確かにそれは良いアイデアかもしれない。
そんなわけで日和は、早速ピエロを探しに行くことにし、そしてすぐに見つかった。どうやら彼は、普段からピエロの格好をして街中で風船を配っているようなのだ。日和はそんな彼に恐る恐る「モデルになってほしい」とお願いした。ピエロは雨森と名乗り、そして、スマホも何も持っていないからと、マジックで自宅の住所を書いた風船をくれたのである。風船には何故か、50円玉が結わえられていた。
こんな風にして日和は、街中で彼を撮影したり、雨森の家を訪れたりするようになる。もちろん、あくまでも「写真の被写体」としての関わりだ。栗井さんと雨森の話をする際には、「気持ち悪いけど、バズるために利用しよう」「お金も盗んじゃえば?」みたいな話さえしていたほどである。
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しかし日和の中で少しずつ、雨森に対する感覚が変わっていく。ピエロの写真がネットで多少バズるようにはなったものの、派遣社員としてつまらない仕事をしている日常に変わりはない。そんなにっちもさっちも行かない日々の中で、世間一般から外れた雨森との関わりが次第に大事なものに感じられていき……。
「『日和と雨森が仲良くなる』という設定にリアリティを感じられるか」が作品成立の大きな鍵となる
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これが「あり得ない」ってなったら、その先に進めないもんなぁ
ここからさらに、メチャクチャ高いハードルがあるからね
日和は、栗井さんとの会話の中で「30前の女子」という言い方をしていたはずなので、28歳前後ではないかと思います。一方の雨森は、どこからどう見てもオジサンです。イケオジでもないし、日和の前でおならをしたりもするし、体型も全体的に緩んでいる感じで、どこからどう見ても「オジサン」でしかありません。そしてやはり、「そんな2人が仲良くなる」というのは、ちょっとリアリティに欠けると感じられるのではないでしょうか。
ただ、あくまでも私の個人的な感覚ですが、日和と雨森の関係性はメチャクチャ成立していたと思います。人によって感じ方は違うでしょうが、私は「リアリティのある関係性」だと感じたのです。そして、その最大の要因はやはり、日和を演じた古川琴音にあると思っています。
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古川琴音のことは元から好きだけど、そういう贔屓目を抜きにしても、本作の古川琴音はちょっと凄かったなって思う
この作品を成立させられそうな雰囲気を持つ女優ってなかなか思いつかないよね
古川琴音の何がそうさせるのかは正直よく分かりませんでした。ただ、日和の見え方として絶妙だったのは、「一般的な人とは少し違う興味・関心を抱きつつ、全体的には『フツー』の範囲内に留まっている」という点です。その辺りのバランスはとても見事だと感じました。
まず本作の展開においては、「全然知らないおじさんの家に行く」というハードルがあります。確かに日和には「バズらせたい」という動機があったわけですが、それにしたって「全然知らないおじさんの家に行く」のはハードルが高すぎるでしょう。というか、仮に日和自身がそこに困難さを抱いていなかったとしても、観客がそう感じてしまったら、日和の行動にリアリティを感じられなくなってしまうはずです。
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そのため、日和は「変わった興味・関心を持っている人」という風に見えないと、なかなかこの行動がリアルには映らないだろうと思います。
「『こういうキャラの子なら、知らないおじさんの家にも行っちゃうよね』って観客が思ってくれないとダメ」ってことね
しかしその一方で、「日和は『フツーの人』でなければならない」という制約もあります。というのも、雨森の方が「フツーではない人」という風に描かれているからです。雨森だけではなく、日和も「フツーではない人」という見られ方になってしまえば、観客が物語についていくことは難しくなるでしょう。物語の構造的には、「観客は、『フツーの日和』視点で『フツーではない雨森』を追う」という形になっている必要があるし、だからこそ日和は「フツー」の範囲内に留まっていなければならないことにもなるのです。
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そんなわけで、本作『雨降って、ジ・エンド。』は、日和が「ちょっと変わってるけど、『フツー』の範囲内には収まる」という感じでなければ成立しないと私は感じました。そしてこれは、かなり難しいんじゃないかと思います。
どっちかに振り切る方が演技としてもやりやすいだろうしね
「雨森は超えちゃいけないけど、ほどよく変わった感じも出さないといけない」って、難しいだろうなぁ
そして本作では、そんな日和を古川琴音が絶妙に演じていると思うし、だからこそ作品が成立しているのだと感じました。
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「私の他人か何かのつもり?」というセリフの凄まじいインパクト
本作は決して長くない物語だし、さらに「日和と雨森が仲良くなること」は物語の前提となる展開でもあるので、割と早い段階で2人の関係は良い感じになっていきます。普通ならこれもリアリティを欠きそうな描写ですが、やはり古川琴音が上手いですね。展開としては、「最初は分かりやすく嫌悪感を抱いている」というところから始まり、次第に「まだ気を許してはいないが、ポーンと垣根を飛び越えた雰囲気」になり、さらにそれから「メチャクチャ気を許していく」みたいな感じになっていきます。
この展開がリアルに見えるかどうかがかなり勝負だよね
「2人が気を許すほど仲良くなる」って前提があってこその後半の展開だからなぁ
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さて、そんな日和と雨森の関係性が伝わってくる印象的なセリフがあったので紹介しましょう。雨森が日和にちょっと距離を感じさせる言葉を口にした後で、日和がこんな風に言う場面があるのです。
私の他人か何かのつもり?
正直、すぐには意味を捉えることが出来ませんでした。「そういうことか」と理解するのに、一瞬間が空いたことを覚えています。
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それを、よく耳にするフレーズをちょっと変えることで生み出してて、凄いなって思った
この「私の◯◯か何かのつもり?」という表現は、一般的には、例えば「私の恋人か何かのつもり?」みたいに使うでしょう。まるで恋人同士であるかのような振る舞いをしてきた相手に対して、「私たち、そんなに近い関係だっけ?」と突きつける言葉というわけです。◯◯の部分には普通「親しい関係性」が入り、「そんなに親しくないよね」と伝える意図で使われるだろうと思います。
しかし日和は、その「親しい関係性」が入るはずの場所に「他人」という言葉を入れて使っているのです。こうすることで、意味がまるきり反転します。つまり、「私たち、そんな遠い関係だっけ?」という意味になっているのです。
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でも日常生活で使ったら、たぶん「ん?」って反応になって伝わらないだろうね
本当にあまりにもサラッと出てきたセリフで、そしてだからこそ、「そんな言葉をサラッと言えるほどの関係性なんだ」という実感を与えられているとも感じました。映画でも小説でも、なかなか「ワンフレーズ」を覚えていることは多くありませんが、このセリフは一生忘れないような気がします。
「ある展開」以降の物語は、一体どのように受け取られるのだろうか?
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さて、ここまででちょいちょい書いていますが、本作は後半で「ちょっととんでもない展開」になります。そしてだからこそでしょう、そこに至るまでの構成は、かなり共感度の高い物語に仕上がっていると感じました。
さすがに、前半で観客からの「共感」を集めておかないと、後半の展開に突っ込めない感じもあるよね
それにしたって、前半にも「日和と雨森が仲良くなる」って難関があるわけだから、もの凄く高いハードルを設定した物語だなって思う
確かに、日和と雨森の関係性は特殊で共感しにくい部分もあるかもしれませんが、日和やその周辺の人たちが抱える葛藤などは、多くの人が抱き得るものだと思います。また本作には、「ネットでのバズりを追い求めること」を「幸せのランキングを競っている」と表現するシーンがあるのですが、この話にも共感できる人は多いんじゃないでしょうか。そしてさらに、雨森が「幸せのランキングを競っている」みたいな世界から完全に切り離されているという事実に対して、ある種の羨ましさみたいなものを感じる人もいるだろうと思います。
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仮に本作が、このような「共感できる話」だけで満たされていたとしても、良い作品だと感じられたかもしれません。しかし本作は、「あの瞬間」を境に、それまでとはまったく違う物語になっていくのです。これは本当にビックリしました。「えっ? そういう話になっちゃうわけ?」と感じたのです。
「共感とか全部ぶち壊しにしてやる!」みたいに考えない限り出てこないよなぁ、こんな発想
そしてこれ以降の展開については正直なところ、観る人によってかなり評価が分かれるだろうなと思います。いや、こう書いているのはある種の「逃げ」でしかなくて、実際のところは「良い評価をするのが怖い」という感じでしょうか。というのも後半では、「一般的には絶対に許容されない事柄」が扱われているからです。
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私は本作『雨降って、ジ・エンド。』を最後まで観て、その上で「面白い」と感じたのですが、それは決して、その「一般的には絶対に許容されない事柄」を許容しているみたいなことではありません。それはまったく別の話なのですが、ただ、「本作に良い評価を与えること」と「『一般的には絶対に許容されない事柄』を許容していること」が混同されそうだという点が少し怖いなと感じました。
こうやって映画とか本とかの感想を書いていると、「そんなこと書いてないよ」みたいな曲解をされることも多くて
ちょっと前も、Filmarksでよく分からない人に絡まれたよねぇ
なので、「まったくそんなことはない」ということだけははっきりと書いておきたいと思います。この点については、以前観た映画『流浪の月』の感想を読んでもらえると私のスタンスが伝わると思うので、お時間のある方は読んでみて下さい。
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さて私としては、「あの瞬間」以降の展開を女性がどう受け取るのかがとても気になります。というのも、この点はどうしても性差によって反応が分かれるように思うからです。日和は、雨森に関する「ある事実」を知るのですが、その上で雨森に協力するような行動を取ります。果たしてこの行動は、女性から「リアリティのあるもの」として受け取られるでしょうか?
この点に関しては、男の私には「リアリティのあるなし」について言及出来ないのが辛いところ
「男が決めることじゃない」っていタイプの話だからねぇ
私はこの記事で、後半の展開について具体的に書かないつもりなので、私が何を言っているのかよく分からないとは思いますが、もう少し続けます。これはどちらかと言えば本作を既に観た人向けに言いたいことですが、「日和の行動の是非について判断する場合、『相手が雨森である』という想定で結論を出すのはフェアではない」という話です。
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どういうことか。大事なのは、日和にとって雨森は「気を許せる信頼できる相手」だということです。なので、あなたが日和の行動について検討する場合、「あなたにとって『気を許せる信頼できる相手』」を念頭にして想像しなければフェアではないでしょう。「ピエロの格好をしたオジサン」を想定すれば、そりゃあ問答無用で「NO」でしょうが、そうではなく、「あなたの『推し』が同じような状況にいた場合、日和と同じ行動が取れますか?」と想像すべきだというわけです。
そして、それが「推し」のことであれば、「受け入れたい」「受け入れる努力をするつもり」と考える人は一定数いるんじゃないかと思っています。そしてそうだとすれば、日和の言動にも一定以上の説得力があると考えていいはずです。
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というわけで、具体性を排して書いているのでよく分からないかもしれませんが、とにかく1つ言えるのは、それまでは雨森の方が圧倒的に「変」だったのですが、「あの瞬間」以降は、むしろ日和の方が「変」だと受け取られるはずだということです。
冷静に考えるとホント、日和はかなりムチャクチャなことしてるからね
何度も書くけど、よくもまあこんな話を作ろうと考えたものだと思う
この逆転は、日和の「変さ」が前半では抑えられていたからこそインパクトがあるし、また、日和と雨森の色んな感情の積み重ねを見てきているので、違和感が表出することもありません。さらに、日和が最後に口にする「伝えたかっただけだから」というセリフや、中盤・ラスト直前で映し出される「謎描写」が、「世界はこんなにもカラフルです」という言葉で締めくくられるラストシーンにおいてちゃんと意味を持ってくる辺りも、とても上手いと思います。
ウルッとくる場面もあったりして、全体的に、本当によく出来た物語だなと感じました。
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最後に
本作に対する感想は本当に、「よくもこんな物語を成立させたものだ」に尽きると言っていいでしょう。とにかくその点に驚かされてしまいました。観れば理解してもらえるでしょうが、普通はまず成立しないと思います。それは決して、「『感動を与える物語』としては成立しない」みたいなことではなく、「シンプルに『物語』として成立しない」という意味です。
しかし本作は、様々な不可思議な力学によって見事な作品に仕上がっていると感じました。ホントに、メチャクチャ良く出来てるよなぁ。そしてやはり何よりも、古川琴音が見事だったなと思います。
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「障害者だから◯◯だ」という決まりきった捉え方をどうしてもしてしまいがちですが、『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』の主人公・鹿野靖明の生き様を知れば、少しは考え方が変わるかもしれません。筋ジストロフィーのまま病院・家族から離れて“自活”する決断をした驚異の人生
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【考察】映画『ジョーカー』で知る。孤立無援の環境にこそ”悪”は偏在すると。個人の問題ではない
「バットマン」シリーズを観たことがない人間が、予備知識ゼロで映画『ジョーカー』を鑑賞。「悪」は「環境」に偏在し、誰もが「悪」に足を踏み入れ得ると改めて実感させられた。「個人」を断罪するだけでは社会から「悪」を減らせない現実について改めて考える
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【無知】映画『生理ちゃん』で理解した気になってはいけないが、男(私)にも苦労が伝わるコメディだ
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【権利】衝撃のドキュメンタリー映画『ヤクザと憲法』は、「異質さを排除する社会」と「生きる権利」を問う
「ヤクザ」が排除された現在でも、「ヤクザが担ってきた機能」が不要になるわけじゃない。ではそれを、公権力が代替するのだろうか?実際の組事務所(東組清勇会)にカメラを持ち込むドキュメンタリー映画『ヤクザと憲法』が映し出す川口和秀・松山尚人・河野裕之の姿から、「基本的人権」のあり方について考えさせられた
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「近隣の村から『姥捨て』と非難される理想郷」を描き出す『でんでら国』は、「死ぬ直前まで、コミュニティの中で役割が存在する」という世界で展開される物語。「お金があっても決して豊かとは言えない」という感覚が少しずつ広まる中で、「本当の豊かさ」とは何かを考える
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「ホームレスは怠けている」という見方は誤りだと思うし、「働かないことが悪」だとも私には思えない。振付師・アオキ裕キ主催のホームレスのダンスチームを追う映画『ダンシングホームレス』から、社会のレールを外れても許容される社会の在り方を希求する
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子どもの頃「台風」にワクワクしたように、未だに、「自分のつまらない日常を押し流してくれる『何か』」の存在を待ちわびてしまう。立教大学の学生が撮った映画『サクリファイス』は、そんな「何か」として「東日本大震災」を描き出す、チャレンジングな作品だ
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まさか「ゾンビ映画」が、私たちが生きている現実をここまで活写するとは驚きだった。映画『CURED キュアード』をベースに、「見えない事実」がもたらす恐怖と、立場ごとに正しい主張をしながらも否応なしに「分断」が生まれてしまう状況について知る
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「自分の子どもなんだから、どんな風に育てたって勝手でしょ」という親の意見が正しいはずはないが、この言葉に反論することは難しい。虐待しようが生活能力が無かろうが、親は親だからだ。映画『MOTHER マザー』から、不正解しかない人生を考える
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社会的弱者が闘争の末に権利を勝ち取ってきた歴史を知った上で私は、闘わずとも権利が認められるべきだと思っている。そして、そういう社会でない以上、「正義のためにルールを破るしかない」状況もある。映画『パブリック』から、ルールと正義のバランスを考える
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「強盗や立てこもり事件などにおいて、人質が犯人に好意・共感を抱いてしまう状態」を「ストックホルム症候群」と呼ぶのだが、実はそう名付けられる由来となった実際の事件が存在する。実話を基にした映画『ストックホルムケース』から、犯人に協力してしまう人間の不可思議な心理について知る
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【素顔】「ヨコハマメリー史」から「伊勢佐木町史」を知れる映画。謎の女性が町の歴史に刻んだものとは…
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「ヤクザ」を排除するだけでは「アンダーグラウンドの世界」は無くならないし、恐らく状況はより悪化しただけのはずだ。映画『ヤクザと家族』から、「悪は徹底的に叩きのめす」「悪じゃなければ何をしてもいい」という社会の風潮について考える。
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ルシルナ
多様性・ダイバーシティ【本・映画の感想】 | ルシルナ
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