目次
はじめに
出演:カーレ・ヘーデブラント, 出演:リーナ・レアンデション, 出演:ペール・ラグナル, 監督:トーマス・アルフレッドソン
ポチップ
この記事で取り上げる映画
VIDEO
この映画をガイドにしながら記事を書いていくようだよ
この記事で伝えたいこと
「生存」のために「他者の命」を奪わなければならない人生の悲哀を想像させられる
それは、「欲望の追求が孤立を生む」という現代性とも通ずる部分があると思う
この記事の3つの要点
「小児性愛者」や「依存症」など、「生き延びるために必要なもの」が「犯罪」であることの苦しみ 「欲望の追求」が「孤立を加速させる」世の中で、私たちはどう生きるべきか? 主人公・エリの壮絶な人生と、「パパ」と呼ばれる人物の来歴を想像する
映画鑑賞時には、あの「モザイク」がまさかこれほどの「改悪」を意味していたとは気づかなかった
自己紹介記事
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『ぼくのエリ』は、このプレチケの企画で鑑賞した映画です 。タイトルと「評価が高いこと」をなんとなく知っていたので観たのですが、なんだか凄い映画でした 。「SF」と呼んでいい設定の作品ですが、「『生き延びるために必要なもの』が他人に共感されない苦痛」を強く描き出す作品 でもあると思います。
そういう意味で、この映画が描き出す人生は決して「他人事」ではない という風に感じました。
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映画の設定を、私たちが生きる世界の中でリアルに置き換えるとしたら、「小児性愛者」が一番分かりやすかったんだよね
ただ、「小児性愛者」の話をするのもちょっとどうかなと思うので、別の例を考えてみました。少し状況は異なると思いますが、いわゆる「依存症」は、この映画が示唆する状況と似たようなもの と言えるかもしれません。
例えば、「万引き依存症 」と呼ばれるものがあります。その名の通り、「常習的に万引きをしてしまう」という病 で、「クレプトマニア」とも呼ばれているそうです。女子マラソン元日本代表の原裕美子さんがこの「万引き依存症」に苦しんでいたと報じられたことでその存在を知ったという方も多いかもしれません。
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「万引き」は明らかに犯罪です 。しかしその犯罪行為が、自分では止めるられないほどに習慣化されてしまっています 。それはやはり相当辛い状況でしょう。「依存症」は全般的に「病気」と判断されるはずなので、「自分が生存するためにどうしても必要だと感じること」ではないのですが、私が何を言いたいかはなんとなく理解してもらえるのではないかと思います。
ギャンブルでもアルコールでもなんでもだけど、「依存症」は本当に大変だろうなって思う
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万引きしたいかどうかはともかく、「『万引き』無しでは生活が成り立たない」ような状況 に彼らは既にいるのでしょう。恐らく、万引きが良くない行為だということも、自分がマズい状態にいることも理解できているのだと思います。しかしそれでも、万引きする手を止められない のです。
また、もう少し話の規模を小さくすれば、「スケートボードをしたいが、練習に最適な公園での走行は他人の邪魔になる 」「楽器を演奏したいが、マンションなので近所迷惑になる 」など、「自身の欲望・希望」が「他人の迷惑」になってしまう状況は多々存在します。
映画で描かれるエリは、まさにその究極的な存在 だと言っていいでしょう。彼女にとって「生き延びること」は、「他者を死に至らしめること」と同義 だからです。それは本当に、凄まじい状況だと感じます。
自分の人生のために誰かの労力を煩わせることが凄く嫌いだから、私なら耐えられないと思う
介護とかされるような人生になったら、さっさと死にたいよね
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「他者と『欲望の感覚』が合わないこと」の絶望
さて、エリが置かれている状況はあまりにも特殊 なので、もう少し状況を広く捉えてみることにしましょう。
エリは、その特殊な生き方故に、「他者と分かり合う」という感覚になかなか行き着けない だろうと思います。「彼女にとって大事なもの」について焦点を当てれば当てるほど、周囲の人とまったく話が合わなくなってしまう からです。
そしてこれは、現代でも同じような状況が多々存在する でしょう。
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かつて同じ職場で働いていたオタクの女性が、とても面白いことを言っていました。自分が熱弁したいオタクの話は、それに関する知識をまったく持っていない人としたい 、というのです。私はまったくオタク的な知識のない人間で、そういう意味で彼女の話し相手としてはうってつけだったと思います。
なぜ彼女はそんな風に考えていたのでしょうか。それは、「同じアニメ・ゲーム・マンガが好きだったとしても、その『好きポイント』までピッタリ重なることはまずないから 」だそうです。同じ趣味を持つ者同士であればあるほど、「私はこれのここが好き」というポイントを明確に持っているのだと思います。そして、よほど運が良くない限り、そのポイントまで一致することは稀でしょう。彼女は、「同じものが好きでも、その『好きなポイント』について口論になったりする 」みたいにも言っていました。だから私のような、何も知らない人間に熱弁する方がいいのだ 、と。
この話を聞いたのは、もう15年以上も前のことだけど、未だに印象的なエピソードとして覚えてるんだよなぁ
その子は大分変わってたから、これは一般的に賛同される感覚ではないかもしれないけどね
あるいは、最近よく飲みに行く女の子とも、「趣味で人と繋がりたくない」という話をして、とても共感した ことを覚えています。「結局趣味で繋がる関係性はつまらない」という感覚は、私もずっと持っていたのです。
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これらの話は、「自分の『好き』を突き詰めれば突き詰めるほど孤立する 」という風にまとめられるでしょう。そして、そのような感覚を抱く人は結構いるのではないか と思っています。
この場合、「欲望を追求して孤立する 」か、「孤立しないために欲望の追求を諦める (or欲望を追求していると口にしない)」かという選択肢が生まれるでしょう。最近では、「推しのために生きている」など、「欲望の追求」が「人生の主目的」みたいになっている人もたくさんいると思います。そして、そういう人にとって「欲望の追求」は「生存」に直結する はずです。だから、「孤立を恐れて欲望の追求を止める」なんて選択肢はあり得ません。
こんな風に考えてみると、エリの「孤独」がとてもリアルなものに感じられるのではないか と思います。
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「君は何者?」 「あなたと同じ」 「ぼくは殺さない」 「でも、殺したいと思ってるでしょ? 相手を殺したいと思ってでも生き延びたいと」 「うん」
私を含めた多くの人は、とても幸運なことに、「欲望の追求」が「他者の命を奪うこと」に直結するような人生を歩んではいない でしょう。だから、この映画で描かれるような困難に直面することもありません。ただ、エリと同じということはまずあり得ないにせよ、世の中には、エリと同じような苦境に立たされてしまっている人も決して少なくはないはずです 。
「欲望の追求は生存に必要」って切実さが伝わらないと、「生きるのに必要ないだろ」みたいな想像力に欠く意見が出てきちゃうよね
「他者に迷惑を掛けること」は非難しつつ、「欲望の追求は重要だ」ってことは認めてあげないとだよなぁ
では、この映画のように、「『欲望の追求』が『他者を滅ぼすこと』に直結する者」と同じ社会に生きなければならない場合、私たちは、どう共存すべきなのでしょうか ?
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映画『ぼくのエリ 200歳の少女』の内容紹介
映画は、いくつもの「無関係に思える断片」が積み重なるように始まっていく 。
オスカー少年は、学校でいじめられている 。どうにか鬱屈をかき消そうと、いじめっ子から掛けられた言葉を、毎晩ナイフ片手に繰り返す日々。殺人事件を報じる新聞記事のスクラップもしている、暗さを背負った少年 だ。
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ある男は、人の意識を奪うガスをバッグに隠し、人気のない夜道に立つ 。通りがかった人物に時間を聞くフリをしてガスを嗅がせ、木に引っ掛けたロープでそのまま逆さ吊りにした。首を切り、鮮血をバケツに溜めていく 。その最中、誰かに飼われているだろう犬が近づいてくる。悪事の現場を誰かに見られる危険を感じ、男はその場を立ち去った。
常連客数人は、レストランで談笑している 。最近引っ越してきたらしい男性が隣のテーブルで1人で食事しているのを目にし、一緒に飲もうと声を掛けるが断られてしまう。集いはお開きとなり、彼らはそれぞれ帰路につく。その内の1人が暗い夜道を歩いている時に、「助けて」という少女の声を耳にした。彼は手を差し伸べようと少女に近づくが、その直後、静寂を切り裂くような悲鳴を上げる 。
オスカー少年は、自宅アパートに併設されている中庭で遊んでいた。するといつの間にか、ジャングルジムの近くに女の子がいる 。見たことのない子だ。雪がしんしんと降る真冬の寒さの中、信じられないほど薄着で立っている 。オスカー少年は彼女に、「君、臭うよ」と声を掛けた。そして、ルービックキューブを貸してあげ、その日はさよならする。どうやら彼女の部屋は、オスカー少年の部屋と壁を隔てた隣同士のようだ 。
オスカー少年は授業中、恐らく図書館から借りてきたのだろう分厚い本から、何かを紙に書き写している。モールス信号 だ。
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映画『ぼくのエリ 200歳の少女』の感想
ここまでは一応伏せてきましたが、エリが「ヴァンパイア」であることはかなり有名な事実だと思う ので、ここからはその点を隠さずに記事を書いていこうと思います。副題の「200歳の少女」というのも、彼女がヴァンパイアであることを間接的に示唆すると言えるでしょう。
スウェーデン映画である『ぼくのエリ』の原題 はもちろんスウェーデン語なのですが、恐らくそれをそのまま英訳したのだろう英題が『Let the Right One In』 です。グーグル翻訳に突っ込んでみると、「正しいものを入れましょう 」となったので、私は、「人間が食べるものではなく、血を取り込みましょう」という意味だと思い 、凄いタイトルをつけたものだと感じました。
まあ、この解釈はこの解釈で悪くないような気もするけどね
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この『Let the Right One In』は実際には、「正しい者を招き入れよ」と訳す のだそうです。ヴァンパイアには「許可を得ないと部屋に入れない」という設定がある らしく、映画の中でも、エリが「『入っていい』って言って」と口にする場面 があります。ヴァンパイアについて詳しくなかった私には謎のシーンでしたが、後で調べて理解できました。そしてそのような設定がタイトルに反映されているというわけです。
邦題からは伝わりませんが、英題がこのような意味であることからも、「エリがヴァンパイアであること」は「既成の事実」として展開される物語 だと考えていいでしょう。
さて、この映画の日本版には、もの凄く批判されるポイントがある のですが、私は映画を観終えてからしばらくの間その事実を知りませんでした。というわけで、その点については最後に触れるとして、まずは映画を観て私が感じたことについて書いていきたい と思います。
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ってか、この記事書くためにさっき作品について調べてたら、その「批判」の話が目に入ったのよね
全然知らなかったけど、その「改変」はダメだろって思っちゃうよね
物語はもちろん、エリとオスカー少年の関係がメインで描かれていきます 。ヴァンパイアと人間という、なかなか相容れない2人のやり取りはとても恐ろしく、美しく、妖艶で、歪さに満ちている と言っていいでしょう。「純愛」と呼びたいところがが、そう呼んでいいのか悩ましさを感じてしまうような関係性 でもあり、実に不安定で妖しげな2人の関わり合いが、映画全体をとても魅力的なものにしていると感じました。
さて、その辺りのことは実際に映画を観て体感してもらうとして、私が気になったのは、エリが「パパ」と呼ぶ人物 についてです。彼は一体何者なのか と、映画を観ながらずっと気になっていました。
割と早い段階で、「生物学的な父親ではないだろう 」と思いましたが、その確信が持てたのは、男が、
今夜はあの少年に会わないでくれ。頼む。
と口にしたシーンです。
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この場面の前後の展開を踏まえると、男にはなんらかの「予感」めいたものがあり、自身の「死」が避けられない状況にあると理解していた のだと思います。そして、そんな場面で彼は、明らかに「嫉妬」と解釈されるだろう言葉を口にする のです。
もしそれが「嫉妬」なのだとすれば、考えられることは1つ、この男とエリは元々同年代だったということです 。男だけが年を取り、エリは年を取らないからこそ、このような「年齢差」になっているのでしょう。エリがある場面で、「12歳だよ、もうずっと昔から」と言っていること、エリに噛まれた女性の顛末、そして「200歳の少女」という副題のことを考え合わせると、エリは恐らく次のような設定なのだと思います 。
エリは12歳の頃にヴァンパイアに噛まれたが、一命を取り留めた。しかしそのせいで、自身もヴァンパイアになってしまい、年を取らない存在となる。エリはその時々で「自分を支えてくれる存在」を見つけ、運命共同体のとして共に生きてきた。そして、その「運命共同体」を定期的に取り替えながら、200年以上も生き延びている。
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劇中出てくるある紙に、
ここを去って生き延びるか。 留まって死を迎えるか。
と書かれていました。エリと共に生きることは、流浪の人生を選ぶことでもあります 。エリの生活圏内では不審死が多発することになるので、一箇所に長く留まることは出来ません。だから、「ここを去って生き延びるか、留まって死を迎えるか」という決断が、エリと共に生きると決めた者にも突きつけられる ことになるのです。そして、その同じ紙に「ぼくのエリ」と書かれており、これが邦題の元になったのだと思います。
こう考えるとエリの「生き延びたい」って気持ちの強さを改めて実感させられる
自分がエリの立場だったら、「生き延びたい」って思える気がしない
つまり、『ぼくのエリ』という映画をシンプルに要約すると、「運命共同体を喪ったエリが、新たにオスカー少年に目をつける」となる と思います。しかし、そういう”打算的な”雰囲気を一切感じさせない作品に仕上がっていると私は感じました。なかなか絶妙なバランスで成立している、奇跡的な傑作 だと思います。
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さて、先程予告しておいた、「日本版に対する批判 」の話に触れて、この記事を終えることにしましょう。
映画の中で一箇所、モザイクが掛けられているシーン がありました。裸のエリの股間の部分です 。普通に観ていると、「そこまで過敏にならなくてもいいと思うけど、まあモザイクが必要だと判断したのか 」ぐらいに感じるでしょう。私も、そんな風に考えて、特になんとも思いませんでした。
しかし実は、このモザイク、作品の本質を根本から変えてしまっています 。スウェーデンで上映されたモザイク無し版では、エリの股間には「男性器が去勢された傷跡」が映し出されている そうです。つまりエリは、「女性」ではなく「男性」 だということになります。このことを知ると、「200歳の少女」という副題に悪意を感じる でしょう。明らかに、「エリは女性である」と観客にミスリードさせようとしているとしか思えないからです。
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誰がどういう判断でこんなことをしたのか謎すぎるけど、監督はOK出したのかな?
出してないはずはないと思うけど、「その『改悪』を受け入れなければ日本での上映はできない」みたいな状況だったのかなぁ
エリが男性であり、そのことをオスカー少年が知った上で逃避行を決断するとなれば、物語はより高い次元のものとして受け取られるでしょう 。単なるボーイ・ミーツ・ガールではなく、あらゆる違いや困難を乗り越えた上での凄まじい決断 であることが伝わってくるからです。何故、その物語を敢えて覆い隠そうとするような「改悪」がなされたのかは分かりませんが、日本で上映された2010年時点ではまだ、今ほど同性愛的なものが受け入れられているとは言えなかったのかもしれません。しかしそうだとしても、私がこの映画を観たのは2022年であり、現代に合わせてモザイクを取るという判断も出来たのではないか と考えてしまいます。
この作品が示唆する非常に重要メッセージを、モザイクと副題で完全に抹殺した事実は、とても罪深い ものに感じられました。
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何が起こるのか予想もつかない展開と、「純愛」と呼ぶべきなのか悩ましい2人の関係性がとても素晴らしい作品でした 。「残酷さ」と「美しさ」を共に前面に押し出しながら、「生き延びることの葛藤」を真正面から描き出す名作 です。
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【家族】ゲイの男性が、拘置所を出所した20歳の男性と養子縁組し親子関係になるドキュメンタリー:映画…
「ゲイの男性が、拘置所から出所した20歳の男性と養子縁組し、親子関係になる」という現実を起点にしたドキュメンタリー映画『二十歳の息子』は、奇妙だが実に興味深い作品だ。しばらく何が描かれているのか分からない展開や、「ゲイであること」に焦点が当たらない構成など、随所で「不協和音」が鳴り響く1作
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坂元裕二脚本、是枝裕和監督の映画『怪物』は、3つの視点を通して描かれる「日常の何気ない光景」に、思いがけない「加害性」が潜んでいることを炙り出す物語だ。これは間違いなく、私たち自身に関わる話であり、むしろ「自分には関係ない」と考えている人こそが自覚すべき問題だと思う
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【驚嘆】映画『TAR/ター』のリディア・ターと、彼女を演じたケイト・ブランシェットの凄まじさ
天才女性指揮者リディア・ターを強烈に描き出す映画『TAR/ター』は、とんでもない作品だ。「縦軸」としてのターの存在感があまりにも強すぎるため「横軸」を上手く捉えきれず、結果「よく分からなかった」という感想で終わったが、それでも「観て良かった」と感じるほど、揺さぶられる作品だった
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黒人差別が遥かに苛烈だった時代のアメリカにおいて、黒人ピアニストと彼に雇われた白人ドライバーを描く映画『グリーンブック』は、観客に「あなたも同じような振る舞いをしていないか?」と突きつける作品だ。「差別」に限らず、「同時代の『当たり前』に従った行動」について考え直させる1作
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映画『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』は、私にグサグサ突き刺さるとても素晴らしい映画だった。「ぬいぐるみに話しかける」という活動内容の大学サークルを舞台にした物語であり、「マイノリティ的マインド」を持つ人たちの辛さや葛藤を、「マジョリティ視点」を絶妙に織り交ぜて描き出す傑作について考察する
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「どこにでもいる普通の女性」が「横領」に手を染める映画『紙の月』は、「日常の積み重ねが非日常に接続している」ことを否応なしに実感させる。「主人公の女性は自分とは違う」と考えたい観客の「祈り」は通じない。「梅澤梨花の物語」は「私たちの物語」でもあるのだ
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【認識】「固定観念」「思い込み」の外側に出るのは難しい。自分はどんな「へや」に囚われているのか:…
実際に起こった衝撃的な事件に着想を得て作られた映画『ルーム』は、フィクションだが、観客に「あなたも同じ状況にいるのではないか?」と突きつける力強さを持っている。「普通」「当たり前」という感覚に囚われて苦しむすべての人に、「何に気づけばいいか」を気づかせてくれる作品
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【死】映画『湯を沸かすほどの熱い愛』に号泣。「家族とは?」を問う物語と、タイトル通りのラストが見事
「死は特別なもの」と捉えてしまうが故に「日常感」が失われ、普段の生活から「排除」されているように感じてしまうのは私だけではないはずだ。『湯を沸かすほどの熱い愛』は、「死を日常に組み込む」ことを当たり前に許容する「家族」が、「家族」の枠組みを問い直す映画である
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【残念】日本の「難民受け入れ」の現実に衝撃。こんな「恥ずべき国」に生きているのだと絶望させられる…
日本の「難民認定率」が他の先進国と比べて異常に低いことは知っていた。しかし、日本の「難民」を取り巻く実状がこれほど酷いものだとはまったく知らなかった。日本で育った2人のクルド人難民に焦点を当てる映画『東京クルド』から、日本に住む「難民」の現実を知る
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【生き方】人生が虚しいなら映画『人生フルーツ』を見ると良い。素敵な老夫婦の尖った人生がここにある
社会派のドキュメンタリー映画に定評のある東海テレビが、「なんでもない老夫婦の日常」を映画にした『人生フルーツ』には、特に何が起こるわけでもないのに「観て良かった」と感じさせる強さがある。見た目は「お年寄り」だが中身はまったく古臭くない”穏やかに尖った夫婦”の人生とは?
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【危険】遺伝子組換え作物の問題点と、「食の安全」を守るために我々ができることを正しく理解しよう:…
映画『食の安全を守る人々』では、世界的バイオ企業「モンサント社」が作る除草剤「ラウンドアップ」の問題を中心に、「食の安全」の現状が映し出される。遺伝子組み換え作物や輸入作物の残留農薬など、我々が口にしているものの「実態」を理解しよう
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【危機】シードバンクを設立し世界の農業を変革した伝説の植物学者・スコウマンの生涯と作物の多様性:…
グローバル化した世界で「農業」がどんなリスクを負うのかを正しく予測し、その対策として「ジーンバンク」を設立した伝説の植物学者スコウマンの生涯を描く『地球最後の日のための種子』から、我々がいかに脆弱な世界に生きているのか、そして「世界の食」がどう守られているのかを知る
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【解釈】詩人が語る詩の読み方。意味や読み方や良さが分からなくて全然気にしなくていい:『今を生きる…
私は学生時代ずっと国語の授業が嫌いでしたが、それは「作品の解釈には正解がある」という決めつけが受け入れ難かったからです。しかし、詩人・渡邊十絲子の『今を生きるための現代詩』を読んで、詩に限らずどんな作品も、「解釈など不要」「理解できなければ分からないままでいい」と思えるようになりました
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【感想】池田晶子『14歳からの哲学』で思考・自由・孤独の大事さを知る。孤独を感じることって大事だ
「元々持ってた価値観とは違う考えに触れ、それを理解したいと思う場面」でしか「考える」という行為は発動しないと著者は言う。つまり我々は普段、まったく考えていないのだ。『14歳からの哲学』をベースに、「考えること」と自由・孤独・人生との関係を知る
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【実話】障害者との接し方を考えさせる映画『こんな夜更けにバナナかよ』から”対等な関係”の大事さを知る
「障害者だから◯◯だ」という決まりきった捉え方をどうしてもしてしまいがちですが、『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』の主人公・鹿野靖明の生き様を知れば、少しは考え方が変わるかもしれません。筋ジストロフィーのまま病院・家族から離れて“自活”する決断をした驚異の人生
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【情熱】映画『パッドマン』から、女性への偏見が色濃く残る現実と、それを打ち破ったパワーを知る
「生理は語ることすらタブー」という、21世紀とは思えない偏見が残るインドで、灰や汚れた布を使って経血を処理する妻のために「安価な生理用ナプキン」の開発に挑んだ実在の人物をモデルにした映画『パッドマン 5億人の女性を救った男』から、「どう生きたいか」を考える
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【権利】衝撃のドキュメンタリー映画『ヤクザと憲法』は、「異質さを排除する社会」と「生きる権利」を問う
「ヤクザ」が排除された現在でも、「ヤクザが担ってきた機能」が不要になるわけじゃない。ではそれを、公権力が代替するのだろうか?実際の組事務所(東組清勇会)にカメラを持ち込むドキュメンタリー映画『ヤクザと憲法』が映し出す川口和秀・松山尚人・河野裕之の姿から、「基本的人権」のあり方について考えさせられた
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【狂気】「当たり前の日常」は全然当たり前じゃない。記憶が喪われる中で”日常”を生きることのリアル:…
私たちは普段、「記憶が当たり前に継続していること」に疑問も驚きも感じないが、「短期記憶を継続できない」という記憶障害を抱える登場人物の日常を描き出す『静かな雨』は、「記憶こそが日常を生み出している」と突きつけ、「当たり前の日常は当たり前じゃない」と示唆する
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【人生】どう生きるべきかは、どう死にたいかから考える。死ぬ直前まで役割がある「理想郷」を描く:『…
「近隣の村から『姥捨て』と非難される理想郷」を描き出す『でんでら国』は、「死ぬ直前まで、コミュニティの中で役割が存在する」という世界で展開される物語。「お金があっても決して豊かとは言えない」という感覚が少しずつ広まる中で、「本当の豊かさ」とは何かを考える
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【多様性】神童から引きこもりになり、なんとか脱出したお笑い芸人が望む、誰も責められない社会:『ヒ…
お笑い芸人・髭男爵の山田ルイ53世は、“神童”と呼ばれるほど優秀だったが、“うんこ”をきっかけに6年間引きこもった。『ヒキコモリ漂流記』で彼は、ひきこもりに至ったきっかけ、ひきこもり中の心情、そしてそこからいかに脱出したのかを赤裸々に綴り、「誰にも優しい世界」を望む
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【貢献】働く上で大切にしたいことは結局「人」。海士町(離島)で持続可能な社会を目指す若者の挑戦:…
過疎地域を「日本の未来の課題の最前線」と捉え、島根県の離島である「海士町」に移住した2人の若者の『僕たちは島で、未来を見ることにした』から、「これからの未来をどう生きたいか」で仕事を捉える思考と、「持続可能な社会」の実現のためのチャレンジを知る
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【逸脱】「仕事を辞めたい」という気持ちは抑えちゃダメ。アウェイな土俵で闘っても負けるだけだ:『ニ…
京都大学卒「日本一有名なニート」であるpha氏の『ニートの歩き方 お金がなくても楽しくクラスためのインターネット活用法』は、常識や当たり前に囚われず、「無理なものは無理」という自分の肌感覚に沿って生きていくことの重要性と、そのための考え方が満載の1冊
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【あらすじ】人生行き詰まってなお「生きたい」と思えるか?環境の激変を受け入れる難しさと生きる悲し…
勤務していた会社の都合で、町が1つ丸々無くなるという経験をし、住居を持たないノマド生活へと舵を切った女性を描く映画『ノマドランド』を通じて、人生の大きな変化に立ち向かう気力を持てるのか、我々はどう生きていくべきか、などについて考える
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【現実】生きる気力が持てない世の中で”働く”だけが人生か?「踊るホームレスたち」の物語:映画『ダン…
「ホームレスは怠けている」という見方は誤りだと思うし、「働かないことが悪」だとも私には思えない。振付師・アオキ裕キ主催のホームレスのダンスチームを追う映画『ダンシングホームレス』から、社会のレールを外れても許容される社会の在り方を希求する
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【改心】人生のリセットは困難だが不可能ではない。過去をやり直す強い意思をいかにして持つか:映画『S…
私は、「自分の正しさを疑わない人」が嫌いだ。そして、「正しさを他人に押し付ける人」が嫌いだ。「変わりたいと望む者の足を引っ張る人」が嫌いだ。全身刺青だらけのレイシストが人生をやり直す、実話を元にした映画『SKIN/スキン』から、再生について考える
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【誤り】「信じたいものを信じる」のは正しい?映画『星の子』から「信じること」の難しさを考える
どんな病気も治す「奇跡の水」の存在を私は信じないが、しかし何故「信じない」と言えるのか?「奇跡の水を信じる人」を軽々に非難すべきではないと私は考えているが、それは何故か?映画『星の子』から、「何かを信じること」の難しさについて知る
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【葛藤】「多様性を受け入れること」は難しい。映画『アイヌモシリ』で知る、アイデンティティの実際
「アイヌの町」として知られるアイヌコタンの住人は、「アイヌ語を勉強している」という。観光客のイメージに合わせるためだ。映画『アイヌモシリ』から、「伝統」や「文化」の継承者として生きるべきか、自らのアイデンティティを意識せず生きるべきかの葛藤を知る
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【危機】遺伝子組み換え作物の危険性を指摘。バイオ企業「モンサント社」の実態を暴く衝撃の映画:映画…
「遺伝子組み換え作物が危険かどうか」以上に注目すべきは、「モンサント社の除草剤を摂取して大丈夫か」である。種子を独占的に販売し、農家を借金まみれにし、世界中の作物の多様性を失わせようとしている現状を、映画「モンサントの不自然な食べもの」から知る
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【変人】学校教育が担うべき役割は?子供の才能を伸ばすために「異質な人」とどう出会うべきか?:『飛…
高校の美術教師からアーティストとして活動するようになった著者は、教育の現場に「余白(スキマ)」が減っていると指摘する。『飛び立つスキマの設計学』をベースに、子どもたちが置かれている現状と、教育が成すべき役割について確認する。
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【自由】幸せは比較してたら分からない。他人ではなく自分の中に「幸せの基準」を持つ生き方:『神さま…
「世間的な幸せ」を追うのではなく、自分がどうだったら「幸せ」だと感じられるのかを考えなければいけない。『神さまたちの遊ぶ庭』をベースに、他人と比較せずに「幸せ」の基準を自分の内側に持ち、その背中で子どもに「自由」を伝える生き方を学ぶ
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【感想】世の中と足並みがそろわないのは「正常が異常」だから?自分の「正常」を守るために:『コンビ…
30代になっても未婚でコンビニアルバイトの古倉さんは、普通から外れたおかしな人、と見られてしまいます。しかし、本当でしょうか?『コンビニ人間』をベースに、多数派の人たちの方が人生を自ら選択していないのではないかと指摘する。
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【天職】頑張っても報われない方へ。「自分で選び取る」のとは違う、正しい未来の進み方:『そのうちな…
一般的に自己啓発本は、「今、そしてこれからどうしたらいいか」が具体的に語られるでしょう。しかし『そのうちなんとかなるだろう』では、決断・選択をするべきではないと主張されます。「選ばない」ことで相応しい未来を進む生き方について学ぶ
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【恐怖】SNSの危険性と子供の守り方を、ドキュメンタリー映画『SNS 少女たちの10日間』で学ぶ
実際にチェコの警察を動かした衝撃のドキュメンタリー映画『SNS 少女たちの10日間』は、少女の「寂しさ」に付け込むおっさんどもの醜悪さに満ちあふれている。「WEBの利用制限」だけでは子どもを守りきれない現実を、リアルなものとして実感すべき
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【議論】安楽死のできない日本は「死ぬ権利」を奪っていると思う(合法化を希望している):『安楽死を…
私は、安楽死が合法化されてほしいと思っている。そのためには、人間には「死ぬ権利」があると合意されなければならないだろう。安楽死は時折話題になるが、なかなか議論が深まらない。『安楽死を遂げた日本人』をベースに、安楽死の現状を理解する
ルシルナ
孤独・寂しい・友達【本・映画の感想】 | ルシルナ
孤独と向き合うのは難しいものです。友達がいないから学校に行きたくない、社会人になって出会いがない、世の中的に他人と会いにくい。そんな風に居場所がないと思わされて…
ルシルナ
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ルシルナは、4000冊以上の本と500本以上の映画をベースに、生き方や教養について書いていきます。ルシルナでは36個のタグを用意しており、興味・関心から記事を選びやすく…
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