目次
はじめに
この記事で取り上げる映画
「彼女はなぜ、猿を逃したか?」公式HP
この映画をガイドにしながら記事を書いていくようだよ
今どこで観れるのか?
公式HPの劇場情報をご覧ください
この記事で伝えたいこと
「すべての言動には意図があるはず」という考え方には、違和感を覚えてしまう
「そういう思い込みを他人に押し付けないでほしい」と強く感じてしまった
この記事の3つの要点
- 冒頭からしばらくは「訳の分からない奇妙さ」に支配されていく
- 「炎上」という現代的なテーマを分かりやすく打ち出しすぎているように感じられた点が少し残念だった
- 「猿を逃がした女子高生」と「彼女を取材する週刊誌記者」の噛み合わないやり取りがとても素敵
不穏に始まり、奇妙に展開していくのだが、最後は爽やかに着地するという、予測不能な物語に驚かされた
自己紹介記事
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途中まで、本当にどうなることかと思っていました。というのも、設定や展開を含め、何から何まで全然意味が分からなかったからです。
物語の前半はホント、「???」って感じが強かったよなぁ
何が展開されてるのかさっぱり理解できない、みたいな感じだったからね
しかし中盤以降少しずつ、「なるほど、もしかしたらこういうことなんだろうか」という可能性が見えてきます。そしてしばらくして、「やっぱりこの捉え方で合っていたのか」という風に感じられるようになりました。まあ、本作で描かれている「物語の設定」はかなりムチャクチャな感じがするのですが、最終的には割とリアリティを感じられるライン上に着地します。もちろん、人それぞれ好き嫌いはあるでしょうが、私は「物語としてはきちんと成立している」と感じました。
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さて、恐らくですが、映画を観ていく中で、「『彼女はなぜ、猿を逃がしたか?』というタイトルに絡む事件については、たぶん描かれないのだろう」みたいに風に感じるんじゃないかと思います。少なくとも私は、物語の中盤ぐらいで、「事件そのものにはきっと触れないのだろう」と考えていました。しかし、その予想は良い意味で裏切られます。「そんな展開になっていくのか!」と感じさせる終盤を迎えるのです。このラストの展開も含めて、とても良かったなと思います。
冒頭からしばらく不安な感じで観てたから、それもあって余計に良く思えたのかもね
それまでの展開からは想像もつかない終わり方にビックリしたわ
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「炎上」「バズり」が主なテーマとして組み込まれている
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映画『雨降って、ジ・エンド。』では、「SNSでのバズり」がメインで扱われています。主人公の「まぐれ当たりでバズったカメラマン志望の女性」が、その「バズり」を自分のステップアップに上手く使おうと考え、さらなるバズを求めて奇妙な人間関係の中に自ら飛び込んでいくという物語です。そしてそんな女性の人生を追いかけることで、「ネットのバズりなんかに人生を左右されない方が健全ではないか」というメッセージが伝わってくるような感じがしました。
映画『雨降って、ジ・エンド。』はホント、古川琴音がメチャクチャ良かったよね
「彼女にしか成立させられないんじゃないか」とさえ感じさせる物語だった
一方、本作『彼女はなぜ、猿を逃したか?』では、「週刊誌やネットでの炎上」が扱われます。『彼女はなぜ、猿を逃したか?』という奇妙なタイトルはそのまま主人公の行動を表しており、彼女は実際に動物園から猿を逃がし、そのことで週刊誌に取り上げられました。そして、そのことによって人生が大きく変わってしまった女性の姿を、かなり奇妙な構成・展開で描き出す物語です。
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正直に言えば、本作では「炎上」というテーマがちょっと分かりやすく強調されすぎている感じがあって、その点はあまり好きではありませんでした。「真実は捻じ曲げられて届く」みたいな「テーマを強調する分かりやすいセリフ」が何度も出てくるし、あるいは「匿名性の陰で騒いでいるだけの連中」を揶揄するようなセリフもあります。それらは確かに現代的なテーマだと思うのですが、もう少しスマートに組み込んでも良かったのかなと感じはします。
ただ、後半である人物が自己言及的に「こういうの、クドいかぁ」みたいに口にする場面があったりするから、分かった上で敢えてやってるって可能性もあるかも
もしそうだとしたら、そのことがもう少し伝わるようにしてほしかったかなとは思うけどね
「すべての言動には意図があるはず」という発想への違和感と、「噛み合わない会話」の面白さ
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さて、そういう現代的なテーマを据えつつ展開される物語なのですが、個人的にはむしろ、「猿を逃がした女子高生を取材する男性記者の振る舞い」の方が気になりました。敢えて「男性記者」と書いたのは、本作中で描かれる「思い込み」については、男性の方がより強く持っている印象を抱いているからです。
週刊誌記者としての責務みたいなものもあるのでしょうが、この記者は女子高生に対して執拗に「なぜ猿を逃がしたのか?」と問い続けます。そのこと自体は別にいいのですが、問題なのは、「『猿を逃がすという行為』には何か明確な意図があったはずだ」という信念を記者が持ち続けていたことです。女子高生は何を聞かれても、「はぐらかしている」としか受け取れないようなやり取りを続けます。少なくとも、「本心を喋っているんだな」と感じられるような受け答えにはなっていないということです。そのような「的外れなやり取り」が本作の面白さの1つと言えるわけですが、週刊誌の記者としてはやはり腹立たしさが募るのでしょう。そして彼は、どうにかして彼女から「本心」を引き出そうと奮闘するのです。
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さて私は、その記者が持つ「すべての言動には意図があるはず」という考え方に強く違和感を覚えてしまいました。もちろん、「そうである方が望ましい」ぐらいの感覚は自然だと思います。しかしこの記者のように、「『猿を逃がす』なんて大それたことをしたんだから、そこには何かしらの理由があるはずだ!」みたいに決めつけるスタンスは、どうにも好きになれません。
もちろん、「意図はちゃんとあるけれども、言語化能力が低いために『意図がない』ように見えてしまう」みたいなケースもあるでしょう。なので、包括的に議論をするのは難しいのですが、いずれにせよ私は、「『意図がない』という状態は不自然だ」みたいな決めつけが好きになれません。まあ、「そんな風に感じてしまう人は、『理由がないという状態』に耐えられないのだろう」と思ってはいるのですが。
「つまんない」って感覚が伝わるのかもよく分かんないけど
そしてそういう意味で言うと、猿を逃がした女子高生の受け答えはとても素敵だったなと思います。例えば映画の冒頭で、「猿を逃がした日の天気」について聞かれた彼女は、「空が焦げたようなオレンジ色だった」と答えました。「それはきっと朝焼けだろう」という話になった後で、さらに「じゃあ、朝焼けを見てどう感じた?」と問われるのですが、彼女にはその質問の意味がよくわからなかったのでしょう。そのため、「『元気が出た』とか『楽しい気分になった』とか」みたいに水を向けられるのですが、それに対して彼女は、「そういうことであれば、『オレンジ色だな』『焦げてるな』って思いました」と返すのです。
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この返答はメチャクチャいいなぁと感じました。もちろん、私が彼女と直接話をしていてそんな受け答えになった場合には、本作の記者と同じくやはりイラッとしてしまうかもしれません。ただ、第三者的にこのやり取りを聞いている分にはとても興味深いし、先程触れた「『意図がない』という状態は不自然」みたいな感覚と併せて考えるとより色々と考えさせられるんじゃないかと思います。質問する側には「朝焼けを見たら何か気持ちが動くはずだ」という思い込みがあるわけですが、女子高生はそんな「当たり前」を爽快にぶった切っていくからです。実に痛快だなと感じました。
「こう聞いたらこう返ってくるだろう」って想定できちゃう人とは会話する気が無くなるよね
なんとなく想像できるでしょうが、主人公の女子高生は、冒頭からしばらくずっと「変な奴」として描かれます。「動物園の猿を逃がす」なんてことをしたわけで、そりゃあ「変わってる」と思われて当然でしょう。そしてその「変さ」は、他者とのやり取りの中でも発揮されるのです。そのため観客は当面、「彼女の奇妙さ」に惹きつけられるような形で物語を追っていくことになるでしょう。
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しかし、冒頭でも触れましたが、本作では最後に「なぜ猿を逃がしたのか?」が明らかになる展開が描かれます。そして、そこでの彼女はとても魅力的に映るのです。それまでずっと「ただの変な人」でしかなかった女子高生が、一転、とても素敵な女性に見えてくるでしょう。そしてそのことによって、映画全体の雰囲気もガラッと一変する感じがあるのです。ずっと奇妙さが支配し続けてきた作品が、最後に爽やかさを放つ展開になっていくので、そんな構成もまた素敵だなと感じました。
冒頭からは想像も出来ない爽やかな展開になるんだよなぁ
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最後に
私は古川琴音を推しているので、そういう意味でどうしても『雨降って、ジ・エンド。』の方が好ましく感じられるのですが、本作もとても素敵な作品でした。冒頭でも書きましたが、「猿を逃がした理由」をちゃんと描いていたところがポイントだったように思います。ともすれば「タイトルのインパクト」に内容が負けてしまうようにも思えますが、私は「『タイトルのインパクト』に負けない物語を構築出来ている」と感じました。
配信で観る場合、途中で止めたくなるかもしれませんが、最後まで観ることをオススメします。最初の印象とはかなり違う展開になるので楽しみにしていて下さい。
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【幸福】「死の克服」は「生の充実」となり得るか?映画『HUMAN LOST 人間失格』が描く超管理社会
アニメ映画『HUMAN LOST 人間失格』では、「死の克服」と「管理社会」が分かちがたく結びついた世界が描かれる。私たちは既に「緩やかな管理社会」を生きているが、この映画ほどの管理社会を果たして許容できるだろうか?そしてあなたは、「死」を克服したいと願うだろうか?
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【おすすめ】江戸川乱歩賞受賞作、佐藤究『QJKJQ』は、新人のデビュー作とは思えない超ド級の小説だ
江戸川乱歩賞を受賞した佐藤究デビュー作『QJKJQ』はとんでもない衝撃作だ。とても新人作家の作品とは思えない超ド級の物語に、とにかく圧倒されてしまう。「社会は『幻想』を共有することで成り立っている」という、普段なかなか意識しない事実を巧みにちらつかせた、魔術のような作品
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【感想】阿部サダヲが狂気を怪演。映画『死刑にいたる病』が突きつける「生きるのに必要なもの」の違い
サイコパスの連続殺人鬼・榛村大和を阿部サダヲが演じる映画『死刑にいたる病』は、「生きていくのに必要なもの」について考えさせる映画でもある。目に光を感じさせない阿部サダヲの演技が、リアリティを感じにくい「榛村大和」という人物を見事に屹立させる素晴らしい映画
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【純愛】映画『ぼくのエリ』の衝撃。「生き延びるために必要なもの」を貪欲に求める狂気と悲哀、そして恋
名作と名高い映画『ぼくのエリ』は、「生き延びるために必要なもの」が「他者を滅ぼしてしまうこと」であるという絶望を抱えながら、それでも生きることを選ぶ者たちの葛藤が描かれる。「純愛」と呼んでいいのか悩んでしまう2人の関係性と、予想もつかない展開に、感動させられる
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【表現】映画『名付けようのない踊り』で初めて見た田中泯のダンス。「芸術以前」を志向する圧倒的パワー
映画『名付けようのない踊り』の中で田中泯は言う。「私」や「個性」を表現することには違和感がある、と。「踊りのために身体を作る」のではなく、「野良仕事で出来た身体で踊る」のだ、と。芸術になる前の踊りを探したい、と。「唯一無二の表現者」の生涯と現在地を映し出すドキュメンタリー
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【無謀】園子温が役者のワークショップと同時並行で撮影した映画『エッシャー通りの赤いポスト』の”狂気”
「園子温の最新作」としか知らずに観に行った映画『エッシャー通りの赤いポスト』は、「ワークショップ参加者」を「役者」に仕立て、ワークショップと同時並行で撮影されたという異次元の作品だった。なかなか経験できないだろう、「0が1になる瞬間」を味わえる“狂気”の映画
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【特異】「カメラの存在」というドキュメンタリーの大前提を覆す映画『GUNDA/グンダ』の斬新さ
映画『GUNDA/グンダ』は、「カメラの存在」「撮影者の意図」を介在させずにドキュメンタリーとして成立させた、非常に異端的な作品だと私は感じた。ドキュメンタリーの「デュシャンの『泉』」と呼んでもいいのではないか。「家畜」を被写体に据えたという点も非常に絶妙
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【現実】権力を乱用する中国ナチスへの抵抗の最前線・香港の民主化デモを映す衝撃の映画『時代革命』
2019年に起こった、逃亡犯条例改正案への反対運動として始まった香港の民主化デモ。その最初期からデモ参加者たちの姿をカメラに収め続けた。映画『時代革命』は、最初から最後まで「衝撃映像」しかない凄まじい作品だ。この現実は決して、「対岸の火事」ではない
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【抵抗】西加奈子のおすすめ小説『円卓』。「当たり前」と折り合いをつけられない生きづらさに超共感
小学3年生のこっこは、「孤独」と「人と違うこと」を愛するちょっと変わった女の子。三つ子の美人な姉を「平凡」と呼んで馬鹿にし、「眼帯」や「クラス会の途中、不整脈で倒れること」に憧れる。西加奈子『円卓』は、そんなこっこの振る舞いを通して「当たり前」について考えさせる
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【おすすめ】「天才」を描くのは難しい。そんな無謀な挑戦を成し遂げた天才・野崎まどの『know』はヤバい
「物語で『天才』を描くこと」は非常に難しい。「理解できない」と「理解できる」を絶妙なバランスで成り立たせる必要があるからだ。そんな難題を高いレベルでクリアしている野崎まど『know』は、異次元の小説である。世界を一変させた天才を描き、「天才が見ている世界」を垣間見せてくれる
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【衝撃】洗脳を自ら脱した著者の『カルト脱出記』から、「社会・集団の洗脳」を避ける生き方を知る
「聖書研究に熱心な日本人証人」として「エホバの証人」で活動しながら、その聖書研究をきっかけに自ら「洗脳」を脱した著者の体験を著した『カルト脱出記』。広い意味での「洗脳」は社会のそこかしこに蔓延っているからこそ、著者の体験を「他人事」だと無視することはできない
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【感想】リドリー・スコット監督の映画『最後の決闘裁判』から、社会が”幻想”を共有する背景とその悲劇…
例えば、「1万円札」というただの紙切れに「価値を感じる」のは、社会の構成員が同じ「共同幻想」の中に生きているからだ。リドリー・スコット監督の映画『最後の決闘裁判』は、「強姦では妊娠しない」「裁判の勝者を決闘で決する」という社会通念と、現代にも通じる「共同幻想」の強さを描き出す
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【理解】小野田寛郎を描く映画。「戦争終結という現実を受け入れない(=認知的不協和)」は他人事じゃ…
映画『ONODA 一万夜を越えて』を観るまで、小野田寛郎という人間に対して違和感を覚えていた。「戦争は終わっていない」という現実を生き続けたことが不自然に思えたのだ。しかし映画を観て、彼の生き方・決断は、私たちと大きく変わりはしないと実感できた
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【衝撃】『殺人犯はそこにいる』が実話だとは。真犯人・ルパンを野放しにした警察・司法を信じられるか?
タイトルを伏せられた覆面本「文庫X」としても話題になった『殺人犯はそこにいる』。「北関東で起こったある事件の取材」が、「私たちが生きる社会の根底を揺るがす信じがたい事実」を焙り出すことになった衝撃の展開。まさか「司法が真犯人を野放しにする」なんてことが実際に起こるとは。大げさではなく、全国民必読の1冊だと思う
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【あらすじ】映画『流浪の月』を観て感じた、「『見て分かること』にしか反応できない世界」への気持ち悪さ
私は「見て分かること」に”しか”反応できない世界に日々苛立ちを覚えている。そういう社会だからこそ、映画『流浪の月』で描かれる文と更紗の関係も「気持ち悪い」と断罪されるのだ。私はむしろ、どうしようもなく文と更紗の関係を「羨ましい」と感じてしまう。
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【矛盾】法律の”抜け穴”を衝く驚愕の小説。「ルールを通り抜けたものは善」という発想に潜む罠:『法廷…
完璧なルールは存在し得ない。だからこそ私たちは、矛盾を内包していると理解しながらルールを遵守する必要がある。「ルールを通り抜けたものは善」という”とりあえずの最善解”で社会を回している私たちに、『法廷遊戯』は「世界を支える土台の脆さ」を突きつける
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【正義】復讐なんかに意味はない。それでも「この復讐は正しいかもしれない」と思わされる映画:『プロ…
私は基本的に「復讐」を許容できないが、『プロミシング・ヤング・ウーマン』の主人公キャシーの行動は正当化したい。法を犯す明らかにイカれた言動なのだが、その動機は一考の余地がある。何も考えずキャシーを非難していると、矢が自分の方に飛んでくる、恐ろしい作品
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【衝撃】『ゆきゆきて、神軍』はとんでもないドキュメンタリー映画だ。虚実が果てしなく入り混じる傑作
奥崎謙三という元兵士のアナーキストに密着する『ゆきゆきて、神軍』。ドキュメンタリー映画の名作として名前だけは知っていたが、まさかこんなとんでもない映画だったとはと驚かされた。トークショーで監督が「自分の意向を無視した編集だった」と語っていたのも印象的
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【日常】「何もかも虚しい」という心のスキマを「異性」や「お金」で安易に埋めてしまうのは危険だ:映…
「どこにでもいる普通の女性」が「横領」に手を染める映画『紙の月』は、「日常の積み重ねが非日常に接続している」ことを否応なしに実感させる。「主人公の女性は自分とは違う」と考えたい観客の「祈り」は通じない。「梅澤梨花の物語」は「私たちの物語」でもあるのだ
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【驚愕】これ以上の”サバイバル映画”は存在するか?火星にたった一人残された男の生存術と救出劇:『オ…
1人で火星に取り残された男のサバイバルと救出劇を、現実的な科学技術の範囲で描き出す驚異の映画『オデッセイ』。不可能を可能にするアイデアと勇気、自分や他人を信じ抜く気持ち、そして極限の状況でより困難な道を進む決断をする者たちの、想像を絶するドラマに胸打たれる
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【民主主義】占領下の沖縄での衝撃の実話「サンマ裁判」で、魚売りのおばぁの訴えがアメリカをひっかき…
戦後の沖縄で、魚売りのおばぁが起こした「サンマ裁判」は、様々な人が絡む大きな流れを生み出し、最終的に沖縄返還のきっかけともなった。そんな「サンマ裁判」を描く映画『サンマデモクラシー』から、民主主義のあり方と、今も沖縄に残り続ける問題について考える
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【死】映画『湯を沸かすほどの熱い愛』に号泣。「家族とは?」を問う物語と、タイトル通りのラストが見事
「死は特別なもの」と捉えてしまうが故に「日常感」が失われ、普段の生活から「排除」されているように感じてしまうのは私だけではないはずだ。『湯を沸かすほどの熱い愛』は、「死を日常に組み込む」ことを当たり前に許容する「家族」が、「家族」の枠組みを問い直す映画である
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【驚愕】あるジャーナリストの衝撃の実話を描く映画『凶悪』。「死刑囚の告発」から「正義」を考える物語
獄中の死刑囚が警察に明かしていない事件を雑誌記者に告発し、「先生」と呼ばれる人物を追い詰めた実際の出来事を描くノンフィクションを原作にして、「ジャーナリズムとは?」「家族とは?」を問う映画『凶悪』は、原作とセットでとにかく凄まじい作品だ
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【考察】アニメ映画『虐殺器官』は、「便利さが無関心を生む現実」をリアルに描く”無関心ではいられない…
便利すぎる世の中に生きていると、「この便利さはどのように生み出されているのか」を想像しなくなる。そしてその「無関心」は、世界を確実に悪化させてしまう。伊藤計劃の小説を原作とするアニメ映画『虐殺器官』から、「無関心という残虐さ」と「想像することの大事さ」を知る
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【正義】「正しさとは何か」を考えさせる映画『スリー・ビルボード』は、正しさの対立を絶妙に描く
「正しい」と主張するためには「正しさの基準」が必要だが、それでも「規制されていないことなら何でもしていいのか」は問題になる。3枚の立て看板というアナログなツールを使って現代のネット社会の現実をあぶり出す映画『スリー・ビルボード』から、「『正しさ』の難しさ」を考える
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【真実】ホロコーストが裁判で争われた衝撃の実話が映画化。”明らかな虚偽”にどう立ち向かうべきか:『…
「ホロコーストが起こったか否か」が、なんとイギリスの裁判で争われたことがある。その衝撃の実話を元にした『否定と肯定』では、「真実とは何か?」「情報をどう信じるべきか?」が問われる。「フェイクニュース」という言葉が当たり前に使われる世界に生きているからこそ知っておくべき事実
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【実話】障害者との接し方を考えさせる映画『こんな夜更けにバナナかよ』から”対等な関係”の大事さを知る
「障害者だから◯◯だ」という決まりきった捉え方をどうしてもしてしまいがちですが、『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』の主人公・鹿野靖明の生き様を知れば、少しは考え方が変わるかもしれません。筋ジストロフィーのまま病院・家族から離れて“自活”する決断をした驚異の人生
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【考察】映画『ジョーカー』で知る。孤立無援の環境にこそ”悪”は偏在すると。個人の問題ではない
「バットマン」シリーズを観たことがない人間が、予備知識ゼロで映画『ジョーカー』を鑑賞。「悪」は「環境」に偏在し、誰もが「悪」に足を踏み入れ得ると改めて実感させられた。「個人」を断罪するだけでは社会から「悪」を減らせない現実について改めて考える
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【漫画原作】映画『殺さない彼と死なない彼女』は「ステレオタイプな人物像」の化学反応が最高に面白い
パッと見の印象は「よくある学園モノ」でしかなかったので、『殺さない彼と死なない彼女』を観て驚かされた。ステレオタイプで記号的なキャラクターが、感情が無いとしか思えないロボット的な言動をする物語なのに、メチャクチャ面白かった。設定も展開も斬新で面白い
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小学5年生から統合失調症を患い、社会の中でもがき苦しみながら生きる卯月妙子のコミックエッセイ『人間仮免中』はとんでもない衝撃作。周りにいる人とのぶっ飛んだ人間関係や、歩道橋から飛び降り自殺未遂を図り顔面がぐちゃぐちゃになって以降の壮絶な日々も赤裸々に描く
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私は、それがポジティブなものであれ、「レッテル」で見られることは嫌いです。主人公の1人、障害を持つ大富豪もまたそんなタイプ。傍若無人な元犯罪者デルとの出会いでフィリップが変わっていく『THE UPSIDE 最強のふたり』からコミュニケーションを学ぶ
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【爆発】どうしても人目が気になる自意識過剰者2人、せきしろと又吉直樹のエッセイに爆笑&共感:『蕎麦…
「コンビニのコピー機で並べない」せきしろ氏と、「フラッシュモブでの告白に恐怖する」又吉直樹氏が、おのれの「自意識過剰さ」を「可笑しさ」に変えるエッセイ『蕎麦湯が来ない』は、同じように「考えすぎてしまう人」には共感の嵐だと思います
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【あらすじ】子どもは大人よりずっと大人だ。「子ども扱い」するから、「子どもの枠」から抜け出せない…
宮部みゆき『ソロモンの偽証』は、その分厚さ故になかなか手が伸びない作品だろうが、「長い」というだけの理由で手を出さないのはあまりにももったいない傑作だ。「中学生が自前で裁判を行う」という非現実的設定をリアルに描き出すものすごい作品
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【あらすじ】人生行き詰まってなお「生きたい」と思えるか?環境の激変を受け入れる難しさと生きる悲し…
勤務していた会社の都合で、町が1つ丸々無くなるという経験をし、住居を持たないノマド生活へと舵を切った女性を描く映画『ノマドランド』を通じて、人生の大きな変化に立ち向かう気力を持てるのか、我々はどう生きていくべきか、などについて考える
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子どもの頃「台風」にワクワクしたように、未だに、「自分のつまらない日常を押し流してくれる『何か』」の存在を待ちわびてしまう。立教大学の学生が撮った映画『サクリファイス』は、そんな「何か」として「東日本大震災」を描き出す、チャレンジングな作品だ
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まさか「ゾンビ映画」が、私たちが生きている現実をここまで活写するとは驚きだった。映画『CURED キュアード』をベースに、「見えない事実」がもたらす恐怖と、立場ごとに正しい主張をしながらも否応なしに「分断」が生まれてしまう状況について知る
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金正男が暗殺された事件は、世界中で驚きをもって報じられた。その実行犯である2人の女性は、「有名にならないか?」と声を掛けられて暗殺者に仕立て上げられてしまった普通の人だ。映画『わたしは金正男を殺していない』から、危険と隣り合わせの現状を知る
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世界最高峰の辞書である『オックスフォード英語大辞典』は、「学位を持たない独学者」と「殺人犯」のタッグが生みだした。出会うはずのない2人の「狂人」が邂逅したことで成し遂げられた偉業と、「狂気」からしか「偉業」が生まれない現実を、映画『博士と狂人』から学ぶ
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