目次
はじめに
この記事で取り上げる映画
「映画 ◯月◯日、区長になる女。」公式HP
この映画をガイドにしながら記事を書いていきます
今どこで観れるのか?
公式HPの劇場情報をご覧ください
この記事の3つの要点
- 杉並区長選の結果も、候補者である岸本聡子のことも知らずに観たが、実に面白い作品だった
- 「日本の民主化のために人生を全うする」という決意を抱く岸本聡子と、彼女が掲げる「ミュニシパリズム」について
- かなり特異に展開した選挙戦と、区長選後に生まれた驚きの展開
国会議員の言動を知る度に日本の政治に絶望させられるが、本作には未来の日本の希望に満ち溢れているように思う
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どんな人間がこの記事を書いているのかは、上の自己紹介記事をご覧ください
記事中の引用は、映画館で取ったメモを参考にしているので、正確なものではありません
杉並区長選の結果さえ知らずに観に行った映画『映画 ◯月◯日、区長になる女。』は面白かった!政治はこんな風に底上げされてほしい
なかなか面白い作品だった。既に終わった選挙の話なのでネタバレにはならないだろうが、本作で取り上げられる杉並区長選ではなんと、岸本聡子が187票差で現職を打ち破ったのである。その選挙結果だけを取り上げてみても非常に興味深いと言えるだろう。これは決して、「ギリギリだけど勝ちは勝ち」みたいな話ではない。「まずひっくり返せないだろう状況で逆転劇を成し遂げた」という点こそが注目すべきポイントなのである。
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さて、本作を観る前の時点で私は、杉並区長選の結果も知らなければ、そもそも候補者である岸本聡子のことも認識していないような状態だった。もちろん、杉並区民でさえない。それでも、とても面白く観られたのである。やはりそこには、「こういう政治だったら良いよなぁ」みたいな感覚があるのだと思う。私たちが普段触れている、「永田町でオジサンたちが訳の分からないことを言っている」みたいなものとはまるで違う、「地域に根づいた自治的な民主主義」の実現がそこにはあったのだ。ちなみに、そのような民主主義は「ミュニシパリズム」と呼ばれているのだと、本作を観て初めて知った。
それでは、映画の内容に触れる前にまず、本作の人気っぷりについて触れておこうと思う。映画館のチケットが取れなくて本当に苦労したのだ。
本作は、2024年1月2日に公開された映画で、私は元々公開直後に観る予定でいた。しかし満席のため、予定していた日のチケットは取れなかったのである。ただ、その日は劇場のサービスデーだったこともあり、それで観客が集中したのだろうぐらいに考えていた。それで、翌週の土曜に観ようと思い、前日の金曜の夜にチケットを確認したのだが、昼の分は満席。ならば日曜に観ようと思い確認すると、残っていたのは最前列の席のみという状態だったのである。そんなわけで、久々に最前列で映画を観た。私の記憶では、大昔に映画『マッドマックス』を観た時以来だと思う。『マッドマックス』も、メチャクチャ混んでたなぁ。
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劇場が満席になるほどの話題性がどのように生まれたのかは結局今も分からないままなのだが、本作は恐らく、「政治の話なんか興味ない」と感じてしまう人にこそ響く作品ではないかと思う。もし機会があるようなら是非観てみてほしい。
監督のペヤンヌマキは、何故『映画 ◯月◯日、区長になる女。』を撮ることになったのか
本作の監督は、ペヤンヌマキという名前で活動する劇作家である。Wikipediaによると、溝口真希子の名義でかつて自主制作映画を作ったことがあるそうで、だとすると「監督初のドキュメンタリー映画」という表現が正しいのだろうか。いずれにせよ、「映画を撮るような環境にいた人ではない」のだと理解してもらえればいい。そんなわけで、彼女が何故本作『映画 ◯月◯日、区長になる女。』を撮ることになったのかについての説明する必要があるだろう。本作では、冒頭でその辺りの経緯が説明されているので、ざっくりと紹介しておこうと思う。
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ペヤンヌマキは、杉並区に20年以上住んでいるのだそうだ。近くを流れる善福寺川周辺の緑地や近所を走る小道沿いに立つ木など、自宅近くの自然環境に惹かれ、ずっと引っ越せないでいると言っていた。そんな彼女が3年前、体調不良のため近くにある成宗診療所に足を運んだことがすべての始まりである。
彼女はそこで、杉並区が計画している事業について始めて知ることになった。その診療所に、「新道路『133号線』建設計画の反対署名を集めている」と貼り紙がされていたのだ。実現してしまうと、この診療所が立ち退きを余儀なくされるのだという。ペヤンヌマキは、長年住んでいるにも拘らず、杉並区がそんな事業を計画していることを知らなかったため、少し調べてみることにした。
すると、驚くべき事実が明らかになる。なんと、彼女が気に入っている善福寺川緑地や小道沿いの木をすべて潰して道路を作ろうという計画だったのだ。彼女が住む家はギリギリ対象の区画から外れてはいたものの、心地良さを感じてきた住環境が明らかに脅かされる状況であり、彼女は事の深刻さを理解した。そしてこれをきっかけに、それまでまったく関心を抱いてこなかった「区政」について調べてみることにしたのである。
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調べてようやく状況が分かってきた。どうやら国と杉並区が”結託”し、市民にあまり情報を知らせず、事を荒立てないようにして道路計画を進めているようなのだ。さらに、問題は「133号線」だけではないことも判明した。杉並区内だけでも、今後10年間で10本の道路建設計画が存在することが分かったのだ。しかもそれらは、商店街を潰したり、住宅街をぶち抜いたりして行われる想定だった。そのような制作が、少なくとも彼女の視界にはまったく入らないところで進行していたのである。
これは大変だと感じた彼女はさらに調べを進め、ある市民団体の存在に行き着いた。「住民思いの杉並区長をつくる会」という団体で、かなり以前から活動していたようだ。今回の問題についても、既に市民運動を展開していることが分かった。しかし、団体名が実態に追いついておらず、肝心要の区長候補となる人物はまだ見つかっていなかったのだ。
ペヤンヌマキがこの市民団体の存在を知った時点で、区長選までは残り2ヶ月弱。未だ候補は見つかっていない。このままでは、3期12年区長を務めた現職・田中良が再選し、杉並区を”破壊する”ようにしか感じられない道路建設計画がそのまま進んでしまうに違いない。そうなったら最悪だと、ペヤンヌマキはヤキモキしていたのである。
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そんなある日、彼女は区長候補が決まったことを知った。それが、つい先日までアムステルダムに住んでいた岸本聡子である。ある人物を仲介に市民団体から区長候補への打診があり、10日ほど悩んだ末、立候補を決意したというわけだ。
この進展を知ったペヤンヌマキは、じっとしてはいられなかった。岸本聡子のことなどまったく何も知らなかったが、「杉並区長候補」として選挙前から街頭演説を行う彼女の元へと足を運び、チラシ配りなど手伝うことにした。さらに直接話す機会も得られたので、「選挙戦を盛り上げるために、あなたのことを動画に撮ってSNSにアップしたい」と伝えたのである。
このようにして本作『映画 ◯月◯日、区長になる女。』は生まれた。そう、元々は「選挙戦を闘うためのPR動画」でしかなかったのだ。それが、ミニシアターに観客を呼び寄せる注目のドキュメンタリーとして世に出ることになったのである。なかなか面白い経緯の作品ではないかと思う。
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区長候補となった岸本聡子と、彼女が主張する「ミュニシパリズム」について
先に説明したように、本作は「選挙戦を闘うためのPR動画」として撮影された。そのため基本的には、「公示日前に行っていた街頭演説」や「公示日以降の選挙戦」がメインで映し出される。そしてその合間に、岸本聡子の人柄が伝わるようなバックステージでの姿や、監督ペヤンヌマキの葛藤などが挟み込まれていくという構成だ。そして個人的にはやはり、岸本聡子に焦点が当たる部分が面白かった。
というわけでまずは、岸本聡子がどのような人物なのか紹介しておこう。
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彼女は27歳でアムステルダムに移り住み、「トランスナショナル研究所」というNGOに就職した。そこで市民運動の支援をしつつ、環境等に関する公共政策のリサーチも行っていたという。このように、元々「公共」に携わるような生き方をしていた人物なのである。
しかし、2018年に転機があった。恐らく職場でのことだと思うのだが、定期的に行われているキャリアカウンセリングの中で、「今自分が本当にやりたいことは何なのか?」という話になったそうだ。そして色々と話していく中で、「なるほど、あなたは『地域の政治活動』に関わりたいんですね」とまとめてもらえたのだという。そのようなやり取りを経て彼女は、自分のやりたいことが改めて明確になった。そしてこれをきっかけに、日本語での本の執筆に取り掛かることにしたのだという。また、「地域の政治活動」に関わる上で、やはり日本を拠点にすべきだと考えたのだろう。彼女は、いつ日本に帰るべきかも考えるようになったのである。
杉並区長への打診があった時点では既に帰国の決断をしていたというので、タイミングはたまたま重なっただけだそうだ。しかし彼女はずっと、いつかは日本に帰ろうと考えていたという。その理由については、次のように話していた。
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自分には、日本の民主化のために人生を全うする責任があると感じているから。
正直私は、こういうことを口にする人に対して「胡散臭さ」を感じてしまうことが多い。「んな訳ないだろ」と思ってしまうのだ。しかし本作では、岸本聡子に対してそのような「胡散臭さ」を感じはしなかった。喋っていることやその佇まいなどに芯を感じるし、「本心を口にしているんだろうなぁ」と感じさせるような雰囲気があったからだ。凄い人だなと思う。しかし、「日本の民主化に責任を抱いてる」などと考える人がホントにいるものなのかと、驚かされてしまった。
そんな彼女が作中で何度か口にするのが「ミュニシパリズム」である。先程少し説明したが、日本語では「地域自治主義」という表現になるそうだ。「政治」と聞けばやはり「国会」や「国会議員」などが浮かぶものだし、それらは基本的に「トップダウン」のような性質を持つだろう。しかし、「ミュニシパリズム」は逆に「ボトムアップ」、つまり「生活のための小さな単位の中で民主的な政治を実現していこう」という考え方である。そして岸本聡子は恐らく、このような政治を実現したいという気持ちもあって、杉並区長候補の話を引き受けたのだと思う。
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本作を観ても結局、「当時の杉並区が、何故『133号線』などの道路を建設しようとしていたのか」はよく分からなかった。なのでこの記事では、その計画の是非について言及したりはしない。映画は当然、「住民思いの杉並区長をつくる会」や岸本聡子目線で作られているわけで、「彼女たちの訴えこそが『ミュニシパリズム』である」という見え方になっている。しかし、「133号線」を必要とする住民がもし一定数存在するのであれば、その声を実現しようという計画もまた「ミュニシパリズム」と言えるはずだ。本作だけからは、その辺りのことは判断できなかった。しかしいずれにしても、「岸本聡子が市民の声を積極的に拾い集めようと努力していること」は伝わってくる。そしてこの点に関して、選挙戦を闘う彼女が抱いていた不満が映し出されていた。
公示日前から街頭で演説を行っていた岸本聡子は、支援者たちから様々なアドバイスをもらう。「街頭演説では、やりたいことを短くアピールするのが良い」「短い間隔で自身の名前を繰り返せ」などだ。それらは、既存の選挙における常套手段と言えるだろうし、いわゆる「選挙戦」をイメージする際に頭に浮かぶものだと思う。
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しかし彼女は、そのようなやり方にどうしても納得がいかない。ヨーロッパの民主主義にどっぷり浸かっていた彼女には、日本の選挙戦が「前時代的」にしか見えないのだ。また、こういう古いやり方は、「組織票を持っている現職」が圧倒的に有利である。そのことを理解している彼女はカメラの前で、次のように不満を口にしていた。
挑戦者である私たちがこのやり方で戦わなきゃいけないっていう状況がそもそもおかしいよね。
本当に、その通りだと思う。
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この点に関しては、区長への立候補を支援者に向けて表明した際の「自己紹介」が印象的だった。「聡」という字は、「公の心を耳にする」と書く。彼女は自身の名前に含まれるこの漢字を気に入っているそうで、その上で、「人々の声に耳を傾けること」が自身の使命だと本気で考えているようなのだ。
本当に、まさにこの人しかいないと感じさせるような人物であり、彼女と出会えたことが、支援者にとって最大の僥倖だったと言えるだろうと思う。
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岸本聡子と支援者のバトル
さて、そんな「有能に服を着せたような人物」が、カメラの前で盛大に愚痴をこぼす場面がある。そのシーンには前段として、私が本作中で最も興味深いと感じたやり取りが関係しているので、まずはその話に触れておこう。
岸本聡子を応援する支援者の中に、小関啓子という、市民運動の最古参メンバーがいる。見た目だけからの判断だが、恐らく70代か80代の方だろう。そして深夜、岸本聡子と小関啓子が、商店街のガードレール脇で白熱の議論を繰り広げる場面がカメラに収められているのだ。このやり取りが実に面白かった。
争点となっているのは、2人の間にある「食い違い」だ。小関啓子は、「岸本聡子が打ち出す政策が、『住民思いの杉並区長をつくる会』の思いを汲んだ内容になっていない」と考えている。彼女は20年以上に渡って市民運動に関わっており、これまでにも散々苦労してきた。そして今、岸本聡子という区長候補が現れてくれたことで、初めて「何かが大きく変わるかもしれない」という期待を持てている。だからこそ、それまでの20年間の様々な思いを詰め込んだような政策の実現を望んでしまうのだ。
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一方の岸本聡子は、確かに「杉並区への理解」は乏しいだろう。帰国して2ヶ月しか経っていないし、杉並区民だったこともないからだ。しかし、「政策」に関わってきた経験値は圧倒的である。そしてその経験を踏まえた上で彼女は、「『要求』を『政策』に変えないと何も進まない」と小関啓子に訴えるのだ。
「つくる会」の人たちの要求はもちろん理解しているが、それは単なる「要求」でしかない。それが政治の世界で一定の効力を持つためには、ちゃんと「政策」の形にしなければならないのだ。そのテクニカルな”変換”を岸本聡子はやっているわけで、その過程でどうしても「要求」のすべてが実現できなくなってしまいもする。だから、「『要求のすべてが実現されていない』と批判されても困る」と考えているのだ。
このようなやり取りをした後で愚痴が飛び出すわけだが、その際、岸本聡子は次のように言っていた。
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「つくる会」の人たちが言っていることももちろん分かるけど、街頭演説やタウンミーティングをやった上で、さらに(支援者たちとの)人間関係を調整していくようなことまでやるのは難しい。そこまでのスーパー人間はいないと思う。私は相当キャパがある方だと思ってるけど、その私が音を上げるんだから、そりゃあ候補者なんかいないよね。
この発言を聞いてペヤンヌマキは、「もしかしたら、このまま候補を下りてしまうんじゃないか」と心配になったそうだ。確かに、そう感じてもおかしくないような雰囲気はあったと思う。もちろん、「慣れないことに挑戦している」という大変さも多分にあっただろうが、岸本聡子はむしろ、ある種「日本的」とでもいうべき土着的な雰囲気にちょっと苦労させられていたというわけだ。
そのようなあれこれを乗り越えながら、岸本聡子と支援者は公示日を迎えたのである。
いざ選挙戦に突入、そしてその後についても
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公示日を迎えても、岸本聡子がやることは変わらない。街頭演説をしたり、市民の話を聞いたりと忙しく立ち回っていた。しかし、それまでと大きく変わった点もある。それが「ひとり街宣」というシステムだ。彼女の支援者が幟を持って区内の様々な場所に立ち、岸本聡子がいない場所でも彼女の応援を行うという仕組みである。支援者の1人が「ひとりで街宣やってもいいですか?」と申し出たことから自然発生的に広がったようで、彼女を支援しようという熱い志を持った者の多さを実感させる光景だった。
ちなみに、作中では説明されなかったのであくまでも私の勝手な解釈に過ぎないが、公示日を過ぎると「公職選挙法」が厳しく適用されるからだろう、「ひとり街宣」は色々と工夫の上で行われていたようである。例えば、彼女たちが持つ幟には「岸本聡子」の名前は入っていなかった。恐らく、「本人がその場にいる時でないと、名前入りの幟は使用できない」みたいなルールがあるのだと思う。だから「ひとり街宣」をする人たちは「杉並区初の女性区長」と書かれた幟を持っていた。また、これは作中の説明で初めて知ったことだが、選挙の際に配る「公式のチラシ」(正式な名前は知らないが)は、切手のようなもの(恐らく何か指定があるのだろう)を貼った上で、さらに本人が演説している場所でしか配れないのだそうだ。なので恐らく、「ひとり街宣」で配っていたのは「公式のチラシ」ではないのだと思う。このように制約はあるものの、「女性区長誕生を応援している」ことはアピール出来るわけで、この選挙戦において「ひとり街宣」という仕組みは非常に有効に機能したと言えるだろう。
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選挙戦においては、商店街の中に選挙対策本部が用意され、そこでは多くのボランティアが作業をしていた。「ポストに入っていたチラシを見て手伝いに来た」と語る車椅子の女性が、チラシを折ったり電話を掛けたりしている様子も映し出される。印象的だったのは、とにかく皆が楽しそうに参加していること。その雰囲気もとても良かったなと思う。
そのような選挙戦を経て、ようやく投開票日を迎えることになった。そして冒頭で書いた通り、なんと187票差で勝利したのである。候補者には、その時点で開票されている票数が1時間毎に伝えられるようなのだが、開票終了の直前まで「現職と同数」という連絡が続き、選挙戦の結果を知らずに観ていた私はずっとドキドキしていた。そして最終的に勝ってしまうのである。恐らく、この結果に一番驚いたのは岸本聡子だったのではないかと思う。
負けても、次の4年に向けて皆さんと活動をしていくつもりだった。
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まさか勝てるとは思わなかった。
彼女はこのように、率直な感想を語っていた。
さて実は、本作ではこの区長選の後の展開も実に興味深いと言える。
まず映し出されるのは、岸本聡子が所信表明演説を行った翌日の議会でのやり取りだ。区議の1人が岸本聡子に「質問」をすべき時間に、「6月19日の区長選は異常な選挙だった」と、あたかも彼女が何か悪いことをして区長に選ばれたとでも言うかのような主張を展開したのである。恐らく、落選した田中良を支持していた人物なのだと思うが、実に”見苦しい”振る舞いだった。
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岸本聡子の支援者たちはその様子を傍聴席から見ており、恐らく「こんな区政はダメだ」と感じたのではないかと思う。そこで彼女たちは驚くべき行動に出る。なんと、岸本聡子の選挙戦を闘った支援者たちが、自ら区議選に出馬したのだ。結果は凄まじく、岸本聡子の支援者複数人を含む15人の新人が当選し、現職12人が落選するという大変革をもたらしたのである。岸本聡子としても、志を同じくする区議が増えたことは心強いだろうし、何よりも、彼女なりの「ミュニシパリズム」を実現するための原動力になるんじゃないかと感じた。
岸本聡子がどのような区政を敷いているのか、それは私には何とも分からない。しかし本作を観る限りにおいては、「何かを大きく変えてくれそうな人だ」という印象がとても強かった。旧来の古臭い政治を維持したい勢力には目の上のたんこぶでしかないだろうが、私たち一般市民が望むような政治の実現には欠かせない人物と言えるのではないかと思う。そんな期待を抱かせてくれる人だと私には感じられた。
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区長選への出馬を決めた当初から語っていた通り、彼女はまさに「日本の民主化のために人生を全うする」ためのスタートラインを切ったと言えるだろう。あらゆる領域で女性の昇進を阻む「ガラスの天井」は未だそこかしこにあると思うが、そのパワフルさで、日本の政治を大いに変えてほしいと思う。
杉並区、なかなか面白いことになりそうだ。
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【実話】映画『キリング・オブ・ケネス・チェンバレン』が描く、白人警官による黒人射殺事件
映画『キリング・オブ・ケネス・チェンバレン』は、2011年に起こった実際の事件を元にした作品である。何の罪もない黒人男性が、白人警官に射殺されてしまったのだ。5時22分から始まる状況をほぼリアルタイムで描き切る83分間の物語には、役者の凄まじい演技も含め、圧倒されてしまった
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【挑戦】映画『燃えあがる女性記者たち』が描く、インドカースト最下位・ダリットの女性による報道
映画『燃えあがる女性記者たち』は、インドで「カースト外の不可触民」として扱われるダリットの女性たちが立ち上げた新聞社「カバル・ラハリヤ」を取り上げる。自身の境遇に抗って、辛い状況にいる人の声を届けたり権力者を糾弾したりする彼女たちの奮闘ぶりが、インドの民主主義を変革させるかもしれない
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【歴史】映画『シン・ちむどんどん』は、普天間基地移設問題に絡む辺野古埋め立てを”陽気に”追及する(…
映画『シン・ちむどんどん』は、映画『センキョナンデス』に続く「ダースレイダー・プチ鹿島による選挙戦リポート」第2弾である。今回のターゲットは沖縄知事選。そして本作においては、選挙戦の模様以上に、後半で取り上げられる「普天間基地の辺野古移設問題の掘り下げ」の方がより興味深かった
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【情熱】選挙のおもしろ候補者含め”全員取材”をマイルールにする畠山理仁の異常な日常を描く映画:『NO …
選挙に取り憑かれた男・畠山理仁を追うドキュメンタリー映画『NO 選挙, NO LIFE』は、「平均睡眠時間2時間」の生活を長年続ける”イカれた”ライターの「選挙愛」が滲み出る作品だ。「候補者全員を取材しなければ記事にはしない」という厳しすぎるマイルールと、彼が惹かれる「泡沫候補」たちが実に興味深い
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【問題】映画『国葬の日』が切り取る、安倍元首相の”独裁”が生んだ「政治への関心の無さ」(監督:大島新)
安倍元首相の国葬の1日を追ったドキュメンタリー映画『国葬の日』は、「国葬」をテーマにしながら、実は我々「国民」の方が深堀りされる作品だ。「安倍元首相の国葬」に対する、全国各地の様々な人たちの反応・価値観から、「『ソフトな独裁』を維持する”共犯者”なのではないか」という、我々自身の政治との向き合い方が問われているのである
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【ル・マン】ゲーマーが本物のカーレース出場!映画『グランツーリスモ』が描く衝撃的すぎる軌跡(ヤン…
映画『グランツーリスモ』は、「ゲーマーをレーサーにする」という、実際に行われた無謀すぎるプロジェクトを基にした作品だ。登場人物は全員イカれていると感じたが、物語としてはシンプルかつ王道で、誰もが先の展開を予想出来るだろう。しかしそれでも、圧倒的に面白かった、ちょっと凄まじすぎる映画だった
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【驚愕】映画『リアリティ』の衝撃。FBIによる、機密情報をリークした女性の尋問音源を完全再現(リアリ…
映画『リアリティ』は、恐らく過去類を見ないだろう構成の作品だ。なんと、「FBI捜査官が録音していた実際の音声データのやり取りを一言一句完全に再現した映画」なのである。「第2のスノーデン」とも評される”普通の女性”は、一体何故、国家に反旗を翻す”反逆者”になったのだろうか?
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【天才】映画『笑いのカイブツ』のモデル「伝説のハガキ職人ツチヤタカユキ」の狂気に共感させられた
『「伝説のハガキ職人」として知られるツチヤタカユキの自伝的小説を基にした映画『笑いのカイブツ』は、凄まじい狂気に彩られた作品だった。「お笑い」にすべてを捧げ、「お笑い」以外はどうでもいいと考えているツチヤタカユキが、「コミュ力」や「人間関係」で躓かされる”理不尽”な世の中に、色々と考えさせられる
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【抵抗】映画『熊は、いない』は、映画製作を禁じられた映画監督ジャファル・パナヒの執念の結晶だ
映画『熊は、いない』は、「イラン当局から映画製作を20年間も禁じられながら、その後も作品を生み出し続けるジャファル・パナヒ監督」の手によるもので、彼は本作公開後に収監させられてしまった。パナヒ監督が「本人役」として出演する、「ドキュメンタリーとフィクションのあわい」を縫うような異様な作品だ
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【実話】英国王室衝撃!映画『ロスト・キング』が描く、一般人がリチャード3世の遺骨を発見した話(主演…
500年前に亡くなった王・リチャード3世の遺骨を、一介の会社員女性が発見した。映画『ロスト・キング』は、そんな実話を基にした凄まじい物語である。「リチャード3世の悪評を覆したい!」という動機だけで遺骨探しに邁進する「最強の推し活」は、最終的に英国王室までをも動かした!
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【絶望】安倍首相へのヤジが”排除”された衝撃の事件から、日本の民主主義の危機を考える:映画『ヤジと…
映画『ヤジと民主主義 劇場拡大版』が映し出すのは、「政治家にヤジを飛ばしただけで国家権力に制止させられた個人」を巡る凄まじい現実だ。「表現の自由」を威圧的に抑えつけようとする国家の横暴は、まさに「民主主義」の危機を象徴していると言えるだろう。全国民が知るべき、とんでもない事件である
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【実話】映画『月』(石井裕也)は、障害者施設での虐待事件から「見て見ぬふりする社会」を抉る(出演…
実際に起こった障害者施設殺傷事件を基にした映画『月』(石井裕也)は、観客を作中世界に引きずり込み、「これはお前たちの物語だぞ」と刃を突きつける圧巻の作品だ。「意思疎通が不可能なら殺していい」という主張には誰もが反対するはずだが、しかしその態度は、ブーメランのように私たちに戻ってくることになる
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【現実】我々が食べてる魚は奴隷船が獲ったもの?映画『ゴースト・フリート』が描く驚くべき漁業の問題
私たちは、「奴隷」が獲った魚を食べているのかもしれない。映画『ゴースト・フリート』が描くのは、「拉致され、数十年も遠洋船上に隔離されながら漁をさせられている奴隷」の存在だ。本作は、その信じがたい現実に挑む女性活動家を追うドキュメンタリー映画であり、まさに世界が関心を持つべき問題だと思う
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【狂気】映画『ニューオーダー』の衝撃。法という秩序を混沌で駆逐する”悪”に圧倒されっ放しの86分
映画『ニューオーダー』は、理解不能でノンストップな展開に誘われる問題作だ。「貧富の差」や「法の支配」など「現実に存在する秩序」がひっくり返され、対極に振り切った「新秩序」に乗っ取られた世界をリアルに描き出すことで、私たちが今進んでいる道筋に警鐘を鳴らす作品になっている
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【狂気】入管の収容所を隠し撮りした映画『牛久』は、日本の難民受け入れ問題を抉るドキュメンタリー
映画『牛久』は、記録装置の持ち込みが一切禁じられている入管の収容施設に無許可でカメラを持ち込み、そこに収容されている難民申請者の声を隠し撮りした映像で構成された作品だ。日本という国家が、国際標準と照らしていかに酷い振る舞いをしているのかが理解できる衝撃作である
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【現実】映画『私のはなし 部落のはなし』で初めて同和・部落問題を考えた。差別はいかに生まれ、続くのか
私はずっと、「部落差別なんてものが存在する意味が分からない」と感じてきたが、映画『私のはなし 部落のはなし』を観てようやく、「どうしてそんな差別が存在し得るのか」という歴史が何となく理解できた。非常に複雑で解決の難しい問題だが、まずは多くの人が正しく理解することが必要だと言えるだろう
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【狂気】ホロコーストはなぜ起きた?映画『ヒトラーのための虐殺会議』が描くヴァンゼー会議の真実
映画『ヒトラーのための虐殺会議』は、ホロコーストの計画について話し合われた「ヴァンゼー会議」を描き出す作品だ。唯一1部だけ残った議事録を基に作られた本作は、「ユダヤ人虐殺」をイベントの準備でもしているかのように「理性的」に計画する様を映し出す。その「狂気」に驚かされてしまった。
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香港の民主化運動の陰で、自殺者を救出しようと立ち上がったボランティア捜索隊が人知れず存在していた。映画『少年たちの時代革命』はそんな実話を基にしており、若者の自殺が急増した香港に様々な葛藤を抱えながら暮らし続ける若者たちのリアルが切り取られる作品だ
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映画『街は誰のもの?』は、タイトルの通り「街(公共)は誰のものなのか?」を問う作品だ。そしてそのテーマの1つが、無許可で街中に絵を描く「グラフィティ」であることもまた面白い。想像もしなかった問いや価値観に直面させられる、とても興味深い作品である
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【驚愕】ベリングキャットの調査報道がプーチンを追い詰める。映画『ナワリヌイ』が示す暗殺未遂の真実
弁護士であり、登録者数640万人を超えるYouTuberでもあるアレクセイ・ナワリヌイは、プーチンに対抗して大統領選挙に出馬しようとしたせいで暗殺されかかった。その実行犯を特定する調査をベリングキャットと共に行った記録映画『ナワリヌイ』は、現実とは思えないあまりの衝撃に満ちている
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映画『これは君の闘争だ』で描かれるのは、厳しい状況に置かれた貧困層の学生たちによる公権力との闘いだ。「貧困層ばかりが通う」とされる公立校が大幅に再編されることを知った学生が高校を占拠して立て籠もる決断に至った背景を、ドキュメンタリー映画とは思えないナレーションで描く異色作
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驚きの教育方針を有する私立小学校「きのくに子どもの村学園」に密着する映画『夢見る小学校』と、「日本の教育にはほとんどルールが無い」ことを示す特徴的な公立校を取り上げる映画『夢見る公立校長先生』を観ると、教育に対する印象が変わる。「改革を妨げる保護者」にならないためにも観るべき作品だ
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田原総一朗が元総理・小泉純一郎にタブー無しで斬り込む映画『放送不可能。「原発、全部ウソだった」』は、「原発推進派だった自分は間違っていたし、騙されていた」と語る小泉純一郎の姿勢が印象的だった。脱原発に舵を切った小泉純一郎が、原発政策のウソに斬り込み、再生可能エネルギーの未来を語る
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【信念】映画『ハマのドン』の主人公、横浜港の顔役・藤木幸夫は、91歳ながら「伝わる言葉」を操る
横浜港を取り仕切る藤木幸夫を追うドキュメンタリー映画『ハマのドン』は、盟友・菅義偉と対立してでもIR進出を防ごうとする91歳の決意が映し出される作品だ。高齢かつほとんど政治家のような立ち位置でありながら、「伝わる言葉」を発する非常に稀有な人物であり、とても興味深かった
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【天才】映画『Winny』(松本優作監督)で知った、金子勇の凄さと著作権法侵害事件の真相(ビットコイン…
稀代の天才プログラマー・金子勇が著作権法違反で逮捕・起訴された実話を描き出す映画『Winny』は、「警察の凄まじい横暴」「不用意な天才と、テック系知識に明るい弁護士のタッグ」「Winnyが明らかにしたとんでもない真実」など、見どころは多い。「金子勇=サトシ・ナカモト」説についても触れる
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東大中退ラッパー・ダースレイダーと新聞14紙購読の時事芸人・プチ鹿島が、選挙戦を縦横無尽に駆け回る様を映し出す映画『劇場版 センキョナンデス』は、なかなか関わろうとは思えない「選挙」の捉え方が変わる作品だ。「フェスのように選挙を楽しめばいい」というスタンスが明快な爆笑作
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【狂気?】オウム真理教を内部から映す映画『A』(森達也監督)は、ドキュメンタリー映画史に残る衝撃作だ
ドキュメンタリー映画の傑作『A』(森達也)をようやく観られた。「オウム真理教は絶対悪だ」というメディアの報道が凄まじい中、オウム真理教をその内部からフラットに映し出した特異な作品は、公開当時は特に凄まじい衝撃をもたらしただろう。私たちの「当たり前」が解体されていく斬新な一作
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2011年に韓国で実際に起こった「加湿器殺菌剤による殺人事件」をモデルにした映画『空気殺人』は、金儲け主義の醜悪さが詰まった作品だ。国がその安全を保証し、17年間も販売され続けた国民的ブランドは、「水俣病」にも匹敵する凄まじい健康被害をもたらした
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「#MeToo」運動のきっかけとなった、ハリウッドの絶対権力者ハーヴェイ・ワインスタインを告発するニューヨーク・タイムズの記事。その取材を担った2人の女性記者の奮闘を描く映画『SHE SAID その名を暴け』は、ジャニー喜多川の性加害問題で揺れる今、絶対に観るべき映画だと思う
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【純真】ゲイが犯罪だった時代が舞台の映画『大いなる自由』は、刑務所内での極深な人間ドラマを描く
男性同士の恋愛が犯罪であり、ゲイの男性が刑法175条を理由に逮捕されてしまう時代のドイツを描いた映画『大いなる自由』は、確かに同性愛の物語なのだが、実はそこに本質はない。物語の本質は、まさにタイトルにある通り「自由」であり、ラストシーンで突きつけられるその深い問いかけには衝撃を受けるだろう
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「フランスに最も愛された政治家」と評されるシモーヌ・ヴェイユ。映画『シモーヌ』は、そんな彼女が強制収容所を生き延び、後に旧弊な社会を変革したその凄まじい功績を描き出す作品だ。「強制収容所からの生還が失敗に思える」とさえ感じたという戦後のフランスの中で、彼女はいかに革新的な歩みを続けたのか
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【誠実】映画『なぜ君は総理大臣になれないのか』で長期密着した政治家・小川淳也の情熱と信念が凄まじい
政治家・小川淳也に17年間も長期密着した映画『なぜ君は総理大臣になれないのか』は、誠実であるが故に大成できない1人の悩める政治家のありのままが描かれる。サラリーマン家庭から政治家を目指し、未来の日本を健全にするために奮闘する男の信念と情熱が詰まった1本
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誰もが知るあの世界的大企業をモデルに据えた『小説・巨大自動車企業トヨトミの野望』は、マンガみたいなキャラクターたちが繰り広げるマンガみたいな物語だが、実話をベースにしているという。実在の人物がモデルとされる武田剛平のあり得ない下剋上と、社長就任後の世界戦略にはとにかく驚かされる
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まったく何もないところからサッカーのクラブチーム「大分トリニータ」を立ち上げ、「県リーグから出発してチャンピオンになる」というJリーグ史上初の快挙を成し遂げた天才・溝畑宏を描く『爆走社長の天国と地獄』から、「正しく評価することの難しさ」について考える
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日本の「難民認定率」が他の先進国と比べて異常に低いことは知っていた。しかし、日本の「難民」を取り巻く実状がこれほど酷いものだとはまったく知らなかった。日本で育った2人のクルド人難民に焦点を当てる映画『東京クルド』から、日本に住む「難民」の現実を知る
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【危険】遺伝子組換え作物の問題点と、「食の安全」を守るために我々ができることを正しく理解しよう:…
映画『食の安全を守る人々』では、世界的バイオ企業「モンサント社」が作る除草剤「ラウンドアップ」の問題を中心に、「食の安全」の現状が映し出される。遺伝子組み換え作物や輸入作物の残留農薬など、我々が口にしているものの「実態」を理解しよう
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【危機】シードバンクを設立し世界の農業を変革した伝説の植物学者・スコウマンの生涯と作物の多様性:…
グローバル化した世界で「農業」がどんなリスクを負うのかを正しく予測し、その対策として「ジーンバンク」を設立した伝説の植物学者スコウマンの生涯を描く『地球最後の日のための種子』から、我々がいかに脆弱な世界に生きているのか、そして「世界の食」がどう守られているのかを知る
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Chim↑Pomというアーティストについてさして詳しいことを知らずに観に行った、森美術館の「Chim↑Pom展:ハッピースプリング」に、思考をドバドバと刺激されまくったので、Chim↑Pomが特集された「美術手帖」も慌てて買い、Chim↑Pomについてメッチャ考えてみた
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【実話】権力の濫用を監視するマスコミが「教会の暗部」を暴く映画『スポットライト』が現代社会を斬る
地方紙である「ボストン・グローブ紙」は、数多くの神父が長年に渡り子どもに対して性的虐待を行い、その事実を教会全体で隠蔽していたという衝撃の事実を明らかにした。彼らの奮闘の実話を映画化した『スポットライト』から、「権力の監視」の重要性を改めて理解する
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【実話】映画『イミテーションゲーム』が描くエニグマ解読のドラマと悲劇、天才チューリングの不遇の死
映画『イミテーションゲーム』が描く衝撃の実話。「解読不可能」とまで言われた最強の暗号機エニグマを打ち破ったのはなんと、コンピューターの基本原理を生み出した天才数学者アラン・チューリングだった。暗号解読を実現させた驚きのプロセスと、1400万人以上を救ったとされながら偏見により自殺した不遇の人生を知る
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【誤解】世界的大ベストセラー『ファクトフルネス』の要約。我々は「嘘の情報」を信じ込みやすい
世界の現状に関する13の質問に対して、ほとんどの人が同じ解答をする。最初の12問は不正解で、最後の1問だけ正答するのだ。世界的大ベストセラー『ファクトフルネス』から、「誤った世界の捉え方」を認識し、情報を受け取る際の「思い込み」を払拭する。「嘘の情報」に踊らされないために読んでおくべき1冊だ
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「生理は語ることすらタブー」という、21世紀とは思えない偏見が残るインドで、灰や汚れた布を使って経血を処理する妻のために「安価な生理用ナプキン」の開発に挑んだ実在の人物をモデルにした映画『パッドマン 5億人の女性を救った男』から、「どう生きたいか」を考える
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【感涙】衆議院議員・小川淳也の選挙戦に密着する映画から、「誠実さ」と「民主主義のあり方」を考える…
『衆議院議員・小川淳也が小選挙区で平井卓也と争う選挙戦を捉えた映画『香川1区』は、政治家とは思えない「誠実さ」を放つ”異端の議員”が、理想とする民主主義の実現のために徒手空拳で闘う様を描く。選挙のドキュメンタリー映画でこれほど号泣するとは自分でも信じられない
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なんて面白いんだろうか。哲学・科学を初心者にも分かりやすく伝える飲茶氏による『正義の教室』は、哲学書でありながら、3人の女子高生が登場する小説でもある。「直観主義」「功利主義」「自由主義」という「正義論」の主張を、「高校の問題について議論する生徒会の話し合い」から学ぶ
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コンパクトシティの先進地域・富山市や、起業家精神が醸成される鯖江市など、富山・福井の「変革」から日本の未来を照射する『福井モデル 未来は地方から始まる』は、決して「地方改革」だけの内容ではない。「危機意識の共有」があらゆる問題解決に重要だと認識できる1冊
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NSA(アメリカ国家安全保障局)の最高機密にまでアクセスできたエドワード・スノーデンは、その機密情報を持ち出し内部告発を行った。「アメリカは世界中の通信を傍受している」と。『シチズンフォー』と『スノーデン』の2作品から、彼の告発内容とその葛藤を知る
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「相談に乗る」とは、「自分の意見を言う行為」ではない。相談者が”本当に悩んでいること”を的確に捉えて、「回答を与えるべき問いは何か?」を見抜くことが本質だ。『哲学の先生と人生の話をしよう』から、「相談をすること/受けること」について考える
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過疎地域を「日本の未来の課題の最前線」と捉え、島根県の離島である「海士町」に移住した2人の若者の『僕たちは島で、未来を見ることにした』から、「これからの未来をどう生きたいか」で仕事を捉える思考と、「持続可能な社会」の実現のためのチャレンジを知る
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「ホームレスは怠けている」という見方は誤りだと思うし、「働かないことが悪」だとも私には思えない。振付師・アオキ裕キ主催のホームレスのダンスチームを追う映画『ダンシングホームレス』から、社会のレールを外れても許容される社会の在り方を希求する
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私個人は、「ビジョンの達成」のためなら「ソフトな独裁」を許容する。しかし今の日本は、そもそも「ビジョン」などなく、「ソフトな独裁状態」だけが続いていると感じた。映画『新聞記者』をベースに、私たちがどれだけ絶望的な国に生きているのかを理解する
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「ルールは守らなければならない」というのは大前提だが、常に例外は存在する。どれほど重度の自閉症患者でも断らない無許可の施設で、情熱を持って問題に対処する主人公を描く映画『スペシャルズ!』から、「ルールのあるべき姿」を考える
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我々の日常生活は、原発が生み出す電気によって成り立っているが、核廃棄物の最終処分場は世界中で未だにどの国も決められていないのが現状だ。映画『地球で最も安全な場所を探して』をベースに、「核のゴミ」の問題の歴史と、それに立ち向かう人々の奮闘を知る
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高校の美術教師からアーティストとして活動するようになった著者は、教育の現場に「余白(スキマ)」が減っていると指摘する。『飛び立つスキマの設計学』をベースに、子どもたちが置かれている現状と、教育が成すべき役割について確認する。
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1969年5月13日、三島由紀夫と1000人の東大全共闘の討論が行われた。TBSだけが撮影していたフィルムを元に構成された映画「三島由紀夫vs東大全共闘」は、知的興奮に満ち溢れている。切腹の一年半前の討論から、三島由紀夫が考えていたことと、そのスタンスを学ぶ
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AIが台頭する未来で生き残るのは難しい……。落合陽一『働き方5.0~これからの世界をつくる仲間たちへ~』はそう思わされる一冊で、本書は正直、未来を前向きに諦めるために読んでもいい。未来を担う若者に何を教え、どう教育すべきかの参考にもなる一冊。
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一昔前、我々は「正しい情報を欲していた」はずだ。しかしいつの間にか世の中は変わった。「欲しい情報を正しいと思う」ようになったのだ。この激変は、トランプ元大統領の台頭で一層明確になった。『ニューヨーク・タイムズを守った男』から、情報の受け取り方を問う
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「オウム真理教は特別だ、という理由で作られた”例外”が、いつの間にか社会の”前提”になっている」これが、森達也『A3』の主張の要点だ。異常な状態で続けられた麻原彰晃の裁判を傍聴したことをきっかけに、社会の”異様な”変質の正体を理解する。
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オウム真理教の内部に潜入した、森達也のドキュメンタリー映画『A』は衝撃を与えた。しかしそれは、宗教団体ではなく、社会の方を切り取った作品だった。思考することを止めた社会の加虐性と、客観的な事実など切り取れないという現実について書く
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生きることがしんどくて、自殺してしまいたくなる気持ちを、私はとても理解できます。しかし世の中的には、「死にたい」と口にすることはなかなか憚られるでしょう。「自殺を決して悪いと思わない」という著者が、「死」をもっと気楽に話せるようにと贈る、「笑える自殺本」
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私は、安楽死が合法化されてほしいと思っている。そのためには、人間には「死ぬ権利」があると合意されなければならないだろう。安楽死は時折話題になるが、なかなか議論が深まらない。『安楽死を遂げた日本人』をベースに、安楽死の現状を理解する
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多様性・ダイバーシティ【本・映画の感想】 | ルシルナ
私は、子どもの頃から周囲と馴染めなかったり、当たり前の感覚に違和感を覚えることが多かったこともあり、ダイバーシティが社会環境に実装されることを常に望んでいます。…
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