目次
はじめに
この記事で取り上げる映画

「奇麗な、悪」公式HP
この映画をガイドにしながら記事を書いていきます
今どこで観れるのか?
公式HPの劇場情報をご覧ください
この記事の3つの要点
- 冒頭とラスト以外は「誰もいない廃院で瀧内公美がただ喋り続ける」だけの映画であり、ただそれだけで78分の物語が完璧に成立している
- 役名さえ分からない瀧内公美の存在感がとにかく圧倒的で、薄ら笑いや変化に富んだ喋り方も含め、狂気が爆発していた
- 主人公が語る話の内容も興味深いし、さらに言えば、「その話は嘘かもしれない」と感じさせる点もまた異様だったなと思う
予告編を観た時から「絶対に観る」と決めていた映画で、かなり高かった期待値をさらに超える素晴らしい作品だった
自己紹介記事
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どんな人間がこの記事を書いているのかは、上の自己紹介記事をご覧ください
記事中の引用は、映画館で取ったメモを参考にしているので、正確なものではありません
映画『奇麗な、悪』には圧倒させられた!瀧内公美の一人語りのみで構成される作品で、その圧巻の存在感には驚かされてしまうだろう
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私は、本作を映画館で予告編を観た時から鑑賞しようと決めていた。短い映像だけからも、異様さがビシバシと伝わってきたからだ。なので、かなり期待して観たのだが、その期待を上回るぐらい、個人的には相当惹きつけられる作品だった。
映画『奇麗な、悪』の内容紹介
本作には、瀧内公美しか出てこない。最初から最後まで、彼女がたった1人で喋り続ける映画である。ナレーションもないし、作中で彼女を呼ぶ者もいないので、彼女の役名さえ最後まで分からない。物語のほとんどはある古い洋館の中で展開されるのだが、最初と最後だけ、その洋館へ向かう姿、そして洋館から帰る姿が映し出される。
冒頭、彼女は都会の人混みの中を歩き、その後墓地の横の坂を上り、そのまま洋館へと向かっていく。入口には外から鎖のようなものが掛けられ入れなくなっているのだが、勝手知ったるといった感じで別の入口から中へと入っていった。
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薄暗い室内には誰もいない。時折電気が切れてしまう照明が当たり、階段の踊り場に架けられた絵画の上で回転しているのだろうシーリングファンの影がチラチラと動いている。ローテーブルの上には1体のピエロ人形。スイッチを押すと口笛を奏でる仕様のようで、本作では随所でその印象的な口笛の音色が響いていた。
机の上には「閉院のお知らせ」と書かれた紙が書かれている。この洋館はどうやらかつて精神科医院だったようで、そして、何らかの事情で既に閉院しているらしい。
彼女は、やはり勝手知ったるといった感じで椅子に座った。そして、彼女の正面に医師がいるかの如く滔々と喋り始める。独り言ではない。「聞いていますか、先生?」「こんな話、先生には退屈ですよね、きっと」などと、「目の前にいる誰かに話をしている」という雰囲気を醸し出しながら話すのだ。何なら、相手の返答が聞こえているかのような間を取ることさえあった。彼女は明確に「会話」をしているのだ。
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そしてそれはどうやら「治療の一環」のようである。少なくとも彼女はそのように認識しているみたいだ。かつてこの病院が開いていた時には、実際に医師に向かって話をしていたのだろう。そして、閉院し医師がいなくなった病院で、彼女は今も、いないはずの医師に向かって話しかけているのである。
さて、本作の冒頭では次のような文章が表示された。
すべて話してください。
治療になりません。
全てを、です。
正確にメモ出来たと思うので、最初が「すべて」で最後が「全て」であることも間違いない。これが誰の発言(あるいは「何の記述」)なのか明確には示されないが、普通に考えれば、彼女を担当していた医師が発した言葉なのだろう。「すべて」が「全て」になっていることによって念押し感が強まり、「治療の時から彼女がまともに話をしていなかった」みたいなニュアンスが伝わってくるような感じもする。
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彼女は口を開き始めてすぐに、次のようなことを言っていた。
こんな風に頭に浮かんだことを喋ったことなんて、これまでないんですよ。でも、これが治療になるんですよね?
実際に医師からそんな風に言われたことがあるのか、あるいは医師のいなくなった廃院で自身の存在を成立させるための虚言なのか、その辺りのことはよく分からない。ただ彼女はとにかく、「一人語りを続けることが治療になる」という認識を持って誰もいない廃院で孤独に喋り続けているのだ。
こうして観客は、何も状況が分からないまま、ただひたすらに彼女の独白を聞き続けることになる……。
瀧内公美の演技に圧倒させられた
本作においてはまず何よりも、「一人語り」であるという点が圧倒的に異様である。そしてさらに、成立させるのが難しい状況だとも言えるだろう。もちろん、舞台演劇であれば「一人語り(一人芝居)」もあったりする。ただ、「観客が映画に求めること」と「観客が舞台演劇に求めること」はやはり違うわけで(別にどちらが良いという話をしているわけではない)、「『観客が映画に求めること』を一人語りで満たす」というのは、かなりのハードルではないかと思う。
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しかし本作は、瀧内公美の凄まじい存在感によって、映像作品として完璧に成立していると感じた。ちょっとゾクゾクするほどに圧倒させられてしまったのだ。
役名が分からない(というか存在しないのだと思う)ので、この記事ではこれ以降、主人公のことをそのまま瀧内公美と呼ぶことにするが、彼女は、時々ひゅっと表情が変質する以外は、ずっとうっすらと笑っている。しかし彼女の口から語られる話は本来、とても笑って話せるようなものではない。そしてだからこそ、その異様さが際立っていると言えるのではないかと思う。
何せ始まりが、「6歳ぐらいの頃、カーテンに火をつけて家を全焼させ、両親を死なせてしまった」である。ちょっと壮絶過ぎる話だろう。ただ彼女の話しぶりからすると、既にこの話は医師に何度も語っているようで、「『すべて話して』と言われたから改めて説明しているだけ」みたいな雰囲気を醸し出していた。
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そして瀧内公美はそれ以降も、自身のなかなかに壮絶な人生を語り続けるのだが、その間もずっとうっすら笑っているのである。その表情からは、まるで「愛しい存在について語っている」みたいな感じさえした。そして凄かったのが、それが「虚勢」には見えなかったことだ。「悲しみを押し殺すみたいに貼り付けた笑顔」でも、「楽しんでいることを他者に伝えるための笑顔」でもなく、「こんな風にすべてを洗いざらい話すのは実に気持ちいいものだな」とでも言わんばかりの笑顔だったのである。
その笑顔は「自分が語っている話の”異様さ”に気づいていない」という印象さえ与えるが、しかしその認識は正しくない。というのも、彼女の話には時折、「『典型的だ』って思いますか? でも、大体のことが典型的じゃないですか」「分かりますよ。先生は『どうして警察に相談しなかったんだ?』みたいに感じているのでしょう」みたいな「客観性」が入り込むからだ。瀧内公美はきちんと、「自分の話がどう受け取られ得るか」という視点を持ちながら話をしているのである。つまり、「自分の話の”異様さ”に気づいている」ということだろう。そしてその上で、ずっとうっすら笑みを浮かべながら話し続けているのだ。
そのような雰囲気が実に狂気的で、惹きつけられてしまった。そして本作は、そんな狂気に観客が引き寄せられるようにして、78分間の一人語りが成立しているのだと思う。
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また表情だけではなく、瀧内公美の喋り方にも圧倒させられた。抑揚が突然なくなったり、言い淀んだり、読点を無視するように連続的に話したりと、喋りの緩急も絶妙だったのだ。「主人公が狂気的な存在である」という点は確かに、本作を成立させる上で1つの大きな要素ではあるが、しかしそれだけで78分間もの「一人語り」を成立させるのはなかなか難しいだろう。そこにはやはり、表情や喋り方を含めた瀧内公美の存在感が大きく関係しているわけで、まずは何よりも彼女の演技に圧倒させられたなという感じだった。
主人公が語っていた話の内容と、「『このまま終わってくれ』と感じていたこと」について
では、瀧内公美がどんな話をしていたのかにも触れておこう。とにかく、ずっと自分の人生の話をしていた。彼女は、火をつけ両親を死なせた後、施設に入れられたが、そこでいじめに遭う。高校は中退、そのまま働き始めるも、付き合っていた彼氏が警察に捕まり、その後結婚・出産を経験した。しかし夫や義母との関係が悪化し、結局そのまま離婚。クラブで働き始めるもなかなか上手くいかず、身体を売り始める。そして、その客として出会ったTやSと関わる中で、何故か、元夫のところに置いてきた娘との関わりが再開することになり……というような人生だったようだ。
彼女が語る人生の話は実に興味深い。しかし本作においてはそもそも、「彼女が話していることは真実なのか?」という疑問がついて回ることになる。彼女がなぜ精神科医院に通っていたのかは分からない。ただ、「誰もいない廃院で喋り続けている」というだけで十分何らかの精神疾患を疑えるし、であれば「虚言癖」みたいなものを持っていてもおかしくはないと思う。また、本作には瀧内公美以外の人物は出てこないのだから、彼女の話が嘘だとしてもそれを正す人間はいない。
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さらに言えば、どうも彼女の口ぶりからすると、「『嘘をついている』という自覚を持ちながら話している」ようなのである。まあこの辺りの話になってくるともはや何が何だか分からないというか、「『嘘をついている』という発言が嘘かもしれない」なんて風にも受け取れるわけで何とも言えない。瀧内公美の発する雰囲気からは、どんな可能性でもあり得るような気がしてしまう。
ただ、彼女の主張を素直に受け取る、つまり「瀧内公美は嘘をついている」と解釈する場合、彼女は「まったくのデタラメを淀みなく喋り続けている」ことになるわけで、その事実もまた「狂気」として観客に届くというわけだ。
このように、本作には「狂気」が盛り盛りに詰め込まれている。瀧内公美の振る舞いも、話の内容も、「嘘」を淀みなく喋り続けていることも、すべてが「狂気的」であり、その躊躇の無さに驚かされてしまう。「共感なんかクソ喰らえ」とでも言っているかのような作品であり、そのスタンスも私には好ましく感じられた。
さて話は変わるが、私はずっと、「頼むからこのまま終わってくれ」と感じながら本作を観ていたように思う。
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映画でも小説でも、「この物語、どうやって終わらせるつもりなんだろう?」みたいに感じる物語に出会うことがある。中には、「大風呂敷を広げてはみたものの上手く畳みきれなかった」みたいな、終わらせ方に成功しているとはとても言えない作品もあり、そういう作品に触れると残念な気持ちになってしまう。特に、斬新な人物描写や設定がある作品に対して「後は終わらせ方次第だぞ」みたいに思うことが多く、だから、「狂気」に満ちた本作に対しても同じように感じてもおかしくはなかった。
しかし私は、本作『奇麗な、悪』に対しては、「良い感じの終わらせ方とかどうでもいいから、このまま物語を閉じてくれ」と感じていたと思う。「どこにも着地しなくていいから、この狂気の余韻を保ったまま、ただスパッと物語を閉じてくれたらいい」みたいに感じていたというわけだ。そんな風に思いながら映画を観ることなどほとんどないので、自分でも意外な感覚だった。
そして、こう書いてしまうと若干ネタバレと受け取られるかもしれないが、私の願いは叶う。物語は「着地」などせずそのまま終わるのだ。そのような展開も、個人的にはとても好みだった。最初から最後まで、「説明」もしなけりゃ「共感」もさせないという徹底っぷりで、そのぶっ飛んだ感じが、本作においては凄く合っていたなと思う。
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さて、瀧内公美が喋り続ける部屋には「意味ありげなもの」が多数置かれているのだが、しかしそれらに意味があるのかは結局よく分からなかった。さらに、滔々と語り続ける自身の過去は単なる「騙り」に過ぎないかもしれないのだ。そんな風にして「空虚そのもの」みたいな室内に「『解釈』を拒絶する言葉」が積もっていき、その「透明な堆積」がスクリーンから飛び出して劇場を埋め尽くしては「息苦しさ」をもたらしている、みたいな感じがした。瀧内公美が喋れば喋るほど、どことなく「圧迫感」が強まり、スクリーンを隔てた遠い世界の物語が、私たちが生きている現実の世界を侵食してくるような異様さに満ち溢れていたなと思う。
凄い作品に出会ったものである。
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最後に
最後にいくつか余談に触れてこの記事を終えようと思う。
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まずは、冒頭とラストで瀧内公美が雑踏の中を真っ直ぐ歩くシーンについて。あくまでも私の体感だが、どちらも1分程度カメラを長回ししていた気がする。そして私には、このシーンがゲリラ的に撮影されているように見えたのである。つまり、エキストラを用意したのではなく、実際の人混みの中で撮影したのではないかというわけだ。というのも、ラストの方のシーンで、瀧内公美の脇を通り過ぎた女性が二度見する様子が映っていたからだ。エキストラだとしたらあり得ない動きじゃないだろうか。まあ、だから何だよという話ではあるのだが。
また、エンドロールに「企画協力:桃井かおり」と表記されており、「ん?」って感じだった。で、鑑賞後に調べて、「恐らくこういうことだろう」という状況が理解できたと思う。本作『奇麗な、悪』は、中村文則が書いた短編『火』をベースにしているのだが、同作は2016年に「監督・脚本・主演:桃井かおり」で『火 hee』というタイトルで映像化されているようなのだ。それで何か関わりがあったということなのだろう。「桃井かおりバージョン」も観てみたいものである。
さて最後に、本作の監督である奥山和由について少し触れておこう。彼については何も知らなかったのだが、「何となく見覚えのある名前だな」とも感じていた。私のその印象は半分ぐらい合っていたようだ。というのも彼は、映画『ぼくのお日さま』の監督・奥山大史と、映画『アット・ザ・ベンチ』の監督・奥山由之の父親なのである。私は、本作『奇麗な、悪』を含めたこの3作が凄く好きなのだが、まさかその監督が親族だとは思いもしなかった。凄い親子・兄弟だなと思う。ちなみに、奥山和由の父親は松竹の元社長なのだそうだ。凄まじい一家である。
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そんなわけで、このような外的情報も含めて驚かされてしまう作品だった。色んな意味で衝撃的だったが、やはり何よりも瀧内公美の一人語りは圧倒的である。是非観てほしい作品だ。
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一時期メディアを騒がせた、佐村河内守の「ゴースト問題」に、森達也が斬り込む。「耳は聴こえないのか?」「作曲はできるのか?」という疑惑を様々な角度から追及しつつ、森達也らしく「事実とは何か?」を問いかける『FAKE』から、「事実の捉え方」について考える
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自分以外は凡人、と考える主人公の少女はとてもイタい。しかし、世間の価値観と折り合わないなら、自分の美しい世界を守るために闘うしかない。中二病の少女が奮闘する『オーダーメイド殺人クラブ』をベースに、理解されない世界をどう生きるかについて考察する
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どう生きるべきか・どうしたらいい【本・映画の感想】 | ルシルナ
どんな人生を歩みたいか、多くの人が考えながら生きていると思います。私は自分自身も穏やかに、そして周囲の人や社会にとっても何か貢献できたらいいなと、思っています。…
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