目次
はじめに
この記事で取り上げる映画
出演:エイビイシイ保育園の皆さん, 出演:玉の子夜間保育園の皆さん, 出演:すいせん保育所の皆さん, 出演:エンジェル児童療育教室の皆さん, 出演:たいよう保育園の皆さん, 出演:魚住農園の皆さん, 監督:大宮浩一, プロデュース:片野仁志, プロデュース:木下繁貴, プロデュース:大宮浩一
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ポチップ
この映画をガイドにしながら記事を書いていきます
この記事の3つの要点
- 「子どもは家庭で育てなければならない」とか言ってる頭の堅い老人は早く退場してくれ
- 「子どもを育てることへの敬意」が失われてしまっている世の中
- 「認可保育園」が増えたら問題は解決する、わけでは決してない
子どもが好きで育てたいと思っているのに、環境がそれを許さずに諦めてしまう人が出ない社会になってほしい
自己紹介記事
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どんな人間がこの記事を書いているのかは、上の自己紹介記事をご覧ください
記事中の引用は、映画館で取ったメモを参考にしているので、正確なものではありません
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この映画では、新宿・北海道・沖縄・新潟など、都市部からそうではない地域まで様々な場所に存在する、「夜間保育も担う保育園」を取り上げている。『夜間保育園』で描かれる現実はまさに、「日本の子育ての難しさ」を如実に示しているのだろうし、こんな社会の中で誰が子どもを育てたいと思うだろうとさえ感じさせられた。
私自身は、結婚もしていないし、子どももいない。「子育て」にどんな形であれ関わったことはないので、この記事の中には、私自身の実感はほとんどないと言っていい。この映画を含め、見聞きしたことを元にあれこれ書いているにすぎないというわけだ。
そんな人間の意見が参考になるかどうかは分からないが、客観的な立場にいるからこそ見えることもあるだろうとは思っている。
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日本には子どもを育てにくい「空気」がある
子育てとは少し違うが、以前大学時代の友人から聞いて驚いた話があるので、まずそれを紹介したい。
この話を聞いたのはもう10年以上前なので、現在はどうか分からないが、その時彼女は「日本では無痛分娩があまり浸透していない」という話をしていた。海外では無痛分娩が主流だとも言っていたと思う。私は、日本で広まらない理由が気になって聞いてみたのだが、その答えがなかなか衝撃的だったことを覚えている。彼女曰く、「『子どもはお腹を痛めて産むべき』という幻想が強いから」とのことだった。
その友人の話が事実なのかどうか、私は知らない。しかしそれを聞いて私は、驚いたのと同時に納得してしまった。なるほど、日本ならそういうこともあり得そうだな、と。
この映画にも、「保育園に子どもを預けること」に関して、近い感覚の発言がいくつか出てきた。
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生まれたばっかりですぐに子どもを預けてしまうのは、罪悪感がありました。
やっぱり結構言われましたよ。子どもと一緒にいる時間が少なくなるのは可哀想だって、周りの人に。
無痛分娩の話と似ていると思わないだろうか。ここには、「子どものことを愛しているならずっと一緒にいたいと思うはず」「子どもは親の愛情を一身に受けて育たなければ可哀想」という価値観が見え隠れするだろう。誰かにそのような価値観を強要されているのだ。
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あまりにもくだらない。そのような価値観を抱くのは勝手だが、それを他人に押し付けて何になるのだろう。このような価値観が当然と考える人は、自分の発言にまったく疑問を感じないのだろうか。
だとしたら、私には信じがたい。
子育てに関する価値観の強制が、個人間のやり取りに留まるのであれば、まだマシと言えるかもしれない。しかし、問題の根はより深い。政治家も同じように考えているというのだ。本当かどうかは分からないが、日本の高齢男性は特に、自分が子育てを積極的にしたわけでもないだろうに「子どもは家庭で育てるべき」という価値観を強く持っているらしい。だから子育て全般に対する支援に積極的ではない、という話を聞いたことがある。
もし本当にそうなら、そんな政治家にはご退場願いたい。あんたらの幻想を守るために政治が存在するわけじゃない、と言ってやりたくなってしまう。
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「子どもが好きじゃないから保育園に預ける」みたいな親も多少はいるかもしれないが、普通は「どうしても保育園に預けざるを得ない現実」が存在するはずだ。この映画を観ていると、社会の歪みが弱い立場の人間を直撃している様が理解できるだろう。多くの親が、相当厳しい環境での子育てを強いられている。
苦労して子どもを育てているのだから、せめて気持ちよく保育園に預けられる「空気」にならないものかと、私は感じてしまうのだ。
「空気」という意味で言えばもう1つ、印象的な指摘があった。それは、この映画に登場する内閣官房統括官の、
子どもを育てるということへの敬意が薄くなっているように感じることがあります。
という発言に集約されるだろう。本当にそうだよなぁ、と感じる。
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私は、子どもを見て可愛いと思うことがないし、自分の子どもがほしいと思ったこともない。ただ、子育てしている人は凄いと思うし、頑張ってほしいと応援している。だから、子どもやその親がなにか”やってしまった”としてもイライラすることはほとんどない。たまに、あまりに常識がなさすぎると感じる親に出くわすことがあり、その際に少しムカッとするぐらいだ。
しかし世の中には、「電車にベビーカーで来るな」「泣いてる子どもがうるさい」という主張や視線が多く存在する。子どもを育てることへの敬意があれば、こんなギスギスした雰囲気にはならないはずだ。
じゃあ今より一昔前の方が良かったのかと言えばもちろんそんなことはないだろう。日本に限らず「子どもは労働力」と考えられてきた時代が長かったわけで、現在の方がきっと、子どもにとって安全・安心な世の中に変わっているはずだ。
しかしだとしても、「子どもを育てている人」に対する社会の目が、ちょっと優しくないと感じてしまうことは多い。本当に大変な世の中だと感じる。
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「ベビーホテル(無認可保育園)」と「認可保育園」
この映画では「認可保育園」に対して、無認可で子どもを預かる場所は「ベビーホテル」と呼ばれる。この映画で示されていたデータによれば(確か2016年のものだったと思う)、「ベビーホテル」は全国に1749ヶ所あるのに対し、「認可夜間保育園」は全国にたった80ヶ所しか存在しないという。
明らかに「夜間保育を行う認可保育園」の数が足りないと分かるだろう。
「ベビーホテル」は無認可であり、当然補助金は出ない。その分、「認可保育園」と比べれば料金やサービスなどに差が出てしまうだろう。しかし、「認可夜間保育園」の数が足りないのだから、夜間に子どもを預けたければ「ベビーホテル」を利用するしかない。
映画に出てくる「ベビーホテル」のスタッフによると、キャバクラで働いている人は「認可夜間保育園」の審査に落ちてしまうそうだ。意味が分からない。夜働かなければならない仕事なのだから、最も「夜間保育」の必要性があると認められる人のはずだろう。
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もちろん、全国に80ヶ所しか存在しないのだから、そもそもの倍率が高いことも要因だとは思う。「キャバクラで働いている」という理由”だけ”で落ちているわけではないかもしれない。しかし、まったく無関係とも言い切れないだろう。
じゃあ「認可保育園」を増やせば解決するのかといえばそうではない。映画で語られていたことではないのだが、「認可保育園に”落ちたい”母親が一定数存在する」という話をテレビで知って驚かされたことがある。一部の企業には、認可保育園に応募して審査に落ちると育休を伸ばせる制度があるようなのだ。
つまり、「認可保育園に入りたいわけではないのだが、”落ちた”という証明がほしいがために応募する親」が一定数存在し、そのせいでさらに「認可保育園」の倍率がさらに上がってしまう、という現実も存在するのである。なかなか捻れた現実だ
また、詳しく知っているわけではないが、「国からの認可」を得るには恐らく、相当厳しい条件があるのだろう。志高く保育の世界に足を踏み入れたとしても、「認可」の壁があまりに高くて諦めてしまう人もいるのではないだろうか。
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また、待遇の問題もある。岸田総理が保育士や介護士の賃上げの言及していたが、基本的にはキツい割に給料がさほどもらえない仕事だろう。そのため、やる気のある優秀な人間をなかなか確保しにくいことにもなってしまう。
「認可保育園」への支援だけでは現実的な問題は解決できないと言わざるを得ないだろう。
そしてこのことは、子どもを育てる人だけの問題ではない。
内閣府のデータによれば、2010年時点での日本の「生産年齢人口」は約70万人、「0歳~14歳の人口」が約17万人であるのに対して、2060年には、「生産年齢人口」は約38万人、「0歳~14歳の人口」が約8万人と、共に半減すると予測されている。なかなか衝撃的な推計だろう。
日本の人口は減少していくことが明らかになっているし、人口減少は様々な問題の引き金にもなる。国はそのことを明確に認識しているはずだ。しかし少子化対策にこれといった手を打っていないように見える。
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以前テレビで、「フランスでさえ出生率が減少している」と指摘されているのを見た。フランスはかなり以前から少子化対策を行っていることで知られており、例えば「婚外子」に対しても法的な整備をきちんと行ったことで、生まれてくる子供の半分が婚外子という状況になっているほどだ。しかしそんな「少子化対策に成功した国」と言われるフランスでさえ、出生率が減少に転じているのである。
今の日本の状況では、人口減少の加速は避けられないだろう。つまり、子育ての問題は我々の問題でもある、ということだ。
「保育園」は、子どもにとって良い環境だと私は思う
ここからは、映画の内容とは直接関係のない、私の個人的な意見を書いていこうと思う。
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私は、「子どもを育てる」上で「保育園」は必要だと考えている。それは、共働き夫婦やシングルマザーにとって必要、という話ではなく、すべての子どもにとって「保育園」という環境は大事なのではないか、という意味だ。
何故なら今の時代は、「他者と関わる機会」がなかなかないと思うからである。
かつては、3世代同居の生活で祖父母らとも日常的に接点があったり、友だちともまた少し違う「隣近所」との関係性みたいなものもあっただろう。そういう世の中では、自然と「他者」と関わる機会が生まれるので、「保育園」のような環境は無くても問題はないと思う。
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しかし今の時代は、なかなか「他者」と関わる機会を持つことが難しい。それはコロナ禍でさらに加速したと言っていいだろう。
だからこそ、「他者と関わる場」としての「保育園」という存在は、非常に重要なのではないかと私は思う。
映画の中にも、そのような発言をしていた母親が登場する。
(農家なので)周りに同世代の子どもがなかなかいない。いれば保育園に預ける必要はないかなって思うんですけど、やっぱり他の子どもと触れ合う時間も大事だと思うので。
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遅くまで子どもを預けるなんて可哀想、ってやっぱり言われましたよ。でも、子どもの側から見たら、ここが生活の一部だし、友達もいるし、いつも楽しそうにしてる。卒園してからも、ここで働きたいなんて言うぐらいですから。
もちろん、すべての保育園が「良い環境」とは限らない。この映画で取り上げられている保育園は「密着されても問題ない」と判断しているわけで、自分たちの保育園に自信があるのだと思う。「自信があること」と「良い保育園であること」は関係ないのだが、「見られても大丈夫と判断している保育園」には大きな問題は無さそうだと感じるだろう。そして、そういう「良い環境」の保育園だからこそ、子どもたちも楽しく過ごせている可能性もある。
世の中には「劣悪な保育園」も存在するだろうし、だから「どんな保育園でも良い」と考えているわけではない。ただ、子どもにも「他者と関わる場」が与えられるべきだと思うし、現状でそれは「保育園」ぐらいしかないだろう。だから私たちは、「他者と関わる場」でもある「保育園」を、より健全な場に保てるように支援を考える必要があるはずだ。
私は「子育て」に関わったことがないので、「子育て」に何か意見できるような立場ではない。しかし、そういう私のような人間も含めて、「保育園」や「子どもを育てる環境」に対して意識を向け、親・保育士の負担を減らせる社会になるといいのにな、と思う。
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出演:エイビイシイ保育園の皆さん, 出演:玉の子夜間保育園の皆さん, 出演:すいせん保育所の皆さん, 出演:エンジェル児童療育教室の皆さん, 出演:たいよう保育園の皆さん, 出演:魚住農園の皆さん, 監督:大宮浩一, プロデュース:片野仁志, プロデュース:木下繁貴, プロデュース:大宮浩一
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ルシルナは、4000冊以上の本と500本以上の映画をベースに、生き方や教養について書いていきます。ルシルナでは36個のタグを用意しており、興味・関心から記事を選びやすく…
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