目次
はじめに
この記事で取り上げる映画
「ゲバルトの杜 彼は早稲田で死んだ」公式HP
VIDEO
この映画をガイドにしながら記事を書いていきます
この記事の3つの要点
早稲田大学は何故「革マル派」に牛耳られ、川口大三郎は何故大学構内で死ななければならなかったのか? 同じグループの分裂によって生じた「革マル派」「中核派」の争いは、「内ゲバ」というあまりにも不毛な状況を生んだ 川口大三郎の死を契機に、それまで「革マル派」の暴力に怯えていた一般学生が奮起し、大学自治の奪還を目指す機運が高まった
「あの時代はイカれていた」なんて理解で終わらせずに、「同時代を生きていたら自分もこうだったかも」と受け取るべきだと思う
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映画『ゲバルトの杜 彼は早稲田で死んだ』は、大学内でリンチの末に殺された川口大三郎の死を起点に、「革マル派が早稲田大学を牛耳っていた歴史」を追うドキュメンタリー映画である
非常に面白い作品 だった。いや、正直なところ、「映画としてよく出来ている」というほどではない のだが、私にはとにかく、扱われている題材が非常に興味深く感じられた のだ。
ただ私は、本作で描かれている事柄についての知識がほぼない 。「革マル派」「中核派」「内ゲバ」といった単語を耳にしたことはあるものの、それらが何なのか知らなかった し、正直、映画を観終えた今もちゃんと説明できる自信はあまりない。そもそも「右(派)とか左(派)みたいな話」がよく分からない し、また、以前観た映画『三島由紀夫 vs 東大全共闘』で扱われていた「全共闘」も近い時代の話なのだが、こちらも理解できているとは言い難い状況 だ。
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とにかく、この辺りの基本知識が私には欠けている ので、作中にもよく分からない描写はあったし、だから、この記事にも「正しくない記述」があるんじゃないか と思っていたりもする。そうであった場合、単に「私の知識不足」によるものだと理解してほしい 。
本作『ゲバルトの杜』で扱われる事件と、その特異な構成について
私は慶應義塾大学と早稲田大学の両方に受かり、特に理由もなく慶應義塾大学に進学した 人間だ。それもあって(と書くのが正しいのかよく分からないが)、私は早稲田大学のことはよく知らない 。どれぐらい知らないかというと、本作で描かれている出来事は「早稲田大学文学部キャンパス」で起こっていたそうなのだが、「文学部はキャンパスが別」ということも本作で初めて知った 。調べてみると「文学部」があるのは「戸山キャンパス」で、本部と呼ばれる「早稲田キャンパス」から徒歩5分ぐらいのところにある のだという。慶應義塾大学のように「文学部は2年から駅さえ違うキャンパスに通う」みたいな感じではないようだ。ただ、本作ではある人物が、「文学部のキャンパスを一歩出たら、そこは平和な世界なんだから 」みたいなことを口にしており、そのたった5分の距離を隔てて「戸山キャンパス」と「早稲田キャンパス」は別世界だった のだろうなとも思う。
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では、そんな「文学部キャンパス」で何が起こったのか について、まずは本作における中心的な出来事から触れていく ことにしよう。早稲田大学に通っていた川口大三郎という学生が、1972年11月に大学内でリンチの末に殺されてしまった のだ。これだけでもう、ちょっと信じがたい話 だろう。そして、そんな凶行を実行に移したのが、当時早稲田大学を牛耳っていた「革マル派」 である。「革マル派」については追々説明していくことにしよう。そして、この事件を受けて、それまで革マル派の振る舞いに怯えていた一般学生が奮起し、「革マル派排除」へと乗り出す ことになる。そしてこの動きによって早稲田大学はようやく「左翼の支配を受けない自治」を取り戻した 、のだと思う。「のだと思う」と書いたのは、本作では「その後」についてはあまり深く触れられない からだ。あくまでも、「発端となった川口大三郎の死」と「一般学生を含めたその後の動き」を丁寧に追っていく作品 なのである。
それにしても、「本当にこんな時代があったんだろうか?」と感じてしまうような出来事 ではないだろうか? 私にはちょっと信じられなかった 。「全共闘の時代に大学生が大学内で籠城していた 」みたいな歴史は知識として知っていたが、それはあくまでも「警察」などの国家権力と闘うため であって、川口大三郎の死はまた全然違う状況 にある。あるいは、「『あさま山荘事件』ではメンバーが仲間内で殺し合った 」みたいな事実も知ってはいたが、それと同じようなことが大学の中で行われていたことに驚かされてしまった 。
さて、そんな「異様な時代」を描き出す本作は、構成も少し変わっている 。全体としてはドキュメンタリー映画なのだが、一部「劇映画パート」が混じるという構成 になっているのだ。テレビ番組ではよくある「再現VTR」みたいな感じ だが、映画では結構珍しいように思う。
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本作ではまず、「1人の大学生が学内で殺されるに至った背景」についての説明 がなされていく。これは要するに、「事件が起こった1972年当時、早稲田大学は革マル派に牛耳られていた」という話に集約される と言っていいだろう。教授でさえ革マル派に対抗できなかった そうで、何故そんな「イカれた状況」になってしまったの かという経緯がまずは語られるのだ。
そしてしばらくして、劇映画パートが始まる 。このパートの監督を務めたのは、早稲田大学出身で劇作家の鴻上尚史 だ。再現しているのは、事件当日に川口大三郎が連れ去られるところから亡くなるまで である。彼はキャンパス内で「討論しよう」と言われ、革マル派が占拠していた教室に無理やり連れて行かれてしまう 。そしてそこで彼は「拷問」を受けた 。川口大三郎はどうやら、革マル派と敵対する「中核派」のスパイだと疑われてしまった ようなのである。そして、長く厳しいリンチの末に彼が命を落としてしまうまでの「狂気」を描き出していく というわけだ。
そしてそれ以降は、川口大三郎と親交のあった人物や、彼の死をきっかけに巻き起こった様々な運動に関わった人物などが登場し、彼らの語りから「あの時早稲田大学で何が起こっていたのか?」を明らかにする 、という構成になっている。まったく知らなかった出来事ばかり であり、非常に興味深く感じられた。
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「早稲田大学が革マル派に牛耳られていた理由」と「革命的暴力」について
ではまず、「早稲田大学は何故革マル派に牛耳られていたのか?」についての話 から触れていくことにしよう。
1969年4月17日、革マル派の拠点だった早稲田大学を全共闘が占拠した 。そしてこの事態は同年9月3日、機動隊の動員によって強制的に終わりを迎える ことになる。本作ではその後の動きについて、「革マル派は、大学当局の後ろ盾を得て全共闘を締め出し、当局を支配した」と説明された 。これ以上詳しくは触れられなかったが、恐らく、「『全共闘を締め出すこと』を最優先にするために革マル派に権限を与えたが、そのせいで革マル派が学内で力を持ち、大学当局も呑み込まれていった 」ということなのだろうと思う。それにしても、たかが学生の集団に大学当局が支配されてしまうという状況は正直なかなか想像しにくい 。現代的な感覚では、「そういう時代だった」と受け取るしかない だろう。
さて、革マル派による支配は想像を絶するものがあった 。例えば、劇映画パートで描かれていたことだが、川口大三郎がリンチを受けている間、大学教員が何度か、彼が軟禁されていた部屋の前まで来ている 。川口大三郎の友人たちから「革マル派に連れ去られた」と報告を受けた からで、普通であれば教員は教室内を確認しなければならない だろう。しかし彼らは、教室の前で門番のように立ちはだかっている革マル派の学生にちょっと声を掛けただけで退散してしまう のだ。
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その様子を見て川口大三郎の友人らは「どうして中に入らないんですか!」と訴える のだが、教員は「(革マル派が支配している)自治会に教員が入れるとでも?」みたいな返答をする 。私はこのシーンに「えっ!?」と感じてしまった 。現代の感覚からすれば考えられない し、恐らくだが、早稲田大学のような状況ではなかった大学に通う当時の学生だって「えっ!?」と感じたんじゃないか と思う。私にはそれぐらい異様な状況 に思えるのだが、当時はそれが出来ないぐらい革マル派の力が強かった ということなのだろう。作中ではある人物が、大学と革マル派の関係について「癒着」という言葉を使っていた ので、「利害の一致」という別の理由もあったのかもしれないが、本作を観る限りにおいては「革マル派が暴力によって、教員を含む大学を支配していた」という風にしか見えなかった し、そんな現実に驚かされてしまったのである。
さて、その「暴力」についてだが、当時は「革命的暴力」という言葉がよく使われていた そうだ。これは、「革命を実現するための暴力」といったような意味合い であり、左翼の連中は、「マルクス・レーニン主義に貫かれている限り、どんな暴力も『正しい暴力』である」みたいな主張をしていた という。そしてこのような感覚をベースにして、「暴力行為によって状況を打破する」という考えが正当化されていた のである。
この点に関しては、作中に登場した内田樹の話がとても興味深かった 。彼は決して、本作で扱われる出来事に直接関係しているわけではない 。ただ、同時代を生きた人 であり、さらに、川口大三郎の事件後に起こったある内ゲバで殺された東大生・金築寛の友人だった こともあり、「当時の状況を肌感覚で知っている人」として話をしていた のである。
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内田樹は何かのタイミングで、ある左翼的な集団(内田樹は名前も口にしていたが、メモし切れなかった)と行動を共にする機会があった そうで、その時の出来事について話をしていた。まず驚きだったのは、地下鉄での移動の際に内田樹が切符を買おうとしたら、「買う必要はない」と言われた話 である。その理屈は、「鉄道会社はブルジョワ企業であり、彼らを打倒するために我々は活動しているんだ 」というものだった。内田樹はもう切符を買っていたのでそれで改札を出たが、他の者たちは堂々とキセルで改札を抜けた という。
さらに、目的の駅に着いた後で彼らは、駅の傍にあったおでん屋を襲撃し、勝手におでんを食べ始めた そうだ。100歩譲って「鉄道会社はブルジョワ企業だから」という理屈は通るかもしれないが、おでん屋んはそうはいかない だろう。しかし彼らは、平然とおでんを食べ続けていた という。
そして内田樹の話で最も印象的だったのが、「そんな振る舞いをしている連中も、学内で会えば、どちらかと言えばおとなしい普通の学生だった」という話 である。つまり内田樹は、「左翼的な集団として活動している彼らの姿」が普段とあまりに違うことにもビックリした というわけだ。「『理屈さえ通れば暴力的なことも平然とやれてしまえる人間』が一定数いるという事実」に、内田樹はとにかく驚かされた と話していた。
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そんな話を知ると、「ヤバい奴らだった」と即断するのも躊躇われるんじゃないか と思う。もし同じ時代を生きていたら私も、「当たり前のようにおでん屋を襲撃するような人間」だったかもしれない のだ。なので「時代が異常だった 」と捉えておくしかないのだと思う。そしてそんな時代だったが故に、早稲田大学は革マル派に牛耳られ、暴力が日常茶飯事となり、川口大三郎がリンチで殺されてしまった のである。本当に、イカれてるな と感じた。
川口大三郎は何故「スパイ」と見做されてしまったのか?
川口大三郎は「内ゲバで殺された」 のだが、まずは「内ゲバ」について説明しておこう 。これは「内部ゲバルト」の略 で、「ゲバルト」はドイツ語で「威力、暴力」を意味する 。「内部」というのは要するに「同じグループ内 」という理解でいいだろう。つまり「内ゲバ」は「同一陣営内での暴力」のことを指している というわけだ。
川口大三郎は決して「革マル派」に属していたわけではない のだが、早稲田大学を「革マル派」が支配している状況下では、「革マル派」のメンバーは恐らく、「早稲田大学の学生は皆、『革マル派』寄りであるべき」と考えていたのではないか と思う。そしてそういう中にあって川口大三郎は「中核派のスパイ」と見做され、それ故にリンチを受けてしまった のである。
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さてそもそもだが、「革マル派」と「中核派」は元々同じグループ だった。1963年4月に分裂した のだが、その後も両者は、『共産主義者』というまったく同じタイトルの機関誌を発行し続けた という。また、「中核派」の拠点が池袋にあったことから、「革マル派」は「中核派」のことを「ブクロ」と呼んでいた そうだ。
では、この2派にはどんな違いがあるのだろうか? この点については、池上彰が説明している 。それは「劇映画パートに出演する役者への講義 」という形で行われていた。鴻上尚史が池上彰に、「日本左翼史」に関する講義を頼んだ のだ。私の理解が合っているかは心許ないが、池上彰の説明は以下のようなものだった と思う。
「中核派」は基本的に、「機動隊とはガンガン衝突して闘おう!」みたいなスタンス だったそうだ。もちろんそれによって逮捕者が出るし、そうなれば構成員が減ってしまう ことにもなる。しかし彼らは、「そうやって派手に衝突することによって、新たな参加者が増えてくれればいい 」みたいに考えていたのだという。
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しかし「革マル派」は、そのような「中核派」のスタンスを「何をバカなことを」という風に見ていた そうだ。「革マル派」にとって大事だったのは「組織化して参加者を増やすこと」 であり、それ故に「大学の自治会を支配する」みたいな方向に進んでいった というわけだ。
このように「革マル派」と「中核派」では、活動のスタンスがまったく異なり 、その違いについては、作中に登場する佐藤優もまた別の形で指摘していた 。そして彼の説明によって、「川口大三郎がスパイと見做された理由」の一端が理解できる のではないかと思う。
「中核派」は比較的、「初見の人間にもヘルメットを被らせ、積極的に活動に参加させる」みたいな雰囲気があった そうだ。しかし「革マル派」は全然違った 。彼らは主要な活動に参加させる前に、かなり慎重に人を見極めていた はずだというのだ。そのため「革マル派」では「ヘルメットを被るような活動」に参加するまでには時間が掛かる 。そしてこの違いが悲劇を生んだのではないか と佐藤優は指摘していた。
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川口大三郎が「中核派」の集会に出入りしていたことは明らかになっている 。「中核派」のスタンスを踏まえれば恐らく、川口大三郎も「ヘルメットを被るような活動」に関わっていたのだと思う 。これは「中核派」の感覚では「初見の人間にもやらせること」でしかないが、「革マル派」からすれば「信頼を得た人にしかさせないこと」 である。そのため、「『川口大三郎は中核派から信頼を得た人物だ』と革マル派は判断し、それ故に彼は『スパイ』と見做されてしまったのではないか 」と佐藤優は語っていた。
ちなみに、川口大三郎の同級生は後に、当時「中核派」のキャップだった人物を訪ね、その際に聞いた話を文章にまとめている 。本作中でその文章が読み上げられたのだが、キャップだったというその人物は「どうして川口大三郎が『中核派』のスパイと見做されたのかよく分からない」と話していた そうだ。もちろん、このキャップの証言が正しい保証はないわけだが、彼が言うには、「中核派」と川口大三郎の間には特段深い繋がりはなかった そうである。
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さらに、「中核派」と川口大三郎の関わりについて、また別の角度から語る人物 も出てきた。その人物は、「川口大三郎はある意味は、自分のせいで『中核派』と関わりを持ってしまった」と後悔していた のである。
彼は川口大三郎と同じ2年J組だった同級生 で、以前から「部落差別」などに関心を持ち、様々な活動に関わっていた そうだ。そんな話を川口大三郎にしたことがあった のだが、その時点ではまだ、彼は「部落差別」について何も知らなかった という。彼の話を聞いて、「日本にそんな差別が存在すること」憤った川口大三郎は、その後「狭山事件」と関わりを持つ ようになる。部落出身の人物が殺人罪で逮捕されたのだが、本人は無実を訴えているという事件 で、その支援のための活動に関わり始めた のだ。そしてこの「狭山事件」に「中核派」も関係していた のである。その同級生は元々、「法廷闘争によって救い出そう」という話を仲間内でしていた のだが、川口大三郎は次第に「中核派」の考えに染まり、「獄中からの奪還」という考えに傾倒していった という。
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そんなわけでこの同級生は、「川口大三郎に部落差別の話をしなければ、彼はきっと死なずに済んだ」と後悔している のである。もちろん、そんな話は「たられば」でしかない。しかし、そんな後悔を抱いてしまう彼の気持ちも分からないではない し、なんともやるせない話 だなと思う。
「川口大三郎の死」がもたらした、その後の混迷について
川口大三郎は早稲田大学内で殺されたのだが、リンチの実行犯は発覚を恐れ、彼の遺体を東大医学部附属病院前に放置している 。その後実行犯は逮捕された わけだが、作中では「『国際反戦デー』の日に実行犯が捕まった」と説明 があった。調べてみると「国際反戦デー」は10月21日であり、つまり逮捕までに1年近く掛かっている ことになる。
さらに、作中では恐らく言及されなかったように思うのだが、公式HPには次のような記述があった 。
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11月9日昼過ぎ、革マル派が声明を発表し「川口は中核派に属しており、その死はスパイ活動に対する自己批判要求を拒否したため」と事実上、殺害への関与を示唆する内容の声明を発表した。
つまり、事件の翌日には既に、「『革マル派』の内ゲバによって川口大三郎が死亡した」という事実は明らかにされていた というわけだ。だとすると余計、実行犯の逮捕に1年近く掛かったことが不思議 に思えてくる。しかしよく考えてみれば、当時は防犯カメラもほとんどなかった だろうし、また、「革マル派」の拠点に匿ってもらうことも出来た わけで、そういうことが重なって捜査が難航したということなのだと思う。
さて、そんな事件の推移とは別に、早稲田大学でも大きな変化が起きていた 。これまで「革マル派」の暴力に怯えるしかなかった一般学生が立ち上がり、「(「革マル派」に牛耳られた)早稲田大学から自治会を取り戻す」という機運が高まっていった のである。本作『ゲバルトの杜』は、『彼は早稲田で死んだ』というノンフィクションを原案に作られた映画 なのだが、その著者・樋田毅は、文学部の新自治会委員長に就任した人物 だ。そしてここから早稲田では、「革マル派」「新自治会」「行動委員会」という三つ巴で事態が展開して行く のである。
著:樋田 毅
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「行動委員会」は、「『革マル派』から大学自治を取り戻そう」という動きに合わせて作られた 。「新自治会」は「非暴力によって『革マル派』から自治を取り戻す」というスタンス でいたのだが、「それはさすがに無理だろう」と考えた人たちが集まって出来たのが「行動委員会」 である。「革マル派」は凄まじく暴力的だった。そのため、「対抗するには『自衛のための暴力』を有する必要がある」と考えた人たちが集まった のだ。「新自治会」と「行動委員会」は、「『革マル派』から自治を取り戻す」という目的こそ共通していたものの、そのやり方に相違があったため、この2者もまた対立を避けられなかった のである。
「行動委員会」の実力行使はなかなか凄まじかった 。例えば彼らは、理工学部で講義中だった学長を“拉致”し、そのまま団交(団体交渉)に持ち込もうとした ことがある。本作には、この“拉致”に実際に関わった人物も登場する のだが、「“拉致”というほどではなく、もっと軽いノリだった 」「川口大三郎の死に責任を持つべき人物が表に出てこないのだから、これぐらいの暴力は許されて当然だと思った 」みたいなことを口にしていた。私は個人的に、その感覚にはちょっと賛同できなかった し、だから「新自治会」が「行動委員会」のやり方に批判的だったのも理解できる なと思う。
とはいえ、非暴力を主張し続けた「新自治会」も揺れていた 。なんと委員長・樋田毅が「革マル派」から襲撃を受け、全治1ヶ月という重症を負ってしまった のだ。そしてそんな事態に陥ったことで、彼が入院している間に「もはや暴力に打って出るしかないのではないか」という意見が出るほど、混迷を極めていた のである。
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その後、「引っ越し作業中だった東大生が『革マル派』に殺された事件」についての言及 が始まり、当時まさに事件現場にいたという人物がその時のことについて語っていた 。このように、早稲田大学内に限らず社会全体で「内ゲバ」が横行し、多数の死者が出てしまっていた のだ。本作では「内ゲバによる死者数 」が表示されたのだが、
「中核派」が殺した「革マル派」のメンバー:48人 「社青同解放派」が殺した「革マル派」のメンバー:23人 「革マル派」が殺した「中核派・社青同解放派」のメンバー:15人
という感じだったようである。しかしこう並べてみると、本作でメインに扱われているのは確かに「早稲田大学を牛耳っていた『革マル派』」 なのだが、それ以上に「中核派」や「社青同解放派」による殺人の方が多い 。お互いに酷かったということだろう。作中のある人物は「『内ゲバ』は不毛でしかなかった 」と語っていたが、本当にその通りだなと思う。
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最後に
さて、こんな殺し合いをしていた彼らにとって、「革命」とは一体何だったのだろうか?
この点に関しては、作中に興味深い場面 があった。劇映画パートに出演していた唯一の女性役者が池上彰に、「彼らにとって、『革命』はどれぐらいリアルなものだったんですか?」と質問していた のだ。その中で彼女は、「彼らは日々『膝の皿を割っていた』わけで、それが『革命』に繋がると考えていたってことですよね 」と口にしていて、私も「確かにな」と感じてしまった 。
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本作で扱われるのはそんな信じがたい時代の話 であり、正直なところ「同じ国で起こった出来事」とは思えなかった 。しかし、「そういう時代が確かに存在したこと」もまた事実 なのだ。だからこそ私たちは、どうにかして「そんなイカれた時代に逆戻りしない」ように生きていかなければならない のである。
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ダム・マネー ウォール街を狙え!』では、株取引で莫大な利益を得た実在の人物が取り上げられる。しかし驚くべきは「大金を得たこと」ではない。というのも彼はなんと、資産5万ドルの身にも拘らず、ウォール街の超巨大資本ファンドを脅かす存在になったのである! 実話とは思えない、あまりにも痛快な物語だった
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【感想】映画『ルックバック』の衝撃。創作における衝動・葛藤・苦悩が鮮やかに詰め込まれた傑作(原作…
アニメ映画『ルックバック』は、たった58分の、しかもセリフも動きも相当に抑制された「静」の映画とは思えない深い感動をもたらす作品だった。漫画を描くことに情熱を燃やす2人の小学生が出会ったことで駆動する物語は、「『創作』に限らず、何かに全力で立ち向かったことがあるすべての人」の心を突き刺していくはずだ
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【あらすじ】有村架純が保護司を演じた映画『前科者』が抉る、罪を犯した者を待つ「更生」という現実
映画『前科者』は、仮釈放中の元受刑者の更生を手助けするボランティアである「保護司」を中心に据えることで、「元犯罪者をどう受け入れるべきか」「保護司としての葛藤」などを絶妙に描き出す作品。個別の事件への処罰感情はともかく、「社会全体としていかに犯罪を減らしていくか」という観点を忘れるべきではないと私は思っている
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【感想】映画『夜明けのすべて』は、「ままならなさ」を抱えて生きるすべての人に優しく寄り添う(監督…
映画『夜明けのすべて』は、「PMS」や「パニック障害」を通じて、「自分のものなのに、心・身体が思い通りにならない」という「ままならなさ」を描き出していく。決して他人事ではないし、「私たちもいつそのような状況に置かれるか分からない」という気持ちで観るのがいいでしょう。物語の起伏がないのに惹きつけられる素敵な作品です
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映画『燃えるドレスを紡いで』は、世界的ファッションデザイナーである中里唯馬が、「服の墓場」と言うべきナイロビの現状を踏まえ、「もう服を作るのは止めましょう」というメッセージをパリコレの場から発信するまでを映し出すドキュメンタリー映画である。個人レベルで社会を変革しようとする凄まじい行動力と才能に圧倒させられた
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映画『52ヘルツのクジラたち』は、「現代的な問題のごった煮」と感じられてしまうような”過剰さ”に溢れてはいますが、タイトルが作品全体を絶妙に上手くまとめていて良かったなと思います。主演の杉咲花がやはり見事で、身体の内側から「不幸」が滲み出ているような演技には圧倒されてしまいました
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上映に際し政府から妨害を受けたという映画『人間の境界』は、ポーランド・ベラルーシ国境で起こっていた凄まじい現実が描かれている。「両国間で中東からの難民を押し付け合う」という醜悪さは見るに絶えないが、そのような状況下でも「可能な範囲でどうにか人助けをしたい」と考える者たちの奮闘には救われる思いがした
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幾田りらとあのちゃんが声優を務めた映画『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』は、とにかく最高の物語だった。浅野いにおらしいポップさと残酷さを兼ね備えつつ、「終わってしまった世界でそれでも生きていく」という王道的展開を背景に、門出・おんたんという女子高生のぶっ飛んだ関係性が描かれる物語が見事すぎる
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【正義】「正しさとは何か」を考えさせる映画『スリー・ビルボード』は、正しさの対立を絶妙に描く
「正しい」と主張するためには「正しさの基準」が必要だが、それでも「規制されていないことなら何でもしていいのか」は問題になる。3枚の立て看板というアナログなツールを使って現代のネット社会の現実をあぶり出す映画『スリー・ビルボード』から、「『正しさ』の難しさ」を考える
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【不正義】正しく行使されない権力こそ真の”悪”である。我々はその現実にどう立ち向かうべきだろうか:…
権力を持つ者のタガが外れてしまえば、市民は為す術がない。そんな状況に置かれた時、私たちにはどんな選択肢があるだろうか?白人警官が黒人を脅して殺害した、50年前の実際の事件をモチーフにした映画『デトロイト』から、「権力による不正義」の恐ろしさを知る
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【矛盾】その”誹謗中傷”は真っ当か?映画『万引き家族』から、日本社会の「善悪の判断基準」を考える
どんな理由があれ、法を犯した者は罰せられるべきだと思っている。しかしそれは、善悪の判断とは関係ない。映画『万引き家族』(是枝裕和監督)から、「国民の気分」によって「善悪」が決まる社会の是非と、「善悪の判断を保留する勇気」を持つ生き方について考える
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【情熱】映画『パッドマン』から、女性への偏見が色濃く残る現実と、それを打ち破ったパワーを知る
「生理は語ることすらタブー」という、21世紀とは思えない偏見が残るインドで、灰や汚れた布を使って経血を処理する妻のために「安価な生理用ナプキン」の開発に挑んだ実在の人物をモデルにした映画『パッドマン 5億人の女性を救った男』から、「どう生きたいか」を考える
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【告発】アメリカに”監視”される社会を暴露したスノーデンの苦悩と決断を映し出す映画:『スノーデン』…
NSA(アメリカ国家安全保障局)の最高機密にまでアクセスできたエドワード・スノーデンは、その機密情報を持ち出し内部告発を行った。「アメリカは世界中の通信を傍受している」と。『シチズンフォー』と『スノーデン』の2作品から、彼の告発内容とその葛藤を知る
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【見方】日本の子どもの貧困は深刻だ。努力ではどうにもならない「見えない貧困」の現実と対策:『増補…
具体的には知らなくても、「日本の子どもの貧困の現状は厳しい」というイメージを持っている人は多いだろう。だからこそこの記事では、朝日新聞の記事を再編集した『増補版 子どもと貧困』をベースに、「『貧困問題』とどう向き合うべきか」に焦点を当てた
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【多様性】神童から引きこもりになり、なんとか脱出したお笑い芸人が望む、誰も責められない社会:『ヒ…
お笑い芸人・髭男爵の山田ルイ53世は、“神童”と呼ばれるほど優秀だったが、“うんこ”をきっかけに6年間引きこもった。『ヒキコモリ漂流記』で彼は、ひきこもりに至ったきっかけ、ひきこもり中の心情、そしてそこからいかに脱出したのかを赤裸々に綴り、「誰にも優しい世界」を望む
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お笑い芸人・マキタスポーツが、一般社会にも「笑いの作法」が染み出すことで息苦しさが生み出されてしまうと分析する『一億総ツッコミ時代』を元に、「ツッコむ」という振る舞いを止め、「ツッコまれしろ」を持ち、「好き/嫌い」で物事を語るスタンスについて考える
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【絶望】「人生上手くいかない」と感じる時、彼を思い出してほしい。壮絶な過去を背負って生きる彼を:…
「北九州連続監禁殺人事件」という、マスコミも報道規制するほどの残虐事件。その「主犯の息子」として生きざるを得なかった男の壮絶な人生。「ザ・ノンフィクション」のプロデューサーが『人殺しの息子と呼ばれて』で改めて取り上げた「真摯な男」の生き様と覚悟
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勤務していた会社の都合で、町が1つ丸々無くなるという経験をし、住居を持たないノマド生活へと舵を切った女性を描く映画『ノマドランド』を通じて、人生の大きな変化に立ち向かう気力を持てるのか、我々はどう生きていくべきか、などについて考える
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【リアル】社会の分断の仕組みを”ゾンビ”で学ぶ。「社会派ゾンビ映画」が対立の根源を抉り出す:映画『C…
まさか「ゾンビ映画」が、私たちが生きている現実をここまで活写するとは驚きだった。映画『CURED キュアード』をベースに、「見えない事実」がもたらす恐怖と、立場ごとに正しい主張をしながらも否応なしに「分断」が生まれてしまう状況について知る
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【絶望】権力の濫用を止めるのは我々だ。映画『新聞記者』から「ソフトな独裁国家・日本」の今を知る
私個人は、「ビジョンの達成」のためなら「ソフトな独裁」を許容する。しかし今の日本は、そもそも「ビジョン」などなく、「ソフトな独裁状態」だけが続いていると感じた。映画『新聞記者』をベースに、私たちがどれだけ絶望的な国に生きているのかを理解する
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【映画】『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 劇場版』で号泣し続けた私はTVアニメを観ていない
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「ルールは守らなければならない」というのは大前提だが、常に例外は存在する。どれほど重度の自閉症患者でも断らない無許可の施設で、情熱を持って問題に対処する主人公を描く映画『スペシャルズ!』から、「ルールのあるべき姿」を考える
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金正男が暗殺された事件は、世界中で驚きをもって報じられた。その実行犯である2人の女性は、「有名にならないか?」と声を掛けられて暗殺者に仕立て上げられてしまった普通の人だ。映画『わたしは金正男を殺していない』から、危険と隣り合わせの現状を知る
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プラスチックごみによる海洋汚染は、我々の想像を遥かに超えている。そしてその現実は、「我々は日常的にマイクロプラスチックを摂取している」という問題にも繋がっている。映画『プラスチックの海』から、現代文明が引き起こしている環境破壊の現実を知る
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【実話】正論を振りかざす人が”強い”社会は窮屈だ。映画『すばらしき世界』が描く「正解の曖昧さ」
「SNSなどでの炎上を回避する」という気持ちから「正論を言うに留めよう」という態度がナチュラルになりつつある社会には、全員が全員の首を締め付け合っているような窮屈さを感じてしまう。西川美和『すばらしき世界』から、善悪の境界の曖昧さを体感する
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【課題】原子力発電の廃棄物はどこに捨てる?世界各国、全人類が直面する「核のゴミ」の現状:映画『地…
我々の日常生活は、原発が生み出す電気によって成り立っているが、核廃棄物の最終処分場は世界中で未だにどの国も決められていないのが現状だ。映画『地球で最も安全な場所を探して』をベースに、「核のゴミ」の問題の歴史と、それに立ち向かう人々の奮闘を知る
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【危機】遺伝子組み換え作物の危険性を指摘。バイオ企業「モンサント社」の実態を暴く衝撃の映画:映画…
「遺伝子組み換え作物が危険かどうか」以上に注目すべきは、「モンサント社の除草剤を摂取して大丈夫か」である。種子を独占的に販売し、農家を借金まみれにし、世界中の作物の多様性を失わせようとしている現状を、映画「モンサントの不自然な食べもの」から知る
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【解説】テネットの回転ドアの正体を分かりやすく考察。「時間逆行」ではなく「物質・反物質反転」装置…
クリストファー・ノーラン監督の映画『TENET/テネット』は、「陽電子」「反物質」など量子力学の知見が満載です。この記事では、映画の内容そのものではなく、時間反転装置として登場する「回転ドア」をメインにしつつ、時間逆行の仕組みなど映画全体の設定について科学的にわかりやすく解説していきます
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【衝撃】森達也『A3』が指摘。地下鉄サリン事件を起こしたオウム真理教は社会を激変させた
「オウム真理教は特別だ、という理由で作られた”例外”が、いつの間にか社会の”前提”になっている」これが、森達也『A3』の主張の要点だ。異常な状態で続けられた麻原彰晃の裁判を傍聴したことをきっかけに、社会の”異様な”変質の正体を理解する。
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「砂が枯渇している」と聞いて信じられるだろうか?そこら中にありそうな砂だが、産業用途で使えるものは限られている。そしてそのために、砂浜の砂が世界中で盗掘されているのだ。『砂と人類』から、石油やプラスチックごみ以上に重要な環境問題を学ぶ
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オウム真理教の内部に潜入した、森達也のドキュメンタリー映画『A』は衝撃を与えた。しかしそれは、宗教団体ではなく、社会の方を切り取った作品だった。思考することを止めた社会の加虐性と、客観的な事実など切り取れないという現実について書く
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実際にチェコの警察を動かした衝撃のドキュメンタリー映画『SNS 少女たちの10日間』は、少女の「寂しさ」に付け込むおっさんどもの醜悪さに満ちあふれている。「WEBの利用制限」だけでは子どもを守りきれない現実を、リアルなものとして実感すべき
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39歳で餓死した男性は、何故誰にも助けを求めなかったのか?異常な視聴率を叩き出した、NHK「クローズアップ現代」の特集を元に書かれた『助けてと言えない』をベースに、「自己責任社会」の厳しさと、若者が置かれている現実について書く。
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【救い】自殺を否定しない「笑える自殺本」。「自殺したい」ってもっと気軽に言える社会がいい:『自殺…
生きることがしんどくて、自殺してしまいたくなる気持ちを、私はとても理解できます。しかし世の中的には、「死にたい」と口にすることはなかなか憚られるでしょう。「自殺を決して悪いと思わない」という著者が、「死」をもっと気楽に話せるようにと贈る、「笑える自殺本」
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私は、安楽死が合法化されてほしいと思っている。そのためには、人間には「死ぬ権利」があると合意されなければならないだろう。安楽死は時折話題になるが、なかなか議論が深まらない。『安楽死を遂げた日本人』をベースに、安楽死の現状を理解する
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三権分立の一翼を担う裁判所のことを、私たちはよく知らない。元エリート裁判官・瀬木比呂志と事件記者・清水潔の対談本『裁判所の正体』をベースに、「裁判所による統制」と「権力との癒着」について書く。「中世レベル」とさえ言われる日本の司法制度の現実は、「裁判になんか関わることない」という人も無視できないはずだ
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現代は、過去どの時代と比べても安全で清潔で、豊かである。しかしそんな時代に、我々は「幸せ」を実感することができない。『隷属なき道』をベースに、その理由は一体なんなのか何故そうなってしまうのかを明らかにし、さらに、より良い暮らしを思い描くための社会課題の解決に触れる
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哲学・思想【本・映画の感想】 | ルシルナ
私の知識欲は多方面に渡りますが、その中でも哲学や思想は知的好奇心を強く刺激してくれます。ニーチェやカントなどの西洋哲学も、禅や仏教などの東洋哲学もとても奥深いも…
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