目次
はじめに
この記事で取り上げる映画
出演:三浦透子, 出演:前田敦子, 出演:伊藤万理華, 出演:北村匠海, 出演:坂井真紀, 出演:三宅弘城, Writer:アサダアツシ, 監督:玉田真也
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ポチップ
この映画をガイドにしながら記事を書いていくようだよ
この記事で伝えたいこと
「アセクシャルである」という事実を受け入れない家族からの干渉に、私は苛立ちを隠せませんでした
「自分の理屈」でしか物事の正しさを判断できない人たちのことは、とても「怖い」と感じられます
この記事の3つの要点
- 私の周りには、「アセクシャル」「デミセクシャル」「トランスジェンダーかつレズビアン」とカミングアウトしてくれた人がいる
- 「理解できないこと」を「嘘」「間違い」と捉えるスタンスには恐怖しか感じられない
- 「理解者」でなくても、せめて「否定せずに寄り添う人」でありたいと思う
映画のラストで語られるあるセリフにも、もの凄く共感させられてしまった
自己紹介記事
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とても良い映画でした。正直、観ようかどうしようか悩む感じの作品で、観ないという選択もあったのですが、本当に観て良かったなと思います。
主演の三浦透子がまさに絶妙って感じの雰囲気を出してるよね
正直、扱い方次第では微妙な感じに仕上がっちゃう難しいテーマだろうけど、凄く良い形でまとまってたと思う
ストーリーはかなりシンプルで、「恋愛をしたいと思ったことがない主人公・蘇畑佳純(30歳)が、母親が無理やりセッティングしたお見合いで出会った男性と関わりを持ちつつ、恋愛・結婚について考えていく」という感じです。私は、この映画を観る時点で「アセクシャル」について認識していましたが、本作で初めてその存在を知ったという方もきっといるでしょう。「アセクシャル」というのは、「他者に対して恋愛感情・性的欲求を抱かないセクシャリティ」のことです。そして佳純は、そんな「アセクシャル」のことをまったく理解しようとしない家族と共に日々過ごしています。
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私が「アセクシャル」という単語を初めて耳にしたのは、今から15年以上も前のことです。同じ書店で働いていた友人の女性から、「私、アセクシャルなんです」と教えてもらったのが最初でした。「他者に対して恋愛感情も性的欲求も抱かない」という状態が存在するなんて想像もしなかったので、聞いた時にはかなり驚いた記憶があります。
15年前ってたぶん、「LGBT」みたいな言葉もまだ全然浸透してない頃だったと思うから、余計に驚いたってのはあるかな
15年前だとまだ25歳で、知識としてもかなり未熟だったしね
さてその後、割と最近のことですが、別の友人女性から「私はどうもデミセクシャルみたいです」という話を聞きました。デミセクシャルというのはアセクシャルとは違って、「恋愛感情・性的欲求がまったく無い」わけではありません。ただ、ごく一部の人に対してしかそのような感覚が生まれず、ほとんどの関係性においてアセクシャルのような状態になるセクシャリティのことを指します。彼女からはそれまでも、「恋愛をしたことはあるけど、恋愛感情を抱くことがほとんどない」という話を聞いていたので、そういう状態にもちゃんと名前が存在するのだなと驚かされました。
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さらにその後、トランスジェンダーだという人と知り合います。身体は男性ですが、心は女性という人です。さらに性的対象は「女性」なのだといいます。つまり「レズビアン」ということになると思うのですが、身体は男性なので、客観的には「異性愛者」に見られるというわけです。
いつと出会って、「確かにそういうこともあり得るか」って思ったけど、全然想像してなかったからやっぱりビックリしたわ
本人が教えてくれなかったら、外から見てるだけでは絶対に気づけないことだしね
さて、私は決して交友関係が広いタイプではありません。確かに、「変わった人間」が好きだし、そういう人と出会えるように意識してもいるつもりなので、他の人よりは「普通から外れた人」が身近に集まる可能性は高いと言えるでしょう。しかしだとしても、かなり交友関係が狭いのに、「アセクシャル」「デミセクシャル」「トランスジェンダーかつレズビアン」というセクシャリティと知り合えているのです。
何が言いたいのか。つまり私は、「そのようなセクシャルマイノリティは、私たちの身近にもっといるはずだ」と考えているのです。特にセクシャリティについては、相手からカミングアウトしてもらわなければまず知り得ません。先に挙げた3人も、周囲の人に積極的に話をしてはいないみたいです。「カミングアウトしていないけれども、実はセクシャルマイノリティだ」という人は想像以上に多いと考えていいのではないかと思います。調査によれば、日本におけるLGBTQの割合は3~10%程度だそうです。仮に3%だとしても、1クラスに1人はLGBTQがいるという計算になるでしょう。
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この数字、「自覚できてる人」の割合のはずだから、まだ自覚できない人も含めたらもっとだろうね
さっきのデミセクシャルの人も、自覚するまでにかなり時間が掛かったらしいからなぁ
さて私自身は、いわゆる「セクシャルマイノリティ」ではないと思います。こういう表現は適切でないと感じるのですが、「ノーマルな異性愛者」というわけです(LGBTQではない人のことを「ノーマル」と表現するのは不適切な感覚があるのですが、どうにも上手く表現しようがないですね)。ただ私は30歳になった頃ぐらいから、「恋愛は止めて、異性とは友人になろう」という風に思考を切り替えました。「恋愛感情も性的欲求もあるのですが、恋愛関係よりも友人関係の方が心地よいと感じる」というわけです。恐らく今のところ、このような性質に名前はついていないでしょう。
いずれ私のような状態にも何か名前がつき、それによって私も「セクシャルマイノリティ」に括られるかもしれません。それ自体は別にどちらでも構わないですが、私を含め、世の中には様々な人間がいるというわけです。
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さて、内容に触れる前にまず、映画『そばかす』がセクシャリティをどのように描いているのかについての私なりの捉え方について書いておきたいと思います。先に結論を書いておくと、『そばかす』の描き方はとても良かったです。
最近はちょっと、「ポリティカルコレクトネスへの意識」が強すぎるなぁって感じる作品が多いからね
良かれと思ってやってるのかもしれないけど、「逆効果だ」って感じること、結構多いんだよなぁ
さて、何を描くにせよ、それが「マイノリティ」「弱者」に分類されるものである場合、「ちょっと極端なんだよなぁ」と感じてしまうことがあります。「極端」という感覚は少し説明が難しいのですが、例を挙げるなら次のような感じです。
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- 「マイノリティに対して偏見を抱いてはいない」と示そうと意識しすぎてオーバー気味に描いてしまう
- 「マイノリティの主張を伝えたい」という気持ちが強すぎて、逆にマイノリティが悪く見られるような描写になってしまう
このような感覚は、映画や小説に限らず、日常生活でも散見されるように思います。
もっと平たく言うと、「気を遣うところ、そこじゃねぇんだよなぁ」って感じだよね
私は例えば、「『障害』ではなく『障がい』って表記する方が良い」みたいな話もあんまり好きになれないんだよなぁ
さて、一応書いておこうと思いますが、私は別に「自分はマイノリティ代表である」みたいに考えてこんな主張をしているわけではありません。私は確かに、「気分的にはマイノリティ」だと思っているのですが、ここで言及している「マイノリティ」というのはもう少しはっきりと区分可能な存在、つまり「障害者」や「LGBTQ」などを指しているつもりでいます。あくまでも私は、「マジョリティでもマイノリティでもない立場」から、単に「マジョリティって好きになれないわー」と感じているだけなのです。「マイノリティを自認している」とか「マイノリティを代弁している」みたいなつもりではないことはご理解下さい。
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なんというのか、「一応こういうことを書いておかないとややこしいことになるかもしれない」と思わせる程度には、今の社会は面倒臭くなっていると感じます。「どの口がそれを言うんだ」「何様のつもり?」「お前誰だよ」みたいに「立場を弁えろ」的な批判が色んなところから飛んでくる気がするからです。そしてそれは、「マイノリティを扱う物語」を制作する場合でも同様だろうと思います。「お前に何が分かる」「マイノリティを消費するような描き方をして」みたいな批判が思わぬところから飛んできてもおかしくない世の中なのです。
ネットでわーわー言っている側にこそ、「お前誰だよ」って感じちゃうよなぁ
そのため、マイノリティを扱うよう作品を作る場合には特に、「全方位的に配慮する」みたいな思考になってしまいがちでしょう。そしてそうすることで、逆に「極端」に感じさせてしまう「良くない描写」になり得ると私は考えているのです。制作側の心配も理解できるし、リスクを回避したいという感覚も分かりますが、そこに対する意識が強すぎて逆効果になっているような状況が様々な場面で起こっていると考えています。
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しかし映画『そばかす』の場合、まったくそういう雰囲気がありませんでした。先程書いた通り、私は別に「マイノリティ」というわけではないので、何らかのマイノリティに分類される人がこの映画を観たら、また違った受け取り方になるのかもしれません。ただ私は、「マイノリティの『リアル』を、かなり高い精度で描き出しているのではないか」と感じました。
少なくとも「違和感」を覚えるような場面はなかったよね
恐らく、監督か脚本家辺りが、何らかの「マイノリティ」に属する人なんじゃないかなぁって気がする
マイノリティ同士であっても、普通は「分かり合えない部分」が出てくるはずなので、「マイノリティだからマイノリティを上手く描ける」なんてこともないとは思いますが、少なくとも「マジョリティがマイノリティを描く」よりは遥かに解像度が高くなると言えるでしょう。本作に対しては、まずその点がとても良かったと感じました。
「『自分は普通だ』と思っている人」の怖さが描かれる
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この映画はきっと、誰が観るかによって焦点の当たるポイントが変わるだろうと思います。セクシャルマイノリティの存在があまり理解できない人は、当然、蘇畑佳純の家族視点で物語を捉えるだろうし、となれば、「蘇畑佳純のような変わった人も世の中にいるのだろう」みたいな理解の仕方になるはずです。
まあそれならそれで、「『アセクシャル』っていう新たな概念を知れた」みたいな意味で十分良いと思うけどね
普通に生きてるとホント、「アセクシャル」って単語に出会う機会なんてまず無いだろうからなぁ
ただ私は逆に、蘇畑佳純側に共感出来てしまう人間なので、だから映画を観ながら、「普通の人間の怖さ」に焦点が当たっているように感じられました。
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例えば佳純の家族は、「恋愛・結婚にまったく意欲を見せないなんておかしい」という見方しかしません。佳純自身が「アセクシャル」という概念を認識しているのかについてはなんとも言えませんが、少なくとも「自分には恋愛も結婚も不要だ」という点は正しく理解できていると言えます。しかし同時に、それを家族に言っても伝わるはずがないとも確信しているのです。「家族に明かしていないのだから佳純の方が悪い」という見方も出来るかもしれませんが、「言ったところで絶対に理解してもらえないのだから言わない」という判断は私には真っ当に感じられます。家族はとにかく、佳純の気持ちを考慮することなく、「自分たちが正しいと思う世界」に彼女を引っ張り込もうとしかしないのです。
こういうのが親族にいると、ホントやってらんないよなぁって思う
この家族に関する描写は、かなり分かりやすいと言えるでしょう。
さて、物語の展開と共に、佳純はある人物から「思いも寄らなかったアプローチ」を受けることになります。このシーンも私にとっては「普通の人間の怖さ」を描写していると感じましたが、先程取り上げた家族の話と比べれば少し分かりづらいかもしれません。
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恋愛感情を抱けない佳純ですが、当然、「人と関わりたくない」などと思っているわけではありません。だから、佳純はある男性と、「友人として仲良くやっていきたい」という感覚を抱くようになります。佳純としては、「思いがけず気が合う男性と出会えて良かった」という感じだっただろうし、「この関係がずっと続いてくれたらいい」とも考えていたはずです。
私も、「女性とは友人になろう」って考えてるタイプだから、佳純のその思考はメチャクチャ理解できる
女性から話を聞く限り、「何でも話せる異性の友人が欲しい」みたいな感覚は結構あるっぽいしね
ただそれは佳純の勘違いでしかありませんでした。というのも佳純はその男性から「付き合ってほしい」と告白されてしまうからです。佳純的には、「人生で初めて、同じ感覚で関われる異性に出会えた」という感じだったはずだし、だから、告白されてとても残念だっただろうと思います。
だからでしょう、佳純はその男性との友人関係を終わらせたくないと思い、「私は他人に恋愛感情を持てないタイプの人間なんです」と必死に訴えるのです。しかし男性は、「そんな嘘つかなくていいよ」「馬鹿にするな」と彼女の主張をまったく受け入れようとしません。これもまた、「普通の人間の怖さ」を映し出している場面だと私には感じられました。
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マイノリティの話とは関係ないけど、「自分には理解できないこと」を「嘘」「間違い」みたいに判断する人って結構多い印象がある
「『正解』の範囲が狭すぎる人」と関わるのは、ホントしんどいよねぇ
私も、蘇畑佳純と似たような経験をしたことがあります。詳細は省きますが、「女性とは友人になろう」というモードに切り替わってから、「必要があって、女性の家に泊めてもらうこと」が何回かありました。もちろん、ただ泊まるだけで、泊めてくれる女性とは何もありません。
で、そういうことがあったという話を大人数の飲み会の場で話した時に、「SEXしてあげないのは可哀想」みたいなに言われたことがあります。それは大体男の意見だったのですが、意外だったのは、女性からも「それはちょっと良くないんじゃないの」みたいな意見が出てきたことです。ちょっとビックリしました。私と同年代か上の世代の人たちとの飲み会だったということもあるかもしれませんが、とにかくその場においては、「女性の家に泊めてもらったのに、一切手を出さなかった私の方が良くない」という判断になったというわけです。未だに私には、この感覚が理解できません。
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「普通の人」はこんな風に、割と無邪気に「自分の正しさ」みたいなものを押し付けて来るのです。そのことが私には、とても怖いことに感じられます。
いわゆる「コミュ力が高い人」って、単に「想像力が無いだけ」って感じがしちゃうよね
その辺りの話については、Kindleで出版した本に書いたので、是非そちらを読んで下さい
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一般的な人にはどう映っているのか分かりませんが、私には佳純の母親は「異常者」にしか見えませんでした。彼女は、娘が明確に「結婚なんかしたくない」と主張しているにも拘らず、無理やり見合いの場を設けるのです。「結婚しない女性は不憫だ」と、自分の正しさの指標だけで物事を捉えているのでしょう。世間では、このような母親の行動は「娘想い」などと評価されるのかもしれませんが、私には「狂気」にしか映りませんでした。マジでやべぇ。私は割と本気で、この母親のような「異常者」が世の中から駆逐されることを望んでいるのです。
家族の中で、佳純にとって唯一救いと言えるのは、鬱病を患って救急救命士の仕事を休職している父親の存在でしょう。家族の中では、恐らく唯一話が通じる相手なのではないかと思います。
私も、せめて1人でいいから、まともに話が通じる家族がいてほしかったなぁって思う
子ども時代はとにかく、「周りの人間と話が合わない!」ってことに発狂しそうだったもんね
父親が、恋愛や結婚にまったく関心を示さない娘に対してどのような感情を抱いているのか、それはよく分かりません。具体的にそれが描かれる場面が無いからです。ただ、父親の良いところは、なんにせよ「自分の考えを押し付けてこない」ということでしょう。それでいて、決して放ったらかすわけでもありません。相手が「適切」と感じるだろう距離感を絶妙に測って関わりを持ちつつ、同時に、「お前のことを信頼しているから」という形でその決断を肯定してくれるのです。
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もちろん、「理解者」がいてくれればなおのこと良いと思うのですが、人生そう上手くはいかないかもしれません。ただ、佳純にとっての父親のように、「理解してくれているかはともかく、否定せずに寄り添ってくれる存在」がいるだけでもかなり貴重だと言えます。私たちも、自分の周りに「カミングアウトしていない、色んなタイプのマイノリティ」がいると想定し、せめて「否定しない」ように振る舞えるように意識しておくべきでしょう。
そのことを強く実感させてくれる人物が映画に出てきます。佳純に「俺、ゲイなんだよね」と突然告白する人物です。佳純はその告白に、大して驚きを見せません。それは、「ゲイだってことぐらい、前から知っていた」みたいなことでは恐らくなくて、「ゲイだからって別に大したことじゃない」と考えているからだろうと思います。
私も、そういう雰囲気を普段から出せているから、「アセクシャル」「デミセクシャル」みたいなカミングアウトをしてもらえるのかなって思ってる
逆に、「この人には絶対に言えないよなぁ」みたいに感じさせる人も世の中には結構いるよね
佳純のそんな反応を受けて、その人物は、「みんながお前みたいな感じだったら、こっちに戻って来なくても良かったんだけどなぁ」としみじみ口にするのです。その人物についてはあまり具体的に描かれることはないのですが、「ゲイであることを周囲に明かしたことで、職場での関係が微妙になり、地元に戻って来ざるを得なくなった」みたいな感じだろうと思います。
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私たちは、「自分では『大したことない』と考えている振る舞いでも、そのことによって誰かが傷ついているかもしれない」という想像力を手放してはいけないはずです。しかし、「普通の人」であればあるほどそのような想像力を持っておらず、「自分なりの理屈」で物事を判断し、結果として無意識の内に身近な誰かを傷つけているだろうとも思っています。
もちろんこの点については、私自身も気をつけないといけないことなんだけど
ただ、気をつけすぎても、さっき説明したような「極端」な感じになっちゃうから、その辺りが難しいんだけどね
さて、佳純にとって唯一の「理解者」と言えるのは、前田敦子が演じた役の女性でしょう。彼女がどんな役柄で登場するのかは伏せておくことにしますが、とても良いキャラクターだと私は感じました。特に、彼女がある場面で、「弱者は主張したらダメなのかよ!」と声を荒らげる場面は、なかなか痛快だったと思います。彼女もまた、佳純とは大分違った意味でのマイノリティであり、マイノリティ同士でありながら両極端である2人の関係は、なかなか魅力的に映りました。
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映画の中で一番好きなセリフについて
私が一番好きだなと感じたセリフは、映画のラストシーンで語られた次のものです。
同じようなことを考えている人がいて、どっかで生きているなら、それでいいやって思いました。
この感覚には、メチャクチャ共感させられてしまいました。
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私はそのような感覚を、元乃木坂46の齋藤飛鳥に対して感じます。
私は齋藤飛鳥が好きなのですが、特に彼女の思考や考え方に惹かれてきました。結果として、「アイドルの超ど真ん中」みたいなところまで上り詰めることになった齋藤飛鳥ですが、昔から「世間に対する馴染めなさ」みたいなものを感じていたようで、それを実に的確に言語化する様に、以前から感心していたのです。いわゆる「普通の世界」に対して違和感を抱き続けつつ、一方で、「アイドル」という「不特定の絶対多数」に応援してもらう必要のある立場にいるというある種の「矛盾」から放たれる言葉はとても鋭く、「こんなアイドルがいるんだ」というところから興味を持ちました。確か、小学生の頃から不登校で、「世の中のことについてはすべて本を読んで学んだ」みたいに言っていたはずです。「なるほど、その言語化力も納得」という感じがします。
アイドルの超王道を歩んでいく感じになってからも、「偏屈」と言っていいだろう考え方があまり変わらなかったのが良いよね
齋藤飛鳥はたぶん、アイドルを経験したことで、「自分の偏屈さも受け入れてもらえるんだ」って感じられるようになったはずだから、アイドルになって良かったんだろうなって思う
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さて、そんなわけで私は齋藤飛鳥のことが好きなのですが、ただ「会いたい」という気持ちにはあまりなりません。いや、もし「長時間会って話せる」というのであれば会いたいですが、握手会やオンラインミーティングのような「短時間だけ接触する」みたいなことにはさほど興味が持てないのです。そんなことよりは、「齋藤飛鳥のような人間が、生きてこの社会のどこかにきちんと居場所を確保している」と思えることの方が大事な気がします。齋藤飛鳥もきっと、私と同じように、何らかの形で「生きづらさ」を感じているタイプの人だと思うのですが、「そういう人がこの社会のどこかでちゃんと生きている」と感じられることが、私にとっても少し「希望」のように感じられるからでしょう。
そんなわけで、作中に出てくる「同じようなことを考えている人がいて、どっかで生きているなら、それでいいやって思いました」というセリフに、凄く共感できたというわけです。ホント、蘇畑佳純にも齋藤飛鳥にも、とにかくどこかで生き延びててほしいなと思います。
出演:三浦透子, 出演:前田敦子, 出演:伊藤万理華, 出演:北村匠海, 出演:坂井真紀, 出演:三宅弘城, Writer:アサダアツシ, 監督:玉田真也
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最後に
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私は、「気分的にマイノリティ」なだけで、本当の意味で何らかの「マイノリティ」に分類されるような人間ではありません。なので、実に中途半端だなと感じていますが、それでも、これまで色んな人と関わってきた経験を踏まえて、それなりには「マイノリティ」の気持ちが理解できる方だとも思っています。そして、そういう私の視点からしても、「マイノリティのリアル」を解像度高くとても的確に描いている映画だと感じられました。
本作は、「アセクシャルって何?」という人でも、「私もアセクシャルです」という人でも観れる作品だと思います。しかも両者で見方がまったく異なるはずなので、観た人同士で意見交換やぶつかり合いなんかをしてみるのも面白いでしょう。とても良い映画でした。
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美醜で判断されがちな”ルッキズム”の世の中に刃を突きつける小説『自画像』。私自身は、「キレイな人もキレイな人なりの大変さを抱えている」と感じながら生きているつもりだが、やはりその辛さは理解されにくい。私も男性であり、ルッキズムに加担してないとはとても言えない
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京都大学卒「日本一有名なニート」であるpha氏の『ニートの歩き方 お金がなくても楽しくクラスためのインターネット活用法』は、常識や当たり前に囚われず、「無理なものは無理」という自分の肌感覚に沿って生きていくことの重要性と、そのための考え方が満載の1冊
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人生のほとんどの場面で、「普通」「常識」「当たり前」に対して違和感を覚え、生きづらさを感じてきました。周りから浮いてしまったり、みんなが当然のようにやっているこ…
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