目次
はじめに
この記事で取り上げる映画
出演:フローレンス・ピュー, 出演:ジャック・レイナー, 出演:ウィル・ポールター, 出演:ウィリアム・ジャクソン・ハーパー, 出演:ヴィルヘルム・ブロングレン, 出演:アーチ・マデクウィ, 出演:エローラ・トルキア, 出演:ビョルン・アンドレセン, Writer:アリ・アスター, 監督:アリ・アスター, プロデュース:パトリック・アンディション, プロデュース:ラース・クヌードセン
ポチップ
この映画をガイドにしながら記事を書いていきます
この記事の3つの要点
- 冒頭からしばらく「何が起こるわけでもない」のだが、唐突にヤバい展開が始まっていく
- 異常としか言えない村ではあるが、しかしよく考えてみると「合理的と言えなくもない」とも感じらせられる
- 村の住民を「個人」ではなく「働き蜂のようなもの」と捉えると、映画で描かれる「狂気」が捉えやすくなる
「青空の下、燦々と日差しが降り注ぐ草原」という美しい景色の中で展開される「異様さ」に、脳がバグっていく感覚が実に興味深い
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『ミッドサマー』は、ずっと観たいと思っていた映画だった。ネットでレビューなどをまったく調べない私でも、その評価がほうぼうから様々なタイミングで耳に入る作品だったからだ。しかし、「よほどのことがない限り、映画館でしか映画を観ない」と決めている私には、なかなか観る機会がなかった。
いや、正直なところ、『ミッドサマー』が日本で公開された頃には既に、今と同じぐらいかなりの量の映画を観ていたので、全然リアルタイムでも観れたはずなのだ。それなのに何故観なかったのかといえば、「なんとなく」としか言いようがない。今も私は、映画館で流れる予告や、劇場で配られているチラシなどをメインに観る作品を決めている。世間の評価を極力知らずにいたい性格なこともあり、当時『ミッドサマー』の評判は私のところまでは届かなかったのだろう。だから、「ホラー映画らしいし、ホラー映画にはさほど興味がないから、観なくていいか」という判断で、スルーしてしまったのだ。
その後、「夏至の日に、『ミッドサマー』を映画館で上映する」という企画の存在を知った。なるほど、これなら観られるじゃないかと思ったのだが、この企画、実はかなり人気のようで、最初にその企画を知った年の夏至の日には、チケットが取れなかった。そこで翌年、今度はかなり早目にチケットを確保し、ようやく『ミッドサマー』を観ることが出来たというわけだ。ちなみに、私が観た回も、ほぼ満席だったと思う。
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映画を観て驚いたのは、「漠然とイメージしていたのとは全然違った」ということだ。私はなんとなく、「血みどろのパニックホラー」的な作品をイメージしていた。そういう意味で「ヤバい」作品だと思っていたのだ。実際には、敢えて言語化するなら「思想的な狂気」とでも言うべき「ヤバさ」が描かれる作品であり、個人的にもかなり好きな作品だった。
しかし、「白夜の中でヤバいことが起こる」ぐらいの内容しか知らずに観たからというのもあるだろうが、冒頭からしばらく描かれる「夏至祭に辿り着くまでの一連の流れ」の説明が少なすぎるように思う。初めて『ミッドサマー』を観る場合、特にこの冒頭の展開は理解しておいた方が作品を捉えやすいと思うので、その辺りのことを含めてまずは内容を紹介しておこう。
映画『ミッドサマー』の内容紹介
心理学専攻の大学生・ダニーは、ある日唐突に絶望の淵に立たされた。双極性障害を患っていた妹が、両親を道連れにして自殺したのだ。彼女はこの出来事に深く痛手を負い、しばらく心身が安定しない日々を過ごすことになる。一方、そんなダニーと付き合っているクリスチャンは、精神が安定しない恋人のことを内心で重荷に感じていた。しかしそれでも、なかなか別れを切り出すことが出来ないでいる。
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そんなある日、ダニーはクリスチャンと共にパーティに参加した。そしてその席で彼女は、クリスチャンが友人らと長期旅行を計画していることを初めて知る。友人の1人がスウェーデンからの留学生で、彼の故郷であるホルガ村に行くというのだ。なんでもホルガ村では、90年に1度しか行われない夏至祭が開かれるという。文化人類学を専攻するクリスチャンは、学問的な興味もあってホルガ村行きを決めたのだが、その事実をダニーには伝えていなかった。元々は男4人でホルガ村を訪れる予定だったが、ダニーに隠していた負い目もあり、話の成り行き上、ダニーも一緒に行くことになる。
彼らはホルガ村へと向かった。高い建物などまったくない、周りを森に囲まれた草原が広がっており、白い服を着た住民たちが、明日から始まる夏至祭の準備をしている。クリスチャンらは、勧められたマジックマッシュルームを食べてブッ飛んだ。しばらくしてホルガ村は夜を迎えるが、白夜のため明るいままだ。
そんな風にして、ダニーら部外者を交えながら、夏至祭が始まっていく……。
「特に何が起こるわけではない冒頭」からの凄まじい落差
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映画では最初、ダニーの身に起こった悲劇や、恋人クリスチャンとのすれ違いなどが描かれていく。この辺りの描写は、確かに後の物語に関係する部分ではあるのだが、『ミッドサマー』という映画全体のことを考えれば、「何も起こっていないに等しい状況」と言えるだろう。
この状況は、ホルガ村にたどり着いてからもさほど変わりはしない。友人を紹介されたり、マジックマッシュルームで幻覚を見たりと、特別何か起こるというわけでもないのだ。もちろん、ホルガ村に着いてからはずっと、「そこはかとない不穏さ」が漂っている。そこには色んな要素が絡んでいると思うが、「住民が皆真っ白な服を着ていること」「日が沈まない白夜であること」「90年に1度という稀な祭りなのに、部外者が容易に参加できること」などに対してそのような感覚を抱いていたのだと思う。
しかしだからと言って、具体的に何か「ヤバいこと」が起こるわけではない。物語はとにかく、「平穏」にスタートしていくのである。
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さて、少し脱線するが、私が観たのはどうやら「ディレクターズ・カット版」だったようだ。そもそも『ミッドサマー』に複数のバージョンがあることも、映画を観終えてから知った。ウィキペディアで調べると、劇場公開版だけで「141分」「147分」「163分」の3種類が存在し、さらに「ディレクターズ・カット版」の上映時間は最長の170分だそうだ。最も短い上映時間のバージョンと比べると30分も長い。
そんなわけで、劇場公開版を観た方とは体感が異なるかもしれないが、私の感覚では、映画が始まって1時間から1時間半ぐらいは、「これと言って何が起こるわけでもなく平穏に進んでいった」という印象である。
だからこそ、「崖のシーン」には驚かされた。それまで波はありつつも、それなりに「平穏」に進んでいた物語が、この崖のシーンで一気にギアが入れ替わったように感じたからだ。その落差には、とにかくビックリさせられた。
いや、正確に言えば、崖で衝撃的な状況が繰り広げられる少し前から、「うわぁ、きっとこれからこんなことが起こるんだろうなぁ」みたいな予感があったと思う。そしてその「予感」には間違いなく、「そうはならないと良いんだけどなぁ」という気分が含まれていた(これは、観客目線というより、むしろ登場人物目線と言える)。しかしやはり、予想した通りの展開になってしまう。そして私は、そのような展開を観て、日本のホラー作品っぽい印象を受けた。
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あまりに異常な世界だが、合理的と言えなくもない……かもしれない
うろ覚えの知識なので間違っているかもしれないが、以前何かで、日米のホラー作品の違いについて書かれた文章を読んだ記憶がある。私が覚えている限り、その最大の違いは「これから起こることが予想できるかどうか」にあるそうだ。
欧米のホラー作品の場合、「予想もしなかったことが起こる」という形で観客を怖がらせようとすることが多いという。「思いもよらぬところから何かが出現する」とか「相手が予期せぬ行動を取る」みたいなことだ。欧米では、そういう状況を「怖い」と感じるということなのだろう。
しかし、日本のホラー作品は違う。日本の場合は、「予想通りのことが起こる」という描き方になることが多い。つまり、「こういう状況になったら間違いなくこういうことが起こるよね、でもやめてやめて……」という形で「恐怖」を描くというわけだ。「ジャパニーズホラーが怖いのは、観客自身がこれから起こることを先に予想することで、実際にそれが起こった時の恐怖が倍増するからだ」みたいな分析だった気がする。
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このことを踏まえると、『ミッドサマー』は日本的なホラーと言えるのではないかと思う。もちろん、「何が起こるのか分からない」みたいな状況も描かれるのだが、日本的な「きっとこういうことが起こるんだろうけど、出来ればそうはならないでほしい」と感じさせる怖さが含まれる作品でもあるのだ。それもあって日本でも受け入れられやすかったのかもしれない。
さて、観客の「恐怖」を倍加させる要素は他にもある。それは、ホルガ村の住民が、目の前の光景を「当たり前」のこととみなしているという点だ。観客の感覚は当然、ダニーら主人公たちと同じはずだが、夏至祭に参加している者たち(当然、ほとんどがホルガ村の住民である)は、「常軌を逸した」と表現していいはずのその光景を、当たり前のことのように平然と見つめているのである。
「常識的」であるはずのダニーら大学生の方が、ホルガ村においては数の上で圧倒的にマイノリティなのであり、それ故に、ダニーたちの視点でホルガ村を体感せざるを得ない観客も、マジョリティ側の「冷静な振る舞い」に恐怖を抱かされてしまうというわけだ。
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このように、この崖のシーンは、「ヤバさ」が描かれる映画の導入部分として一定以上の恐怖感を与える絶妙なシーンだったと思うが、同時に私は、「この仕組みは非常に合理的だ」とも感じてしまった。
先に書いておくが、当然、ホルガ村の夏至祭で起こることすべてに賛同しているという意味ではない。むしろ拒否反応を抱いてしまう状況の方が多いのだが、崖のシーンで描かれるホルガ村の「理屈」は、私にはそう悪いものには思えなかった。
具体的には触れないが、要するにこのシーンでは、「未来は予め定められている」という掟のようなものが描かれている。日常生活の中でこのような感覚を抱くことはまずないだろう。もちろん、「運命の人と出会えた」「あの占い師は当たる」など、未来が決まっていると信じているかのような言説は探せばいくらでもある。しかし「未来は予め定められている」などと本気で考えている人は、特定の宗教の信者を除けばほとんどいないはずだ。だから普通は、ホルガ村の価値観に違和感を覚えることになる。
しかし、「『馴染みがない』が故の違和感」や「視覚的にあまりにショッキングな状況」などを一旦無視すれば、「未来が予め定められている」という生き方を「理想」だと考える人は一定数いるんじゃないかと思う。私は、どちらかと言えばそう考えてしまうタイプだ。未来のすべてが確定しているとしたら、それはちょっと面白くないと感じるが、「未来におけるこの部分は、状況に依らず揺るぎなく確定している」みたいな制約を与えられることは、決して悪くないと考えている。未来が確定していないからこそ、私たちは様々な不安を抱えたり、要らぬ準備に追われたりすることになるのだが、未来が確定することでそれらを手放せるなら、それは素晴らしいことなんじゃないかと感じる。少なくとも、そんな風に考える人が一定数いてもおかしくはないと思う。
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ホルガ村に対して最初に強烈な違和感を覚えるべきこの崖のシーンで、「案外悪くないかもしれない」と感じてしまった私は、それ以降も、「どこかにホルガ村の理屈を受け入れる余地はないだろうか?」という視点を持ち続けることになる。結局、それ以降の描写については受け入れがたいと感じるものが多かったが、映画全体を通して、「『外界に影響を及ぼさない』のであれば、ホルガ村のような生き方もアリだろうなぁ」と考えたりもした。
「個人の存在」以上に「共同体の存在」を重視する社会
最後まで観た上で、「一番恐ろしいのは、クリスチャンたちをホルガ村へと連れてきた留学生のペレではないか」と感じた。具体的な描写こそないものの、ペレは間違いなく、「外の価値基準に照らせば、夏至祭はヤバい祭りである」という事実を認識していたはずだ(とはいえ、夏至祭が90年に1度しか行われないことを踏まえると、そのヤバさを自身の体感として理解していたかはなんとも言えないが)。
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映画では他にも様々な「狂気」が描かれるのだが、個人的にかなり興味深かったのが「ルビ・ラダー」に関する言及である。「ルビ・ラダー」とはホルガ村の「聖典」のようなものであり、聖書やコーランをイメージすればいいだろう。登場人物の1人は論文執筆のためにその現物を間近で見せてもらうのだが、そこに書かれていたのは「落書き」にしか見えない解読不能な「何か」だった。
ホルガ村の長老はこの「ルビ・ラダー」についてある説明をする。ここでは具体的には触れないが、「『ある性質を持つ人物』が書いた『何か』を長老が『解釈する』」という形で成り立っているというのだ。そのようなものが「聖典」とみなされる世界は、我々の常識では「イカれている」としか思えないが、ホルガ村では当然のこととして成り立っているのである。
さて、ペレにしても「ルビ・ラダー」にしても、私たちがそこに「違和感」や「恐怖」を抱いてしまうのは、ホルガ村の住民一人ひとりを「個人」と認識してしまうからだろう。「『個人』がそれぞれの幸せを全うするのが当然」と考えるから、奇妙に映るのだ。しかしもしも、「『ホルガ村』という1つの大きな生命体を構成する要素としての『個人』」という捉え方をするなら、見え方が変わってくるように思う。
例えば似たような生き方をするものとして「蜂」が挙げられるだろう。蜂は、「子どもを生む女王蜂」「蜜を運ぶ働き蜂」など、生まれながらにして一生の役割が定まっている。確かに蜂一匹一匹も生命そのものであるのだが、「女王蜂だけ」いても「働き蜂」だけいても「蜂」という種は存続し得ない。
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あるいは、オーストラリアに棲息するミツツボアリの場合は、「働きアリ」の中から少数が「蜜の貯蔵庫」に選ばれるそうだ。選ばれたら、自分のお腹がはち切れるぐらいまで蜜を溜め込み、食べ物が少ない時期になると仲間に口移しで蜜を与えて種全体で生き延びるのだという。「蜜の貯蔵庫」に選ばれた働きアリは、自力で移動することが出来なくなるようで、これもまた「種全体で1つの生命体」という捉え方が相応しい生き物だと感じる。
このような性質を持つ生物が存在する以上、「人間には同じような生き方が選択出来ない」と考える理由はないはずだ。そしてそうであるならば、同じような形で「種全体」を生き延びさせようとするホルガ村の生存戦略は、やはり合理的であるように思う。
例えば、「『ルビ・ラダー』を執筆する者」に関しても、「それぞれが個人個人として生きる世界」の場合には様々な困難が生じ得るが、ホルガ村のように「共同体が1つの生命体であるように生き延びる世界」であれば、「『ルビ・ラダー』の執筆者」にも一定の役割が生まれることになるというわけだ。
人はそれぞれ異なる性質を持つが、「それら異なる性質を持ち寄って、全体として上手く機能させる」という仕組みが成り立つのであれば、それはとても合理的だと思う。私たちが住む世界では、「多様性」「ダイバーシティ」などと言って個々の違いを積極的に認めてようという発想が広がりつつあるが、「共同体が1つの生命体である」場合はそもそも、それぞれが異なる役割を担える方が生存の可能性が上がる。このように捉えれば、ホルガ村で展開される様々な異常な振る舞いも、ある種の合理性を持っているように感じられてくるだろう。
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つまり、ペレを「個人」と捉えれば、その行動はあまりに「狂気的」だと感じられてしまうが、「ホルガ村という生命体の1つの機能」と捉えるなら、彼を「狂気」とみなす発想は存在しないとも言えるのだ。
「役割」に関する話は、映画の中にも出てくる。ホルガ村では、18年ごとに「役割」が変わり、季節が一巡するとその生を終えるのだそうだ。そして、18歳から36歳の間が「夏(sommar)」と定められていることを考えると、英題である『Midsommar』についても新たな解釈が出来るかもしれない。そもそも「midsommar」とは、スウェーデン語で「夏至祭」を意味するそうだが、「mid」が「真ん中」なので、「sommarの真ん中」という意味にも捉えられる。18歳から36歳の真ん中だと27歳。大学院生であるペレは恐らくそのぐらいの年齢だろう。
とすると、『Midsommar』という英題はダイレクトにペレのことを指しているのかもしれないし、それはつまり、ペレこそが今回の夏至祭で最大の功績を上げた人物であることを示唆しているのかもしれない。
文化人類学的な知識には明るくないので私に出来る解釈はこの程度だが、博学な人が観たら、映画の中で提示される様々な示唆にもっと気づけるかもしれない。そういう見方が可能な作品というでもまた、興味深いと言えるだろう。
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出演:フローレンス・ピュー, 出演:ジャック・レイナー, 出演:ウィル・ポールター, 出演:ウィリアム・ジャクソン・ハーパー, 出演:ヴィルヘルム・ブロングレン, 出演:アーチ・マデクウィ, 出演:エローラ・トルキア, 出演:ビョルン・アンドレセン, Writer:アリ・アスター, 監督:アリ・アスター, プロデュース:パトリック・アンディション, プロデュース:ラース・クヌードセン
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最後に
全体的に、とにかく映像が綺麗なのが印象的だった。ホラー映画と銘打たれている作品なのに、物語のほとんどは、日差しが燦々と降り注ぐ、青空を背景にした草原で展開される。さらにそこに、清潔感溢れる真っ白な服を着た人たちが溢れているという状況が、なんとなしに「この世のものではない印象」を与える点も良かったと思う。
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そしてその中に、様々な格好をした旅行者(ダニーやクリスチャンら)が紛れ込むわけだが、そのことが場の「調和」を著しく乱している視覚的に理解できる点もとても上手い。また、映像が美しいお陰で、「異常なことが展開されているにも拘わらず、映像の綺麗さで異様さが帳消しにされている」という感覚にもなった。頭が認識する「異常さ」と、視覚が認識する「美しさ」のギャップが脳をバグらせているような感じもあり、その映像的な造りもとても見事だと思う。
思っていた映画とはまったく違ったが、よりヤバい方向に違っていた作品であり、改めて観れて良かったなと感じた。
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世界最高峰の辞書である『オックスフォード英語大辞典』は、「学位を持たない独学者」と「殺人犯」のタッグが生みだした。出会うはずのない2人の「狂人」が邂逅したことで成し遂げられた偉業と、「狂気」からしか「偉業」が生まれない現実を、映画『博士と狂人』から学ぶ
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【実話】人質はなぜ犯人に好意を抱くか?「ストックホルム症候群」の由来である銀行強盗を描く映画:『…
「強盗や立てこもり事件などにおいて、人質が犯人に好意・共感を抱いてしまう状態」を「ストックホルム症候群」と呼ぶのだが、実はそう名付けられる由来となった実際の事件が存在する。実話を基にした映画『ストックホルムケース』から、犯人に協力してしまう人間の不可思議な心理について知る
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【排除】「分かり合えない相手」だけが「間違い」か?想像力の欠如が生む「無理解」と「対立」:映画『…
「共感」が強すぎる世の中では、自然と「想像力」が失われてしまう。そうならないようにと意識して踏ん張らなければ、他人の価値観を正しく認めることができない人間になってしまうだろう。映画『ミセス・ノイズィ』から、多様な価値観を排除しない生き方を考える
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【素顔】「ヨコハマメリー史」から「伊勢佐木町史」を知れる映画。謎の女性が町の歴史に刻んだものとは…
横浜で長らく目撃されていた白塗りの女性は、ある時から姿を消した。彼女の存在を欠いた伊勢佐木町という街は、大きく変わってしまったと語る者もいる。映画『ヨコハマメリー』から、ある種のアイコンとして存在した女性の生き様や彼女と関わった者たちの歴史、そして彼女の”素顔”を知る
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【誠実】地下鉄サリン事件の被害者が荒木浩に密着。「贖罪」とは何かを考えさせる衝撃の映画:『AGANAI…
私には、「謝罪すること」が「誠実」だという感覚がない。むしろ映画『AGANAI 地下鉄サリン事件と私』では、「謝罪しない誠実さ」が描かれる。被害者側と加害者側の対話から、「謝罪」「贖罪」の意味と、信じているものを諦めさせることの難しさについて書く
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【天才】『三島由紀夫vs東大全共闘』後に「伝説の討論」と呼ばれる天才のバトルを記録した驚異の映像
1969年5月13日、三島由紀夫と1000人の東大全共闘の討論が行われた。TBSだけが撮影していたフィルムを元に構成された映画「三島由紀夫vs東大全共闘」は、知的興奮に満ち溢れている。切腹の一年半前の討論から、三島由紀夫が考えていたことと、そのスタンスを学ぶ
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【絶望】子供を犯罪者にしないために。「異常者」で片付けられない、希望を見いだせない若者の現実:『…
2人を殺し、7人に重傷を負わせた金川真大に同情の余地はない。しかし、この事件を取材した記者も、私も、彼が殺人に至った背景・動機については理解できてしまう部分がある。『死刑のための殺人』をベースに、「どうしようもないつまらなさ」と共に生きる現代を知る
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【衝撃】森達也『A3』が指摘。地下鉄サリン事件を起こしたオウム真理教は社会を激変させた
「オウム真理教は特別だ、という理由で作られた”例外”が、いつの間にか社会の”前提”になっている」これが、森達也『A3』の主張の要点だ。異常な状態で続けられた麻原彰晃の裁判を傍聴したことをきっかけに、社会の”異様な”変質の正体を理解する。
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【驚嘆】人類はいかにして言語を獲得したか?この未解明の謎に真正面から挑む異色小説:『Ank: a mirror…
小説家の想像力は無限だ。まさか、「人類はいかに言語を獲得したか?」という仮説を小説で読めるとは。『Ank: a mirroring ape』をベースに、コミュニケーションに拠らない言語獲得の過程と、「ヒト」が「ホモ・サピエンス」しか存在しない理由を知る
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【感想】世の中と足並みがそろわないのは「正常が異常」だから?自分の「正常」を守るために:『コンビ…
30代になっても未婚でコンビニアルバイトの古倉さんは、普通から外れたおかしな人、と見られてしまいます。しかし、本当でしょうか?『コンビニ人間』をベースに、多数派の人たちの方が人生を自ら選択していないのではないかと指摘する。
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【加虐】メディアの役割とは?森達也『A』が提示した「事実を報じる限界」と「思考停止社会」
オウム真理教の内部に潜入した、森達也のドキュメンタリー映画『A』は衝撃を与えた。しかしそれは、宗教団体ではなく、社会の方を切り取った作品だった。思考することを止めた社会の加虐性と、客観的な事実など切り取れないという現実について書く
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【恐怖】SNSの危険性と子供の守り方を、ドキュメンタリー映画『SNS 少女たちの10日間』で学ぶ
実際にチェコの警察を動かした衝撃のドキュメンタリー映画『SNS 少女たちの10日間』は、少女の「寂しさ」に付け込むおっさんどもの醜悪さに満ちあふれている。「WEBの利用制限」だけでは子どもを守りきれない現実を、リアルなものとして実感すべき
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自分以外は凡人、と考える主人公の少女はとてもイタい。しかし、世間の価値観と折り合わないなら、自分の美しい世界を守るために闘うしかない。中二病の少女が奮闘する『オーダーメイド殺人クラブ』をベースに、理解されない世界をどう生きるかについて考察する
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【覚悟】人生しんどい。その場の”空気”から敢えて外れる3人の中学生の処世術から生き方を学ぶ:『私を知…
空気を読んで摩擦を減らす方が、集団の中では大体穏やかにいられます。この記事では、様々な理由からそんな選択をしない/できない、『私を知らないで』に登場する中学生の生き方から、厳しい現実といかにして向き合うかというスタンスを学びます
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【救い】自殺を否定しない「笑える自殺本」。「自殺したい」ってもっと気軽に言える社会がいい:『自殺…
生きることがしんどくて、自殺してしまいたくなる気持ちを、私はとても理解できます。しかし世の中的には、「死にたい」と口にすることはなかなか憚られるでしょう。「自殺を決して悪いと思わない」という著者が、「死」をもっと気楽に話せるようにと贈る、「笑える自殺本」
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三権分立の一翼を担う裁判所のことを、私たちはよく知らない。元エリート裁判官・瀬木比呂志と事件記者・清水潔の対談本『裁判所の正体』をベースに、「裁判所による統制」と「権力との癒着」について書く。「中世レベル」とさえ言われる日本の司法制度の現実は、「裁判になんか関わることない」という人も無視できないはずだ
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