目次
はじめに
この記事で取り上げる映画
「正義の行方」公式HP
この映画をガイドにしながら記事を書いていきます
今どこで観れるのか?
公式HPの劇場情報を御覧ください
この記事の3つの要点
- 非常に弱い4つの「間接証拠」のみで有罪判決が下った久間三千年は、本当に犯行を行ったのだろうか?
- 地元紙として前のめりで事件取材を行った西日本新聞が、長い時を経て行った「再検証連載」は本当に素晴らしい試みだと思う
- 異例のスピードで行われた死刑執行と、警察からの誘導があったのではないかと疑われる車の目撃証言の異常さ
裁判所は「飯塚事件」の再審を認め、過去と向き合うことによって「司法への信頼」を取り戻すべきだと思う
自己紹介記事
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どんな人間がこの記事を書いているのかは、上の自己紹介記事をご覧ください
記事中の引用は、映画館で取ったメモを参考にしているので、正確なものではありません
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私が「飯塚事件」の存在を知ったのは恐らく、『殺人犯はそこにいる』(清水潔/新潮社)を読んだ時だったと思う。その詳しい内容については以下にリンクした記事を読んでほしいのだが、「飯塚事件」に関係する重要なポイントには触れておくことにしよう。
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著者の清水潔が取材に尽力していたのは「足利事件」という別の事件だった。実は「足利事件」では、逮捕されていた菅家利和が、清水潔の奮闘のお陰で再審無罪となったのだ。そしてその大きな決め手となったのが、事件発生当時に使われていたDNA鑑定法「MCT118法」である。DNA鑑定が誕生したばかりの頃に使われていたこの手法は、後に「証拠能力が無い」と判定され、「MCT118法」によって有罪とされていた「足利事件」も判決が覆ったのだ。
そして実は「飯塚事件」でも、この「MCT118法」による鑑定証拠が提出されていたのである。『殺人犯はそこにいる』では、そのような繋がりから「飯塚事件」のことも取り上げられていた。そして同じように本作『正義の行方』にも、少しだけ「足利事件」の話が出てくるというわけだ。
『殺人犯はそこにいる』も、そして『桶川ストーカー殺人事件』(清水潔/新潮社)も是非読んでほしいのだが、この2作に共通するのは、「警察や裁判所などの司法は、保身のためなら平気で真実を捻じ曲げる」という驚くべき事実である。少し前に放送していたTBSドラマ『アンチヒーロー』でも権力側の恐るべき不正が扱われていたが、その物語はフィクションではなく現実の話なのだ。そして、本作『正義の行方』で取り上げられる「飯塚事件」もまた、「権力の横暴によって無実の人間が死刑に処されたかもしれない」という信じがたい状況が扱われているのである。
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さて、そんな本作は、「特定の個人・組織を糾弾するような構成」にはなっていない。とにかく、「当時の関係者が考えていたこと、感じていたことをそのままカメラに収める」というスタンスで作られているように感じられた。そして中でも特に印象に残ったのが、当時事件を報じた地元紙・西日本新聞による「事件報道の再検証」である。
この点に関しては後で詳しく触れるが、西日本新聞のその姿勢はメディアとしてとても好感が持てるのではないかと思う。そう、本作は、「『過ちを犯したかもしれない』という状況において、私たちはどのように過去と向き合うべきか」と強く問いかける作品なのである。
「飯塚事件」に対する私自身の捉え方
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さて、本作『正義の行方』の内容に触れる前にまず、「本作を観た上で、『飯塚事件』に対して私がどのようなスタンスでいるのか」について触れておくことにしよう。そしてそれは、本作に登場する西日本新聞の記者・中島邦之のものとほぼ同じと言っていいと思う。
「飯塚事件」では久間三千年という人物が逮捕され、既に死刑が執行済なのだが、「久間三千年が犯人だと思いますか?」と問われた中島邦之が次のように答える場面がある。
久間三千年が犯人だったかどうかは、神ではないのだから分かるはずもない。しかし、司法手続きの大原則は『疑わしきは罰せず』であり、十分な証拠が揃っていないのであれば無罪にするべきだ。そしてそのような観点から言えば、久間三千年は無罪であるべきだと思う。
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私の基本的なスタンスも、まさにこれと同じである。
繰り返しになるが、本作では当時の関係者からかなりフラットに話を聞いており、「こうだったはず」という決め付けをしていない。つまり、「飯塚事件」は「冤罪だったのではないか」という疑惑の目で一般的に見られているわけだが、本作はそのような前提で作られてはいないというわけだ。ただ実際には、久間三千年は既に亡くなっており、また、真犯人と思しき人物も見つかっていないので、「久間三千年が犯人かどうか」に関する真偽が明らかになる可能性は低いと私は考えている。弁護団は「久間三千年は無実だった」という結論を導くために今も奮闘しているわけだが、正直、相当厳しい道のりだろうなと思う。
しかし一方で、本作での検証から明らかに断言できることがある。それは、「久間三千年の裁判や裁判に至るまでの過程には不備があった」ということだ。そして私の印象では、その「不備」は、「『裁判で示された証拠が有する立証能力』を削ぐもの」に思えたのである。
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「飯塚事件」の裁判では「直接証拠」は一切示されず、「間接証拠」のみによって判決が下された。つまり、「女児を連れ去った方法」や「犯行に使われた凶器」などは一切明らかにされないまま、「久間三千年が犯行に関わったかもしれない」といういくつかの弱い証拠のみによって有罪が確定したのである。久間三千年は取り調べにおいて一切何も喋らなかったそうなので、自白さえ存在しないのだ。
このように「飯塚事件」は、「『間接証拠』だけで判決が下された事件」なのである。さらに様々な「不備」によって、「裁判で示された証拠が有する立証能力」が削られている(少なくとも私はそう考えている)のだから、「推定無罪」の原則から考えれば、「久間三千年は無罪」と判断されるべきだと思う。中島邦之の意見に、完全に同意である。
これが私の基本的なスタンスだ。
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この事件では、裁判の終結後2年という異例のスピードで死刑が執行され、久間三千年はこの世を去った。しかしその後2009年になって、手弁当で集まった弁護団が「飯塚事件」の再審請求を行ったのである。そして、一審、高裁と審議を経て、2021年に最高裁が棄却の判断を下した。弁護団は200ページにも及ぶ書面を提出したにも拘らず、最高裁の判決は僅か6ページ。さらにその中身はあまりに酷いものだったそうだ。担当した弁護士は記者会見で、「この判決を書いた5人の裁判官に、『こんな仕事をしていて恥ずかしくないのか』と聞きたい」と憤っていた。
そして冒頭で触れた通り、2度目の再審請求の結果が先ごろ出て、改めて棄却されてしまったというわけだ。「この判決は人間が書いた文章ではない」と、その酷さに改めて憤りを露わにしていた。
さて、私が本作『正義の行方』を観た際には、上映後に監督のトークイベントも行われたのだが、その中で驚くべき事実について触れられていたので紹介したいと思う。
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久間三千年の裁判で提示された4つの「間接証拠」に含まれてはいない話なのだが、「飯塚事件」では、「女児2人が連れ去られた現場」を特定するに当たって重要な役割を果たした女性の証言が存在する。しかし、確か去年と言っていたと思うのだが、その女性が法廷で、「女児2人を見たのは事件とは別の日だったが、警察から証言を変えるように圧力があったため従ってしまった」と証言したというのだ。女性は長年、この事実に気を病んでおり、最近ようやく勇気を出して告白できたのだという。
彼女のこの証言は、「『久間三千年の犯行』を否定するもの」とまでは言えないだろう。しかし、「警察から圧力があった」という点を踏まえれば、「久間三千年を犯人と見込んだ警察が無茶苦茶な捜査をしていた」という事実を証明するには十分と言えるのではないかと思う。そして弁護団はこの事実を、2度目の再審請求で証拠として提出したのだそうだ。捜査において「権力の横暴」があったことが明らかになったのだから、少なくとも再審を認めるべきではないかと私は感じる。しかし裁判所は先述の通り、再審請求を棄却した。こうなると「国家ぐるみで隠蔽しようとしている」としか思えないし、まさにドラマ『アンチヒーロー』さながらの世界であるようにも思えてしまう。
ちなみに、本作『正義の行方』には「飯塚事件」の捜査を担当した元刑事も複数出演しているのだが、監督は「彼らは『証人への圧力』には関与していない」と説明していた。映画に出てくるのとは異なる部署の刑事が圧力を掛ける”不正”を行ったのだそうだ。
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「あの時の報道姿勢は正しかったのだろうか?」という観点から、2人の記者が当時について語る
それではここからしばらく、「西日本新聞による事件報道の再検証」についての話をしていこうと思う。
本作では「元」も含め、4人の西日本新聞記者が取り上げられていた。事件当時最前線で取材をしていた宮崎昌治、当時副キャップを務めていた傍示文昭、そして先程名前を出した中島邦之と、彼と共に検証記事の取材を行った中原興平である。宮崎昌治と傍示文昭は西日本新聞を既に離れているが、中島邦之と中原興平は公開時まだ現役だった。そして冒頭からしばらくの間、「西日本新聞記者」として登場するのは宮崎昌治と傍示文昭の2人である。
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事件当時最前線で働く若手記者だった宮崎昌治は、地元で起こった事件ということもあり、「他紙にスクープを抜かれるわけにはいかない」という想いを強く持っていたそうだ。そしてそれは、西日本新聞全体に共有されていた感覚でもあった。副キャップだった傍示文昭が、「久間三千年の家族が、『警察と西日本新聞がタッグを組んで久間三千年を犯人に仕立て上げようとしている』と感じるのは当然だと思う」と語るほどに、前のめりの取材を行っていたのである。
そんな彼らの話の中で特に印象的だったのが、「『重要参考人浮かぶ』という見出しの記事を出した時のエピソード」だ。このような見出しを打つ場合は通常、「翌日には逮捕状が出るはず」ぐらいの確証がなければならないという。犯人の逃亡や自殺などを引き起こしてはマズいからだ。しかし傍示文昭は当時の状況について、「明日や明後日どころか、翌月にだって逮捕状が出るような雰囲気はなかった」と語っていた。いや、そんなレベルの話ではない。傍示文昭は1年副キャップをやった後、キャップを1年務めたのだが、なんとその2年間、久間三千年が逮捕される気配はまったくなかったというのである。
しかし、現場で取材をしていた宮崎昌治は、「ここで打たなきゃダメだ」と強く主張したのだそうだ。今はどうか知らないが、一昔前の新聞業界は間違いなく「抜いた抜かれた」の世界だったわけで、現場記者からすれば「今打たないでいつ打つんですか!」という感じだったのだろう。そしてそのようなやり取りもあって、結果的に「重要参考人浮かぶ」という見出しの記事は出ることに決まったのだ。
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ただ、宮崎昌治は本作中で、「今の私だったら、この記事を出すのは止めるでしょうね」と語っていた。別にそれは、「時を経て、久間三千年が犯人ではない可能性が高まっている」みたいな理由からではない。彼が口にした「『ペンを持ったおまわりさんになるな』とよく言われた」という言葉が印象的だったのだが、記者という仕事が有するある種の「力」を実感するようになっていったからということなのだろうと思う。
「ペンを持ったおまわりさん」についての説明はなかったが、字面から容易に、「警察でもないのに正義を振りかざす記者」というような意味が読み取れるだろう。そして宮崎昌治は、「かつての自分は『ペンを持ったおまわりさん』でした」と語るのである。そう口にした時の彼の目には、涙が浮かんでいたように私には見えた。
このように本作では、「久間三千年は本当に犯人だったのか?」という観点とはまた別に、「あの時の自分の振る舞いは正しかったのだろうか?」という視点が組み込まれているのだ。今もなお再審請求が続けられている事件を扱うドキュメンタリー映画として、このスタンスはとても興味深いものに感じられた。
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どうやら宮崎昌治と傍示文昭とでは、事件に対するスタンスが少し異なるようだ。宮崎昌治は基本的に、「久間三千年が犯人だと疑ってはいない」ようである。つまり彼の後悔というのは、「久間三千年が犯人であるとしても、自身の取材手法には適切とは言えない部分があったかもしれない」という種類のものなのだと思う。しかし傍示文昭は少し違う感覚を抱いているように見える。裁判の過程や異例の早期死刑執行など様々な状況を踏まえた上で、「本当に久間三千年が犯人だったんだろうか?」という疑念をずっと抱き続けてきたようなのだ。
そしてだからこそ西日本新聞は、「『飯塚事件』を再検証する連載」をスタートさせられたと言える。というのも、傍示文昭が編集局長に就任したのである。そして彼は、宮崎昌治を社会部長に据えた。当然、「再検証連載」のためである。つまり、「同じ痛みを抱えている者」同士がトップに立ったからこそ、「『飯塚事件』とは一体なんだったのだろうか?」を改めて掘り起こす連載企画が実現したというわけだ。
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しかし最大の問題は、「その連載を誰に引き受けてもらうか」だった。傍示文昭は明確に、「『飯塚事件』に一切関係しなかった記者がいい」と考えており、そして実は社内にそんな適任がいたのだ。調査報道の記者でありながら、「飯塚事件」にはノータッチだった中島邦之である。しかし彼は、傍示文昭からの打診に対して首を縦には振らなかった。まあ、当然と言えば当然だろう。飯塚事件が起こったのは1992年、そして再検証記事がスタートしたのは2018年である。この時点でも既に25年以上も前の事件なのだ。難しい取材になることは明らかだった。
それでも傍示文昭は粘り強く交渉を続け、ついに中島邦之から譲歩を引き出すことに成功する。「中原興平を下に付けてくれるなら引き受ける」というのだ。
傍示文昭はこの時のことについて、「恐らく私が試されたのだと思う」と話していた。というのも、中原興平は直近の人事異動で別の支局へと移っていたからだ。その彼をすぐに引き戻すことなどさすがに出来ないだろう、と考えての譲歩だったのではないかというわけだ。しかし、傍示文昭も本気である。次の人事異動で宣言通り中原興平を呼び戻したのだ。こうして、2年間に渡る83回にも及ぶ再検証連載がスタートしたのである。
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とにかく、西日本新聞のこのスタンスが実に素晴らしかった。
まだまだ記憶に新しいとは思うが、ジャニー喜多川による性加害問題に関して、「テレビ局を中心としたメディアによる報道が適切に機能しなかったのではないか」という疑惑が向けられている。そして、テレビ局各社は「社内調査の結果」を公表するなどしていたが、私には「おざなり」に感じられてしまった。世間的にも恐らく、「お茶を濁す」程度の調査としか受け取られていないだろうと思う。
もちろん、自らの過ちを認めることは非常に難しい。さらに、普段「他者を追及する側」にいるとすれば余計ハードルが高くなるだろう。そしてだからこそ、西日本新聞のスタンスが素晴らしく感じられたのである。
宮崎昌治は、「再検証連載においては、私自身が法廷に立たされることになると考えていた」と話していたし、傍示文昭も、「『あの連載はいつまでやるんだ』『ゴールが決まっていないなら今すぐ止めろ』と役員会で散々言われたが、何を言われても止めるつもりなどなかった」と言っていた。この2人が相当の覚悟をもって再検証連載をスタートさせたということが伝わってきたし、まさにこのようなスタンスこそ、「ペンを持つ者」に必要不可欠と言えるのではないかと思う。
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本作は「飯塚事件」を取り上げたドキュメンタリー映画なのだが、私には「西日本新聞による過去の再検証」が最も興味深かったし、より広く多くの人に知られるべき事実だとも感じた。人は誰でも過ちを犯すものだが、最も重要なのは、「過ちを犯した時にどう振る舞うか」だろう。そして、西日本新聞の取り組みは、「自分だったら同じことが出来るだろうか?」と多くの人に問うものになっていると思う。そういう問いかけに思考を巡らせてみるのも大事なことだろう。
「異常に早い死刑執行」と「刑事の盲目さ」
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冒頭で少し触れた通り、久間三千年の死刑執行後に40人ほどの弁護士が集まり、「飯塚事件」の再審請求の申し立てを行ったのだが、その時のことについて徳田靖之が次のように語る場面がある。
自分たちが早く再審請求を行わなかったせいで久間さんは亡くなってしまった。自分たちが殺したようなものだ。
「自分たち」というのは徳田靖之と、もう1人の代表である岩田務弁護士のことを指している。そして彼らは、「自分たちが久間三千年を殺した」という感覚を持っているというのだ。本作の監督も、彼のこの発言には驚かされたと語っていた。そしてそのような感覚を抱いているからこそ、一度最高裁で再審が棄却されても改めて請求を行うなど、現在も精力的に活動を続けているのである。
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さて、久間三千年の最高裁判決が出たのが2006年で、死刑執行が2008年。判決確定から死刑執行まで2年である。ネットで調べると、「2012年から2021年の10年間では、判決確定から死刑執行までの平均期間は約7年9ヶ月」というデータが見つかった。恐らく2008年も大差はなかっただろうし、そう考えると「判決から2年で死刑執行」というのはかなり早い。もちろん、2年以下で死刑が執行された事例も存在するが、やはり数としては少なく、本作でも「久間三千年の死刑執行は異例の早さだった」と説明されていた。
この「異例に早い死刑執行」に関しては様々な受け取り方が存在するようだが、中には「久間三千年の無罪が確定するような事実が明らかになったらマズいから早々に死刑を執行したのではないか」という見方も存在するのだという。まあ、さすがにそれはあり得ないだろうと思っているが、これまで国がしてきたことを考えると、可能性がゼロとも言い切れないところが悩ましいところだ。
事実、「飯塚事件」に関しては、「死刑執行済の事案だから再審請求が通らないのではないか」と認識されているようだ。日本ではこれまで、「死刑判決確定後に再審請求が認められたケース」は4件存在するのだが、この4件はすべて死刑執行前のものである。「死刑執行後に再審請求が認められたケース」は1例も存在しないのだ。だからもしも、そのような状況を逆手に取って、「死刑執行してしまいさえすれば再審が行われることはない」という考えから早期に死刑が執行されたのだとすれば……やはりとんでもない話と言わざるを得ないだろう。
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また、元刑事たちの話しぶりからも、似たような「怖さ」を感じさせられた。
本作に登場する刑事は皆、「久間三千年が犯人で間違いない」と明確に主張している。もちろん、これが「当時捜査に関わった刑事の総意」なのかは分からない。本作に登場する元刑事たちは当然、「カメラの前で証言することを決断した者」であり、サンプルとしては極端に偏っていると感じられるからだ。少し考えれば容易に想像が付くと思うが、「久間三千年が犯人ではないかもしれない」と考えていた刑事(元刑事)はきっと、カメラの前で証言しようとは考えないだろう。だから、「映画に出演した元刑事のスタンス」がどの程度、当時の捜査本部の雰囲気を反映しているのかは分からない。
ただとにかく、本作に登場する元刑事たちには「過ちを犯したかもしれない」という感覚が微塵もなさそうに見えた。そして私は、そのことがとても恐ろしいことに感じられたのである。
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もちろん、「犯人を捕まえて法廷へと送る刑事」には「『絶対に間違いない』という確信を持っていてほしい」とも思う。というか、そういう確信が持てるところまで捜査をしてくれないと職務的に不適格だとさえ感じられる。しかし、人間がやることだから「絶対」はあり得ない。特に「飯塚事件」においては、最後まで直接証拠は一切見つからず、自白さえ取れなかったのだ。そういう状況においては、「もしかしたら……」という躊躇を頭の片隅にでも持っていてほしいと願ってしまう。そうでなければ、先入観によって誤った捜査が行われてしまいかねないだろう。
そして本作では、そのような「先入観ゆえに歪んだのだろう捜査の実例」が紹介されていた。
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「飯塚事件」において最も強力な証拠となったのは、「現場近くで目撃された車」である。そしてその車を目撃した人物の証言は、非常に重要な証拠として扱われることになった。死体が遺棄された現場は山林で、普段は人通りなどない。しかしその日はたまたま、森林組合の職員が昼食を食べようと車で山を下っており、その際に事件現場近くで「紺色の車」を目撃したというのだ。そして、その人物が証言した車の特徴が、久間三千年が所有する車と一致したため、「犯行当時、久間三千年が事件現場にいた」という立証に使われたのである。
しかしこの目撃証言、詳細に調べてみると実に怪しい代物なのだ。
職員が車を目撃した場所は道がカーブしており、車で山を下りながら「久間三千年のものとされる車」を目撃した場合、視界に入るのは「1秒にも満たない時間」であることが実験から明らかになった。体感的には、「ほんの一瞬」といったところだろう。しかしその職員は、「停まっていた車」や「斜面から上がってきた男」などについて、実に19項目もの証言を行ったのである。一瞬しか見えなかったはずの光景について、「タイヤはこう」「車体の色はこう」「男の特徴はこう」と詳しすぎるほど詳しく証言したというわけだ。
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さらに、警察が職員からその証言を取ったのは、事件発生から17日も経ってからだということが明らかになっている。つまりその職員は、「2週間以上前にほんの一瞬目撃したに過ぎない状況について、19もの項目について証言した」ということになるのだ。確かに世の中には、目にした状況を写真のように記憶できる人も存在するが、少なくともこの証言者についてそのような情報はなかった。そしてそんな特殊能力でもない限り、まず不可能な芸当だろう。
さらに、再審請求の過程で明らかになった事実がある。当時の警察の捜査記録を検察が開示したのだが、その記述から、「警察が目撃者に証言の誘導を行ったのではないか」という疑惑が浮かび上がったのだ。
警察が職員の聞き取りを行ったのが3月9日。これが事件から17日後のことである。そして捜査記録によると、なんとその2日前の3月7日に、警察が久間三千年の車を確認していることが明らかになったのだ。つまり、3月9日に職員から話を聞いた時点で、警察は既に久間三千年の車の特徴を把握していたのである。
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この捜査記録が開示される以前、警察は、「久間三千年が捜査線上に浮かんだのは3月11日」と発表していた。つまり、「3月9日に職員から話を聞く中で車の特徴を知り、その上で久間三千年に当たりを付けた」というストーリーである。しかし捜査記録によれば、3月7日の時点で久間三千年の車を確認しているのだから、警察のこのストーリーは破綻していると言わざるを得ないだろう。
ただ、本作に登場する元刑事の1人も、「車の捜査をやって久間三千年に行き着いたんだ」みたいな話をしていた。確か私の記憶では、森林組合の職員の証言以前にも「犯行に関与した車に関する目撃情報」が存在した気がする。そしてその最大の特徴が「ダブルタイヤ」だった。このことと、本作全体で言及された様々な話を私なりにまとめると、恐らく元刑事は、「ダブルタイヤの車を持つ人物を洗っている中で久間三千年に行き着き、その際に車の確認をした。その後森林組合の職員の証言が出てきて、それが久間三千年の車のものと一致したため、彼が容疑者として浮上した」と説明したかったのではないかと私なりに理解したというわけだ。
しかしそうだとしても疑問は残る。というのも、職員の証言の中に「タイヤにラインは”無かった”」という内容のものがあるからだ。これは、とても不自然な証言ではないだろうか?
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繰り返しになるが、この職員は一瞬しか車を見られなかったはずである。そしてその上で、「『視界に映ったもの』について証言した」というのであれば自然だとは思う。しかし、一瞬しか見られなかった状況で、「無かったもの」について自発的に証言したと考えるのは無理があるだろう。私にはとても信じられない。
となれば、少なくとも「タイヤにラインは”無かった”」という証言については、職員による自発的な目撃証言などではなく、「刑事から『ラインは無かったよな?』みたいに問われて、それに『はい』と答えた」みたいな状況を想定する方が自然だろう。さらに刑事は、「久間三千年の車にラインが無かったこと」を3月9日の時点で知っていたのである。となれば、少なくともこの証言に関しては、「警察による誘導」とみなされても仕方ないように思う。
そしてそうだとすればやはり、この目撃証言自体が怪しく感じられてしまうだろう。冒頭で触れた通り、「女児が連れ去られた現場」に関する証言では強要が明らかになっているわけで、車の目撃証言でも同じことが行われたと考えても決して不自然ではないはずだ。
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このような点を踏まえ、私は、「『久間三千年が犯人だ』という先入観の下で捜査が行われたのではないか」と感じてしまったのである。
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そんなわけで弁護団は、「車の目撃証言が誘導された可能性」と「DNA鑑定の不備」という2つを理由に挙げて再審請求を行った。先述の通り、「飯塚事件」では有罪の根拠となった「間接証拠」は4つ存在したのだが、弁護団はその内の2つを覆したと言っていい状況を整えたのである。当然弁護団は、再審が認められるはずだと考えていた。しかし結果は棄却。裁判所の決定には、「他の証拠によって、久間三千年の犯行は高度に立証されている」と書かれていただけだった。
しかし素人の私でも、この主張には「無理があるだろう」と感じられてしまう。繰り返すが、「飯塚事件」においては「直接証拠」は一切存在せず、本作に出演した元刑事でさえ「1つ1つの証拠は弱い」と認める「間接証拠」によって有罪が決まったのだ。しかし弁護団の調査によって、有罪の決め手となった4つの「間接証拠」の内2つは「怪しい」ことが判明した。にも拘らず裁判所は、「高度に立証されている」との主張を崩さないのだ。どういう理屈で「高度に立証されている」のか説明してほしいものだが、そんな説明がなされることはない。
そりゃあ弁護団としても、「そんな仕事をしていて恥ずかしくないのか」と言いたくもなるだろう。
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そしてここからは私の邪推に過ぎないが、恐らく司法は、「死刑執行済の事案の判決がひっくり返ってしまったら、司法制度への信頼が揺らぐ」と考えているからこそ、「飯塚事件」の再審請求を退けているのではないかと思う。というか、そうとしか考えられないだろう。しかし、個人的には逆ではないかと思う。「こんな理不尽がまかり通るような状況」なのだと世間に知られることによって、「司法制度への信頼が揺らぐ」と判断すべきではないだろうか。
しかしその一方で、戦略的には「再審請求を棄却し続ける」という裁判所のやり方の方が正しいことも理解は出来る。作中で誰かが指摘していたが、日本では「再審決定=無罪」みたいな構図が既に存在するため、仮に「飯塚事件」で再審が決定されればメディアが大騒ぎするはずだ。そしてそうなれば、「寝た子を起こす」ようなことになってしまう。そのため、「世間からの注目を避けるためにも、再審請求を棄却し続ける方が安全だ」と考えているのではないかと思うのだ。残念なことではあるが、その戦略は正しいだろう。それでいいとはまったく思えはしないが。
それでは最後に、「DNA鑑定」に関して印象的だった話を2つ取り上げてこの記事を終えようと思う。
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まずは「実験データ」に関する話。弁護団は再審請求の過程で、「技士が記録していたはずの実験データの提出」を求めたのだが、検察からはなんと「担当技士が処分した」という回答が返ってきたというのだ。この点に関しては、「足利事件」での再審無罪判決に貢献したDNA鑑定の権威である教授が怒りを表明していた。検察は、「実験データは技士の私物である」という理屈で処分を妥当と判断しているようだが、教授は「そんなことでいいはずがない」と指摘する。「技士は国家公務員なのだし、もし本当に技士の判断だけで実験データを記録したノートが処分されたのだとすれば、懲罰ものだと思う」と話していた。そりゃあそうだろうなぁと私も思う。
ちなみにこの教授は、「実験データも試料も、恐らく実際には残っていると思う」と、かなり踏み込んだ発言をしていた。そうだとすれば「権力による隠蔽」だし、さらに言えば、「久間三千年は無罪である」という印象がさらに強まるとも言えるのではないかと思う。
さてもう1つは、西日本新聞が取材で掴んだ事実である。
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「飯塚事件」では実は、科捜研による鑑定とは別に、当時「DNA鑑定の権威」と呼ばれていた帝京大学の石山昱夫による再鑑定が行われていた。そしてこの再鑑定では、「試料から久間三千年のDNAは検出されなかった」という結論が出たのである。しかしその後石山昱夫は、「試料が粗悪だったために検出されなかったのだろう」と見解を変えた。そして彼はなんと、「『この鑑定結果を出したら捜査妨害になる』と言われた」と後の裁判で証言したのである。
この話を知った中島邦之と中原興平は石山昱夫の元を訪れ、改めて話を聞くことにした。そして彼らの取材に対しても、「『先生の鑑定結果が出ると困る』と言われた」と証言したのである。さらに、その“口止め”を行ったのが、当時警察幹部で、後に警視総監となった国松孝次だということも明らかになったのだ。
このような経緯から、西日本新聞は国松孝次に取材を申し込むのである。この話も、非常に興味深かった。
このような話が様々に出てくるわけで、やはり「久間三千年犯人説」には一定の疑惑が存在すると考えるべきだろう。そしてだからこそ、西日本新聞だけではなく、警察や裁判所もこの件について再検証を行い、改めるべき点があるなら改めるべきだと私は思うのである。
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最後に
さて、当然の話だが、仮に「警察が違法な捜査を行った」のだとしても、そのことと「久間三千年が犯人かどうか」には関係がない。警察がどんな捜査を行ったにせよ、「久間三千年が犯人である可能性」は当然残るというわけだ。しかし、「飯塚事件」に限る話ではないが、裁判において重要なことは「正しい司法手続きに則って審議が尽くされたか」である。そして、もしも「警察が違法な捜査を行っていた」のだとすれば、「正しい司法手続きに則っていない」ことになるわけで、その場合は、久間三千年が犯行を行ったかどうかに拘らず、裁判上は「無罪」と認定されるべきだと思う。私の認識では、これが司法における大原則であるはずだ。
冤罪(かもしれない)事件に関しては、「犯人なのかどうか」に焦点が当てられがちだと思うが、それと同じぐらい、「正しい司法手続きに則っているかどうか」にも注意が向けられるべきだろう。そして「飯塚事件」ではやはり、「司法手続き」に問題があったと私には感じられる。そして実際にそうだとすれば、私たちはルールに則り、久間三千年を「無罪」にしなければならないはずだ。
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「飯塚事件」は30年以上前の事件だが、「再審請求が今も行われている」という意味では現在進行形だと言えるし、また、「今もなお、冤罪は生まれ続けているはずだ」という観点からも無視していい出来事ではないと思う。さらに、司法は「飯塚事件」という過去と向き合うことによって「司法への信頼」を取り戻さなければならないはずだし、私たちも「飯塚事件」に関心を持つことでその実現を目指さなければならないだろう。
本作『正義の行方』を観て、そのようなことを考えさせられた。
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『殺人犯はそこにいる』(文庫X)で凄まじい巨悪を暴いた清水潔は、それよりずっと以前、週刊誌記者時代にも「桶川ストーカー殺人事件」で壮絶な取材を行っていた。著者の奮闘を契機に「ストーカー規制法」が制定されたほどの事件は、何故起こり、どんな問題を喚起したのか
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アメリカには「民営刑務所」が存在する。取材のためにその1つに刑務官として潜入した著者が記した『アメリカン・プリズン』は信じがたい描写に溢れた1冊だ。あまりに非人道的な行いがまかり通る狂気の世界と、「民営刑務所」が誕生した歴史的背景を描き出すノンフィクション
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テレビ東京の上出遼平が作る、“異次元のグルメ番組”である「ハイパーハードボイルドグルメリポート」の書籍化。映像からも異様さが伝わる「激ヤバ地」に赴き、そこに住む者と同じモノを食べるという狂気が凄まじい。私がテレビで見た「ケニアのゴミ山の少年」の話は衝撃的だった
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ナチスドイツナンバー2だった宣伝大臣ゲッベルス。その秘書だったブルンヒルデ・ポムゼルが103歳の時にカメラの前で当時を語った映画『ゲッベルスと私』には、「愚かなことをしたが、避け難かった」という彼女の悔恨と教訓が含まれている。私たちは彼女の言葉を真摯に受け止めなければならない
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2019年に起こった、逃亡犯条例改正案への反対運動として始まった香港の民主化デモ。その最初期からデモ参加者たちの姿をカメラに収め続けた。映画『時代革命』は、最初から最後まで「衝撃映像」しかない凄まじい作品だ。この現実は決して、「対岸の火事」ではない
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1964年の東京オリンピックを機に建設された「都営霞ケ丘アパート」は、東京オリンピック2020を理由に解体が決まり、長年住み続けた高齢の住民に退去が告げられた。「公共の利益」と「個人の権利」の狭間で翻弄される人々の姿を淡々と映し出し、静かに「社会の在り方」を問う映画
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日本で香港民主化運動が報じられる際は周庭さんが取り上げられることが多いが、香港には彼女よりも前に民主化運動の象徴的存在として認められた人物がいる。映画『デニス・ホー ビカミング・ザ・ソング』の主人公であるスター歌手の激動の人生を知る
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【評価】元総理大臣・菅義偉の来歴・政治手腕・疑惑を炙り出す映画。権力を得た「令和おじさん」の素顔…
「地盤・看板・カバン」を持たずに、総理大臣にまで上り詰めた菅義偉を追うドキュメンタリー映画『パンケーキを毒見する』では、その来歴や政治手腕、疑惑などが描かれる。学生団体「ivote」に所属する現役大学生による「若者から政治はどう見えるか」も興味深い
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【民主主義】占領下の沖縄での衝撃の実話「サンマ裁判」で、魚売りのおばぁの訴えがアメリカをひっかき…
戦後の沖縄で、魚売りのおばぁが起こした「サンマ裁判」は、様々な人が絡む大きな流れを生み出し、最終的に沖縄返還のきっかけともなった。そんな「サンマ裁判」を描く映画『サンマデモクラシー』から、民主主義のあり方と、今も沖縄に残り続ける問題について考える
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【感想】映画『野火』は、戦争の”虚しさ”をリアルに映し出す、後世に受け継がれるべき作品だ
「戦争の悲惨さ」は様々な形で描かれ、受け継がれてきたが、「戦争の虚しさ」を知る機会はなかなかない。映画『野火』は、第二次世界大戦中のフィリピンを舞台に、「敵が存在しない戦場で”人間の形”を保つ困難さ」を描き出す、「虚しさ」だけで構成された作品だ
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【実話】映画『ハドソン川の奇跡』の”糾弾された英雄”から、「正しさ」をどう「信じる」かを考える
制御不能の飛行機をハドソン川に不時着させ、乗員乗客155名全員の命を救った英雄はその後、「わざと機体を沈め損害を与えたのではないか」と疑われてしまう。映画『ハドソン川の奇跡』から、「正しさ」の難しさと、「『正しさ』の枠組み」の重要性を知る
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【驚愕】あるジャーナリストの衝撃の実話を描く映画『凶悪』。「死刑囚の告発」から「正義」を考える物語
獄中の死刑囚が警察に明かしていない事件を雑誌記者に告発し、「先生」と呼ばれる人物を追い詰めた実際の出来事を描くノンフィクションを原作にして、「ジャーナリズムとは?」「家族とは?」を問う映画『凶悪』は、原作とセットでとにかく凄まじい作品だ
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日本の「難民認定率」が他の先進国と比べて異常に低いことは知っていた。しかし、日本の「難民」を取り巻く実状がこれほど酷いものだとはまったく知らなかった。日本で育った2人のクルド人難民に焦点を当てる映画『東京クルド』から、日本に住む「難民」の現実を知る
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【驚異】信念を貫く勇敢さを、「銃を持たずに戦場に立つ」という形で示した実在の兵士の凄まじさ:映画…
第二次世界大戦で最も過酷な戦場の1つと言われた「前田高地(ハクソー・リッジ)」を、銃を持たずに駆け回り信じがたい功績を残した衛生兵がいた。実在の人物をモデルにした映画『ハクソー・リッジ』から、「戦争の悲惨さ」だけでなく、「信念を貫くことの大事さ」を学ぶ
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【実話】権力の濫用を監視するマスコミが「教会の暗部」を暴く映画『スポットライト』が現代社会を斬る
地方紙である「ボストン・グローブ紙」は、数多くの神父が長年に渡り子どもに対して性的虐待を行い、その事実を教会全体で隠蔽していたという衝撃の事実を明らかにした。彼らの奮闘の実話を映画化した『スポットライト』から、「権力の監視」の重要性を改めて理解する
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権力を持つ者のタガが外れてしまえば、市民は為す術がない。そんな状況に置かれた時、私たちにはどんな選択肢があるだろうか?白人警官が黒人を脅して殺害した、50年前の実際の事件をモチーフにした映画『デトロイト』から、「権力による不正義」の恐ろしさを知る
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