目次
はじめに
この記事で取り上げる映画
出演:テレザ・チェジュカー, 出演:アネジュカ・ピタルトヴァー, 出演:サビナ・ドロウハー, 監督:バーラ・ハルポヴァー, 監督:ヴィート・クルサーク
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ポチップ
この映画をガイドにしながら記事を書いていきます
この記事の3つの要点
- すべての親と、親になるつもりの人が観るべき映画
- 現実の「醜悪さ」と、子どもたちが抱える「寂しさ」
- 子どもを守るために、親にできることは何か?
ネットでの性的虐待の被害経験がない親こそ、この映画を観るべきだ。現実を知ろう
自己紹介記事
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どんな人間がこの記事を書いているのかは、上の自己紹介記事をご覧ください
記事中の引用は、映画館で取ったメモを参考にしているので、正確なものではありません
映画『SNS 少女たちの10日間』は、「12歳ぐらいに見える成人女性」の協力を得て行われた衝撃の実験によって浮かび上がる「人間の醜悪さ」を捉えた作品
本作『SNS 少女たちの10日間』を観るべき人
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子育て中の人は、絶対に観た方がいい。あるいは、これから子どもを育てたいと考えている人も観た方がいい。
世の中には、頭で理解しているつもりでも、現実を直視しなければきちんと捉えられないことはたくさんある。まさにこの映画で扱われているのも、そういう類のものだ。「詳しくは知らないけれど、たぶん危険なんだろう」程度の認識では、子どもを守れない。
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チェコでは6割の子供が、制限を受けずにインターネットを使っている。41%の子供が、性的な画像を要求された経験を持つ。子供たちの5分の1は、ネットで会話をする知らない人と直接会うことをためらわない
誰だって「分かってるよ」と感じるだろう。SNSが危険なことぐらい分かってる、と。しかしもし、自分でその危険性を体験したことがないのだとすれば、「想像を遥かに超えてヤバい」ということが、この映画を見れば一発で理解できることだろう。
衝撃の現実を切り取った映画『SNS 少女たちの10日間』の舞台設定
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映画は、オーディションの場面から始まる。12歳ぐらいに見える成人女性を選ぶためのものだ。
最終的に選ばれた3人は、スタジオで10日間過ごす。このスタジオには、ホンモノっぽく作られた子ども部屋が3つある。3人の女優はそれぞれセットの子ども部屋で過ごし、12時から24時までスカイプやフェイスブックをオンライン状態にしておく。そして、どんな人間が連絡を取ろうとするのか、そのやり取りはどんなものになるのかをリアルに検証していく。
先に書いておくと、この映画はチェコの警察を動かした。モザイク加工する前の映像が証拠として提出され、実際に逮捕者も出た。
スタジオには、様々な専門家が待機している。性研究者、弁護士、精神科医、児童保護センター所長などがこの実験を注視し、あらゆるトラブルに対応できるよう準備は万全だ。
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12歳の少女に連絡を取ろうとする「野獣」たちの危険をより明確に映し出すために、女優たちには次のような指示が与えられた。
- 自分からは誰にも連絡しない。連絡があった場合に応対するのみ
- 最初の段階から、自分が12歳であることを、会話の中で強調する
- 性的な誘惑や挑発などはしない。あくまでも「寂しいから話し相手を探している12歳」を貫く
- 裸やオナニーを見たいと言った性的な要求は断る。繰り返しそういう要求をする者には、裸の写真(顔だけ合成したもの)を送る
- 自分から会う約束をしない
さて、これで準備は万端だ。あとは連絡が来るのを待つだけである。
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実験によってあぶり出された「人間のクズたち」の醜悪すぎる振る舞い
女優たちは当然、この撮影用に新しいアカウントを取得する。そして、取得した瞬間から、連絡が殺到する。そのほとんどが、おじさん・おじいさんだ。
男の私でも、そのおぞましさに反吐が出るような連中ばかりだ。
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「12歳だけど大丈夫なの?」と聞かれて男たちは、「何を気にする必要がある?」「僕だって昔は12歳だったよ」「僕は全然気にしないよ」と平然と言ってのける。
「友達と一緒にいるんだ。紹介するよ」と言って性器を画面に大写ししたり、「もうセックスはした?」「オナニーはしてるの?」と執拗に尋ねる。さらに、「ちょっとでいいから胸を見せて」「服を脱いで」と性的な要求を繰り返す。
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撮影に立ち会った弁護士は、
これまでのやり取りをずっと見てきたが、性的虐待と犯罪行為のオンパレードだ。君たちがやり取りしているやつらは全員、刑務所送りになって当然の連中だ。正直、ここまで酷い虐待行為を目にしたのは初めてだ
とその驚きを語っていた。本来であれば、プロバイダーが制約を課すべきだが、ユーザーが離れてしまうことを恐れて放置している、とも指摘する。
驚くべきことに、検証中に撮影スタッフの一人が、画面に映った男を見て「知ってる人かも……」と口にする。まさかの展開である。この記事では詳しく触れないが、その人物についてはかなり深く掘り下げられていく。
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彼らはチェコの法律によって厳しく処罰された
今回の検証では、10日間で2458人の男たちが3人と連絡を取ろうとした。実際にビデオチャットを行った人数はもっと少ないだろうが、彼らの顔はばっちり記録されている(映画ではもちろんモザイクが掛けられているが)。こういう実験がもっと広く行われれば、抑止力になるのではないか、とも感じた。
チェコの法律では、
- 性行為がなくても性的虐待と認められる
- 15歳以下の子どもと性行為を目的として会うことは違法
となっている。前者に関しては、オンライン上で男性器を見せる、というような行為も性的虐待になり、後者に関しては、実際に性行為が行われなくても、性行為を目的に会うだけで違法と認定される。
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だから、この検証において顔をさらすことになった男はほぼ全員、なんらかの違法行為を働いていたと認定されるだろう。
これが現実かと思うと、改めてそのおぞましさに震える。この醜悪さは、目を見開いて確かめておいた方がいい。
映画『SNS 少女たちの10日間』で示唆される「少女はなぜ被害に遭ってしまうのか?」に関する分析
しかし、不思議に感じる人もいるだろう。いくら子どもだからといって、そんな気持ち悪いおっさんたちの言うことを聞いたり、頼まれて裸の写真を送ってしまうのはなぜなのか? と。
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この映画の監督も、まさにその点を明らかにしたいという意図があり、この映画を企画したという。公式HPにこんな風に書かれている。
オオカミたちが子どもたちと巧妙にコミュニケーションを取りながら、騙したり操ったりする全てのトリックを事細かに、かつ正確に伝えたいと思いました。
「SNS 少女たちの10日間」公式HP
まさにこの映画では、この部分が強調される
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男たちはとにかく褒める。褒めて褒めて褒めまくる。これは、日常の中で褒められる経験が少ない子どもには得がたい経験だろう。
検証に参加した児童保護センター所長は、こんな風に話していた。
思春期で、友達や家族などに不満を抱えている時だから、自分を満たしてくれる存在を常に求めている。だから、そんな人物とやり取りを続けたいと思う気持ちから、裸の写真を送ってしまう
そう、「寂しい」という少女たちの「心の隙間」に付け込んでいるのだ。
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まさに映画の最後には、
WEBの制限だけでは不十分です。子供と直接対話をしましょう
と表示される。
「WEBを使うな」「使う時には気をつけろ」と教育することはできる。しかしより根本的な問題は、少女たちが「寂しい」ということだ。「寂しい」からWEBで話し相手を探してしまう。「寂しい」から、普段だったら見向きもしないような気持ち悪いおっさんの言うことを聞いてしまう。
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だから、なんとかしなければならないのは、「寂しい」という気持ちの方なのだ。この映画は、改めてそのことを強く実感させてくれる。
あまりに醜悪な現実に対し、親にできることは何か?
この映画を観ながら、この実験は絶妙なタイミングで行われたのかもしれない、と唸った。
なぜなら、今12歳前後の子どもを育てている母親(敢えて女性に限定するが)には、この映画で描かれる現実を直接的には経験していないかもしれないと思うからだ。
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私は、この文章を書いている時点で38歳だ。26歳の時に子どもを産んでいれば、今12歳。12歳の子を持つ親ぐらいの年齢として妥当だろう。そして私が子どもの頃は、スマートフォンは当然なく、携帯電話はそこそこ広まっているという程度、SNSはmixiぐらいしかなかった。そんな時代である。
だから、私と同年代ぐらいで、子どもの頃にSNSを通じた性被害に遭ったことがある人は、結構少ないのではないかと思うのだ。
もちろん、ゼロだとは思わない。しかし、オンラインゲームやマッチングアプリも今ほど普及しておらず、ネットで知り合った人と会うハードルは今以上に高かっただろう。また、インターネットはパソコンで繋ぐ方が自然だったから、そういう意味でも子どもにはハードルが高かったはずだ。今とは全然環境が違う。
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映画の冒頭で行われたオーディションには、23名の女性がやってきた。12歳に見えるというから、20歳前後の女性だろう。そしてその23名の内の19名が、子どもの頃にネット上での性的被害に遭ったことがあると、オーディション中のやり取りの中で語っていた。
こういう経験を持つ人が結婚し子どもを産めば、その危険を身をもって子どもに伝えられるだろうと思う。
だから、この映画はまさに、その狭間の時期に公開されたと言えるのではないか。
親はまず、自分が子どもの頃とはまるっきり環境が違うことを理解しなければならないだろう。そして、大人の感覚では「起こり得ない」と思うようなことが実際に起こるのだということを、実感できなければならない。
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映画の中で女優の一人が、性研究者とやり取りする場面がある。性研究者は女優に、「あなたが12歳だったら、性器を映したりオナニーを見せてと言ってくる連中とやり取りを続けたいって思う?」と聞くのだが、女優はこんな風に答える。
12歳の時の私なら、好奇心から返信すると思う。もちろん裸の写真を送ったりはしないと思うけど、挑発して相手がどういう反応を見せるのか見たいって思うかも
これもまた現実である。「自分の子どもはそんなことしない」と思い込んでいたら、子どもを守りきれないかもしれない。
こういう危険に満ちあふれた世の中だ、と理解しなければならない。
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出演:テレザ・チェジュカー, 出演:アネジュカ・ピタルトヴァー, 出演:サビナ・ドロウハー, 監督:バーラ・ハルポヴァー, 監督:ヴィート・クルサーク
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とはいえ、そんなことは気休めにしか感じられないほど、映画で描かれる現実は醜悪である。自分の子どもがこのおぞましさと決して接点を持たずに済むよう、親はその危険性を肌感覚で捉える必要があるだろう。
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一時期メディアを騒がせた、佐村河内守の「ゴースト問題」に、森達也が斬り込む。「耳は聴こえないのか?」「作曲はできるのか?」という疑惑を様々な角度から追及しつつ、森達也らしく「事実とは何か?」を問いかける『FAKE』から、「事実の捉え方」について考える
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具体的には知らなくても、「日本の子どもの貧困の現状は厳しい」というイメージを持っている人は多いだろう。だからこそこの記事では、朝日新聞の記事を再編集した『増補版 子どもと貧困』をベースに、「『貧困問題』とどう向き合うべきか」に焦点を当てた
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美醜で判断されがちな”ルッキズム”の世の中に刃を突きつける小説『自画像』。私自身は、「キレイな人もキレイな人なりの大変さを抱えている」と感じながら生きているつもりだが、やはりその辛さは理解されにくい。私も男性であり、ルッキズムに加担してないとはとても言えない
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お笑い芸人・マキタスポーツが、一般社会にも「笑いの作法」が染み出すことで息苦しさが生み出されてしまうと分析する『一億総ツッコミ時代』を元に、「ツッコむ」という振る舞いを止め、「ツッコまれしろ」を持ち、「好き/嫌い」で物事を語るスタンスについて考える
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ベートーヴェンと言えば、誰もが知っている「運命」を始め、天才音楽家として音楽史に名を刻む人物だが、彼について良く知られたエピソードのほとんどは実は捏造かもしれない。『ベートーヴェン捏造 名プロデューサーは嘘をつく』が描く、シンドラーという”天才”の実像
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『スクールセクハラ なぜ教師のわいせつ犯罪は繰り返されるのか』では、自分が生徒に対して「権力」を持っているとは想像していなかったという教師が登場する。そしてこの「無自覚」は、学校以外の場でも起こりうる。特に男性は、読んで自分の振る舞いを見直すべきだ
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空気を読んで摩擦を減らす方が、集団の中では大体穏やかにいられます。この記事では、様々な理由からそんな選択をしない/できない、『私を知らないで』に登場する中学生の生き方から、厳しい現実といかにして向き合うかというスタンスを学びます
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私はLGBTではありません。また、ジェンダーギャップは女性が辛さを感じることの方が多いでしょうが、私は男性です。なので、私自身がジェンダーやLGBTの問題を実感すること…
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