目次
はじめに
この記事で取り上げる映画
出演:アレクセイ・ナワリヌイ, 出演:ユリヤ・ナワリヌイ, 出演:マリア・ペヴチク, 出演:クリスト・グロゼフ, 出演:レオニード・ボルコフ, 監督:ダニエル・ロアー
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ポチップ
この映画をガイドにしながら記事を書いていきます
この記事の3つの要点
- 本作で描かれている主要な情報のほとんどは2020年12月14日に全世界へと発信されたが、私はそのことをほとんど知らなかった
- 「世界一危険な選挙戦に出馬しようとしている」と評されるナワリヌイが暗殺されかけた経緯、そしてベリングキャットとタッグを組んだきっかけ
- 成功するはずがないと思われた「罠」がピタッとハマってしまった驚きの展開
調査報道としてもドキュメンタリーとしても、ちょっと類を観ないほどの衝撃をもたらす作品である
自己紹介記事
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どんな人間がこの記事を書いているのかは、上の自己紹介記事をご覧ください
記事中の引用は、映画館で取ったメモを参考にしているので、正確なものではありません
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とんでもない作品だった。私がこれまでに観たドキュメンタリー映画の中でも、「ずば抜けてぶっ飛んだ真実」が明らかにされる作品だなと思う。しかも、かなり最近の出来事であり、なんなら現在進行形の話だということにも驚かされた。フィクションの映画だってこんな展開を用意したりはしないだろう。使い古された言葉ではあるが、「現実は小説より奇なり」だと改めて思い知らされた作品である。
中でも圧巻だったのは、後で詳しく触れるが、「アレクセイ・ナワリヌイがカメラの前で電話を掛ける場面」だろう。これこそまさに、「フィクションでこんな場面を描いたらリアリティに欠けると非難されるようなシーン」じゃないかと思う。まさにそんなことが、現実の出来事として起こってしまっているのだ。こういう作品に出会えるから、ドキュメンタリー映画を観るのを止められないなと思う。
ドキュメンタリー映画に対する感想としては適さないかもしれないが、本作に対してはとにかく「ワクワクさせられた」という感想が一番強い。不謹慎だと感じる人もいるとは思うが、しかし、「暗殺されたかけた本人」が楽しそうに真相究明をしている様を映し出す作品なので、これぐらいの表現を使っても許されるだろう。
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私は、いつものことだが、観る前の時点では内容について何も調べていない。本作で描かれる事件は、ニュースでなんとなく見たような記憶もないではないが、そうだとしてもほぼ何も覚えていなかった。また作中には、「ベリングキャット」という調査集団に所属する人物が出てくる。そしてこのベリングキャットだけは、テレビ番組で特集が組まれているのを見たことがあり存在を認識していた。しかし私は、彼らがこの案件に絡んでいたことも知らなかったのである。
そういうことも相まってだろう、作中で映し出される様々な”衝撃的事実”に、私はとにかく圧倒させられてしまった。
さてそんなわけで、本作を観る際は、何も知らないままの方が新鮮な驚きを感じられるのではないかと思う。なので、まだ映画を観ていないという方は私の文章など読まず、今すぐ本作を観てほしい。ウクライナ侵攻によって、ロシアがどのような国なのか改めて認識できたという人も多いと思うが、本作『ナワリヌイ』も、そのような感覚をもたらす作品と言えるだろうと思う。
映画公開時点で実は、本作中の主要な情報は既に公開されていた
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映画を観る前の時点で「アレクセイ・ナワリヌイ」という名前はどこかで耳にしたことがあったと思うし、同じ人物だと認識していたかは怪しいが、「ロシアで誰かが毒物で暗殺されかけた」みたいなニュースを目にしたような記憶もある。しかし知っていたのはその程度の知識だった。
だから、彼が「登録者数の多いYouTuber」であることも知らなかったし、もちろん彼の動画も見たことはない。
さて恐らくだが、本作は元々YouTubeで配信することを目的にずっと撮影が行われていたのだと思う。そして、冒頭で少し触れた「電話のシーン」を撮り終えたことで調査は一段落となったのだろう、彼らは調べた情報をすべて発信することにした。自身のYouTubeチャンネルだけではなく、世界中のメディアにも情報を流したのである。それが、2020年12月14日のこと。つまり、本作で描かれる最も重要なポイントは、既に公開情報になっているというわけだ。なのでこの記事では、あまりネタバレ的なことを気にせずにあれこれ書いていこうと思う。
しかし私は、恐らく世界中を騒がせただろうこの調査に関する報道に触れた記憶がない。たまたま私が知らなかっただけなのかもしれないが、それなりにニュース番組やネットニュースは見ているので、日本で報じられていたら何かしらで目にしたはずだとも思う。まったく報じられなかったなんてことはさすがにないだろうが、あまり大きな扱いではなかった可能性はあるだろう。
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いずれにしても、このような海外のニュースをキャッチアップ出来ていなかったことに気づいた時にはよく、「ある程度英語を読めるようになっておかないとな」と感じる。私の場合、外国人とコミュニケーションを取りたいとかではないので、「話せる能力」は別に要らないのだが、英語記事をスラスラ読めたり、あるいは英語の動画・音声をスラスラ聞き取れたりする力は欲しいなと思う。そういう力が無いと、日本語に翻訳されるまで情報を得られなくなるからだ。英語は決して苦手ではないが、決して得意とも言えない。せめて「読む」という点をもう少し強化したいところである。
今回、映画『ナワリヌイ』が日本公開されたからこそこのような知識に触れられたわけで、とにかくそこで描かれる「事実」には驚愕させられてしまった。本作を観ると、ナワリヌイの凄さにも圧倒させられるだろうが、やはりそれ以上に、ロシアのヤバさに衝撃を受けるのではないかと思う。もちろん、「ロシアはヤバい国なんだろう」と漠然と考えてはいたが、そんな想像をあっさりと塗り替えるヤバさが描かれており、とにかく驚かされてしまった。
アレクセイ・ナワリヌイとは一体何者なのか?
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それではまず、「アレクセイ・ナワリヌイはどのような人物なのか」という話から始めよう。
本職は弁護士なのだが、彼を紹介する上で重要なのは、「ロシアの大統領選に出馬しようとしている」という事実の方だ。ある外国メディアはナワリヌイについて、「世界一危険な選挙戦に出馬しようとしている」と報じたことがある。その理由は容易に想像できるだろう。プーチン一強と言うべきロシアにおいて、彼を脅かすような存在がどう扱われるかは火を見るよりも明らかだと言える。
彼は選挙に先駆けて、ロシアの腐敗政治を批判し、プーチンやクレムリン(本来は建物の名前だが、日本の「永田町」と同様、「ロシア政府」を意味する言葉として使われている)を「泥棒」と呼んでは民衆を扇動していく。その人気は絶大で、ひとたび集会を開けば大勢の人が集まるし、YouTube上でも政府批判を展開することで登録者数は640万人以上に達している。凄まじい発信力を持つジャーナリストという一面もあるのだ。
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もちろん、そんなナワリヌイのことをプーチンが放っておくはずもない。そもそも彼がネットに活路を見出したのは、新聞・テレビから締め出され、さらに集会を開くことも禁じられたからである。あらゆる手を使ってナワリヌイの口を封じようとするプーチンに対して、あらゆる手を使って発信の場を確保しようと努力し続けてきたというわけだ。
プーチンにとっては当然苦々しい存在であり、だからクレムリンにおいては「名前を口にすることさえタブー」とされているのだという。記者会見などでアレクセイ・ナワリヌイに言及せざるを得ない場合でも、プーチンは「今話題に上がった人物についてだが」「ドイツで治療を受けている男については」など、個人名を一切使わずに話をするくらいなのだ。意識していることがバレバレだと思うのだが、もはや意地なのだろう。
ナワリヌイにしても当然、プーチンから目をつけられていることは理解していたし、そもそもの話だが、ロシア国内でプーチン批判を展開することの危険性も初めから分かっていた。しかしその一方で、次のようにも考えていたという。
有名になればなるほど、安全になると思っていた。殺してしまうと、やつらも困るだろうから。
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この考えも一理あると言えるだろう。既に「反プーチン」で広く知られているナワリヌイの身に何か起これば、真っ先にプーチンの関与が疑われるはずだからだ。「プーチンといえども、さすがにそんなアホなことをするはずがない」と考えていたのである。
だから、今回のことには誰もが驚かされたという。取材スタッフから「誤算だった?」と聞かれたナワリヌイも、笑いながら「大誤算だったよ」と語っていたほどだ。
暗殺未遂事件、そしてベリングキャットによる調査
そう、ナワリヌイは予想に反し、見事に暗殺されかけてしまったのである。それは、プーチンの腐敗を暴く映画撮影のためにシベリアにいた彼が、モスクワへと帰る飛行機の機内でのことだった。彼は突然倒れ、意識を失ったのである。ナワリヌイはそのままロシア国内の病院に搬送され、そこで“治療が行われた”という。しかし、まだこの時点では確証こそなかったものの、明らかにプーチンの関与が疑われる状況なのだ。であれば、ロシアの病院が適切な措置を施すとはとても思えないだろう。
ナワリヌイの妻ユリアも、当然そのように考えた。そこで彼女は病院へと乗り込み、夫をどうにか連れ出そうとしたのだが、病院スタッフに阻止されてしまう。病院はメディアに「毒殺ではない」と発表するのだが、ユリアがそんな話を信じるはずもない。当時の様子を記録したカメラには、ユリアが病院スタッフと揉める緊迫した様子が映し出されている。
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そんな中、状況が大きく動く。当時ドイツの首相だったメルケルが、「希望するなら、ドイツが全医療を提供する用意がある」との声明を発表したのだ。もちろんユリアは夫をドイツの病院に移そうと奮闘するのだが、病院はその要望をまったく聞き入れない。彼女は、「夫の体内から毒が抜けるまでの時間稼ぎをしているとしか思えない」と憤慨していた。
さて、長い問答の末、ようやくナワリヌイをドイツへと搬送する許可が下りる。家族総出でドイツへと向かったユリアは、しばらくしてドイツの外務省に呼ばれ、そこで衝撃の事実を聞かされることになった。
なんと、ナワリヌイの体内から「神経毒ノビチョク」が検出されたというのだ。
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ノビチョクは、ロシア軍が開発したと噂される毒物である。神経の信号伝達を少しずつ切っていく神経毒であり、数時間も経てば体内から消えてしまうそうだ。そのため、人前で暗殺を行う場合にロシアが使用する毒物として知られている。実際に、イギリス・ソールズベリーで発生した事件でもノビチョクが検出されており、ロシアの関与が疑われているのだ。
しかし、「体内からノビチョクが検出された」というだけでは決定的な証拠とは言えない。さらに、イギリスで起こった暗殺事件とは異なり、今回はロシア国内での出来事だ。プーチン支配下ではあらゆることが隠蔽されてしまう。そのため、監視カメラの映像を手に入れることなど不可能だ。普通に考えれば、ロシアの関与を裏付けるための調査は諦めざるを得ないだろう。
しかし、意外なところから支援の申し出があった。ナワリヌイとはこれまでまったく関わったことがない、ロシアから遠く離れたオーストリアに住むクリスト・グロゼフという人物が手を挙げたのだ。彼はナワリヌイの暗殺未遂事件を知り、ラップトップのパソコン1台を使って独自に調査を始めたのである。
彼は実は「ベリングキャット」と呼ばれる調査報道ユニットに属する人物だ。ベリングキャットはボランティアによって成り立っている集団であり、その特徴は「誰もがアクセス可能な公開情報」から世界規模の事件の真相を暴くという点にある。先述したソールズベリーの暗殺事件の実行犯も特定したり、ウクライナで発生した民間機襲撃事件へのロシアの関与を明らかにしたりするなど、ベリングキャットは多方面に活躍しているのだ。
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もちろん、「個人情報を金で買う」「普通には見られない情報をハッキングする」みたいなことも必要があればやるのだとは思う。しかし、彼らの調査の多くが「SNSや軍人の卒業写真を虱潰しにチェックする」のような、いわゆる「オープンソース」の情報を駆使したものだ。そしてクリストは、そんな調査によって、ナワリヌイの暗殺未遂に関与した実行犯の氏名や顔写真、足取りなどをつぶさに調べ上げてしまったのである。
ちなみに、ベリングキャットの活動はあくまでもボランティアであり、調査費用や報酬が出るわけではない。必要経費はすべて自腹だ。クリストは、過去5年間の調査で15万ドルという凄まじい額の費用を自腹で出しているといい、「妻にバレたら離婚だな」と語っていた。ただ、妻が映画を観ることはまずないから大丈夫だと踏んでいるようだ。
さて、ナワリヌイと話をするでもなく、1人でひたすら勝手に調べていたクリストは、実行犯の特定に至った段階でようやくツイッターで彼に連絡を取った。ユリアやナワリヌイ側のスタッフはベリングキャットについて詳しく知らなかったのか、「自腹で調査をしているなんて怪しい」「ロシアのスパイなのではないか」と当初は疑っていたようだ。しかし、最終的にはタッグを組んでさらに調査を深めることに決めた。そして徹底的に調べたことで彼らは、まるでスパイ映画のような詳細な人物関係図を完成させることに成功したのである。明らかに、ロシアが国家的に関与している事案だったのだ。
こうして凄まじい真相にたどり着いた彼らは、最後にとある大仕掛を実行に移すことに決めたのである。
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ナワリヌイが仕掛けた「とんでもない罠」と、実に楽しそうな調査
「もうこれ以上調べることはない」という地点までたどり着いた彼らは、この事実を世界中のメディアが同時に取り上げてくれるようにと調整を始めるのだが、それと同時並行で1つ、「成功確率がとても低い作戦」を実行に移すことにした。それが冒頭でも触れた「電話」の話である。作戦はこうだ。偽名で携帯電話を契約し、調べ上げた実行犯の番号に電話を掛け、そして本人に直接、
ナワリヌイだ、どうして私を殺そうとした?
と問い詰めようというのである。まあ普通に考えて、上手くいくはずのない作戦だろう。
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さて、この「罠」が最終的にどのような展開をもたらしたのかについては、さすがに触れないでおくことにしよう。是非映画を観てほしい。私は観ながらとにかく、「現実世界でホントにこんなことが起こり得るんだ」と身震いするような思いがした。実際に起こったことだとは信じられないぐらいの「超衝撃映像」だと言っていいだろう。
さて、「罠」そのものの話には触れないが、ロシアの「間抜けさ」を示す「モスクワ4」のエピソードには触れておこうと思う。
ナワリヌイは実行犯に電話を掛ける前、スタッフたちに「ハッカーがロシアのある機関をハッキングした際の話」をし始めた。なんと、最初のパスワードが「モスクワ1」だったというのだ。その機関はハッキングされた後、当然パスワードを変更したのだが、改めてハッカーがハッキングを試みると、新たなパスワードはなんと「モスクワ2」だったというる。もちろんこれも破られ、その後再びパスワードが変更されたが、ご想像の通り「モスクワ3」だった。ではその次は? 当然「モスクワ4」というわけだ。
このエピソードが実話なのかどうか私には判断できないが、映画の中では「ロシア政府の愚かさ」を象徴する話として語られていた。そしてその後実行犯に電話を掛け、信じがたいやり取りが繰り広げられた後、電話を切ったナワリヌイが「まさにモスクワ4だ!」と言って歓喜するのだ。その気持ちは分かる。誰も撮れるなんて想像していなかった驚きの映像が撮れてしまったのだ。カメラの前でナワリヌイ側の女性スタッフがあんぐりと口を開けているシーンが印象的だったが、客席に座りながらたぶん私も同じような反応をしていたと思う。
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それから彼らは、「暗殺されかかった本人自らによる調査」によって明らかになった事実をSNSや世界中のメディアに公表し、「アレクセイ・ナワリヌイの暗殺未遂には間違いなくロシアが関わっていた」ことを鮮やかに証明してみせたのである。
映画を観ながら印象的だったのは、ナワリヌイや家族を始めとする関係者が皆、とても楽しそうに調査していたことだ。もちろん、やせ我慢でそう見せていただけかもしれないし、あるいは、沈鬱な表情をした場面は敢えて使わなかっただけかもしれない。しかし、何となくの印象では、そうではなさそうに感じた。むしろ、「危険なのは確かだが、自分たちがしていることの絶対的な正しさを信じ抜いているから、どうしても楽しい気分になってしまう」みたいなことなんじゃないかと思う。
そんな調査によって判明した事実についてどう感じるかと問われたナワリヌイは、
自分が関わっていなければ嘘だと思っただろう。
と口にしていた。本当にその通りだろう。独自に調査を行ったクリストにしても、調べ始めた当初は「そんなバカな」と感じるようなことばかりだったという。何せ彼らが明らかにしたのは、「ある人物の暗殺のために、国家が20人以上の人物を雇い、綿密な計画の下に行動していた」という事実だからだ。そりゃあ、信じられないのも当然だと思う。
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彼らはこの調査を、ナワリヌイが移送されたドイツで行った。ナワリヌイは、リハビリを続けつつ調べを進めていたのである。そして、すべての調査を終えた彼らはまず、2020年12月14日に最初の“爆弾”を投下した。これに対してプーチンは12月17日の会見で、「CIAの策略」と関与を完全に否定する。それを受ける形で、彼らは最後の“爆弾”を投下した。まさにこれが、ナワリヌイが仕掛けた電話による「罠」の映像である。そしてこれによって世界中が大騒ぎとなった。恐らく、史上最もインパクトのある形で国家の陰謀が暴かれた調査報道になったと言えるだろう。
不屈の精神ゆえに、ロシアに戻って逮捕されたナワリヌイ
さて、話はまだ終わらない。なんとナワリヌイは、翌年1月17日にロシアへと戻る決断をしたのである。普通に考えて、そんな選択はあり得ない。もちろん、さすがにもう暗殺されることはないとは思う。しかしプーチンのことだ、どんな手を使ってくるか分からない。あまりにも危険すぎる選択だ。しかしナワリヌイは、不都合な状況に置かれるだろうことをすべて承知の上で、ロシアへ戻ることに決めるのである。
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そんな彼の決断を最終的には受け入れた家族もまた凄いと思う。映画には19歳の娘も登場するのだが、彼女は父親の決断について、
もし踏みとどまっていたら、私が「帰って闘って」と言っていたと思う。
大切な闘いだから。
と語っていた。凄まじい感覚ではないだろうか。しかも、13歳の頃からずっと、「父親が殺されたらどうしよう」と心配し続けていたというのだからなおさらだ。しかし今では「ロシアとロシア国民のために闘い抜いてほしい」と考えているという。家族のこの結束力の強さもまた、ナワリヌイの力の源泉と言えるかもしれない。
ナワリヌイがロシアへと戻ることはロシア国民にも伝わっており、当日、ナワリヌイの乗った飛行機が着陸予定の空港は大混乱に陥っていた。民衆が大勢詰めかけ、そんな人々を警察が容疑も告げずに片っ端から逮捕していったのだそうだ。外国人記者さえ検挙されたというから、なりふり構わずと言ったところだろう。結局、予定していた空港には下りられなくなり、別の空港に着陸することが決まったのである。
ナワリヌイは特別機などではなく、一般の乗客も多く利用する民間機に乗っていたため、予定とは異なる空港に着陸することになってしまったことを乗客たちに詫びた。しかしそれを受けて乗客が、「予想通りだ!」と返していたのが印象深い。このような反応もまた、ナワリヌイの凄まじい人気の現れと言っていいだろう。
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さて、やはり予想通りと言うべきか、ナワリヌイは下り立った空港で入国審査を受けている最中に逮捕され、現在刑務所に収監されている。映画公開時点ではまだ判決は出ていなかったが、その後ナワリヌイには懲役19年が確定したそうだ。でっちあげの容疑で懲役19年とはなかなか恐ろしい国である。また、ナワリヌイが主催していた「反汚職基金」という団体も家宅捜索が行われ、なんと「過激派組織」の認定を受けたそうだ。ロシアならさもありなんという感じかもしれないが、やはりちょっと信じがたい世界である。ウクライナ侵攻を機に、誰もが改めてロシアの恐ろしさを実感したはずだが、本作を観ることによっても、また新たな恐怖を感じられるだろう。
さて本作は、「『ナワリヌイがロシアに戻る前に撮影されたインタビュー映像』が適宜挿入される」という構成になっていた。そしてその中に、「ロシアへ戻ることで逮捕される、あるいは殺されてしまうとしたら、ロシア国民にどんなメッセージを伝えますか?」と問われる場面がある。彼は一連のインタビューにロシア語ではなく英語で答えているのだが、先の問いにはシンプルに「諦めるな」と返していた。しかしその後撮影スタッフから「ロシア語でも言ってくれ」と請われたため、彼は次のように応えるのである。
悪が勝つのはひとえに、善人が何もしないからだ。
行動を止めるな。
ウクライナ侵攻を機に、ロシア国内ではさらに言論統制が厳しくなっただろうし、以前よりも声を上げることが一層難しくなっているはずだ。しかし、自らの人生を擲ってロシアのために身を投じたナワリヌイが口にした「諦めるな」「行動を止めるな」という言葉を胸に、どうか頑張ってほしいものだと思う。
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最後に
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作品全体のテーマからすれば非常に些細な話なのだが、ある意味でとても印象に残った場面があるので、それに触れてこの記事を終えよう。
退院出来るまでに回復したナワリヌイは一時期、妻と共にドイツ国内のある村に住んでいた。数時間歩いても誰にも会わないぐらい人がいない村だそうだ。身を隠す場所としてうってつけだったのだろう。
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と笑いながら語っていた。このような考えは恐らく、かつて共産主義だった名残なのだろう。こういう点で人々の意識に違いが生まれるのだなと興味深く感じさせられた。
しかしホントに、久々にとんでもなく衝撃を受けた、ちょっと信じがたい映画だったなと思う。是非多くの人に観てほしい作品だ。
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アフガニスタンの山中で遭遇した羊飼いを見逃したことで、数百人のタリバン兵と死闘を繰り広げる羽目に陥った米軍最強部隊に所属する4人。奇跡的に生き残り生還を果たした著者が記す『アフガン、たった一人の生還』は、とても実話とは信じられない凄まじさに満ちている
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文化大革命の最中、国交が成立していなかった中国から自力で帰国した中国残留孤児がいた。その娘である城戸久枝が著した『あの戦争から遠く離れて』は、父の特異な体験を起点に「中国残留孤児」の問題に分け入り、歴史の大きなうねりを個人史として体感させてくれる作品だ
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環境活動家であるグレタのことを、私はずっと「怒りの人」「正義の人」だとばかり思っていた。しかしそうではない。彼女は「不安」から、いても立ってもいられずに行動を起こしただけなのだ。映画『グレタ ひとりぼっちの挑戦』から、グレタの実像とその強い想いを知る
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私はその存在をまったく知らなかったが、「水俣病」を「世界中が知る公害」にした報道写真家がいる。映画『MINAMATA―ミナマタ―』は、水俣病の真実を世界に伝えたユージン・スミスの知られざる生涯と、理不尽に立ち向かう多くの人々の奮闘を描き出す
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核戦争ギリギリまで進んだ「キューバ危機」。その陰で、世界を救った民間人がいたことをご存知だろうか?実話を元にした映画『クーリエ:最高機密の運び屋』は、ごく普通のセールスマンでありながら、ソ連の膨大な機密情報を盗み出した男の信じがたい奮闘を描き出す
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アフガニスタンを追われた家族4人が、ヨーロッパまで5600kmの逃避行を3台のスマホで撮影した映画『ミッドナイト・トラベラー』は、「『難民の厳しい現実』を切り取った作品」ではない。「家族アルバム」のような「笑顔溢れる日々」が難民にもあるのだと想像させてくれる
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タイトルを伏せられた覆面本「文庫X」としても話題になった『殺人犯はそこにいる』。「北関東で起こったある事件の取材」が、「私たちが生きる社会の根底を揺るがす信じがたい事実」を焙り出すことになった衝撃の展開。まさか「司法が真犯人を野放しにする」なんてことが実際に起こるとは。大げさではなく、全国民必読の1冊だと思う
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1964年の東京オリンピックを機に建設された「都営霞ケ丘アパート」は、東京オリンピック2020を理由に解体が決まり、長年住み続けた高齢の住民に退去が告げられた。「公共の利益」と「個人の権利」の狭間で翻弄される人々の姿を淡々と映し出し、静かに「社会の在り方」を問う映画
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在日コリアン4世の監督が、北朝鮮脱北者への取材を元に作り上げた壮絶なアニメ映画『トゥルーノース』は、私たちがあまりに恐ろしい世界と地続きに生きていることを思い知らせてくれる。最低最悪の絶望を前に、人間はどれだけ悪虐になれてしまうのか、そしていかに優しさを発揮できるのか。
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戦後の沖縄で、魚売りのおばぁが起こした「サンマ裁判」は、様々な人が絡む大きな流れを生み出し、最終的に沖縄返還のきっかけともなった。そんな「サンマ裁判」を描く映画『サンマデモクラシー』から、民主主義のあり方と、今も沖縄に残り続ける問題について考える
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【権利】衝撃のドキュメンタリー映画『ヤクザと憲法』は、「異質さを排除する社会」と「生きる権利」を問う
「ヤクザ」が排除された現在でも、「ヤクザが担ってきた機能」が不要になるわけじゃない。ではそれを、公権力が代替するのだろうか?実際の組事務所(東組清勇会)にカメラを持ち込むドキュメンタリー映画『ヤクザと憲法』が映し出す川口和秀・松山尚人・河野裕之の姿から、「基本的人権」のあり方について考えさせられた
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NSA(アメリカ国家安全保障局)の最高機密にまでアクセスできたエドワード・スノーデンは、その機密情報を持ち出し内部告発を行った。「アメリカは世界中の通信を傍受している」と。『シチズンフォー』と『スノーデン』の2作品から、彼の告発内容とその葛藤を知る
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【絶望】権力の濫用を止めるのは我々だ。映画『新聞記者』から「ソフトな独裁国家・日本」の今を知る
私個人は、「ビジョンの達成」のためなら「ソフトな独裁」を許容する。しかし今の日本は、そもそも「ビジョン」などなく、「ソフトな独裁状態」だけが続いていると感じた。映画『新聞記者』をベースに、私たちがどれだけ絶望的な国に生きているのかを理解する
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歴史に詳しくない私は、「東京裁判では、戦勝国が理不尽な裁きを行ったのだろう」という漠然としたイメージを抱いていた。しかし、その印象はまったくの誤りだった。映画『東京裁判 4Kリマスター版』から東京裁判が、いかに公正に行われたのかを知る
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国の諜報機関の職員でありながら、「イラク戦争を正当化する」という巨大な策略を知り、守秘義務違反をおかしてまで真実を明らかにしようとした実在の女性を描く映画『オフィシャル・シークレット』から、「法を守る」こと以上に重要な生き方の指針を学ぶ
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自由に選択し、自由に行動し、自由に生きているつもりでも、現代社会においては既に「自由意志」は失われてしまっている。しかし、そんな世の中を生きることは果たして不幸だろうか?異色警察小説『巡査長 真行寺弘道』をベースに「不幸になる自由」について語る
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三権分立の一翼を担う裁判所のことを、私たちはよく知らない。元エリート裁判官・瀬木比呂志と事件記者・清水潔の対談本『裁判所の正体』をベースに、「裁判所による統制」と「権力との癒着」について書く。「中世レベル」とさえ言われる日本の司法制度の現実は、「裁判になんか関わることない」という人も無視できないはずだ
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