目次
はじめに
この記事で取り上げる映画
出演:チャン・ツィフォン, 出演:シャオ・ヤン, 出演:ジュー・ユエンユエン, 出演:ダレン・キム, Writer:ヨウ・シャオイン, 監督:イン・ルオシン
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ポチップ
この映画をガイドにしながら記事を書いていくようだよ
この記事で伝えたいこと
様々な事情から弟の世話を”押し付けられる”主人公の葛藤に、色々と考えさせられた
強くなければ生きてこられなかった主人公が抱き続ける「信念」もとても興味深い
この記事の3つの要点
- 「女だから」というだけの理由で、あらゆる「諦め」が強要されてしまう現代中国のリアルが描かれる
- 「弟を引き取るつもりなどない」と強く主張できる主人公は、一体何に葛藤し続けているのか
- 思いがけず描かれる「一人っ子政策」がもたらした功罪と、別の意味で主人公を苦しめる「恋人の優柔不断さ」
あらゆる困難に晒された主人公が、最終的にどんな決断に至るのか、是非観て確かめてほしい
自己紹介記事
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記事中の引用は、映画館で取ったメモを参考にしているので、正確なものではありません
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本作『シスター 夏のわかれ道』と直接的には関係ないのですが、私が普段からよくシミュレーションしている話から始めたいと思います。「親族の墓をどうするか?」についてです。
私は長男なので、古い慣習に従うなら、両親が死亡したら普通は、私が墓を引き継ぐのだと思います。私はが既に父親を亡くしているのですが、その何回忌かの際に親族から、チラッとそんなようなことを言われたりもしました。しかし、こんな話をしているのだから想像できるでしょうが、私は墓を引き継ぐつもりなどまったくありません。
親族の1人からそれとなく言われた時には「うわぁ」って感じだったよね
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そもそもですが、私には「墓」の存在意義が理解できません。必要だと感じる人の価値観を否定するつもりはありませんが、とにかく私には「要らないもの」でしかないのです。さらに、「長男だから云々」みたいな感覚に対しても基本的に苛立ちを覚えてしまいます。一昔前であれば、「長男が家を継ぐのだから、墓も一緒に」みたいな感覚だったのでしょうが、既に「家を継ぐ」という感覚が廃れているわけで、「墓だけ押し付けられても困る」と感じてしまうのです。
「きっとこの点で揉めるんだろうなぁ」と想像しているので、どういう主張をしようか私なりに時々シミュレーションをしています。恐らく私は、「管理を引き受けてもいいですが、その場合私は『墓じまい』をします。それが嫌なら、墓を必要だと思う人の中で管理者を決めて下さい」みたいに言うでしょう。どういう反応になるのかは分かりませんが、私としてはこの主張を無理矢理にでも通そうと思っています。
そもそも「家族」って単位にさえ思い入れを抱けない人間だから、「墓」の話なんかマジでどうでもいい
まあ正直なところ、私の墓の話など大した問題ではありません。揉めようが放置しようが、単に墓が荒れるだけだからです。「祖先の霊に祟られる」みたいに感じる人には現実的な恐怖が襲うかもしれませんが、私には関係ありません。
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しかしこれが「墓」ではなく「弟」だとしたら、同じようには振る舞えないでしょう。放っておける存在ではないからです。本当に、主人公が置かれた状況はもの凄く大変だと感じました。
主人公が対峙させられたかなり厳しい状況
さてここで、映画『シスター 夏のわかれ道』の主人公アン・ランが置かれた状況について説明しておきましょう。ざっくり要約すると次のようになります。
看護師として働く現状に不満を抱いているため、北京の大学院を目指して猛勉強中の女性が、会ったこともない「見知らぬ弟」の世話を押し付けられてしまった。
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彼女に弟の世話を押し付けようとする親族たちがホントに酷いよね
ってかそもそも、「看護師」として働かなければならなくなった背景も酷すぎるんだよなぁ
アン・ランが置かれている状況の酷さは、まずはシンプルに「ヤングケアラー」的な観点から捉えられるでしょう。彼女はもう、年齢的には「ヤングケアラー」と呼べるような立場ではないかもしれませんが、状況としては変わらないと思います。弟はまだ6歳で、保護者の存在が絶対に必要です。しかし彼女は、看護師として働いているだけではなく、受験勉強もしなければなりません。アン・ランは様々な場面で「私の人生は私のもの」「私の人生が台無しだ」と口にするのですが、そう言いたくなるのも理解できるでしょう。
しかし、辛いのはそれだけではありません。映画の舞台がいつの設定なのか分かりませんが、現代に近いことは間違いないでしょう。それなのに、中国では未だに「男児優先」の考え方が支配的なのです。このような「男尊女卑」的な感覚にも、アン・ランは苦しめられることになります。
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作中には色んな「社会問題」が詰め込まれてるけど、やっぱりこの「男尊女卑」が一番キツいよなぁって感じした
「それが当たり前」みたいな人しか周りにいないと、そういう考えから抜け出すのがメチャクチャ難しいしね
そんな「男尊女卑」の風潮を体現する存在として描かれるのが叔母でしょう。アン・ランの父親の姉です。彼女は、寝たきりになってしまった夫の介護に追われています。夫の介護さえ無ければ、アン・ランが引き取りを拒否している弟を引き受けてもいいと考えているのですが、なかなか上手くいきません。
作中には、叔母がアン・ランに、彼女の弟(つまり、アン・ランの父親)ばかりが優遇され続けてきた過去について語る場面があります。ロシアへの留学の話が持ち上がっていたのに、結局諦めざるを得なかったし、家も弟に譲りました。そしてそれらはすべて、「叔母が女だから」なのです。いつの時代もどの国でも、女性が厳しい立場に置かれる歴史が繰り返されてきたと思いますが、中国もやはり変わりません。
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そしてそれは、映画の舞台になっている現代中国でも同じなのです。
さて、アン・ランについては「不本意にも看護師として働いている」と書きましたが、どうしてそんなことになったのか想像できるでしょうか? 彼女は元々臨床医学の勉強を志していたし、高校時代の進路表にもそのように書きました。にも拘わらず彼女が合格した大学は、地元の看護科だったのです。どうしてそのような状況になってしまったのか。それは、両親が娘の志望を勝手に書き換えたからです。地元を離れて臨床医学を学びたいという娘の気持ちを無視して、「女は地元に残って家族の面倒を見るべきだ」という価値観を押し付けたことになります。
これはホントにやってられないだろうなぁって感じたわ
また、親族がアン・ランに弟の世話を押し付けようとする振る舞いにも、「女だから」という発想が透けて見えます。親族は、「養子に出せばいい」というアン・ランの提案を一顧だにしません。恐らく、体裁が悪いからでしょう。しかしだからといって、自分たちで引き受けようとは考えもしません。「体裁が悪いから養子には出したくないが、自分で引き取りたくもない。それなら『女』であるアン・ランに押し付ければいい」というスタンスが見え見えというわけです。
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「そりゃあやってられないだろうなぁ」と感じました。アン・ランが置かれているのは、このような状況なのです。
弟の引き取りを徹底的に拒絶するアン・ランの強さ
作中では、アン・ランはとにかく「強い女性」として描かれます。
これはホント、「『これぐらい強くないとやっていけない』って環境にいること」の裏返しでもあるんだけど
みんながアン・ランのようには強くなれないだろうから、辛い状況に甘んじてしまう人も多いだろうなって想像できるよね
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アン・ランはあらゆる場面で様々な人と口論や言い争いをしているのですが、色んな意味で印象的だったのが、彼女が働く病院で女医と意見が対立した場面でのことです。アン・ランは女医に「薬の分量を間違えている」と指摘するのですが、その後女医から、「あなた優秀ね。どうして医者にならないの?」と嫌味っぽく言われます。そしてそれに対してアン・ランは、
看護師じゃ悪いのか?
と突っかかるのです。
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このシーンの時点ではまだ、「臨床医学を志していたのに、両親に進路を勝手に書き換えられた」という背景が分かっていなかったので、正直、彼女の怒りの核の部分を理解しきれてはいなかったのですが、それでも、女医に対して真っ向から立ち向かう強さがとても印象に残る場面でした。さらに、「看護師じゃ悪いのか?」という言葉とは裏腹に、明らかに現状に対して不満を抱いていることが伝わるシーンでもあります。彼女が抱き続けている「葛藤」がある種凝縮された場面だと感じました。
「彼女が辛い状況にいる」って事実を無視できるなら、こういう「気が強い女性」は結構素敵だなって思う
アン・ランの場合は、「そうでなければ真っ当には生きてこられなかった」ってだけだから、凄く複雑だけどね
また、そもそも何故アン・ランは弟と面識が無かったのかと言うと、両親とは疎遠だったからです。「見知らぬ弟」の引き取り問題が浮上したのは、両親が交通事故で亡くなったことがきっかけでした。ただアン・ランは、「両親が進路表を書き換えたこと」に憤りを覚えたため、それ以降は家を出て、両親のお金に頼らずに生きていく決断をしていたのです。この点もまた、「強さ」を意識させる描写だと言えるでしょう。
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そんな女性だからこそ、アン・ランははっきりと「弟を引き取るつもりなどない」という意思表示をします。さらに、親族の反対を押し切って、自ら弟を養子に出そうと動き出しもするのです。彼女にとっては「大学院進学」こそが目下最大の目標であり、弟の存在はそれを邪魔するものでしかありません。だから「養子に出すまでの間」、一緒に暮らしていても最低限のことしかしないのです。弟のワガママには苛立ちを隠さないし、普通につれない態度を取ったりもします。何の思い入れもない「見知らぬ弟」なのだから、私としては「普通の対応」だと感じますが、世の中にはきっと、そうは捉えない人もいるのでしょう。
「血が繋がってるんだから」みたいな理由であれこれ言ってくる人っているよねぇ
ホント、「『血の繋がり』こそマジでどうでもいい」って思ってる人間もいるんだって知ってほしいわ
「弟を引き取るか否か」で悩む主人公の奥底に潜む葛藤とは?
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当然のことながら、「アン・ランが弟の存在に一切構わない」というのでは物語になりません。やはり、「弟の処遇について葛藤する」からこそ、ストーリーとして成立するわけです。しかし私はしばらくの間、「アン・ランが一体何に悩んでいるのか」について上手く捉えきれていませんでした。
もちろんアン・ランにだって人並みの感情はあるし、「人として、こんな幼い子どもを無碍にするのは可哀想」みたいな感情を持っていることは理解できます。彼女が「血の繋がり」をどの程度重視している人物なのかはよく分かりませんでしたが、少なくとも「幼い子どもにどう対処すべきか」という葛藤を抱いていたことは間違いないと言えるでしょう。
しかし決してそれだけではないとも感じていました。
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たぶんだけど、「幼い子どもにどう対処すべきか」って葛藤だけだったら、もっと早く手放せてたんじゃないかって思う
それぐらい、「北京の大学院に行く」って決意が固いことが伝わってくるからね
さて、私が彼女の葛藤の中心にあるものを理解できたのは、ある入院患者が別の病院へ転院することが決まった場面でのことでした。このシーンについて、少し詳しく説明していきましょう。
入院していたのは妊婦で、彼女は「子どもを産めば、自身の命が失われてしまうかもしれない」という深刻な状況に置かれていました。しかし、彼女の夫はその事実を理解しながらも、はっきりと妻の出産を希望するのです。そして、「そうであればこの病院ではちょっと対応が難しい」ということになり、転院が決まったという背景があります。
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この患者の担当医師はアン・ランが喧嘩した女医であり、アン・ランは彼女に「産ませるべきじゃない」と主張しました。しかし女医は、「夫が出産を希望しているのだから仕方ない」と返します。まあ、どちらの意見も「間違っている」とは言えないでしょう。なかなか難しい状況だと感じます。
女医だって、もちろん危険性は理解していたはずだけど、家族の決定に口出しするのも憚られるしね
「100%命を落とす」とかならまだしも、そうじゃない可能性も少しはあるわけだから、余計に難しいなって思う
しかしアン・ランには、「そんなことは絶対に間違っている」という確信がありました。だから、女医が説得に応じないと理解するや病院内を猛ダッシュし、まさに救急車に乗せられる直前の担架を止めた上で、妊婦の夫に、
本人に決めさせて!
と直接訴えたのです。
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このシーンを観た時点では、「どうしてこんな描写が存在するのだろう」と、その真意が理解できていませんでした。ストーリー全体に絡む話だとは思えなかったのです。しかし後から振り返って考えてみると、まさにこの「本人に決めさせて!」という訴えこそが、彼女の葛藤の本質なのだと理解できるようになりました。つまり、「弟の気持ちを無視して、自分の都合だけで養子に出そうとしている現状」に対して、拭えない違和感を覚えていたのだろうと考えているというわけです。
この辺りの描写は、アン・ランの「フェアネス」を映し出している感じがするよね
高い知性を持ってるからこそ、自身の振る舞いを客観視出来ちゃうんだろうなぁ
彼女のこのような真面目さも葛藤に繋がっていってしまったのだと私は理解しました。
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主人公の葛藤から、「中国の現実」も浮き彫りにされる
さて、ここまで触れてきませんでしたが、作中では実はもう1つ、中国特有の問題が描かれています。
そもそもですが、既に看護師として働いているアン・ランの弟が6歳というのは、かなりの年齢差だと言えるでしょう。アン・ランの年齢については作中で言及はなかったはずですが、「弟が生まれた時、アン・ランは大学生だった」という発言があったと思うので、姉弟の年齢差は少なくとも18歳以上だと考えられます。そしてこの背景には、中国の「一人っ子政策」が関係しているはずです。
まさかそんな話まで盛り込まれているとは思わなかったからビックリしたわ
でも、はっきりした描写があるわけじゃないから、外国人の観客にはちょっと理解しにくいよね
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映画の冒頭に、こんなシーンがありました。アン・ランが家族写真の裏から、ある書類を見つける場面です。そこには、「娘は足に障害があるので、2人目の子どもを希望する」と書かれていたのですが、この段階では正直、私にはこの文章の意味が理解できませんでした。
しかしその後、作中での様々な描写から、「恐らくこれが一人っ子政策と関係しているのだろう」ということが分かってきます。一人っ子政策により、アン・ランが生まれた時点で、両親はもうそれ以上子どもを持つことが許されません。しかし夫妻は恐らく、どうしても男児が欲しかったのでしょう。だから、「娘が足に障害を持っている」と嘘をついてまで、2人目の子どもを持つ許可を得ようとしたと考えられるのです。
しかし、その計画は上手くいきませんでした。何故なら、アン・ランが「障害のあるフリ」をしようとしなかったからです。恐らくそのせいで、当局から2人目の子どもが認められなかったのでしょう。その恨みもあって、アン・ランは両親から「望まれない子」という扱いを受けて育ち、その状況に嫌気が差して彼女は家を出たわけです。その後、「娘が家出状態だ」という事情が考慮されたのか、あるいは両親が「娘などいない」と嘘をついたのかは分かりませんが、母が男児を出産します。しかししばらくして両親は死亡し、アン・ランの元に「見知らぬ弟」がやってくることになった、というわけです。
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この辺りの事情は恐らく、中国人の観客だったら冒頭のシーンですぐに理解できるんだろうけどね
逆に我々外国人には、まったく理解できない描写だった
さてそうなってくると、物語の捉え方がまた少し変わってくるでしょう。単に「気の強い女性が、弟の引き取りを拒んでいる」というだけの話だったら、観客の気持ちを揺さぶるのは難しいかもしれません。しかしこの作品では、「国家の政策によって否応なしに翻弄された姉弟」の姿を描き出すことで、「中国のリアル」を切り取っているのです。そのことが、この作品の「力強さ」に繋がっているのだと感じさせられました。
映画『シスター』の内容紹介
アン・ランは、交通事故の現場に立ち尽くしていた。何が起こったのか、理解できない。警察から身元を問われ、「事故で亡くなった2人の子どもです」と答えた。しかし、両親の携帯には男の子の写真しかなかったため、実子なのかの確認のためだろう、警察から身分証の提示が求められる。アン・ランはまともに頭が働かないまま、機械的に身分証を取り出して提示した。
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その後、両親の葬式が執り行われ、そこで初めて弟の存在を知る。もちろん、「彼の世話を誰がするのか」が親族間で問題となった。アン・ランは北京の大学院進学に向けて猛勉強中であり、とても子どもの世話なんかしていられるような状況ではない。しかし親族は皆、彼女に弟の世話を押し付けようと躍起になっている。
そこでアン・ランは、最終的には養子に出すつもりで、一時的に弟を引き取る決断をした。養子にもらってくれる人のことは自分で見つけるからと、彼女は叔母から承諾書へのサインをもらう。そして、受験勉強の傍ら、養親探しを始めたのである。
それにしても、「見知らぬ弟」との生活は困難の連続だった。「肉まんしか食べたくない」と喚き、「パパとママに会いたい」と泣きじゃくる弟に、アン・ランはうんざりする。そんな状況でも、絶対に諦められない夢に向かって突き進む彼女だったが……。
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映画『シスター 夏のわかれ道』では、姉弟の関わりから「中国のリアル」が浮き彫りになるわけですが、それとはまた違った形でもそのことが描かれます。
これから書く話は、日本でも、特に地方においては普通にありそうな話なんだけど
アン・ランには交際中の恋人がいます。彼とは同じ病院で働いていて、さらに以前から、一緒に北京の大学院に行こうという話もしているのです。当然彼女は、彼も同じ気持ちでいてくれていると考えていました。
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しかし、彼の実家での食事に呼ばれた際、アン・ランは違和感を覚えます。というのも、彼の親族が「早く結婚してこの家に住んで、孫の顔を見せて」と当たり前のように言ってくるからです。恋人との結婚については考えていても、「家にいて子育てする」ような未来など彼女は当面考えていません。大学院に進学しようと思っているのだから当然です。こうして彼女は、「恋人が家族に、北京行きの話をしていない」という事実を知ってしまったのです。
そのため彼女は、恋人との関係においても葛藤を抱いてしまいます。「自分と同じ気持ちでいてくれていると思っていたのに、北京行きの話を家族には伝えていなかった。もしかしたら、北京に行くつもりはないのだろうか? それとも、まだ言い出せていないだけ? そう信じたいけど、でも、本当にそうだと言い切れるのか?」 このような思いが渦巻くことになるのです。
何にせよ私は、「その状態で家に呼んだらどう考えてもマズいじゃん」って思っちゃったけど
そんな程度のことが想像出来なかったのか、あるいは、家族の話をきっかけにして外堀を埋めようとしたのか。どっちにしても嫌だね
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他にもアン・ランを葛藤させるのが、まともに仕事をしているようには見えない、麻雀ばかりしている叔父です。物語の随所でアン・ランに絡んできては、彼女の葛藤をさらにややこしくしていきます。こんな風にしてアン・ランは、両親の死を境に、様々な葛藤に晒され続けることになるのです。
そういう状況の中で、彼女が最終的にどのような決断に至るのかが、物語の焦点となります。なかなか見応えのある作品で、色々と考えさせられてしまいました。
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最後に
最後に。6歳の弟を演じた子役がとても良い雰囲気を醸し出していたなと思います。憎たらしい時はとにかく憎たらしいし、可愛らしい時はとにかく可愛らしいのです。また、涙して真剣に訴える時の表情なんかも、とても素敵でした。
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中国独特の状況が映し出される作品ではありますが、広く捉えれば、アン・ランのような葛藤に晒される人はあちこちにいるはずです。自分だったらどういう決断になるのか、考えさせられる物語ではないかと思います。
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『スクールセクハラ なぜ教師のわいせつ犯罪は繰り返されるのか』では、自分が生徒に対して「権力」を持っているとは想像していなかったという教師が登場する。そしてこの「無自覚」は、学校以外の場でも起こりうる。特に男性は、読んで自分の振る舞いを見直すべきだ
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【あらすじ】人生行き詰まってなお「生きたい」と思えるか?環境の激変を受け入れる難しさと生きる悲し…
勤務していた会社の都合で、町が1つ丸々無くなるという経験をし、住居を持たないノマド生活へと舵を切った女性を描く映画『ノマドランド』を通じて、人生の大きな変化に立ち向かう気力を持てるのか、我々はどう生きていくべきか、などについて考える
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【改心】人生のリセットは困難だが不可能ではない。過去をやり直す強い意思をいかにして持つか:映画『S…
私は、「自分の正しさを疑わない人」が嫌いだ。そして、「正しさを他人に押し付ける人」が嫌いだ。「変わりたいと望む者の足を引っ張る人」が嫌いだ。全身刺青だらけのレイシストが人生をやり直す、実話を元にした映画『SKIN/スキン』から、再生について考える
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「自分の子どもなんだから、どんな風に育てたって勝手でしょ」という親の意見が正しいはずはないが、この言葉に反論することは難しい。虐待しようが生活能力が無かろうが、親は親だからだ。映画『MOTHER マザー』から、不正解しかない人生を考える
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【誤り】「信じたいものを信じる」のは正しい?映画『星の子』から「信じること」の難しさを考える
どんな病気も治す「奇跡の水」の存在を私は信じないが、しかし何故「信じない」と言えるのか?「奇跡の水を信じる人」を軽々に非難すべきではないと私は考えているが、それは何故か?映画『星の子』から、「何かを信じること」の難しさについて知る
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【素顔】「ヨコハマメリー史」から「伊勢佐木町史」を知れる映画。謎の女性が町の歴史に刻んだものとは…
横浜で長らく目撃されていた白塗りの女性は、ある時から姿を消した。彼女の存在を欠いた伊勢佐木町という街は、大きく変わってしまったと語る者もいる。映画『ヨコハマメリー』から、ある種のアイコンとして存在した女性の生き様や彼女と関わった者たちの歴史、そして彼女の”素顔”を知る
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【革新】映画音楽における唯一のルールは「ルールなど無い」だ。”異次元の音”を生み出す天才を追う:映…
「無声映画」から始まった映画業界で、音楽の重要性はいかに認識されたのか?『JAWS』の印象的な音楽を生み出した天才は、映画音楽に何をもたらしたのか?様々な映画の実際の映像を組み込みながら、「映画音楽」の世界を深堀りする映画『すばらしき映画音楽たち』で、異才たちの「創作」に触れる
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【感想】映画『窮鼠はチーズの夢を見る』を異性愛者の男性(私)はこう観た。原作も読んだ上での考察
私は「腐男子」というわけでは決してないのですが、周りにいる腐女子の方に教えを請いながら、多少BL作品に触れたことがあります。その中でもダントツに素晴らしかったのが、水城せとな『窮鼠はチーズの夢を見る』です。その映画と原作の感想、そして私なりの考察について書いていきます
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【救い】耐えられない辛さの中でどう生きるか。短歌で弱者の味方を志すホームレス少女の生き様:『セー…
死にゆく母を眺め、施設で暴力を振るわれ、拾った新聞で文字を覚えたという壮絶な過去を持つ鳥居。『セーラー服の歌人 鳥居』は、そんな辛い境遇を背景に、辛さに震えているだろう誰かを救うために短歌を生み出し続ける生き方を描き出す。凄い人がいるものだ
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【異端】子育てがうまくいかないと悩む方へ。9歳で大学入学の天才児に学ぶ「すべきでないこと」:『ぼく…
12歳で数学の未解決問題を解いた天才児は、3歳の時に「16歳で靴紐が結べるようになったらラッキー」と宣告されていた。専門家の意見に逆らって、重度の自閉症児の才能をどう開花させたのかを、『ぼくは数式で宇宙の美しさを伝えたい』から学ぶ
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「世間的な幸せ」を追うのではなく、自分がどうだったら「幸せ」だと感じられるのかを考えなければいけない。『神さまたちの遊ぶ庭』をベースに、他人と比較せずに「幸せ」の基準を自分の内側に持ち、その背中で子どもに「自由」を伝える生き方を学ぶ
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【異端】子育ては「期待しない」「普通から外れさせる」が大事。”劇薬”のような父親の教育論:『オーマ…
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【あらすじ】「愛されたい」「必要とされたい」はこんなに難しい。藤崎彩織が描く「ままならない関係性…
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空気を読んで摩擦を減らす方が、集団の中では大体穏やかにいられます。この記事では、様々な理由からそんな選択をしない/できない、『私を知らないで』に登場する中学生の生き方から、厳しい現実といかにして向き合うかというスタンスを学びます
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「良い子でいなきゃいけない」と感じ、本来の自分を押し隠したまま生きているという方、いるんじゃないかと思います。私も昔はそうでした。「良い子」の呪縛から逃れることは難しいですが、「なりたい自分」をどう生きればいいかを、『わたしを見つけて』をベースに書いていきます
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人が死んでも「悲しい」と感じられない男に共感できるか?(私はメチャクチャ共感してしまう) 西川美和の『永い言い訳』をベースに、「喪失の大きさを理解できない理由」と、「誰かに必要とされる生き方」について語る
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生きていると、「常識的な考え方」に囚われたり、「普通」「当たり前」を無自覚で強要してくる人に出会ったりします。そういう価値観に合わせられない時、自分が間違っている、劣っていると感じがちですが、そういう中で一歩踏み出す勇気を得るための考え方です
ルシルナ
どう生きるべきか・どうしたらいい【本・映画の感想】 | ルシルナ
どんな人生を歩みたいか、多くの人が考えながら生きていると思います。私は自分自身も穏やかに、そして周囲の人や社会にとっても何か貢献できたらいいなと、思っています。…
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