目次
はじめに
この記事で取り上げる映画
出演:フランシス・マクドーマンド, 出演:デヴィッド・ストラザーン, 出演:リンダ・メイ, 出演:シャーリーン・スワンキー, 出演:ボブ・ウェルズ, 出演:ピーター・スピアーズ, 監督:クロエ・ジャオ, Writer:クロエ・ジャオ
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ポチップ
この映画をガイドにしながら記事を書いていくようだよ
この記事で伝えたいこと
私は、どれほど辛い現実を前にしても「生きたい」と思える人を凄いと思う
無気力に怠惰にしか生きられない私には、厳しい現実に立ち向かう気力はありません
この記事の3つの要点
- 主人公がノマド生活を選ばざるを得なかった理由
- 実際のノマド生活者たちの中に入り込んで撮影を行った
- 生活する上で抱く「家」への思い入れ
良くも悪くも、このような人生を歩んでいる人たちがいるのだということを実感できました
自己紹介記事
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どんな人間がこの記事を書いているのかは、上の自己紹介記事をご覧ください
記事中の引用は、映画館で取ったメモを参考にしているので、正確なものではありません
あなたは、どんな状況に置かれても「生きたい」と思えるだろうか?映画『ノマドランド』が突きつける難しい問い
これまでずっと、「生きたい」という気力と無縁だった
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私はこれまでずっと、惰性で生きてきました。特にやりたいこともなく、目標も夢もなく、ハマってて抜け出せないような趣味も、どうにかして実現したい使命も、私にはこれといってありません。
子どもの頃からずっとこんな感じで、いつも「余生」のようだと感じています。昔は「死にたい」と積極的に考えていましたが、最近はそういうこともなく、ただなんとなく、さほどの苦痛も苦労もないからダラダラ生きるか、みたいに日々をやり過ごしている感じです。
だから私には、厳しい環境に置かれながらもちゃんと生きようとしている人たちのことが凄いと感じられます。大きな災害に遭ったり、DVや貧困などの環境にいたり、戦争が行われていたりと、その状況は様々ですが、そういう「辛い現実」を前にしてもなお、諦めずに生きようと思えることが、私にはちょっととんでもないことのように感じられてしまうのです。
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私ならきっと無理だろうなぁ。
私のような人は一定数いるとは思うんだけど、どうだろうね
映画や本などでは「逆境に打ち勝って闘った人」とかに焦点が当たりやすいから分かんないよね
元々やる気もなくただ惰性で生きているだけの人間なのだから、辛い現実に直面して奮起する気力などありません。楽しいことやどうしても止められないことなどがあればなんとか頑張ろうと思えるかもしれませんが、そんなものも特にありません。
だから度々考えます。こういう人間でも、「生きていないといけない」のだろうか、と。私は「安楽死」を強く望む人間ですが、そこまで強い話じゃなくても、もう少し「生きることを緩く諦める権利」みたいなものが認められてほしい、と考えてしまいます。
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主人公が経験した悪夢
映画の内容に少し触れておきましょう。詳しくは知りませんが、この映画には原作となる本があるので、恐らく実在のモデルが存在するのではないかと思います。
ファーンという女性は、ある日住む町を失った。災害などではない。VSジプサムという会社が保有していた採掘場の閉鎖が決まり、その仕事で成り立っていた町も一緒に閉鎖されることになったのだ。なんと、郵便番号まで抹消されてしまった。彼女は、夫と共に住んでいた社宅を出る。その後、どこかのタイミングで夫は亡くなったようだ。それ以降の、彼女の生活を描き出している。
ファーンは、別の町に移り住む選択をしない。彼女は、生活に必要な一式をRV車に積み、季節労働を点々とする生活を始めた。基本的な生活はすべて車の中で行う。彼女のような生活スタイルは「ノマド」と呼ばれ、同じ生活をする仲間たちと時々共に過ごし、またそれぞれの地に散っていく。
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このような人生を生きる女性が主人公の映画です。
ちょっと違うけど、「アドレスホッパー」っていう、定住しない人たちも日本にそれなりにいるみたいね
その生活がテレビとかで紹介される度に、自分には無理だなぁって感じる
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私は土地に思い出を抱くタイプではないので、彼女と同じ状況に置かれたら、「ノマド」という選択はせず別の町に移り住むでしょう。彼女にも、別の町で定住するという選択肢はあったと思いますが、そうはせずに車での生活を選びます。
映画を見ると、「ノマド」という生き方に対する複雑な状況が伝わってきます。
映画には、「ノマド」生活を行う者たちのコミュニティも登場しますが、そのリーダー的な存在の人物が、
ノマド生活を選ぶ人には、悲しみや喪失感を抱えている者が多い
と語っていました。「ノマド」生活を選んだ直接的なきっかけが何だったかは人それぞれでしょうが(「年金では暮らせないから」という人もいる)、「定住しないこと」を選択するのには、やはりそれなりに強い何かがあるということなのだと感じました。
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映画『ノマドランド』の特殊さ
『ノマドランド』という映画は、非常に特殊な手法で撮られていると、映画を観終わった後で知りました。主人公のファーン以外は、実際に「ノマド」生活をしている人たちであり、「ドキュメンタリーの中にフィクションを組み込んでいく」ような映画だと言っていいかもしれません。
具体的にどんなやり方で撮影が行われたのかは知りませんが、実際の「ノマド」生活者の中へとファーン役の女性が入り込んでいって、台本や演技指導なんかももちろんありながら、ある程度「素」のままの姿を撮っていくというやり方なのではないかと思います。
予備知識なしで映画を観ていて、「ドキュメンタリーっぽいし、でも明らかにフィクションの部分もある」というどっちなのかハッキリしない感覚を覚えました。映画の制作者たちがどんな目的を一番に考えてこの映画を撮ったのか分かりませんが、「このような生き方をしている人たちが世の中にはたくさんいるんだ」という事実をありのまま伝えたかったということであれば、それに適した撮影手法を取ったと言えるでしょう。
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でも、演技の素人ってことだろうから、演技を求められる部分は大変だっただろうね
物語的に、主人公と結構絡む人も出てくるし、そういう人たちも「ノマドの人たち」だったのかな?
そして、そんな映画だからこそ、描かれている事柄を「彼らの真実」であると受け止めやすくなるのだと思います。
実際のノマド生活者が出演していることも関係しているでしょうが、この映画では、ノマド生活を悪く描くような描写はさほどありません。また同じように、ことさら良く描く場面も少ないと言えます。良いか悪いかの判断を極力観客に委ねて、映画では、「実際どうなのか」という部分に焦点が当たるようにしていると私は感じました。
そして、そんな映画を観て私は、「ノマド生活は大変だろうなぁ」と改めて実感させられたわけです。ノマドだろうがそうでなかろうが生きていくことは大変ですが、私はやはり、どこかに定住する生き方の方がいいなぁと思いました。
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「家」に対する思い入れ
映画の中でファーンが、「家」に対する思い入れを強くにじませる場面があります。
ファーンは買い物中に昔の知り合いに会います(ファーンは何かの先生だったようで、会ったのは元教え子でした)。そしてそこで、「先生はどうしてホームレスになったの?」と聞かれ、
ホームレスじゃなくて、ハウスレス。別物よ
と答えるのです。
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この言葉の捉え方は2通りあるでしょう。1つ目が、「ホームレスという呼称にマイナスのイメージがある」、そしてもう1つが、「ハウスレスという呼ばれ方を望んでいる」です。
恐らくですが、英語でも、「ホームレス」という言葉には「貧しくて生活に困窮して家に住めない人」というようなニュアンスがあるのではないかと思います。そして、そういう風に見られることを嫌がった、という解釈も可能ではあるでしょう。ただ、私はそうではなく、ファーンは、「家」というものに対する思い入れを強く持っている人物、つまり、後者のタイプの人間なのだと思っています。
別の場面でも、そのことが伝わるシーンがありました。彼女が乗っている車のエンジンが掛からなくなり、修理工場で見てもらうことにしたのですが、修理に2300ドル掛けるより、この車を売って5000ドルで同じ車種の中古車を買った方が安くつく、と提案されます。しかし彼女は、
いや、それはダメ。ただのボロい車に見えるかもしれないけど、長い年月とお金を掛けて改造してきたの。住んでるのよ。私の家なの
と言って反対するのです。
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結局彼女はある方法でこの危機を乗り切るのですが、その過程で、長年遠ざけていたものと再び関わることになる、という展開を見せることになります。
その展開で、ファーンの背景がちょっと分かるんだよね
どう生きるかって結局、過去からの色んな積み重ねなんだなぁって改めて感じる場面だった
私は「家」という「物質」にも「人間が集う機能」にもさほど関心がなく、「家がほしい」と思ったこともありませんが、やはり「生活」と「家」を密接に捉える人もいるのだろうし、その喪失は痛みを伴うのだなぁ、と感じました。そして、「家」というものへの思い入れが強い彼女が、「ノマド」という住居を持たない生活に足を踏み入れていくという流れも示唆的だなと思います。
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私のように、生きる気力が持てない人間のことなどどうでもいいのですが、ファーンのように「生きていきたいと力強く思える人」こそ、どういう形かできちんと報われてほしい、と感じました。
彼女が、今の生き方に自分なりに満足できているのであれば、何の問題もないんですけどね。
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