目次
はじめに
この記事で取り上げる映画
「THE MOLE」HP(現在ページは存在していません)
この映画をガイドにしながら記事を書いていきます
今どこで観れるのか?
NETFLIXで御覧ください
この記事の3つの要点
- 最初から最後まで、衝撃映像のオンパレードとしか言いようがない、信じがたいドキュメンタリー映画
- 元料理人が北朝鮮高官に取り入った経緯も、彼が暴き出した北朝鮮の様々な現実も凄まじすぎる
- 北朝鮮が世界から重宝され、「ビジネス」を通じて多額のお金を手に入れられる理由が理解できる
これまでも衝撃的なドキュメンタリー映画はいくつも観たが、『THE MOLE』もその1作に間違いなく入る
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ドキュメンタリー映画『THE MOLE』は、元料理人が北朝鮮に潜入し極秘情報を手に入れる、フィクションとしか思えない衝撃作
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『THE MOLE』は、映画館で予告を観た時から絶対に観ようと決めていた映画だ。とにかく、予告映像に詰め込まれた情報だけでも圧倒されてしまうほどだった。
なにせ、「元料理人であるデンマーク人の一般人が、スパイとして単独で北朝鮮に潜り込み、世界が仰天するような様々な真実を白日の下に晒す」という映画なのだ。しかも、その10年間の活動を、ドキュメンタリー映画として上映するという。予告を観ても、何をどうやったらそんなことが可能なのか、さっぱり理解できない作品だった。映画を観ている間もずっと、「この映画、ホントにドキュメンタリーなのか?」と疑問を抱き続けていたくらいだ。
映画を観終えた後、公式HPを見てみると、こんなことが書かれていた。
ちなみに本作は、昨年秋に英国BBCと北欧のテレビ局、今年2月には「潜入10年 北朝鮮・武器ビジネスの闇」という題名でNHK-BSにて放送され、大きな反響を呼んだ。あまりにもショッキングな内容ゆえに「本当にドキュメンタリーなのか?」という声が各方面から上がったが、専門家による映像の鑑定を行ったブリュガー監督は100%ノンフィクションだと言明。すでに国連とEUも本作の告発に関心を示しており、今後新たな国際調査へと発展していく可能性もあるという。
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やはり、誰が観たって「本当にドキュメンタリーなのか?」と感じてしまうような映画というわけだ。これで「フィクションでした」なんて言ったら監督の人生は終わりだろうから、映し出されていることはすべて真実なのだと考えていいのだろうと思う。
また、この映画の監督がマッツ・ブリュガーだと知って、なるほど彼ならこれぐらいのことはやるかもしれないな、と感じた。私はこれまで、『THE MOLE』を含めて3作、マッツ・ブリュガーのドキュメンタリー映画を観てきた。他の2つは、『ザ・レッド・チャペル』と『誰がハマーショルドを殺したか』である。
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どの映画も「イカれてる」としか言いようがない作品であり、ドキュメンタリー映画監督としても人としてもちょっと常軌を逸しているのだと思う。そして、そんな人物がこの映画の監督なのだと知って、映画の異常さには納得させられた。
ただ、後で詳しく触れるが、この映画は、マッツ・ブリュガー発案の作品というわけではない。元料理人が彼に映画制作を持ちかけたことで生まれたのである。
それではまず、この映画がいかに特異なのかから説明していきたいと思う。
北朝鮮の「秘密」を次々に暴き出すのは、デンマーク人の元料理人。そんな信じがたいドキュメンタリー映画
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この映画で映し出されるのは、「北朝鮮という国家のヤバさ」である。一般人がスパイとして北朝鮮に潜入し、次々と知られざる秘密を暴き出していく。しかもその様子を堂々とカメラで撮影しているのだ。隠しカメラの映像もあるが、基本的には、手持ちのカメラで北朝鮮内部を撮っている。ある時など、スラム街にある廃墟の地下に作られた豪勢な高級レストランで行われた「秘密の契約」の様子を、契約にはまったく関係ない主人公が、手持ちカメラで当たり前のように撮影しているのだ。
映画で明かされる事実は様々である。以前から噂されていた通り、北朝鮮が「覚醒剤や武器の製造に関与していること」を明確な証拠と共に明らかにした。さらに、軍事の専門家ですら把握していなかった「北朝鮮製の兵器の価格表」を持ち出し、専門家を驚かせる。また、平和的な組織として知られている「KFA(北朝鮮親善協会)」のトップが、覚醒剤や武器の製造に関与していることさえも明らかにするのだ。
とにかく、出てくる情報に圧倒される。
これまで私は、北朝鮮に関する情報を積極的に収集したことはない。しかし、映画や本を通じてそれなりに北知識を得てきたと思う。映画だけに限っても、『私は金正男を殺していない』『トゥルーノース』『ザ・レッド・チャペル』などがそれに当たる。日本で生活する「一般的な人」よりは、多少は多く情報を有していると言えるだろう。
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しかしこの『THE MOLE』は、私がこれまでに得てきた北朝鮮に関する全知識をあっさりと凌駕する、とんでもない情報量だった。最初から最後まで、「衝撃をもたらさない映像なんかない」と感じるほどのレベルであり、とにかくひたすらに圧倒されたというのが正直な感想だ。ヤバすぎる。
そして、何にも増して驚かされたのが、そんなスパイ行為を行ったが、元料理人の一般人という事実だ。しかも彼は、これまで諜報組織や軍などに属していたことはないのである。長いこと料理人をしていたが、慢性疾患によって働けなくなり、福祉の下で生活している人物だと映画では紹介されていた。
そんなただの民間人が、長い時間を掛けて北朝鮮と信頼関係を構築し、「石油王」に扮した元外人部隊の男と2人で北朝鮮を詐欺に嵌め、その実態を暴き出そうとするのである。
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本当に、何がどうなったらそんなことになるのか意味不明としか思えない展開の映画なのだ。そして、そんな驚愕の10年間を過ごした元料理人が撮り溜めてきた様々な衝撃映像を繋ぎ合わせて構成されたのが『THE MOLE』というドキュメンタリー映画なのである。
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そう説明されたところで、「メチャクチャ危険を冒してまで北朝鮮に潜入する動機」として相応しいようには感じられないが、実際に行っちゃってるのだから是も非もない。とにかくウルリクは、何らかの理由で、スパイ活動をするほど北朝鮮に強く関心を抱いたというわけだ。
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では、ウルリクとマッツ・ブリュガーはどのようにして接点を持ったのだろうか? この話もよく分からない部分が残るのだが、とにかくまずは、マッツ・ブリュガーの映画『ザ・レッド・チャペル』についての説明をする必要があるだろう。詳しくは以下の記事を読んでもらうとして、マッツ・ブリュガーと北朝鮮の関係に絞ってざっくり説明しようと思う。
マッツ・ブリュガーは、「北朝鮮との友好のため」という名目を表看板にしてコメディアン2人と共に北朝鮮入りし、北朝鮮内での撮影を敢行した。もちろん監視がついているし、撮影した映像もチェックされるのだが、彼は絶妙に見事な作戦を立ててある意味で北朝鮮を出し抜き、北朝鮮を大いに馬鹿にする映画『ザ・レッド・チャペル』を完成させる。マッツ・ブリュガーの北朝鮮入りを「友好のため」と信じていた北朝鮮は当然激怒し、それ以来マッツ・ブリュガーは二度と北朝鮮に入国できなくなってしまったというわけだ。
ウルリクは恐らく、『ザ・レッド・チャペル』を観てマッツ・ブリュガーが置かれている状況を知ったのだろう。そしてマッツ・ブリュガーに、「あなたが北朝鮮に入れないのなら、私が代わりに行きましょうか?」と突然メールを送ったというのだ。この行動もなかなかに異常である。
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さて、そんなメールを受け取ったマッツ・ブリュガーの反応はというと、まあ常識的なものだと言えるだろう。彼は、「国際情勢の中で北朝鮮が注目されるような何かが起これば興味を持つだろうけどね」という、「今はちょっといいや」的なつれない返事をしたのだ。それもまあ当然だろう。ただの一般人から、「俺北朝鮮行くけどどうする?」みたいなことを言われたところで、「ふーん」と思うしかない。
しかしウルリクは、マッツ・ブリュガーのそんなつれない返事を気にすることもなく、勝手に行動を起こす。そして、ウルリクが本気でとんでもないことをしているとを知ったマッツ・ブリュガーが興味を抱いたことで、このような異常極まる映画が完成したのである。
元料理人は、いかにして北朝鮮の奥深くにまで踏み込むことができたのか?
さてそもそもだが、単なる一般人でしかないウルリクが、どうして北朝鮮高官の信頼を得る人物になれたのだろうか? その辺りの経緯を説明していきたいと思う。
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まずウルリクは「デンマーク北朝鮮友好協会」という団体に潜り込んだ。日本に住んでいると実感は湧かないが、世界には「北朝鮮と友好関係を結びたいと考えている人々」が存在し、この団体もそういう人たちが集まるところである。この協会には、「北朝鮮を愛する高齢者」が多数所属しており、北朝鮮に熱狂しているのだ。そしてウルリクはそんな協会に入り込み、「協会の活動をもっと外にアピールしましょう」と言って、その活動をビデオカメラに収めていくのである。
協会メンバーは、北朝鮮へ観光旅行にも行く。もちろん同行したウルリクはそこで、後に深く関わることになる文化省のカンという役人に出会った。
凄いなと感じるのは、ウルリクが北朝鮮国内でも当たり前のようにカメラを回していることだ。その後彼は、北朝鮮に貢献したということでメダルが授与されるのだが、その授与式の映像も撮っている。もちろん北朝鮮の許可が下りているわけで、このことから、ウルリクがかなり早い段階で北朝鮮からの信頼を勝ち得ていることが分かる。
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その後ウルリクは、協会の活動を通じて1人のスペイン人と出会う。その出会いは、彼のその後を決する非常に重大なものとなった。
その人物というのが、KFA(朝鮮親善協会)のトップであるアレハンドロ・カオ・デ・ベノスだ。KFAは世界30ヶ国に存在する団体で、多くの会員を擁している。一般的には、「北朝鮮文化を広める」という名目で活動する“平和的な団体”だと認識されているようだ。KFAは全世界的な団体であり、ウルリクが所属している「デンマーク北朝鮮友好協会」とは比べ物にならない規模である。
ウルリクはアレハンドロに気に入られた。そして、「KFAのデンマーク支部を作り、その代表に就任する」よう持ちかけられる。ウルリクとしては願ってもない提案であり、二つ返事で引き受けた。この時点からウルリクは、プロカメラマンをKFAに入会させたのだと思われる。それ以降は基本的に、カメラマンが撮影を行う形に変わった。
ウルリクはKFAの活動を真面目にこなし、恐ろしいほどのスピードで出世を果たした。さらに、アレハンドロからも絶大な信頼が寄せられるようになっていく。
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アレハンドロと付き合う中で、ウルリクは彼の思惑を少しずつ理解するようになっていった。どうもアレハンドロは、北朝鮮に投資してくれる人物を探しているようで、ウルリクがピッタリの投資家を紹介してくれるのではないかと当て込んでいるようなのだ。
だったら「投資家」を用意しようじゃないか。この時点で既に監督マッツ・ブリュガーもウルリクのバックアップとして深く関わっており、彼らはジムという元外人部隊の男を「北欧の石油王」に仕立て、アレハンドロと接触させることにした。そんな風にしてアレハンドロの思惑を探っていくと、平和的な団体だと思われていたKFAのトップによる信じがたい裏の顔が見えてくることになり……。
というように話が展開していく。ウルリクはかなり時間を掛け、正攻法で北朝鮮のドアを叩いたというわけだ。どんな風にして北朝鮮と信頼関係を築いたのかはなんとなく理解できたと思う。それにしても、ウルリクのスペックがメチャクチャ高くて驚かされた。小規模な団体である「デンマーク北朝鮮友好協会」で出世していくのはまだ分かるが、規模の大きなKFAとも関係を深め、そこを足がかりに北朝鮮へと入っていくなど、有能でしかないだろう。料理人という職業が最適だったのか、疑問に感じられるほどの手際の良さである。
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石油王に扮したジムと共に、北朝鮮で行われている「ビジネス」の内実を知ろうと企む彼らはやがて、北朝鮮がなぜ世界から重宝されているのか、そして、経済制裁を受けている中で国家を維持するための資金をどのように手に入れているのかを理解するようになる。
その要点は、アレハンドロのこんな言葉に要約されるだろう。
北朝鮮は、いかなるルールも守る必要がない唯一の国。
他の国ではできないことも何でもできる。
どういうことか。分かりやすい例を出そう。映画では、「カナダの製薬会社から仕事を頼まれている」という話が出てくる。製薬会社がわざわざ北朝鮮で何を作ろうというのか。アレハンドロによれば、依頼された薬の中身はほとんど「覚醒剤」と同等だという。もちろん、そんなものはカナダ国内では製造できない。だから北朝鮮に依頼する、というわけだ。この製薬会社の話に限らないが、アレハンドロの話が真実かどうかはなんとも言えない。投資家の関心を引くための作り話である可能性もゼロではないだろう。ただ、「なるほど、北朝鮮にはそのような需要があるのか」と納得させられる話であることも確かだと思う。
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つまり、「世界中の国家や企業が、『自国で製造するわけにはいかないヤバいもの』を北朝鮮に委託する」という現実が存在するというわけだ。薬物でも兵器でも、北朝鮮でなら何でも作れる。だから、「ヤバいもの」を製造・販売することで利益を得ようとする者にとって、北朝鮮は無くてはならない存在なのだ。言われてみれば「確かに」と感じる話ではあるものの、『THE MOLE』ではそんな現実がリアルなものとして突きつけられるため、とにかく驚かされてしまった。
ジムが加わり「ビジネス」の話が進む段階になると、やはり隠しカメラの映像が多くなる。しかし、ジムが北朝鮮に招かれた際には堂々とカメラを回しており、普段はなかなか見られないだろう「北朝鮮の街並み」や「プールで遊ぶ子どもたち」などが映し出された。それらももちろん、北朝鮮による検閲済みの映像だとは思うが、やはりなかなか見られるものではないので新鮮である。
彼らが持ちかけられた「ビジネス」の話にはあまり触れないことにするが、そのスケールはとんでもないものだ。ウガンダのある島を500万ドルで購入するというところから計画が始まるのだが、その500万ドルにはなんと、その島の住民を追い出す費用も含まれている。一方、ウルリクとジム、そして北朝鮮の面々がその島を視察に訪れた際、住民たちには「病院建設のため」と説明しているので、住民は彼らを歓待するのだ。この「ビジネス」が実現しないことを2人は理解しているが、しかしそれでも、「自分たちが本物の投資家だったら、この島の住民は完全に追い出されてしまう」のであり、そんな想像はやはり、2人を心苦しくさせただろうと思う。
こんな風に彼らは、国家レベルで凄まじい「ビジネス」を行おうとする実態をリアルに描き出していくのである。
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ウルリクにはなんと、妻子がいる
この映画は、ウルリクが北朝鮮でのスパイ活動を無事に終え、平穏な日常に戻ったところで終わる。映画のラストでは、ウルリクがアレハンドロに対して画面越しに、「ずっとあなたのことを騙していた」と伝えていた。ウルリクの”裏切り”によってアレハンドロがどんな状況に陥ったのかも、映画公開後にウルリクが北朝鮮から報復を受けたりしていないのかも分からない。しかしいずれにせよ、10年間に及ぶ超危険な潜入活動を自発的に続けてきたにしては、五体満足で無事に任務が終了できたと言っていいだろう。
劇中では、「アメリカ人の大学生が、ホテルに貼られていたポスターを剥がしただけで北朝鮮に拘束された」という、実際に起こった事件のニュースも挟み込まれる。この大学生は最終的に、昏睡状態のままアメリカに帰国し、帰国から6日後に死亡したという。北朝鮮がその死に関与しているのかは不明だが、普通に考えてしていないはずがないだろう。
ポスターを剥がしただけでこれだ。ウルリクがスパイ活動を行っていたことがバレたら、ただじゃ済まなかっただろう。映画では一度、「あぁ、これはもう完全に終わった」と感じざるを得ないほどの超危機的状況が映し出された。ウルリクがスパイ活動をしていたことがバレるかもしれないという緊迫の状況だ。こんな映画が実際に公開されるぐらいだから、少なくとも映画撮影終了時点でウルリクが無事だったことは明らかなのだが、それでもハラハラドキドキさせられた。ただ観ているだけの私が恐怖に襲われたのだから、その時のウルリクの心持ちはどれほどだっただろうかと思う。
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共に北朝鮮に潜入したジムは、元外人部隊所属であり、麻薬の密売で逮捕歴もあるそうだ。本人も証言していた通り、北朝鮮の潜入についても「リスクらしいリスクを感じていなかった」という。むしろ危機的な状況を好んでさえいるようだ。
しかしウルリクは、自ら超危険なスパイ活動をしているとは言え、元は単なる料理人にすぎない。基礎知識がない状態だとあまりに危険だからと、マッツ・ブリュガーがあるタイミングで、元CIAの男からスパイの手解きを教わる短期集中プログラムを用意したほどだ。その元CIAの男は、CIAを解雇されたとかで、ウルリクのスパイ行為がCIAに伝わることはない。その辺りの情報管理は、かなり徹底して行われていただろう。
ホントに、よくもまあこんな生活を10年も続けたものだと思う。
映画は信じがたい映像の連続だったため、観ている時の衝撃度合いで言えばさほどでもなかったが、「ウルリクには妻子がいる」という事実にも驚かされた。しかもウルリクは、「自分が北朝鮮のスパイをしていること」をまったく告げていなかったそうだ。何をどうしたらそんな状況を作り出せるのか謎すぎるが、あらゆる点でウルリクという男が常軌を逸していたということなのだろう。
とにかく、ホントに、「凄まじい」としか言いようがない映画だった。
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記事の最後だが、この映画の構成について触れておこう。
映画には、アニー・マションという女性も登場する。彼女はイギリスの情報機関MI5の元職員であり、スパイ活動を終えた者から話を聞く仕事をずっと続けてきた。
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自分がしてきた体験を誰かに聞いてもらう機会が必要だ。
彼女はそう語る。スパイは、自分の家族にも任務の内容を明かせないのだから、終わったら誰かに話を存分に聞いてもらう時間を確保することが重要になるというわけだ。
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そんなアニーが、ウルリク、ジム、マッツ・ブリュガーから話を聞き出す、という形で映画は構成される。単にウルリクが撮影した映像を繋いだだけの映画ではないというわけだ。長年の経験ゆえに、彼女の的確な質問も素晴らしく、このアニーの存在も含めて、ドキュメンタリー映画としての完成度はとても高いと感じた。
いやはや、ホントに、凄い映画である。
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【実話】映画『イミテーションゲーム』が描くエニグマ解読のドラマと悲劇、天才チューリングの不遇の死
映画『イミテーションゲーム』が描く衝撃の実話。「解読不可能」とまで言われた最強の暗号機エニグマを打ち破ったのはなんと、コンピューターの基本原理を生み出した天才数学者アラン・チューリングだった。暗号解読を実現させた驚きのプロセスと、1400万人以上を救ったとされながら偏見により自殺した不遇の人生を知る
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権力を持つ者のタガが外れてしまえば、市民は為す術がない。そんな状況に置かれた時、私たちにはどんな選択肢があるだろうか?白人警官が黒人を脅して殺害した、50年前の実際の事件をモチーフにした映画『デトロイト』から、「権力による不正義」の恐ろしさを知る
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【驚愕】正義は、人間の尊厳を奪わずに貫かれるべきだ。独裁政権を打倒した韓国の民衆の奮闘を描く映画…
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【実話】障害者との接し方を考えさせる映画『こんな夜更けにバナナかよ』から”対等な関係”の大事さを知る
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「爆弾事件の被害を最小限に食い止めた英雄」が、メディアの勇み足のせいで「爆弾事件の犯人」と報じられてしまった実話を元にした映画『リチャード・ジュエル』から、「他人を公然と批判する行為」の是非と、「再発防止という名の正義」のあり方について考える
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「ヤクザ」が排除された現在でも、「ヤクザが担ってきた機能」が不要になるわけじゃない。ではそれを、公権力が代替するのだろうか?実際の組事務所(東組清勇会)にカメラを持ち込むドキュメンタリー映画『ヤクザと憲法』が映し出す川口和秀・松山尚人・河野裕之の姿から、「基本的人権」のあり方について考えさせられた
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『八月十五日に吹く風』は小説だが、史実を基にした作品だ。本作では、「終戦直前に原爆を落としながら、なぜ比較的平穏な占領政策を行ったか?」の疑問が解き明かされる。『源氏物語』との出会いで日本を愛するようになった「ロナルド・リーン(仮名)」の知られざる奮闘を知る
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2008年に開設された新たな刑務所「島根あさひ社会復帰促進センター」で行われる「TC」というプログラム。「罰則」ではなく「対話」によって「加害者であることを受け入れる」過程を、刑務所内にカメラを入れて撮影した『プリズン・サークル』で知る。
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メガネファストファッションブランド「オンデーズ」の社長・田中修治が経験した、波乱万丈な経営再生物語『破天荒フェニックス』をベースに、「仕事の目的」を見失わず、関わるすべての人に存在価値を感じさせる「働く現場」の作り方
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三権分立の一翼を担う裁判所のことを、私たちはよく知らない。元エリート裁判官・瀬木比呂志と事件記者・清水潔の対談本『裁判所の正体』をベースに、「裁判所による統制」と「権力との癒着」について書く。「中世レベル」とさえ言われる日本の司法制度の現実は、「裁判になんか関わることない」という人も無視できないはずだ
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